説明

傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置及び攪拌調理方法

【課題】 攪拌羽根を回転させて攪拌を行う攪拌装置において、食材の片寄りによって食材が過熱されるということを防止する。
【解決手段】 攪拌する食材を収容する攪拌容器1と、前記攪拌容器1内で軸回転する攪拌軸2と、前記攪拌軸2に取り付けた攪拌羽根3からなり、攪拌羽根3を攪拌容器1内で回転することで攪拌容器内に収容した食材を攪拌する攪拌装置であって、攪拌容器の下部には加熱部6を設けており、加熱部6で加熱しながら攪拌調理を行う攪拌装置において、前記攪拌容器1は傾斜することができるようにしておき、攪拌容器1を傾斜させた状態で加熱しながら攪拌することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置及び攪拌調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材を攪拌しながら調理する装置として、図2に示すような攪拌装置が知られている。図2の攪拌装置は、攪拌容器1内に調理する食材を入れ、攪拌容器1の下部に設けた蒸気ジャケット6によって加熱しながら攪拌容器1内で攪拌調理を行うものである。攪拌容器1内には、水平な攪拌軸2が貫通しており、攪拌軸2に接続している攪拌羽根3を回転させることで食材を攪拌する。攪拌羽根3は攪拌軸2に複数個結合しておき、攪拌羽根3を回転させることによって先端の羽根部4で食材をかき揚げるようにして攪拌する。
【0003】
攪拌調理を行う食材が餡など粘性のある食材であった場合、攪拌羽根は食材を一方向へ押し続けるため、図3に示すように攪拌容器内で食材が片寄ることになる。この場合、攪拌羽根が下向きに回転している側では、食材の量が少なくなるため、下部からの熱が少量の食材に集中し、過熱によって焦げが発生することがあった。そこで、実用新案登録第3040057号公報に記載があるように、蒸気ジャケットを分割し、攪拌羽根が下向きに回転する側へ供給する熱量を減少することで過熱を防止することが考えられた。熱量を調節することで食材の過熱を防止することができるようになったが、蒸気ジャケットを分割した構造とすると、加熱制御を二重化する必要があるため、コストが上昇するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3040057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、攪拌羽根を回転させて攪拌を行う攪拌装置において、食材の片寄りによって食材が過熱されるということを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、攪拌する食材を収容する攪拌容器と、前記攪拌容器内で軸回転する攪拌軸と、前記攪拌軸に取り付けた攪拌羽根からなり、攪拌羽根を攪拌容器内で回転することで攪拌容器内に収容した食材を攪拌する攪拌装置であって、攪拌容器の下部には加熱部を設けており、加熱部で加熱しながら攪拌調理を行う攪拌装置において、前記攪拌容器は傾斜することができるようにしておき、攪拌容器を傾斜させた状態で加熱しながら攪拌することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、前記の傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置において、攪拌容器の傾斜方向と攪拌軸の回転方向を、それぞれ正回転と逆回転の両方可能としておき、攪拌調理の途中で攪拌軸の回転方向と攪拌容器の傾斜方向をそれぞれ反転することができるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、前記の傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置を用いて攪拌調理を行う場合、攪拌羽根が下向きに回転する側が低くなるように攪拌容器を傾斜させた状態で攪拌調理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施した場合、食材の片寄りに合わせて加熱域を移動させることができるため、食材量と加熱量のバランスを適切に保つことができ、一部の食材が過熱されるということはなくなる。また、回転方向を攪拌調理の途中で反転すると、食材の片寄りをならす作用が得られ、さらに攪拌の効果を高めることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明を実施している攪拌装置の縦断面図、図2は攪拌装置の一部断面正面図である。攪拌装置は、攪拌する食材を収容する攪拌容器1と、該攪拌容器1内で攪拌する攪拌機構からなる。攪拌容器1の下部は加熱部として蒸気ジャケット6で覆っており、蒸気ジャケット6に接続した蒸気供給ライン8から蒸気ジャケット内へ蒸気を導入することができるようにしておく。蒸気ジャケット下部の中央部分にはドレン排出口7を設けており、ドレン排出口7は攪拌容器1を正立位置とした場合に最も低い位置となる。
【0011】
攪拌機構としては、攪拌容器1内を水平に貫通する攪拌軸2と、攪拌軸2に結合した複数の攪拌羽根3を設けている。攪拌羽根3は、攪拌軸2から攪拌容器1の内壁面に向けて伸びているアーム5と、アーム5先端に接続している羽根部4からなる。攪拌軸2を軸回転させると、攪拌羽根3が縦方向に回転するため、攪拌容器1内の食材を攪拌することができる。
【0012】
攪拌軸2を回転する攪拌軸回転装置12は、攪拌容器の側部に設けた機構部ボックス10内に収容しており、攪拌軸2は機構部ボックス10内まで延びている。攪拌軸回転装置12は正回転と逆回転の両方を可能としておき、攪拌軸回転装置12の回転方向を反転させることで攪拌羽根3の回転方向を反転させる。また、機構部ボックス10内には、攪拌容器1を傾斜する攪拌容器傾動装置11も設けており、攪拌容器1の傾斜も可能としている。攪拌容器傾動装置11も正回転と逆回転の両方が可能なものとしておく。攪拌容器傾動装置11は手動ハンドルなどからなる手動装置でもよいが、手動の場合、攪拌調理途中で傾斜方向を反転させるには、操作者が攪拌装置のそばにいなければならないため、モータなどによる自動装置の方が望ましい。攪拌容器傾動装置11による攪拌容器1の傾斜角度は、ロータリーエンコーダ9で検出するようにしており、ロータリーエンコーダ9で検出している角度が所定の角度になるように、攪拌容器傾動装置11によって傾斜角度を調節する。攪拌容器傾動装置11による攪拌容器1の傾動は、食材を取り出すために大きく傾ける場合と、粘度を持った食材を攪拌調理するために小さく傾ける場合がある。攪拌調理時に傾斜する場合は、攪拌容器1を攪拌羽根3の回転方向と同じ方向に傾けるようにする。
【0013】
食材の攪拌調理を行う場合、攪拌軸2を軸回転させることで攪拌羽根3を円状に回転させて攪拌を行う。攪拌調理を行う食材が、餡などの粘度を持った食材の場合、攪拌羽根3による攪拌を行うと、食材は攪拌羽根3によって押されるために移動していく。そのため、図1に記載しているように食材は攪拌容器1内で一方の側に片寄ることとなる。攪拌羽根3による攪拌を行うと、食材が攪拌容器1内の一方に片寄る場合には、攪拌容器1を傾斜させた状態で攪拌調理を行う。
【0014】
攪拌羽根3による攪拌を開始する場合、最初は攪拌容器1を正立位置としておき、所定時間が経過して食材の片寄りが発生し始めた頃に攪拌容器傾動装置11を作動して攪拌容器1を傾斜させる。図2に記載したように、攪拌容器1を攪拌羽根3の回転方向と同方向に少し傾けておくと、蒸気ジャケット6による加熱位置は、攪拌羽根3が上向きに回転しており食材が多くなっている側に移動することになる。攪拌容器1を正立位置に保った状態で攪拌調理を続けると、攪拌羽根3が下向きに回転しており食材が少なくなっている側では、少量の食材に熱が集中するために過熱されて焦げが発生することがあった。しかし、攪拌容器自体を傾斜させた本発明では、加熱域が食材の多い側へ移動しているため、少量の食材に熱が集中することなく攪拌調理を行うことができる。
【0015】
また、本発明の攪拌装置では、攪拌羽根3の回転方向を反転することも可能としている。攪拌羽根3の回転方向を反転して逆方向に回転すると、攪拌羽根3は食材をそれまでとは反対方向に押していくことになるため、攪拌容器内で片寄っていた食材をならすことができる。攪拌容器傾動装置11による攪拌容器の傾斜は、攪拌軸回転装置12の回転方向を反転してから所定時間経過後に一度正立位置へ戻し、その後さらに攪拌軸2の回転と同方向に傾斜させる。
【0016】
なお、攪拌容器を傾斜させると、攪拌容器の開口部が低くなる。しかし開口部が低くなる側は食材の高さも低くなっているため、開口部から食材があふれ出るということにはならない。また、攪拌調理を行う食材がスープなど片寄ることのない食材であった場合には、攪拌容器を傾斜させて攪拌調理を行う必要はないため、攪拌容器は正立位置のままで攪拌調理を行う。
【0017】
攪拌調理が終了すると、蒸気ジャケット6への蒸気供給停止と攪拌軸回転装置12の回転停止後する。その後、攪拌容器1を大きく傾けることで食材を取り出す。食材取り出し時には、攪拌容器傾動装置11による傾動を攪拌調理時よりも大きくし、攪拌容器1の上部にあった開口部を低くすることで開口部から食材を取り出し、調理の工程を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明装置の一実施例における攪拌調理時の攪拌装置縦断面図
【図2】本発明装置の一実施例における攪拌装置の一部断面正面図
【図3】従来の攪拌装置における攪拌調理時の攪拌装置縦断面図
【符号の説明】
【0019】
1 攪拌容器
2 攪拌軸
3 攪拌羽根
4 羽根部
5 アーム
6 蒸気ジャケット
7 ドレン排出口
8 蒸気供給ライン
9 ロータリーエンコーダ
10 機構部ボックス
11 攪拌容器傾動装置
12 攪拌軸回転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌する食材を収容する攪拌容器と、前記攪拌容器内で軸回転する攪拌軸と、前記攪拌軸に取り付けた攪拌羽根からなり、攪拌羽根を攪拌容器内で回転することで攪拌容器内に収容した食材を攪拌する攪拌装置であって、攪拌容器の下部には加熱部を設けており、加熱部で加熱しながら攪拌調理を行う攪拌装置において、前記攪拌容器は傾斜することができるようにしておき、攪拌容器を傾斜させた状態で加熱しながら攪拌することを特徴とする傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置において、攪拌容器の傾斜方向と攪拌軸の回転方向を、それぞれ正回転と逆回転の両方可能としておき、攪拌調理の途中で攪拌軸の回転方向と攪拌容器の傾斜方向をそれぞれ反転することができるようにしたことを特徴とする傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の傾斜状態で攪拌調理を行う攪拌装置を用いて攪拌調理を行う場合、攪拌羽根が下向きに回転する側が低くなるように攪拌容器を傾斜させた状態で攪拌調理を行うことを特徴とする攪拌調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−20584(P2006−20584A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202416(P2004−202416)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)
【Fターム(参考)】