像側テレセントリック対物レンズおよびレーザー加工装置
【課題】レーザー光線を対物レンズの光軸に対して平行に照射することができる像側テレセントリック対物レンズおよびその対物レンズを備えたレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】像側テレセントリック対物レンズであって、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、0.9<|F1/F2|<3.5、1.2<|F3/F2|<5.0、1.3<|F/Fa|<2.55の条件を満足する。
【解決手段】像側テレセントリック対物レンズであって、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、0.9<|F1/F2|<3.5、1.2<|F3/F2|<5.0、1.3<|F/Fa|<2.55の条件を満足する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備え半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数のデバイスを積層し、積層されたデバイスに設けられたボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造は、半導体ウエーハにおけるボンディングパッドが設けられた箇所に貫通孔(ビアホール)を形成し、このビアホールにボンディングパッドと接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
上述した半導体ウエーハに設けられるビアホールは、ドリルによって形成されている。しかるに、半導体ウエーハに設けられるビアホールは直径が50〜300μmと小さく、ドリルによる穿孔では生産性が悪いという問題がある。
【0005】
上記問題を解消するために、基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともに該デバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成する加工方法が実用化されている。そして、複数のビアホールを効率よく形成するレーザー加工装置が下記特許文献2に開示されている。下記特許文献2に開示されたレーザー加工装置は、レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線をXY方向に偏向するスキャナーと、該スキャナーによってXY方向に偏向されたレーザー光線を集光してウエーハに照射するf-tanθレンズからなる対物レンズを具備し、対物レンズに対する入射角θが変化しても焦点距離が一定であるとともに対物レンズの光軸に対して略平行に照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−249620号公報
【特許文献2】特開2004−230466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献2に開示されたf-tanθレンズからなる対物レンズを備えたレーザー加工装置は、ウエーハの径が200mmと大径になり入射角θの画角が大きくなると、ウエーハに照射されるレーザー光線が対物レンズの光軸に対して平行でなくなり、ビアホールをボンディングパッドに対して垂直に形成することができない。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、入射角θの画角に依存せず、レーザー光線を対物レンズの光軸に対して平行に照射することができる像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備えたレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、投光側から入射した光の光軸がレンズの光軸と平行に像側に出射される像側テレセントリック対物レンズであって、
投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<|F1/F2|<3.5
1.2<|F3/F2|<5.0
1.3<|F/Fa|<2.55
の条件を満足することを特徴とする像側テレセントリック対物レンズが提供される。
【0010】
上記第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、0.3<f11/f12<7.1の条件を満足するように設定される。
また、開口絞りから第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、L1/F<0.51の条件を満足することが望ましい。
更に、上記第2レンズ群G2は少なくとも5枚の正レンズを有し、上記第3レンズ群G3は少なくとも1枚の負レンズを有している。
【0011】
また、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線の光軸を偏向するスキャナーと、該スキャナーによって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、を具備し、
該集光器は、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<|F1/F2|<3.5
1.2<|F3/F2|<5.0
1.3<|F/Fa|<2.55
の条件を満足する像側テレセントリック対物レンズによって構成されている、
ことを特徴とするレーザー光線照射装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による像側テレセントリック対物レンズは、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズとで構成し、第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。
また、本発明によるレーザー光線照射装置は、上記像側テレセントリック対物レンズによって構成された集光器を備えているので、照射されるパルスレーザー光線が像側テレセントリック対物レンズの中心から周辺まで光軸に対して平行となり、被加工物に対する入射角が垂直となるため、均一な品質で加工孔を形成することができる。従って、被加工物が例えば直径が200mmのウエーハであっても、中心から周辺まで正確で且つスループットの高いレーザー加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図3】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例1の断面図。
【図4】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例2の断面図。
【図5】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例3の断面図。
【図6】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例4の断面図。
【図7】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例5の断面図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例6の断面図。
【図9】図3に示す数値実施例1の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図10】図4に示す数値実施例2の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図11】図5に示す数値実施例3の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図12】図6に示す数値実施例4の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図13】図7に示す数値実施例5の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図14】図8に示す数値実施例6の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図15】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図16】ウエーハとしての半導体ウエーハの平面図。
【図17】図16に示す半導体ウエーハの一部を拡大して示す平面図。
【図18】図16に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
【図19】図16に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標との関係を示す説明図。
【図20】図1に示すレーザー加工装置を用いて図6に示す半導体ウエーハにレーザー加工孔(ビアホール)を穿孔する穿孔工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備えたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示すX軸方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2にX軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示すZ軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。このX軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。このX軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向の位置を検出する。なお、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の移動量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。また、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1のY軸方向移動手段38を具備している。この第1のY軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向移動量即ちY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。このY軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出する。なお、上記第1のY軸方向移動手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。また、上記第1のY軸方向移動手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にチャックテーブル36の保持面に対して垂直なZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2のY軸方向移動手段43を具備している。この第2のY軸方向移動手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段としてのZ軸方向移動手段53を具備している。Z軸方向移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。ケーシング521内には図2に示すようにパルスレーザー光線発振手段6と、パルスレーザー光線発振手段6から発振されパルスレーザー光線の光軸をX軸方向およびY軸方向に偏向するスキャナー7と、該スキャナー7によって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物に照射する像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8とを具備している。
【0026】
上記パルスレーザー光線発振手段6は、パルスレーザー光線発振器61と、これに付設された繰り返し周波数設定手段62とから構成されている。パルスレーザー光線発振器61は、図示の実施形態においてはYVO4レーザーまたはYAGレーザー発振器からなり、シリコン等の被加工物に対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のパルスレーザー光線LBを発振する。繰り返し周波数設定手段62は、パルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線の周波数を設定する。
【0027】
スキャナー7は、図示の実施形態においてはガルバノミラーによって構成され、後述する制御手段によって制御され、パルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動して集光器8に導く。なお、スキャナー7としては、ポリゴンミラーやピエゾミラーを用いることができる。
【0028】
次に、上記像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8について、図3乃至図8を参照して説明する。
図3乃至図8に示す像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8は、それぞれ上記スキャナー7である投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有す第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなっている。第1レンズ群G1は、互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を構成している。第2レンズ群G2は、少なくとも4枚の正レンズによって構成される。第3レンズ群G3は、少なくとも1枚の負レンズによって構成される。なお各レンズは、合成石英によって形成されている。
【0029】
上述したように屈折力を有する第1レンズ群G1と正の屈折力を有す第2レンズ群G2および負の屈折力を有する第3レンズ群G3によって構成された像側テレセントリック対物レンズは、光学系の合成焦点距離をF、第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、第1レンズ群G1の空気レンズG1-3の焦点距離をFa、第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.4 ・・・・・(1)
1.2<|F3/F2│<5.0 ・・・・・(2)
1.3<│F/Fa│<2.55 ・・・・・(3)
の条件を満足することが重要である。
【0030】
また、上記第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の焦点距離をf11、第2の負レンズG1-2の焦点距離をf12としたとき、
0.35<f11/f12<7.1・・・・・(4)
の条件を満足することが望ましい。
更に、開口絞り(スキャナー7)から第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1までの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51 ・・・・・・・・・・(5)
の条件を満足することが望ましい。
【0031】
図3乃至図8に示す像側テレセントリック対物レンズは、それぞれ上述した条件式(1)(2)(3)(4)(5)を満足するように以下に示す数値実施例のように構成されている。なお、数値実施例に記載した記号の意味は次の通りである。
m:スキャナー7である投光側からみた各レンズの面番号
ri:各レンズ面の曲率半径(mm)
di:各レンズの厚みおよび間隔(mm)
n:各レンズの屈折率
【0032】
図3に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例1は次の通りである。
【0033】
図4に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例2は次の通りである。
【0034】
図5に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例3は次の通りである。
【0035】
図6に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例4は次の通りである。
【0036】
図7に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例5は次の通りである。
【0037】
図8に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例6は次の通りである。
【0038】
上記数値実施例1乃至6に示した像側テレセントリック対物レンズの収差曲線図が図9乃至図14に示されている。図9の(a)は数値実施例1の球面収差を示し、図9の(b)は数値実施例1の非点収差を示している。図10の(a)は数値実施例2の球面収差を示し、図10の(b)は数値実施例2の非点収差を示している。図11の(a)は数値実施例3の球面収差を示し、図11の(b)は数値実施例3の非点収差を示している。図12の(a)は数値実施例4の球面収差を示し、図12の(b)は数値実施例4の非点収差を示している。図13の(a)は数値実施例5の球面収差を示し、図13の(b)は数値実施例5の非点収差を示している。図14の(a)は数値実施例6の球面収差を示し、図14の(b)は数値実施例6の非点収差を示している。このように、図示の実施形態における像側テレセントリック対物レンズは、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2とで構成し、第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。
【0039】
ここで、上述した条件式(1)(2)(3)(4)(5)における上限値および下限値の設定について説明する。
上記条件式(1)は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2のレンズ焦点距離の比を規定したものである。
条件式(1)の下限(0.9<│F1/F2│)に近づくと図7に示す数値実施例5のように第1レンズ群G1の負のパワーが強くなる(負の焦点距離が短くなる)。従って、条件式(1)の下限(0.9<│F1/F2│)を超える領域になると、第1レンズ群G1の負のパワーが強すぎるため、公差感度が厳しくなる。
条件式(1)の上限(│F1/F2│<3.5)に近づくと図4に示す数値実施例2のように第1レンズ群G1の負のパワーが弱くなる(負の焦点距離が長くなる)。従って、条件式(1)の上限(│F1/F2│<3.5)を超える領域になると、第1レンズ群G1の負のパワーが弱いため、像面湾曲収差の補正不足となり、収差性能が悪化する。また、この収差性能の悪化を第3レンズ群G3で補正するので、このレンズのパワーが非常に大きくなる。第3レンズ群G3は曲率半径を小さくし大きな湾曲面が必要なため、フランジバックが短くなる。これにより、レーザー加工によるデブリなどの不純物が付着しやすくなる。
【0040】
上記条件式(2)は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3のレンズ焦点距離の比を規定したものである。
条件式(2)の下限(1.2<|F3/F2│)に近づくと図4に示す数値実施例2のように第3レンズ群G3の負のパワーが強くなる(負の焦点距離が短くなる)。従って、条件式(2)の下限(1.2<|F3/F2│)を超える領域になると、第3レンズ群G3の負のパワーが強すぎるため、公差感度が厳しくなる。
条件式(2)の上限(<|F3/F2│<5.0)に近づくと図5に示す数値実施例3のように第3レンズ群G3のフィールドフラットナーとしての役割が小さくなる。従って、条件式(2)の上限(<|F3/F2│<5.0)を超える領域になると、第3レンズ群G3のフィールドフラットナーとしての役割が小さく、像面湾曲収差が増大し、収差性能が悪化する。
【0041】
上記条件式(3)は、光学系の合成焦点距離をFと第1レンズ群G1の空気レンズG1-3の焦点距離Faの比を規定したものである。
条件式(3)の下限(1.3<│F/Fa│)に近づくと図8に示す数値実施例6の収差曲線図(図14)のように収差補正効果が低下する。従って、条件式(3)の下限(1.3<│F/Fa│)を超える領域になると、十分な収差補正効果が得られず、第2レンズ群G2で発生する諸収差の補正が困難となる。
条件式(3)の上限(│F/Fa│<2.55)に近づくと図6に示す数値実施例4のように第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(3)の上限(│F/Fa│<2.55)を超える領域になると、ほとんどパワーのない同心に近い強い湾曲レンズ形状が必要となる。従って、芯出しの難易度を示す所謂Z係数が小さくなりすぎ、加工困難となる。
【0042】
上記条件式(4)は、第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の焦点距離f11と第2の負レンズG1-2の焦点距離f12の比を規定したものである。
条件式(4)の下限(0.3<f11/f12)に近づくと図6に示す数値実施例4のように第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(4)の下限(0.3<f11/f12)を超える領域になると、第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2のパワーがほとんどなく、同心に近いレンズ形状となる。このため、芯出しの難易度を示す所謂Z係数が小さくなりすぎ、加工困難となる。
条件式(4)の上限(f11/f12<7.1)に近づくと図7に示す数値実施例5のように第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(4)の上限(f11/f12<7.1)を超える領域になると、第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の加工が困難となる。更に、下限値と異なる点は、比較的光線が広がった位置に負のパワーの第2の負レンズG1-2が配置されるため、公差感度が厳しくなる。
【0043】
上記条件式(5)は、光学系の合成焦点距離をFに対する開口絞り(スキャナー7)から第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1までの距離L1の比を規定したものである。
この場合、スキャナー7が第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1に近づく程、異なる画角に対して光線が低い位置を透過するため収差補正が容易となる。更に、第1の負レンズG1-1の口径も小さくできる。従って、スキャナー7は配置が許す限り第1の負レンズG1-1に近い方がよい。このため、下限値はない。
上記条件式(5)の上限(L1/F<0.51)を超える領域になると、第1レンズ群G1のパワーを小さくしないと光線がより高い位置を透過するため収差補正が困難となる。従って、できる限り第1レンズ群G1のパワーを小さくする必要があり、像面湾曲収差の補正不足となり、収差性能が悪化する。
【0044】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、ケーシング521の前端部に配設され上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段11を備えている。この撮像手段11は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0045】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図15に示す制御手段20を具備している。制御手段20はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206を備えている。制御手段20の入力インターフェース205には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384および撮像手段11等からの検出信号が入力される。そして、制御手段20の出力インターフェース206からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、パルスレーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段6、スキャナー7等に制御信号を出力する。
【0046】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図16にはレーザー加工される被加工物としての半導体ウエーハ30の平面図が示されている。図16に示す半導体ウエーハ30は、例えば厚みが100μmのシリコン基板300の表面300aに格子状に配列された複数の分割予定ライン301によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス302がそれぞれ形成されている。この各デバイス302は、全て同一の構成をしている。デバイス302の表面にはそれぞれ図17に示すように複数のボンディングパッド303(303a〜303j)が形成されている。このボンディングパッド303(303a〜303j)は、図示の実施形態においてはアルミニウムによって形成されている。なお、図示の実施形態においては、303aと303f、303bと303g、303cと303h、303dと303i、303eと303jは、X方向位置が同一である。このように各デバイス302に形成されたボンディングパッド303(303a〜303j)のX,Y座標値は、その設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。また、半導体ウエーハ30の中心S(図16参照)のX,Y座標値の設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。
【0047】
上述したレーザー加工装置を用い、半導体ウエーハ30に形成された各デバイス302のボンディングパッド303(303a〜303j)部にレーザー加工孔(ビアホール)を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。
半導体ウエーハ30は、図18に示すように環状のフレーム40に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ50に表面300aを貼着する。従って、半導体ウエーハ30は、裏面300bが上側となる。このようにして環状のフレーム40に保護テープ50を介して支持された半導体ウエーハ30は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープ50側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ30は、保護テープ50を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。従って、半導体ウエーハ30は、裏面300bを上側にして保持される。また、環状のフレーム40は、クランプ362によって固定される。
【0048】
上述したように半導体ウエーハ30を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段11の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段11の直下に位置付けられると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ30は、図9に示す座標位置に位置付けられた状態となる。この状態で、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ30に形成されている格子状の分割予定ライン301がX軸方向とY軸方向に平行に配設されているか否かのアライメント工程を実施する。即ち、撮像手段11によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ30を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行してアライメント作業を行う。このとき、半導体ウエーハ30の分割予定ライン301が形成されている表面300aは下側に位置しているが、撮像手段11が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、半導体ウエーハ30の裏面300bから透かして分割予定ライン301を撮像することができる。このようにしてアライメント工程が実施されたチャックテーブル36上の半導体ウエーハ30は、図19に示す座標値に位置付けられたことになる。
【0049】
次に、半導体ウエーハ30の各デバイス302に形成された各ボンディングパッド303(303a〜303j)部にレーザー加工孔(ビアホール)を穿孔する穿孔工程を実施する。穿孔工程は、先ずX軸方向移動手段37および第1のY軸方向移動手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている図19に示す半導体ウエーハ30の中心Sの座標値を、図20の(a)で示すようにレーザー光線照射手段52の集光器8の直下に位置付ける。そして、制御手段20は、パルスレーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段6を作動するとともにスキャナー7を制御し、上述した像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8から上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている各デバイス302に形成された各ボンディングパッド303(303a〜303j)部の座標値にパルスレーザー光線を照射する。そして、各ボンディングパッド303(303a〜303j)部に例えば100ショットのパルスレーザー光線を照射する。この結果、図20の(b)で示すように半導体ウエーハ30に形成されたデバイス302設けられている全てのボンディングパッド303a〜303j部(加工位置)に1回の穿孔工程において加工孔304を形成することができる。
【0050】
なお、上記穿孔工程における加工条件は、例えば下記の通り設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4
波長 :355nm
平均出力 :4W
繰り返し周波数 :50〜100kHz
集光スポット径 :φ50μm
【0051】
以上のように、上述した実施形態における像側テレセントリック対物レンズは、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2とで構成し、第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。図3に示す像側テレセントリック対物レンズにおいては、光学系の合成焦点距離Fが307.7mm、画角が21.0度において、ペッツバール半径は約110000mm、テレセントリック角度(被加工物の表面に対する垂線との差の角度)は±0.1度以内に収めることができる。これにより、照射されるパルスレーザー光線が像側テレセントリック対物レンズの中心から周辺まで光軸に対して平行となり、被加工物である半導体ウエーハ30に対する入射角が垂直となるため、均一な品質で加工孔304を形成することができる。従って、直径が200mmの半導体ウエーハであっても、中心から周辺まで正確で且つスループットの高いレーザー加工を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:X軸方向移動手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1のY軸方向移動手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
43:第2のY軸方向移動手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
53:Z軸方向移動手段
6:パルスレーザー光線発振手段
7:スキャナー
8:集光器
11:撮像手段
20:制御手段
30:半導体ウエーハ
301:分割予定ライン
302:デバイス
303:ボンディングパッド
304:加工孔
40:環状のフレーム
50:保護テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備え半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数のデバイスを積層し、積層されたデバイスに設けられたボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造は、半導体ウエーハにおけるボンディングパッドが設けられた箇所に貫通孔(ビアホール)を形成し、このビアホールにボンディングパッドと接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
上述した半導体ウエーハに設けられるビアホールは、ドリルによって形成されている。しかるに、半導体ウエーハに設けられるビアホールは直径が50〜300μmと小さく、ドリルによる穿孔では生産性が悪いという問題がある。
【0005】
上記問題を解消するために、基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともに該デバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成する加工方法が実用化されている。そして、複数のビアホールを効率よく形成するレーザー加工装置が下記特許文献2に開示されている。下記特許文献2に開示されたレーザー加工装置は、レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線をXY方向に偏向するスキャナーと、該スキャナーによってXY方向に偏向されたレーザー光線を集光してウエーハに照射するf-tanθレンズからなる対物レンズを具備し、対物レンズに対する入射角θが変化しても焦点距離が一定であるとともに対物レンズの光軸に対して略平行に照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−249620号公報
【特許文献2】特開2004−230466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献2に開示されたf-tanθレンズからなる対物レンズを備えたレーザー加工装置は、ウエーハの径が200mmと大径になり入射角θの画角が大きくなると、ウエーハに照射されるレーザー光線が対物レンズの光軸に対して平行でなくなり、ビアホールをボンディングパッドに対して垂直に形成することができない。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、入射角θの画角に依存せず、レーザー光線を対物レンズの光軸に対して平行に照射することができる像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備えたレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、投光側から入射した光の光軸がレンズの光軸と平行に像側に出射される像側テレセントリック対物レンズであって、
投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<|F1/F2|<3.5
1.2<|F3/F2|<5.0
1.3<|F/Fa|<2.55
の条件を満足することを特徴とする像側テレセントリック対物レンズが提供される。
【0010】
上記第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、0.3<f11/f12<7.1の条件を満足するように設定される。
また、開口絞りから第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、L1/F<0.51の条件を満足することが望ましい。
更に、上記第2レンズ群G2は少なくとも5枚の正レンズを有し、上記第3レンズ群G3は少なくとも1枚の負レンズを有している。
【0011】
また、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線の光軸を偏向するスキャナーと、該スキャナーによって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、を具備し、
該集光器は、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<|F1/F2|<3.5
1.2<|F3/F2|<5.0
1.3<|F/Fa|<2.55
の条件を満足する像側テレセントリック対物レンズによって構成されている、
ことを特徴とするレーザー光線照射装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による像側テレセントリック対物レンズは、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズとで構成し、第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。
また、本発明によるレーザー光線照射装置は、上記像側テレセントリック対物レンズによって構成された集光器を備えているので、照射されるパルスレーザー光線が像側テレセントリック対物レンズの中心から周辺まで光軸に対して平行となり、被加工物に対する入射角が垂直となるため、均一な品質で加工孔を形成することができる。従って、被加工物が例えば直径が200mmのウエーハであっても、中心から周辺まで正確で且つスループットの高いレーザー加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図3】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例1の断面図。
【図4】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例2の断面図。
【図5】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例3の断面図。
【図6】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例4の断面図。
【図7】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例5の断面図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置に装備される集光器に用いられる本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズの数値実施例6の断面図。
【図9】図3に示す数値実施例1の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図10】図4に示す数値実施例2の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図11】図5に示す数値実施例3の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図12】図6に示す数値実施例4の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図13】図7に示す数値実施例5の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図14】図8に示す数値実施例6の球面収差および非点収差を示す収差曲線図。
【図15】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図16】ウエーハとしての半導体ウエーハの平面図。
【図17】図16に示す半導体ウエーハの一部を拡大して示す平面図。
【図18】図16に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
【図19】図16に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標との関係を示す説明図。
【図20】図1に示すレーザー加工装置を用いて図6に示す半導体ウエーハにレーザー加工孔(ビアホール)を穿孔する穿孔工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された像側テレセントリック対物レンズおよびその像側テレセントリック対物レンズを備えたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示すX軸方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2にX軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示すZ軸方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。このX軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。このX軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向の位置を検出する。なお、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の移動量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。また、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向移動量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1のY軸方向移動手段38を具備している。この第1のY軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向移動量即ちY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。このY軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出する。なお、上記第1のY軸方向移動手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。また、上記第1のY軸方向移動手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向移動量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にチャックテーブル36の保持面に対して垂直なZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2のY軸方向移動手段43を具備している。この第2のY軸方向移動手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段としてのZ軸方向移動手段53を具備している。Z軸方向移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。ケーシング521内には図2に示すようにパルスレーザー光線発振手段6と、パルスレーザー光線発振手段6から発振されパルスレーザー光線の光軸をX軸方向およびY軸方向に偏向するスキャナー7と、該スキャナー7によって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物に照射する像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8とを具備している。
【0026】
上記パルスレーザー光線発振手段6は、パルスレーザー光線発振器61と、これに付設された繰り返し周波数設定手段62とから構成されている。パルスレーザー光線発振器61は、図示の実施形態においてはYVO4レーザーまたはYAGレーザー発振器からなり、シリコン等の被加工物に対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のパルスレーザー光線LBを発振する。繰り返し周波数設定手段62は、パルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線の周波数を設定する。
【0027】
スキャナー7は、図示の実施形態においてはガルバノミラーによって構成され、後述する制御手段によって制御され、パルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動して集光器8に導く。なお、スキャナー7としては、ポリゴンミラーやピエゾミラーを用いることができる。
【0028】
次に、上記像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8について、図3乃至図8を参照して説明する。
図3乃至図8に示す像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8は、それぞれ上記スキャナー7である投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有す第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなっている。第1レンズ群G1は、互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を構成している。第2レンズ群G2は、少なくとも4枚の正レンズによって構成される。第3レンズ群G3は、少なくとも1枚の負レンズによって構成される。なお各レンズは、合成石英によって形成されている。
【0029】
上述したように屈折力を有する第1レンズ群G1と正の屈折力を有す第2レンズ群G2および負の屈折力を有する第3レンズ群G3によって構成された像側テレセントリック対物レンズは、光学系の合成焦点距離をF、第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、第1レンズ群G1の空気レンズG1-3の焦点距離をFa、第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.4 ・・・・・(1)
1.2<|F3/F2│<5.0 ・・・・・(2)
1.3<│F/Fa│<2.55 ・・・・・(3)
の条件を満足することが重要である。
【0030】
また、上記第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の焦点距離をf11、第2の負レンズG1-2の焦点距離をf12としたとき、
0.35<f11/f12<7.1・・・・・(4)
の条件を満足することが望ましい。
更に、開口絞り(スキャナー7)から第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1までの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51 ・・・・・・・・・・(5)
の条件を満足することが望ましい。
【0031】
図3乃至図8に示す像側テレセントリック対物レンズは、それぞれ上述した条件式(1)(2)(3)(4)(5)を満足するように以下に示す数値実施例のように構成されている。なお、数値実施例に記載した記号の意味は次の通りである。
m:スキャナー7である投光側からみた各レンズの面番号
ri:各レンズ面の曲率半径(mm)
di:各レンズの厚みおよび間隔(mm)
n:各レンズの屈折率
【0032】
図3に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例1は次の通りである。
【0033】
図4に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例2は次の通りである。
【0034】
図5に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例3は次の通りである。
【0035】
図6に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例4は次の通りである。
【0036】
図7に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例5は次の通りである。
【0037】
図8に示す像側テレセントリック対物レンズの数値実施例6は次の通りである。
【0038】
上記数値実施例1乃至6に示した像側テレセントリック対物レンズの収差曲線図が図9乃至図14に示されている。図9の(a)は数値実施例1の球面収差を示し、図9の(b)は数値実施例1の非点収差を示している。図10の(a)は数値実施例2の球面収差を示し、図10の(b)は数値実施例2の非点収差を示している。図11の(a)は数値実施例3の球面収差を示し、図11の(b)は数値実施例3の非点収差を示している。図12の(a)は数値実施例4の球面収差を示し、図12の(b)は数値実施例4の非点収差を示している。図13の(a)は数値実施例5の球面収差を示し、図13の(b)は数値実施例5の非点収差を示している。図14の(a)は数値実施例6の球面収差を示し、図14の(b)は数値実施例6の非点収差を示している。このように、図示の実施形態における像側テレセントリック対物レンズは、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2とで構成し、第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。
【0039】
ここで、上述した条件式(1)(2)(3)(4)(5)における上限値および下限値の設定について説明する。
上記条件式(1)は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2のレンズ焦点距離の比を規定したものである。
条件式(1)の下限(0.9<│F1/F2│)に近づくと図7に示す数値実施例5のように第1レンズ群G1の負のパワーが強くなる(負の焦点距離が短くなる)。従って、条件式(1)の下限(0.9<│F1/F2│)を超える領域になると、第1レンズ群G1の負のパワーが強すぎるため、公差感度が厳しくなる。
条件式(1)の上限(│F1/F2│<3.5)に近づくと図4に示す数値実施例2のように第1レンズ群G1の負のパワーが弱くなる(負の焦点距離が長くなる)。従って、条件式(1)の上限(│F1/F2│<3.5)を超える領域になると、第1レンズ群G1の負のパワーが弱いため、像面湾曲収差の補正不足となり、収差性能が悪化する。また、この収差性能の悪化を第3レンズ群G3で補正するので、このレンズのパワーが非常に大きくなる。第3レンズ群G3は曲率半径を小さくし大きな湾曲面が必要なため、フランジバックが短くなる。これにより、レーザー加工によるデブリなどの不純物が付着しやすくなる。
【0040】
上記条件式(2)は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3のレンズ焦点距離の比を規定したものである。
条件式(2)の下限(1.2<|F3/F2│)に近づくと図4に示す数値実施例2のように第3レンズ群G3の負のパワーが強くなる(負の焦点距離が短くなる)。従って、条件式(2)の下限(1.2<|F3/F2│)を超える領域になると、第3レンズ群G3の負のパワーが強すぎるため、公差感度が厳しくなる。
条件式(2)の上限(<|F3/F2│<5.0)に近づくと図5に示す数値実施例3のように第3レンズ群G3のフィールドフラットナーとしての役割が小さくなる。従って、条件式(2)の上限(<|F3/F2│<5.0)を超える領域になると、第3レンズ群G3のフィールドフラットナーとしての役割が小さく、像面湾曲収差が増大し、収差性能が悪化する。
【0041】
上記条件式(3)は、光学系の合成焦点距離をFと第1レンズ群G1の空気レンズG1-3の焦点距離Faの比を規定したものである。
条件式(3)の下限(1.3<│F/Fa│)に近づくと図8に示す数値実施例6の収差曲線図(図14)のように収差補正効果が低下する。従って、条件式(3)の下限(1.3<│F/Fa│)を超える領域になると、十分な収差補正効果が得られず、第2レンズ群G2で発生する諸収差の補正が困難となる。
条件式(3)の上限(│F/Fa│<2.55)に近づくと図6に示す数値実施例4のように第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(3)の上限(│F/Fa│<2.55)を超える領域になると、ほとんどパワーのない同心に近い強い湾曲レンズ形状が必要となる。従って、芯出しの難易度を示す所謂Z係数が小さくなりすぎ、加工困難となる。
【0042】
上記条件式(4)は、第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の焦点距離f11と第2の負レンズG1-2の焦点距離f12の比を規定したものである。
条件式(4)の下限(0.3<f11/f12)に近づくと図6に示す数値実施例4のように第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(4)の下限(0.3<f11/f12)を超える領域になると、第1レンズ群G1の第2の負レンズG1-2のパワーがほとんどなく、同心に近いレンズ形状となる。このため、芯出しの難易度を示す所謂Z係数が小さくなりすぎ、加工困難となる。
条件式(4)の上限(f11/f12<7.1)に近づくと図7に示す数値実施例5のように第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1が同心に近い強い湾曲レンズ形状となる。従って、条件式(4)の上限(f11/f12<7.1)を超える領域になると、第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1の加工が困難となる。更に、下限値と異なる点は、比較的光線が広がった位置に負のパワーの第2の負レンズG1-2が配置されるため、公差感度が厳しくなる。
【0043】
上記条件式(5)は、光学系の合成焦点距離をFに対する開口絞り(スキャナー7)から第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1までの距離L1の比を規定したものである。
この場合、スキャナー7が第1レンズ群G1の第1の負レンズG1-1に近づく程、異なる画角に対して光線が低い位置を透過するため収差補正が容易となる。更に、第1の負レンズG1-1の口径も小さくできる。従って、スキャナー7は配置が許す限り第1の負レンズG1-1に近い方がよい。このため、下限値はない。
上記条件式(5)の上限(L1/F<0.51)を超える領域になると、第1レンズ群G1のパワーを小さくしないと光線がより高い位置を透過するため収差補正が困難となる。従って、できる限り第1レンズ群G1のパワーを小さくする必要があり、像面湾曲収差の補正不足となり、収差性能が悪化する。
【0044】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、ケーシング521の前端部に配設され上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段11を備えている。この撮像手段11は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0045】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図15に示す制御手段20を具備している。制御手段20はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206を備えている。制御手段20の入力インターフェース205には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384および撮像手段11等からの検出信号が入力される。そして、制御手段20の出力インターフェース206からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、パルスレーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段6、スキャナー7等に制御信号を出力する。
【0046】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図16にはレーザー加工される被加工物としての半導体ウエーハ30の平面図が示されている。図16に示す半導体ウエーハ30は、例えば厚みが100μmのシリコン基板300の表面300aに格子状に配列された複数の分割予定ライン301によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス302がそれぞれ形成されている。この各デバイス302は、全て同一の構成をしている。デバイス302の表面にはそれぞれ図17に示すように複数のボンディングパッド303(303a〜303j)が形成されている。このボンディングパッド303(303a〜303j)は、図示の実施形態においてはアルミニウムによって形成されている。なお、図示の実施形態においては、303aと303f、303bと303g、303cと303h、303dと303i、303eと303jは、X方向位置が同一である。このように各デバイス302に形成されたボンディングパッド303(303a〜303j)のX,Y座標値は、その設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。また、半導体ウエーハ30の中心S(図16参照)のX,Y座標値の設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。
【0047】
上述したレーザー加工装置を用い、半導体ウエーハ30に形成された各デバイス302のボンディングパッド303(303a〜303j)部にレーザー加工孔(ビアホール)を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。
半導体ウエーハ30は、図18に示すように環状のフレーム40に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ50に表面300aを貼着する。従って、半導体ウエーハ30は、裏面300bが上側となる。このようにして環状のフレーム40に保護テープ50を介して支持された半導体ウエーハ30は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープ50側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ30は、保護テープ50を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。従って、半導体ウエーハ30は、裏面300bを上側にして保持される。また、環状のフレーム40は、クランプ362によって固定される。
【0048】
上述したように半導体ウエーハ30を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段11の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段11の直下に位置付けられると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ30は、図9に示す座標位置に位置付けられた状態となる。この状態で、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ30に形成されている格子状の分割予定ライン301がX軸方向とY軸方向に平行に配設されているか否かのアライメント工程を実施する。即ち、撮像手段11によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ30を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行してアライメント作業を行う。このとき、半導体ウエーハ30の分割予定ライン301が形成されている表面300aは下側に位置しているが、撮像手段11が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、半導体ウエーハ30の裏面300bから透かして分割予定ライン301を撮像することができる。このようにしてアライメント工程が実施されたチャックテーブル36上の半導体ウエーハ30は、図19に示す座標値に位置付けられたことになる。
【0049】
次に、半導体ウエーハ30の各デバイス302に形成された各ボンディングパッド303(303a〜303j)部にレーザー加工孔(ビアホール)を穿孔する穿孔工程を実施する。穿孔工程は、先ずX軸方向移動手段37および第1のY軸方向移動手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている図19に示す半導体ウエーハ30の中心Sの座標値を、図20の(a)で示すようにレーザー光線照射手段52の集光器8の直下に位置付ける。そして、制御手段20は、パルスレーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段6を作動するとともにスキャナー7を制御し、上述した像側テレセントリック対物レンズで構成された集光器8から上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている各デバイス302に形成された各ボンディングパッド303(303a〜303j)部の座標値にパルスレーザー光線を照射する。そして、各ボンディングパッド303(303a〜303j)部に例えば100ショットのパルスレーザー光線を照射する。この結果、図20の(b)で示すように半導体ウエーハ30に形成されたデバイス302設けられている全てのボンディングパッド303a〜303j部(加工位置)に1回の穿孔工程において加工孔304を形成することができる。
【0050】
なお、上記穿孔工程における加工条件は、例えば下記の通り設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4
波長 :355nm
平均出力 :4W
繰り返し周波数 :50〜100kHz
集光スポット径 :φ50μm
【0051】
以上のように、上述した実施形態における像側テレセントリック対物レンズは、第1レンズ群G1を互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2とで構成し、第1の負レンズG1-1と第2の負レンズG1-2により正の空気レンズG1-3を形成することで、光軸上で発生する球面収差、光軸外で発生する非点収差を効果的に補正し、且つ像側テレセントリックを実現している。図3に示す像側テレセントリック対物レンズにおいては、光学系の合成焦点距離Fが307.7mm、画角が21.0度において、ペッツバール半径は約110000mm、テレセントリック角度(被加工物の表面に対する垂線との差の角度)は±0.1度以内に収めることができる。これにより、照射されるパルスレーザー光線が像側テレセントリック対物レンズの中心から周辺まで光軸に対して平行となり、被加工物である半導体ウエーハ30に対する入射角が垂直となるため、均一な品質で加工孔304を形成することができる。従って、直径が200mmの半導体ウエーハであっても、中心から周辺まで正確で且つスループットの高いレーザー加工を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:X軸方向移動手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1のY軸方向移動手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
43:第2のY軸方向移動手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
53:Z軸方向移動手段
6:パルスレーザー光線発振手段
7:スキャナー
8:集光器
11:撮像手段
20:制御手段
30:半導体ウエーハ
301:分割予定ライン
302:デバイス
303:ボンディングパッド
304:加工孔
40:環状のフレーム
50:保護テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光側から入射した光の光軸がレンズの光軸と平行に像側に出射される像側テレセントリック対物レンズであって、
投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.5
1.2<│F3/F2│<5.0
1.3<│F/Fa│<2.55
の条件を満足することを特徴とする像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項2】
該第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、
0.3<f11/f12<7.1
の条件を満足する請求項1記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項3】
開口絞りから該第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51
の条件を満足する請求項1又は2記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項4】
該第2レンズ群G2は少なくとも5枚の正レンズを有し、該第3レンズ群G3は少なくとも1枚の負レンズを有している、請求項1又は記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項5】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線の光軸を偏向するスキャナーと、該スキャナーによって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、を具備し、
該集光器は、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.5
1.2<│F3/F2│<5.0
1.3<│F/Fa│<2.55
の条件を満足する像側テレセントリック対物レンズによって構成されている、
ことを特徴とするレーザー光線照射装置。
【請求項6】
該第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、
0.3<f11/f12<7.1
の条件を満足する請求項5記載のレーザー光線照射装置。
【請求項7】
該スキャナーを開口絞りとして該第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51
の条件を満足する請求項5又は6記載のレーザー光線照射装置。
【請求項1】
投光側から入射した光の光軸がレンズの光軸と平行に像側に出射される像側テレセントリック対物レンズであって、
投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.5
1.2<│F3/F2│<5.0
1.3<│F/Fa│<2.55
の条件を満足することを特徴とする像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項2】
該第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、
0.3<f11/f12<7.1
の条件を満足する請求項1記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項3】
開口絞りから該第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51
の条件を満足する請求項1又は2記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項4】
該第2レンズ群G2は少なくとも5枚の正レンズを有し、該第3レンズ群G3は少なくとも1枚の負レンズを有している、請求項1又は記載の像側テレセントリック対物レンズ。
【請求項5】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振器と、該レーザー光線発振器によって発振されたレーザー光線の光軸を偏向するスキャナーと、該スキャナーによって光軸が偏向されたレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、を具備し、
該集光器は、投光側から順次配設される負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを具備し、該第1レンズ群G1は互いに対向する面が凹面を有する第1の負レンズと第2の負レンズにより正の空気レンズを構成しており、光学系の合成焦点距離をF、該第1レンズ群G1の合成焦点距離をF1、該第1レンズ群G1の空気レンズの焦点距離をFa、該第2レンズ群G2の合成焦点距離をF2、該第3レンズ群G3の合成焦点距離をF3としたとき、
0.9<│F1/F2│<3.5
1.2<│F3/F2│<5.0
1.3<│F/Fa│<2.55
の条件を満足する像側テレセントリック対物レンズによって構成されている、
ことを特徴とするレーザー光線照射装置。
【請求項6】
該第1レンズ群G1の第1の負レンズの焦点距離をf11、第2の負レンズの焦点距離をf12としたとき、
0.3<f11/f12<7.1
の条件を満足する請求項5記載のレーザー光線照射装置。
【請求項7】
該スキャナーを開口絞りとして該第1レンズ群G1の第1の負レンズまでの距離をL1としたとき、
L1/F<0.51
の条件を満足する請求項5又は6記載のレーザー光線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−3317(P2013−3317A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133592(P2011−133592)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]