説明

充填された、スピンコート可能な材料で被覆された半導体ウエハー

本発明は、活性面および活性面と反対側の裏面を有する半導体ウエハーであって、前記裏面が、充填された、スピンコート可能なコーティングで被覆されており、前記コーティングは樹脂、および平均粒子径が2μmより大きく、単一ピークの粒度分布を有する事を特徴とする球状充填剤を含む。別の態様において、本発明は、スピンコート可能でBステージを行うことの可能な、1.2以下のチクソトロピー指数を有するコーティングの製造方法である。第3の態様において、本発明は、被覆された半導体ウエハーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填された、スピンコート可能なコーティングを不活性面または裏面に被覆した、半導体ウエハーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体実装における最近の進歩は、2以上の半導体ダイが一つの半導体パッケージ内に互いに重なり合って取り付けられている「スタックド(または積層)」パッケージの発展をもたらした。このダイの積層によって、小さな設置面積に関する機能性の増加が可能となり、それによって半導体パッケージ全体の小型化が許容される。ワイヤーボンディング、モールド成形およびはんだリフロー等の製造工程の間、並びに最終使用の間のパッケージの一体性(integrity)を確保するために、通常、2つの半導体ダイの間に接着剤ペーストまたはフィルムを使用する。
【0003】
積層形状にパッケージを組み立てる、種々の方法が存在する。各々のダイは複数の電気端子を含み、前記電気端子から、金属(通常は金)線が基板電気端子へ延びる。スタックドパッケージにおいて、一のダイからのワイヤー接合は、隣接するダイと接触して損傷を与えることを回避しなければならない。更に、ダイを、基板と及び/又は互いに接続させるために用いられる接着剤は、ワイヤーボンディングパッドに侵入してはならない。パッケージは通常、より厳格な許容範囲へと移行するので、特にスタックドパッケージにおいては、接着剤フィレット(通常、接合されたダイの端から突き出ている)を非常に厳格に制御する必要性がある。
【0004】
接着剤の流動を制御するために用いられてきた方法の一つは、ペースト状の接着剤の代わりにテープまたはフィルムを用いることである。この方法において、テープ状またはフィルム状の接着剤を、基板またはダイの1つに付着させる。ダイに付着させる場合、接着剤フィルムをまずウエハーに取り付けて、その後前記ウエハーをダイへとシンギュレート(または個片化)することが可能であり、または前もってシンギュレートされたダイに接着剤フィルムを直接付着させることが可能である。その後、ダイをその基板に取り付け、熱および圧力を用いて接合させる。このことにより、ダイ周囲の周りのフィレット形成が最少となる、スタックドパッケージのために必要な流動特性が提供される。しかし、テープおよびフィルムは、常套のペースト状接着剤と比較して非常に高価であるので、ウエハーに適用可能であり、更なる処理を可能にするために部分的に硬化または乾燥させること(Bステージを行うこと)が可能である、ペースト型又は液体型の接着剤を用いることが好ましい。
【0005】
ウエハーをコーティングする公知の方法の一つは、スピンコートである。この方法は、速さに利点を有し、極少量の充填剤(通常10wt%未満)を含有する接着剤を用いてうまく利用されてきた。しかし、応力の減少、熱膨張率または熱膨張係数の制御、吸湿(または水分吸収)の減少、結合力の向上による材料の強化、電気および/または熱伝導性、揮発性の減少、および流動の制御を含む多くの目的のためには、充填剤の充填量がより多いことが望ましい。これらの機能に有用であるにもかかわらず、充填剤の高充填量は、コーティング厚さの均一性の減少を引き起こし得、それによって、ウエハーの中心において、外縁と比較してより厚いコーティングがもたらされる。コーティング厚さにおけるこの均一性の欠如は、ダイシングおよびダイ・アタッチ(またはダイの取り付け)を含む現行の後続の処理工程に望ましくない。
【0006】
本発明は、充填された、スピンコート可能な材料であってコーティング厚さの均一性が良好である材料で被覆された半導体ウエハーを提供することによって、上述の課題に対する解を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、活性面および活性面と反対側の裏面を有する半導体ウエハー、並びにウエハーの裏面に施されたコーティングを含む半導体ウエハーであり、前記コーティングは(a)樹脂系、および(b)平均粒子径が2μmより大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する球状充填剤を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、(a)(i)固体エポキシ樹脂および(ii)単官能性アクリレート単量体、有機溶媒、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される液体を含む樹脂系を供給すること、ならびに(b)平均粒子径が2μmよりも大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する球状充填剤を10〜30wt%樹脂に加えることを含む、1.2またはそれより小さいチクソトロピー指数を有する、スピンコート可能な、Bステージを行うことの可能なコーティングの製造方法である。
【0009】
別の態様において、本発明は、活性面および活性面と反対側の裏面を有する、被覆された半導体ウエハーの製造方法であって、(a)(i)固体エポキシ樹脂および(ii)単官能性アクリレート単量体、有機溶媒、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される液体、並びに(iii)平均粒子径が2μmより大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する10〜30wt%の球状充填剤を含むコーティング組成物を提供すること;(b)ウエハーの裏面にコーティング組成物をスピンコートすること;並びに(c)コーティングにBステージを行うことを含む製造方法である。
【0010】
[定義]
本明細書で用いる場合において、用語「アルキル」は、メチル(「Me」)、エチル(「Et」)、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等の、分枝または非分枝の、1〜24の炭素原子の飽和炭化水素基を示す。
【0011】
本明細書で用いる場合において、化合物、生成物、または組成物の「有効な量」という用語は、所望の結果を提供するために十分な、化合物、生成物、または組成物の量を意味する。以下に指摘するように、必要とされる正確な量は、用いる個々の化合物、生成物、または組成物、その投入方法等に応じて、非常に様々であるだろう。従って、正確な量を特定することは、必ずしも可能とは限らない;しかし、有効な量は、当業者が定型的な実験のみを用いて決定できる。
【0012】
本明細書で用いる場合において、用語「適切な(または適した)」は、上述の目的のために本明細書で提供するような、化合物、生成物、または組成物と適合する部分を示す。上述の目的に対する適合可能性は、当業者が定型的な実験のみを用いて決定できる。
【0013】
本明細書で用いる場合において、用語「置換された」は、取り除かれ、別の部分で置き換えられた水素原子または他の原子を有する炭素または適切なヘテロ原子を示すために通常用いる。さらに、用語「置換された」が、本発明の基礎を成す化合物、生成物、または組成物の基本的有用性および新規の有用性を変化させない置換を指すことも意図している。
【0014】
本明細書で用いる場合において、用語「Bステージを行うこと」(およびその変形)は、熱または照射によって材料を処理し、その結果、材料を溶媒中に溶解若しくは分散する場合には、材料の部分的硬化を伴って若しくは伴わずに溶媒を蒸発させ、または材料が溶媒を有しないニートである場合には、材料を部分的に硬化させて粘着性のある状態若しくはより固くなった状態にすることを指すものとして用いる。材料が流動可能な接着剤である場合、Bステージを行うことは、完全な硬化を行うことなく極めて小さい流動を与え、その結果、あるものを別のものと接合させるために接着剤を用いた後に、追加の硬化を行うことができる。流動の減少は、溶媒の蒸発、樹脂若しくは高分子、または両方の部分的発達または硬化によって達成され得る。
【0015】
本明細書で用いる場合において、用語「硬化剤」は、組成物の硬化を開始させ、伝達し、または促進する材料または材料の組み合わせのいずれかを指すものとして用い、前記硬化剤には、促進剤、触媒、開始剤、および硬化促進剤(hardener)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0016】
本明細書で用いる場合において、「粒子寸法」は、粒子の最も大きい寸法を指すものとして用いる。例えば、粒子が球状の場合、粒子寸法は粒子径に相当し、粒子がフレークである場合、粒子寸法はフレークの長さである。
【0017】
本明細書で用いる場合において、用語「チクソトロピー指数」は、高剪断粘度(5.0rpmにおいて試験される)に対する低剪断粘度(0.5rpmにおいて試験される)の割合を指すものとして用いる。特に明記しない限り、全ての試験はコーンプレート型スピンドル粘度計で行った。
【発明を実施するための形態】
【0018】
半導体ウエハーは、個別の工業的用途に必要とされるような、いずれの種類、寸法、または厚さであってもよい。
【0019】
コーティングに用いるために適した樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であり得、スピンコート可能な、即ち、1.2以下のチクソトロピー指数および5.0rpmにおいて3000〜10000cPの間の粘度を有する、単量体、重合体、オリゴマー、若しくはプレポリマー、または溶媒に溶解させたそれらの材料のいずれかである。例えば、樹脂にはエポキシ、アクリレート、ビニルエーテル、メタクリレート、マレイミド、ニトリルブチルゴム、ポリエステル、ポリ(ブタジエン)、シリコーン処理オレフィン、シリコーン、スチレン、およびシアン酸エステル、ポリオレフィン、またはそれらの2またはそれ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。チクソトロピー指数は、高剪断粘度(5.0rpmにて試験される)に対する低剪断粘度(0.5rpmにて試験される)の割合として定義される。大量生産のための好ましい粘度は5.0rpmにおいて3000〜10000cPの間であるが、ウエハーを高速でスピンさせることによって、より高粘度の配合物を適用することが可能である。
【0020】
上述の基準を満たすいずれの樹脂系をスピンコート可能な樹脂に用いてもよいが、好ましい態様において、樹脂系は(i)固体エポキシ樹脂、(ii)硬化剤、および(iii)単官能性アクリレート単量体および有機溶媒から成る群から選択される液体を含む。この組成は、接着剤をウエハー上に被覆した後に、それにBステージを行う場合に特に望ましい。Bステージを行うことには、保存、ダイシング、ダイのピックアップ、ダイの結合等の追加の処理工程の前に、被覆されたウエハーを熱に曝して(通常90℃〜125℃で15〜30分間)溶媒を蒸発させ及び/又は接着剤を部分的に硬化させることが含まれる。
【0021】
適切な固体エポキシ樹脂には、クレゾールノボラック型エポキシ、フェノールノボラック、およびビス−A型エポキシが含まれるが、これらに限定されるものではない。この態様において、固体エポキシ樹脂はコーティングの15〜30wt%を占める。
【0022】
適切なマレイミド樹脂の例には、大日本インキ化学工業から商業的に入手可能なものが含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適切なマレイミド樹脂は、以下のものから成る群から選択される:
【0023】
【化1】

ここでC36は直鎖または分枝鎖の、(環状部分を有する又は有しない)36個の−CH−の部分である;
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

ここでnは1〜5である。
【0031】
適切なアクリル樹脂の例には、共栄社化学株式会社から入手可能なブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.9−ノナンジオールジ(メタ)クリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリプロポキシレート(メタ)アクリレート、およびポリペントキシレートテトラヒドロフルフリルアクリレート;Sartomer Company,Incから入手可能なポリブタジエンウレタンジメタクリレート(CN302、NTX6513)およびポリブタジエンジメタクリレート(CN301、NTX6039、PRO6270);根上工業株式会社から入手可能なポリカーボネートウレタンジアクリレート(アートレジンUN9200A);Radcure Specialities,Inc.から入手可能なアクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー(Ebecryl230、264、265、270、284、4830、4833、4834、4835、4866、4881、4883、8402、8800−20R、8803、8804);Radcure Specialities,Inc.から入手可能なポリエステルアクリレートオリゴマー(Ebecryl657、770、810、830、1657、1810、1830);およびSartomer Company,Incから入手可能なエポキシアクリレート樹脂(CN104、111、112、115、116、117、118、119、120、124、136)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一の態様において、アクリル樹脂は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルアクリレート、アクリレート官能性を有するポリ(ブタジエン)、およびメタクリレート官能性を有するポリ(ブタジエン)から成る群から選択される。アクリレートは通常、15〜50wt%の量で存在する。
【0033】
適切なビニルエーテル樹脂の例には、International Speciality Products(ISP)から入手可能なシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、およびブタンジオールジビニルエーテル;Sigma−Ardrich,Incから入手可能なVectomer4010、4020、4030、4040、4051、4210、4220、4230、4060、5015が含まれるが、それらに限定されるものではない。ビニルエーテルは通常、15〜50wt%の量で存在する。
【0034】
適切なポリ(ブタジエン)樹脂の例には、ポリ(ブタジエン)、エポキシ化ポリ(ブタジエン)、マレイン化ポリ(ブタジエン)、アクリル化ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体が含まれる。商業的に入手可能な材料には、単独重合体のブタジエン(Sartomer Company Inc.から入手可能なRicon130、131、134、142、150、152、153、154、156、157、P30D);ブタジエンとスチレンのランダム共重合体(Sartomer Company Inc.から入手可能なRicon100、181、184);マレイン化ポリ(ブタジエン)(Sartomer Company Inc.から入手可能なRicon130MA8、130MA13、130MA20、131MA5、131MA10、131MA17、131MA20、156MA17);アクリル化ポリ(ブタジエン)(Sartomer Inc.から入手可能なCN302、NTX6513、CN301、NTX6039、PRO6270、Ricacryl3100、Ricacryl3500);エポキシ化ポリ(ブタジエン)(Sartomer Company Inc.から入手可能なPolybd600、605)、(ダイセル化学工業株式会社から入手可能なエポリードPB3600);およびアクリロニトリルとブタジエンの共重合体(Hanse Chemicalから入手可能なHycar CTBNシリーズ、ATBNシリーズ、VTBNシリーズ、およびETBNシリーズ)が含まれる。ポリ(ブタジエン)は通常、15〜50wt%の量で存在する。
【0035】
硬化剤の使用は、採用される樹脂系が自己開始可能か否かに応じて、並びに所望の硬化速度および温度に応じて任意である。コーティングに使用するために適した硬化剤は、0〜5wt%の間で存在し、前記硬化剤にはフェノール性化合物、芳香族ジアミン、ジシアンジアミド、ペルオキシド、アミン、イミダゾール、3級アミン、およびポリアミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。適切なフェノール性化合物は、Schenectady International,Inc.から商業的に入手可能である。適切な芳香族ジアミンは、1級ジアミンであり、前記適切な芳香族ジアミンには、Sigma−Ardrich Co.から商業的に入手可能なジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルメタンが含まれる。適切なジシアンジアミドは、SKW Chemicals,Inc.から入手可能である。適切なポリアミドは、Air Products and Chemicals,Inc.から商業的に入手可能である。適切なイミダゾールはAir Products and Chemicals,Inc.から商業的に入手可能である。適切な3級アミンは、Sigma−Ardrich Co.から入手可能である。適切なペルオキシドにはベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ブチルペルオクトエート、およびジクミルペルオキシドが含まれる。追加の適切な硬化剤には、例えば2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブタンニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が含まれる。
【0036】
コーティングに用いるために適した充填剤は、平均粒子径が2μmより大きく且つ単一ピークの粒径分布を有する球体形状である。より小さい粒径および2峰性(またはバイモーダル)の分布は、許容不可能なほど高いチクソトロピー指数をもたらし、前記高チクソトロピー指数が、今度は低いスピンコート性能および不均一なコーティング厚さをもたらす。
【0037】
適切な非導電性充填剤の例には、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、バーミキュライト、マイカ、珪灰石、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、硫酸バリウム、ジルコニウム、カーボンブラック、有機充填剤、および有機高分子が含まれ、前記有機高分子にはテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、および塩化ビニル等のハロゲン化エチレン重合体が含まれるが、これらに限定されるものではない。適切な導電性充填剤の例には、カーボンブラック、グラファイト、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド、およびアルミナが含まれる。充填剤の個々の種類は重要ではなく、個別の最終的用途(または効用)(例えば応力減少およびボンドライン(bondline)制御等)に適合するように当業者が選択することが可能である。接合部分のボンドライン厚さを制御するために、具体的な用途の要求を満たすように実行者によって選択された種類および量で、スペーサーも配合物中に含んでよい。充填剤は、選択された樹脂系および最終用途に適するように実行者によって決められた任意の量で存在してよく、通常、10〜30wt%の間である。
【0038】
当業者に公知の種類および量の他の添加剤(当該他の添加剤には接着促進剤、消泡剤、ブリード防止剤(antibleed agent)、レオロジー制御剤、およびフラックス剤が含まれるがこれらに限定されるものではない)が、コーティング配合物に含まれてよい。
【0039】
コーティングは、具体的な製造用途のための適切な保護、結合、または処理性能に求められる、任意の厚さであることが可能であり、通常12〜60μmの間である。
【実施例】
【0040】
例1[コーティング性能におけるレオロジーの影響]
コーティング性能に関する粘度およびチクソトロピー指数の影響を明らかにするために、コーティングの配合物を、種々の高い又は低い剪断粘度で調製した。比較配合物Aは、高チクソトロピー指数および高粘度を有するように設計した。比較配合物Bは、高チクソトロピー指数および低粘度を有するように設計した。本発明の配合物CおよびDの両方は、各々高粘度および低粘度であり、低チクソトロピー指数を有する。下記の表1に列挙されている配合に従って、標準的な接着剤製造技術を用いてコーティングを調製した。これらの各々の配合物において利用された充填剤は、平均粒子径が2.6μmで且つ単一ピークの粒度分布を有する球状シリカであった。
【0041】
【表1】

【0042】
室温における高い剪断粘度及び低い剪断粘度に対して、コーティングの配合物を試験し、各々に対してチクソトロピー指数を計算した。その後、室温で1000rpmにて60秒間、径が20.3cmのウエハー上にコーティングをスピンコートし、被覆されたウエハーに110℃で30分間Bステージを行った。各々の配合物を、ウエハーの中心におけるコーティングの高さを測定し、それと、ウエハーの外端からおよそ1インチのところのコーティングの高さとを比較することによって、スピンコート可能性(またはスピンコート性)に関して評価した。外端付近の高さと中央における高さとの間の差が、外端付近の高さの15%未満である場合、その配合物はスピンコート可能であると言えた。即ち、その配合物は、ウエハーの表面にわたる厚さの十分な均一性を与えた(中央において「ドーム状」でない)。粘度、チクソトロピー係数、およびコーティング厚さのデータを下記の表2にまとめる。
【0043】
【表2】

【0044】
高チクソトロピー指数(1.2より大きい)を有する比較配合物は、中央の厚さが、ウエハーの端付近の厚さより15%を超えて厚く、それらが中心で「ドーム状」であるので、スピンコート可能でなかった。全ての試料を、同じ速度及び同じ長さの時間にて、全体のより厚い被覆を与える、より高い粘度の材料を用いて被覆したので、予想通り、粘度はコーティング厚さに対して影響を与えた。しかし、発明の配合物(チクソトロピー指数が1.2以下)の両方が、ウエハー表面にわたる厚さの良好な均一性を与えたので、粘度は、スピンコート可能性に対して影響を与えなかった。
【0045】
例2〜5に関して、コーティングを、標準的な接着剤製造技術を用いて以下のモデル組成で配合した:
単官能性アクリル樹脂(1) 12.1wt%
単官能性アクリル樹脂(2) 18.2wt%
ペルオキシド硬化剤 0.5wt%
固体エポキシ樹脂 18.15wt%
CTBNゴム 18.15wt%
ジシアンジアミド硬化剤 1.2wt%
イミダゾール促進剤 0.3wt%
エポキシ官能性シラン 0.7wt%
消泡剤 0.7wt%
充填剤 30wt%
【0046】
粘度、チクソトロピー指数、およびスピンコート可能性に対する充填剤の寸法、分布、および形状の影響を明らかにするために、充填剤の種類を変化させた。室温における高剪断粘度(5rpmにおける)を粘度として報告し、高剪断粘度に対する低剪断粘度の割合(0.5rpmにおける粘度/5rpmにおける粘度)をチクソトロピー指数として報告した。
【0047】
各々の配合物を、1000rpmにて室温で60秒間、20.3cmのウエハー上に25μmまたは60μmの目標厚さまでスピンコートし、被覆されたウエハーに110℃で30分間Bステージを行った。ウエハーの中央におけるコーティング高さを測定し、それをウエハーの外端から約1インチのところのコーティングの高さと比較することによって、各々の配合物をスピンコート可能性に関して評価した。二つの高さの差が端付近の厚さの15%未満である場合、配合物はスピンコート可能であると考えられる。
【0048】
例2[充填剤の種類の影響]
【表3】

【0049】
発明の配合物E(シリカ充填剤)およびF(高分子充填剤)は両方ともスピンコート可能であり、充填剤の種類がスピンコート可能性に影響を及ぼさないことが示された。
【0050】
例3[充填剤の粒度分布の影響]
【表4】

【0051】
例3は、充填剤の粒度分布の影響を明らかにする。発明の配合物Eに用いられている充填剤と類似の寸法および形状の充填剤を有する比較配合物Gは、前記充填剤の2峰性分布が1.2より大きいチクソトロピー指数をもたらすので、スピンコート可能でなかった。
【0052】
例4[充填剤寸法の影響]
【表5】

【0053】
例4は、充填剤寸法の影響を示す。平均粒子径が2μm未満の充填剤を有する比較配合物Hは、前記充填剤のより小さい粒子寸法が1.2より大きいチクソトロピー指数をもたらすので、スピンコート可能でなかった。
【0054】
例5[充填剤の形状の影響]
【表6】

【0055】
例5は充填剤の形状の影響を示す。比較配合物JおよびKに用いられた充填剤(各々ポリ(エチルエーテルケトン)およびポリ(テトラフルオロエチレン))は、非球体形状を有した。非球状充填剤が1.2より大きいチクソトロピー指数をもたらすので、これらの配合物はスピンコート可能でなかった。球状の架橋ポリ(メチルメタクリレート)を用いた発明の配合物Iは、1.2より小さいチクソトロピー指数を有し、従ってスピンコート可能であった。
【0056】
例6[充填剤含有量の影響]
粘度、チクソトロピー指数、およびそれに起因するスピンコート可能性に対する、充填剤の充填量の影響を明らかにするために、実施例の配合物を、種々の充填剤含有量で調製した。例6に関する全ての配合物は、平均粒子径が2.6μmであり単一ピークの粒度分布を有する球状シリカ充填剤を用いて調製した。表7および8は、配合および結果を各々示している。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
この樹脂系においてこの充填剤を用いると、配合物は、30wt%までの充填剤の充填量でスピンコート可能であった。充填剤の充填に関する有効な限界は、個々の樹脂系および採用される充填剤に依存し、個別の工業的用途に対して実行者が決定するように、より高く又はより低くすることができることに注意すべきである。
【0060】
本発明の多くの変更および変形は、当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱すること無く行うことが可能である。本明細書に記載された特定の態様は、例示の目的でのみ示されたものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲および当該特許請求の範囲が権利を有する均等物の全ての範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性面および活性面と反対側の裏面を有する半導体ウエハーであって、裏面がコーティングで被覆されており、前記コーティングが(a)樹脂および(b)平均粒子径が2μmより大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する球状充填剤を含む、半導体ウエハー。
【請求項2】
コーティングが12〜60μmの厚さである、請求項1に記載の半導体ウエハー。
【請求項3】
球状充填剤が、コーティングの10〜30wt%の間の量で存在する、請求項1に記載の半導体ウエハー。
【請求項4】
前記樹脂が、固体エポキシ、液体エポキシ、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、ビニルエーテル、ポリエステル、ポリ(ブタジエン)、シリコーン処理されたオレフィン、シリコーン、スチレン、シアン酸エステル、およびそれらの2以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の半導体ウエハー。
【請求項5】
前記樹脂が、(i)固体エポキシ樹脂および(ii)単官能性アクリレート単量体、有機溶媒、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される液体を含む、請求項1に記載の半導体ウエハー。
【請求項6】
液体が、コーティングの15〜50wt%の間の量で存在する、請求項5に記載の半導体ウエハー。
【請求項7】
単官能性アクリレート単量体がイソボルニルアクリレートである、請求項5に記載の半導体ウエハー。
【請求項8】
有機溶媒が、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、メチルエチルケトン、およびカルビトールアセテートから成る群から選択される、請求項5に記載の半導体ウエハー。
【請求項9】
固体エポキシ樹脂が、コーティングの15〜30wt%の間の量で存在する、請求項5に記載の半導体ウエハー。
【請求項10】
固体エポキシ樹脂がクレゾールノボラックエポキシである、請求項9に記載の半導体ウエハー。
【請求項11】
1.2以下のチクソトロピー指数を有する、スピンコート可能な、Bステージを行うことの可能なコーティングの製造方法であって:
a.固体エポキシ樹脂を供給すること、
b.前記固体エポキシ樹脂を液体に溶解させて溶液を形成させることであって、前記液体を単官能性アクリレート単量体、有機溶媒、または前記の2つの組み合わせから成る群から選択すること、および
c.平均粒子径が2μmよりも大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する球状充填剤を10〜30wt%、液体溶液に混合すること
を含む、方法。
【請求項12】
活性面および活性面と反対側の裏面を有する、被覆された半導体ウエハーの製造方法であって:
a.(i)固体エポキシ樹脂および(ii)単官能性アクリレート単量体、有機溶媒、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される液体、並びに(iii)平均粒子径が2μmより大きく且つ単一ピークの粒度分布を有する10〜30wt%の球状充填剤を含むコーティング組成物を提供すること;
b.ウエハーの裏面にコーティング組成物をスピンコートすること;並びに
c.コーティングにBステージを行うこと
を含む方法。

【公表番号】特表2010−517316(P2010−517316A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548208(P2009−548208)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002740
【国際公開番号】WO2008/094149
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】