説明

充填材類と、ポリエチレンテレフタレート(PET)から誘導される変性ポリブチレンテレフタレート(PBT)ランダム共重合体類とを含む成形組成物

【課題】PET由来のPBTを活用し、有用な性能特性を持つ、充填材類含有の新規な成形組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)(1)ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体類とから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、5〜99重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、(b)少なくとも1重量%の充填材成分とを含む。ある実施形態では、本発明は前述の成形組成物から成形される物品に関する。別の実施形態では、本発明は、前記成形組成物の製造方法および利用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年1月27日に出願された米国仮特許出願番号第60/763083号、および2006年7月26日に出願された同60/820469号の優先権の特典を主張し、参照によりそのすべてを本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は成形組成物分野に関連する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(「PET」とも呼ぶ)はテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルであり、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとの重縮合により、また、テレフタル酸とエチレングリコールあるいはエチレンオキサイドとの重縮合によっても製造される。PETは、非晶質熱可塑性材料(透明)および半結晶性熱可塑性材料(不透明および白色)の両方として存在する。PETは一般に、塩基類は除き、鉱油類、溶剤類、および酸類に対して有用な耐薬品性を有している。半結晶性PETは、良好な強度、延性、剛性、および硬度を有している。非晶質PETは、延性はより優れているが、剛性と硬度は劣る。PETは、ソフトドリンク用ボトルや様々な分野に応用される繊維、およびその他の家庭用や消費財製品の製造に用いられる。一般に、PETは多くの使用方法があり、いくつかの大きな市場を有している。そのために、PETは大量生産され、しかもその量は拡大し続けている。
【0004】
リサイクルの努力にもかかわらず残念ながら、世界中で毎年、非常に大量のPETがごみ処理場に廃棄されている。再利用されないその他のPETは焼却される。ごみ処理場に廃棄されるPETは、相当量の廃棄物となる。PETを焼却してしまうと、より有効に使える可能性のある相当量の資源を無駄にすることになる。
【0005】
ポリブチレンテレフタレート(「PBT」とも呼ぶ)とポリカーボネート類、および耐衝撃性改良剤類をベースとした熱可塑性成形組成物は、様々な分野で用いられている。多くの顧客にとって有用でありながら、従来のPBT−ポリカーボネート−耐衝撃性改良剤の成形組成物は一般に、消費者使用後の、あるいは産業用として使用後の大量のPBTが入手困難であるために、再生資源のPBTから製造できない。PETはPBTと違い、消費者廃棄物から、はるかに大量にそして容易に作られている。PET(スクラップ)材料をPBTに変換でき、有用な成形組成物に変えることができれば、PBT熱可塑性成形組成物において、十分に利用されていなかったスクラップPETを有効に活用できるという、まだ実現されていない必要性に答える貴重な方法となるであろう。PET(スクラップ)材料をPBTに変換できて有用な成形組成物に変えることができれば、消費者使用後の、あるいは産業用として使用後に有効に利用されることになるであろう。こうして作られるPBTは、我々の非再生資源の節約と、COなどの温室効果ガスの生成量削減に繋がるであろう。
【0006】
米国特許第5,451,611号には、廃棄ポリエチレンテレフタレートを1,4−ブタンジオールと反応させて、ポリ(エチレン−CO−ブチレンテレフタレート)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)のいずれかに変換するプロセスが教示されている。先行技術の議論に際し、米国特許第5,451,611号には、引用したプロセスのほとんどにおいて、有害な副産物であるジエチレングリコールが生成し、これが最終製品を汚染するために、回収製品を再度利用可能とするには純化して取り除かなければならない、ことが示されている。同特許の主な目的は、廃棄ポリエチレンテレフタレートを、その構成成分であるモノマ類やオリゴマ類に分解することなく、他の高価値ポリマに直接変換するプロセスを提供することにあった。この特許では、種々のポリマ類が様々な量のジオールを包含する例が多く開示されている。実施例11では、エチレングルコールを1,4−ブタンジオールで完全に置換して生成したPBTポリマが示されている。
【0007】
米国特許第5,266,601号には、PETを1,4−ブタンジオールと反応させて「PBT」を作るプロセスが教示されている。同特許の主な目的は、スクラップPETから、エチレングリコールの量を1.0重量%単位以下に抑えたPBTを作ることであった。米国特許第5,266,601号の他の主な目的は、このプロセスで生成するTHFの量を可能な限り低減させるプロセスを開発し、得られるPBTを、モノマ類から製造されるPBTに対して経済的に競争力あるものにすることであった。同特許では、含有するエチレングリコール基類の量が1重量%未満のPBTの製造が強調されている。同特許では、1重量%を超える組成物の例を比較実施例で提示している。そのような組成物はそれぞれ、「帯黄色」および「わずかに帯黄色」であることが記載されている。
【0008】
日本公開特許第2005−89572号には、エステル交換反応触媒の存在下、圧力1〜54kPa、最終温度200〜230℃の条件にて、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと1,4−ブタンジオールとをエステル交換反応し、反応生成物を重縮合することにより、ポリブチレンテレフタレートを製造する方法が教示されている。ある実施形態では、前記のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートを過剰のエチレングルコールで解重合し、生成した解重合物を純化することにより得られる。同特許では減圧下での、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと1,4−ブタンジオールとのエステル交換によって好適な結果が得られることが教示されている。
【0009】
しかしながら残念なことに、そうした文献に開示された内容では、通常は焼却されるかごみ処理場に埋められるしかないスクラップPETをもっと活用するとの永年のニーズには答えられない。例えば、米国特許第5,451,611号では、PETをその構成成分のモノマ類やオリゴマ類に分解するという、商業化検討では必要とされることもある特長について、効果的なプロセスが教示されていない。同特許では、エチレングリコールを微量ではない量含有するPBTに機能的に類似し、実施例で示される融点よりも高い融点を示す組成物を製造する有意義な指針は提供されていない。同様に、米国特許第5,266,601号では、ポリカーボネート類と、難燃剤類やエポキシ類などの他の材料と、1重量%以上は言うまでもない任意量の、エチレングリコールなどのPET残基を有するPBTとを含む成形組成物の製造方法については、詳しく記載されていない。実際にどの特許にも、ポリカーボネート類と、耐衝撃性改良剤と、その他の材料とを含む成形組成物に、開示された材料が使用されるか、どのように利用されるのかについては議論されていない。日本公開特許第2005−89572号でも、ポリカーボネート類と、耐衝撃性改良剤と、PBTとを含む成形組成物について、およびPETを有効に活用してそうした組成物を作る方法について記載していない。スクラップ材料としてのPETを活用してPBT様の材料を製造する点に関する既知の技術では、すなわち、通常は焼却されるかごみ処理場に埋め立てられるしかないPETスクラップを、より活用する新規のプロセスに対する永年のニーズに答える有意義な解決手段を提供できていない。既知の技術では、充填材類とPET由来のPBTと含む新規の熱可塑性組成物と、非常に有用で顧客から価値を認められる物性の組み合わせとに対する永年のニーズに答える有意義な解決手段を提供できていない。
【0010】
こうした理由から、PET由来のPBTを活用し、有用な性能特性を持つ、充填材類含有の新規な成形組成物の開発が求められている。
【0011】
こうした理由から、CO排出量を削減する新規な成形組成物の開発が求められている。
【0012】
こうした理由から、PET由来のPBTを活用し、有用な性能特性を持つ成形組成物の新規な製造方法の開発が求められている。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、5〜99重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも1重量%の充填材成分と、
を含み、前記変性ポリブチレンテレフタレートと、前記充填材成分と、任意に少なくとも1つの添加剤の量が合計で100重量%である組成物に関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、30〜90重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも5重量%の充填材成分と、
(c)少なくとも5重量%の難燃剤成分と
(d)少なくとも0.1重量%のカルボキシ反応成分と、
(e)少なくとも0.05重量%の熱安定剤と、
(f)少なくとも0.05重量%の紫外線安定剤と、
を含み、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および任意に、いずれかの追加添加剤との合計量が100重量%である成形組成物に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類とから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、35〜50重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)25〜45重量%の充填材成分と、
(c)10〜30重量%のポリカーボネートと、
(d)0〜10重量%の耐衝撃性改良剤と、
(e)0〜5重量%の添加剤と
を含み、前記変性ポリブチレンテレフタレートと、前記充填材成分と、前記ポリカーボネートと、前記耐衝撃性改良剤と、前記添加剤の量は合計で100重量%である組成物に関する。別の実施形態では、本発明は、上記の成形組成物から成形される、あるいは押出される物品に関する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類とから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、30〜90重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも5重量%の充填材成分と、
(c)少なくとも5重量%の難燃剤成分と
(d)少なくとも0.1重量%のカルボキシ反応成分と、
(e)少なくとも0.05重量%の熱安定剤と、
(f)少なくとも0.05重量%の紫外線安定剤と、
を含み、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および任意に、いずれかの追加添加剤との合計量が100重量%である成形組成物に関し、
【0017】
上記組成物は、エチレングリコール、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類から構成される群から選択されるモノマの合計含有量が、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の、ジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、イソフタル酸基類、エチレングリコール類、ジエチレングルコール基類、およびそれらの組合せからなる群から選択される残基量が、0〜17当量であり、
【0018】
上記組成物の熱変形温度は、0.455MPaの応力下、ASTM D648に準じて測定して、少なくとも180℃であり、
【0019】
ISO1133に準じ、温度250℃、負荷力5kgf、保持時間240秒、2.1mmのオリフィスの条件にて、ペレットで測定した上記組成物の溶融体積速度は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の代わりに、ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類から誘導されたモノマで作られた組成物と比較して、10%〜80%高い。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、上記成形組成物の製造方法およびその利用方法に関する。本発明のこれらの、および他の特徴、態様、および利点は、以下の記載および添付の請求項を参照することによって一層よく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、有用な物性を持ち商業的用途に適した、使用済みPETボトルのポリエチレンテレフタレートから誘導される変性PBTランダム共重合体を含有する成形組成物が製造できる、との注目すべき発見に基づいている。未使用のPBT(モノマ由来のPBT)を含有する従来の成形組成物と違い、物品類に使用される変性PBT成分は、エチレングリコールやイソフタル酸基類(これらは「未使用」のモノマ系PBTには存在しない成分)などのポリエチレンテレフタレート残基を含んでいる。未使用のPBTとは構造上異なるPBTを使用しているにもかかわらず、好都合なことに、本物品は、モノマ系PBTを含む成形組成物材料から作られた物品と同じ性能特性を示す。本発明は、PBT熱可塑性成形組成物において、十分に利用されていなかったスクラップPETを有効に活用するという、まだ実現されていない必要性に答える貴重な方法を提供する。本発明は、消費者使用後の、あるいは産業用として使用後の効果的な利用を提供することができる。また、本発明によって、非再生資源は保存され、COなどの温室効果ガスの生成量は削減されるであろう。驚いたことに、エチレンテレフタレートから誘導される変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を含む成形組成物は、モノマ由来のPBTを含有する成形組成物と比較して、流動性を向上させることができる。
【0022】
作用例を除き、あるいは別途明示がある場合を除き、明細書および請求項で用いられている成分量や反応条件等を表す数字や表現は、すべての場合について「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。本出願においては様々な数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本明細書のこうした様々な数値範囲は近似である。
【0023】
本明細書での分子量はすべて、ポリスチレン標準物質を使って得られた分子量の平均値である。測定方法の詳細は、(i)装置:ウォーターズ社2695セパレーションモジュール(ii)検出器:ウォーターズ社2487デュアルUV検出器、波長273nmおよび295nm、およびウォーターズ社410屈折計(iii)移動相:5%HFIP95%クロロホルム(iv)GPCカラム:ポリマー・ラボ(Polymer Labs)社PL HFIPゲル250×4.6mm(v)流量:0.3ml/min(vi)注入量:10μl
(vii)ポリスチレン標準物質:ポリマー・ラボ(Polymer Lab)社製PS−1、580−7、500,000Da
【0024】
別途明記した場合を除き、ASTM試験およびデータはすべて、ASTM標準2003年度版からのものである。
【0025】
明確にするために、式中の、テレフタル酸基、イソフタル酸基、ブタンジオール基、エチレングリコール基は次の意味を持っている。組成物中の「テレフタル酸基」(R’)は、テレフタル酸からカルボキシル基を除去後に残存する二価の、1,4−ベンゼンラジカル(−1,4−(C)−)を指す。「イソフタル酸基」(R’’))は、イソフタル酸からカルボキシル基を除去後に残存する二価の、1,3−ベンゼンラジカル(−(−1,3−C)−)を指す。「ブタンジオール基」(D)は、ブタンジオールからヒドロキシ基を除去後に残存する二価の、ブチレンラジカル(−(C)−)を指す。「エチレングリコール基」(D’)は、エチレングリコールからヒドロキシ基を除去後に残存する二価の、エチレンラジカル(−(C)−)を指す。例えば、組成物中の重量%を示すために他の文脈で使われている「イソフタル酸基」、「エチレングリコール基」、および「ジエチレングリコール基」に関して、「イソフタル酸基(類)」は、(−O(CO)C(CO)−)を有する基を、「テレフタル酸基(類)」は、式(−O(CO)C(CO)−)を有する基を、ジエチレングリコール基は、(−O(C)O(C)−)を有する基を、「ブタンジオール基(類)」は、式(−O(C−)を有する基を、また、「エチレングリコール基(類)」は、式(−O(C)−)を有する基を意味する。
【0026】
本明細書で使われる「ランダム共重合体」とは、分子鎖内の所定のサイトにおける所定の単量体単位を見出だす可能性が、隣接したユニットの性質には依存しない巨大分子を含む共重合体を指す。
【0027】
発明のある実施形態は、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、
5〜99重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも1重量%の充填材成分とを含む組成物に関する。
【0028】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される上記変性ポリブチレンテレフタレート成分(PET由来の変性PBT成分)は、
(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、
(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む。ある実施形態では、変性ポリブチレンテレフタレート成分はさらに、例えば、トウモロコシ由来の1,4−ブタンジオールや、セルロース系材料から誘導される1,4−ブタンジオールなどの、バイオマス由来1,4−ブタンジオールから誘導される。
【0029】
変性ポリブチレンテレフタレート成分中に存在するポリエチレンテレフタレート成分から誘導される残基は、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモニ含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールの1,3−トランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールの1,4−トランス異性体、アルカリ塩類、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ土類金属塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸類、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0030】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート共重合体類などのファクタに応じて、上記残基は様々な組み合わせを含むことができる。例えばある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される残基は、エチレングリコールとジエチレングリコールとの混合物類を含む。別の実施形態では、上記残基は、エチレングリコールと、ジエチレングリコールと、イソフタル酸との混合物を含む。別の実施形態では、上記残基は、ポリエチレンテレフタレートから誘導される残基はさらに、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、上記残基は、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、上記残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸基類、シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびこれらの組み合わせからなる混合物であってもよい。ある実施形態では、上記ポリエチレンテレフタレートから誘導される残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびコバルト含有化合物類の混合物類を含む。そのようなコバルト含有化合物の混合物は、イソフタル酸基類も含んでいてもよい。
【0031】
上記変性PBT成分のポリマ骨格中のエチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル基類の量は変えられる。PET由来の変性PBT成分は通常、イソフタル酸基類を少なくとも0.1モル%含み、それは0あるいは0.1から10モル%(0あるいは0.07〜7重量%)の範囲で変えられる。PET由来の変性PBT成分は通常、エチレングリコールを少なくとも0.1モル%含み、それは0.1〜10モル%(0.02〜2重量%)の範囲で変えられる。ある実施形態では、PET由来の変性PBT成分は、エチレングリコールを0.85重量%以上含む。変性PBT成分は、ジエチレングルコールも0.1〜10モル%(0.04〜4重量%)含んでいる。ブタンジオール基類の量は通常約98モル%であり、95〜99.8モル%の範囲で変えられる。いくつかの実施形態において、テレフタル酸基類の量は通常約98モル%であり、90〜99.9モル%の範囲で変えられる。
【0032】
別段の定めがない限り、イソフタル酸基類、およびあるいは、テレフタル酸基類の全モル量は、組成物中の二酸類およびジエステル類の合計モル数による。別段の定めがない限り、ブタンジオール、エチレングリコール、およびジエチレングリコール基類の全モル数は、組成物中のジオールの合計モル数による。上述の重量パーセント測定値は、テレフタル酸基類、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類について定義した方法に基づく。
【0033】
変性ポリブチレンランダム共重合体中のポリエチレンテレフタレート成分残基の材料量は変えられる。例えば、混合物類の量は、1.8〜2.5重量%、あるいは0.5から2重量%、あるいは1〜4重量%とすることができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノール基類は独立にあるいは組み合わせて、成形組成物中のグリコール100モル%に対して0.1〜10モル%存在させることができる。イソフタル酸基類は、成形組成物中の二酸およびまたはジエステル100モル%に対して、0.1〜10モル%とすることができる。
【0034】
融点(Tm)が少なくとも200℃のポリブチレンテレフタレート類を作ることが望ましい場合は、ジエチレングリコール、エチレングリコール、およびイソフタル酸基類の合計量をある範囲内に収めなければならないことがわかった。そのため、ある実施形態では、変性ポリブチレンテレフタレート成分中のジエチレングリコール、エチレングリコール、およびイソフタル酸基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、0〜23当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、3〜23当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して3〜10当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して10〜23当量である。ある実施形態では、反応中にジエチレングリコール、エチレングリコールおよびまたはイソフタル酸を添加し、違った特性を持つ組成物を作る系を可能とする。
【0035】
エチレングリコール基類、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、用途とユーザのニーズによって変えられる。ある実施形態では、上記組成物は、エチレングリコール、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類から構成される群から選択されるモノマの全量を、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して0〜17当量とすることができる。好都合なことに、そうした組成物類は、熱変形温度が180℃以上であるなどの、有用な特性を持つことができる。
【0036】
ポリエチレンテレフタレート由来の無機物残基の合計量は、0ppm〜1000ppmであっても良いことがわかった。そうした無機物残基の例は、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ土類金属塩類、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ塩類、リン含有化合物類と陰イオン類、イオウ含有化合物類と陰イオン類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される。別の実施形態では、無機物残基の量は250〜1000ppmであってもよい。別の実施形態では、無機物残基の量は500〜から1000ppmであってもよい。
【0037】
変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体が作られるPET成分は、本発明で使用可能であれば任意の形態であってよい。一般に、PET成分としては、フレーク状、パウダおよびまたはチップ状、フィルム状、あるいはペレット状をした再利用(スクラップ)PETを含む。PETは一般に使用前に、紙や接着剤;ポリプロピレン、塩化ビニル(PVC)、ナイロン、ポリ乳酸などのポリオレフィン;およびその他の汚染物質などの不純物を取り除く。また、PET成分としては、フレーク状や、チップ状、ペレット状をした廃棄物ではないPETも含む。こうして、通常はゴミ処理場に破棄されるPETを、生産的に有効的に使用することができる。ある実施形態では、PET成分としては他のポリエステル類を含んでいてもよい。また、ポリエステル共重合体類を含んでいてもよい。そうした材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、テレフタレートエステル類とシクロヘキシルジメタノールおよびエチレングリコールを含有するコモノマ類とのコポリエステル類、テレフタル酸塩とシクロヘキシルジメタノールおよびエチレングリコールを含有するコモノマ類とのコポリエステル類、ポリブチレンテレフタレート、ポリキシリレンテレフタレート、ポリジオールテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエステルナフタレート類、およびそれらの組み合わせから選択されるポリアルキレンテレフタレート類などがある。
【0038】
ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体は、ポリエチレンテレフタレート成分を解重合するステップと、解重合された同成分を1,4−ブタンジオールで変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体へ重合するステップとを含む任意の方法によって、ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される。例えば、ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される変性ポリブチレンテレフタレート成分は、少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下で、温度180〜230℃の1,4−ブタンジオールと攪拌しながら高温で反応させて、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を解重合し、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分と、1,4−ブタンジオールと、エチレングリコールと、それらの組み合わせとから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、減圧下で前記溶融混合物を攪拌しながら温度を上げ、ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ポリブチレンテレフタレートを形成するステップとを含むプロセスで作られる。
【0039】
ポリエステル部分と1,4−ブタンジオールとは、攪拌下、液相状態で混合しており、1,4−ブタンジオールは、ステップ(a)の間、リアクタ中に連続的に還流される。この段階で生成したTHFと水は、蒸留あるいは一部凝縮によって取り除くことができる。
【0040】
ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分は、一般に大気圧下で混合される。しかしながら、本発明の別の実施形態では大気圧より高い圧力とすることができる。例えば、ある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとは、2気圧以上を受ける。高圧下では、反応混合物は230℃以上の温度で解重合できる。
【0041】
ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分との混合および反応は、ポリエチレンテレフタレート成分を、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分と、1,4−ブタンジオールと、エチレングリコールと、それらの組み合わせからなる混合物への解重合を促進するに十分な温度とする。ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分との混合温度は一般に180℃〜230℃である。1,4−ブタンジオールは一般に、ポリエチレンテレフタレート成分に対して過剰量用いる。ある実施形態では、1,4−ブタンジオールは、2〜20モル過剰に用いられる。
【0042】
ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとを混合反応させるプロセスの第1段階(ステップ(a))の間、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとは、条件に適した少なくとも1気圧の気圧下で、溶融混合物に解重合する。「ステップ(a)」の間、一般に、1,4−ブタンジオールとエチレングリコールは再循環され、テトラヒドロフランは蒸留される。この溶融混合物には、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分と、1,4−ブタンジオールと、エチレングリコールと、それらの組み合わせが含まれる。
【0043】
該ステップにおけるポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとの反応継続時間は、利用装置や、製品ニーズ、希望する最終特性などのファクタによって変ってくる。このステップが2時間で行われる実施形態もあれば、2〜5時間の実施形態もある。
【0044】
このプロセスはさらに、上記溶融混合物を減圧し240℃〜260℃の温度まで加熱して、ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレート成分を形成するステップを含んでいる。
【0045】
好適には、過剰のブタンジオールと、エチレングリコール、およびテトラヒドロフラン(THF)を取り除いて、ステップ(b)のプロセスを実行する。減圧しながら好適な温度に十分長く放置しておくと、上記溶融混合物は重合して、ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体になる。
【0046】
一般に、上記溶融混合物を減圧〜1Torr未満の圧力とする。ある実施形態では、連続的に100〜0.05Torrに減圧される。別の実施形態では、連続的に10〜0.1Torrに減圧される。
【0047】
好都合なことに、上記溶融混合物を減圧下に置いても、どの材料も分離あるいは分解することがない。このステップにおいて分離あるいは分解がないために、このプロセスの利用性が大きく高められている。
【0048】
溶融混合物を減圧し加熱する間、過剰のブタンジオールと、エチレングリコール、およびTHFとをリアクタから取り除き、オリゴマ類の分子量を上げてゆく。常時撹拌しながら、低沸点成分の除去を促進してポリマの分子量を上げて行く。十分な分子量が得られると、できた溶融PETポリマをリアクタダイヘッドから注出して冷却しペレットに裁断する。
【0049】
このステップ(上記で議論のステップ(b))において、上記溶融混合物が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ポリブチレンテレフタレート)、オリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールから重合する反応継続時間は、利用装置や、製品ニーズ、希望する最終特性などのファクタによって変ってくる。このステップが少なくとも2時間で行われる実施形態もあれば、2〜5時間の実施形態もある。
【0050】
溶融混合物を減圧下に置く温度は十分に高い温度とし、ポリエチレンテレフタレート成分、ポリ(ブチレンテレフタレート)、オリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールから、ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレート成分への重合反応を促進させる。一般に、その温度は少なくとも230℃であり、ある実施形態では250℃〜275℃である。
【0051】
このプロセスにおける前記2つのステップは、同じリアクタ内で行うことができる。しかしながら、別の2つのリアクタで行う実施形態もあり、この場合には、ステップ(a)を第1のリアクタで行い、溶融混合物が形成された時点で第2のリアクタに移してステップ(b)の反応を行う。このプロセスを3つ以上のリアクタで行う実施形態もある。また、連続したリアクタでこのプロセスを行う実施形態もある。
【0052】
このプロセスの反応を促進する触媒は一般に、反応を促進するために用いられる触媒成分を含んでいる。上記触媒としては、アンチモン化合物類、スズ化合物類、チタン化合物類、およびそれらの組み合わせと共に、文献に開示されている他の多くの金属触媒類およびそれらの組み合わせから選択される。触媒量は、特定の必要性に応じて変わってくる。好適な触媒量は1〜5,000ppm、あるいはそれ以上である。
【0053】
触媒成分は、ポリエチレンテレフタレート成分が1,4−ブタンジオールと最初に混合するステップの間に添加される。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとが混合した後に形成される溶融混合物に、触媒成分を添加する実施形態もある。
【0054】
ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレート成分の製造プロセスは、撹拌しながら行われることが好ましい。「撹拌条件」あるいは「撹拌」とは、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとを、あるいは溶融混合物を、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとに適用してPETの解重合を促進するステップ(a)、あるいはポリエチレンテレフタレートオリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールからPBTを重合するステップ(b)を促進する条件において、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール、あるいは溶融混合物の物理的混合を含む条件にかけることを指す。物理的混合は任意の適切な方法で達成できる。ある実施形態では、回転シャフトとシャフトに直角な羽根を有するミキサが使われる。
【0055】
ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレート成分の製造方法には、アルカリ金属を含む塩基性化合物をステップ(a)のリアクタに添加して、このプロセスで生じたTHFの量を低減させるステップが含まれていてもよい。
【0056】
この塩基性化合物はアルカリ金属を含み、ナトリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、カリウムアルコキシド、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、リチウムアルコキシド、水酸化リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、カルシウムアルコキシド、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、およびそれらの組み合わせの1つあるいは複数から選択される。
【0057】
混合物へのこの塩基性化合物の添加量は一般に少なくとも0.1ppmである。0.1〜50ppmの実施形態もあれば、1〜10ppmの実施形態もある。
【0058】
アルカリ金属を含む塩基性化合物を添加しない場合に比べて、塩基性化合物を添加すると、THFの全発生量を低減できる。少なくとも10%低減できる実施形態もあれば、10%〜50%、あるいはそれ以上低減できる実施形態もある。
【0059】
別の実施形態では、THFの生成を低減するために二官能性エポキシ化合物を添加してもよい。エポキシ化合物は、二官能性エポキシ類から選ばれる。好適な二官能性エポキシド化合物類としては、これに限定されないが、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのビスフェノールジグリシジルエーテル類、テトラブロモビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、グリシドール、ジグリシジルのアミン類あるいはアミド類付加物類、フタル酸のジグリシジルエステルやヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステルなどのジグリシジルのカルボン酸付加物類、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸、ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどがある。3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートは特に好適である。混合物に添加されるエポキシの量は一般に、少なくとも0.05重量%である。エポキシ化合物の量が0.1〜1重量%の実施形態もあれば、0.2〜0.5重量%の実施形態もある。ある実施形態では、本発明はさらに追加の実施形態を提供しており、そこではTHFの生成量は、
(a)(i)ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択されるジオール成分と、少なくとも大気圧下、触媒成分の存在下、温度190℃〜250℃にて、不活性ガス下で反応させて、エチレンテレフタレート成分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、トリメチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、トリメチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、前記のうちの少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組み合わせとから構成される群から選択される成分を含む第1の溶融混合物に解重合するステップと、
(b)1,4−ブタンジオールを、触媒成分の存在下、温度190℃〜240℃にて、リアクタ内の前記第1の溶融混合物に添加して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、トリメチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、トリメチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類と、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類と、前記のうちの少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分と、1,4−ブタンジオールと、プロピレングリコールと、エチレングリコールと、それらの組み合わせとから構成される群から選択される成分を含む第2の溶融混合物を形成するステップと、
(c)第2の溶融混合物を、減圧下、撹拌しながら240℃〜260℃に加熱して、前記ポリエチレンテレフタレートから誘導された残基を少なくとも1つ含む変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を形成するステップの、3つのステップを含むプロセスによって低減される。
【0060】
この3ステップの実施形態によって、PETから変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を生産する方法には、さらに利点が提供される。この3ステップ実施形態のステップ(a)で使用されるジオール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組み合わせから選ぶことができる。ジオール成分は、ステップ(a)において、ポリエチレンテレフタレート成分中のエチレングリコール部分の量の少なくとも半分量のモル量存在する。ポリエチレンテレフタレート成分の解重合は、時間を種々変えて行うことができる。ある実施形態では、少なくとも25分間、解重合が行われる。
【0061】
上記3ステップの実施形態におけるステップ(b)で使われる1,4−ブタンジオールは、ステップ(c)で得られる変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体成分中に取り込まれるブタンジオール部分のモル量に対し、過剰モル量を添加することができる。
【0062】
このプロセスの間、使用される化合物類は、再使用およびまたは回収される。ある実施形態では、エチレングリコールと、プロピレングリコールと、それらの組み合わせから構成される群から選択されるジオール成分と、(2)の1,4−ブタンジオールは除去されてステップ(b)の容器に集められる。別の実施形態では、ステップ(b)で、1,4−ブタンジオールはリアクタ内に還流され、過剰のブタンジオールと、エチレングリコールと、プロピレングリコールと、テトラヒドロフランと、およびそれらの組み合わせの群から選択される成分は除去される。ステップ(b)は十分な時間をかけて行われ、第2の溶融混合物中のエチレングリコールの少なくとも65%を低減する。ステップ(b)の継続時間も変えられる。ある実施形態では、継続時間は少なくとも45分間である。ステップ(b)の圧力は変えられる。ステップ(b)を大気圧下で行う実施形態もあれば、減圧下で行なう実施形態もある。違った組み合わせが可能である。過剰の1,4−ブタンジオールと絶対圧力300〜1500mbarの範囲でステップ(b)が行われる実施形態もあれば、1,4−ブタンジオールの過剰モル量を1.1〜5の範囲として行う実施形態もある。
【0063】
上記3ステップの実施形態中のステップ(c)も、使用方法に応じて種々変更して行われる。ある実施形態では、例えば、過剰のブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランおよびそれらの組み合わせの群から選択される成分は、ステップ(c)の間に除去される。ステップ(c)の圧力も変えられる。ある実施形態では、10mbar以下で行われる。この3ステッププロセスは、同じリアクタ内でで行うことができ、あるいは、少なくとも2つのリアクタ内で行うことができる。
【0064】
別の実施形態では、この3ステッププロセスには、ステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)、およびそれらの組み合わせの間に、塩基性化合物を添加するステップを含めて、THF生成量をさらに低減することができる。2ステップ実施形態の場合のように、この塩基性化合物は、上述の化合物を含有できる。あるいは、ステップ(b)で、二官能性エポキシ化合物類を上に示した量添加してもよい。
【0065】
好都合なことに、上記3ステッププロセスでは、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択されるジオール成分の代わりに、1,4−ブタンジオールを用いてポリエチレンテレフタレート成分を解重合するプロセスで生成されるテトラヒドロフランの量に比較して、その量を少なくとも30%低減できる。
【0066】
ポリエチレンテレフタレート成分由来の変性ポリブチレンテレフタレート成分の製造プロセスには、上記溶融混合物から形成されるPBTを固相重合する追加のステップが含まれていてもよい。固相重合は一般に、溶融混合物から形成されたPBTを不活性ガス雰囲気あるいは減圧下で加熱し、十分な時間をかけてPBTの分子量を形成する。一般に、PBTの加熱温度はPBTの融点以下とし、例えば、PBTの融点の5℃〜60℃以下とする。ある実施形態では、加熱温度は、150℃〜210℃である。固相重合の好適な時間は、条件と装置に応じて変わるが2〜20時間である。固相重合は一般に、十分に激しい条件で行ってPBTをさらに重合し適切な分子量とする。こうした激しい条件は、PBTを滝のように落下させる、つまり、ポンプで不活性ガスを系内に注入して、ペレット、チップ、フレーク、パウダなどの形態のポリマ粒子の流動を促進することによって作られる。固相重合は、大気圧下、または1気圧〜1mbarの範囲の減圧下で行ってもよい。
【0067】
本発明には、1,4−ブタンジオールをバイオマスから誘導する実施形態を含むことができる。「バイオマス」とは、通常は非再生炭化水素源から誘導される有用な化学物質に直接あるいは間接に変換可能な、生きたあるいは死んだ生体物質を指す。バイオマスには、セルロース系物質、穀物類、穀物由来のデンプン類、脂肪酸類、植物性油類、およびこれらのバイオマスからの誘導体類などが含まれる。有用な化学物質の例としては、これに限定されないが、ジオール類;二酸類;例えば、ジオールやコハク酸などの酸製造に用いられるモノマ類;およびポリマ類の製造に用いられるモノマ類などがある。バイオマス系ブタンジオールはいくつかの資源から得られる。例えば、バイオマス系1,4−ブタンジオールの製造に以下のプロセスが用いられる。トウモロコシや穀物、あるいは糖由来の穀物などの農業系バイオマスは、微生物の存在下、発酵法などの簡略なプロセスでコハク酸に変換できる。こうしたコハク酸は、「BioAmber」の商標名で販売しているDiversified Natural Products社など数社から販売されている。このコハク酸は、米国特許第4,096,156号などいくつかの出版物に記載の方法によって、容易に1,4−ブタンジオールに変換できる。米国特許第4,096,156号はその全体が本明細書に援用される。バイオマス由来の1,4−ブタンジオールは、テトラヒドロフランにも変換でき、さらに、ポリブチレンオキサイドグリコールとしても既知のポリテトラヒドロフランにも変換できる。コハク酸を1,4−ブタンジオールに変換する別の方法が、スミス(Smith)等の「Life Cycles Engineering Guidelines」(EPA出版、EPA/600/R−1/101 (2001))に記載されている。
【0068】
成形組成物中のPET由来変性PBT成分の量は、特定の用途に応じて変わる。一般に、本発明の成形組成物中のPET由来変性PBT成分の量は、5〜90重量%である。その量が5〜99重量%の実施形態もあれば、10〜50重量%の実施形態もある。
【0069】
成形組成物中の充填材成分は一般に、熱可塑性樹脂の他の特性に悪影響を与えずに、引張弾性率や密度を上げたり、熱膨張率を下げる目的で無機系充填材が用いられる。好適な無機系充填材としては、アルミナ、非晶質シリカ、無水アルミノケイ酸塩、雲母、珪灰石、硫酸バリウム、硫化亜鉛、粘土類、タルク、二酸化チタンなどの金属酸化物などがある。ある実施形態では、低レベル(0.1〜10.0重量%)の極小粒径(最大粒径:10ミクロン以下)が有用である。ある実施形態では、充填材の量は少なくとも1重量%であり、その充填材は、ガラス充填材、セラミック充填材、炭素充填材、ナノ−充填材、ナノ−チューブ、ナノ−複合材料、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0070】
充填材の特に好適な実施形態としては、ガラス繊維やセラミック繊維、炭素繊維などの強化繊維が含まれ、それらは、その製造方法と同様に当分野では周知である。ある実施形態では、ガラス繊維、特に相対的に無ソーダのガラス繊維が特に好適である。石灰−アルミノ−硼珪酸塩から作られる「Eガラス」として公知のガラス繊維フィラメントは特に好適な場合が多い。ガラス繊維は、曲げ弾性率と強度を向上させる目的で組成物に添加される。ガラスフィラメントは、蒸気または空気吹付法、火炎吹付法、および機械的引出法などの標準プロセスによって製造される。プラスチック補強として好適なフィラメントは、機械的引出法で製造される。最適な機械的特性達成のためには、6〜20μm径の繊維の中では10〜15μm径の繊維が好適である。成形組成物の調製では、ロービングの使用も可能だが、約1/8インチ(3mm)〜約1/2インチ(13mm)の長さのチョップドストランドの形態の繊維の使用が便利である。上記組成物から成形された物品において繊維長は、おそらく組成物混合中におきる繊維断片化のために、通常これよりは短かい。最終の成形組成物中のこうした短繊維ガラス繊維の長さは約4mm未満である。繊維は種々のカップリング剤で処理されて樹脂母材への付着を改善する。好適なカップリング剤には、アミノ官能基化シラン、エポキシ官能基化シラン、アミド官能基化シラン、あるいはメルカプト官能基化シランなどがある。例えば、チタンあるいはジルコニウム系有機金属化合物などの、有機金属カップリング剤も使用できる。
【0071】
他の好適なサイズコーティングガラス繊維は、オーエンズコーニングファイバーグラス(Owens Corning Fiberglass)社から、例えば、OCF K フィラメントガラス繊維183Fとして販売されている。
【0072】
別の実施形態では、直径が10〜24μm、好適には10〜18μmのガラス繊維モノフィラメントを有する連続ガラス繊維束を、好適には、溶融熱可塑性ポリエステルで含浸させたガラス長繊維が使用される。この含浸束を冷却後、長さ5mm超の、好適には9mm超のペレットに裁断する。含浸としては、本発明の高流動性ポリエステルを用いてフィラメントの浸潤速度を上げて、ガラス長繊維ペレットを製造できる。これらのペレットを本発明のポリエステル組成物に混ぜ込んで、ガラス長繊維ポリエステル組成物が得られる。この方法で調製された成形品組成物中のガラス長繊維の長さは通常、短繊維を混ぜ込んで調製したものよりも長く、このガラス長繊維の大部分は、成形部品中で4mm超の長さである。そのようなガラス長繊維強化組成物は、射出成形や圧縮成形、熱成形など、異なった成形技術に用いることができる。短繊維の場合のように、長繊維も様々なカップリング剤で処理されて樹脂への付着を向上させることができる。当業者にとって、ガラス長繊維を高流動性ポリエステル組成物に直接混ぜ込む引抜技術などの連続プロセスも可能であろう。
【0073】
PET由来PBTを、製紙プロセスでのパウダのように、グラスチョップドストランドに混ぜ込むこともできる。PET由来PBTを、引抜によって、あるいはパウダ混煉方法によって、あるいは、線材引抜プロセスまたはその他の引抜プロセスによって、連続ガラステープに混ぜ込むことができる。
【0074】
他の充填材および補強剤を単独で、あるいは補強繊維類と組み合わせて用いることができる。これらにはこれに限定されないが、炭素繊維、雲母、タルク、バライト、炭酸カルシウム、珪灰石、粉砕ガラス、フレークガラス、粉砕石英、シリカ、ゼオライト、および中実または中空ガラスビーズまたはガラス球、ポリエステル繊維類あるいはアラミド繊維類などがある。
【0075】
ガラス繊維類にPET由来のPBT成分を最初に混ぜ込み、次にこれを押出機に供給してペレット状に裁断できる、あるいは好適な実施形態では、押出機の供給ホッパに別々に供給してもよい。非常に適切な実施形態では、ガラスの摩滅を最小化するために、ガラス繊維類を押出機の下流側に供給してもよい。一般に、本明細書に記載の組成物のペレットを調製するためには、押出機の温度を約480°F〜550°F(249〜287℃)に維持する。押出し品を裁断して調製されるペレットは、長さが4分の1インチ以下である。上述のように、こうしたペレットは、組成物中で、微細に分割され、均一に分散したガラス繊維を含んでいる。分散したガラス繊維の長さは、押出機バレルのチョップドガラスストランドに対するせん断作用の結果短くなる。
【0076】
ある実施形態では、充填材成分としてナノ充填材を含む。好適なナノ充填材には、ケイ酸塩、一般的には粘土類、特に、モンモリナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガジイト、メドモンタイト、フルオロヘクトイタイト、バーミキュライト、カオリナイトなどを含んでもよい。粘土類、特に、ラメラ構造を持つフィロシリケートは、例えば、ラメラ間のイオン交換によって得られるKまたはNa、あるいはアルカリ土類カチオン類、またはアルキルアンモニウムまたはアルキルスルホニウムイオン類などの有機カチオン類をも含む。他のナノ粒子としては、チタン酸化物類やシリコン酸化物類などの金属酸化物のナノ粒子などがある。
【0077】
充填材類には有機充填材類を含んでいてもよい。有機充填材類にはこれに限定されないが、ケブラ繊維類などのポリアミド類などの合成ポリマ繊維類や天然繊維類などが含まれる。好適な繊維類としては、ココナッツ繊維類、ジュート繊維類、亜麻繊維類、天然セルロース繊維類などが含まれる。これらの繊維類は、個々に、あるいは本明細書に記載の他の繊維類と組み合わせて用いられる。天然繊維類は、植物資源などのバイオマスから誘導されるので、その特徴は、そのような材料の使用にますます興味を持っている顧客にとっては魅力的である。さらに、有機繊維類または天然繊維類を使用することで一般には、相対的に低密度および軽重量の部品ができる。
【0078】
物品の製造に用いられる組成物中の充填材成分の量は一般に、少なくとも1重量%である。その量が5重量%〜70重量%の実施形態もあれば、30〜50重量%の実施形態もある。
【0079】
充填材量は、充填材の種類と用途によって変えられる。有機繊維を充填材として使用する場合、その量は1〜50重量%の範囲にできる。例えば、ある実施形態では、充填材の量は少なくとも1重量%であり、充填材は、ガラス充填材、セラミック充填材、炭素充填材、金属充填材、鉱物充填材、ナノ−充填材、ナノ−チューブ、タルク、およびそれらの組み合わせの群から選択される。別の実施形態では、充填材類はナノチューブであり、その量は0〜1重量%である。別の実施形態では、充填材類はナノチューブであり、その量は0.0001〜1重量%である。充填材成分の量が5重量%〜70重量%の実施形態もあれば、30〜50重量%の実施形態もある。別の実施形態では、無機系充填材を十分な量含み、無機系充填材を含まない組成物と比較して組成物の熱変形温度を上昇させる。
しかしながら、当業者であれば、特定の材料の量は実施形態に応じて変えられることは理解できるであろう。ある実施形態では、極小粒径(最大粒径が10μm以下)の低レベル量、例えば、0.1〜10.0重量%の充填材類が有用である。
【0080】
ある実施形態では、組成物は難燃剤成分を含んでいる。難燃剤成分は、組成物を通しての、またはこの組成物をベースとした物品を通しての炎の伝播を抑止、軽減、遅延あるいは改質する目的で、組成物に加わえられる。難燃剤成分は、ハロゲン化炭化水素(塩素および臭素を含有した化合物類および反応性難燃剤類)、無機系難燃剤(ホウ素化合物類、酸化アンチモン類、水酸化アルミニウム類、モリブデン化合物類、酸化亜鉛および酸化マグネシウム)、リン含有化合物類(有機リン酸塩類、ホスフィン酸塩類、亜リン酸塩類、ホスホン酸塩類、ホスフィン、ハロゲン化リン化合物類、および無機リン含有塩類)およびメラミンシアヌール酸塩などの窒素含有化合物類などである。
【0081】
無機系難燃剤としては、金属水酸化物類、アンチモン化合物類、ホウ素化合物類、他の金属化合物類、リン化合物類、およびその他の無機系難燃剤成分類などがある。好適な金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムおよびその他の金属水酸化物類がある。好適なアンチモン系難燃剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、五酸化アンチモンおよびその他のアンチモン系無機化合物類が含まれる。好適なホウ素化合物類としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、ホウ砂、およびその他のホウ素系無機化合物類がある。その他の金属化合物類としては、モリブデン化合物類、三酸化モリブデン、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)、ジルコニウム化合物類、チタン化合物類、スズ酸塩亜鉛や亜鉛ヒドロキシスズ酸塩などの亜鉛化合物類などがある。
【0082】
難燃剤成分には、ハロゲン含有化合物類が含まれる。好適なハロゲン化有機系難燃剤としては、臭素化難燃剤類、塩素化難燃剤を含むことができる。そのような難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、オクタブロモビスフェノールエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビフェニールエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、ビス(トリブロモフェノキシ)エタンテトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマ類、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマ類などがある。典型的なハロゲン化芳香族難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマ、ポリブロモフェニルエーテル、臭素化ポリスチレン、臭素化BPAポリエポキシド、臭素化イミド類、臭素化ポリカーボネート、ポリ(ハロアリールアクリレート)、ポリ(ハロアリールメタクリレート)、あるいはそれらの混合物などがある。
【0083】
その他の好適な難燃剤としては、ポリジブロモスチレンやポリトリブロモスチレンなどの臭素化ポリスチレン、ジカルボモノビフェニールエタン、テトラブロモビフェニール例えば、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどの臭素化α−、ω−アルキレン−ビス−フタルイミド類、臭素化オリゴマ炭酸塩、特に所望であれば、フェノキシラジカル類、臭素化フェノキラジカル類、あるいは臭素化エポキシ樹脂類で末端キャップされたテトラブロモビスフェノールAから誘導される炭酸塩などである。
【0084】
塩素化難燃剤としては、塩素化パラフィン類、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロ−オクタン、および機能性が均等なその他の材料などがある。
【0085】
難燃剤成分には、リン含有化合物類が含まれる。好適なリン難燃剤としては、赤リン、ポリリン酸アンモニウムがある。有機リン難燃剤としては、ハロゲン化リン酸塩類、非ハロゲン化化合物類がある。そのような材料としては、トリス(1−クロロ−2−プロピル)リン酸塩、トリス(2−クロロエチル)リン酸塩、トリス(2,3−ジブロモプロピル)リン酸塩、リン酸エステル、トリアルキルリン酸塩類、トリアリールリン酸塩類、アリール−アリキルリン酸塩類、およびそれらの組み合わせなどがある。他の難燃剤としては、ポリオール類、ホスホニウム誘導体類、ホスホン酸塩類、ホスファン類、ホスフィン類が含まれる。
【0086】
リン含有化合物類の具体的な構造としては、
【化1】

Rが、アルキル、アリール、アラルキル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチルなどの群から選択されるリン酸塩、
【化2】

Xが水素、およびRであり、Rがアルキル、アリール、アラルキル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチルなどの群から選択されるホスホン酸塩類、
【化3】

XとYは水素およびRであり、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチルなど、OH、アミノ機能性化合物類の群から選択されるホスフィン酸塩、
【化4】

X、Y、およびZは水素およびRであり、Rはアルキル、アリール、アラルキル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチルなどの群から選択されるホスフィンオキシド、
【化5】

X、Y、およびZがアルキル、アリール、アラルキルなどの群から選択されるホスフィン、
【化6】

Rは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチルなどの群から選択される亜リン酸塩、などがある。
【0087】
そのため、好適な難燃剤は、リン、臭素、およびまたは塩素を含む有機化合物類であってもよい。例えば、有機リン酸塩やリン−窒素結合を含む有機化合物類などの、非臭素化および非塩素化リン含有難燃剤は、規制上の理由から、特定の用途においては好適である。
【0088】
有機リン酸塩の典型的な種類は下式の芳香族リン酸塩である。(GO)P=O、ここで、Gは、少なくともその1つが芳香族基であれば、独立に、アルキル、シクロアルキル、アーリル、アルカリル、あるいはアラルキルである。2つのG基は結合して、例えば、ジフェニルペンタエリルスリトールジフォスフェイトなどの環式基を作り、このことについては、Axelrodの発明になる米国特許第4,154,775号に記載されている。その他の好適な芳香族リン酸塩としては、例えば、フェニルビス(ドデシル)リン酸塩、フェニルビス(ネオペンチル)リン酸塩、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシル)リン酸塩、エチルジフェニルリン酸塩、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)リン酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルリン酸塩、トリトリルリン酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルリン酸塩、トリ(ノニルフェニル)リン酸塩、ビス(ドデシル)p−トリルリン酸塩、ジブチルフェニルリン酸塩、2−クロロエチルジフェニルリン酸塩、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)リン酸塩、2−エチルヘキシルジフェニルリン酸塩などがある。具体的な芳香族リン酸塩は、Gがそれぞれ、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、イソプロピル化リン酸トリフェニルなどの芳香族であるものである。例えば、下式の化合物類などの、ジあるいは多官能性芳香族リン含有化合物類も有用である。
【化7】

式中、Gはそれぞれ独立に、炭素原子数が1〜約30の炭化水素であり、Gはそれぞれ独立して、素原子数が1〜約30の炭化水素またはヒドロカルボンオキシであり、Xはそれぞれ独立して、臭素または塩素であり、mは0〜4、nは1〜約30である。好適なジあるいは多官能性芳香族リン含有化合物類としては、レゾルシノールテトラフェニルジフォスフェイト(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)リン酸塩およびビスフェノールAのビス(ジフェニル)リン酸塩、それらのオリゴマおよびポリマ相当物などがある。
【0089】
好適なリン−窒素結合含有難燃剤化合物類の典型的な例としては、窒化塩化リン、リン酸エステルアミド類、亜リン酸アミド類、ホスホン酸アミド類、ホスフィン酸アミド類、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドなどがある。リン酸含有難燃剤を用いるときは一般に、組成物全体100重量部に対して、約1〜約20重量部の量で用いられる。
【0090】
ある実施形態では、難燃性ポリエスエル組成物としては、トリアジン類、グアニジン類、シアヌール酸塩類、およびイソシアヌール酸塩類などの窒素含有難燃剤の1つあるいは混合物の難燃性量を含んでいる。好適なトリアジン類は下式の構造を有しており、
【化8】

式中、R、RおよびRは独立に、C−C12のアルキル、C−C12のアルコキシル、C−C12のアリール、アミノ、C−C12のアルキル置換アミノ、あるいは水素である。非常に好適なトリアジン類としては、2,4,6−トリアミン−1,3,5−トリアジン(メラミン、CAS Reg. No.108−78−1)、メラミン誘導体類、メラム、メレム、メロン、アンメリン、(CAS Reg. No.645−92−1)、アンメリド(CAS Reg. No.645−93−2)、2−ウレイドメラミン、アセトグアナミン(CAS Reg. No.542−02−9)、ベンゾグアナミン(CAS Reg. No.91−76−9)などがある。ホウ酸またはリン酸を有するこれらの化合物の塩類およびまたは付加物を組成物に用いてもよい。こうした例としては、メラミンピロリン酸塩やメラミンポリリン酸塩などがある。好適なシアヌール酸塩およびまたはイソシアヌール酸塩化合物類としては、トリアジン化化合物類と、メラミンシアヌール酸塩およびメラミン塩類の任意の混合物などのシアヌール酸との塩およびまたは付加物などを含む。
【0091】
好適なグアニジン化合物類としては、グアニジン、アミニグアニジンなど、およびそれらと、ホウ酸、炭酸、リン酸、硝酸、硫酸などとの塩およびまたは付加物、および、前記グアニジン化合物類の少なくとも1つを含む混合物類などを含む。
【0092】
窒素含有難燃剤は、1つまたは複数のリン酸系化合物類と組み合わせて用いられる。ホスフィン酸塩類とジホスフィン酸塩類には、Schosserらの発明になる米国特許第6,255,371号に記載されたものが含まれる。言及した具体的なホスフィン酸塩類には、アルミニウムジエチルホスフィン酸塩(DEPAL)、および亜鉛ジエチルホスフィン酸塩(DEPZN)が含まれる。ホスフィン酸塩は式(I)およびまたは式(II)の構造、およびまたは式(I)または(II)を含むポリマ類を備えており、
【化9】

【化10】

【0093】
式中、RとRは同じであっても違っていてもよく、水素、C−Cの直鎖あるいは分枝鎖アルキル、およびまたはアリールであり、Rは、C−C10の直鎖あるいは分枝鎖アルキレン、C−C10のアルキレン、アルキルアリレン、あるいはアーリルアルキレンであり、Mは任意の金属であるが、好適には、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、あるいは亜鉛であり、mは1、2あるいは3、nは1、2あるいは3、Xは1または2である。
【0094】
ある実施形態では、RおよびRは前記の置換基に加えて水素でもよい。これは、ホスフィン酸の下位分類である次亜リン酸塩であり、これには例えば、次亜リン酸塩のカルシウム塩やアルミニウム塩などが含まれる。
【0095】
難燃剤は典型的には、相乗剤、特に、無機系アンチモン化合物類と一緒に用いられる。そのような化合物類は広く販売されているか、あるいは、既知の方法で製造できる。典型的には、無機系相乗剤には、Sb、SbS、アンチモン酸ソーダなどが含まれる。三酸化二アンチモン(Sb)は特に好適である。酸化アンチモン類などの相乗剤は典型的には、最終組成物中の樹脂重量に対して、約0.5〜15重量%の量使用される。
【0096】
また、最終組成物には、難燃性熱可塑性プラスチックの流滴性を軽減する目的で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプの樹脂類あるいは共重合体類を含むことができる。
【0097】
難燃性添加剤は少なくとも、ポリエステル樹脂の可燃性を、好適にはUL94 V−0等級まで軽減させるに十分な量含まれていることが望ましい。その量は、樹脂の性質および添加剤の効率に応じて変わってくる。難燃剤成分の量は一般に、少なくとも1重量%である。難燃剤成分の量が5重量%〜30重量%の実施形態もあれば、10〜20重量%の実施形態もある。
【0098】
熱可塑性組成物には、ポリカーボネート成分が含まれる。本明細書で用いられるように、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」とは、式(1)のカーボネートの繰り返し構造単位を持っていることを意味し、
【化11】

式中、R基類の総数の少なくとも60パーセントは芳香族有機ラジカル類であり、そのバランスは、脂肪族ラジカル、脂環式ラジカル、あるいは芳香族ラジカルである。ある実施形態では、Rはそれぞれ、例えば、式(2)のラジカルの芳香族有機ラジカルであり、
【化12】

式中、AおよびAはそれぞれ、単環式二価アリールラジカルであり、Yは、AとAとを分ける1つあるいは2つの原子を有する架橋ラジカルである。典型的な実施形態では、1つの原子がAとAとを分けている。この種のラジカル類の実例としてこれに限定されないが、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンなどがある。架橋ラジカルYは、メチレン、シクロヘキシリデン、あるいはイソプロピリデンなどの炭化水素基あるいは飽和炭化水素基であってもよい。
【0099】
本明細書に用いられるように、「脂肪族」とは、環式ではない直鎖または分枝鎖の炭素原子配列を持つ少なくとも1つの原子価を有する炭化水素ラジカルを指し、「芳香族」とは、少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも1つの原子価を有するラジカルを指し、「脂環式」とは、芳香族ではなく環式の炭素原子配列を持つ少なくとも1つの原子価を有するラジカルを指し、「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖の1価炭化水素ラジカルを指し、「アルキレン」とは、直鎖または分枝鎖の二価炭化水素ラジカルを指し、「アルキリデン」とは、直鎖または分枝鎖の二価炭化水素ラジカルで、2つの原子価とも単一の共通炭素原子にある炭化水素ラジカルを指し、「アルケニル」とは、炭素−炭素二重結合で結合した少なくとも2つの炭素を持つ直鎖または分枝鎖の1価炭化水素ラジカルを指し、「シクロアルキル」とは、少なくとも3つの炭素原子を有し、そのうちの少なくとも1つは不飽和度を持った非芳香族の脂環式一価炭化水素ラジカルを指し、「シクロアルキレン」とは、少なくとも3つの炭素原子を有し、そのうちの少なくとも1つは不飽和度を持った非芳香族の脂環式二価炭化水素ラジカルを指し、「アリール」とは、1価の芳香族のベンゼン環ラジカル、あるいは少なくとも1つの任意に置換されたベンゼン環に縮合された、任意に置換されたベンゼン環系ラジカル系を指し、「アリレン」とは、ベンゼン環ジカジカル、あるいは、少なくとも任意に置換されたベンゼン環に縮合されたベンゼン環系ジラジカルを指し、「アシル」とは、隣接の基に結合するカルボニル炭素原子に結合した一価の炭化水素ラジカルを指し、「アルキルアリール」とは、上記に定義したアリールに対して置換された上記に定義のアルキル基を指し、「アリールアルキル」とは、上記に定義したアルキルに対して置換された上記に定義のアリール基を指し、「アルコキシ」とは、酸素ラジカルによって隣接の基に結合した上記に定義のアルキル基を指し、「アリールオキシ」とは、酸素ラジカルによって隣接の基に結合した上記に定義のアリール基を指し、「直接結合」とは、構造可変部の一部の仕様について、「直接結合」と考えられる可変部に先行および後続する置換基の直接結合を指す。
【0100】
ポリカーボネート類は、式(3)のジヒドロキシ化合物類を含んだ、式HO−R−OHを有するジヒドロキシ化合物類の界面反応によって製造でき、
【化13】

式中、Y、AおよびAは上記のものである。さらに、一般式(4)のビスフェノール化合物類も含まれており、
【化14】

式中、RおよびRは各々、ハロゲン原子あるいは1価の炭化水素基を表し、それらは同じであっても違っていてもよく、pとqは各々独立に、0〜4の整数であり、Xは、式(5)の基類のうちの1つを表わし、
【化15】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、1価直鎖または環式炭化水素基であり、Rは、二価の炭化水素基を表す。
【0101】
好適なジヒドロキシ化合物類の実例としては、これに限定されないが、レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−フェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ダイオキシン、2,6−ジヒドロキシ−チアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、2,7−ジヒドロキシカルバゾールなど、および、前述のジヒドロキシ化合物類の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。
【0102】
式(3)で表わされるビスフェノール化合物類の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」あるいは「BPA」と呼ぶ)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミデン(PPPBP)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)などがある。前述のジヒドロキシ化合物類の少なくとも1つを含む組み合わせをも使用される。
【0103】
分枝鎖ポリカーボネートも、直鎖ポリカーボネートや分枝鎖ポリカーボネートとのブレンドと同様に有用である。分枝鎖ポリカーボネートは、重合中に分岐剤を添加することで調製される。これらの分岐剤類には、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、およびこれら官能基類の混合物から選択される少なくとも3つの官能基を含む多官能基有機化合物類が含まれる。具体的な例としては、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、トリメリット酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリスフェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン、トリスフェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−シクロホルミル無水フタル酸、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などがある。分岐剤は、ポリカーボネートの0.05〜2.0重量%のレベルで添加してもよい。すべての種類のポリカーボネート末端基は、それが熱可塑性組成物の所望の特性に著しく影響しなければ、ポリカーボネート中にあって有用であると考えられる。
【0104】
特定の実施形態では、ポリカーボネートは、AおよびAのそれぞれがp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導される直鎖のホモポリマである。ポリカーボネートは、25℃のクロロホルム中で測定して、0.3〜1.5dl/g、具体的には0.45〜1.0dl/gの固有粘度を持っていてもよい。ポリカーボネート類は、架橋型スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、サンプル濃度を1mg/mlとし、ポリカーボネート標準で較正したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定して、重量平均分子量(Mw)が10,000〜100,000であってもよい。
【0105】
本明細書で使用されるように、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、カーボネート鎖単位を持つ共重合体類を含んでいてもよい。好適な共重合体の具体例としては、ポリエステル−ポリカーボネートであり、それは、コポリエステル−ポリカーボネートやポリエステル−ポリカーボネートとしても既知である。ポリカーボネート類とポリエステル−ポリカーボネート類の組み合わせも使用される。本明細書で用いられるように、「組み合わせ」とは、すべての混合物類、ブレンド類、合金類、反応生成物類などを含むものである。ポリエステル−ポリカーボネート類は、式(1)のカーボネート鎖単位の繰り返しの他に、式(6)の繰り返し単位を含んでおり、
【化16】

式中、Dはジヒドロキシ化合物から誘導される二価のラジカルであり、それは例えば、C2−10アルキレンラジカル、C6−20脂環式ラジカル、C6−20芳香族ラジカル、あるいは、アルキレン基が2〜6の炭素原子数、具体的には炭素原子数を2、3、あるいは4個含むポリオキシアルキレンラジカルなどであり、Tはジカルボン酸から誘導される二価ラジカルであり、それらは例えば、C2−10アルキレンラジカル、C6−20の脂環式ラジカル、C6−20のアルキル芳香族ラジカル、あるいはC6−20芳香族ラジカルである。
【0106】
ある実施形態では、DはC2−6アルキレンラジカルである。別の実施形態では、Dは、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導され、
【化17】

式中、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−10炭化水素基、あるいはC1−10のハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4である。ハロゲンは通常は臭素である。式(7)で表わされる化合物類としては、レゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2、4、5、6−テトラフルオロレゾルシノール、2、4、5、6−テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物類;カテコール;ヒドロキノン;2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2、3、5、6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン類;あるいはそれら化合物類の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。
【0107】
ポリエステル類の調製に使用される芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸、およびそれらの酸類の少なくとも1つを含む混合物類などがある。1,4−、1,5−、あるいは2,6−ナフタレンジカルボン酸などの縮合環類を含む酸類が存在してもよい。具体的なジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジジカルボン酸、あるいはそれらの混合物類などがある。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物を含んでおり、テレフタル酸とイソフタル酸との重量比が91:1〜2:98である。別の特定の実施形態では、DはC2−6アルキレンラジカルであり、Tは、p−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式のラジカル、あるいはこれらの混合物である。この分類のポリエステルは、ポリ(アルキレンテレフタル酸塩類)を含んでいる。
【0108】
エステル単位に加えて、ポリエステル−ポリカーボネートは、上記のカーボネート単位を含んでいる。式(1)のカーボネート単位類は、特定のカーボネート単位がレゾルシノールカーボネート単位である式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物類から誘導することもできる。
【0109】
具体的には、ポリエステル−ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル二酸とテレフタル二酸の組み合わせ(あるいはそれらの誘導体類)と、レゾルシノール、ビスフェノールA、あるいはこれらの1つあるいは複数を含む組み合わせとの反応から誘導でき、このときのイソフタル酸塩単位とテレフタル酸塩単位とのモル比は91:9〜2:98であり、具体的には85:15〜3:97であり、さらに具体的には80:20〜5:95であり、よりさらに具体的には70:30〜10:90である。ポリカーボネート単位は、レゾルシノールカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位のモル比が0:100〜99:1の、レゾルシノールおよびまたはビスフェノールAから誘導することができ、前記ポリエステル−ポリカーボネート中の、イソフタレート−テレフタレート混合ポリエステル単位とポリカーボネート単位とのモル比は1:99〜99:1であり、具体的には5:95〜90:10であり、より具体的には10:90〜80:20である。ポリエステル−ポリカーボネートと、ポリカーボネートとのブレンドを用いるときは、ブレンド中のポリカーボネートとポリエステル−ポリカーボネートとの重量比はそれぞれ、1:99〜99:1、具体的には10:90〜90:10にできる。
【0110】
ポリエステル−ポリカーボネート類は、重量平均分子量が1,500〜100,000、具体的には1,700〜50,000、より具体的には2,000〜40,000とすることができる。分子量決定は、架橋型スチレン−ジビニルベンゼンカラムを使用し、ポリカーボネート標準で較正したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて行われる。サンプルは、約1mg/mlの濃度に調製されており、流量約1.0ml/minで溶離される。
【0111】
好適なポリカーボネート類は、界面重合法や溶融重合法などのプロセスで製造される。界面重合での反応条件は変化するが、典型的なプロセスは一般に、2価のフェノール反応物質を、苛性ソーダ水溶液あるいはカリ水溶液に溶解あるいは分散させるステップと、前記反応混合物を好適な水非相溶性溶剤媒体に添加するステップと、前記反応物質を、トリエチルアミンあるいは相間移動触媒などの好適な触媒の存在下、pHを例えば8〜10に制御して、カーボネート前駆体と接触させるステップとを包含する。最も共通的に使用される水非相溶性溶剤としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどがある。好適なカーボネート前駆体類には、例えば、臭化カルボニルあるいは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、あるいは2価フェノールのビスハロホルメート(例えばビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスハロホルメート)あるいはグリコールのビスハロホルメート(例えばエチレングリコールやネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート)などが含まれる。前述のカーボネート前駆体少なくとも1つを含む組み合わせも用いられる。連鎖停止剤(以後、キャッピング剤と呼ぶこともある)を重合中に加えてもよい。連鎖停止剤は、分子量の成長を制限し、ポリカーボネートの分子量を制御する。連鎖停止剤は、モノフェノール化合物類、モノカルボン酸塩化物類、およびまたはモノクロロギ酸エステル類の中の少なくとも1つとすることができる。
【0112】
例えば、連鎖停止剤として好適なモノフェノール化合物類には、フェノール、C〜C22のアルキル置換フェノール類、p−クミル−フェノール、p−第三級−ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルなどの単環式フェノール類;p−メトキシフェノールなどのジフェニルのモノエーテルなどが含まれる。アルキル置換フェノール類には、炭素原子数8〜9の分枝鎖アルキル置換基を有するものも含まれる。モノフェノール化合物の紫外線吸収剤をキャッピング剤として使用してもよい。そうした化合物類には、4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノン類およびそれらの誘導体類、アリールサリチル酸塩、レゾルシノールモノベンゾアート、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾール類およびそれらの誘導体のようなジフェノールのモノエステル、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾール類およびそれらの誘導体類、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジン類およびそれらの誘導体類などが含まれる。具体的には、モノフェノール連鎖停止剤には、フェノール、p−クミルフェノール、およびまたはレゾルシノールモノベンゾアートが含まれる。
【0113】
モノカルボン酸クロライド類も連鎖停止剤として好適である。この中には、ベンゾイルクロライド、C−C22アルキル置換ベンゾイルクロライド、トルオイルクロライド、ハロゲン置換ベンゾイルクロライド、ブロモベンゾイルクロライド、シンナモイルクロライド、4−ナジイミドベンゾイルクロライド、およびそれらの混合物類などの単環式モノカルボン酸クロライド類;無水トリメリット酸クロライド、およびナフトイルクロライドなどの多環式モノカルボン酸クロライド類;および単環式モノカルボン酸クロライド類と多環式モノカルボン酸クロライド類との混合物類などがある。炭素原子数が22までの脂環式モノカルボン酸類の塩化物類が好適である。アクロイルクロライドやメタクロイルクロライドなどの脂環式モノカルボン酸類の機能性塩化物類も好適である。クロロギ酸フェニル、アルキル置換クロロギ酸フェニル、p−クミルクロロギ酸フェニル、クロロギ酸トルエン、およびそれらの混合物類などの単環式モノクロロギ酸を含むモノクロロギ酸も好適である。
【0114】
ポリエステル−ポリカーボネート類は、界面重合法で調製される。ジカルボン酸自体を利用しないで、対応する酸ハロゲン化物類、特に、酸二塩化物および酸二臭化物などの酸の反応性誘導体を用いることができ、それが好適な場合もある。このように、例えば、イソフタル酸やテレフタル酸、あるいはそれらの混合物類を用いる代わりに、イソフタロイル二塩化物や、テレフタロイル二塩化物、およびそれらの混合物類を用いることができる。
【0115】
使用可能な相間移動触媒には、式(RXの触媒も含まれ、式中、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、C1−10のアルキル基であり、Qは窒素またはリン原子であり、Xはハロゲン原子あるいはC1−8アルコキシ基であり、C6−18はアリールオキシ基である。好適な相間移動触媒には、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNX、およびCH[CH(CHNXなどが含まれ、ここでXはCl、Br、C1−8アルコキシ基、あるいはC6−18アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノール重量に対して0.1〜10重量%である。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノール重量に対して0.5〜2重量%である。
【0116】
あるいは、溶融プロセスを用いてポリカーボネート類を作ることができる。一般に、溶解重合プロセスでは、ポリカーボネート類は、エステル交換触媒の存在下、ジヒドロキシ反応物とジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートエステルとを、溶融状態にて二軸スクリュ押出機であるBanbury(登録商標)ミキサ内で共反応させ、均一分散を形成して調製される。揮発性の一価フェノールが蒸留によって溶融反応物質から除去されてポリマが溶融残基として分離される。
【0117】
上記のポリカーボネート類、ポリエステル−ポリカーボネート類、およびこれらの組み合わせに加えて、ポリカーボネート類と、ポリエステル−ポリカーボネート類と、他の熱可塑性ポリマ類との組み合わせ、例えば、ポリカーボネート類と、およびまたはポリカーボネート共重合体類とポリエステル類との組み合わせを用いることも可能である。
【0118】
ポリカーボネートは、ポリシロキサン−ポリカーボネートとも呼ばれる、ポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体を含んでいてもよい。この共重合体のシロキサン(本明細書では「ポリジオルガノシロキサン」とも呼ばれる)ブロックは、式(8)のシロキサン繰り返し単位(本明細書では「ジオルガノシロキサン単位」とも呼ばれる)を含み、
【化18】

式中、Rの発生はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、C1−13の1価有機ラジカルである。例えば、Rは独立に、C−C13アルキル基、C−C13アルコキシ基、C−C13アルケニル基、C−C13アルケニルオキシ基、C−Cシクロアルキル基、C−Cシクロアルコキシ基、C−C14アリール基、C−C10アリールオキシ基、C−C13アリールアルキル基、C−C13アリールアルコキシ基、C−C13アルキルアリール基、あるいはC−C13アルキルアリールオキシ基である。上記の官能基類は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、あるいはそれらの組み合わせで、その全体あるいは一部をハロゲン化されていてもよい。上記R基類の組み合わせを、同じ共重合体に用いてもよい。
【0119】
式(8)の中のDの値は、熱可塑性組成物中それぞれの成分の種類や量によって、また、組成物の所望の特性によって、および同様な検討によって、大幅に変わる。一般に、Dはその平均値が2〜1,000であり、具体的には2〜500、さらに具体的には5〜100である。Dの平均値が10〜75の実施形態もあれば、40〜60実施形態もある。Dが例えば、40以下などのより低い値でれば、比較的多量のポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体を使用することが望ましい。反対に、Dが例えば、40以上などのより高い値であれば、ポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体の量を比較的少量にすることが必要である。
【0120】
最初のポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体と次のポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体(あるいはそれ以上)を使用することもでき、この場合には、最初の共重合体のD値は次の共重合体のD値より少ない値とする。
【0121】
ある実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(9)の構造単位の繰り返しにより提供され、
【化19】

式中、Dは、上記に定義のもであり、Rは、それぞれ独立して同じであっても異なっていてもよく、上記に定義したものであり、Arはそれぞれ独立して同じであっても異なっていてもよく、置換あるいは未置換のC−C30アリーレンラジカルであり、ここでは、結合は芳香族部分に直接接続している。式(9)の好適なAr基は、例えば、上記の式(3)、(4)、あるいは(7)のジヒドロキシアリーレン化合物などの、C−C30ジヒドロキシアリーレンから誘導することができる。前述のジヒドロキシアリーレン化合物類を少なくとも1つ含む組み合わせを使用することもできる。好適なジヒドロキシアリーレン化合物類の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンなどがある。前述のジヒドロキシ化合物類の少なくとも1つを含む組み合わせも用いられる。
【0122】
式(9)の単位は、式(10)の対応するジヒドロキシ化合物から誘導され、
【化20】

式中、R、ArおよびDは上記に記述のものである。式(10)の化合物類は、ジヒドロキシアリーレン化合物を、相間移動条件下で、例えばα,ω−ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンと反応させて得られる。
【0123】
別の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは式(11)の単位を含んでおり、
【化21】

式中、RとDは上記に記載のものであり、Rの発生はそれぞれ独立に、二価のC−C30アルキレンであり、ここで、重合化されたポリシロキサン単位は、対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12)の構造単位の繰り返しによって提供され、
【化22】

式中、RとDは上記に定義のものである。式(12)のRはそれぞれ独立して、二価のC2−C8脂肪族基である。式(12)のMはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、ハロゲン、シアン、ニトロ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ基、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルコキシ、C−C10アリール、C−C10アリールオキシ、C−C12アリールアルキル、C−C12アリールアルコキシ、C−C12アルキルアリール、あるいはC−C12アルキルアリールオキシであり、nはそれぞれ独立に0、1、2、3、あるいは4である。
【0124】
ある実施形態では、Mは臭素または塩素、メチル、エチル、あるいはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、あるいはプロポキシなどのアルコキシ基、あるいは、フェニル、クロロフェニル、あるいはトリルなどのアリール基であり;Rはジメチレン、トリメチレン、あるいはテトラメチレン基であり;RはC1−8アルキル、トリフルオロプロピル、あるいはシアノアルキルなどのハロアルキル、あるいは、フェニル、クロロフェニル、あるいはトリルなどのアリール基である。別の実施形態では、Rは、メチル、あるいはメチルとトリフルオロプロピルとの混合物、あるいはメチルとフェニルとの混合物である。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、Rは二価のC−C脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0125】
式(12)の単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン:式(13)から誘導することができ、
【化23】

式中、R、D、M、Rおよびnは上記に記載のものである。そのようなジヒドロキシポリシロキサン類は、有効なプラチナに触媒された式(14)のシロキサン水素化物間の付加によって製造され、
【化24】

式中、RとDは前述に定義されたものであり、脂肪族不飽和の一価フェノールである。好適な脂肪族不飽和の一価フェノール類には、例えば、オイゲノール、2−アリルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェニール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェニール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェニール、および2−アリル−4,6−ジメチルフェニールなどがある。前述の少なくとも1つを含む混合物類を使用することもできる。
【0126】
ポリシロキサン−ポリカーボネートは、50〜99重量%のカーボネート単位と1〜50重量%のシロキサン単位とを含むことができる。この範囲内で、ポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体は、70〜98重量%のカーボネート単位を、具体的には75〜97重量%のカーボネート単位を、また、2〜30重量%のシロキサン単位を、具体的には3〜25重量%のシロキサン単位を含むことができる。
【0127】
ある実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートは、ポリシロキサン単位と、例えば式(3)で、AおよびAがそれぞれp−フェニレン、Yがイソプロピリデンであるジヒドロキシ化合物などのビスフェノールAから誘導されるカーボネート単位とを含むことができる。ポリシロキサン−ポリカーボネートは重量平均分子量(Mw)が、架橋型スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、サンプル濃度を1mg/mlとし、ポリカーボネート標準で較正したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定して、2,000〜100,000、具体的には5,000〜50,000とすることができる。
【0128】
ポリシロキサン−ポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定した溶融体積流量が1〜50cc/10min、具体的には2〜30cc/10minとすることができる。違った流量特性を持ったポリシロキサン−ポリカーボネートを混合して全体的に所望の流特性を達成してもよい。
【0129】
ポリカーボネート成分の量は、具体的な用途によって変わってくる。一般に、ポリカーボネート成分の量は5〜90重量%である。別の実施形態では、その量は20〜70重量%である。
【0130】
変性ポリブチレンテレフタレート共重合体類を含有する組成物にはさらに、難燃剤、安定剤、離型剤、ポリ(テトラフルオロエチレン)−スチレンアクリロニトリロ混合物類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される添加剤が含まれる。例えば、本発明の成形組成物はさらに、熱安定剤を含むことができる。好適な熱安定剤としては、これに限定されないが、フェノール安定剤類、有機チオエーテル安定剤、有機リン化物安定剤、ヒンダードアミン安定剤、エポキシ安定剤、およびそれらの混合物類などがある。耐熱安定剤は固体または液体の形で添加できる。
【0131】
成形組成物中の熱安定剤の量は一般に、少なくとも0.01重量%である。熱安定剤の量が0.01〜0.5重量%の実施形態もあれば、0.05〜0.2重量%の実施形態もある。ある実施形態では、熱安定剤の量は0.01〜1重量%である。
【0132】
紫外線安定剤を使用することができる。ある実施形態では、紫外線安定剤の量は少なくとも0.05重量%である。別の実施形態では、その量は0.05〜1重量%である。
【0133】
別の実施形態では、PET由来の変性PBT成分の含有に加え、成形組成物にはさらに離型剤が含まれる。離型剤の例としては、天然パラフィンおよび合成パラフィンに限定されないが、ポリエチレンワックス類、フルオロカーボン類、およびその他の炭化水素離型剤類;ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、およびその他の高級脂肪酸離型剤類、ヒドロキシ脂肪酸類、およびその他の脂肪酸離型剤類;ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド類、アルキレンビス脂肪酸アミド、および他の脂肪酸アミド離型剤類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびその他の脂肪族アルコール類、多価アルコール類、ポリグリコール類、ポリグリセロール類およびその他のアルコール系離型剤類;ブチルステアリン酸塩、ペンタエリスリトールテトラステアリン酸塩、およびその他の、脂肪酸低級アルコールエステル類、脂肪酸多価アルコールエステル類、脂肪酸のポリグリコールエステル類、およびその他の脂肪酸エステル離型剤類;シリコーン油、およびその他のシリコーン離型剤類、および前述のものの任意の混合物類などが含まれる。離型剤は、他の添加物類、例えばポリ(テトラフルオロエチレンスチレン)アクリロニトリルなどと共に使用することができる。
【0134】
成形組成物中の離型剤の量は、一般に少なくとも0.1重量%である。離型剤の量が0.1〜2重量%の実施形態もあれば、0.5〜1重量%の実施形態もある。ある実施形態では、離型剤の量は0.01〜0.5重量%である。
【0135】
カルボキシ反応性材料は単官能基であるか、あるいは、ポリマまたは非ポリマのいずれかである多官能基のカルボキシ反応性材料である。カルボキシ反応性基類には、エポキシド類、カルボジイミド類、オルトエステル類、オキサゾリン類、オキシラン類、アジリジン類、および無水物類が含まれる。カルボキシ反応性材料はさらに、記載の反応条件において反応性かまたは非反応性のいずれかである、その他の官能基を含むことができる。反応性部分の限定されない例としては、例えばエポキシ変性シリコーンなどの反応性シリコン含有材料や、シランモノマ類およびポリマ類などがある。必要であれば、触媒かあるいは共触媒系を用いて、カルボキシ反応性材料とポリエステルとの反応を促進することもできる。
【0136】
カルボキシ反応性材料に関連する「多官能基性」あるいは「複官能基性」とは、材料のそれぞれの分子中に少なくとも2つのカルボキシ反応性基が存在することを意味している。特に有用な多官能基カルボキシ反応性材料としては、少なくとも2つの反応性エポキシ基を有する材料が含まれる。多官能基エポキシ材料には、芳香族およびまたは脂肪族残基類が含まれる。その例としては、エポキシノボラック樹脂類、エポキシ化植物性(例えば、大豆、アマニ)油類、テトラフェニルエチレンエポキシド、スチレン−アクリル共重合体含有ペンダントグリシジル基、グリシジルメタクリル含有ポリマ類および共重合体類、および、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの二官能基エポキシ化合物類などが挙げられる。そのために、本発明では、カルボキシ反応成分が、単官能基エポキシ、複官能基エポキシおよびそれらの組み合わせから構成される群から選択される実施形態を含んでいる。
【0137】
ある実施形態では、多官能基カルボキシ反応性材料はエポキシ機能性ポリマであり、それは本明細書で用いられているように、オリゴマ類を含んでいる。エポキシ基を複数有する典型的なポリマ類には、エチレン性不飽和化合物類(例えば、スチレン、エチレンなど)の1つあるいは複数と、エポキシ含有のエチレン性不飽和モノマ(例えば、グリシジルC1−4(アルキル)アクリレート、アリルグリシジルエタクリレート、およびグリシジルイタコン酸塩)との反応生成物を含んでいる。
【0138】
例えばある実施形態では、多官能基カルボキシ反応性材料は、側鎖として組み込まれたグリシジル基類を含むスチレン−アクリル共重合体(オリゴマを含む)である。いくつかの有用な例が、Johnson Polymer,LLC出願の、国際特許出願WO03/066704 A1に記載されており、参照によりその内容の全体が本明細書に援用される。これらの材料は、側鎖として組み込まれたグリシジル基類を有するスチレンおよびアクリレート構成ブロックを持つ共重合体類に基づいている。1つのポリマ鎖に多くのエポキシ基があることが好ましく、例えば、少なくとも約10個であり、あるいは約15個以上であり、あるいは約20個以上である。これらのポリマ材料の分子量は一般に、約3,000以上であり、好ましくは約4,000以上、より好ましくは約6,000以上である。これらはJohnson Polymer, LLCより、Joncryl(登録商標)の商標名で販売されており、Joncryl(登録商標) ADR 4368が好適である。
【0139】
カルボキシ反応性共重合体の別の例は、エポキシ機能性のC1−4(アルキル)アクリルモノマと、非機能性のスチレンモノマおよびまたはC1−4(アルキル)アクリレートモノマおよびまたはオレフィンモノマとの反応生成物である。ある実施形態では、エポキシポリマは、エポキシ機能性(メタ)アクリルモノマと、非機能性スチレンモノマおよびまたは(メタ)アクリルモノマとの反応生成物である。これらカルボキシ反応性材料は、分子量が比較的小さいことが特徴である。別の実施形態では、カルボキシ反応性材料は、エポキシ機能性(メタ)アクリルモノマとスチレンから作られるエポキシ機能性スチレン(メタ)アクリル共重合体である。ここで用いられているように、「(メタ)アクリル」は、アクリルモノマとメタアクリルモノマの両方を含んでおり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートモノマとメタアクリレートモノマの両方を含んでいる。特定のエポキシ機能性(メタ)アクリルモノマ類には、これに限定されないが、アクリル酸グリシジルやメタクリル酸グリシジルなどの1,2−エポキシ基類を含有するものが含まれる。
【0140】
好適なC1−4(アルキル)アクリレートコモノマ類は、これに限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、およびメタクリル酸イソボニルなどがある。これらのコモノマ類の少なくとも1つを含む組み合わせも用いられる。
【0141】
好適なスチレンモノマには、これに限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、およびこれらの少なくとも1つを含む混合物類が含まれる。ある実施形態では、スチレンモノマは、スチレンおよびまたはα−メチルスチレンである。
【0142】
別の実施形態では、カルボキシ反応性材料は、2つの末端エポキシ機能性と、任意に付加エポキシ(あるいはその他の)官能基を持つエポキシ化合物である。該化合物はさらに、1個の炭素、水素および酸素を含むことができる。二官能基エポキシ化合物類、特に1個の炭素、水素および酸素を含有する二官能基エポキシ化合物類は、その分子量が約1000g/mol以下とすることができ、ポリマ樹脂とのブレンドが容易に行える。ある実施形態では、二官能基エポキシ化合物類は、シクロヘキサン環上にエポキシド基の少なくとも1つを持っている。典型的な二官能基エポキシ化合物類としては、これに限定されないが、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジピン酸エステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、グルシドール、アミン類およびアミド類のジグリシジル付加体、フタル酸のジグリシジルエステルやヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステルなどのカルボン酸のジグリシジル付加体、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸エステル、ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられる。
特に、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4エポキシシクロヘキシルカルボキシレートは好適である。
【0143】
二官能基エポキシド化合物類は、当業者に周知の技術で作られる。周知の技術を用いて、例えば、対応するα−、あるいはβ−ジヒドロキシ化合物類を脱水してエポキシド基を作るか、あるいは、対応する不飽和化合物類を過酢酸などの過酸で処理してエポキシド化する。また、該化合物は市販もされている。
【0144】
複数のエポキシ基を備えたその他の好適な材料は、側鎖として組み込まれたグリシジル基を含有する、アクリルおよびまたはポリオレフィン共重合体類およびオリゴマ類である。好適なエポキシ機能性材料は、ダウケミカル社から、D.E.R.332、D.E.R.661およびD.E.R.667の商標名で、また、Resolution Performance Products社から、EPON Resin 1001F、1004F、1005F、1007F、および1009Fの商標名で、また、Shell Oil社から、Epon826、828、および871の商標名で、また、Ciba−Giegy社から、CY−182およびCY−183の商標名で、また、Dow Chemical社から、ERL−4221およびERL−4299の商標名で販売されている。実施例で記載のように、Johnson Polymer社は、ADR4368および4300の商標名で知られるエポキシ機能性材料の供給者である。多官能基カルボキシ反応性材料のさらなる例としては、Arkema社からLOTADER(登録商標)の商標名で販売されている、エチレンおよびグリシジルメタクリレート(GMA)のCO−あるいはターポリマ含有単位がある。
【0145】
さらに別の実施形態では、カルボキシ反応性材料は、2つあるいはそれ以上の反応性基を有する複官能基材料であり、それらの基のなかの少なくとも1つはエポキシ基であり、さらにそれらの基の少なくとも1つはポリエステルと反応する基であるがエポキシ基ではない。上記の第2の反応性基は、ヒドロキシル、イソシアネート、シランなどとすることができる。
【0146】
そうした複官能性カルボキシ反応性材料としては、エポキシとシラン機能性基を含んでおり、好適には、末端エポキシ基およびシラン基である。上記のエポキシシランは一般に、いずれの種類のエポキシシランであってもよく、エポキシが分子の一端に存在して脂環基に付いており、シランは他端に存在している。上記の一般的な記載の範囲内における所望のエポキシシランとしては下記構造のものであり、
【化25】

式中、mは1、2あるいは3の整数であり、nは1〜6(1および6を含む)の整数であり、X、YおよびZは同じであっても異なっていてもよいが好適には同じものであり、炭素原子数1〜20(1および20を含む)のアルキル基、炭素原子数4〜10(4および10を含む)の環式アルキル、炭素原子数1〜10(1および10を含む)のアルキレンフェニル、および、炭素原子数1〜6(1および6を含む)のフェニレンアルキルである。この範囲における望ましいエポキシシランは、mが2、nは1または2だが望ましくは2、X、YおよびZは同じであり、炭素原子数が1つ、2つあるいは3つのアルキルである。この範囲の中で特に使用可能なエポキシシランは、mが2、nが2であり、X、YおよびZは同じで、メチルまたはエチルのものである。
【0147】
そのような材料としては、例えば、GE社からCoatOSil1770の商標名で販売されているβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランがある。他の例としては、GEからSilquest A−186の商標名で販売されているβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、同じくGEからSilquest Y−15589の商標名で販売されている3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0148】
カルボキシ反応性材料は、視覚的およびまたは計測される物理的特性を向上させるに有効な量、ポリエステル組成物に添加される。ある実施形態では、カルボキシ反応的な材料は、組成物の耐溶剤性、特に組成物の耐燃料性向上に有効な量、ポリエステル組成物に添加される。当業者であれば、不必要な実験を行うことなく、本明細書に提供されたガイドラインを使用して、任意のカルボキシ反応性材料の最適な種類や量を決定することができるであろう。
【0149】
カルボキシ反応性材料の種類や量は、組成物の所望の特性に依存しており、組成物中および同様な検討中に存在するその他の添加剤の種類や量は一般に、組成物全重量に対して少なくとも0.01重量%である。その量が0.01〜20重量%の実施形態もあれば、0.01〜30重量%、あるいはそれ以上の実施形態もある。
【0150】
耐衝撃性改良剤成分は一般に、ゴム性物質であり、それは好適な量用いられれば、組成物にエネルギ吸収特性を付与する。好適なゴム性耐衝撃性改良剤としては、(a)メタクリレートブタジエンスチレンゴム、(b)アクリレートゴム、(c)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートゴム、(d)高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、(e)アクリレート−オレフィン共ポリマ、(f)ポリオレフィン改質剤、あるいは(g)シリコンーアクリル改質剤(例えば、三菱レーヨン社製のMETABLENTMSなど)などがある。ある実施形態では、耐衝撃性改良剤は、メタクリレートブタジエンスチレンゴム、アクリレートゴム、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート、高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン,シリコン−アクリリック改質剤、およびそれら組み合わせから構成される群から選択される。
【0151】
特に、耐衝撃性改良剤は、高ゴムグラフト耐衝撃性改良剤であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)を含むことができる。(a)ゴム改質モノビニリデン芳香族グラフト共重合体と、(b)グラフトされていない剛性の共重合体とを含むゴム改質モノビニリデン芳香族樹脂は一般に、モノビニリデン芳香族モノマと1つあるいは複数のポリマとの混合物を、1つあるいは複数のゴム性ポリマ物質の存在下、グラフト重合により調製される。存在するゴム量に応じて、別の基質あるいは連続する剛性相のグラフトされていないポリマ(共重合体)が、ゴム改質モノビニリデン芳香族グラフトポリマと同時に得られる。また、樹脂は、剛性モノビニリデン芳香族共重合体と1つあるいは複数のゴム改質モノビニリデン芳香族グラフト共重合体とを混合することにより作製される。
【0152】
ゴム改質樹脂は通常、ゴム改質グラフト共重合体を、樹脂全体量に対して5〜100重量%含み、より好適には10〜95%含み、さらにより好適には20〜90重量%含み、最も好適には15〜85重量%含んでおり、グラフトされていないポリマを、0〜95重量%含み、より好適には5〜90重量%含み、さらにより好適には10〜80重量%含み、最も好適には15〜85重量%含んでいる。ゴムの濃度は高い方が望ましい。
【0153】
30重量%以上のゴム性ポリマ基質を有するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体は特に好適であり、約45重量%以上はより好適である。最も好適なゴム性基質は、ポリブタジエンまたはスチレン−ブタジエン共重合体を含んでいる。高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体も好適である。「高ゴムグラフト」とは一般に、少なくとも約30重量%、好適には少なくとも約45重量%の剛性ポリマ相が、ゴム性グラフト共重合体に化学的に結合している、あるいはグラフトしているグラフト共重合体樹脂を指す。ABSタイプの好適な高ゴムグラフト共重合体は、例えば、BLENDEX(登録商標)樹脂grade336あるいは338の商標名で販売されている。好適な高ゴムグラフトの1つは、GE社AdvancedMaterials部門の、CYCOLAC(登録商標) C874202樹脂である。グラフト共重合体樹脂の生産プロセスは、Lowryの発明になる米国特許第6,384,129号(発明の名称:Semi−batch Emulsion Process for Making Diene Rubber Latex, Rubber Latex Made Thereby,and Graft Copolymer Made Therefrom)に記載されている。
【0154】
その他の代表的な耐衝撃性改良剤は、以下の材料、あるいはこれらの材料の2つあるいは3つ以上のブレンドである。(1)Paraloid EXL3300:ブチルアクリレート−メタクリレート−コアシェルゴム(2)ASA−HRG:アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体(3)AES:アクリロニトリル−スチレン−EPDM共重合体、ここでEPDMはエチレン−プロピレン非共役ジエンエラストマである。(4)Lotader AX8900:エチレン−メタクリレート−グルシジルメタクリレート、ここでメタクリレートの含有量は約8%である。耐衝撃性改良剤の含有量は好適には40重量%未満であり、より好適には30重量%未満であり、最も好適には20重量%未満である。
【0155】
コアシェル共重合体類とその製造方法、およびポリカーボネートと組み合わせた耐衝撃性改良剤としての利用方法については、米国特許第3,864,428号および同第4,264,487号に記載されている。好適なコアシェル共重合体類は、ガラス転移温度(「Tg」)が約10℃以下のゴム性の「コア」を含み、かつ、例えばアシレートモノマ類や、ブチルアシレート、およびブタジエンなどの共役ジエンモノマ類などのモノエチレン性不飽和モノマ類の1つあるいは複数から誘導される繰り返し単位を含んでおり、さらに、Tgが約10℃以上であり、かつ、モノエチレン性不飽和モノマから誘導された繰り返し単位を有する剛性の「シェル」を有するものである。
【0156】
耐衝撃性改良剤の量は一般に少なくとも1重量%である。耐衝撃性改良剤の量が1重量%〜50重量%の実施形態もあれば、その量が5〜25重量%の実施形態もある。
【0157】
組成物にはさらにポリエステルを含有することができる。ある実施形態では、組成物は、ポリエチレンテレフタレート由来の変性ポリブチレンテレフタレートを含まないポリエステルを含有する。そのため、本発明は、組成物が、ポリエチレンテレフタレート由来の変性ポリブチレンテレフタレートを含まない第2のポリエステル成分も含有する実施形態を含んでいる。
【0158】
本発明の成形組成物は一般に、適切な量の充填材成分とPET由来のPBT成分とを、押出機(あるいは機能的に等価な混合装置)内で適切な条件下で混合して製造できる。PET由来のPBT成分と充填材成分(および任意の追加成分)は、同時に混合されても別々に混合されてもよく、あるいは、成分のうちの2つあるいは3つを含む組み合わせで混合されてもよい。押出プロセスでは、押出機に1回通してもあるいは複数回通してもよい。
【0159】
本発明には、組成物の製造方法および物品の製造方法が含まれる。例えば、本発明の任意の組成物の成分の溶融混合を含む組成物製造方法が含まれる。該製造方法には、溶融組成物の形状化、押出、および成形が含まれる。該方法には溶融混合組成物を好適な物品に成形するステップが含まれる。また、本組成物類には、その任意の組成物から誘導される物品が含まれる。
【0160】
本発明の成形組成物によって、様々な用途で有用な物性が付与される。例えば、本発明の成形組成物によって付与される耐衝撃特性は一般に、室温で、少なくとも10lb−ft/inch(500J/m、ノッチなしアイゾッド衝撃)である。前記成形組成物によって付与された耐衝撃性が500〜2500J/mの実施形態もあれば、870〜950J/mの実施形態もある。
【0161】
溶融体積速度(温度250℃、5kgfでの)は一般に5〜30cc/10minである。別の実施形態では、15cc/10minである。成形組成物の引張弾性率(MPa)は一般に少なくとも5,000MPaである。別の実施形態では、弾性率は5,000MPa〜50,000Mpaである。別の実施形態では、引張弾性率は24,000〜29,000MPaである。
【0162】
成形組成物の引張降伏点伸び率(%)は一般に少なくとも0.5%である。引張降伏点伸び率(%)が0.5%〜5%の実施形態もあれば、1.3〜1.6%の実施形態もある。成形組成物によって付与される引張破断伸び率(%)は一般に少なくとも0.5%である。引張破断伸び率(%)が0.5%〜5%の実施形態もあれば、1.3〜1.6%の実施形態もある。成形組成物によって付与される引張降伏点応力(MPa)は一般に少なくとも30MPaである。引張降伏点応力(MPa)が30MPa〜100Mpaの実施形態もあれば、46.8〜47.5MPaの実施形態もある。
【0163】
成形組成物によって付与される引張破断応力(MPa)は一般に少なくとも50MPaである。引張破断応力(MPa)が50〜300MPaの実施形態もあれば、149.7〜153.5MPaの実施形態もある。成形組成物によって付与される曲げ弾性率(MPa)は一般に少なくとも5,000MPaである。曲げ弾性率(MPa)が5,000〜50,000MPaの実施形態もあれば、13,500〜14,050MPaの実施形態もある。成形組成物によって付与される曲げ降伏点応力(MPa)は一般に少なくとも100MPaである。曲げ降伏点応力(MPa)が100〜400MPaの実施形態もあれば、235〜245MPaの実施形態もある。
【0164】
成形組成物によって付与される、1.82MPaの応力下における3.2mm棒での熱変形温度は、一般に少なくとも50℃である。熱変形温度が50℃〜300℃の実施形態もあれば、199〜205℃の実施形態もある。組成物中には、その特性に影響を与える材料を含むことができる。組成物には、例えば、その熱変形温度を少なくとも1〜10℃上昇させられる材料をさらに含むことができる。そのような材料は、微細粒径タルク、ナノ粒子、ポリ(テトラフルオロエチレン)、粘土類、雲母、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択することができる。
【0165】
成形組成物によって付与される成形収縮は一般に5%以下である。成形収縮が0〜5%の実施形態もあれば、0.52〜0.56%の実施形態もある。組成物の固有粘度は変えられる。ある実施形態では、組成物の固有粘度は0.55dL/g以上である。
【0166】
組成物は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類の代わりに、モノマ系ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類で作った同様の組成物の溶融体積速度(MVR)よりも高いMVRを示すことができる。例えば、ISO1133に準じ、温度250℃、負荷力5kgf、保持時間240秒、2.1mmのオリフィスの条件にて、ペレットで測定した組成物のMVRは、モノマ系ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類から作られた組成物と比較して少なくとも10%高い。ある実施形態では、組成物のMVRは、上記と同様の条件で測定して、ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類の代わりに、モノマ由来ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類で作られた組成物と比較して10%〜80%高い。別の実施形態では、該組成物の熱変形温度は、0.455MPaの応力下、ASTM D648に準拠して測定し、少なくとも80℃とすることができる。
【0167】
本発明には、組成物と、該組成物から成形された物品と、該組成物から押出された物品とから構成される群から選択される要素に、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートを含む組成物と比較して、低い熱変形温度と高い溶融流量とが、該組成物によって付与される実施形態を包含する。別の実施形態では、該組成物は、さらに十分な量の無機系充填材を含んでおり、それを含まない組成物と比較して、熱変形温度が高い。別の実施形態では、該組成物は、さらに十分な量の有機添加剤を含んでおり、それを含まない組成物と比較して、熱変形温度が高い。
【0168】
本発明は、従来は利用できなかった利点を提供する。例えば、本発明は、イソフタル基類やエチレングリコール基類を含んだ構造上異なる材料を使用しているにもかかわらず、PBTをベースとする組成物と同様に機能する成形組成物を提供する。該成形組成物は、従来調製されてきたPBTを必要としないので、PETの利用に対する需要を増やし、こうしてスクラップPETをごみ処分場で処分する必要性や焼却する必要性を軽減することができる。
【0169】
さらに、本組成物に用いられるPET由来のランダム変性PBT共重合体類の製造プロセスでは、好都合なことに、二酸化炭素排出量と固形廃棄物量が実質的に削減できる。発明的プロセスで製造されるPET由来のポリエステルランダム変性PBT共重合体類は、廃棄PETから作られモノマ類から作られないために、該プロセスは、二酸化炭素排出量と固形廃棄物量とを著しく削減する。通常ポリエステル類の製造に使われるジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸ポリエステルを構成する炭素を使用せずに、その代わりに、廃棄ポリステルなどのPET成分を用いるために、炭素廃棄物量が削減(すなわち原油の節約)される。原油からDMTまたはTPAを作るプロセスは、高度にエネルギ集約的であり、その結果、非再生エネルギ資源の燃焼によって相当量のCOが大気に排出される。PET由来のPBTの製造に、DMTまたはTPAを使用しないことによって、二酸化炭素排出量の削減が図られる。ある実施形態では、PET由来変性PBTの製造プロセスによって、モノマ類から未使用のPBTホモポリマ類を作るプロセスと比較して、製造されるPET由来変性PBT1kg当たり少なくとも1kgのCO排出量が削減される。別の実施形態では、PET由来変性PBTの製造プロセスによって、モノマ類から未使用のPBTホモポリマ類を作るプロセスと比較して、製造されるPET由来のPBT変性PBT1kg当たり1〜1.5kg、あるいはそれ以上のCO発生量が削減される。さらに、副産物であるエチレングリコールを回収し、生産時に通常のエチレングルコールに代えて用いれば、エネルギの節約およびまたは二酸化炭素排出量の削減ができる。
【0170】
さらに、BDO源を、コハク酸など、供給材料から誘導されるバイオマスからとすると、二酸化炭素節約量は2つの理由からさらに上昇する。バイオ由来のコハク酸は、化石燃料の炭素資源に対して、大気中の炭素から誘導された糖またはその他のバイオ由来炭化水素から作られ、このために、バイオマス資源から得られたコハク酸をベースとしたBDOから誘導されるポリマの環境に与えるインパクトは低減される。更に、コハク酸を生産する発酵プロセスでは入力として二酸化炭素を必要とするために、二酸化炭素はさらに削減されることになる。
【0171】
好都合なことに、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類を含む成形組成物は、CO放出量の削減指標が備わっている。本明細書で定義するCO放出量削減指標とは、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートで作られる組成物1kgを製造する時に生成するCO量(重量)と比較して、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類を含む組成物1kgを製造する際に節約されるCOの量(重量)である。本組成物は一般に、CO放出量削減指標が約0.06kg超であり、またこの指標を0.06kg〜2.25の範囲で変えることができる。
【0172】
この特徴の根拠を以下に記載する。未使用のモノマ由来ポリブチレンテレフタレートホモポリマの通常の製造プロセスと、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類1kgの製造プロセスとにおけるCO生成量の差は、1.3kg〜2.5kgであり、より好適には1.7kg〜2.2kgである。なおこの差は、廃棄PETからオリゴマ類までそして変性PBTまでの全体プロセスに対して、原油から始まってモノマ類までそしてPBTまでの全体プロセスについての計算に基いているものである。言いかえれば、1kgの変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の製造プロセスでは、原油から1kgの未使用PBTを作るプロセスと比較して、COの発生量は1.3〜2.5kg少ない。本組成物(変性PBTランダム共重合体類の量:5〜90重量%)におけるCO放出量の削減指標の範囲は、組成物中の該ポリブチレンテレフタレートランダムの下限量を1.3倍し(0.05×1.3=0.065)、上限量を2.5倍する(0.90×2.5=2.25)ことで求められる。
【0173】
これらの結果は、材料とエネルギ収支計算(化学工学技術では周知の計算)を用いることによって、また、PETから変性PBTランダム共重合体類を製造するために使われるエネルギ量と、テレフタル酸からPBTを作るために使われるエネルギ量とを比較することによって、誘導あるいは立証される。
【0174】
本発明は、以下の具体的な実施例でさらに述べられるが、ここでは特に明記されないかぎり、部およびパーセンテージはすべて重量による。
【0175】
(実施例)
(材料)
下表1は実施例で用いられた材料を示す。
【表1】


(実施例1)
【0176】
変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を以下の方法によりポリエチレンテレフタレートから誘導した。透明のスクラップPETボトルを販売元から入手した。スクラップ洗浄工程では、まず湯を用いてスクラップPETを手で洗浄し、その後で着色ボトルとPVCボトルを手で分類し、圧搾し、水に浮かべてPP、ラベル、キャップなどを分離し、アルカリ洗浄を行って接着剤を除去し、最後に削除することを洗う、そして、最後に、脱イオン水で洗ってアルカリを除去して乾燥させた。得られたPETフレークを解重合ステップにおける主原料として用いた。消費後の再利用PETフレークの固有粘度(iv)は0.68〜0.78dl/g、仕様上の融点は245〜255℃であった。PVC含有量は仕様上10ppm以下であった。ブタンジオールはバスフ(BASF)社から入手し、純度は99.5重量%超であった。エチレングリコールはメルク(Merck)社から入手し、純度は99.5重量%超であった。使用したTPT触媒は、Tyzor等級の製品であり、デュポン(Dupont)社から販売されている。
【0177】
(エチレングリコールによる解重合(解糖)−第1混合物の調製)
PETフレークの解重合を、PET(“mer”繰り返し単位)対EGのモル比を、1:0.8〜1:2.0に変化させて行い、解重合生成品を得た。反応は、触媒(チタン、アンチモン,あるいはスズ化合物)の存在下(50〜125ppm)で、あるいは触媒の添加なしで行った。プロセスの条件は、圧力1.0bar〜6bar、温度200℃〜260℃とした。解重合反応の合計時間は20〜120minであり、好ましくは30〜100minであった。この後ろ過して黒い物質およびその他の不溶の不純物を取り除いた。こうして得られた物質を第1の混合物とした。用いた解重合反応条件を表2に示した。
【表2】

エステル交換反応−第2の混合物の調製(大気圧下)上記の第1混合物とBDOとを触媒の存在下あるいは触媒なしで反応させて、エステル交換反応を行った。助触媒として、10〜14ppmのナトリウムメトキシド、あるいは、その他のアルカリ金属塩が使用できる。BDOは、化学量論的な要求量に対して過剰量用い、過剰量と化学量論的要求量とのモル比を2.0〜4.0とした。反応は、追加触媒(50−120ppmのTi、Sn、Sb触媒、あるいはそれらの組み合わせ)の存在下、温度200〜245℃より好適には210〜235℃にて、大気圧下で10〜40分間、より好適には15〜30分間行った。この間、蒸発分は、蒸留カラムを通しここで、EGおよびTHFはBDOから分離後除去し、BDOはリアクタ内に還流した。リアクタ内のこうして得られた物質を第2の混合物とした。この第2の混合物の特性付けは行わず、この反応を以下の通り継続して行って第3の混合物を形成した。第3混合物の調製(圧力:95kPa〜50kPaにて)第2混合物を、最初に圧力95〜80kPaに10〜40分間加圧し、より好適には15〜30分間加圧した。この間、温度を190〜235℃にコントロールし、より好適には190〜220℃にコントロールし、蒸発分は蒸留して、濃縮蒸気中のBDOの大部分を還流してEG、THF、および微量のBDOを取り除いた。この段階で、エステル交換反応における遊離EGおよび結合EGの合計量の80%を蒸留によって除去した。続いて、圧力を75〜50kPaへと徐々に減圧し、温度を190〜235℃に維持し、より好適には190〜220℃に維持した。エステル交換反応の合計時間を30〜150分に維持し、より好適には90〜120分に維持した。EG、THFおよび微量のBDOを前述のように蒸留によって取り除き、BDOの大部分は連続的にリアクタ内に還流した。こうして第3の混合物を得た。用いた反応条件と、エステル交換反応の終了時に蒸留液に集められた種々の成分の量を表3に示した。
【表3】

BDOの再利用によって、エステル交換反応リアクタにおけるBDOとEGとの比が好ましいものとなり、また、エステル交換反応の時間を短くすることによって生産性も向上した。EGは解重合ステップで再使用し、BDOはエステル交換反応ステップで再使用した。THFおよび水混合物を貯蔵容器へ送った。第3混合物を用いた重縮合を、温度230〜265℃にて、好適には245〜255℃にて行った。圧力を0.01kPa〜1Kpaに徐々に減圧して分子量を形成させた。上記反応を45〜120分間で、好適には45〜75分間で行った。重縮合中に、過剰のBDOと残余のEGは、THFおよび水と共に除去された。蒸発副産物を蒸留して、EG、BDO、THFおよび水混合物を分離した。最終のポリマ生成品(PBT)は、I.V.が0.5〜1.5dl/gmであり、EG含有量は、最終ポリマに対してそれぞれ0.5重量%以下であった。通常、IPA含有量はポリマ中2%未満であった。最終ポリマの融点は、215〜222℃であった。重縮合用いた実験条件および蒸留液の組成物を、表4に示した。
【表4】

結果として、ポリエチレンテレフタレートからの残基を含む変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体が製造できた。変性ポリブチレンテレフタレートを固相重合させた。
(実施例2−5:ガラス充填組成物)
【0178】
表5に示す成分量を持つガラス充填組成物を製造しテストした。
【表5】

ポリカーボネート105(等級100のパウダ)およびLEXAN ML8199−111Nの両方をGEプラスチック社から入手した。抗酸化剤は、チバガイギ(Ciba Geigy)社からIRGANOXの商標名で販売されているIRGANOX(登録商標)100を入手した。この抗酸化剤は、四官能基性2,6−ジ−t−ブチルヒンダードフェノールである。モノリン酸塩ナトリウム添加剤はBrenntag Chemicals社から入手した。炭化水素ワックス放出添加剤は、ハネウェル(Honeywell)社から購入した離型剤として添加されている。直鎖低密度ポリエチレン添加剤は、Nova Cheminals社から購入した。ガラス繊維添加材は、PPGインダストリーズ社から入手した標準の13μmガラス繊維である。PETSは、FACI社から購入した離型剤であるペンタエリスリトールテトラステアリン酸塩である。SAPPはピロリン酸二水素ナトリウムであり、Ulrich Chemicals 社より入手した。タルクは、Barretts社から販売されている商用グレードである。アルカン硫酸ナトリウム帯電防止ペレットは、Clariant社からHostastat HS−3の商標名で販売されている。低ivで急速結晶性PETはivが0.55であり、Inivsta社から入手した。
(調製手順)
(実施例2)
【0179】
上記に示した実施例2の成分を、バレルとダイヘッド温度が240〜265℃、スクリュ回転数150〜300rpmで、吸引孔混合スクリュを備えた89mm一軸スクリュ押出機に押出した。この押出機は、ガラスのための下流フィーダを備える、違った材料用の8台の独立フィーダを有しており、最大処理能力600lbs/hr(272.2kg/hr)で操作される。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のvan Dorn成形機で射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。
(実施例3(比較実施例))
【0180】
ポリエチレンテレフタレート由来の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の代わりに、モノマ系の「未使用」PBTを用いた以外は実施例2の手順に従った。
(実施例4)
【0181】
実施例4では、表5に示す成分を、バレルとダイヘッド温度が240〜265℃、スクリュ回転数150〜300rpmで、吸引孔混合スクリュを備えた37mmToshiba TEM−37BS二軸スクリュ押出機に押出した。この押出機は違った材料用の8台の独立のフィーダを有しており、最大処理能力200lbs/hr(90.0kg/hr)で操作される。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のNISSEI ES3000成形機(ASTM棒用)およびFANUC S−2000i成形機(ISO棒用)に射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。
(実施例5(比較実施例))
【0182】
ポリエチレン由来の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体誘導されるを使用する代わりに、モノマ系「未使用」PBTを用いた以外は、実施例4の手順に従った。
(試験手順)
【0183】
以下の試験手順を用いた。
【0184】
ペレット(測定前に120℃で2時間乾燥させた)の溶融体積速度(MVR)をISO1133に準じて行い、保持時間は240秒、0.0825インチ(2.1mm)のオリフィスとした。
【0185】
溶融流動性のもう1つの指標であるキャピラリ粘度を、ASTM D3835またはISO D11433に準じて行った。乾燥ペレットをキャピラリレオメータに押出し、せん断速度を変えて力を測定しせん断粘度を推定した。
【0186】
引張特性試験をISO527に準じ、サンプル150×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の射出棒、温度23℃、クロスヘッド速度5mm/minで行った。ノッチなしアイゾッド衝撃強度をISO180に準じ、サンプル80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の射出棒、温度23℃、振り子5.5Jで行った。曲げ特性すなわち3点曲げ試験をISO178に準じ、サンプル80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の射出棒、温度23℃、クロスヘッド速度2mm/minにて行った。
【0187】
その他の場合では、射出成形部分をASTMに準じて行った。ノッチ付アイゾッド衝撃強度をASTM D256に準じ、サンプル3×1/2×1/8インチ(76.2×12.7×3.2mm)射出棒に対して行った。棒には熱風炉養生前にノッチを付け室温で試験した。引張破断伸び率をASTM D648に準じ、サンプル7×1/8インチ(177.8×3.3mm)、クロスヘッド速度はガラス充填サンプルに対しては2in/min(50.8mm/min)、ガラス非充填サンプルに対しては0.2in/min(5.08mm/min)にて行った。曲げ特性をASTM790またはISO178に準じて行った。計装化衝撃試験とも呼ばれる二軸衝撃試験をASTM D3763に準じ、サンプル4×1/8インチ(101.6×3.2mm)の射出円板について行った。サンプルに吸収された全エネルギ量はft−lbsまたはJで表わされる。試験は室温、成形サンプルまたは加熱炉養生サンプルについて行った。熱変形試験をASTM D648に準じ、大きさ5×0.5×0.125インチ(127×12.7×3.2mm)の5個の棒に対して行った。すべての試験とその方法の概要を表6に示す。
【表6】

【0188】
(結果/議論)
表7は、実施例2−5から得られる物性を示す。
【表7】

驚いたことに、未使用PBTを変性PBTで置換すると、2つのガラス充填成形組成物は共に流動性が向上することが表7からわかる。系のMVRで測定される流動性の向上は表7の実施例は15〜38%である。実施例2は実施例3よりエネルギ効率が良い。実施例3に対し、実施例2の成形組成物の製造では14.7MJ/kgエネルギ節約がもたらされる。同様に、実施例4も実施例5と比較してエネルギ効率がよい。実施例4に対し、実施例5ではその製造に余分に21.6MJ/kgのエネルギが必要である。
(実施例6−7)
【0189】
これらの実施例において、タルク充填組成物の評価を行った。表8は用いられた組成物を示す。
【表8】

実施例6の成分を、バレルとダイヘッド温度が240〜265℃、スクリュ回転数150〜300rpmで、吸引孔混合スクリュを備えた89mm一軸スクリュ押出機に押出した。この押出機は、ガラスのための下流フィーダを備える、違った材料用の8台の独立フィーダを有しており、最大処理能力600lbs/hr(272.2kg/hr)で操作される。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のvan Dorn成形機で射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。
(実施例7(比較実施例))
【0190】
未使用のPBTを用いた以外は実施例6の手順に従った。
(試験手順)
【0191】
組成物を実施例2〜5で用いた試験手順に従って試験した。タルク充填組成物から得られる特性を表9に示した。
【表9】

タルクなどの鉱物充填材を備えると、変性PBを含有する成形組成物の流動性が向上することは興味深い。上記のタルク充填成形組成物の場合には、溶融体積速度(MVR)が47%向上することが確認された。こうしたMVRの向上によって流動性が向上するために、物品製造の成形サイクルと射出圧が低減できる。
【0192】
実施例6は、実施例7よりもエネルギ効率が良い。実施例7に対し、実施例6の成形組成物の製造では14.7MJ/kgのエネルギ節約がもたらされる。
(実施例8−9)
【0193】
これらの実施例においては、難燃剤入りガラス充填材組成物を評価した。表10は使用した組成物を示す。
【表10】

(実施例8)
【0194】
成分を混転混合し、吸引孔混合スクリュを備えた44mmJSW Tex−44二軸スクリュ押出機、PT−4に押出した。バレルおよびダイヘッドの温度は250℃〜265℃に設定、スクリュの回転数は200rpmである。この押出機は違った材料に対して4台の独立したフィーダを持っており、最高処理能力200kg/hrで操作される。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のTIG280成形機に射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。乱用成形を、設定温度がおよそ240℃〜265℃の同じTIB280成形機に行った。ペレットの乾燥条件は通常の成形条件(上記の条件)と同様の条件とした。
(成形部品)
【0195】
機械パラメータを所定の厚さに対して最適化し、通常の条件(上記の条件)下で部品を成形した。
(実施例9(比較実施例))
【0196】
実施例9では、未使用のPBTを用いた以外は実施例8の手順に従った。ガラス充填難燃性組成物の特性を表11に示す。
【表11】

実施例9および8は、前述の実施例と同様な流動性の向上傾向を示した。実施例9に対して実施例8では、MVRが77%増加していることが確認された。
【0197】
実施例8は例9よりもエネルギ効率が良い。実施例9に対して実施例8の製造では13.2MJ/kgエネルギ節約が実現できる。
(実施例10−19)
【0198】
PET由来残基を含む変性PBTランダム共重合体の、低ivサンプルと高ivサンプルの比率を変えて実験を行った。対応する比較実施例も、未使用のPRT樹脂サンプルの比率をそれぞれ変えて調製した。
(実施例10−19)
【0199】
表12に示す実施例の成分を、バレルとダイヘッド温度が240〜265℃、スクリュ回転数150〜300rpmで、吸引孔混合スクリュを備えた64mm一軸スクリュ押出機に押出した。この押出成形機はブレンド供給用の1台のフィーダを備えており、最大処理能力100lbs/hr(45kg/hr)で操作することができる。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のvan Dorn成形機で射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。
【表12】

表12に示したガラス充填組成物の特性を表13に示す。
【表13】


表13に示したデータは、異なったPBT比率に対する成形組成物の挙動理解のために、グラフ(図1)でも示した。
【0200】
図1は、1520/sにけるキャピラリ粘度対成形組成物中の低ivPBTと(低ivPBT+高ivPBT)との比を示す。興味深いことには、図1のデータは、成形組成物中のPBT比率の全範囲において、変性PBT成分は一貫して未使用PBT成分よりも低い粘度を示している。組成物の2つのセットにおけるキャピラリ粘度の平均差(1520/sにおける)は、約46Pa・sである。
【0201】
図2は、ガラス充填未使用PBTと変性PBT組成物に対して、種々の組成物(低ivPBTと高ivPBTの比率を変えたもの)での1520/sにおけるキャピラリ粘度に対するノッチ付アイゾッド衝撃強度の傾向を示したものである。これらのデータで驚くべきことは、同じノッチ付アイゾッド衝撃強度値を持つ変性PBT組成物は、通例のPBT組成物よりも粘度が低いことである。これは変性PBT成形組成物の非常に利点となる特性である。なぜなら、同じ衝撃強度を提供しながら、流動性に関する利点を提供できるからである。
(実施例20−26)
【0202】
「PET由来PBT」組成物の熱変形温度を上げるために、少量の添加剤を加えて実験を行った。
(実施例20−25および比較実施例26)
【0203】
表14に示す実施例の成分を、バレルとダイヘッド温度が240〜265℃、スクリュ回転数150〜300rpmで、吸引孔混合スクリュを備えた64mm一軸スクリュ押出機に押出した。この押出機は、ブレンド供給用のフィーダを1台備え、最大処理能力100lbs/hr(45kg/hr)で操作される。押出品を水浴中を通して冷却しペレット化した。試験片は、設定温度がおよそ240℃〜265℃のvan Dorn成形機で射出成形した。ペレットは強制循環熱風炉で120℃で3〜4時間乾燥させ、射出成形を行った。表14はその詳細を示す。
【表14】

(試験手順)
【0204】
実施例2−5で用いた試験手順に従って組成物の試験を行った。添加剤の量を種々変えた充填組成物から得られた特性を表15に示す。
【表15】

造核剤を何ら含まない実施例25と26との差から、「PET由来PBT」を有するガラス充填組成物の熱変形温度(HDT)は、未使用PBTを含む組成物より約10℃低いことがわかる。
【0205】
表13の実施例20−24は、少量の添加剤を添加することによってHDTを上昇させる方法を示している。実施例20および22−24に示すように、特に、少量の無機系充填材が「PET由来PBT」を有する組成物に加えられる。
【0206】
実施例22−24において、平均粒径が0.9μm以下の少量のULTRATALKタルク添加剤によって、「PET由来PB」組成物のHDTは実質的に上昇した。別の無機化合物である、粒径が1.25μmの酸化アンチモン(Sb)も、実施例20からわかるように、HDTの上昇に有効な添加剤であることがわかった。表面積の大きな無機系充填材は、「PET由来PBT」の造核速度を早めてHDTを上昇させることができる。ポリマ材料も「PET由来PBT」のHDTの上昇に使用できることもわかった。実施例20のポリ(テトラフルオロエチレン)はHDTを上昇させ、さらに弾性率や引張強度などの一部の特性を改良した。
(実施例27−31 PET由来PBTコモノマ配合量の異なる組成物)
【0207】
目的−これらの実験の目的は、コモノマ配合量が異なるPET由来PBTを作ることである。融点が200℃以上の材料は有用なエンジニアリング熱可塑性プラスチックタイプの特性を示すことが知られている。したがって、下記の例はすべて、有用なPET由来PBTコポリマ類(融点200℃以上)が合成できることを示している。これらの材料の生産プロセスを下記(パイロットプラントプロセス)に示す。その処方に用いられる実施例27−31は、表16に示すものである。
【表16】

(パイロットプラントプロセス)
ヘリコーンリアクタで、大量のポリエチレンテレフタレート成分から変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を誘導した。ヘリコーンリアクタの容量は40Lで、270度ねじれた2つの対向する螺旋ブレードを備える特別設計のものであり、16gの磨き仕上げを施した316ステンレスでできている。ブレードの回転数は1〜65rpmまで変えられる。撹拌器は、230/460V交流電圧、3相、60Hzで作動する、7.5馬力の定トルクインバータデューティモータに接続している。この攪拌機によって、溶融ポリマには分子量を形成するための良好な表面積が与えられる。上記ヘリコーンリアクタには上部に凝縮器を備えるように設計されており、解糖段階、エステル交換段階(もしあれば)、および重合反応段階における蒸発物を凝縮する。25lbs(11.4kg)の再利用PETペレットと35lbs(15.9kg)のブタンジオール(モル比2.9:1)とをヘリコーンリアクタに投入した。4.6ml(Tiとして100ppm)のTPT触媒を上記反応混合物に添加した。加熱油(ヘリコーン用の)の温度を250℃に設定した。攪拌速度を最高の67%に設定し、ブタンジオールはリアクタ内に2時間還流させた。上部凝縮器システムの設計上、ブタンジオールは完全には還流されないことに留意する必要がある。その結果、初期の段階で発生したブタンジオールの約5lbs(2.3kg)〜10lbs(4.5kg)は還流されなかった。その後発生したブタンジオールはリアクタ内に完全に還流された。
【0208】
重合段階(本明細書では「ポリ段階」とも呼ぶ)ではヘリコーンリアクタを真空にし、また、ブタンジオールのリアクタへの還流は中止した。攪拌速度は最大の60%に設定し、モータの目標電流を3.5Aとした。ポリマの分子量が形成されるにつれて、攪拌速度を変えるロジックを表4に示す。系の圧力を真空ポンプで0.5Torr(0.066kPa)まで下げた。ポリマ物質が第3構造に達するまで反応を行った。第3構造になって15分後に反応を止め、粒状に注型した。次に反応生成物を乾燥しペレットに粉砕した。このポリマについて、iv測定、NMR分析、およびDSC分析を行った。これらの結果を表17に示す。
【表17】

【0209】
実施例32−36は、それぞれ実施例27−31の樹脂を用いて合成した。実施例32−36の処方を表18に示す。
(実施例32−36)
表17に示す実施例の成分を、30mmのSecond Generation同方向回転二軸スクリュ押出機に押出した。この押出機には、供給口に原料を導入するために9つのバレル部(L/D=29)と2台のフィーダが取り付けられている。材料は通常、30lbs/hr(13.6kg/hr)〜60lbs/hr(27.3kg/hr)の速度で押出機に供給される。スクリュの回転速度は通常、300〜500rpmに調整される。材料の比エネルギおよび滞留を最小化するために、材料の供給速度とスクリュ回転速度とを正確に組み合わせて、高い供給量と高トルクを得る。合成したペレットは,熱風循環炉で250°F(121℃)de3〜4時間乾燥させて成形した。温度傾斜(後部から前部へ)を554°F(290℃)、570°F(299℃)、570°F(299℃)、590°F(310℃)としたvan Dorn射出成形機を用いた。典型的な設定は以下の通りである。スクリュ回転速度:100rpm、保持圧:600psi(421,800kg/m)、背圧:75psi(52,725kg/m)、サイクル時間:30秒。バレル前部の温度と保持圧/背圧とを調整して処方間の反応性の差を吸収した。標準部分はすべて0.125インチ(3.12mm)とした。
【表18】

表18に示した成形組成物の特性は、表19にまとめている。
【表19】

180℃以上のHDT(0.455MPaにおける)を有する成形組成物が有用であることは、商業的理由から公知である。実施例36に示した成形組成物を、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の100当量のジオールおよび100当量の二酸基類の合計に対して、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびそれらの組み合わせの群から選択される残基17.2当量におけるコモノマ合計含有量を有するPET由来PBTを用いて作られる。この組成物のHDT(0.455MPaにおける)は183.4℃であることが確認された。さらに興味深いことは、表18のすべての実施例の引張弾性率がほぼ同じ値であることである。このことは、PET由来PBT中のコモノマ含有量が高くても、成形組成物の引張弾性率にはわずかな影響しか与えないことを証明している。
【0210】
いくつかの好適な形態を参照して本発明を詳細に記述したが、その他の変更も可能である。従って、添付の請求項の趣旨と範囲は、本明細書の形態の記述に限定されるものではない。
【0211】
本発明のこれらの、および他の特徴、様相および利点は、次の記載および添付の請求項を参照することによって一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】図1は、PETを含む変性PET残基含有組成物およびモノマ系PBT含有成形組成物の、成分比と毛細管粘度特性との関係を示す。
【図2】図2は、ガラス充填した未使用PBTと変性PBT組成物との、毛細管粘度(1520/sにおける)とノッチ付きアイゾット衝撃強度(室温)との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、5〜99重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも1重量%の充填材成分とを含み、前記変性ポリブチレンテレフタレートと、前記充填材成分と、任意に少なくとも1つの添加剤と、が合計で100重量%である組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記残基は、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類及び陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレートから誘導される残基であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記少なくとも1つの残基は、エチレングリコール基とジエチレングリコール基との混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記残基は、さらにイソフタル酸基類を含むことを特徴とする請求項3の組成物。
【請求項5】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記残基は、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記残基は、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1.3−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸基類、シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記充填材類の量は少なくとも1重量%であり、その充填材類は、ガラス充填材、セラミック充填材、炭素充填材、金属充填材、鉱物充填材、ナノ−充填材、ナノ−複合材料、ナノ−チューブ、タルク、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記充填材類はナノチューブであり、その量は1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記少なくとも1つの残基は、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびコバルト含有化合物類の混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される前記少なくとも1つの残基は、イソフタル酸基類をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ジエチレングリコール基の量は、前記成形組成物のグリコール100モル%に対して、0.1〜10モル%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、難燃剤、安定剤、離型剤、ポリ(テトラフルオロエチレン)ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)混合物、およびそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記イソフタル酸基の量は、前記成形組成物中の酸100モル%に対して、0.1〜10モル%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体は、さらにバイオマス系1,4−ブタンジオールから誘導されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、少なくとも0.06kgであるCO削減指標を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、ポリカーボネート成分を5〜90重量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物はさらに、難燃剤を5〜30重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物はさらに、カルボキシ反応成分を0.1〜2重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物はさらに、紫外線安定剤を0.05〜1重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物はさらに、熱安定剤を0.05〜1重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物はさらに、離型剤を0.05〜1重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、メタクリレートブタジエンスチレンゴム、アクリレートゴム、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートゴム、高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、シリコンーアクリル改質剤、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される耐衝撃性改良剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、前記組成物、前記組成物から成形される物品、および前記組成物から押出される物品から構成される群から選択される要素に、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートを含む組成物に比較して低い熱変形温度と、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートを含む組成物に比較して高い溶融流量とを付与することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物はさらに無機系充填材を含まない組成物と比較して組成物の熱変形温度を上昇させるのに十分な量の無機系充填材を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物は、ポリエチレンテレフタレートから誘導される変性ポリブチレンテレフタレートを含まない第2のポリエステル成分を要素をさらに含むことを特徴とする請求項1の成形組成物。
【請求項27】
成形組成物であって、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、30〜90重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも5重量%の充填材成分と、
(c)少なくとも5重量%の難燃剤成分と
(d)少なくとも0.1重量%のカルボキシ反応成分と、
(e)少なくとも0.05重量%の熱安定剤と、
(f)少なくとも0.05重量%の紫外線安定剤と、
を含み、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および任意に、いずれかの追加添加剤との合計量が100重量%である成形組成物。
【請求項28】
前記組成物は、前記組成物、前記組成物から成形される物品、および前記組成物から押出される物品から構成される群から選択される要素に、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートを含む組成物に比較して低い熱変形温度と、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートを含む組成物に比較して高い溶融流量とを付与することを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物はさらに、有機添加剤を含まない組成物と比較して組成物の熱変形温度を上昇させるのに十分な量の有機添加剤を含むことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物はさらに、有機添加剤を含まない組成物と比較して組成物の熱変形温度を上昇させるのに十分な量の有機添加剤を含むことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物は、固有粘度が0.55dL/gより大きいことを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物は、変性ポリブチレンテレフタレート共重合体を含まない第2のポリエステル成分をさらに含むことを特徴とする請求項27の組成物。
【請求項33】
前記組成物は、単官能基エポキシ、複官能基エポキシから成る群から選択されるカルボキシ反応成分をさらに含むことを特徴とする請求項27の組成物。
【請求項34】
前記組成物は、組成物の熱変形温度を少なくとも1〜10℃上昇させられる材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記材料は、タルク、ナノ粒子、ポリ(テトラフルオロエチレン)、粘土類、雲母、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択される材料であることを特徴とする請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物は、ISO1133に準じ、温度250℃、負荷力5kgf、保持時間240秒、2.1mmオリフィスの条件にて、ペレットで測定した溶融体積速度が、PBTで作られた組成物に比較して、少なくとも10%高いことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
ISO1133に準じ、温度250℃、負荷力5kgf、保持時間240秒、2.1mmオリフィスの条件にて、ペレットで測定した前記溶融体積速度は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の代わりに、ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類から誘導されたモノマで作られた組成物と比較して、10%〜80%高いことを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、0.455MPaの応力下、ASTM D648に準じて測定して、少なくとも180℃の熱変形温度を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物は、エチレングリコール、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類から構成される群から選択されるモノマの合計含有量が、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の、ジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、イソフタル酸基類、エチレングリコール類、ジエチレングルコール基類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される残基量が、0〜17当量であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は、エチレングリコール、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類から構成される群から選択されるモノマの合計含有量が、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の、ジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、イソフタル酸基類、エチレングリコール類、ジエチレングルコール基類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される残基量が、0〜23当量であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項41】
組成物であって、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類とから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、35〜50重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)25〜45重量%の充填材成分と、
(e)10〜30重量%のポリカーボネートと、
(f)0〜10重量%の耐衝撃性改良剤と、
(g)0〜5重量%の添加剤と、
を含み、前記変性ポリブチレンテレフタレートと、前記充填材成分と、前記ポリカーボネートと、前記耐衝撃性改良剤と、前記添加剤とは、その量が合計で100重量%である組成物。
【請求項42】
請求項1に記載の組成物の成分を溶融混合するステップを含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項43】
前記溶融混合された組成物を、形状化し、押出し、あるいは成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記溶融混合された組成物を成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項46】
請求項27に記載の組成物の成分を溶融混合するステップを含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項47】
前記溶融混合された組成物を形状化し、押出し、あるいは成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記溶融混合された組成物を成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
請求項27に記載の組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項50】
組成物であって、
(a)(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類とから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、シクロヘキサンジシクロヘキサンジシクロヘキサンジシクロヘキサンジアルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組み合わせから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む、30〜90重量%の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、
(b)少なくとも5重量%の充填材成分と、
(c)少なくとも5重量%の難燃剤成分と
(d)少なくとも0.1重量%のカルボキシ反応成分と、
(e)少なくとも0.05重量%の熱安定剤と、
(f)少なくとも0.05重量%の紫外線安定剤と、
を含み、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および任意に、いずれかの追加添加剤との合計量が100重量%である成形組成物であり、
前記組成物は、エチレングリコール、イソフタル酸基類、およびジエチレングリコール基類から構成される群から選択されるモノマの合計含有量が、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の、ジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、イソフタル酸基類、エチレングリコール類、ジエチレングルコール基類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される残基量が、0〜17当量であり、
前記組成物の熱変形温度は、0.455MPaの応力下、ASTM D648に準じて測定して、少なくとも180℃であり、
ISO1133に準じ、温度250℃、負荷力5kgf、保持時間240秒、2.1mmのオリフィスの条件にて、ペレットで測定した前記組成物の溶融体積速度は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の代わりに、ポリブチレンテレフタレートホモポリマ類から誘導されたモノマで作られた組成物と比較して、10%〜80%高いことを特徴とする成形組成物。
【請求項51】
請求項50に記載の組成物の成分を溶融混合するステップを含む組成物の製造方法。
【請求項52】
前記溶融混合組成物を形状化し、押出し、あるいは成形するステップをさらに含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項50に記載の組成物を含むことを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−524729(P2009−524729A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552440(P2008−552440)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002193
【国際公開番号】WO2007/089598
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】