説明

光エネルギー架橋性有機薄膜トランジスタ絶縁層材料、オーバーコート絶縁層及び有機薄膜トランジスタ

【課題】閾値電圧の絶対値が小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供すること。
【解決手段】フッ素原子を含む繰り返し単位と、光エネルギー又は電子線のエネルギーを吸収して二量化反応を起こす官能基を含む繰り返し単位とを、有する高分子化合物(A)を含有する有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタが有する絶縁層を形成するのに適した材料に関し、特にオーバーコート絶縁層を形成するのに適した材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタは、無機半導体より低温で製造できるため、その基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、このような基板を用いることによりフレキシブルであり、軽量で壊れにくい素子を得ることができる。また、有機材料を含む溶液の塗布や印刷法を用いた成膜により素子作製が可能な場合があり、大面積の基板に多数の素子を低コストで製造することが可能な場合がある。
【0003】
さらに、トランジスタの検討に用いることができる材料の種類が豊富であるため、分子構造の異なる材料を検討に用いれば、幅広い範囲の特性のバリエーションを有する素子を製造することができる。
【0004】
有機薄膜トランジスタの1種である電界効果型有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極に印加される電圧がゲート絶縁層を介して半導体層に作用して、ドレイン電流のオン、オフを制御する。そのため、ゲート電極と半導体層の間にはゲート絶縁層が形成される。
【0005】
また、電界効果型有機薄膜トランジスタに用いられる有機半導体化合物は、湿度、酸素等の環境の影響を受けやすく、トランジスタ特性が、湿度、酸素等に起因する経時劣化を起こしやすい。
【0006】
そのため、有機半導体化合物が剥き出しになる電界効果型有機薄膜トランジスタの1種であるボトムゲート型有機電界効果トランジスタ素子構造では、素子構造全体を覆うオーバーコート絶縁層を形成して有機半導体化合物を外気との接触から保護することが必須となっている。一方、トップゲート型有機電界効果トランジスタ素子構造では、有機半導体化合物はゲート絶縁層によりコートされて保護されている。
【0007】
このように、有機電界効果トランジスタでは、有機半導体層を覆うオーバーコート絶縁層及びゲート絶縁層等を形成するために、樹脂組成物が用いられる。本願明細書では、上記オーバーコート絶縁層及びゲート絶縁層のような有機薄膜トランジスタの絶縁層又は絶縁膜を有機薄膜トランジスタ絶縁層という。また、有機薄膜トランジスタ絶縁層を形成するのに用いる材料を有機薄膜トランジスタ絶縁層材料という。尚、ここでいう材料は、高分子化合物、高分子化合物を含む組成物、樹脂及び樹脂組成物のような無定形材料を含む概念である。
【0008】
特許文献1には、有機電界効果トランジスタの性能は、有機電界効果トランジスタを構成する有機半導体以外の成分又は材料によって影響を受けること、及びゲート絶縁層として低誘電率の材料を使用することで有機電界効果トランジスタのヒステリシスが低下し、閾値電圧も低下することが記載されている。
【0009】
トランジスタの絶縁層材料としては、非晶質ポリプロピレン、デュポン社製「TEFLON AF」(商品名)等の低誘電率フルオロポリマー、旭ガラス社製「CYTOP」(商品名)等のテトラフルオロエチレン系共重合体等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−513788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の有機薄膜トランジスタ絶縁層を用いた有機電界効果トランジスタは、閾値電圧(Vth)の絶対値が大きいという課題がある。
【0012】
本発明の目的は、閾値電圧の絶対値が小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、式(1)
【0014】
【化1】

(1)
【0015】
[式中、Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
【0016】
で表される繰り返し単位と;式(2)
【0017】
【化2】

(2)
【0018】
[式中、X’は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R’は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。a及びbは、各々独立に、0〜20の整数を表す。cは、1〜5の整数を表す。X’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
【0019】
で表される繰り返し単位、式(3)
【0020】
【化3】

(3)
【0021】
[式中、X”は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R”は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。d及びeは、各々独立に、0〜20の整数を表す。fは、1〜5の整数を表す。X”が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R”が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
【0022】
で表される繰り返し単位、式(4)
【0023】
【化4】

(4)
【0024】
[式中、X'''は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R'''は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。gは、0〜20の整数を表し、hは、1〜5の整数を表す。X'''が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R'''が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
【0025】
で表される繰り返し単位、式(5)
【0026】
【化5】

(5)
【0027】
[式中、Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R〜R13は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。jは、0〜20の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
【0028】
で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位とを;有する高分子化合物(A)を含有する有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供する。
【0029】
ある一形態においては、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は有機溶媒(B)を更に含有する。
【0030】
また、本発明は、前記いずれかの有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した有機薄膜トランジスタ絶縁層を提供する。
【0031】
ある一形態においては、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層はオーバーコート絶縁層である。
【0032】
また、本発明は、前記いずれかの有機薄膜トランジスタ絶縁層を有する有機薄膜トランジスタを提供する。
【0033】
ある一形態においては、前記有機薄膜トランジスタはボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタ又はボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタである。
【0034】
また、本発明は、前記有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材を提供する。
【0035】
また、本発明は、前記ディスプレイ用部材を含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて製造した有機薄膜トランジスタは、閾値電圧の絶対値が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。
【0039】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、フッ素原子を含む構造単位を有する高分子化合物(A)を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、要すれば、混合又は粘度調節のための溶媒や添加剤等を含有する。
【0040】
高分子化合物(A)
高分子化合物(A)は、フッ素原子を含む繰り返し単位と、光エネルギー又は電子線のエネルギーを吸収して二量化反応を起こす官能基(本明細書中「光二量化反応基」という。)を含む繰り返し単位とを、有する。
【0041】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料にフッ素が導入されていることにより、該有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成される絶縁層は極性が低く、絶縁層の分極が抑制される。また、光二量化反応基が二量化されて絶縁層の内部に架橋構造が形成されると、絶縁層中の分子の移動が抑制され、絶縁層の分極が抑制される。分極が抑制された絶縁層を用いた場合、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値又はヒステリシスが低下して、動作精度が向上する。
【0042】
光二量化反応基は、ある一形態では、光エネルギー又は電子線のエネルギーを吸収した場合にカルボラジカルを生成させる官能基である。カルボラジカルはラジカルカップリングすることにより容易に二量化して、絶縁層の内部に架橋構造を形成することができる。
【0043】
光二量化反応基は、他の一形態では、光エネルギー又は電子線のエネルギーを吸収した場合に協奏反応しうる官能基である。協奏反応しうる官能基は相互に付加環化することにより二量化して、絶縁層の内部に架橋構造を形成することができる。
【0044】
光二量化反応性基が吸収する光は、あまり低エネルギーであると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を光重合法によって形成する際に光二量化反応性基も反応してしまう場合があるため、高エネルギーの光が好ましい。光二量化反応性基が吸収するのに好ましい光は、紫外線、例えば波長が400nm以下、好ましくは150〜380nmの光である。
【0045】
ここでいう二量化とは、有機化合物の分子2個が化学的に結合することをいう。結合する分子同士は同種でも異種でもよい。二量化する2個の分子中の二量化に関与する官能基同士の化学構造も同一であっても異なっていてもよい。但し、当該官能基は、触媒及び開始剤等の反応助剤を用いることなく光二量化反応を生じる構造、および組合せであることが好ましい。反応助剤の残基に接触すると周辺の有機材料が劣化する可能性があるからである。
【0046】
好ましい光二量化反応性基の例は、水素原子がハロメチル基で置換されたアリール基、2位の水素原子がアリール基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基である。中でも、水素原子がハロメチル基で置換されたフェニル基、2位の水素原子がフェニル基で置換されたビニル基、β位の水素原子がフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基が好ましい。
【0047】
水素原子がハロメチル基で置換されたアリール基及びフェニル基は、紫外線又は電子線を照射するとハロゲンが脱離して、ベンジル型のカルボラジカルが生成する。生成した2個のカルボラジカルが結合すると、炭素炭素結合が形成されて、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋される。前記カルボラジカルの結合は、いわゆる「ラジカルカップリング」である。また、2位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基の場合には、紫外線又は電子線を照射すると2+2環化反応が生じ、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋される。
【0048】
フッ素原子を含む基を有する繰り返し単位は、上記式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。光二量化反応性基を有する繰り返し単位は、上記式(2)〜式(5)で表される繰り返し単位のいずれかが好ましい。
【0049】
式(1)中、Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。ある一形態ではXが水素原子である。
【0050】
炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。
炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基は、これらの基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基は、基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0051】
炭素数1〜20の一価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、 フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基などが挙げられる。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0052】
式(2)中、R’は水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rとしては、アルキレン基が好ましい。X’は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。a及びbは、各々独立に、0〜20の整数を表す。cは1〜5の整数を表す。
【0053】
炭素数1〜20の一価の有機基としては、Xで表される一価の有機基と同じ基が挙げられる。
炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。例えば、炭素数1〜20の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の環状脂肪族炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、炭素数1〜6の二価の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の二価の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の二価の環状炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0054】
二価の脂肪族炭化水素基及び二価の環状脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピルレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
【0055】
炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基などが挙げられる。
【0056】
式(2)で表される繰り返し単位のある一形態では、Rがブチレン基であり、X’が塩素原子であり、R’が水素原子であり、a及びcが1であり、bが0である。
【0057】
式(3)中、R”、は水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rとしては、アルキレン基が好ましい。X”は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。d及びeは、各々独立に、0〜20の整数を表す。fは1〜5の整数を表す。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、Xで表される一価の有機基と同じ基が挙げられる。炭素数1〜20の二価の有機基としては、Rで表される二価の有機基と同じ基が挙げられる。
【0058】
式(3)で表される繰り返し単位のある一形態では、Rがブチレン基であり、X”が塩素原子であり、R”が水素原子であり、d及びfが1であり、eが0である。
【0059】
式(4)中、R'''は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。X'''は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。gは0〜20の整数を表し、hは1〜5の整数を表す。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、Xで表される一価の有機基と同じ基が挙げられる。炭素数1〜20の二価の有機基としては、Rで表される二価の有機基と同じ基が挙げられる。
【0060】
式(4)で表される繰り返し単位のある一形態では、X'''が塩素原子であり、R'''が水素原子であり、gが0であり、hが1である。
【0061】
式(5)中、R〜R13は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。jは0〜20の整数を表す。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、Xで表される一価の有機基と同じ基が挙げられる。炭素数1〜20の二価の有機基としては、Rで表される二価の有機基と同じ基が挙げられる。
式(5)で表される繰り返し単位のある一形態では、R〜R13は、水素原子であり、Rは、ブチレン基であり、jが1である。
【0062】
高分子化合物(A)は、例えば、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと式(2)〜式(5)のいずれかで表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて共重合させる方法により製造することが出来る。
【0063】
式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、トリフルオロエチレン、1,1,2−トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、4−(3’−クロロメチルフェニルアミノカルボニルオキシ)ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、4−(3’−クロロメチルフェニルカルボニルオキシ)ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
式(4)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、3−クロロメチルフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
式(5)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、ビニルシンナメート等が挙げられる。
【0064】
前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノン 又はチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0065】
共重合を開始させるエネルギーとして光エネルギーを用いる場合は、重合性モノマーに照射する光の波長は、360nm以上、好ましくは360〜450nmである。
【0066】
前記熱重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となるものであればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、トリス(tert−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類が挙げられる。
【0067】
また、高分子化合物(A)は次のようにして製造してもよい。即ち、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと、式(6)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとを、または、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと、式(6)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと、他の重合性モノマーとを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて共重合させて、共重合体を得る。
【0068】
得られる共重合体はフッ素原子を含む繰り返し単位と、水酸基を含む繰り返し単位とを有する高分子化合物である。この高分子化合物は市販されているものを使用してもよい。市販されている上記高分子化合物の具体例としては、旭硝子株式会社製「ルミフロンLF906N」、同「ルミフロンLF200F」、同「ルミフロンLF810」等が挙げられる。
【0069】
次いで、水酸基と反応することにより光二量化反応基を与える化合物を用いて、上記高分子化合物に含まれる水酸基を保護する。
【0070】
【化6】

【0071】
[式中、R14は、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
【0072】
該水酸基と反応する化合物は、具体的には、水酸基と反応することにより、式(2)〜式(5)のいずれかに示されているペンダント基を形成可能な化合物である。かかる化合物としては、例えば、2−クロロメチルフェニルイソシアネート、3−クロロメチルフェニルイソシアネート、3−クロロメチルベンゾイルクロライド、4−クロロメチルベンゾイルクロライド、シンナモイルクロライド、2−(2’−クロロメチルフェニル)エチルイソシアネート、2−(3’−クロロメチルフェニル)エチルイソシアネート、2−(2’−クロロメチルフェニル)プロピオニルクロライド、2−(3’−クロロメチルフェニル)プロピオニルクロライド、2−(2’−クロロメチルフェニル)プロピオニルクロライド、2−(3’−クロロメチルフェニル)プロピオニルクロライド、シンナミリデンアセチルクロライドが挙げられる。
【0073】
本発明に用いられる高分子化合物は、前記式(1)〜式(5)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー以外の他の重合しうるモノマーを重合時に添加製造してもよい。
【0074】
該他の重合しうるモノマーとしては、不飽和炭化水素およびその誘導体、ビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0075】
該他の重合しうるモノマーの種類は、オーバーコート絶縁層等の絶縁層に要求される特性に応じて適宜選択される。他の重合しうるモノマーの好ましい一形態としては、アルキル基等の活性水素含有基を有しないモノマーである。
【0076】
不飽和炭化水素及びその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0077】
ビニルエーテル誘導体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0078】
これらの中では、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。
【0079】
前記式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーの使用量は、高分子化合物(A)に導入されるフッ素の量が適量になるように調節される。
【0080】
高分子化合物(A)に導入されるフッ素の量は、該高分子化合物の質量に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。フッ素の量が1質量%未満又は60質量%を超えると有機溶媒(B)との相溶性が悪化して樹脂組成物を調製することが困難になることがある。
【0081】
前記式(2)〜(6)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーの使用量は、高分子化合物(A)に導入される光二量化反応基の量が適量になるように調節される。
【0082】
高分子化合物(A)に導入される光二量化反応基の量は、該高分子化合物の質量に対して、好ましくは0.01〜1モル%、より好ましくは0.05〜0.5モル%、更に好ましくは0.08〜0.2モル%である。光二量化反応基の量が0.01モル%未満であると絶縁層内部の架橋が不十分になり、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値が上昇することがある。光二量化反応基の量が1モル%を超えると絶縁層内部のフッ素の量が少なくなり、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値が上昇することがある。
【0083】
高分子化合物(A)は、重量平均分子量が3000〜1000000が好ましく、5000〜500000がより好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0084】
本発明に用いることができる高分子化合物(A)としては、ポリ(トリフルオロエチレン−コ−ブチルビニルエーテル−コ−4−〔3’−クロロメチルフェニルアミノカルボニルオキシ〕ブチルビニルエーテル)、ポリ(トリフルオロエチレン−コ−ブチルビニルエーテル−コ−4−〔3’−クロロメチルフェニルカルボニルオキシ〕ブチルビニルエーテル)、ポリ(トリフルオロエチレン−コ−4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−コ−3−クロロメチルフェニルビニルエーテル)、ポリ(トリフルオロエチレン−コ−4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−コ−ビニルシンナメート)等が挙げられる。
【0085】
有機溶媒(B)
有機溶媒(B)は、例えば、高分子化合物(A)を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が60℃〜200℃の有機溶媒である。該有機溶媒としては、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン、オクタフルオロトルエン、1−ブタノール等が挙げられる。有機溶媒(B)には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0086】
有機薄膜トランジスタ絶縁材料
高分子化合物(A)と、要すれば、混合や粘度調節のための溶媒や添加剤などとを混合することにより、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が得られる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機溶媒(B)を含んでいてもよい。また、添加剤としては、架橋反応を促進するための触媒、レベリング剤、粘度調節剤などを使用することができる。
【0087】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料において、有機溶媒(B)の含有量は、高分子化合物(A)100重量部に対して、100〜3000重量部であることが好ましく、150〜2000重量部であることがより好ましい。
【0088】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタに含まれる絶縁層の形成に用いられる組成物である。該材料は、有機薄膜トランジスタのオーバーコート絶縁層又はゲート絶縁層の形成に用いられることが好ましい。オーバーコート絶縁層の形成に用いられる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を有機薄膜トランジスタオーバーコート絶縁層材料と称する。また、ゲート絶縁層の形成に用いられる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を有機薄膜ゲート絶縁層材料と称する。
【0089】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタのオーバーコート絶縁層の形成に用いられることが特に好ましい。本発明の有機薄膜トランジスタオーバーコート絶縁層材料を用いて形成したオーバーコート絶縁層は、絶縁性及び気密性に優れる。そのため、該オーバーコート絶縁層を有する有機薄膜トランジスタは、大気中でも安定して駆動することができる。
【0090】
有機薄膜トランジスタ
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、素子全体を覆うオーバーコート絶縁層7とが、備えられている。
【0091】
ボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に有機半導体層を形成し、有機半導体層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、オーバーコート絶縁層を形成することで製造することができる。
【0092】
図2は、本発明の一実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6上に形成された有機半導体層4と、素子全体を覆うオーバーコート絶縁層7とが、備えられている。
【0093】
ボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、ソース電極、ドレイン電極上に有機半導体層を形成し、オーバーコート絶縁層を形成することで製造することができる。
【0094】
ゲート絶縁層又はオーバーコート絶縁層の形成は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に要すれば溶媒などを添加して絶縁層塗布液を調製し、絶縁層塗布液を、ゲート絶縁層又はオーバーコート絶縁層の下に位置する層の表面に塗布、乾燥、硬化させることにより行う。硬化した絶縁層は、更に乾燥させてもよい。該絶縁層塗布液には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤、硬化触媒、増感剤等を添加することができる。
【0095】
該絶縁層塗布液は公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート電極上に塗布することができる。形成される塗布層は必要に応じて乾燥させる。ここでいう乾燥は、塗布された樹脂組成物の溶媒を除去することを意味する。
【0096】
乾燥させた塗布層は、次いで硬化させる。硬化は高分子化合物(A)が架橋することを意味する。高分子化合物(A)の架橋は、塗布層に対して光又は電子線を照射することにより行われる。そうすると、高分子化合物(A)の光二量化反応性基のラジカルカップリング反応又は環化反応により、架橋が形成されるからである。
【0097】
光二量化反応性基がハロメチル基で置換されたアリール基又はフェニル基である場合、これらの基は光又は電子線、好ましくは紫外線又は電子線が照射されることにより相互に結合する。照射する光の波長は360nm以下、好ましくは150〜300nmである。照射する光の波長が360nmを越えると高分子化合物(A)の架橋が不十分になる場合がある。
【0098】
光二量化反応性基が2位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基又はフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基である場合、これらの基は光又は電子線、好ましくは紫外線又は電子線が照射されることにより相互に結合する。照射する光の波長は400nm以下であり、好ましくは150〜380nmである。照射する光の波長が400nmを越えると高分子化合物(A)の架橋が不十分になる場合がある。
【0099】
紫外線の照射は、例えば、半導体の製造のために使用されている露光装置やUV硬化性樹脂を硬化させるために使用されているUVランプを用いて行うことができる。電子線の照射は、例えば、超小型電子線照射管を用いて行うことができる。その他の照射条件は、光二量化反応性基の種類及び量等に応じて適宜決定される。
【0100】
ゲート絶縁層上には、自己組織化単分子膜層を形成してもよい。該自己組織化単分子膜層は、例えば、有機溶媒中にアルキルクロロシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を1〜10重量%溶解した溶液でゲート絶縁層を処理することにより形成することが出来る。
【0101】
アルキルクロロシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0102】
アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0103】
有機薄膜トランジスタを構成する基板1、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6及び有機半導体層4は、通常使用される材料及び方法で構成すればよい。例えば、基板の材料には樹脂やプラスチックの板やフィルム、ガラス板、シリコン板などが用いられる。電極の材料には、クロム、金、銀、アルミニウム等を用い、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法等公知の方法で形成する。
【0104】
有機半導体としてはπ共役ポリマーが広く用いられ、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(P−フェニレンビニレン)類を用いることができる。
また、有機溶媒への溶解性を有する低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類を用いることができる。具体的には、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)と、5,5’−ジブロモ−2,2’−バイチオフェンとの縮合物等があげられる。
【0105】
有機半導体層の形成は、例えば、有機半導体に要すれば溶媒などを添加して有機半導体塗布液を調製し、これをゲート絶縁層上に塗布、乾燥させることにより行う。
【0106】
使用される溶媒としては有機半導体を溶解又は分散させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が50℃〜200℃のものである。該溶媒としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。該有機半導体塗布液は、前記絶縁層塗布液と同様に公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート絶縁層上に塗布することができる。
【0107】
本発明の有機薄膜トランジスタを用いて、有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を好適に作製できる。該有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を用いて、ディスプレイ用部材を備えるディスプレイを好適に作製できる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0109】
合成例1
(高分子化合物1の合成)
旭硝子株式会社製「ルミフロンLF906N」(商品名)の65.5%キシレン溶液(OH価:118mgKOH/g)21.50gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50mlと、攪拌子とをジムロート並びに三方コックを付けた200mlの三口フラスコに入れた。マグネチックスターラーを用いてフラスコ中の溶液を攪拌し、反応混合液を調製した。得られた反応混合液にガスタイトシリンジを用いて2−クロロメチルフェニルイソシアネート(アルドリッチ製)4.97gを室温(25℃)で滴下した。滴下終了後、反応混合液の入ったフラスコをオイルバスに浸漬し、80℃で5時間反応させた。反応終了後、室温(25℃)まで冷却した反応混合液を分液ロートに移し、トルエン100mlを加え、その後、水洗した。水洗後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粘稠な固体である高分子化合物1を得た。
【0110】
「ルミフロンLF906N」(商品名)は、式(2−a)で表される繰り返し単位と式(3−a)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物である。式(2−a)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表す。式(3−a)中、R15はアルキレン基を表す。
【0111】
【化7】

【0112】
高分子化合物1は、下記繰り返し単位を有する。下記式中、R15はアルキレン基を表す。
【0113】
【化8】

高分子化合物1
【0114】
得られた高分子化合物1の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、18000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0115】
合成例2
(高分子化合物2の合成)
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(5.20g)、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミン(4.50g)、酢酸パラジウム(2.2mg)、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン(15.1mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(0.91g)(アルドリッチ製、「Aliquat 336」(商品名))、トルエン(70ml)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2重量モル炭酸ナトリウム水溶液(19ml)を滴下し、4時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸(121mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いでジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え80℃で4時間撹拌した。冷却後、水(60ml)で3回、3重量%酢酸水溶液(60ml)で3回、水(60ml)で3回洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し、乾燥させた。得られた高分子化合物2の収量は5.25gであった。ここで、下記式中のnは重合度を表す。
【0116】
【化9】

高分子化合物2
【0117】
高分子化合物2のポリスチレン換算重量平均分子量は2.6×105であった。
【0118】
合成例3
(高分子化合物3の合成)
2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン(アルドリッチ製)2.00g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.01g、2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン(アルドリッチ製)3.00gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンでバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で24時間重合させて、下式で表される高分子化合物3の2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン溶液を得た。ここで、下記式中のnは重合度を表す。
【0119】
【化10】

高分子化合物3
【0120】
得られた高分子化合物3の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、88000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0121】
合成例4
(高分子化合物4の合成)
旭硝子株式会社製「ルミフロンLF200F」(商品名)(OH価:45mgKOH/g)16.00gと、トルエン200mlと、トリエチルアミン2.50gと、攪拌子とをジムロート並びに三方コックを付けた300mlの三口フラスコに入れた。マグネチックスターラーを用いてフラスコ中の溶液を攪拌し、反応混合液を調製した。得られた反応混合液にシンナモイルクロライド(東京化成製)3.80gを室温(25℃)で加えた。添加終了後、反応混合液の入ったフラスコをオイルバスに浸漬し、100℃で5時間反応させた。反応終了後、室温(25℃)まで冷却した反応混合液を分液ロートに移し、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、その後、水洗した。水洗後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粘稠な固体である高分子化合物4を得た。
【0122】
「ルミフロンLF200F」(商品名)は、式(2−a)で表される繰り返し単位と式(3−a)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物である。式(2−a)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表す。式(3−a)中、R15はアルキレン基を表す。
【0123】
【化11】

【0124】
高分子化合物4は、下記繰り返し単位を有する。下記式中、R15はアルキレン基を表す。
【0125】
【化12】

高分子化合物4
【0126】
得られた高分子化合物4の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、20000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0127】
実施例1
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料1の調製)
2.00gの高分子化合物1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.00gに溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して有機薄膜トランジスタ絶縁層材料1を調製した。
【0128】
(電界効果型有機薄膜トランジスタの作製)
高分子化合物2を溶媒であるキシレンに溶解して、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。
【0129】
得られた高分子化合物2を含む塗布液を、ボトムゲートボトムコンタクト素子(協同インター製)上にスピンコート法により塗布し、窒素中200℃で10分乾燥して約60nmの厚さの活性層を形成した。
【0130】
次いで、得られた活性層上に、有機薄膜トランジスタオーバーコート絶縁層材料である有機薄膜トランジスタ絶縁層材料1をスピンコート法により塗布し、窒素中、100℃で10分乾燥し、アルゴン中、UV/オゾンストリッパー(Model UV−1、サムコ製)を用いて紫外線(波長254nm)を1分間照射した後、窒素中、200℃で30分さらに乾燥して約3.4μmの厚さのオーバーコート絶縁層を形成し、電界効果型有機薄膜トランジスタ1を作製した。
【0131】
<トランジスタ特性>
作製した電界効果型有機薄膜トランジスタ1について、大気中でトランジスタ特性を測定した。ゲート電圧Vgを20〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて大気中で測定した閾値電圧(Vth)を表1に示す。
【0132】
実施例2
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料2の調製)
2.00gの高分子化合物4を2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン8.00gに溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して有機薄膜トランジスタ絶縁層材料2を調製した。
【0133】
(電界効果型有機薄膜トランジスタの作製)
高分子化合物2を溶媒であるキシレンに溶解して、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。
【0134】
得られた高分子化合物2を含む塗布液を、ボトムゲートボトムコンタクト素子(協同インター製)上にスピンコート法により塗布し、窒素中200℃で10分乾燥して約60nmの厚さの活性層を形成した。
【0135】
次いで、得られた活性層上に、有機薄膜トランジスタオーバーコート絶縁層材料である有機薄膜トランジスタ絶縁層材料2をスピンコート法により塗布し、窒素中、100℃で10分乾燥し、アライナー(PLA−521;Canon製)を用いて6000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射して約3.4μmの厚さのオーバーコート絶縁層を形成し、電界効果型有機薄膜トランジスタ2を作製した。
【0136】
<トランジスタ特性>
作製した電界効果型有機薄膜トランジスタ2について、大気中でトランジスタ特性を測定した。ゲート電圧Vgを20〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて大気中で測定した閾値電圧(Vth)を表1に示す。
【0137】
比較例1
(電界効果型有機薄膜トランジスタの作製)
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料1のかわりに、高分子化合物3の2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン溶液1.00gに2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエンを1.00g添加し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して調製した有機薄膜トランジスタ絶縁層材料3を用いた以外は、実施例2と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、大気中でトランジスタ特性を測定した。オーバーコート絶縁層の厚みは、約6μmであった。閾値電圧の絶対値は40V以上であり、ゲート電圧Vgを20〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件では駆動しなかった。
【0138】
【表1】

【符号の説明】
【0139】
1…基板、
2…ゲート電極、
3…ゲート絶縁層、
4…有機半導体層、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
7…オーバーコート絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(1)
[式中、Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
で表される繰り返し単位と;式(2)
【化2】

(2)
[式中、X’は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R’は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。a及びbは、各々独立に、0〜20の整数を表す。cは、1〜5の整数を表す。X’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位、式(3)
【化3】

(3)
[式中、X”は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R”は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。d及びeは、各々独立に、0〜20の整数を表す。fは、1〜5の整数を表す。X”が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R”が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位、式(4)
【化4】

(4)
[式中、X'''は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R'''は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。gは、0〜20の整数を表し、hは、1〜5の整数を表す。X'''が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。R'''が複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位、及び式(5)
【化5】

(5)
[式中、Rは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R〜R13は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。jは、0〜20の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位とを;有する高分子化合物(A)を含有する有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項2】
有機溶媒(B)を更に含有する請求項1記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した有機薄膜トランジスタ絶縁層。
【請求項4】
オーバーコート絶縁層である請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層を有する有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
ボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタ又はボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタである請求項5に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材。
【請求項8】
請求項7に記載のディスプレイ用部材を含むディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−23361(P2012−23361A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134902(P2011−134902)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】