説明

光スキャナ

【課題】2つの回動軸に関して、充分な回動角度を得ることができる光スキャナを得る。
【解決手段】印加電圧が0Vから増加していくと、接地されているミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極との間、及び接地されているジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極との間に電圧差が生じ、この電圧差によりミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極との間、及びジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極との間に静電引力が生じる。ミラー部210は、第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極からの静電引力に加えて、第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極からの静電引力によりY軸時計回りに回動する。交流電圧が130Vになると、ミラー部210は、アイドル状態から15度回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に生じる静電力により回動されて光を所望の方向に反射する光スキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
光スキャナは、ミラー部と、ミラー部を取り囲むように設けられるジンバルリングと、ジンバルリングを取り囲むように設けられる固定部とを備える。ミラー部は固定部に対して2つの回動軸周りに揺動自在に設けられる。すなわち、ミラー部は、第1の回動軸を介してジンバルリングの内側に取り付けられ、ジンバルリングは、その外周面に接続された第2の回動軸を介して環状の固定部の内側に取り付けられる。これにより、ミラー部がジンバルリングに対し第1の回動軸周りに回動自在となり、ジンバルリングが固定部に対し第2の回動軸周りに回動自在となる。
【0003】
ミラー部は光反射面を有し、光反射面の裏面に対向するように設けられる複数の電極を備える。複数の電極に電圧を適宜印加することにより、電極とミラー部との間に静電力を発生させ、この静電力により可動部が回動する。回動により可動部が電極と衝突しないように、回動軸からの距離に応じて電極とミラー部との距離を大きくする(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−57575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、共振現象を用いて第1の回転軸回りにミラー部を駆動し、DC駆動により第2の回転軸回りにミラー部及びジンバルリングを駆動しようとするとき、従来の構造では、DC駆動では共振による駆動ほど大きい振幅及び振動周波数を得ることができない。そのため、第2の回転軸回りの回動角度が不十分になるおそれがある。
【0006】
本発明は、この問題を鑑みてなされたものであり、2つの回動軸に関して、充分な回動角度を得ることができる光スキャナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光スキャナは、光反射面を有する板状であって、光反射面に対して平行な第1の回動軸回りに回動する第1の可動部と、板状であって、第1の可動部の周囲に設けられ、光反射面に対して平行かつ第1の回動軸と平行でない第2の回動軸回りに回動する第2の可動部と、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たとき、第1の可動部と重なる位置に、第1の可動部と一定の距離を置いて設けられる内側裏電極と、第1の支持部及び第2の支持部と直交する直線上から見たとき、第2の可動部と重なる位置に、第2の可動部と一定の距離を置いて設けられる外側裏電極とを備え、第1の可動部と内側裏電極との距離は、第2の可動部と外側裏電極との距離よりも短いことを特徴とする。
【0008】
内側裏電極及び外側裏電極は、光反射面の裏面と対向するように設けられ、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たとき、第1の可動部と重なる位置に、光反射面と対向し、かつ第1の可動部と一定の距離を置いて設けられる内側表電極と、第1の支持部及び第2の支持部と直交する直線上から見たとき、第2の可動部と重なる位置に、光反射面と対向し、かつ第2の可動部と一定の距離を置いて設けられる外側表電極とを備え、第1の可動部と内側表電極との距離は、第2の可動部と外側表電極との距離よりも短いことが好ましい。
【0009】
第1の可動部と内側裏電極との距離は、第1の可動部と内側表電極との距離と等しく、第2の可動部と外側裏電極との距離は、第2の可動部と外側表電極との距離と等しいことが好ましい。
【0010】
内側表電極及び外側表電極は、光を透過することが好ましい。
【0011】
内側裏電極は、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たときに第1の回動軸及び第2の回動軸により分割されて成る第1から第4の内側裏電極を有することが好ましい。
【0012】
外側裏電極は、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たときに第2の回動軸により分割されて成る第1の外側裏電極及び第2の外側裏電極を有することが好ましい。
【0013】
内側表電極は、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たときに第1の回動軸及び第2の回動軸により分割されて成る第1から第4の内側表電極を有することが好ましい。
【0014】
外側表電極は、第1の回動軸及び第2の回動軸と直交する直線上から見たときに第2の回動軸により分割されて成る第1の外側表電極及び第2の外側表電極を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つの回動軸に関して、充分な回動角度を得ることができる光スキャナを得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光スキャナの斜視断面図である。
【図2】ミラー部及びジンバル部の正面図である。
【図3】裏電極部の正面図である。
【図4】電位差と回動角度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による光スキャナ100の実施形態について図を用いて説明する。図1から3に光スキャナ100の構成を示す。
【0018】
光スキャナ100は、可動部200、表電極部300、及び裏電極部400とから構成される。
【0019】
可動部200は、円盤形状であるミラー部210と、ミラー部210の外周面を取り囲む環状のジンバル部220と、ジンバル部220の外周面221を取り囲む環状の枠部230とから主に構成される。ミラー部210は第1の可動部を成し、ジンバル部220は第2の可動部を成す。ミラー部210、ジンバル部220及び枠部230は略同じ厚さである。ミラー部210、ジンバル部220、及び枠部230は同心である。
【0020】
ミラー部210は、平面である光反射面211を有する。光反射面211は、円盤形状であるミラー部210が有する2つの円形面のうちの1つである。ジンバル部220には、内周面222側と外周面221側に2つずつ、合計4つの矩形の切欠231、232、233、234が設けられる。内周面222側の2つの切欠231、232は、ジンバル部220の中心軸に対して軸対称であり、外周面221側の2つの切欠233、234もまた同様である。切欠231、232、233、234の中心とジンバル部220の中心とを結ぶ線が成す角度は、90度である。
【0021】
以下、ミラー部210の中心及び切欠231、232の中心を通る直線をX軸、ミラー部210の中心及び切欠233、234の中心を通る直線をY軸、ミラー部210の中心から直角に表電極部300へ向かう直線をZ軸正方向として説明する。
【0022】
ミラー部210の外周面とジンバル部220の内周面側切欠231、232とを接続する第1及び第2のミラー支持部241、242が設けられる。第1及び第2のミラー支持部241、242は、X軸、すなわち第1の回動軸X上でミラー部210及びジンバル部220と接続される。第1の回動軸Xは、光反射面211と平行である。第1及び第2のミラー支持部241、242は、直方体の板状部材を幅方向に幾重にも折り畳んだ形状であり、いわゆる雷紋状を成す。この形状により第1及び第2のミラー支持部241、242は捻り方向に弾性を有する。これによりミラー部210は、ジンバル部220に対して第1の回動軸X回りに回動可能に支持される。
【0023】
ジンバル部220の外周面側切欠233、234と枠部230とを接続する第1及び第2のジンバル支持部243、244が設けられる。第1及び第2のミラー支持部241、242は、Y軸、すなわち第1の回動軸Y上でジンバル部220及び枠部230と接続される。第1の回動軸Yは、光反射面211と平行である。第1及び第2のジンバル支持部243、244の形状は、第1及び第2のミラー支持部241、242の形状と同様であり、捻り方向に弾性を有する。これによりジンバル部220は、枠部230に対して第1の回動軸Y回りに回動可能に支持される。枠部230は表電極部300及び裏電極部400に対して固定される。
【0024】
次に、裏電極部400について説明する。
【0025】
裏電極部400は、裏基板430と、裏基板430から突出する円柱形の裏突出部440とを有する。裏基板430の頂面431は平面である。裏突出部440は、半径よりも小さい軸方向長さを有する。裏突出部440の底面が裏基板430の頂面431と密着して、裏突出部440と裏基板430とが一体となって形成される。裏突出部440は、裏基板430の頂面431から約50μm突出する。
【0026】
裏突出部440の頂面442に、ミラー部210を駆動するための内側裏電極410が形成される。内側裏電極410は、円盤を四等分に分割して得られる第1から第4の内側裏分割電極411、412、413、414からなる。
【0027】
第1の内側裏分割電極411は、図においてX軸正側かつY軸負側に置かれ、第2の内側裏分割電極412はX軸正かつY軸正側に置かれ、第3の内側裏分割電極413はX軸負かつY軸正側に置かれ、第4の内側裏分割電極414はX軸負かつY軸負側に置かれる。
【0028】
裏基板430の頂面431上であって裏突出部440の周囲に、ジンバル部220を駆動するための外側裏電極420が形成される。外側裏電極420は、環形状を二等分に分割して得られる略半輪形状の第1及び第2の外側裏分割電極421、422からなる。ミラー部210と内側裏電極410との距離は、ジンバル部220と外側裏電極420との距離よりも短い。
【0029】
外側裏電極420は、環形状を二等分して得られる2つの略半輪からなり、内周に内側裏電極410を納める。略半輪のうち、図においてX軸正側に置かれる略半輪を第1の外側裏分割電極421、X軸負側に置かれる略半輪を第2の外側裏分割電極422とする。裏電極部400に電位差を与えないアイドル状態においては、裏基板430の頂面431、裏突出部440の頂面442、及び光反射面211は平行である。
【0030】
内側裏電極410と外側裏電極420の中心は、Z軸上、すなわち、ミラー部210及びジンバル部220及び枠部230の中心軸の延長線上に置かれる。内側裏電極410の直径はミラー部210の直径と略等しく、外側裏電極420の内径及び外径は、ジンバル部220の内径及び外径と略等しい。
【0031】
Z軸正方向から負方向に向けて、すなわちミラー部210及びジンバル部220の中心軸から見たとき、ミラー部210と内側裏電極410とが、そしてジンバル部220と外側裏電極420とが、各々略一致して重なる。ミラー部210と外側裏電極420、ジンバル部220と内側裏電極410は、各々重ならない。
【0032】
また、Z軸正方向から負方向に向けて見たとき、内側裏電極410は第1の回動軸X及び第2の回動軸Yにより第1から第4の内側裏分割電極411、412、413、414に四分割され、外側裏電極420は第2の回転軸により第1及び第2の外側裏分割電極421、422に二分される。
【0033】
第1及び第2の外側裏分割電極421、422は、略半輪形状の中央に切欠423、424を有し、ジンバル部220の中心軸から見たとき、この切欠423、424に第2のミラー支持部242及び第1のミラー支持部241が各々重なる。すなわち、第1の外側裏分割電極421は第2のミラー支持部242と、第2の外側裏分割電極422は第1のミラー支持部241と各々重ならない。
【0034】
第1から第4の内側裏配線415、416、417、418並びに第1及び第2の外側裏配線425、426が、第1から第4の内側裏分割電極411、412、413、414の外周、及び第1及び第2の外側裏分割電極421、422の外周に、各電極に電荷を移送するため各々接続される。
【0035】
第1及び第2の外側裏分割電極421、422との間には一定の間隙が設けられ、ジンバル部220の中心軸から見たとき、この間隙に第1及び第2のジンバル支持部243、244が重なる。すなわち、第1及び第2の外側裏分割電極421、422は第1及び第2のジンバル支持部243、244と重ならない。また、第1から第4の内側裏配線415、416、417、418は、第1から第4の内側裏分割電極411、412、413、414の外周から裏突出部440の側面を経て、第1の外側裏分割電極421と第2の外側裏分割電極422との間隙を通過する。
【0036】
第1から第4の内側裏配線415、416、417、418並びに第1及び第2の外側裏配線425、426は、図示しない電源装置に接続される一方で、ミラー部210及びジンバル部220及び枠部230は、電気的に接地される。
【0037】
次に、表電極部300について説明する。
【0038】
表電極部300は、表基板330と、表基板330から突出する円柱形の表突出部340とを有する。表電極部300は、裏電極部400と同形状であって、ミラー部210の重心を通りかつZ軸に対して直角な平面に関して、裏電極部400と面対称に配置される。表電極部300は、透明な部材により形成される。
【0039】
表突出部340の頂面431に、図示しない第1から第4の内側表分割電極が設けられ、表基板330の頂面431上であって表突出部340の周囲に、図示しない第1及び第2の外側表分割電極が設けられる。各分割電極は、酸化インジウム錫(ITO)により形成される。これにより、表電極部300は光を透過可能である。
【0040】
表基板330の裏面332から入射した光は、表基板330及び表突出部340を透過して、ミラー部210、すなわち光反射面211に照射される。ミラー部210はX軸及びY軸回りに回動し、光反射面211は光を任意の方向に反射する。ミラー部210がアイドル状態からθ度回転したとき、反射光の出射角度は2θ度変化する。
【0041】
次に、ミラー部210の動作について説明する。
【0042】
まず、ミラー部210がX軸時計周りに揺動する場合について説明する。
【0043】
図示しない電源装置が、第2及び第3の内側裏配線416、417を介して第2及び第3の内側裏分割電極412、413に交流電圧を印加する。さらに、第2及び第3の内側裏分割電極412、413とX軸に対し対称位置にある複数の内側表分割電極に対して、第2及び第3の内側裏分割電極412、413と同じ電圧を同時に印加する。この交流電圧は、ミラー部210の共振周波数と略同じ周波数である。
【0044】
この交流電圧が0Vから増加していくと、接地されているミラー部210と第2及び第3の内側裏分割電極412、413並びに内側表分割電極との間に電圧差が生じ、この電圧差により第2及び第3の内側裏分割電極412、413並びに内側表分割電極とミラー部210との間に静電引力が生じる。この静電引力により、第2及び第3の内側裏分割電極412、413並びに内側表分割電極とミラー部210とが引き合い、ミラー部210がX軸時計周りに回転する。交流電圧が最大電圧になると、ミラー部210は、アイドル状態から最大の回転角度まで回転する。
【0045】
交流電圧が130Vから減少していくと同時に静電引力が減少し、ミラー部210は、第1及び第2のミラー支持部241、242の弾性力によりジンバル部220及び枠部230と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになるとき、第2及び第3の内側裏分割電極412、413並びに内側表分割電極とミラー部210との間の電位差が無くなって静電引力が消滅し、ミラー部210は、ジンバル部220及び枠部230と平行な状態となる。
【0046】
次に、ミラー部210がX軸反時計周りに揺動する場合について説明する。
【0047】
この場合、電源装置は第1及び第4の内側裏配線415、418を介して第1及び第4の内側裏分割電極411、414に交流電圧を印加する。さらに、第1及び第4の内側裏分割電極411、414とX軸に対し対称位置にある複数の内側表分割電極に対して、第1及び第4の内側裏分割電極411、414と同じ電圧を同時に印加する。
【0048】
交流電圧が0Vから増加していくと、接地されているミラー部210と第1及び第4の内側裏分割電極411、414並びに内側表分割電極との間に電圧差が生じ、この電圧差により第1及び第4の内側裏分割電極411、414並びに内側表分割電極とミラー部210との間に静電引力が生じる。この静電引力により、第1及び第4の内側裏分割電極411、414並びに内側表分割電極とミラー部210とが引き合い、ミラー部210がX軸反時計周りに回転する。交流電圧が130Vになると、ミラー部210は、アイドル状態から15度回転する。
【0049】
交流電圧が130Vから減少していくと同時に静電引力が減少し、ミラー部210は、第1及び第2のミラー支持部241、242の弾性力によりジンバル部220及び枠部230と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになるとき、第1及び第4の内側裏分割電極411、414並びに内側表分割電極とミラー部210との間の電位差が無くなって静電引力が消滅し、ミラー部210は、ジンバル部220及び枠部230と平行な状態となる。
【0050】
X軸時計周り及びX軸反時計周りに対する回動を交互に繰り返すことにより、ミラー部210がX軸周りに揺動する。そして、交流電圧がミラー部210の共振周波数と略同じであるため、ミラー部210は共振現象により回動する。また、前述したようにミラー部210と外側裏電極420とがZ軸方向において重ならないため、ミラー部210と内側裏電極410及び内側表分割電極との間に生じる静電引力は、ジンバル部220及び外側裏電極420及び外側表分割電極に及ばない。
【0051】
次に、ミラー部210及びジンバル部220がY軸時計周りに揺動する場合について説明する。
【0052】
図示しない電源装置が、第3及び第4の内側裏配線417、418を介して第3及び第4の内側裏分割電極413、414に、第2の外側裏配線426を介して第2の外側裏分割電極422に、交流電圧を印加する。さらに、第3及び第4の内側裏分割電極413、414とY軸に対し対称位置にある複数の内側表分割電極、並びに第2の外側裏分割電極422とY軸に対し対称位置にある外側表分割電極に対して、第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに第2の外側裏分割電極422と同じ電圧を同時に印加する。この交流電圧は、最大振幅電圧が130Vである。
【0053】
この交流電圧が0Vから増加していくと、接地されているミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極との間、及び接地されているジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極との間に電圧差が生じ、この電圧差によりミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極との間、及びジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極との間に静電引力が生じる。この静電引力により、ミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極、そしてジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極とが各々引き合い、ミラー部210及びジンバル部220がX軸時計周りに回転する。すなわち、ミラー部210は、第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極からの静電引力に加えて、第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極からの静電引力によりY軸時計回りに回動する。交流電圧が130Vになると、ミラー部210は、アイドル状態から15度回転する。
【0054】
ジンバル部220の回転角度が大きくなると、ジンバル部220は裏基板430の頂面431に近接する。しかし、アイドル状態においてジンバル部220から裏基板430の頂面431までの距離は、裏突出部440の頂面442までの距離よりも遠い。そのため、ジンバル部220と第2の外側裏分割電極422とが直接に接触せず、ジンバル部220と第2の外側裏分割電極422との短絡により回路等が破壊されるおそれがなくなる。表基板330の頂面331に関しても同様である。一方、ミラー部210から内側裏電極410までの距離は近接しているため、X軸回りにミラー部210を回動させるときの静電引力を確保できる。表突出部340に関しても同様である。
【0055】
交流電圧が100Vから減少していくと同時に静電引力が減少し、ミラー部210及びジンバル部220は、第1及び第2のジンバル支持部243、244の弾性力により枠部230と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると、ミラー部210と第3及び第4の内側裏分割電極413、414並びに内側表分割電極、及びジンバル部220と第2の外側裏分割電極422及び外側表分割電極との間の電位差が無くなって静電引力が消滅し、ミラー部210及びジンバル部220は、枠部230と平行な状態となる。
【0056】
ジンバル部220がY軸反時計周りに揺動する場合について説明する。
【0057】
図示しない電源装置が、第1及び第2の内側裏配線415、416を介して第1及び第2の内側裏分割電極411、412に、第1の外側裏配線425を介して第1の外側裏分割電極421に、交流電圧を印加する。さらに、第1及び第2の内側裏配線415、416とY軸に対し対称位置にある複数の内側表分割電極、並びに第1の外側裏分割電極421とY軸に対し対称位置にある外側表分割電極に対して、第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに第1の外側裏分割電極421と同じ電圧を同時に印加する。この交流電圧は、ジンバル部220がY軸時計周りに揺動する場合と同様に最大振幅電圧130Vである。
【0058】
この交流電圧が0Vから増加していくと、接地されているミラー部210と第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに内側表分割電極との間、及び接地されているジンバル部220と第1の外側裏分割電極421及び外側表分割電極との間に電圧差が生じ、この電圧差によりミラー部210と第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに内側表分割電極との間、及びジンバル部220と第1の外側裏分割電極421及び外側表分割電極との間に静電引力が生じる。この静電引力により、ミラー部210と第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに内側表分割電極、そしてジンバル部220と第1の外側裏分割電極421及び外側表分割電極とが各々引き合い、ミラー部210及びジンバル部220がX軸時計周りに回転する。すなわち、ミラー部210は、第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに内側表分割電極からの静電引力に加えて、第1の外側裏分割電極421及び外側表分割電極からの静電引力によりY軸反時計回りに回動する。交流電圧が130Vになると、ミラー部210は、アイドル状態から15度回転する。
【0059】
ジンバル部220の回転角度が大きくなると、ジンバル部220は裏基板430の頂面431に近接する。しかし、アイドル状態においてジンバル部220から裏基板430の頂面431までの距離は、裏突出部440の頂面442までの距離よりも遠い。そのため、ジンバル部220と第1の外側裏分割電極421とが直接に接触せず、ジンバル部220と第1の外側裏分割電極421との短絡により回路等が破壊されるおそれがなくなる。一方、ミラー部210と内側電極までの距離は近接しているため、X軸回りに回動させるときの静電引力を確保できる。表突出部340に関しても同様である。
【0060】
交流電圧が100Vから減少していくと同時に静電引力が減少し、ミラー部210及びジンバル部220は、第1及び第2のジンバル支持部243、244の弾性力により枠部230と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると、ミラー部210と第1及び第2の内側裏分割電極411、412並びに内側表分割電極、及びジンバル部220と第1の外側裏分割電極421及び外側表分割電極との間の電位差が無くなって静電引力が消滅し、ミラー部210及びジンバル部220は、枠部230と平行な状態となる。
【0061】
Y軸時計周り及びY軸反時計周りに対する回動を交互に繰り返すことにより、ミラー部210がY軸周りに回動する。この回動は、DC駆動によるものである。また、前述したようにミラー部210と外側裏電極420及び外側表電極とがZ軸方向において重ならないため、外側裏電極420及び外側表電極はミラー部210との間に静電引力を生じない。すなわち、外側裏電極420及び外側表電極は、X軸回りにおけるミラー部210の回動に影響を及ぼさない。
【0062】
以上示したX軸方向に駆動する電圧及びY軸方向に駆動する電圧を、内側裏電極410、外側裏電極420、内側表電極、及び外側表電極に対して同時に加えることも可能である。このとき、X軸方向に駆動する電圧及びY軸方向に駆動する電圧が合成されて第1から第4の内側裏分割電極411、412、413、414及び内側表分割電極に印加される。
【0063】
次に、図4を用いてY軸回りにおけるミラー部210の回動角度と印加電圧との関係を、本実施形態と比較例とを用いて説明する。比較例は、外側裏電極420及び外側表電極が設けられない光スキャナ100であり、他の構成は本実施形態と同様である。
【0064】
比較例において、内側裏電極410及び内側表電極に130Vを印加すると、ミラー部210の回動角度は6度である。一方、本実施形態において内側裏電極410、外側裏電極420、内側表電極、及び外側表電極に130Vを印加すると、ミラー部210の回動角度は15度となる。すなわち、本実施形態によれば、2倍以上の回動角度を得ることができる。
【0065】
一方、ミラー部210を15度回動させる場合、比較例では180Vを印加する必要があるが、本実施形態では130Vで足りる。すなわち、本実施形態によれば、印加電圧を約3割低減することができる。
【0066】
本実施形態によれば、DC駆動によっても大きな回動角度を得ることができる。
【0067】
なお、表電極部300を設けずに、裏電極部400のみでミラー部210及びジンバル部220を駆動しても良い。
【0068】
また、裏基板430及び表基板330の頂面431から約50μmから約100μmの範囲で裏突出部440及び表突出部340が突出することが好ましいが、突出長さはこれらの値に限定されない。
【0069】
内側裏電極410及び外側裏電極420、並びに内側表電極及び外側表電極全てを用いてX軸方向及びY軸方向にミラー部210及びジンバル部220を回動しなくても良い。内側裏電極410及び外側裏電極420、又は内側表電極及び外側表電極いずれか一方のみを用いても良い。
【0070】
交流電圧の最大振幅電圧値は130Vでなくても良い。
【符号の説明】
【0071】
100 光スキャナ
200 可動部
210 ミラー部
211 光反射面
220 ジンバル部
221 外周面
222 内周面
230 枠部
241 第1のミラー支持部
242 第2のミラー支持部
243 第1のジンバル支持部
244 第2のジンバル支持部
300 表電極部
330 表基板
340 表突出部
400 裏電極部
410 内側裏電極
411 第1の内側裏分割電極
412 第2の内側裏分割電極
413 第3の内側裏分割電極
414 第4の内側裏分割電極
415 第1の内側裏配線
416 第2の内側裏配線
417 第3の内側裏配線
418 第4の内側裏配線
420 外側裏電極
421 第1の外側裏分割電極
421 第2の外側裏分割電極
425 第1の外側裏配線
426 第2の外側裏配線
430 裏基板
440 裏突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する板状であって、前記光反射面に対して平行な第1の回動軸回りに回動する第1の可動部と、
板状であって、前記第1の可動部の周囲に設けられ、前記光反射面に対して平行かつ前記第1の回動軸と平行でない第2の回動軸回りに回動する第2の可動部と、
前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たとき、前記第1の可動部と重なる位置に、前記第1の可動部と一定の距離を置いて設けられる内側裏電極と、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部と直交する直線上から見たとき、前記第2の可動部と重なる位置に、前記第2の可動部と一定の距離を置いて設けられる外側裏電極とを備え、
前記第1の可動部と内側裏電極との距離は、前記第2の可動部と外側裏電極との距離よりも短い光スキャナ。
【請求項2】
前記内側裏電極及び外側裏電極は、前記光反射面の裏面と対向するように設けられ、
前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たとき、前記第1の可動部と重なる位置に、前記光反射面と対向し、かつ前記第1の可動部と一定の距離を置いて設けられる内側表電極と、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部と直交する直線上から見たとき、前記第2の可動部と重なる位置に、前記光反射面と対向し、かつ前記第2の可動部と一定の距離を置いて設けられる外側表電極とを備え、
前記第1の可動部と内側表電極との距離は、前記第2の可動部と外側表電極との距離よりも短い請求項1に記載の光スキャナ。
【請求項3】
前記第1の可動部と内側裏電極との距離は、前記第1の可動部と内側表電極との距離と等しく、前記第2の可動部と外側裏電極との距離は、前記第2の可動部と外側表電極との距離と等しい請求項2に記載の光スキャナ。
【請求項4】
前記内側表電極及び前記外側表電極は、光を透過する請求項3に記載の光スキャナ。
【請求項5】
前記内側裏電極は、前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たときに前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸により分割されて成る第1から第4の内側裏電極を有する請求項1から3のいずれかに記載の光スキャナ。
【請求項6】
前記外側裏電極は、前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たときに前記第2の回動軸により分割されて成る第1の外側裏電極及び第2の外側裏電極を有する請求項1から3のいずれかに記載の光スキャナ。
【請求項7】
前記内側表電極は、前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たときに前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸により分割されて成る第1から第4の内側表電極を有する請求項1から3のいずれかに記載の光スキャナ。
【請求項8】
前記外側表電極は、前記第1の回動軸及び前記第2の回動軸と直交する直線上から見たときに前記第2の回動軸により分割されて成る第1の外側表電極及び第2の外側表電極を有する請求項1から3のいずれかに記載の光スキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−64952(P2011−64952A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215556(P2009−215556)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】