説明

光ピックアップ装置

【課題】
コンパクト且つ省エネを図りつつも、異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】
コリメートレンズCLからエキスパンダーレンズEXPへは平行光束が出射されるので、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを駆動することによって、コリメートレンズCLとエキスパンダーレンズEXPとの間に光軸ズレが生じた場合でも、コマ収差を抑えることができる。又、第2のアクチュエータACT2は、サブキャリッジSCに対して対物レンズOBJを、その光軸方向及び光軸交差方向に独立して移動するように駆動するので、フォーカシング及びトラッキング動作の際に、第2のアクチュエータACT2は対物レンズOBJのみを駆動するため、小型化・低コスト化が図れ、また応答性に優れることとなり、更に省エネも図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関し、特に異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録/再生を行える高密度光ディスクシステムの研究・開発が急速に進んでいる。一例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(BD)では、DVD(NA0.6、光源波長650nm、記憶容量4、7GB)と同じ大きさである直径12cmの光ディスクに対して、1面あたり20〜30GBの情報の記録が可能であり、又、NA0.65、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるHD DVDでは、直径12cmの光ディスクに対して、1面あたり15〜20GBの情報の記録が可能である。以下、本明細書では、このような光ディスクを「高密度光ディスク」と呼ぶ。
【0003】
ところで、このような高密度光ディスクの一方に対してのみ適切に情報を記録/再生できるというだけでは、光ピックアップ装置の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在の状況下では、国内外のメーカーよりBDとHD DVDの双方についてソフトが供給されることが予想されており、従っていずれの高密度光ディスクに対しても、情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置が望まれている。
【0004】
ここで、BDとHD DVDとに互換可能に情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置における1つの問題は、BDは保護層の厚さが0.1mm程度であり、HD DVDは保護層の厚さが0.6mmであるため、同じ対物レンズを用いると保護層の厚さが異なることに起因して球面収差が生じることである。従って、保護層厚の差に起因する球面収差を補正するために、光ピックアップ装置の集光光学系に何らかの工夫が必要となる。ここで、使用する光束の波長が異なる場合、対物レンズに回折輪帯を設けるなどすれば、一方の光束のみに回折効果を与え、それにより保護層厚の差に起因する球面収差を補正することができるが、BDとHD DVDとは共に405nm程度の短波長の光束を用いるため、保護層厚の差に起因する球面収差を補正するために回折を用いることができないという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1においては、BDとHD DVDとの互換ではないが、共通の光学系(対物レンズを含む)を設け、保護層の厚さが異なる光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う際に、コリメートレンズを光軸方向に変位させ、それにより球面収差を補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−203094号公報
【特許文献2】特許第3511786号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1の技術によれば、いずれか一方の光ディスクに対して平行光束を入射したとしても、他方の光ディスクには発散光束を入射する必要があるが、発散光入射のときは像高特性が悪化するため、トラッキング動作により対物レンズに光軸ズレが生じた場合など、コマ収差の発生を招く恐れがある。特に、高密度光ディスクにおいては、僅かのコマ収差で情報の記録及び/又は再生が不可能となる恐れがあるので、その対策が必要である。
【0007】
これに対し、特許文献2には、発散角を変更する中間レンズと対物レンズの光軸を一致させた状態で、コリメータからの平行光束を中間レンズで受けつつ、トラッキング動作させる構成が示されている。しかしながら、中間レンズと対物レンズとを一体で駆動することは、その慣性が大きくなることからトラッキング追従性が悪くなり、特に高密度光ディスクを高速回転させて情報を記録及び/又は再生する際に問題となることが多い。更に大型のアクチュエータが必要であるから、光ピックアップ装置の大型化を招き、省エネが図れないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、コンパクト且つ省エネを図りつつも、異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の光ピックアップ装置は、
キャリッジベースと、
前記キャリッジベース上に搭載された光源と、
前記キャリッジベース上に搭載されたコリメートレンズと、
前記キャリッジベースに対して移動可能に支持されたサブキャリッジと、
前記キャリッジベースに対して前記サブキャリッジを、前記コリメートレンズの光軸交差方向であり且つ情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録媒体の半径方向に移動するように駆動する第1のアクチュエータと、
前記サブキャリッジ上に搭載された発散角変更光学系と、
前記サブキャリッジ上に搭載された対物レンズと、
前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸交差方向であり且つ前記光情報記録媒体の半径方向に移動するように駆動する第2のアクチュエータと、を有し、
保護層の厚さt1の第1光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合は、前記光源から出射された光束が、前記コリメートレンズで平行光束に変換された後に、前記発散角変更光学系を介して第1の発散角度で前記対物レンズに入射し、その情報記録面に集光されるようになっており、
保護層の厚さt2(≠t1)の第2光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合は、前記光源から出射された光束が、前記コリメートレンズで平行光束に変換された後に、前記発散角変更光学系を介して前記第1の発散角度と異なる第2の発散角度で前記対物レンズに入射し、その情報記録面に集光されるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記コリメートレンズから前記発散角変更光学系へは平行光束が出射されるので、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを駆動することによって、前記コリメートレンズと前記発散角変更光学系との間に光軸ズレが生じた場合でも、コマ収差を抑えることができる。又、前記第2のアクチュエータは、前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸交差方向であり且つ光情報記録媒体の半径方向に移動するように駆動するので、トラッキング動作の際に、前記第2のアクチュエータは前記対物レンズのみを駆動するため、小型化・低コスト化が図れ、また応答性に優れることとなり、更に省エネも図れる。なお、「平行光束」とは、光軸ズレが生じても実質的に波面収差が0.07λrms以下に抑えられる発散光束又は収束光束を含むものである。
【0011】
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸方向に移動するアクチュエータを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記第2のアクチュエータは、前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸方向に移動することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記発散角変更光学系と前記対物レンズとの間には反射手段が配置されていることを特徴とするので、光ピックアップ装置の厚みを抑えることができる。
【0014】
請求項5に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを最大量移動させ、同時に前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを前記サブキャリッジと同一方向に最大量移動させたとき、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの波面収差が0.07λrms以下となる位置に、前記サブキャリッジと前記対物レンズの移動制限を設けたことを特徴とするので、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータにより前記サブキャリッジと前記対物レンズとを最大量移動させた場合に生じるコマ収差の発生を抑制できる。
【0015】
請求項6に記載の光ピックアップ装置は、請求項5に記載の発明において、前記移動制限は、機械的制限であることを特徴とする。機械的制限とは、前記対物レンズもしくは前記サブキャリッジに当接するストッパなどをいう。
【0016】
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項5に記載の発明において、前記移動制限は、電気的制限であることを特徴とする。電気的制限とは、前記対物レンズもしくは前記サブキャリッジの移動量を検出して、前記第1アクチュエータ又は前記第2アクチュエータの駆動を停止するものをいう。
【0017】
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項5〜7のいずれかに記載の発明において、前記光ピックアップ装置において、トラッキング動作又はシーク動作を行う際に、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを光軸交差方向に移動させたときに、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により移動を制限されたときは、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させることを特徴とするので、かかる移動制限を越えて前記対物レンズを移動させることができる。なお、「トラッキング動作」とは、情報記録面上において、集光スポットをトラックに追従させる動作のことであり、「シーク動作」とは、集光スポットを離れたトラックに移動させる動作のことである。
【0018】
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項8に記載の発明において、前記キャリッジベースを移動させる第3のアクチュエータを有し、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させたときに、前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により移動を制限されたときは、前記第3のアクチュエータにより前記キャリッジベースを移動させることを特徴とするので、シーク動作を行う場合など、前記サブキャリッジ及び前記対物レンズの移動制限を越えて前記対物レンズを移動させることができる。
【0019】
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項5〜7のいずれかに記載の発明において、前記光ピックアップ装置において、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの移動量を求める移動量計算手段と、前記移動量計算手段により求められた集光スポットの移動量だけ、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させた場合に、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限されるか否かを判別する判別手段とを有し、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限されると、前記判別手段が判断したときは、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させる前に、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させることを特徴とするので、集光スポットのコマ収差への影響が大きい発散角変更光学系の光軸と対物レンズの光軸とのズレ量を小さくできる。このため、集光スポットに生じるコマ収差がより小さくなるような状態で、情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
【0020】
請求項11に記載の光ピックアップ装置は、請求項10に記載の発明において、前記光ピックアップ装置において、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの移動量を求める移動量計算手段と、前記移動量計算手段により求められた集光スポットの移動量だけ、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させ且つ前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させようすると、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限され且つ前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により制限されるか否かを判別する判別手段とを有し、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限され且つ前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により制限されると、前記判別手段が判断したときは、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとにより前記サブキャリッジと前記対物レンズとを移動させる前に、前記第3のアクチュエータにより前記キャリッジベースを移動させることを特徴とするので、光軸のズレ量がより小さく、集光スポットに生じるコマ収差がより小さくなる状態でシーク動作を行うことができ、横切ったトラック数の判断などに利用するTE(トラックエラー)信号の検出性能が向上する。
【0021】
請求項12に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜11のいずれかに記載の発明において、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の1回転周期の偏心成分を求める偏心計算手段を備え、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の1回転以上にわたり同一トラックに情報の記録及び/又は再生を行う場合、前記第1のアクチュエータは前記1回転周期の偏心成分に基づいて、回転に同期して前記サブキャリッジを光軸直交方向に移動させることを特徴とするので、対物レンズの光軸と発散角変更光学系の光軸とのズレ量を小さくできる。このため、集光スポットに生じるコマ収差がより小さくなる状態で、情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
【0022】
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜12のいずれかに記載の発明において、前記発散角変更光学系は、複数のレンズを含み、前記レンズの少なくとも1つが第4のアクチュエータにより光軸方向に変位可能となっていることを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、請求項13に記載の発明において、前記第4のアクチュエータが、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定された駆動部材と、前記少なくとも1つのレンズに連結され、かつ前記駆動部材上に移動可能に保持された可動部材と、から構成され、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記可動部材を移動させるようになっていることを特徴とする。
【0024】
前記第4のアクチュエータにおいて、前記電気機械変換素子に対して例えば鋸歯状の波形をしたパルスなどの駆動電圧をごく短時間印加することで、前記電気機械変換素子を微小に伸長または収縮するように変形させることができるが、そのパルスの形状により伸長又は収縮の速度を変えることができる。ここで、前記電気機械変換素子を伸長または収縮方向へ速い速度で変形したとき、前記可動部材は、その質量の慣性により、前記駆動部材の動作に追随せず、そのままの位置に留まる。一方、前記電気機械変換素子がそれよりも遅い速度で反対方向へと変形したとき、前記可動部材は、その間に作用する摩擦力で駆動部材の動作に追随して移動する。したがって、前記電気機械変換素子が伸縮を繰り返すことにより、前記可動部材は一方向へ連続して移動することができる。即ち、高い応答性を有する前記第4のアクチュエータを用いることで、前記可動部材に連結した前記少なくとも1つのレンズを高速に移動させることもでき、且つ微小量移動させることもできる。更に、前記可動部材を定位置に保持するような場合には、前記電気機械変換素子への電力供給を中断すれば、前記可動部材と前記駆動部材との間に作用する摩擦力によって保持されるので、省エネも図れる。加えて、前記アクチュエータの構成は、簡素で小型化が可能で、低コストであるという利点もある。よって、光ピックアップ装置において、前記光源と前記対物レンズとの間に配置された前記少なくとも1つのレンズを、その光軸方向に駆動することにより、高精度かつ高速に光束の発散角変更が可能であり、又コンパクトで消費電力が低く比較的低コストな光ピックアップ装置を実現できる。
【0025】
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜14のいずれかに記載の発明において、前記第1のアクチュエータが、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定された駆動部材と、前記サブキャリッジに連結され、かつ前記駆動部材上に移動可能に保持された可動部材と、から構成され、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記可動部材を移動させるようになっていることを特徴とする。
【0026】
前記第1のアクチュエータにおいて、前記電気機械変換素子に対して例えば鋸歯状の波形をしたパルスなどの駆動電圧をごく短時間印加することで、前記電気機械変換素子を微小に伸長または収縮するように変形させることができるが、そのパルスの形状により伸長又は収縮の速度を変えることができる。ここで、前記電気機械変換素子を伸長または収縮方向へ速い速度で変形したとき、前記可動部材は、その質量の慣性により、前記駆動部材の動作に追随せず、そのままの位置に留まる。一方、前記電気機械変換素子がそれよりも遅い速度で反対方向へと変形したとき、前記可動部材は、その間に作用する摩擦力で駆動部材の動作に追随して移動する。したがって、前記電気機械変換素子が伸縮を繰り返すことにより、前記可動部材は一方向へ連続して移動することができる。即ち、高い応答性を有する前記第1のアクチュエータを用いることで、前記可動部材に連結した前記サブキャリッジを高速に移動させることもでき、且つ微小量移動させることもできる。更に、前記可動部材を定位置に保持するような場合には、前記電気機械変換素子への電力供給を中断すれば、前記可動部材と前記駆動部材との間に作用する摩擦力によって保持されるので、省エネも図れる。加えて、前記アクチュエータの構成は、簡素で小型化が可能で、低コストであるという利点もある。即ち、前記第1のアクチュエータの駆動により前記サブキャリッジを移動させることで、コンパクトで消費電力が低く比較的低コストな光ピックアップ装置を実現できる。
【0027】
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜14のいずれかに記載の発明において、前記第1のアクチュエータはボイスコイルモータであることを特徴とする。
【0028】
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、請求項16に記載の発明において、前記サブキャリッジは板ばねに支持されていることを特徴とするので、板ばねの厚さ方向とサブキャリッジの移動方向とを一致させることにより、移動方向以外の移動を拘束する構成を容易に実現できる。
【0029】
請求項18に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜17のいずれかに記載の発明において、前記光源からは波長λ1=405±20nmの光束が出射され、前記第1光情報記録媒体の保護層の厚さt1と前記第2光情報記録媒体の保護層の厚さt2の一方は0.1mm、他方は0.6mmであることを特徴とするので、BDとHD DVDに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える。
【0030】
請求項19に記載の光ピックアップ装置は、請求項18に記載の発明において、波長λ2=655±30nmの光束を出射する別の光源が設けられ、前記波長λ2の光束は、前記対物レンズを介して、前記第1光情報記録媒体及び前記第2光情報記録媒体とは異なる光情報記録媒体の情報記録面に集光されることを特徴とするので、更にDVDに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える。
【0031】
請求項20に記載の光ピックアップ装置は、請求項18又は19に記載の発明において、波長λ3=785±30nmの光束を出射する別の光源が設けられ、前記波長λ3の光束は、前記対物レンズを介して、前記第1光情報記録媒体及び前記第2光情報記録媒体とは異なる光情報記録媒体の情報記録面に集光されることを特徴とするので、更にCDに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える。
【0032】
尚、本明細書中、「レンズ」とは、研磨ガラス、成形プラスチックレンズなどの表面が曲面状のレンズのみでなく、ホログラムや回折格子でできたレンズやGRINレンズ等も含む。これらレンズは、必ずしも結像性能を有さなくても良く、レンズが構成する光学素子に入射した光線の発散角を変更して出射するよう、入射光線を屈折させて出射する作用を有すれば足りる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、コンパクト且つ省エネを図りつつも、異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1(a)は、保護層の厚さが異なる光情報記録媒体(光ディスクともいう)であるBD及びHD DVDに適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す上面図であり、BD使用時の状態を示している。図1(b)は、図1(a)の構成をIB-IB線で切断して矢印方向に見た図である。図2(a)は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す上面図であり、HD DVD使用時の状態を示している。図2(b)は、図2(a)の構成をIIB-IIB線で切断して矢印方向に見た図である。
【0035】
図1,2において、キャリッジベースCBが、不図示のアクチュエータ(第3のアクチュエータ)により、平行に延在する2本のガイド軸GS3に沿って移動するように配置されている。キャリッジベースCB上には、半導体レーザLDと、偏光ビームスプリッタPBSと、センサレンズSENと、光検出器PDと、コリメートレンズCLとが配置されている。
【0036】
更に、キャリッジベースCB上において、サブキャリッジSCが、第1のアクチュエータACT1により駆動され、ガイド軸GS3に平行なガイド軸GS1に沿って移動するように配置されている。
【0037】
第1のアクチュエータACT1は、キャリッジベースCB上に後端(図1(a)で上端)が固定された、電気機械変換素子である圧電アクチュエータPZ1を含む。圧電アクチュエータPZ1は、PZT(ジルコン・チタン酸鉛)などで形成された圧電セラミックスを積層してなる。圧電セラミックスは、その結晶格子内の正電荷の重心と負電荷の重心とが一致しておらず、それ自体分極していて、その分極方向に電圧を印加すると伸びる性質を有している。しかし、圧電セラミックスのこの方向への歪みは微小であり、この歪み量により被駆動部材を駆動することは困難であるため、図3に示すように、複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電アクチュエータPZ1が実用可能なものとして提供されている。本実施の形態では、この積層型圧電アクチュエータPZ1を駆動源として用いている。
【0038】
圧電アクチュエータPZ1の前端(図1(a)で下端)には、駆動部材である駆動軸DS1が取り付けられている。片持ち状態である駆動軸DS1は、キャリッジベースCBの壁Wを貫通し、可動部材であるサブキャリッジSCの駆動孔DA1に適度な摩擦力をもって係合している。
【0039】
サブキャリッジSCは、そのガイド溝GA1内に係合されたガイド軸GS1によりガイドされ、キャリッジベースCBに対して移動可能となっている。サブキャリッジSCの移動量を磁気的に(又は光学的に)検出する不図示のエンコーダ(位置情報取得手段であり、例えばガイド軸GS1に磁気情報を配置し、サブキャリッジSCに読み取りヘッドなどを設けることができる)から信号(位置情報)を受けて、圧電アクチュエータPZ1を駆動制御するために、不図示の配線を介して電圧を印加する外部の駆動回路DR1が配置されている。なお、エンコーダを設けない構成とすることも可能である。
【0040】
次に、サブキャリッジSCの駆動方法について説明する。一般に、積層型圧電アクチュエータPZ1は、電圧印加時の変位量は小さいが、発生力は大でその応答性も鋭い。したがって、図4(a)に示すように立ち上がりが鋭く立ち下がりがゆっくりとした略鋸歯状波形のパルス電圧を印加すると、圧電アクチュエータPZ1は、パルスの立ち上がり時に急激に伸び、立ち下がり時にそれよりもゆっくりと縮む。したがって、圧電アクチュエータPZ1の伸長時には、その衝撃力で駆動軸DS1が図1(a)の下側へ押し出されるが、サブキャリッジSCは、その慣性により、駆動軸DS1と一緒には移動せず、駆動軸DS1と駆動孔DA1との間で滑りを生じてその位置に留まる(わずかに移動する場合もある)。一方、パルスの立ち下がり時には立ち上がり時に比較して駆動軸DS1がゆっくりと戻るので、駆動孔DA1が駆動軸DS1に対して滑らずに、駆動軸DS1と一体的に図1(a)の上側へ移動する。即ち、周波数が数百から数万ヘルツに設定されたパルスを印加することにより、サブキャリッジSCを所望の速度で連続的に移動させることができる。尚、以上より明らかであるが、図4(b)に示すように電圧の立ち上がりがゆっくりで、立ち下がりが鋭いパルスを印加すれば、サブキャリッジSCを逆の方向へ移動させることができる。
【0041】
サブキャリッジSC上には、発散角変更光学系としてのエキスパンダーレンズEXP(レンズL1,L2からなる)と、反射手段である立ち上げミラーMと、λ/4波長板QWPと、対物レンズOBJと、サブキャリッジSCに対して対物レンズOBJを光軸方向及び光軸直交方向に移動するように駆動する第2アクチュエータACT2が配置されている。第2アクチュエータACT2は、駆動回路DR2により駆動制御されるようになっている。
【0042】
更に、サブキャリッジSC上において、エキスパンダーレンズEXPのレンズL1は固定されているが、レンズL2は、その光軸方向に平行に延在するガイド軸GS4に支持されており、第4のアクチュエータACT4の駆動により光軸方向に移動するようになっている。
【0043】
第4のアクチュエータACT4は、サブキャリッジSC上に後端(図1(a)で右端)が固定された、電気機械変換素子である圧電アクチュエータPZ4を含む。圧電アクチュエータPZ4は、PZT(ジルコン・チタン酸鉛)などで形成された圧電セラミックスを積層してなる。圧電セラミックスは、その結晶格子内の正電荷の重心と負電荷の重心とが一致しておらず、それ自体分極していて、その分極方向に電圧を印加すると伸びる性質を有している。しかし、圧電セラミックスのこの方向への歪みは微小であり、この歪み量により被駆動部材を駆動することは困難であるため、図3に示すように、複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電アクチュエータPZ4が実用可能なものとして提供されている。本実施の形態では、この積層型圧電アクチュエータPZ4を駆動源として用いている。
【0044】
圧電アクチュエータPZ4の前端(図1(a)で左端)には、駆動部材である駆動軸DS4が取り付けられている。片持ち状態である駆動軸DS4は、サブキャリッジSCの壁Wを貫通し、可動部材であるレンズL2のレンズホルダLHDの駆動孔DA4に適度な摩擦力をもって係合している。
【0045】
次に、レンズL2の駆動方法について説明する。一般に、積層型圧電アクチュエータPZ4は、電圧印加時の変位量は小さいが、発生力は大でその応答性も鋭い。したがって、図4(a)に示すように立ち上がりが鋭く立ち下がりがゆっくりとした略鋸歯状波形のパルス電圧を印加すると、圧電アクチュエータPZ4は、パルスの立ち上がり時に急激に伸び、立ち下がり時にそれよりもゆっくりと縮む。したがって、圧電アクチュエータPZ4の伸長時には、その衝撃力で駆動軸DS4が図1(a)の左側へ押し出されるが、レンズL2のレンズホルダLHDは、その慣性により、駆動軸DS4と一緒には移動せず、駆動軸DS4と駆動孔DA4との間で滑りを生じてその位置に留まる(わずかに移動する場合もある)。一方、パルスの立ち下がり時には立ち上がり時に比較して駆動軸DS4がゆっくりと戻るので、駆動孔DA4が駆動軸DS4に対して滑らずに、駆動軸DS4と一体的に図1(a)の右側へ移動する。即ち、周波数が数百から数万ヘルツに設定されたパルスを印加することにより、レンズホルダLHDをレンズL2ごと所望の速度で連続的に移動させることができる。尚、以上より明らかであるが、図4(b)に示すように電圧の立ち上がりがゆっくりで、立ち下がりが鋭いパルスを印加すれば、レンズホルダLHDを逆の方向へ移動させることができる。
【0046】
本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の動作について説明する。ここでは第1光情報記録媒体であるBDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、第4アクチュエータACT4を駆動して、レンズL2を図1に示すように立ち上げミラーM側に移動させる。かかる状態で、光源波長405±20nmの半導体レーザLD(光源)から出射された光束は、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、コリメータCLで平行光束に変換された後、エキスパンダーレンズEXPを通過し、より拡径された平行光束(発散角0度)に変換され、立ち上げミラーMに入射する。
【0047】
図1(b)において、立ち上げミラーMに入射した光束の一部は、それを透過した後、立ち上げミラーMの背後に位置したレーザパワーモニタ(不図示)に入射し、レーザパワーの監視に用いられる。一方、立ち上げミラーMに入射した光束の残りは、そこで反射され、1/4波長板QWPを通過した後、対物レンズOBJに入射して、ここからBDの情報記録面(保護層の厚さ0.1mm)に集光される。
【0048】
BDの情報記録面で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、1/4波長板QWPを通過し、立ち上げミラーMで反射された後、エキスパンダーレンズEXP、コリメートレンズCLを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBSで反射され、センサレンズSENによって、光検出器(受光素子、以下同じ)PDの受光面に集光されるようになっている。光検出器PDの出力信号を用いて、BDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0049】
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて第2アクチュエータACT2が、半導体レーザLDからの光束をBDの情報記録面上に適切に結像するように、対物レンズOBJをサブキャリッジSCに対してフォーカシング又はトラッキングのために移動させるようになっている。
【0050】
一方、ここでは第2光情報記録媒体であるHD DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、第4アクチュエータACT4を駆動して、レンズL2を図2に示すように半導体レーザLD側に移動させる。かかる状態で、光源波長405±20nmの半導体レーザLDから出射された光束は、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、コリメータCLで平行光束に変換された後、エキスパンダーレンズEXPを通過し、より拡径された発散光束(発散角>0度)に変換され、立ち上げミラーMに入射する。
【0051】
図2(b)において、立ち上げミラーMに入射した光束の一部は、それを透過した後、立ち上げミラーMの背後に位置したレーザパワーモニタ(不図示)に入射し、レーザパワーの監視に用いられる。一方、立ち上げミラーMに入射した光束の残りは、そこで反射され、1/4波長板QWPを通過した後、対物レンズOBJに入射して、ここからHD DVDの情報記録面(保護層の厚さ0.6mm)に集光される。このように対物レンズOBJには発散光束が入射するので、共通の対物レンズOBJを用いても、BDとHD DVDとの保護層の厚さの差に起因する球面収差を補正することができる。
【0052】
HD DVDの情報記録面で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、1/4波長板QWPを通過し、立ち上げミラーMで反射された後、エキスパンダーレンズEXP、コリメートレンズCLを通過し、更に偏光ビームスプリッタPBSで反射され、センサレンズSENによって、光検出器(受光素子、以下同じ)PDの受光面に集光されるようになっている。光検出器PDの出力信号を用いて、HD DVDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0053】
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて第2アクチュエータACT2が、半導体レーザLDからの光束をHD DVDの情報記録面上に適切に結像するように、対物レンズOBJをサブキャリッジSCに対してフォーカシング又はトラッキングのために移動させるようになっている。
【0054】
ここで、移動制限について図面を参照して説明する。図5は、サブキャリッジSCと対物レンズOBJの移動制限の例を示す図であり、図5(a)はBD使用時の状態を示し、図5(b)はHD DVD使用時の状態を示しているが、立ち上げミラー、第1のアクチュエータ、サブキャリッジの支持機構、第2のアクチュエータ、第2のアクチュエータの支持機構等は省略して示している。
【0055】
図5において、キャリッジベースCBの端部(図で右端)から、サブキャリッジSC側に、一対の第1のアームAM1、AM1が延在している。第1のアームAM1の先端には、それぞれ突起p1が形成されている。サブキャリッジSCは、突起p1,p1の間に配置されており、光軸直交方向に移動したときに、いずれかの突起p1に当接することで、それ以上の移動が制限される。一方、サブキャリッジSCの端部(図で右端)から、対物レンズOBJ側に、一対の第2のアームAM2、AM2が延在している。第2のアームAM2の先端には、それぞれ突起p2が形成されている。対物レンズOBJは、突起p2,p2の間に配置されており、光軸直交方向に移動したときに、(この例では、対物レンズOBJと一体的に移動する第2のアクチュエータACT2を介して)いずれかの突起p2に当接することで、それ以上の移動が制限される。突起p1がサブキャリッジSCの移動制限を構成し、突起p2が対物レンズOBJの移動制限を構成する。
【0056】
ここで、図5に示すように、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを最大量移動させ(突起p1に当接させ)、同時に第2のアクチュエータACT2により対物レンズOBJをサブキャリッジSCと同一方向に最大量移動させ(突起p2に当接させ)たとき、BD(図5(a))及びHD DVD(図5(b))の情報記録面上における集光スポットの波面収差が0.07λrms以下となる位置に、突起p1,p2が設けられているので、第1のアクチュエータACT1(不図示)及び第2のアクチュエータACT2により、トラッキング動作等のためにサブキャリッジSCと対物レンズOBJとを最大量移動させた場合に生じるコマ収差の発生を抑制できる。なお、サブキャリッジSC又は対物レンズOBJが、突起p1又はp2に到達したことは、衝撃センサからの信号や、TE波形の変化で検出することができる。このような機械的制限である突起p1,p2の代わりに、電気的制限(例えば光学的センサや磁気的センサ等によりサブキャリッジSCと対物レンズOBJの位置を測定したり、或いはアクチュエータの電流値制限で制限位置まで到達したことを検出したときは、それ以上の駆動を中断する)を設けても良い。
【0057】
ただし、サブキャリッジSCと対物レンズOBJが、突起p1,p2によりそれぞれ移動を制限された後は、それ以上第1のアクチュエータACT1及び第2のアクチュエータACT2によりサブキャリッジSCと対物レンズOBJとを光軸直交方向に移動させることはできない。かかる場合には、第3のアクチュエータ(不図示)を用いて、キャリッジベースCBごと対物レンズOBJを含む光ピックアップ装置全体を光軸直交方向に移動させることができるので、移動制限を越えて、シーク動作をおこなうことができる。
【0058】
以上のシーク動作の具体的な制御を、図面を参照して説明する。図6は、シーク動作の制御例を示すフローチャート図である。図6において、シーク動作が要求された場合、ステップS101において、第2のアクチュエータACT2を駆動制御して、対物レンズOBJを光軸直交方向に移動させる。続くステップS102で、集光スポットが目的トラックに到達したか否か判断され、到達した場合には、制御フローを終了し、到達しない場合には、ステップS102において、対物レンズOBJが突起p2に到達したか否かが判断される。対物レンズOBJが突起p2に到達しなければ、ステップS101に戻って第2のアクチュエータACT2の駆動制御を続行する。一方、対物レンズOBJが突起p2に到達した場合、ステップS104で、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを光軸直交方向に移動させる。
【0059】
更にステップS105で、集光スポットが目的トラックに到達したか否か判断され、到達した場合には、制御フローを終了し、到達しない場合には、ステップS106において、サブキャリッジSCが突起p1に到達したか否かが判断される。サブキャリッジSCが突起p1に到達しなければ、ステップS104に戻って第1のアクチュエータACT1の駆動制御を続行する。一方、サブキャリッジSCが突起p1に到達した場合、ステップS107で、第3のアクチュエータ(不図示)によりキャリッジベースCBを光軸直交方向に移動させる。ステップS108で、集光スポットが目的トラックに到達したか否か判断され、到達した場合には、制御フローを終了し、到達しなければ、ステップS107に戻って第3のアクチュエータの駆動制御を続行する。
【0060】
更に、駆動回路DR2は、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、BDもしくはHD DVDの情報記録面上における集光スポットの移動量を求め、求められた集光スポットの移動量だけ、第2のアクチュエータACT2により前記対物レンズを移動させた場合に、対物レンズOBJが対物レンズOBJの移動制限(突起p2)により制限されるか否かを判別し、対物レンズOBJが対物レンズOBJの移動制限により制限されると判断したときは、駆動回路DR1に信号を送信し、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを移動させれば、その連係により、対物レンズOBJの移動制限を越えて対物レンズOBJを容易に移動させることができる。ここで、駆動回路DR2、DR1が移動量計算手段及び判別手段を構成する。
【0061】
或いは、駆動回路DR1,DR2が、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、BDもしくはHD DVDの情報記録面上における集光スポットの移動量を求め、求められた集光スポットの移動量だけ、第2のアクチュエータACT1により対物レンズOBJを移動させ且つ第1のアクチュエータACT2によりサブキャリッジSCを移動させようすると、対物レンズOBJが対物レンズOBJの移動制限(突起p2)により制限され且つサブキャリッジSCがサブキャリッジSCの移動制限(突起p1)により制限されるか否かを判別し、対物レンズOBJが対物レンズOBJの移動制限により制限され且つサブキャリッジSCがサブキャリッジSCの移動制限により制限されると判断したときは、第3のアクチュエータ(不図示)によりキャリッジベースCBを移動させるようにしても良い。
【0062】
以上のシーク動作の具体的な制御を、図面を参照して説明する。図7は、シーク動作の制御例を示すフローチャート図である。図7において、シーク動作が要求された場合、ステップS201において、集光スポットを到達させたい目的トラックまでの移動距離Lを計算する。ステップS202で、計算された移動距離Lが、対物レンズOBJの現在位置から突起p2までの距離X2を超えているか否かが判断される。L≦X2であると判断された場合、ステップS203で、第2のアクチュエータACT2を駆動制御して対物レンズOBJを移動させ、集光スポットが目的のトラックに集光されるようにする。
【0063】
一方、L>X2であると判断された場合には、ステップS204で、計算された移動距離Lが、対物レンズOBJの現在位置から突起p2までの距離X2とサブキャリッジSCの現在位置から突起p1までの距離X1との合計(X2+X1)を超えているか否かが判断される。L≦(X2+X1)であると判断された場合、ステップS205で、まず第1のアクチュエータACT1を駆動制御してサブキャリッジSCを移動させ、集光スポットが目的のトラックに集光されるようにする。このとき、集光スポットが目的のトラックに到達すればシーク動作を終了するが、ステップS206で、集光スポットが目的のトラックに到達する前に、突起p1によりサブキャリッジSCが移動制限させられたと判断した場合は、ステップS203で、第2のアクチュエータACT2を駆動制御して対物レンズOBJを移動させ、集光スポットが目的のトラックに集光されるようにする。
【0064】
これに対し、L>(X2+X1)であると判断された場合、ステップS207で、第3のアクチュエータを駆動制御してキャリッジベースCBを移動させ、集光スポットが目的のトラックに集光されるようにする。
【0065】
本実施の形態によれば、コリメートレンズCLからエキスパンダーレンズEXPへは平行光束が出射されるので、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを駆動することによって、コリメートレンズCLとエキスパンダーレンズEXPとの間に光軸ズレが生じた場合でも、コマ収差を抑えることができる。又、第2のアクチュエータACT2は、サブキャリッジSCに対して対物レンズOBJを、その光軸方向及び光軸交差方向に独立して移動するように駆動するので、フォーカシング及びトラッキング動作の際に、第2のアクチュエータACT2は対物レンズOBJのみを駆動するため、小型化・低コスト化が図れ、また応答性に優れることとなり、更に省エネも図れる。
【0066】
更に、BDもしくはHD DVDの1回転周期の偏心成分を求める偏心計算手段としての検出器を備え、BDもしくはHD DVDの1回転以上にわたり同一トラックに情報の記録及び/又は再生を行う場合、第1のアクチュエータACT1は、その1回転周期の偏心成分に基づいて、回転に同期してサブキャリッジSCを光軸直交方向に移動させても良い。
【0067】
図8は、BDもしくはHD DVD等の光ディスクにおける偏心成分を示す図であり、縦軸がトラック変位量であり、横軸が回転角度であって、1回転を1Rとして示している。実際にトラッキング動作を行った場合、対物レンズは、図8(a)に示すような波形の動作をするが、これは図8(b)に示すような回転に依存する低周波のディスク偏心成分と、図8(c)に示す高周波の偏心成分とに分けることができる。同一トラックに対してトラッキング動作を行う場合、トラック変位量は主にディスク偏心成分が占めることが多い。この変位が比較的大きい1回転周期の偏心成分に対しては、サブキャリッジSCが追従することで、第2のアクチュエータACT2により移動させられる対物レンズOBJの光軸と、サブキャリッジSCに搭載された発散角変更光学系の光軸とのズレが小さくなり、集光スポットに生じるコマ収差が小さくなる。
【0068】
即ち本実施の形態では、低周波のディスク偏心成分は、第1のアクチュエータACT1によりサブキャリッジSCを光軸直交方向に移動させることによってキャンセルすることができ、高周波の偏心成分は、第2のアクチュエータACT2により対物レンズOBJを光軸直交方向に移動させることによってキャンセルすることができ、それにより高密度光ディスクに対しても適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる。
【0069】
以上より、第1のアクチュエータACT1は、応答性よりも移動距離を確保できるタイプが好ましく、第2のアクチュエータACT2は、移動距離よりも応答性を確保できるタイプが好ましいといえる。
【0070】
なお、第1のアクチュエータACT1はボイスコイルモータであって良い。かかる場合、サブキャリッジSCは板ばねに支持されていると好ましい。
【0071】
更に、図1で点線で示しているが、波長λ2=655±30nmの光束を出射する半導体レーザと、波長λ3=785±30nmの光束を出射する半導体レーザとを同一のヒートシンクに取り付けて1ユニットとした、いわゆる2レーザ1パッケージ2L1Pと、ビームスプリッタBSとを設けることで、BD、HD DVD、DVD、CDの4つの異なる光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置を提供できる。かかる場合、DVD、CDの保護層の厚さに応じて、エキスパンダーレンズEXPのレンズL2が移動される。また、波長の違いにより、回折の効果を互換に利用することができる。
【0072】
又、本発明は、光検出器PDでコマ収差信号を検出し、コマ収差信号が最適化されるようにサブキャリッジSCと対物レンズOBJとをそれぞれ移動することで、情報記録面上のスポットのコマ収差を補正することも可能である。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。2レーザ1パッケージは、第1の半導体レーザLD1と第2の半導体レーザLD2との組み合わせでも良い。又、アクチュエータとしては、上述の実施の形態に関わらず、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ、形状記憶合金などを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1(a)は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す上面図であり、BD使用時の状態を示している。図1(b)は、図1(a)の構成をIB-IB線で切断して矢印方向に見た図である。
【図2】図2(a)は、本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す上面図であり、HD DVD使用時の状態を示している。図2(b)は、図2(a)の構成をIIB-IIB線で切断して矢印方向に見た図である。
【図3】複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電アクチュエータを示す斜視図である。
【図4】圧電アクチュエータに印加される電圧パルスの波形を示す図である。
【図5】サブキャリッジSCと対物レンズOBJの移動制限の例を示す図である。
【図6】シーク動作の制御例を示すフローチャート図である。
【図7】シーク動作の制御例を示すフローチャート図である。
【図8】BDもしくはHD DVD等の光ディスクにおける偏心成分を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
ACT1 第1のアクチュエータ
ACT2 第2のアクチュエータ
ACT4 第4のアクチュエータ
BS ビームスプリッタ
CB キャリッジベース
CL コリメートレンズ
DA1 駆動孔
DA4 駆動孔
DR1 駆動回路
DR2 駆動回路
DS1 駆動軸
DS4 駆動軸
EXP エキスパンダーレンズ
GA1 ガイド溝
GS1 ガイド軸
GS4 ガイド軸
SC サブキャリッジ
L1,L2 レンズ
LD 半導体レーザ
LHD レンズホルダ
M ミラー
OBJ 対物レンズ
PBS 偏光ビームスプリッタ
PD 光検出器
PE 圧電セラミックス
PZ1 圧電アクチュエータ
PZ4 圧電アクチュエータ
QWP λ/4波長板
SEN センサレンズ
W 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジベースと、
前記キャリッジベース上に搭載された光源と、
前記キャリッジベース上に搭載されたコリメートレンズと、
前記キャリッジベースに対して移動可能に支持されたサブキャリッジと、
前記キャリッジベースに対して前記サブキャリッジを、前記コリメートレンズの光軸交差方向であり且つ情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録媒体の半径方向に移動するように駆動する第1のアクチュエータと、
前記サブキャリッジ上に搭載された発散角変更光学系と、
前記サブキャリッジ上に搭載された対物レンズと、
前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸交差方向であり且つ前記光情報記録媒体の半径方向に移動するように駆動する第2のアクチュエータと、を有し、
保護層の厚さt1の第1光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合は、前記光源から出射された光束が、前記コリメートレンズで平行光束に変換された後に、前記発散角変更光学系を介して第1の発散角度で前記対物レンズに入射し、その情報記録面に集光されるようになっており、
保護層の厚さt2(≠t1)の第2光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う場合は、前記光源から出射された光束が、前記コリメートレンズで平行光束に変換された後に、前記発散角変更光学系を介して前記第1の発散角度と異なる第2の発散角度で前記対物レンズに入射し、その情報記録面に集光されるようになっていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸方向に移動するアクチュエータを有することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第2のアクチュエータは、前記サブキャリッジに対して前記対物レンズを、その光軸方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記発散角変更光学系と前記対物レンズとの間には反射手段が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを最大量移動させ、同時に前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを前記サブキャリッジと同一方向に最大量移動させたとき、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの波面収差が0.07λrms以下となる位置に、前記サブキャリッジと前記対物レンズの移動制限を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記移動制限は、機械的制限であることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記移動制限は、電気的制限であることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記光ピックアップ装置において、トラッキング動作又はシーク動作を行う際に、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを光軸交差方向に移動させたときに、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により移動を制限されたときは、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
前記キャリッジベースを移動させる第3のアクチュエータを有し、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させたときに、前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により移動を制限されたときは、前記第3のアクチュエータにより前記キャリッジベースを移動させることを特徴とする請求項8に記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
前記光ピックアップ装置において、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの移動量を求める移動量計算手段と、前記移動量計算手段により求められた集光スポットの移動量だけ、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させた場合に、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限されるか否かを判別する判別手段とを有し、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限されると、前記判別手段が判断したときは、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させる前に、前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
前記光ピックアップ装置において、外部からの信号に基づいて、シーク動作を行う際に、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の情報記録面上における集光スポットの移動量を求める移動量計算手段と、前記移動量計算手段により求められた集光スポットの移動量だけ、前記第2のアクチュエータにより前記対物レンズを移動させ且つ前記第1のアクチュエータにより前記サブキャリッジを移動させようすると、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限され且つ前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により制限されるか否かを判別する判別手段とを有し、前記対物レンズが前記対物レンズの移動制限により制限され且つ前記サブキャリッジが前記サブキャリッジの移動制限により制限されると、前記判別手段が判断したときは、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとにより前記サブキャリッジと前記対物レンズとを移動させる前に、前記第3のアクチュエータにより前記キャリッジベースを移動させることを特徴とする請求項10に記載の光ピックアップ装置。
【請求項12】
前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の1回転周期の偏心成分を求める偏心計算手段を備え、前記第1光情報記録媒体もしくは前記第2光情報記録媒体の1回転以上にわたり同一トラックに情報の記録及び/又は再生を行う場合、前記第1のアクチュエータは前記1回転周期の偏心成分に基づいて、回転に同期して前記サブキャリッジを光軸直交方向に移動させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項13】
前記発散角変更光学系は、複数のレンズを含み、前記レンズの少なくとも1つが第4のアクチュエータにより光軸方向に変位可能となっていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項14】
前記第4のアクチュエータが、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定された駆動部材と、前記少なくとも1つのレンズに連結され、かつ前記駆動部材上に移動可能に保持された可動部材と、から構成され、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記可動部材を移動させるようになっていることを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
【請求項15】
前記第1のアクチュエータが、電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定された駆動部材と、前記サブキャリッジに連結され、かつ前記駆動部材上に移動可能に保持された可動部材と、から構成され、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記可動部材を移動させるようになっていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項16】
前記第1のアクチュエータはボイスコイルモータであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項17】
前記サブキャリッジは板ばねに支持されていることを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置。
【請求項18】
前記光源からは波長λ1=405±20nmの光束が出射され、前記第1光情報記録媒体の保護層の厚さt1と前記第2光情報記録媒体の保護層の厚さt2の一方は0.1mm、他方は0.6mmであることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項19】
波長λ2=655±30nmの光束を出射する別の光源が設けられ、前記波長λ2の光束は、前記対物レンズを介して、前記第1光情報記録媒体及び前記第2光情報記録媒体とは異なる光情報記録媒体の情報記録面に集光されることを特徴とする請求項18に記載の光ピックアップ装置。
【請求項20】
波長λ3=785±30nmの光束を出射する別の光源が設けられ、前記波長λ3の光束は、前記対物レンズを介して、前記第1光情報記録媒体及び前記第2光情報記録媒体とは異なる光情報記録媒体の情報記録面に集光されることを特徴とする請求項18又は19に記載の光ピックアップ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−318565(P2006−318565A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139837(P2005−139837)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】