説明

光ファイバ、光レセプタクル及びレセプタクル型光モジュール

【課題】接続損失の変動が抑制された光ファイバ、光レセプタクル及びレセプタクル型光モジュールを提供する。
【解決手段】レセプタクル型光モジュール1に採用されている光ファイバ10のクラッド14には、ファイバグレーティング15が形成されている。これにより、クラッド14に入射した光は、ファイバグレーティング15によって反射する。これにより、コア12を伝播する光とクラッド14を伝播する光との干渉が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ、光レセプタクル及びレセプタクル型光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の観点から多様な光ファイバが提案されている(特許文献1,2参照)。光ファイバを用いた装置として、レセプタクル型光モジュールが知られている。レセプタクル型光モジュールでは、半導体レーザ素子からのレーザ光がレンズに入射し、光ファイバに集光される。レーザ光を光ファイバに入射させるためには、光ファイバを半導体レーザ素子に対し調芯する必要がある。この調芯の方法として従来からデフォーカス調芯が知られている。デフォーカス調芯とは、レンズを通過したレーザ光の焦点位置を光ファイバの端面から光軸方向にずらして、レーザ光を光ファイバのコアに入射させる方式である。
【0003】
【特許文献1】特開平6−109923号公報
【特許文献2】特開平11−326673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらデフォーカス調芯によると、光ファイバの端面に照射されるレーザ光はコアの径よりも大きなものとなる。従って、レーザ光はクラッドにも入射される。クラッドに入射された光はクラッドモードとなってクラッド内を伝播する。これによりクラッドモードとコアモードとが干渉して、コアを伝播する光の強度や中心位置が揺らぐ。この結果、コアから出射される光の軸ずれ量や強度が変動することになる。コアからの出射光が変動すると、レセプタクル型光モジュールとこれに接続される光コネクタプラグとの接続損失が変動する。
【0005】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、接続損失の変動が抑制された光ファイバ、光レセプタクル及びレセプタクル型光モジュール。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書に開示されている光ファイバは、クラッドにファイバグレーティングが形成されている。または、クラッドの屈折率分布が外周に向けて大きくなっている。または、クラッドは伝播する光を減衰する媒質を含む。またはクラッドの少なくとも一方の端面が遮光性の部材で覆われている。また、本明細書に開示されている光レセプタクル、レセプタクル型光モジュールは上記光ファイバを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書に開示の光ファイバ、光レセプタクル及びレセプタクル型光モジュールは、接続損失の変動が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る複数の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0009】
実施例1に係る光ファイバについて説明する。図1は、実施例1に係る光ファイバが採用されたレセプタクル型光モジュール1の断面図である。レセプタクル型光モジュール(以下、光モジュールと称する)1は、光ファイバ10、スタブ20、スリーブ22、ケース24、ホルダ26、レンズ30、32、ケース40、本体部42、レンズホルダ44、発光部50を含む。光ファイバ10、スタブ20、スリーブ22、ケース24、ホルダ26は光レセプタクルとして機能する。まず、光レセプタクルについて説明する。
【0010】
光ファイバ10は、スタブ20の中心に形成された貫通孔に挿入されてスタブ20に保持されている。光ファイバ10は、シングルモード光ファイバであり、石英系ガラスにより形成されている。スリーブ22は円筒状に形成されており、スタブ20はスリーブ22内に挿入されている。ケース24には、光ファイバ10、スリーブ22が挿入されており、後端部はホルダ26に圧入されている。ホルダ26には貫通孔26aが形成されており、貫通孔26a内にスタブ20が嵌合している。
【0011】
光ファイバ10は、スタブ20の中心に形成された貫通孔に接着剤等で固定されている。スタブ20は、セラミックにより形成されている。スリーブ22はジルコニア、アルミナ、銅などを用いるのが好ましい。ホルダ26は、鉄やニッケル、ステンレス等により形成されている。スリーブ22は、貫通孔22aを有するとともに長手方向全体にスリット22bが設けられ、後述する光コネクタプラグ(以下、プラグと称する)100のフェルール120が開放端側から挿入されると、内径が拡張されて、プラグ100のフェルール120を保持する。
【0012】
ケース24は、スリーブ22挿脱可能な内径を有する中空体に形成されており、スタブ20の先端が保持されたスリーブ22を覆い保護する。ケース24、ステンレス等の金属材料により形成されている。
【0013】
光モジュール1に接続可能なプラグ100は、光ファイバ110を保持するフェルール120を有している。尚、図1においては、プラグ100について一部分のみを示している。プラグ100は、光モジュール1を用いて光信号の授受を実現する際に、スリーブ22の他方の開放端側より挿入され、光モジュール1の光ファイバ10とプラグ100の光ファイバ110とを接続するためのものである。
【0014】
次に、光レセプタクル以外の部分について説明する。レンズ30、32は、発光部50から出射された光を光ファイバ10に向けて集光する機能を有している。ケース40は、レンズ30、発光部50を保持する本体部42、本体部42よりも先端側に配置されてレンズ32を保持するレンズホルダ44を含む。ケース40は、ステンレスで形成されている。また、発光部50、レンズ30は、本体部42内に溶接または接着等により固定された支持台46上に設置されている。発光部50は、光ファイバ10に向けて光を照射する。発光部50は、半導体レーザ素子や発光ダイオードである。
【0015】
次に、デフォーカス調芯の際に起こり得る問題について説明する。図2は、デフォーカス調芯の模式的な説明図である。レーザ光はレンズ32によって従来の光ファイバ10xの端面に集光される。集光の径は、コア12xの径よりも大きいため、クラッド14xにも光が入射してクラッド14x内を伝播する。このクラッド14xを伝播する光は一様に分布せず非対称であり、コア12xを伝播する光と干渉する。この干渉によって、コア12xを伝播する光の強度や中心位置が揺らぐことになる。これにより、光モジュール1とプラグ100との接続損失が変動することになる。
【0016】
図3は、コアを伝播する光の揺らぎを示したシミュレーション結果である。図3Aは、コアの中心軸と出射光の中心軸との軸ズレ量を1.2μm、角度ズレ量を0.12°、デフォーカスビーム径を17μm、光ファイバの長さを3mmとした場合の結果である。入射直後はクラッドモードとコアモードが近接しており干渉している。2mm付近からスタブとクラッドの境界で反射したクラットモードとコアモードが干渉していることが分かる。この時の3mm付近での軸ズレ量は0.7μmであった。
【0017】
図3Bは、軸ズレ量を1.0μm、角度ズレ量を0.1°、デフォーカスビーム径を15μm、光ファイバ長3mmとした場合の結果である。図3Aと、軸ズレ量で−0.2μm、角度ズレ量で−0.02°、 デフォーカスビーム径で−2μmの差を持たせた。3mm付近での軸ズレ量が0.4μmとなり、図3Aの結果との軸ズレ量の差は−0.3μmであった。
【0018】
このような軸ズレ量の変動は、例えば温度変化があると起こり得る。金属で形成されているケース40等が膨張、又は収縮し発光部50とレンズ30、32との位置関係が変化するからである。このような原因により、光ファイバ出射端での軸ズレ量や光強度が変化して接続損失の変動が発生する。また、近年光デバイスはトランシーバ形態がプラガブル形態に移行してきており、全長の短尺化が要請され、光ファイバ自体も短いものが採用されている。このような背景によっても接続損失の変動が大きくなりやすい傾向にある。
【0019】
次に、光モジュール1に採用されている光ファイバ10について詳細に説明する。図4は、光ファイバ10の説明図である。図4Aに示すように、光ファイバ10は、コア12と、コア12を覆うクラッド14とを有している。クラッド14には、光ファイバ10の軸方向に対して傾斜したファイバグレーティング(以下、グレーティングと称する)15が形成されている。グレーティング15は光ファイバ10の略全長にわたって形成されている。また、コア12にはグレーティング15は形成されていない。クラッド14に対してグレーティング15が形成されていることにより、クラッド14に入射した光を反射することができる。これにより、クラッド14内を光が伝播することを防止でき、クラッド14内を伝播する光とコア12を伝播する光との干渉を防止することができる。これにより、光モジュール1とプラグ100との接続損失の変動が抑制される。
【0020】
尚、グレーティング15が光ファイバ10の軸方向に対して斜めに形成されている。この理由は、軸方向に対して垂直に形成すると、グレーティング15で反射した光が発光部50へ戻り、ノイズ発生の原因となる恐れがあるからである。尚、グレーティング15のピッチ間隔は、コア12を伝播する光の波長(0.8μmから1.6μm)の半分程度に設定されている。
【0021】
図4B、図4Cは、光ファイバ10の変形例の説明図である。図4Bに示すように、光ファイバ10aのクラッド14aには、ピッチ間隔の異なるグレーティング15a1、15a2・・・が形成されている。これにより、クラッド14aに入射した光を、広い範囲の波長にわたって反射することができる。尚、この場合も、コア12にはグレーティングが施されていない。
【0022】
また、図4Cに示すように、光ファイバ10bのクラッド14bには、グレーティングのピッチ間隔が徐々に大きくなるグレーティング15bが形成されている。グレーティング15bは、所謂チャープトファイバーグレーティングである。これにより、クラッド14bに入射した光を、広い範囲の波長にわたって反射することができる。尚、この場合も、コア12にはグレーティングが施されていない。
【0023】
次に、クラッドにのみグレーティングを形成する方法について説明する。図5は、クラッドにのみグレーディングを形成する方法の説明図である。グレーディングは位相マスク法によって形成される。位相マスク法は、位相マスク60からの回折光による干渉パターンを露光することによりグレーディングを形成する方法である。位相マスク60は、石英により形成され、細いスリット62が形成されている。位相マスク60に紫外線レーザを照射すると、スリット62を通過した紫外線レーザが光モジュール1次の回折光による干渉縞を用いてグレーティングを作製することができる。
【0024】
まず、図5Aに示すように、位相マスク60の下にクラッドのみにグレーティングを作製したい光ファイバ10をスリット62に対して斜めに設置する。次に、光ファイバ10のコア12上に紫外線レーザが透過しない棒状のマスク70を設置する。そして位相マスク60の上から紫外線レーザを照射する。これにより、紫外線レーザはコア12に照射されず、クラッド14にのみ照射される。
【0025】
次に、光ファイバ10のクラッド14のうちマスク70に隠れた部分にグレーティングを形成する。図5Bに示すように、コア12を軸として光ファイバ10を90°回転させる。次に、一回目の紫外線照射で作製したグレーティングと照射する紫外線の伝播方向が平行になるように位相マスク60を設置してその上から再び紫外線レーザを照射する。これにより、光ファイバ10のクラッド14にのみに傾斜したグレーティング15を形成することができる。
【0026】
尚、グレーティング15は、コア12の直近まで形成せず、コア12外周からコア12を伝播する信号光の波長(0.8μmから1.6μm)程度離れた部分までしかファイバグレーティングを作製しないようにする。これにより、クラッド14に形成されたグレーティング15がコア12を伝播する光に影響を与えることを防止できる。
【0027】
尚、図4B,図4Cに示したグレーティング15a1、15a2、15bについても、位相マスク法で形成できる。この際に、位相マスクの周期の長さを少しづつ変えていくことで、グレーディングのピッチ間隔を変更できる。
【0028】
また、グレーディングの形成は二光束干渉法であってもよい。二光束干渉法は、ビームスプリッタで二つに分割した紫外線レーザをそれぞれミラーで反射させて交差させることによって干渉縞を作り、これによりグレーティングを形成する。この際にも、コア12上にマスク70を配置することによりクラッド14にのみグレーディングを形成できる。
【実施例2】
【0029】
次に実施例2に係る光ファイバについて説明する。尚、実施例1に係る光ファイバと同様の箇所については同様の符号を付することによりその説明を省略する。実施例2に係る光ファイバも、光レセプタクルやレセプタクル型光モジュールに採用される。図6は、実施例2に係る光ファイバの説明図であり、屈折率分布を示している。図6Aに示すように、クラッド14cの屈折率分布は、コア12を中心として対称であって、クラッド14cの外周に近づくほど屈折率が大きくなっている。また、クラッド14cの屈折率は直線状に大きくなっている。これにより、クラッド14cに入射した光は、コア12から遠ざかるように伝播方向が変更されることになる。従って、クラッド14cを伝播する光とコア12を伝播する光との干渉が防止されている。
【0030】
また、クラッド14cの屈折率分布は、コア12とクラッド14cとの境界付近で屈折率分布が平坦な領域である平坦部Sを有している。この平坦部Sの長さは、コア12を伝播する光の波長(0.8μmから1.6μm)の半分程度に設定されている。平坦部Sを設けた理由について説明する。コアモードはわずかにクラッドに浸透し伝播する。コアとクラッドの境界点から屈折率分布を持たせるとクラッドに浸透している部分のコアモードがクラッドモードに変換されコアモードが減衰してしまう恐れがある。従って屈折率分布に平坦部Sを設けることにより、クラッドモードのみが光ファイバ外周に導波されることになる。
【0031】
また、クラッド14c内を伝播する光がクラッド14cの外周面で反射して伝播方向がコア12側を向いた場合であっても、再びコア12から遠ざかる方向へ変更される。
【0032】
また、図6Bに示すように、クラッド14dの屈折率分布はコア12を中心として対称な2乗分布となっている。詳細にはクラッド14dの屈折率は、コア12付近で急勾配であり外側に近づくほど緩やかとなる。このような屈折率分布であってもクラッド14dを伝播する光とコア12を伝播する光との干渉が防止される。また、クラッド14dの屈折率分布についてもコア12周囲で平坦部Sを有している。
【0033】
また、図6Cに示すように、クラッド14eの屈折率分布もコア12を中心として対称な2乗分布となっている。詳細には、クラッド14eの内側から外側にかけて屈折率の増大の割合が上昇するようになっている。このような屈折率分布であってもクラッド14eを伝播する光とコア12を伝播する光との干渉が防止される。また、14eの屈折率分布についてもコア12周囲で平坦部Sを有している。
【0034】
図6B、図6Cのそれぞれに示した屈折率分布の相違について説明する。
光モジュールの高出力化を図るために、半導体レーザ素子とレンズとの距離を短くし、レンズと光ファイバとの距離を長くする場合がある。このように設定すると、光ファイバに照射される光の集光角度が小さくなる。集光角度が小さい場合には、クラッドモードが拡散する角度も小さいので長距離にわたってコアモードとクラッドモードとが干渉する恐れがある。
【0035】
集光角度が小さい場合には、図6Bに示した光ファイバ10dを採用することが適している。クラッド14dの屈折率は、コア12付近で急勾配であり外側に近づくほど緩やかとなっているので、クラッドモードはクラッド14dに入射した直後からクラッド14dの外周側に導かれる。従って、光ファイバ10dが短い場合であってもコアモードとクラッドモードとの干渉を回避できる。
【0036】
一方、光モジュールの小型化を図るために、半導体レーザ素子とレンズとの距離を長くし、レンズと光ファイバとの距離を短くする場合がある。このように設定すると、光ファイバに照射される光の集光角度は大きくなる。集光角度が大きい場合には、クラッドモードが拡散する角度も大きいため、比較的短距離でコアモードとクラッドモードとが干渉する。
【0037】
集光角度が大きい場合には、コア12付近での屈折率分布が急勾配である必要は無く、図6Cに示した光ファイバ10eを採用することが適している。これにより、光ファイバ10eが短い場合であってもコアモードとクラッドモードとの干渉を回避できる。
【0038】
図7は、光ファイバ10eのコア12を伝播する光の揺れを示したシミュレーション結果を示した図である。各種条件は、図3Bと同様であり、軸ズレ量を1.0μm、角度ズレ量を0.1°、デフォーカスビーム径を15μm、光ファイバ長3mmとした場合の結果である。入射直後はクラッドモードとの干渉により揺らぎが見られるが、2mm付近から反射したクラッドモード量がコア周辺で減少しているので干渉が抑えられていることが分かる。3mm付近での軸ズレが0.2μmとなった。図3Bのシミュレーション結果に比べ軸ズレ量が半分に抑制された。
【0039】
次に、光ファイバ10c〜10eの製造方法について簡単に説明する。プリフォームの作製はCVD(chemical vapor deposition method)法や、VAD(vapor-phase axial deposition method)法等あるが、クラッドの屈折率に分布を持たせるにはクラッド層生成時、四塩化ゲルマニウム(GeCl4)濃度を可変することにより可能である。GeCl4が多い程屈折率は大きくなる。また、フッ素を添加することにより屈折率が下がり、濃度を可変することで屈折率分布を持たせることもできる。
【実施例3】
【0040】
次に、実施例3に係る光ファイバについて説明する。尚、実施例3に係る光ファイバも、光レセプタクルやレセプタクル型光モジュールに採用される。図8は、実施例3に係る光ファイバの説明図である。
【0041】
光ファイバ10fのクラッド14fには、クラッド14fを伝播する光を減衰させるための媒質がドープされている。具体的には、特定の光吸収スペクトルを持つ金属粒子、例えば、コバルト、鉄およびニッケルなどの遷移金属などを、十分な光減衰量が得られるように適切な濃度でドープされている。これにより、クラッド14fに入射した光はこのドープされた金属粒子に吸収されて減衰する。これにより、クラッドモードとコアモードとの干渉を回避して、接続損失の変動を抑制できる。尚、クラッド14fにドープする金属の種類は上記のものに限定されず、所望の波長の光において十分な減衰量が得られるものを任意に選ぶことができる。
【実施例4】
【0042】
次に、実施例4に係る光ファイバについて説明する。尚、実施例4に係る光ファイバも、光レセプタクルやレセプタクル型光モジュールに採用される。
図9は、実施例4に係る光ファイバの説明図である。図9Aは、光ファイバ10gの入射側端面を示しており、図9Bは、光ファイバ10gの断面を示している。図9に示すように、光ファイバ10gの入射側端面が遮光部16によって覆われている。また、遮光部16には、コア12の径の大きさが同じである透孔17が形成されている。これにより、レンズによって集光されたレーザ光はコア12のみに入射し、クラッド14gに入射した光は遮光部16によって吸収、若しくは反射される。このことにより、光ファイバ10g端面に集光されたレーザ光はコア12のみを伝播する。遮光部16は、例えばレーザ光を通さない十分な厚みを持った金属膜や、信号光の波長帯を反射する誘電体多層膜であってもよい。
【0043】
次に、光ファイバ10gの端面に遮光部16を形成する方法について説明する。図10は、光ファイバ10gの端面に遮光部16を形成する方法の説明図である。シングルモードファイバーの直径は125μmと非常に小さいため、ディップコート(単純に光ファイバをレジスト液に浸してレジスト液を塗布する方法)すると表面張力によりレジスト液が球状になってしまう。これを防ぐためにスプレーコート等でレジスト液を光ファイバ端面に塗布する。レジスト液は光や電子線等の照射に反応する高分子化合物を水、または有機溶剤に溶かしたものである。レジスト液には、露光部が不溶化するネガ型レジストと露光部が可溶化するポジ型レジストがある。ネガ型、ポジ型レジストどちらを用いても遮光性薄膜を形成できる。説明を簡略化するために紫外線に反応するネガ型レジストを用いて遮光性薄膜を作製する方法について説明する。
【0044】
図10Aに示すように、レジストを塗布した光ファイバ10gの端面上に、光ファイバ10gのコア12直径程度(9μm)の孔91が開いたマスク90を設置する。孔91の中心と光ファイバ10gのコア12の中心が一致する位置で固定した後、マスク90の上から紫外線を照射して光ファイバ10gのコア12のレジストのみを不溶化させる。次に不溶化させた部分以外のレジストを専用の溶剤をもちいて除去(現像)する。この後、光ファイバ10g端面を水等で洗浄して現像で除去しきれないレジスト剤を取り除く。これにより、光ファイバ10gのコア12の端面のみに保護膜を形成することができる。
【0045】
次に、図10Bに示すように、コア12のみに保護膜を形成した光ファイバ10gに蒸着やスパッタリング等の手法を用いて十分な遮光性が得られる厚みを持つ金属膜や誘電体多層膜を形成する。この後、レジストを溶解する専用の溶剤を用いてレジスト95を除去(リフトオフ)する。これにより、光ファイバ10g端面のクラッド14gのみに遮光性薄膜を形成することができる。このようにして光ファイバ10gの端面に遮光部16を形成することができる。
【0046】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0047】
上記光ファイバ、光レセプタクルを、単一のレンズが搭載されたレセプタクル型光モジュールに採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1に係る光ファイバが採用されたレセプタクル型光モジュールの断面図である。
【図2】デフォーカス調芯の模式的な説明図である。
【図3】従来の光ファイバのコアを伝播する光の揺らぎを示したシミュレーション結果である。
【図4】実施例1に係る光ファイバの説明図である。
【図5】クラッドにのみグレーディングを形成する方法の説明図である。
【図6】実施例2に係る光ファイバの説明図である。
【図7】実施例2に係る光ファイバのコアを伝播する光の揺らぎを示したシミュレーション結果である。
【図8】実施例3に係る光ファイバの説明図である。
【図9】実施例4に係る光ファイバの説明図である。
【図10】光ファイバの端面に遮光部を形成する方法の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 レセプタクル型光モジュール 10〜10g 光ファイバ
12 コア 14〜14g クラッド
15、15a1、15a2、15b ファイバグレーティング
16 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを覆うクラッドとを備え、
前記クラッドにファイバグレーティングが形成されている光ファイバ。
【請求項2】
コアと、前記コアを覆うクラッドとを備え、
前記クラッドの屈折率分布は外周に向けて大きくなる分布の光ファイバ。
【請求項3】
コアと、前記コアを覆うクラッドとを備え、
前記クラッドは伝播する光を減衰する媒質を含む光ファイバ。
【請求項4】
コアと、前記コアを覆うクラッドとを備え、
前記クラッドの少なくとも一方の端面が遮光性の部材で覆われている光ファイバ。
【請求項5】
前記ファイバグレーティングは該光ファイバの軸方向に対して傾斜している請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記クラッドの屈折率分布は前記コアとの前記クラッドとの境界付近で平坦である請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の光ファイバを備えた光レセプタクル。
【請求項8】
請求項7に記載の光レセプタクルを備えたレセプタクル型光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−282468(P2009−282468A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137121(P2008−137121)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】