説明

光ファイバケーブル

【課題】 許容曲げ半径を確保すると共に光ファイバコード部分を容易に取り出すことが可能になり、光ファイバコードの端末加工性を良くする。
【解決手段】 光ファイバコード17外周上に、長手方向へスリット19を入れたコルゲート管21を配置し、このコルゲート管21の外周上に熱可塑性樹脂の外被23を被覆することを特徴とする光ファイバである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に屋内配線用に使用される光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、JIS C 6830で規格されているごとく、図9および図10に示されているように例えば外径125μmφからなる石英光ファイバ103外周上に例えば外径250μmφからなるUV樹脂あるいは外径400μmφからなるシリコン樹脂などの樹脂105を被覆して光ファイバ素線107を構成し、この光ファイバ素線107の外周に例えば外径0.9mmφからなるポリアミド樹脂109を被覆して光ファイバ心線111を構成し、さらに、この光ファイバ心線111の外周に抗張力体として例えば複数のアラミド繊維113を縦添えした状態で外被として例えば外径3mmφからなるPVC115を被覆した構造として光ファイバコード117が知られている。
【0003】
近年、FTTH(Fiber−To−The−Home)の普及に伴い、家庭内までに光ファイバケーブルが浸透してくると家庭内で光ファイバケーブルが使用され、専門業者でない一般人による光ファイバケーブルの取扱が頻繁に行われるようになってくる。
【0004】
そこで、少々乱暴な取扱による光ファイバケーブルの損傷を防止するために、様々な光ファイバケーブルが考案されている。その中で、一定の曲げ径より小さく曲げられないように工夫された光ファイバケーブルが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
これらの光ファイバケーブルは、光ファイバまたは光ファイバコードの外被の一部に節のついた硬質の樹脂層を形成した構造であり、節により一定の曲げ半径Rまでは小さな力で曲げることが可能であり、その曲げ半径Rを越えて曲げを与えるには大きな力が必要となる構造となっている。
【特許文献1】特開平11−223752号公報
【特許文献2】特開2004−133005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の光ファイバケーブルでは、光ファイバまたは光ファイバコードの外被の一部に節のついた硬質の樹脂層が形成されているため、光ファイバコードの外被を除去するのが困難である。
【0007】
また、光ファイバの破断の要因である曲げに対抗して最小曲げの半径を確保することと、家庭内の火気による光ファイバへの引火を予防することが重要課題となる。
【0008】
また、最小曲げの半径を確保するために、市販の電線管や、その他のコルゲート管を使用することが多いが、通常では、そのような電線管やコルゲート管を現場で設置後に光ファイバコードを引き込むので、光ファイバケーブルと一体化されることは少ない。
【0009】
また、光ファイバコードを引き込むためには、電線管やコルゲート管の内径の方が、引き込まれる光ファイバコードの外径より大きくしなければならない。しかしながら、現場施工後、振動等により、光ファイバコードが管内長手方向に移動し、最悪の場合は、光ファイバの破断を招く危険性もある。金属製のコルゲート管を使用することも1つの解決策であるが、光ファイバケーブルの製造ラインではなく、特別の製造ライン(テープから円筒状に成形し、必要に応じて溶接する)を必要とする。
【0010】
さらに、難燃性に関しては、塩素(ハロゲン)を成分とする樹脂は、燃焼したときに有害ガスが発生する。近年、地下道や屋内などでは、塩素を含まないノンハロゲンで、かつ、難燃性樹脂を選択する必要がある。
【0011】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記発明が解決しようとする課題を達成するためにこの発明の光ファイバケーブルは、光ファイバコード外周上に、長手方向へスリットを入れた前記光ファイバコードの外径よに内径の小さなコルゲート管を配置し、このコルゲート管外周上に外被を被覆することを特徴とするものである。
【0013】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記コルゲート管と光ファイバコードとの間にヤーンが縦添えされていることが好ましい。
【0014】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記コルゲート管の材質が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記熱可塑性樹脂がポリアミドまたはポリプロピレンであることが好ましい。
【0016】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバコード、前記コルゲート管、前記ヤーン、前記外被のいずれか1つ以上の材質が難燃性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のごとき課題を解決するための手段の説明から理解されるように、この発明によれば、光ファイバコード外周上に長手方向へスリットを入れた前記光ファイバコードの外径より内径の小さなコルゲート管に配置し、このコルゲート管の外周上に外被を被覆した構造とすることにより、光ファイバケーブルの屈曲による光ファイバの破断を防ぐと共に光ファイバコード部分を容易に取り出すことが可能になり、光ファイバコードの端末加工性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1および図2を参照するに、この発明の光ファイバケーブル1は、中心部に例えば外径125μmφからなる石英光ファイバ3を備えており、この石英光ファイバ3の外周に例えば外径250μmφからなるUV樹脂5を被覆して光ファイバ素線7が構成されている。この光ファイバ素線7の外周に例えば外径0.9mmφからなるノンハロゲン難燃性樹脂として酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂9を被覆して光ファイバ心線11が構成されている。さらに、この光ファイバ心線11の外周に抗張力体として例えば複数のアラミド繊維13を縦添えした状態で例えば外径3.05mmφからなるノンハロゲン難燃性樹脂として酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂15を被覆して光ファイバコード17を構成している。この光ファイバコード17の外周上に、長手方向方向にスリット19を入れた例えば外径5.1mm、内径3.0mmで材質がポリアミド樹脂またはポリプロピレン繊維からなるコルゲート管21を配置し、このコルゲート管21の外周に、外被として熱可塑性樹脂、例えば外径6.1mmφからなるノンハロゲン難燃性樹脂として酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂23が被覆した構造とする。すなわち、光ファイバコード17の外径D1よりコルゲート管21の内径D2を小さくした(D1>D2)。
【0020】
上記構成により、外被の難燃ポリオレフィン樹脂23を除去した後、スリット19を入れたコルゲート管21から光ファイバコード17部分を容易に取り出すことが可能になり、少なくとも縦に引き裂く手間を省くことができる。その結果、光ファイバコード17の端末に例えばコネクタ加工を行うときまたは例えば光ファイバコード17の端末で接続作業を行うときの作業性を良好にすることができる。
【0021】
前記コルゲート管21の外周に前記難燃ポリオレフィン樹脂23を押出成形することにより、スリット19を入れたコルゲート管21はスリットの入っていないコルゲート管と同様に一定の曲げ径以下に曲げることが難しくなり、光ファイバケーブル1の屈曲による光ファイバの破断を防ぐことを可能にすることができる。
【0022】
光ファイバコード17、コルゲート管21、外被23,ヤーン35のいずれか1つ以上の材料を難燃性の樹脂とすることにより、良好な難燃特性を得ることができる。スリット19を入れたコルゲート管21の内径D2を光ファイバコード17の外径D1より小さく(D1>D2)することにより、コルゲート管21内での光ファイバコード17の移動を防止することができる。
【0023】
例えば外径250μmφのSM型光ファイバ素線7に、酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂9を被覆して外径0.9mmφの光ファイバ心線11とした。この光ファイバ心線11の外周に複数のアラミド繊維13を縦添えし、その外周に酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂15を押出成形し、外径3.05mmφの光ファイバコード17を製造した。
【0024】
この光ファイバコード17を内径3.0mm、外径5.1mmのスリット19を入れたコルゲート管21に収納し、その外周に酸素指数40の難燃ポリオレフィン樹脂23を押出成形し、外径6.1mmの光ファイバケーブル1を製造した。
【0025】
製造後の光ファイバケーブル1の曲げ試験を行ったところ、曲げ半径R=15mmまでは光ファイバケーブル1は容易に曲がるが、曲げ半径が15mmより小さくなるように光ファイバケーブル1を曲げるのには大きな力が必要であることが確認できた。
【0026】
燃焼試験としてはJIS C 3005の規格の燃焼試験に合格した。
【0027】
また、図3に示されているように、光ファイバケーブル1の片端である左端はコルゲート管21をクランプ装置34で把持し、光ファイバケーブル1の他端である右端は光ファイバコード17を把持し10N力で引っ張った結果、光ファイバコード17が動くことはなかった。
【0028】
また、光ファイバケーブル1の外被である難燃ポリオレフィン樹脂23を30cm程度除去し光ファイバコード17が容易に取り出せることを確認した。
【0029】
図4には図2に代わる他の光ファイバケーブル1が示されている。図4において図2における部品と同一の部品には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
図4において、コルゲート管21の内径D2は光ファイバコード17の外径D1より小さい(D1>D2)ので、光ファイバコード17は管内移動できないが、さらに管内移動防止の効果を高めるためにコルゲート管21と光ファイバコード17との間に介在体としてのヤーン35を縦添えする。ヤーン35としては例えばアラミド繊維、ポリプピレン繊維、ポリエチレン繊維などの繊維を用いる。また、難燃性の要求される光ファイバケーブルではヤーンとして難燃性ヤーンを用いるのがよい。
【0031】
上記構成により、コルゲート管21と光ファイバコード17との間に介在体としてのヤーン35を縦添えすることにより、コルゲート管21内での光ファイバコード17の移動防止の効果を高めることができる。コルゲート管21と光ファイバコード17との間に介在体として縦添えするヤーン35を難燃性ヤーンとすることにより、良好な難燃特性を得ることができる。
【0032】
上述した光ファイバケーブル1の製造方法を図5、図6および図7を用いて簡単に説明すると、図5において、コルゲート管送出ボビン37から繰り出されたコルゲート管21は、コルゲート管開口装置39の1つの導入口41から装置内部に導入される。その装置内部で図6、図7に示されているように、開口外型43と開口中子45により、コルゲート管21は光ファイバコード17の外径より開口部が広くなるまで、徐々にスリット部19が開口される。光ファイバコード送出ボビン47から繰り出された光ファイバコード17は、前記コルゲート管開口装置39の別の導入口49から装置内部に導入されて、前述の広げられたコルゲート管21の開口部から、コルゲート管21内部に挿入される。その後。コルゲート管21ができる限り元の管状に復元するように、コルゲート管21の材質は、塑性変形度の小さなものが好ましい。
【0033】
その後、コルゲート管21内部に挿入された光ファイバコード17は押出機51に送られて光ファイバケーブル1となり、冷却槽53、引取機55を経て光ファイバケーブル巻取ボビン57に巻き取られて製造される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の光ファイバケーブルの斜視図である。
【図2】図1における縦断面図である。
【図3】光ファイバケーブルの引っ張り試験を行うための説明図である。
【図4】この発明の他の光ファイバケーブルの縦断面図である。
【図5】この発明の光ファイバケーブルの製造法を示す正面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿ったコルゲート管開口装置の拡大断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII線に沿った拡大断面図である。
【図8】従来の光ファイバケーブルの斜視図である。
【図9】図8における断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 光ファイバケーブル
3 石英光ファイバ
5 UV樹脂
7 光ファイバ素線
9 ノンハロゲン難燃性樹脂
11 光ファイバ心線
13 アラミド繊維
15 ノンハロゲン難燃性樹脂
17 光ファイバコード
19 スリット
21 コルゲート管
23 ノンハロゲン難燃性樹脂
35 ヤーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバコード外周上に、長手方向へスリットを入れた前記光ファイバコードの外径より内径の小さなコルゲート管を配置し、このコルゲート管外周上に外被を被覆することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記コルゲート管と光ファイバコードとの間にヤーンが縦添えされていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記コルゲート管の材質が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がポリアミドまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバコード、前記コルゲート管、前記ヤーン、前記外被のいずれか1つ以上の材質が難燃性熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−119459(P2006−119459A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308476(P2004−308476)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】