説明

光ファイバモジュール

【課題】 光ファイバモジュールの低コスト化。
【解決手段】 双方向光通信の発光側の機能を果たす光ファイバモジュール1は発光デバイス5及びハウジング2から成る。熱可塑性樹脂で成形したハウジング2は方形の本体部3及び円筒形のスリーブ部4から成る。本体部3には発光デバイス5を収納するための凹部3aが形成され、一方の対向する側壁にはフック部3bが形成されている。基板6はガラエポ等から成り、基板6の背面側の対向する一対の稜線には切欠部6aが、また、背面及び側面には外部接続電極が形成されている。変調された電気信号を光信号に変換する発光素子であるLED7並びに、ロジックレベルの電気信号を発光素子駆動用信号に変換する発光IC8が、共に基板6上に搭載されワイヤ配線されており、エポキシ樹脂等の封止樹脂9で封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバを用いた受発信装置である光ファイバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは細径(直径0.1mm程度)、軽量(ガラスの比重は銅の比重の約1/4)、可とう性に優れている(曲率半径数cm以下)、電磁誘導を受けない、漏話に強い、低損失(例えば1dB/km)高帯域伝送が可能、資源問題が少ないなどの特徴を持つことから、光ファイバケーブル伝送方式は公衆通信の分野であるWANの領域はもとより、LANと言われる局内構成の伝送系やデータバス、データリンク、各種計測制御システム等広範囲な適用分野を有している。そして、近年光ファイバを用いた受発信装置である光ファイバモジュールにおいて、ローコストで高信頼性の光ファイバモジュールが求められ、開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。また、そこに使用される樹脂成形品の精度は一段と向上している。
【0003】
従来のこのようなLAN等に用いられている光ファイバモジュールの一例について説明する。図5は従来の双方向光ファイバモジュールの斜視図であり、図6は双方向光ファイバモジュールの受光側である受光デバイスの斜視図である。
【0004】
図5において、50は双方向光伝送型の光ファイバモジュールである受発光モジュールであり、51はハウジングである。52はハウジング51の前部に収納された受光デバイスを、53は同じく発光デバイスを示す。ハウジング51の後部には図示しないIC等が搭載されており、受光デバイス52及び発光デバイス53の図示しないリード端子と接続されている。図6において、54は光ファイバを装着するスリーブ部であり、55は図示しない受光素子が収納されたCANパッケージである。56はリードフレームから成る受光デバイス52の一対のリード端子である。
【0005】
発光デバイス53が受光デバイス52と異なるところは、発光デバイス53の発光素子が受光デバイス52では受光素子に替わっているところだけである。その他の構成は受光側と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0006】
次に、受発光モジュール50の作用について説明する。発光デバイス53のリード端子56から入力された電気信号は、IC及び発光素子であるLEDを経て光に変換される。LEDから発した光は透光性樹脂を通過してスリーブ54に装着された光ファイバに入り、そこを伝送路として通信相手側に送り出される。一方、通信相手側から光ファイバを伝わって来た光信号は、受光デバイス52の透光性封止樹脂を通過して受光素子に入力されて電気信号に変換され、リード端子56に出力される。
【特許文献1】特開2003−209294(図1、図4)
【特許文献2】特開2003−332590(図1、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の光ファイバモジュールでは、光ファイバのコア径(φ0.1mm)に光の中心が一致するように、スリーブ部、デバイス部共に高精度の結合を要求されるため、スリーブ部には金属やジルコニア、受発光デバイスにはCANパッケージ等の高コストの材料を使用していた。そのため、非常に高価な光ファイバモジュールとなっている。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストダウンができて安価な光ファイバモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の手段は、光ファイバにより光信号を送信若しくは受信する光ファイバモジュールであって、発光素子を含む発光デバイス若しくは受光素子を含む受光デバイスをハウジングに収納した光ファイバモジュールにおいて、前記発光デバイス若しくは前記受光デバイスは前記発光素子若しくは前記受光素子を基板上に実装したものであり、この基板の背面及び側面に外部接続電極を設けるとともに、前記基板の背面側の対向する稜線近傍を切り欠く切欠部を設け、前記ハウジングは本体部並びに前記光ファイバを挿抜できるスリーブ部から成るものであって、前記本体部には前記発光デバイス若しくは受光デバイスを収納する凹部並びに前記切欠部に係合するフック部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記ハウジングには1つの本体部と2つのスリーブ部とを有し、前記発光デバイス及び前記受光デバイスがともに収納された若しくは前記基板に前記発光素子及び前記受光素子を含む受発光デバイスが収納された双方向光伝送モジュールであることを特徴とする。
【0011】
また、前記ハウジングは熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体成形したことを特徴とする。
【0012】
また、前記熱可塑性樹脂は液晶ポリマー(LCP)又はPPS等の耐熱性樹脂であることを特徴とする。
【0013】
また、前記基板はガラエポ又はBTレジン又はセラミックス又はMID(Molded Interconnect Device)基板のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバにより光信号を送信若しくは受信する光ファイバモジュールであって、発光素子を含む発光デバイス若しくは受光素子を含む受光デバイスをハウジングに収納した光ファイバモジュールにおいて、前記発光デバイス若しくは前記受光デバイスは前記発光素子若しくは前記受光素子を基板上に実装したものであり、この基板の背面及び側面に外部接続電極を設けるとともに、前記基板の背面側の対向する稜線近傍を切り欠く切欠部を設け、前記ハウジングは本体部並びに前記光ファイバを着脱できるスリーブ部から成るものであって、前記本体部には前記発光デバイス若しくは受光デバイスを収納する凹部並びに前記切欠部に係合するフック部を設けた構成としたので、光ファイバモジュールは材料が安価でリフロー半田付けも可能となり、手番短縮効果があってコスト低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の第一の実施の形態である発光側の光ファイバモジュールの断面図である。図2はこの光ファイバモジュールを下面側から見た斜視図である。まず、本発明の実施形態である光ファイバモジュールの構成を説明する。
【0016】
図1、図2において、1は双方向光通信機能を果たす光ファイバモジュールの発光側の光ファイバモジュールである。2は熱可塑性樹脂で成形したハウジングであり、ハウジング2は方形の本体部3並びに光ファイバを挿抜できる円筒形の穴を有するスリーブ部4から成る。本体部3には後述する光デバイスを収納するための凹部3aが形成され、一方の対向する側壁にはフック部3bが形成されている。5は発光側の光デバイスである発光デバイスであり、6はガラエポ又はBTレジン又はセラミックス又はMID(Molded Interconnect Device)のいずれかから成る発光デバイス5の基板であり、基板6の背面及び側面に外部接続電極5aが形成されており、また、基板6の背面の対向する一対の稜線にフック部3bと係合する切欠部6aが形成されている。切欠部6aが形成された基板6の側面にはフック部3bが挿通する溝部6bが形成されている。
【0017】
7は変調された電気信号を光信号に変換する発光素子であるLED(PDi)であり、8はロジックレベルの電気信号を発光素子駆動用信号に変換する発光ICであり、ともに基板6上の図示しない配線パターンに搭載されワイヤ配線されている。この配線パターンは外部接続電極5aに導通している。9はLED7及び発光IC8を封止している透光性エポキシ樹脂等の封止樹脂である。ハウジング2のフック部3bが基板6の切欠部6aに係合して、発光デバイス5をハウジング2の凹部3aに収納し固定している。
【0018】
なお、双方向光通信機能を果たす受光側の光ファイバモジュールは、基板6上に搭載されている光素子が発光側のLED7と発光IC8とは異なる。すなわち、それらは光信号を電気信号に変換する受光素子であるPDi並びにPDiで受光した光信号を電気信号に変換し更にロジックレベルに増幅するための受光ICである。その他の構成は発光側の光ファイバモジュール1と同様であるから説明を省略する。
【0019】
次に、本発明の第一の実施の形態の効果について説明する。発光デバイス5は発光素子基板6上に実装した基板型光デバイスであり、小型化が容易になる。また、基板6の背面及び側面には切欠部6aと外部接続電極5aとを設けるとともに、ハウジング2の本体部3には光デバイスを収納する凹部3a並びに切欠部6aに係合させるフック部3bを設けたので、光ファイバモジュール1は表面実装型となりリフロー半田付けが可能となった。また、光ファイバモジュール1は光素子を除いて全て樹脂材料で形成したのでコスト低減を図れる。更に、光ファイバモジュール1を実装基板に実装する際には、基板6の背面側を実装面に当接させて行うことも、側面側を実装面に当接させて行うこともできる。いずれにしても表面実装によって手番短縮効果がありコスト低減を図ることができる。また、発光デバイス5はフック部3bによってハウジング2に固定したので、組立工数が低減して低コストにできた。
【0020】
なお、ハウジング2を熱可塑性樹脂で一体成形すると説明したが、この場合の熱可塑性樹脂は液晶ポリマー(LCP)又はPPS等の耐熱性樹脂であることが望ましい。なぜなら、通常の熱可塑性樹脂を用いた場合は光デバイスのリフローハンダ付け後にハウジングの装着を行う順序となるが、耐熱性樹脂の場合にはハウジング装着後にリフロー半田付けが可能となる。
【0021】
次に、本発明の第二の実施の形態である光ファイバモジュールの構成について図面を参照して説明する。図3は本発明の第二の実施の形態である双方向光通信機能を果たす光ファイバモジュールを下面側から見た斜視図である。
【0022】
図3において、11は双方向光通信機能を果たす光ファイバモジュールを示している。12は熱可塑性樹脂で成形したハウジングであり、1つの本体部13と2つのスリ−ブ部4とからなる。15は受光デバイスであり、16は受光デバイス15の基板である。受光デバイス15は発光デバイス5とともにハウジング12に収納されている。その他の構成は第一の実施の形態と同様であるから、同じ構成要素には同じ符号と名称とを付して詳細な説明を省略する。
【0023】
次に、本発明の第三の実施の形態である光ファイバモジュールの構成について図面を参照して説明する。図4は本発明の第三の実施の形態である双方向光通信機能を果たす光ファイバモジュールを下面側から見た斜視図である。
【0024】
図4において、21は双方向光通信機能を果たす光ファイバモジュールを示している。26は基板6と基板16とが一体化された基板であり、25は受光デバイス15と発光デバイス5との基板6が一体化された基板26に実装された受発光デバイスである。その他の構成は第二の実施の形態と同様であるから、同じ構成要素には同じ符号と名称とを付して詳細な説明を省略する。
【0025】
次に、第二及び第三の実施の形態である光ファイバモジュール11及び21の効果について説明する。1つのハウジング12に発光デバイス5と受光デバイス15とをともに収納したので双方向の光伝送が1つの光ファイバモジュールで可能となった。その他の効果は第一の実施の形態のものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の光ファイバモジュールは、LANなどの局内通信用や車載用のオーディオデータ通信用などに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施の形態である発光側(受光側)の光ファイバモジュールの断面図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態である光ファイバモジュールの斜視図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態である光ファイバモジュールの斜視図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態である光ファイバモジュールの斜視図である。
【図5】従来の双方向光ファイバモジュールの斜視図である。
【図6】従来の双方向光ファイバモジュールの受光側(発光側)である受光デバイスの斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1、11、21 光ファイバモジュール
2、12 ハウジング
3、13 本体部
3b、13b フック部
4 スリーブ部
5 発光デバイス
6、26 基板
6a 切欠部
15 受光デバイス
25 受発光デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバにより光信号を送信若しくは受信する光ファイバモジュールであって、発光素子を含む発光デバイス若しくは受光素子を含む受光デバイスをハウジングに収納した光ファイバモジュールにおいて、前記発光デバイス若しくは前記受光デバイスは前記発光素子若しくは前記受光素子を基板上に実装したものであり、この基板の背面及び側面に外部接続電極を設けるとともに、前記基板の背面側の対向する稜線近傍を切り欠く切欠部を設け、前記ハウジングは本体部並びに前記光ファイバを着脱できるスリーブ部から成るものであって、前記本体部には前記発光デバイス若しくは受光デバイスを収納する凹部並びに前記切欠部に係合するフック部を設けたことを特徴とする光ファイバモジュール。
【請求項2】
前記ハウジングには1つの本体部と2つのスリーブ部とを有し、前記発光デバイス及び前記受光デバイスがともに収納された若しくは前記基板に前記発光素子及び前記受光素子を含む受発光デバイスが収納された双方向光伝送モジュールであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバモジュール。
【請求項3】
前記ハウジングは熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体成形したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光ファイバモジュール。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は液晶ポリマー(LCP)又はPPS等の耐熱性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光ファイバモジュール。
【請求項5】
前記基板はガラエポ又はBTレジン又はセラミックス又はMID(Molded
Interconnect Device)基板のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光ファイバモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−30813(P2006−30813A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212360(P2004−212360)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】