説明

光ファイバ歪測定装置

【課題】 歪を精度良く測定可能で高分解能化が可能である光ファイバ歪測定装置を実現する。
【解決手段】 測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、出力光の光周波数を変化させることが可能な可変波長光源と、この可変波長光源の出力光を2つに分岐する第1の光分岐手段と、一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、光パルス変調器の出力光をポンプ光として光ファイバの一端に入射すると共に光ファイバの一端からの出射光を分岐する第2の光分岐手段と、出力光をプローブ光として光ファイバの他端に入射する光源と、第1の光分岐手段の他方の分岐光を用いて第2の光分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、ヘテロダイン検波して得られた周波数差からポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光(ブリルアン増幅を受けた後方散乱光)を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置に関し、特に歪を精度良く測定可能で高分解能化が可能である光ファイバ歪測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ中を伝播する光の一部は、ガラスの構造分子の運動エネルギーとして吸収される。吸収されたエネルギーは一定値を超えたときに音響フォノンとして放出される。そして、ブリルアン散乱とは、放出された音響フォノンと透過光との相互干渉により、音響フォノンの周波数分だけシフト(ブリルアン周波数シフト)したストークス光が発生する現象である。
【0003】
従来の被測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平02−006725号公報
【特許文献2】特開平06−230091号公報
【特許文献3】特開2000−180265号公報
【特許文献4】特開2003−014584号公報
【0005】
図5はこのような従来の(Brillouin Optical Time Domain Analysis:BOTDA)の光ファイバ歪測定装置の一例を示す構成ブロック図である。図5において、1はレーザ光を出射する半導体レーザ光源等の光源、2及び5は光を分岐する光分岐手段、3は入射光を強度変調する光変調器、4は光スイッチ等の入射光をパルス光にして出射させると共に光周波数シフトを可変できる光パルス変調器、6は歪の測定対象である光ファイバ、7はフォトダイオード等の光検出器である。
【0006】
光源1からの出射光は光分岐手段2に入射され、一方の分岐光は光変調器3の入射端に入射され、他方の分岐光は光パルス変調器4の入射端に入射される。光変調器3の出力光はプローブ光として光ファイバ6の一端に入射され、光パルス変調器4の出力パルス光はポンプ光として光分岐手段5を介して光ファイバ6の他端に入射される。
【0007】
一方、光ファイバ6からのブリルアン散乱光は光ファイバ6の他端から出射され、光分岐手段5で分岐され光検出器7に入射される。
【0008】
ここで、図5に示す従来例の動作を図6及び図7を用いて説明ずる。図6はプローブ光、パルス光及びブリルアン散乱光の関係を説明する説明図、図7は光検出器7で検出される光強度の一例を示す特性曲線図である。
【0009】
図6中”TM01”に示す光ファイバ6の一端に入射されるプローブ光の光周波数を”f0”、図6中”TM02”に示す光ファイバ6の他端から入射されるポンプ光の光周波数は光パルス変調器4で”Δf”だけ光周波数シフトされた”f0+Δf”であるとする。
【0010】
光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致しなければ、ブリルアン散乱は発生せず、図6中”TM02”に示す光ファイバ6の他端からは光ファイバ6を伝播してきたプローブ光が出射される。
【0011】
例えば、光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致しなければ、図7中”CH11”に示す光強度の特性曲線が光検出器7で測定される。言いかえれば、図7中”CH11”に示すようにプローブ光の光強度に相当する光強度が時間経過と共に測定される。
【0012】
一方、光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致した場合に、図6中”TM02”に示す光ファイバ6の他端から光周波数が”f0+fB”であるブリルアン散乱光(パルス光)が、光ファイバ6を伝播してきたプローブ光と共に出射される。
【0013】
例えば、光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致した場合には、図7中”CH12”に示す光強度の特性曲線が光検出器7で測定される。言いかえれば、図7中”CH12”に示すように図7中”PS11”に示すある時刻にパルス状の光強度変化(ブリルアン散乱光(パルス光))を伴う特性が時間経過と共に測定される。
【0014】
すなわち、光ファイバ6中で歪が発生している部分のブリルアン周波数シフト”fB”と光周波数のシフト分”Δf”が一致すれば、当該歪が発生している部分からブリルアン散乱光(パルス光)が戻ってくることになる。
【0015】
ここで、図7に示す特性曲線図の横軸の時間は、光ファイバ6内の光の伝播速度を勘案すれば光ファイバの位置(或いは、光ファイバの他端からの距離)に相当するので、図7中”PS11”に示すある時刻に相当する位置を特定することにより、光ファイバ6内で発生している歪の位置を得ることが可能になる。
【0016】
また、ブリルアン周波数シフトは歪の大きさに依存する性質を有する、言い換えれば、歪の大きさによってブリルアン周波数シフトが変化することになるので、光パルス変調器4で光周波数シフト”Δf”を走査することにより、光ファイバ6中の大きさの異なる歪が発生している部分からブリルアン散乱光(パルス光)が順次戻ってくることになる。
【0017】
この結果、光ファイバ6の一端からプローブ光(光周波数”f0”)を入射し、光ファイバ6の他端から光周波数をシフトさせたパルス光(光周波数”f0+Δf”)を入射させ、光ファイバ6の他端から出射される光を光検出器で測定すると共に光周波数シフトを走査することにより、光ファイバ6内で発生している様々な大きさの歪の位置を測定することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、従来の光ファイバ歪測定装置では高分解能化を実現するためには、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くする必要性があるものの、パルス幅(時間)を狭くすると、ポンプ光(パルス光)のスペクトラム幅が広がってしまい純度が低下する。
【0019】
図8はポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)とスペクトラム幅との関係を示す説明図、図9はスペクトラム幅が広がった場合のブリルアン散乱光(パルス光)の関係を示す説明図である。
【0020】
ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)が十分であれば、図8中”SP21”に示すようにスペクトラム幅は狭くなるが、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くすると、図8中”SP22”に示すようにスペクトラム幅が広がってしまう。
【0021】
この時、ポンプ光の光周波数シフト”Δf’”と、ブリルアン周波数シフト”fB”とが少しずれていてもブリルアン散乱光(パルス光)が発生して戻り光として光検出器7で検出されてしまう。
【0022】
例えば、図9中”CF31”に示す中心周波数がポンプ光の光周波数シフト”Δf’”であったとしても、スペクトラム幅が広がっている場合、図9中”FB31”に示すブリルアン周波数シフト”fB”まで広がっているので、多少のブリルアン散乱光(パルス光)が発生して戻り光として光検出器7で検出されてしまう。
【0023】
すなわち、中心周波数がポンプ光の光周波数シフト”Δf’”であったとしても、異なるブリルアン周波数シフト”fB”、言い換えれば、大きさの異なる歪が発生している部分からのブリルアン散乱光(パルス光)が検出されてしまい歪を精度良く測定することができないと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、歪を精度良く測定可能で高分解能化が可能である光ファイバ歪測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
出力光の光周波数を変化させることが可能な可変波長光源と、この可変波長光源の出力光を2つに分岐する第1の光分岐手段と、一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光ファイバの一端に入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する第2の光分岐手段と、出力光をプローブ光として前記光ファイバの他端に入射する光源と、前記第1の光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記第2の光分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。
【0025】
請求項2記載の発明は、
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
出力光の光周波数を変化させることが可能な可変波長光源と、この可変波長光源の出力光を2つに分岐する光分岐手段と、一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、光源と、前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光源の出力光をプローブ光として前記光ファイバの一端にそれぞれ入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する光合分岐手段と、前記光ファイバの他端に設けられた反射端と、前記光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記光合分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。また、入射光を合波し分岐させる光合分岐手段によってポンプ光とプローブ光を光ファイバの同一端から入射することにより、光ファイバの両端からそれぞれの光を入射する必要がなくなる。
【0026】
請求項3記載の発明は、
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
光源と、この光源の一方の出力光の光周波数をシフトさせる光周波数シフタと、この光周波数シフタの出力光を2つに分岐する光分岐手段と、一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光源の他方の出力光をプローブ光として前記光ファイバの一端にそれぞれ入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する光合分岐手段と、前記光ファイバの他端に設けられた反射端と、前記光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記光合分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。また、プローブ光を出射する光源の出力を光周波数シフトさせてポンプ光用の光を生成しているので、光源が1つで良くなり、構成が簡単になる。
【0027】
請求項4記載の発明は、
請求項2若しくは請求項3記載の発明である光ファイバ歪測定装置において、
前記反射端が、
パルス光に対して低反射率であることにより、ポンプ光(パルス光)の折り返しを防止し、発生するブリルアン散乱光(パルス光)との混在を低減することができる。
【0028】
請求項5記載の発明は、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明である光ファイバ歪測定装置において、
前記第1の光分岐手段の他方の分岐光、若しくは、前記光分岐手段の他方の分岐光の周波数を一定周波数シフトさせることにより、その後の信号処理が容易になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1の発明によれば、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光による正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。
【0030】
また、請求項2の発明によれば、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光による正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。また、入射光を合波し分岐させる光合分岐手段によってポンプ光とプローブ光を光ファイバの同一端から入射することにより、光ファイバの両端からそれぞれの光を入射する必要がなくなる。
【0031】
また、請求項3の発明によれば、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光の光周波数シフトを補償することにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。また、プローブ光を出射する光源の出力を光周波数シフトさせてポンプ光用の光を生成しているので、光源が1つで良くなり、構成が簡単になる。
【0032】
また、請求項4の発明によれば、反射端がパルス光に対して低反射率であることにより、ポンプ光(パルス光)の折り返しを防止し、発生するブリルアン散乱光(パルス光)との混在を低減することができる。
【0033】
また、請求項5の発明によれば、ポンプ光に用いる光の分岐光の周波数を一定周波数シフトさせることにより、その後の信号処理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る光ファイバ歪測定装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【0035】
図1において、8は出力光の光周波数(光波長)を変化させることが可能な可変波長光源、9及び11は光を分岐する光分岐手段、10は光スイッチ等の入射光をパルス光にして出射させる光パルス変調器、12は歪の測定対象である光ファイバ、13は連続光であるプローブ光を出射する光源、14はヘテロダイン検波型の光検出器である。
【0036】
可変波長光源8の出力光は光分岐手段9に入射され、一方の分岐光は光パルス変調器10の入射端に入射され、他方の分岐光は光検出器14の一方の入射端に入射される。
【0037】
光パルス変調器10の出力光は光分岐手段11を介して光ファイバ12の一端に入射される。一方、光源13の出力光は光ファイバ12の他端に入射され、光ファイバ12の一端からの出射光は光分岐手段11で分岐され光検出器14の他方の入射端に入射される。
【0038】
ここで、図1に示す実施例の動作を図2を用いて説明する。図2は各種光の伝播経路を説明する説明図である。光源13の出力光は図2中”LG41”に示すようにプローブ光として光ファイバ12の他端から入射される。
【0039】
一方、可変波長光源8の出力光は光分岐手段9で分岐され、一方の分岐光は光パルス変調器10によってパルス光となり、光分岐手段11を介して図2中”LG42”に示すようにポンプ光として光ファイバ12の一端に入射される。
【0040】
図2中”LG41”に示すプローブ光の光周波数を”f0”、図2中”LG42”に示すポンプ光の光周波数を光周波数が”Δf”シフトした”f0+Δf”であるとする。
【0041】
光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致しなければ、ブリルアン散乱は発生せず、光ファイバ12の一端からは光ファイバ12を伝播してきたプローブ光が出射される。
【0042】
一方、光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致した場合に、図2中”LG43”に示すように光周波数が”f0+fB”であるブリルアン散乱光(パルス光)が、光ファイバ12を伝播してきたプローブ光と共に出射される。
【0043】
そして、このようなブリルアン散乱光(光周波数:”f0+fB”)はヘテロダイン検波型の光検出器14に入射され、図2中”LG44”に示す光分岐手段9で分岐された連続光である分岐光(光周波数:”f0+Δf”)との周波数差の信号として検波される。
【0044】
この時、
Δf=fB
であるので、周波数差は”0”になり、可変波長光源8で与えた光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と同一であることが確認される。
【0045】
一方、高分解能化を実現するために、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くした場合、前述のように、ポンプ光(パルス光)のスペクトラム幅が広がってしまい純度が低下する。
【0046】
ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)が十分であれば、図8中”SP21”に示すようにスペクトラム幅は狭くなるが、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くすると、図8中”SP22”に示すようにスペクトラム幅が広がってしまう。
【0047】
そして、例えば、ポンプ光の光周波数シフト”Δf’”がブリルアン周波数シフト”fB”から少しずれた場合、図9中”CF31”に示す中心周波数がポンプ光の光周波数シフト”Δf’”であったとしても、スペクトラム幅が広がっている場合、図9中”FB31”に示すブリルアン周波数シフト”fB”まで広がっているので、多少のブリルアン散乱光(パルス光)が発生して戻り光として戻ってくる。
【0048】
但し、図1に示す実施例ではヘテロダイン検波型の光検出器14でヘテロダイン検波を行っているので、
ΔF=fB−Δf’≠0
なる周波数差”ΔF”の信号として検波される。
【0049】
したがって、正確なブリルアン周波数シフト”fB”は、
fB=Δf’+ΔF
となる。
【0050】
ここで、中心周波数がポンプ光の光周波数シフト”Δf’”であったとしても、ヘテロダイン検波によって得られた周波数差”ΔF”により、正確なブリルアン周波数シフト”fB”、言い換えれば、歪を精度良く測定することが可能になる。
【0051】
この結果、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光の光周波数シフトを補償することにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。
【0052】
また、図3は本発明に係る光ファイバ歪測定装置の第2の実施例を示す構成ブロック図である。
【0053】
図3において、15は連続光であるプローブ光を出射する光源、16は入射光を合波し分岐させる光合分岐手段、17は歪の測定対象である光ファイバ、18は光ファイバの他端に設けられた反射端、19は出力光の光周波数(光波長)を変化させることが可能な可変波長光源、20は光を分岐する光分岐手段、21は光スイッチ等の入射光をパルス光にして出射させる光パルス変調器、22はヘテロダイン検波型の光検出器である。
【0054】
光源15の出力光は光合分岐手段16を介して光ファイバ17の一端にプローブ光として入射される。一方、可変波長光源19の出力光は光分岐手段20に入射され、一方の分岐光は光パルス変調器21の入射端に入射され、他方の分岐光は光検出器22の一方の入射端に入射される。
【0055】
光パルス変調器21の出力光は光合分岐手段16を介して光ファイバ17の一端にポンプ光として入射される。また、光ファイバ17の一端からの出射光は光合分岐手段16で分岐され光検出器22の他方の入射端に入射される。
【0056】
ここで、図3に示す実施例の動作を説明する。但し、図1に示す実施例と同様の動作に関しては説明を省略する。
【0057】
光源15の出力光は光合分岐手段16を介して光ファイバ17の一端に入射され、光ファイバ17の他端に設けられた反射端18において反射され折り返し、プローブ光として光ファイバ17内を伝播する。
【0058】
一方、可変波長光源19の出力光は光パルス変調器21でパルス光に変換され、光ファイバ17の一端からポンプ光として入射され、折り返してくるプローブ光と対向して光ファイバ17内を伝播する。
【0059】
このような状態で、ポンプ光の光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致すれば、ブリルアン散乱光(パルス光)発生して、光ファイバ17の一端から出射され、ヘテロダイン検波型の光検出器22において光分岐手段20で分岐された連続光である分岐光(光周波数:”f0+Δf”)との周波数差の信号として検波される。
【0060】
ここで、高分解能化を実現するために、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光(パルス光)のスペクトラム幅が広がってしまい純度が低下した状態で、ポンプ光の光周波数シフト”Δf’”がブリルアン周波数シフト”fB”から少しずれた場合であっても、ヘテロダイン検波によって得られた周波数差”ΔF”により、正確なブリルアン周波数シフト”fB”、言い換えれば、歪を精度良く測定することが可能になる。
【0061】
この結果、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光の光周波数シフトを補償することにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。
【0062】
また、入射光を合波し分岐させる光合分岐手段によってポンプ光とプローブ光を光ファイバの同一端から入射することにより、光ファイバの両端からそれぞれの光を入射する必要がなくなる。
【0063】
また、図4は本発明に係る光ファイバ歪測定装置の第3の実施例を示す構成ブロック図である。
【0064】
図4において、23は連続光であるプローブ光を出射する光源、24は入射光を合波し分岐させる光合分岐手段、25は歪の測定対象である光ファイバ、26は光ファイバの他端に設けられた反射端、27は光周波数をシフトさせる光周波数シフタ、28は光を分岐する光分岐手段、29は光スイッチ等の入射光をパルス光にして出射させる光パルス変調器、30はヘテロダイン検波型の光検出器である。
【0065】
光源23の一方の出力光は光合分岐手段24を介して光ファイバ25の一端にプローブ光として入射される。光源23の他方の出力光は光周波数シフタ27に入射される。
【0066】
光周波数シフタ27の出力光は光分岐手段28に入射され、一方の分岐光は光パルス変調器29の入射端に入射され、他方の分岐光は光検出器30の一方の入射端に入射される。
【0067】
光パルス変調器29の出力光は光合分岐手段24を介して光ファイバ17の一端にポンプ光として入射される。また、光ファイバ17の一端からの出射光は光合分岐手段24で分岐され光検出器30の他方の入射端に入射される。
【0068】
ここで、図3に示す実施例の動作を説明する。但し、図1に示す実施例と同様の動作に関しては説明を省略する。
【0069】
光源23の一方の出力光は光合分岐手段24を介して光ファイバ25の一端に入射され、光ファイバ25の他端に設けられた反射端26において反射され折り返し、プローブ光として光ファイバ25内を伝播する。
【0070】
一方、光源23の他方の出力光は光周波数シフタ27で光周波数がシフト”Δf”され、光パルス変調器29でパルス光に変換され、光ファイバ25の一端からポンプ光として入射され、折り返してくるプローブ光と対向して光ファイバ25内を伝播する。
【0071】
このような状態で、ポンプ光の光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致すれば、ブリルアン散乱光(パルス光)が発生して、光ファイバ17の一端から出射され、ヘテロダイン検波型の光検出器30において光分岐手段20で分岐された連続光である分岐光(光周波数:”f0+Δf”)との周波数差の信号として検波される。
【0072】
ここで、高分解能化を実現するために、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光(パルス光)のスペクトラム幅が広がってしまい純度が低下した状態で、ポンプ光の光周波数シフト”Δf’”がブリルアン周波数シフト”fB”から少しずれた場合であっても、ヘテロダイン検波によって得られた周波数差”ΔF”により補償することにより、正確なブリルアン周波数シフト”fB”、言い換えれば、歪を精度良く測定することが可能になる。
【0073】
この結果、ポンプ光(パルス光)のパルス幅(時間)を狭くし、ポンプ光と同一周波数の光とブリルアン散乱光とをヘテロダイン検波して周波数差を求めて、ポンプ光の光周波数シフトを補償することにより、正確なブリルアン周波数シフトを得ることができ、高分解能で歪を精度良く測定することが可能になる。
【0074】
また、プローブ光を出射する光源の出力を光周波数シフトさせてポンプ光用の光を生成しているので、光源が1つで良くなり、構成が簡単になる。
【0075】
なお、図3及び図4に示す実施例では、反射端をパルス光に対して低反射率にすることにより、ポンプ光(パルス光)の折り返しを防止し、発生するブリルアン散乱光(パルス光)との混在を低減することができる。
【0076】
また、ヘテロダイン検波型の光検出器に入射するポンプ光に用いる光の分岐光の光周波数を、検波後の信号処理に適した周波数になるように、一定周波数シフト(例えば、〜100MHz程度)させても構わない。
【0077】
例えば、光周波数のシフト分”Δf”がブリルアン周波数シフト”fB”と一致した場合、ヘテロダイン検波によって得られる周波数差は”0”になり、実際にはその後の信号処理が難しい。このため、ポンプ光に用いる光の分岐光の光周波数を一定周波数シフト(例えば、〜100MHz程度)させることにより、ヘテロダイン検波によって得られる周波数差は”0”にならず、その後の信号処理が容易になる。
【0078】
また、必要に応じて光増幅器を適宜用いても構わないし、入射させるパルス光を広スペクトラム化(或いは、フラットトップ)して、ヘテロダイン検波後にブリルアン散乱光の波長(周波数)を検出しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】相関型の光ファイバ歪測定装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】各種光の伝播経路を説明する説明図である。
【図3】相関型の光ファイバ歪測定装置の第2の実施例を示す構成ブロック図である。
【図4】相関型の光ファイバ歪測定装置の第3の実施例を示す構成ブロック図である。
【図5】従来の光ファイバ歪測定装置の一例を示す構成ブロック図である。
【図6】プローブ光、パルス光及びブリルアン散乱光の関係を説明する説明図である。
【図7】光検出器で検出される光強度の一例を示す特性曲線図である。
【図8】ポンプ光のパルス幅とスペクトラム幅との関係を示す説明図である。
【図9】スペクトラム幅が広がった場合のブリルアン散乱光の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1,13,15,23 光源
2,5,9,11,20,28 光分岐手段
3,10 光変調器
4,21,29 光パルス変調器
6,12,17,25 光ファイバ
7,14,22,30 光検出器
8,19 可変波長光源
16,24 光合分岐手段
18,26 反射端
27 光周波数シフタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
出力光の光周波数を変化させることが可能な可変波長光源と、
この可変波長光源の出力光を2つに分岐する第1の光分岐手段と、
一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、
前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光ファイバの一端に入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する第2の光分岐手段と、
出力光をプローブ光として前記光ファイバの他端に入射する光源と、
前記第1の光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記第2の光分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、
ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることを特徴とする光ファイバ歪測定装置。
【請求項2】
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
出力光の光周波数を変化させることが可能な可変波長光源と、
この可変波長光源の出力光を2つに分岐する光分岐手段と、
一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、
光源と、
前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光源の出力光をプローブ光として前記光ファイバの一端にそれぞれ入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する光合分岐手段と、
前記光ファイバの他端に設けられた反射端と、
前記光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記光合分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、
ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることを特徴とする光ファイバ歪測定装置。
【請求項3】
測定対象である光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光を用いて光ファイバの歪を測定する光ファイバ歪測定装置において、
光源と、
この光源の一方の出力光の光周波数をシフトさせる光周波数シフタと、
この光周波数シフタの出力光を2つに分岐する光分岐手段と、
一方の分岐光を狭パルス光にして出射させる光パルス変調器と、
前記光パルス変調器の出力光をポンプ光として前記光源の他方の出力光をプローブ光として前記光ファイバの一端にそれぞれ入射すると共に前記光ファイバの一端からの出射光を分岐する光合分岐手段と、
前記光ファイバの他端に設けられた反射端と、
前記光分岐手段の他方の分岐光を用いて前記光合分岐手段の分岐光をヘテロダイン検波する光検出器とを備え、
ヘテロダイン検波して得られた周波数差から前記ポンプ光によるブリルアン散乱光の正確な周波数シフトを求めることを特徴とする光ファイバ歪測定装置。
【請求項4】
前記反射端が、
パルス光に対して低反射率であることを特徴とする
請求項2若しくは請求項3記載の光ファイバ歪測定装置。
【請求項5】
前記第1の光分岐手段の他方の分岐光、若しくは、前記光分岐手段の他方の分岐光の周波数を一定周波数シフトさせることを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光ファイバ歪測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−240287(P2007−240287A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61954(P2006−61954)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】