説明

光ヘッド装置及び多層光記録媒体再生システム

【課題】複数の記録層と一つのサーボ層を有する多層光記録媒体におけるサーボ層の情報と記録層の情報の分離を確実に行なって、記録及び再生の高速化を図ると共に、層間迷光の影響を受け難いようにした光ヘッド装置及びこれを用いた多層光記録媒体記録再生システムを提供する。
【解決手段】多層光記録媒体記録再生システムは複数の記録層と一つのサーボ層とを有する多層光記録媒体12と光ヘッド14を有し、光ヘッド14における記録再生用対物レンズ22と、サーボ用対物レンズ32とを同一のアクチュエータ17に搭載し、且つ、記録再生用対物レンズ22は微小駆動装置18を介してアクチュエータ17に搭載しサーボ用対物レンズ32に対して相対的にフォーカス方向に微小駆動可能とされていてサーボ用対物レンズ32をサーボ層に合焦させたとき、再生用光ビームを複数の記録層のうち目的の記録層に迅速に合焦させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の記録層と一つのサーボ層を有する多層光記録媒体の情報再生に用いる光ヘッド装置及びこの光ヘッド装置を含む多層光記録媒体再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を複数備えた多層光記録媒体におけるフォーカス制御やトラッキング制御等の、光ビーム照射についての焦点位置の制御について開示されている。
【0003】
この特許文献1記載の発明では、多層光記録媒体の情報記録再生方法としては、サーボ層用のレーザ光源と、記録層用のレーザ光源とを別個に設け、これらからの光ビームを、同一の対物レンズを介して光記録媒体に照射して、フォーカスサーボやトラッキングサーボを含むサーボと記録再生とを同時に行なうようにしている。
【0004】
ところが、サーボ層用の光ビームは、常に1つのサーボ層に合焦させ、一方、記録再生用の光ビームは、複数の記録層のうちの所定の記録層に合焦させる必要がある。
【0005】
特許文献1記載の発明のように、同一の対物レンズによってサーボ用と記録再生用の光ビームの照射及びその反射光の受光をする場合は、サーボ用と記録再生用としては、タイミングを変えて、別々にフォーカシングすると共に、レーザ光源を異なる周波数で変調したり、時分割的にレーザ光源を点灯させて、サーボ層からの情報と記録層からの情報を分離しなければならない。
【0006】
そのため、2倍速あるいは4倍速等の異なる速度への記録再生を行なう場合に、迅速なフォーカシングが困難であると共に、光源の変調周波数の設定が煩雑になり、これが記録再生の高速化の妨げになっていた。又、同一の対物レンズを介してサーボ光と記録再生光とを同時に照射し、又その反射光を受光しているので、情報再生時に、サーボ層と記録層、あるいは各記録層における層間迷光の影響がノイズとして発生し易いという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−4879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、複数の記録層と一つのサーボ層を有する多層光記録媒体における、サーボ層の情報と記録層の情報の分離を確実にしつつ、サーボ光と記録再生光のフォーカシングを迅速に行なって、記録及び再生の高速化を図ると共に、層間迷光の影響を受け難い光ヘッド装置及び多層光記録媒体記録再生システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)信号再生用対物レンズを含む信号再生用光学系及びサーボ用対物レンズを含むサーボ信号検出用光学系を有してなり、複数の記録層と一つのサーボ層とを有する多層光記録媒体に、前記信号再生用対物レンズを介して再生用光ビームを照射し、且つ、その反射光を受光し、前記サーボ用対物レンズを介してサーボ用光ビームを照射し、且つ、その反射光を受光する光ヘッド装置であって、前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズが同一のアクチュエータに搭載されていて、且つ、これら信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方が、焦点位置可変機構により焦点位置移動可能とされたことを特徴とする光ヘッド装置。
【0010】
(2)(1)において、前記焦点位置可変機構を、前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方を、前記アクチュエータに、フォーカス方向に微小駆動可能に搭載する微小駆動装置であることを特徴とする光ヘッド装置。
【0011】
(3)(1)において、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方を焦点距離可変レンズとすることにより構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【0012】
(4)(1)において、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系は、各々コリメートレンズを備え、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方のコリメートレンズを光軸方向に駆動するコリメートレンズ駆動装置であることを特徴とする光ヘッド装置。
【0013】
(5)(1)において、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方のコリメートレンズを、焦点距離可変レンズとすることにより構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【0014】
(6)(1)において、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方の光学系に設置された、フォーカスジャンプ可能なエキスパンダーレンズによって構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【0015】
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の光ヘッド装置と、複数の記録層と一つのサーボ層とを有する多層光記録媒体と、を含む多層光記録媒体再生システム。
【0016】
(8)前記再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズは、その中心光軸が、前記多層光記録媒体における同一のトラックに対応する位置で、且つ、トラックの長手方向に沿って配置されたことを特徴とする(7)に記載の多層光記録媒体再生システム。
【0017】
(9)前記多層光記録媒体における前記サーボ層に、前記再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの位置確認用トラックを設けたことを特徴とする(8)に記載の多層光記録媒体記録再生システム。
【発明の効果】
【0018】
この発明の多層光記録媒体用の光ヘッド装置は、再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズを同一のアクチュエータによって駆動しつつ、少なくとも一方の焦点位置を、他方に対して相対的に、フォーカス方向に微小変化できるので、サーボ光と再生光とを同一の対物レンズを介して同時に照射した場合と比較して迅速にフォーカシングできると共に、非焦反射光が少ないので層間迷光の影響を受け難く、サーボ層の情報と記録層の情報の分離を確実に行ない、且つ再生の高速化をすることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施例に係る光ヘッド装置及びこれを含む多層光記録媒体記録再生システムについて説明する。
【0020】
図1に示されるように、この実施例1に係る多層光記録媒体記録再生システム(以下記録再生システム)10は、多層光記録媒体12と、光ヘッド装置(以下光ヘッド)14と、光ヘッド14からの信号に基づいて、再生(RF)信号や、トラッキングエラー(TE)信号、フォーカスエラー(FE)信号等を出力する検出回路40と、検出回路40の出力信号に基づいて、光ヘッド14を制御したり、光ヘッド14を多層光記録媒体12の半径方向に駆動するための駆動装置15及び多層光記録媒体12を回転駆動するためのスピンドルモータ16を制御する制御装置50と、検出回路40からのRF信号より基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路70と、システムコントローラ72及びD/Aコンバータ74とを備えて構成されている。
【0021】
図2に示されるように、多層光記録媒体12は、複数の記録層12A、12B、12C、12D、・・・及びサーボ層13を備えて構成されている。
【0022】
光ヘッド14は、図3に示されるように、信号記録再生用光学系20と、サーボ信号検出用光学系30と、アクチュエータ17とを備えている。
【0023】
このアクチュエータ17には、図2に示されるように、信号記録再生用光学系20における記録再生用対物レンズ22、及び、サーボ信号検出用光学系30におけるサーボ用対物レンズ32が、これらの中心光軸22A、32Aが、多層光記録媒体12の同一のトラック13A上に、該トラック13Aの長手方向に沿う(並ぶ)ように配置して搭載されている。このトラック13Aには、位置確認用トラックであることを示す情報が記録されていて、記録再生用対物レンズ22及びサーボ用対物レンズ32の中心光軸22A、32Aを通る光ビームがこの情報を検出したとき、正しい位置にあることを確認できるようにされている。
【0024】
又、記録再生用対物レンズ22は、フォーカス方向に微小駆動可能な微小駆動装置18を介してアクチュエータ17に取り付けられている。記録再生用対物レンズ22は、アクチュエータ17によってサーボ用対物レンズ32と共に駆動されるが、微小駆動装置18によって、サーボ用対物レンズ32に対して相対的に微小変位して、サーボ用対物レンズ32がサーボ層13に合焦したとき、いずれかの記録層に合焦できるようにされている。
【0025】
信号記録再生用光学系20は、記録再生用のレーザ光を出射するレーザダイオードからなるレーザ光源23と、このレーザ光源23から出射された光ビームのs偏光又はp偏光の一方を図3において横方向に反射する偏光ビームスプリッタ24と、この偏光ビームスプリッタ24を通った光ビームを多層光記録媒体12の特定の記録層に合焦させる上記記録再生用対物レンズ22と、多層光記録媒体12からの、上記光ビームの反射光が、記録再生用対物レンズ22を経て偏光ビームスプリッタ24透過した後の光ビームを受光する光検出器25と、同一光軸OA2を備えて構成されている。
【0026】
光軸OA2上には、レーザ光源23と偏光ビームスプリッタ24との間に、回折格子26が配置され、又、偏光ビームスプリッタ24と記録再生用対物レンズ22との間には、コリメートレンズ27、立上げミラー28及びλ/4板29がこの順で配置され、偏光ビームスプリッタ24と受光器25との間には、センサレンズ21が配置されている。
【0027】
コリメートレンズ27は図示しない駆動装置によって光軸方向に移動可能とされている。センサレンズ21は、円柱レンズと球面レンズ(図示省略)から構成されていて、センサレンズ21を透過した光ビームが略45°の方向に所定の非点収差が与えられるようになっている。この非点収差は、フォーカスエラー信号(FE信号)の検出に使用される。
【0028】
アクチュエータ17は、例えばボイスコイルモータからなり、制御装置50からの信号に基づいてフォーカス動作、トラッキング動作、チルト動作を行なうように構成されている。
【0029】
又、微小駆動装置18は、ボイスコイルモータ、圧電素子、磁歪素子、ソレノイドあるいは他の方法で、フォーカス方向に記録再生用対物レンズ22を微小駆動して、複数の記録層のいずれかへフォーカスジャンプできるようにされているが、いずれの記録層にジャンプするかは、多層光記録媒体12からの情報及び検出器40からの信号に基づいて、システムコントローラ72から微小駆動装置18へ出力される指示信号により選択される。
【0030】
回折格子26は、レーザ光源23から直線偏光の発散光として出射された光ビームを、1本のメイン光ビームと2本のサブ光ビームに分岐するようにされている(詳細説明省略)。上記2本のサブ光ビームは、デファレンシャルプッシュプル方式(以下DPP方式)によるトラッキングエラー信号(TE信号)の検出に用いられるものである。
【0031】
信号記録再生用光学系20は、前述のフォーカスエラー信号検出やトラッキングエラー信号検出を実行しない構成としても良い。
【0032】
サーボ信号検出用光学系30は、上記信号記録再生用光学系20と同様の構成であって、同一の光軸OA3上に、レーザ光源33とサーボ用対物レンズ32との間に回折格子36、偏光ビームスプリッタ34、コリメートレンズ37、立上げミラー38及びλ/4板39を、この順で備えている。又、多層光記録媒体12からの反射光が、偏光ビームスプリッタ34に戻ってこれを透過した後に、この光ビームを受光する受光器35及び光検出器35と偏光ビームスプリッタ34との間に配置されたセンサレンズ31とを備えている。
【0033】
検出回路40は、エラー検出回路41、波形等化器42、整形器43から構成されていて、制御装置50は、制御回路51とドライバ61とから構成されている。
【0034】
制御回路51は、フォーカス制御回路52、トラッキング制御回路53、チルト制御回路54、フォーカスジャンプ制御回路55、スライド制御回路56及びスピンドル制御回路57から構成されている。
【0035】
又、ドライバ61は、フォーカスドライバ62、トラッキングドライバ63、チルトドライバ64、フォーカスジャンプドライバ65、スライドドライバ66及びスピンドルドライバ67から構成されている。
【0036】
制御装置50は、上記構成によって、検出回路40からのフォーカスエラー(FE)信号、トラッキングエラー(TE)信号等に基づいて、光ヘッド14のフォーカスサーボ、トラッキングサーボ及びスライドサーボ等を行なうと共に、スピンドルモータ72の回転を制御するように構成されている。
【0037】
又、信号処理回路70は、検出回路40からのRF信号に復調、誤り検出/訂正等の処理を施してデータを再生するデジタル信号処理を行ない、D/Aコンバータ74を介してデジタル信号であるデータをアナログ信号に変換してから出力端子(図示省略)に供給するようにされている。
【0038】
次に、上記信号記録再生用光学系20から光ビームを多層光記録媒体12に照射して、再生信号を得る過程について説明する。
【0039】
まず、再生用光ビームとサーボ用光ビームを、多層光記録媒体12に照射して、ここに予め形成されている位置確認用のトラック13Aを検出するまで、アクチュエータ17を、駆動装置15により多層光記録媒体12の半径方向に駆動して、記録再生用対物レンズ22とサーボ用対物レンズ32の光軸OA2及びOA3の位置を確認する。
【0040】
レーザ光源23は直線偏光の光ビームを発散光として出射し、その光ビームは、回折格子26に入射して、前述のように、1本のメイン光ビームと2本のサブ光ビーム(以下特に説明のない限り、これらをまとめて光ビームと称する)とされる。
【0041】
回折格子26を通過した光ビームは、偏光ビームスプリッタ24において反射された後に、コリメートレンズ27によってほぼ平行な光ビームに変換される。
【0042】
コリメートレンズ27を通過した後、光ビームは、立上げミラー28によって、多層光記録媒体12方向に反射され、ここから、λ/4板29において直線偏光から円偏光に変換されてから、記録再生用対物レンズ22を経て、多層光記録媒体12の目的の記録層に合焦される。
【0043】
記録層において光ビームが反射されて、その反射光ビームが記録再生用対物レンズ22に入射し、λ/4板29によって直線偏光に変換されてから、立上げミラー28、コリメートレンズ27を経て、偏光ビームスプリッタ24に入射する。反射光(光ビーム)は、偏光ビームスプリッタ24を透過して、センサレンズ21を経て光検出器25に入射し、この入射光に基づいて、光検出器25は、再生(RF)信号を検出回路40に出力する。
【0044】
検出回路40では、波形等化器42、整形器43を経て、RF信号を信号処理回路70に出力し、信号処理回路70は、RF信号に復調、誤り検出/訂正等の処理を施してデジタル信号処理を行なってからD/Aコンバータ74に送り、ここでは、デジタル信号であるデータがアナログ信号に変換されて出力端子に供給される。
【0045】
一方、サーボ信号検出用光学系30においては、レーザ光源33から出射された光ビームは、信号記録再生用光学系20におけると同様に、偏光ビームスプリッタ34、コリメートレンズ37、立上げミラー38及びλ/4板39をこの順で通って、サーボ用対物レンズ32から、多層光記録媒体12に照射される。
【0046】
記録層からの反射光ビームは、前記と逆方向に、サーボ用対物レンズ32、λ/4板39、立上げミラー38、コリメートレンズ37を経て、偏光ビームスプリッタ34を透過し、センサレンズ31を経て、光検出器35に入射する。光検出器35は、この入射光に基づくサーボ信号を、検出回路40に出力する。
【0047】
サーボ信号検出用光学系30の光検出器35からの出力信号は、検出回路40に入力され、検出回路40は、エラー検出回路41により、フォーカスエラー(FE)信号をフォーカス制御回路52に、トラッキングエラー(TE)信号をトラッキング制御回路53に、チルトエラー(TE)信号をチルト制御回路54にそれぞれ出力し、フォーカスドライバ62、トラッキングドライバ63及びチルトドライバ64を介して、アクチュエータ17において、フォーカス制御、トラッキング制御及びチルト制御を実行する。
【0048】
アクチュエータ17は、記録再生用対物レンズ22を通った光ビームが、目的の記録層に合焦するように記録再生用対物レンズ22のフォーカス方向の位置を制御するが、同時に、サーボ用対物レンズ32も記録再生用対物レンズ22と同期して駆動する。従って、サーボ用光ビームがサーボ層13に合焦しても、目的の記録層に再生用光ビームが合焦しないこともある。
【0049】
一方、検出回路40のエラー検出回路41からのフォーカスジャンプ信号が、フォーカスジャンプ制御回路55に出力され、フォーカスジャンプドライバ65を介して、記録再生用対物レンズ22を、微小駆動装置18を介してフォーカス方向に、サーボ用対物レンズ32に対して相対的に微小駆動し、目的の記録層に再生用光ビームを合焦させる素早いフォーカス制御を実行される。
【0050】
従って、この実施例では、サーボ用対物レンズ32に対して、記録再生用対物レンズ22を相対的に、フォーカス方向に微小駆動することにより、サーボ用光ビームと再生用光ビームとを同一の対物レンズを介して同時に照射した場合と比較して、再生用光ビームを迅速にフォーカシングできると共に、多層光記録媒体12の層間迷光の影響を受け難く、再生層の情報と記録層の情報の分離を確実に行ない、且つ情報再生の高速化を図ることができる。また、信号記録再生用光学系20により、多層光記録媒体12に、情報を記録する場合も、情報記録の高速化を図ることができる。
【0051】
なお、上記実施例1において、サーボ信号検出用光学系30におけるサーボ用対物レンズ32が、信号処理再生用光学系20における記録再生用対物レンズ22に対して相対的に微小駆動できるようにされているが、本発明はこれに限定されるものでなく、サーボ用対物レンズ32側にのみ微小駆動装置を設けても良い。この場合、再生用光ビームをいずれかに合焦させると同時に、微小駆動装置によってサーボ用光ビームをサーボ層13に合焦させることになる。又、記録再生用対物レンズ22とサーボ用対物レンズ32の両方を微小駆動装置によって駆動できるようにしてもよい。
【0052】
また、微小駆動装置に代えて、記録再生用対物レンズ22及びサーボ用対物レンズ32の一方又は両方の焦点位置を変化できる焦点位置可変機構を用いても良い。この焦点位置可変機構として、図4に示されるように、どちらか一方の対物レンズを液体レンズ80(例えば、フランス国Varioptic社製)を用いて焦点距離可変として、各対物レンズの焦点距離を相対的にずらして、各記録層へフォーカスジャンプを行っても良い。
【0053】
液体レンズ80は、透明で平行な一対の基板80A、80Bの間に、ほぼ平行に水溶液層80C及びオイル層80Dを設け、水溶液80Cにはカソード電極80E、オイル層80Dにはアノード電極80Fを接続し、透過光が、電圧を印加しないときは発散光となり(図4(A)参照)、電圧を印加したときは、収束光(図4(B)参照)となるように、2つの層の境界が変化するようにしたものである。
【0054】
更に、焦点位置可変機構は、図5に示されるように、少なくとも一方の光学系のコリメートレンズ、例えばコリメートレンズ27を光軸方向に移動させるコリメートレンズ移動機構82としてもよい。このコリメートレンズ移動機構82は、ソレノイド82Aにより、コリメートレンズ27のレンズホルダー82Bを介して、コリメートレンズ27を光軸方向に駆動するものである。
【0055】
又、図6に示されるように、コリメートレンズを前記液体レンズ80と同様の構成の液体レンズ84とする構成としてもよい。この場合、アクチュエータに微小駆動装置などを搭載しないので、アクチュエータが大型にならない利点がある。
【0056】
更に又、図7に示されるようにどちらかの光学系にエキスパンダーレンズ86を設置して、フォーカスジャンプをするようにしても良い。エキスパンダーレンズ86は、ビーム径を拡大するものであり、凹レンズ86Aと凸レンズ86Bとを組合せて(凸レンズと凸レンズでもよい)、これらの間隔を調整することにより、記録再生用対物レンズ22に入射する光の発散収束度合いを補正するものである。ここでは、凸レンズ86Bがコリメートレンズ移動機構82と同様にソレノイド86Cとレンズホルダー86Dの組合せによって光軸方向に移動されるようになっている。この場合もアクチュエータに微小駆動装置などを搭載しないので、アクチュエータが大型にならない利点があり、かつ、エキスパンダーレンズ86の動作が小さくても大きい量のフォーカスジャンプを行うことができる。
【0057】
なお、上記実施例は、本発明を、多層光記録媒体の記録再生システム及びこれに用いる光ヘッド装置に適用したものであるが、本発明はこれに限定されず、記録を行わない再生システム、あるいはこれに用いられる再生用光ヘッド装置についても適用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係る光ヘッド装置を含む多層光記録媒体記録再生システムを示すブロック図
【図2】同実施例における多層光記録媒体と光ヘッドにおける記録再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの位置関係を模式的に示す一部断面とした斜視図
【図3】同実施例1における光ヘッドの光学系及び回路を示すブロック図
【図4】同実施例における焦点位置可変機構を液体レンズとした場合の要部を模式的に示す断面図
【図5】同焦点位置可変機構を、コリメートレンズ移動機構とした場合の要部を模式的に示す断面図
【図6】同焦点位置可変機構を、コリメートレンズを液体レンズに代えた構成とした場合の要部を模式的に示す断面図
【図7】同焦点位置可変機構を、エキスパンダレンズとした場合の要部を模式的に示す断面図
【符号の説明】
【0059】
10…多層光記録媒体記録再生システム
12…多層光記録媒体
12A、12B、12C、12D…記録層
13…サーボ層
13A…位置確認用トラック
14…多層光記録媒体用光ヘッド装置(光ヘッド)
15…駆動装置
17…アクチュエータ
18…微小駆動装置
20…信号記録再生用光学系
22…記録再生用対物レンズ
30…サーボ信号検出用光学系
32…サーボ用対物レンズ
40…検出回路
50…制御装置
51…制御回路
70…信号処理回路
80、84…液体レンズ
82…コリメートレンズ移動機構
86…エキスパンダーレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号再生用対物レンズを含む信号再生用光学系及びサーボ用対物レンズを含むサーボ信号検出用光学系を有してなり、複数の記録層と一つのサーボ層とを有する多層光記録媒体に、前記信号再生用対物レンズを介して再生用光ビームを照射し、且つ、その反射光を受光し、前記サーボ用対物レンズを介してサーボ用光ビームを照射し、且つ、その反射光を受光する光ヘッド装置であって、
前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズが同一のアクチュエータに搭載されていて、且つ、これら信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方が、焦点位置可変機構により焦点位置移動可能とされたことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
請求項1において、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方を、前記アクチュエータに、フォーカス方向に微小駆動可能に搭載する微小駆動装置であることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの少なくとも一方を焦点距離可変レンズとすることにより構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系は、各々コリメートレンズを備え、前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方のコリメートレンズを光軸方向に駆動するコリメートレンズ駆動装置であることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方のコリメートレンズを、焦点距離可変レンズとすることにより構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記焦点位置可変機構は、前記信号再生用光学系及びサーボ信号検出用光学系の少なくとも一方の光学系に設置された、フォーカスジャンプ可能なエキスパンダーレンズによって構成されたことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光ヘッド装置と、複数の記録層と一つのサーボ層とを有する多層光記録媒体と、を含む多層光記録媒体再生システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズは、その中心光軸が前記多層光記録媒体における同一のトラックに対応する位置で、且つ、トラックの長手方向に沿って配置されたことを特徴とする多層光記録媒体再生システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記多層光記録媒体における前記サーボ層に、前記再生用対物レンズ及びサーボ用対物レンズの位置確認用トラックを設けたことを特徴とする多層光記録媒体再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−92529(P2010−92529A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260102(P2008−260102)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】