説明

光メディア、光メディア用スパッタリングターゲット、および、これらの製造方法

【課題】高屈折率でありかつ光メディアの保存性を十分に確保できる干渉層を有する光メディア、この干渉層の製造に用いるスパッタリングターゲット、及び、光メディアの製造方法を提供する。
【解決手段】光記録層24と、光記録層24の上、及び/又は、下に配置された干渉層22と、を備える光メディア200である。干渉層22は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光メディア、光メディア用スパッタリングターゲット、および、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットを用いたスパッタリングにより反射層を基板上に形成し、この反射層上に光記録層や、読取や書込み時に光が透過する透明カバー層等をさらに形成することにより製造される光ディスク(例えば、BD(ブルーレイ・ディスク)−ROM、BD−R、BD−RE等)、光カード等の光メディアが知られている。このような光メディアでは、光記録層の上側及び/又は下側に、記録の前後における光記録層の光学特性(例えば、反射率の差)の差を拡大する役割を果たす干渉層を設ける場合がある。
【0003】
そして、このような干渉層としては主として無機材料が用いられ、また、このような干渉層はスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により行われることが多い。例えば、特許文献1、2、3には、ZnOを主成分とする干渉層(保護層)及びスパッタリングターゲットが開示されている。また、特許文献4に開示されているように、干渉層材料としては多くの材料が提案されており、屈折率の高い材料の採用(特許文献5)や、硫黄を含まない材料(特許文献6)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−195101号公報
【特許文献2】特許3841388号公報
【特許文献3】特許3533333号公報
【特許文献4】特開2003−091872号公報
【特許文献5】特開2001−184722号公報
【特許文献6】特開2004−171623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、光メディアに対して光記録層の多層化による高密度記録化が求められるようになっている。したがって、干渉層を薄型化するために高い屈折率を有する干渉層を使用することがある。しかしながら、従来の高屈折率の干渉層では、光メディアの保存性が十分でなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高屈折率でありかつ光メディアの保存性を十分に確保できる干渉層を有する光メディア、この干渉層の製造に用いるスパッタリングターゲット、及び、光メディアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、光メディアは、光記録層と、この光記録層の上、及び/又は、下に配置された干渉層と、を備える。そして、この干渉層は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる。
【0008】
本発明によれば、干渉層の屈折率が2.3以上となるので、干渉層を薄くしても光記録の前後における光記録層の光学特性の差を拡大することができる。しかも、高屈折率の干渉層であっても、光メディアの保存性に優れる。この理由は明らかでは無いが、本発明者等は以下のように考えている。すなわち、本発明の干渉層は、従来の高屈折率な干渉層に比してその膜応力が小さく柔軟性に優れるためか、保存試験を経過しても光メディアにおける干渉層にクラックや剥離が発生しにくくなっており、これにより、保存性が優れるものと考えられる。
【0009】
ここで、光記録層は、少なくとも2つの反応層を有し、一の反応層の構成元素及び他の反応層の構成元素は、書込用のレーザビームの照射により互いに混合しうるものであることが好ましい。
【0010】
また、光記録層は、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、Ag、BiおよびPtからなる群より選ばれた一つの材料を主成分とする反応層と、上記群より選ばれた他の材料を主成分とする反応層とを有する、ことが好ましい。
【0011】
これらのような光記録層を有すると、特に、干渉層によって光記録の前後における光記録層の光学特性の差を拡大しやすい。
【0012】
また、干渉層の厚みが10〜100nmであることが好ましい。この場合、従来よりも干渉層が薄いので、成膜時間を低減できる。
【0013】
また、光記録層及び干渉層の組合せを複数備えることが好ましい。これにより、十分な高密度記録が可能となる。
【0014】
本発明に係る光メディア用スパッタリングターゲットは、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる。
【0015】
本発明によれば、上述の光メディアの干渉層をスパッタリング法により容易に成膜できる。特に、この組成のスパッタリングターゲットは、比抵抗を1Ωcm以下とすることが出来るので、DCスパッタリングも可能であり生産性がよい。
【0016】
また本発明にかかる光メディアの製造方法は、光記録層と、光記録層の上、及び/又は、下に配置された干渉層と、を備える光メディアの製造方法であって、上述の光メディア用スパッタリングターゲットを用いたスパッタリングにより前記干渉層を成膜する工程を備える。
【0017】
これにより、上述の光メディアを好適に製造できる。
【0018】
また、本発明に係る光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる組成を有する原料粉体を焼成する工程を備える。
【0019】
本発明によれば、上述のスパッタリングターゲットを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、干渉層の薄型化が可能でありかつ十分な光メディアの保存性を確保できるので、記録密度のさらなる向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施形態に係る光ディスク200の断面図である。
【図2】図2は、追記型の場合の光記録層の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
(光ディスク200)
図1を参照して、本実施形態に係る光ディスク(光メディア)200について説明する。
【0024】
光ディスク200は、例えば、BD−RやBD−REといわれる書き込みが可能なディスクである。具体的なサイズとしては、例えば、外径が約120mm、厚みが約1.2mmである円盤状をなすことができる。この光ディスク200は、支持基板(基板)10、反射層20A、干渉層22、光記録層24、干渉層22、中間層30、反射層20B、干渉層22、光記録層24、干渉層22、透明カバー層40、及び、トップコート層50、を備えて構成されているものである。すなわち、この光ディスク200は、干渉層22/光記録層24/干渉層22という積層体を2層有する。本実施態様にかかる光ディスク200は、波長λが380nm〜450nm、好ましくは約405nmであるレーザビームLBを支持基板10とは反対側のトップコート層50側から入射することによってデータの記録や、必要に応じて読み取りを行うことが可能な光ディスクである。
【0025】
支持基板10は、光ディスク200に求められる厚み(約1.2mm)を確保するために用いられる円盤状の基板であり、その一方の面には、その中心部近傍から外縁部に向けて、レーザビームLBをガイドしたり記録用の凹凸の下地となるためのグルーブG及びランドLが螺旋状に形成されている。支持基板10の材料としては種々の材料を用いることが可能である。例えば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂を用いることができる。これらのうち、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、加工性などの点からポリカーボネート樹脂やオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0026】
反射層20Aは、トップコート層50の表面である光入射面SSから入射されるレーザビームLBを反射し、再びトップコート層50の表面である光入射面SSから出射させる役割を果たすとともに、レーザビームLBによる熱を速やかに放熱する役割を果たす。これにより、レーザビームLBに対する光反射率が高められるため再生特性を向上させることができる。反射層20Aの組成は、特に限定されないが、例えば、銀合金とすることができる。
【0027】
反射層20Aの厚さは特に限定されないが、例えば、5〜300nmに設定することができる。
【0028】
干渉層22、22は、記録の前後における光記録層24の光学特性(例えば、反射率)の差を拡大する役割を果たすものである。本実施形態において、干渉層22の組成は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる。TiOは通常ルチル型である。なお、干渉層22は、不可避的不純物を含むことができる。不可避不純物としては、例えば、SiO、Al等が挙げられ、それぞれ、1000mass ppm程度まで許容することができる。
【0029】
干渉層の厚みは特に限定されないが、記録層を2層以上に多層化する観点からは、好ましくは3〜200nm程度の薄型のものが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。
【0030】
上述のような薄型の干渉層を実現する場合、記録の前後における光記録層24の光学特性(例えば、反射率)の差を拡大するためには、使用されるレーザビームLBの波長領域、すなわち、380nm〜450nm、特に約405nmにおいて干渉層22の屈折率が2.3以上である必要があるが、上記組成を有することによりそれを満たすことができる。
【0031】
また、記録層を2層以上に多層化した場合に、干渉層22によってレーザビームが過度に減衰しないように、380nm〜450nm、特に約405nmにおいて干渉層22は0.005以下の吸収係数を有することが好ましいが、上述の組成を有することにより、これを満たすことができる。
【0032】
なお、本実施形態では、光記録層24の両側に干渉層22がそれぞれ配置されているが、干渉層22が光記録層24のいずれか一方側のみに配置されていても実施は可能である。
【0033】
また、干渉層22は、光記録層24を物理的及び/又は化学的に保護する役割をも果たす場合もある。この場合、光記録層24はこれら干渉層22間に覆われることによって、光記録後、長期間にわたって記録情報の劣化が効果的に防止されることができる。
【0034】
尚、光記録層24を挟む一対の干渉層22、22は、互いに同じ組成で構成されてもよいが、異なる組成で構成されてもよい。また、一対の干渉層22、22の少なくとも一方が、さらに他の干渉層を有する多層構造であっても構わない。
【0035】
光記録層24は記録マークが形成されうる層であり、無機系、有機系等種々のものが採用できる。例えば、無機系では、金属又は合金層の単層膜、複数の金属又は合金層を積層した積層膜(例えば、Si層と、銅合金層との積層構造)が挙げられ、有機系では、アゾ色素等の有機色素層等が挙げられる。
【0036】
記録用のレーザビームLBの焦点が光記録層24にフォーカスされると、熱により、アブレーション、相変化、溶融、混合、拡散、分解等をおこすことにより、記録マークが形成できる。このとき、光記録層において記録マーク部分とそれ以外の部分(ブランク領域)とでは再生用のレーザビームLBに対する反射率が大きく異なるため、これを利用してデータの記録・再生を行うことができる。
【0037】
特に、本発明では、光ディスク200が、光記録層24に不可逆的に記録マークが形成される、いわゆる、追記型の光ディスク200(例えば、BD−R等)であると特に好適である。この場合、光記録層24は、図2に示すように、少なくとも2以上の反応層24a、24b等を有する積層構造を備えている。光記録層24のうち未記録状態である領域は、複数の反応層24a,24b等が積層された状態になっているが、所定以上のパワーを持つ書込用レーザビームが照射されると、その熱によって、それぞれの反応層を構成する元素同士が部分的または全体的に混合されて記録マークとなる。このとき、記録マークが形成された部分とそれ以外の部分(ブランク領域)とでは、レーザビームに対する反射率が大きく異なるため、これを利用してデータの記録・再生を行うことができる。すなわち、書込用のレーザビームの照射により、一の反応層の構成元素は、他の反応層の構成元素と互いに混合しうるものである。
【0038】
このような反応層に用いる材料としては、合金や金属等の無機材料が挙げられ、特にアルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭素(C)、錫(Sn)、金(Au)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)および白金(Pt)からなる群より選ばれた一つの材料を主成分とするものが挙げられ、この場合、もう一方の反応層の材料としては上記群より選ばれた他の材料を主成分とすることが好ましい。特に、再生信号のノイズレベルをより低く抑えるために、一方の反応層の主成分がCu,Al,Zn及びAgから選択される一つであり、他方の反応層の主成分がSi,Ge及びSnから選択される1つであることが好ましい。なお、反応層の積層順は特に限定されない。ここで、主成分とは、最大モル比の成分である。
【0039】
また、これらの反応層24a,24b等は、互いに接触していることが好ましい。また、反応層は3層以上でもよい。
【0040】
このような光記録層24の膜厚は、特に限定されないが、厚くなればなるほどレーザビームのビームスポットが照射される表面の平坦性が悪化し、これに伴って再生信号のノイズレベルが高くなると共に、記録感度も低下する。また薄くしすぎると、記録前後のおける反射率の差が小さくなり、再生時に高いレベルの再生信号(C/N比)を得ることが出来なくなる。この点を考慮すれば、光記録層24の膜厚は、上述と同様に、2〜40nmに設定する事が好ましく、2〜20nmであることがより好ましく、2〜15nmであることがさらに好ましい。
【0041】
また、反応層のそれぞれの膜厚は特に限定されないが、それぞれの膜厚比(反応層24a/反応層24b)は、1.0付近が好ましい。
【0042】
中間層30は、レーザビームLBに対して透明な層である。中間層の材料も特に限定されないが、例えば、樹脂材料が挙げられ、特に、UV硬化樹脂が挙げられる。中間層30の厚みは、平均20〜30μm程度であることが好ましい。中間層30の表面にも、支持基板10と同様に、グルーブGとランドLとが形成されている。
【0043】
反射層20Bも反射層20Aと同様の膜である。反射層20Bは、レーザビームLBの一部を透過させる必要があるので、反射層20Aよりも薄いことが好ましい。
【0044】
透明カバー層40は、レーザビームLBに対して透明な層である。透明カバー層40の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂材料が挙げられる。厚みは、例えば、50〜100μm程度である。
【0045】
トップコート層50は、光ディスク200の表面の保護を行うものである。トップコート層50の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等を利用できる。
【0046】
次に、このような追記型の光ディスク200に対するデータの記録原理について図1を参照して説明する。このような光ディスク200に対してデータを記録する場合、光ディスク200に対して強度変調されたレーザビームLBをトップコート層50等の光透過層側から入射し光記録層24に照射する。
【0047】
このとき、レーザビームLBを集束するための対物レンズの開口数(NA)は、通常、0.7以上、レーザビームLBの波長λは380nm〜450nmに設定され、好ましくは、対物レンズの開口数(NA)は0.85程度、レーザビームLBの波長λは405nm程度に設定される。通常、このようにして、(λ/NA)<640nmに設定される。
【0048】
このようなレーザビームLBが光記録層24に照射されると、光記録層24が加熱され、光記録層24の材料のアブレーション、分解、相変化等が起こったり、複数の反応層24a,24bを構成する元素が互いに混合、拡散されたりして、光記録層に、物理的な変化や、化学的な変化が起こる。かかる変化部分は記録マークとなり、その反射率はそれ以外の部分(ブランク領域)の反射率と異なった値となることから、これを利用してデータの記録・再生を行うことが可能となる。
【0049】
このような光ディスク200は、上述の干渉層22を有していることから、干渉層22の屈折率が高くなり、例え、干渉層22が薄くても記録の前後における光記録層24の光学特性(例えば、反射率)の差を十分拡大でき、記録マークを読み取りやすくなる。さらに、従来の高屈折率の干渉層では高温高湿保存試験後のジッターが劣化する傾向が強いが、本実施形態の干渉層では高温高湿保存試験後のジッターの劣化も少ない。その理由は明らかではないが、本実施形態の干渉層は、その膜応力が小さく柔軟性に優れるためか、保存試験後も干渉層にクラックや剥離が発生しにくいことがひとつの要因として考えられる。さらに、干渉層22の吸収係数も低いことから、光記録層24を多層にした場合でも下層側の光記録層24の読み取り等が困難になりにくい。
【0050】
なお、上記の光ディスク200は、光記録層24及びこれを挟む一対の干渉層22を有する積層体を2組有する、いわゆる2層記録型のものであるが、この組合せを1つのみ有する1層記録型のものや、3つ以上有する多層記録型のものでも実施は可能である。
【0051】
これらの光ディスクは、例えば、後述するスパッタリングターゲットを用いて干渉層22を形成することにより製造できる。また、スパッタリング方法も特に限定されない。好適なスパッタリング方式は、DCスパッタリング法である。
【0052】
(光メディア用スパッタリングターゲット)
続いて、本実施形態に係る光メディア用スパッタリングターゲットについて説明する。本実施形態に係る光メディア用スパッタリングターゲットの組成は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOからなる。なお、この光メディア用スパッタリングターゲットは、不可避的不純物を含むことができる。不可避不純物としては、例えば、SiO、Al等が挙げられ、それぞれ、1000mass ppm程度まで許容することができる。
【0053】
ターゲットの形状や大きさ等は特に限定されず、例えば、直径127〜300mm程度の円板とすることができる。
【0054】
ターゲット中における組織の形態は特に限定されないが、例えば、ZnOの海構造中にTiOが島となっている構造をとることができる。
【0055】
本実施形態によれば、上述の光メディアの干渉層をスパッタリング法により容易に成膜できる。特に、この組成のスパッタリングターゲットは、比抵抗を1Ωcm以下とすることが出来るので(好ましくは、0.001Ωcm以上)、DCスパッタリングも可能であり生産性がよい。
【0056】
(光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法について)
続いて、上述の光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法の一例について説明する。
【0057】
上述の元素組成を満たす原料粉体を用意する。例えば、TiO粉、Ti粉、ZnO粉、Zn粉等を上述のモル組成を満たすように混合した混合物を原料粉体として用いることができる。好ましくは、酸化物を原料とすることが好ましい。TiO粉としては、ルチル型、アナターゼ型のいずれを使用してもよい。アナターゼ型のTiOを使用した場合でも、焼成において概ね915℃以上になると、ルチル型となる。
【0058】
原料粉体の粒度は特に限定されないが、5μm以下であることが好ましく、平均粒子径は0.5μm程度であることが好ましい。平均粒子径は、レーザー干渉型粒度測定装置によりより得られた体積基準の粒度分布におけるd50として測定することができる。純度は99.9wt%以上であることが好ましい。
【0059】
原料粉体の混合には、乾式混合または湿式混合のどちらも用いることができる。
【0060】
続いて、Nガス、Arガス等の不活性雰囲気中または真空中で高温高圧をかけて原料粉体を焼成する。焼成条件としては、例えば、圧力は、100〜500kgf/cm、温度は、400〜1200℃である。
【0061】
続いて、得られた焼結体を所定の大きさに切断等の加工をして、スパッタリングターゲットが完成する。
【0062】
なお、本発明のスパッタリングターゲットの焼結法はHP(ホットプレス)焼成方法を用いなくて、室温にて成形後、大気圧中常圧焼成により製造することもできる。
【0063】
本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では光メディアとしてBDを例示しているが、BD以外の光ディスクでもよい。また、上記実施形態では光メディアとして円板形状の光ディスクを例示しているが、光メディアの平面形状は特に限定されず、例えば、矩形形状をした光カードでもよい。
【実施例】
【0064】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
平均粒子径が0.5μmであり、かつ、純度99.9質量%の、TiO粉、ZnO粉、ZnS粉、Al粉、SiO粉、Cr粉を用い、各粉を表1に示す組成となるように秤量し、乾式で混合し、各実施例及び比較例について混合粉体をそれぞれ得た。
なお、実施例6では、アナターゼ型のTiO粉を使用し、それ以外の実施例1−5及び比較例3−5ではルチル型のTiO粉を使用した。そして、各混合粉体を、真空中で焼成した。焼成圧力は、圧力200kgf/cmとした。温度プロファイルは、500℃まで120分間で昇温、その後500℃に30分間維持、その後1100℃まで150分間で昇温、その後1100℃に60分間維持し、その後室温まで徐冷とした。
そして、得られた焼結体を、円筒研磨機および平面研磨機により200mmφ、厚さ6mmに成形してそれぞれスパッタリング用ターゲットを得た。
【0065】
続いて、厚さ:1.1mm、直径:120mmであって、グルーブG及びランドLが螺旋状に形成されたポリカーボネート製の支持基板10をスパッタリング装置にセットし、この支持基板10上に、銀(Ag)を主成分としこれに0.5at%のニオブ(Nb)および0.5at%のアルミニウム(Al)が添加された材料からなる反射層20A(層厚:80nm)、干渉層22(層厚:30nm)、銅(Cu)を主成分としこれにアルミニウム(Al)が23at%添加された反応層24b(層厚:6nm)、シリコン(Si)からなる反応層24a(層厚:5nm)、干渉層22(層厚:20nm)を順次スパッタ法により形成した。ここで、干渉層は、それぞれ各実施例で用意したターゲットを用いてスパッタリングにより成膜した。
続いて、干渉層22上に、表面に螺旋状グルーブG及びランドLを有する中間層30をアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成し、さらに、上述と同様の組成の、反射層20B(層厚:30nm),干渉層22(層厚:25nm)、反応層24b(層厚:6nm)、反応層24a(層厚:5nm)、干渉層22(層厚:15nm)を順次スパッタ法により形成した。
【0066】
次に、干渉層22上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して透明カバー層40(層厚:100μm)を形成し、実施例1〜6、比較例1〜6のBD−R型の光メディアを作製した。
【0067】
(実施例7、8)
実施例7では、干渉層の厚みを10nmとする以外は実施例1と同様にした。実施例8では、干渉層の厚みを100nmとする以外は実施例1と同様にした。
【0068】
[屈折率の測定]
各実施例、比較例の干渉層の屈折率は、干渉計により測定した。
[電気抵抗値の測定]
各実施例、比較例のスパッタリングターゲットの電気抵抗値(比抵抗)は、接触抵抗計により測定した。
[吸収係数の測定]
各実施例、比較例の干渉層の吸収係数は、干渉計により測定した。
[保存試験後のジッター]
各実施例、比較例の光メディアの下側、すなわち、支持基板10に近い側の記録層24に対して信号を記録した後、80℃80%Rhの条件とされた高温高湿槽に100時間保持し、その後、下側の記録層に記録された信号を読み取ってジッターを調べた。信号の記録及び読取には、パルステック社製のODU-1000を用い、具体的には、線速3.9m/sで適切な記録パワーで信号を記録して、その信号を同じ線速で再生し、ジッター特性を測定した。
【0069】
これらの結果を表1に示す。実施例1〜6の光メディアでは、記録層のジッターの劣化は見られなかったが、比較例1〜6では、記録層のジッターが10%を超え、データを正常に再生出来ない状況となった。
【0070】
【表1】

【符号の説明】
【0071】
10…支持基板、20A,20B…反射層、22…干渉層、24…光記録層、24a,24b…反応層、200…光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録層と、
前記光記録層の上、及び/又は、下に配置された干渉層と、を備え、
前記干渉層は、45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる光メディア。
【請求項2】
前記光記録層は、少なくとも2つの反応層を有し、一の前記反応層の構成元素及び他の前記反応層の構成元素は、書込用のレーザビームの照射により互いに混合しうるものである請求項1記載の光メディア。
【請求項3】
前記光記録層は、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、Ag、BiおよびPtからなる群より選ばれた一つの材料を主成分とする反応層と、前記群より選ばれた他の材料を主成分とする反応層とを有する、請求項1又は2記載の光メディア。
【請求項4】
前記干渉層の厚みが10〜100nmである請求項1〜3の何れか記載の光メディア。
【請求項5】
前記光記録層及び前記干渉層の組合せを複数備える請求項1〜4の何れか記載の光メディア。
【請求項6】
45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる光メディア用スパッタリングターゲット。
【請求項7】
光記録層と、前記光記録層の上、及び/又は、下に配置された干渉層と、を備える光メディアの製造方法であって、
請求項6の光メディア用スパッタリングターゲットのスパッタリングにより前記干渉層を成膜する工程を備える方法。
【請求項8】
45〜90mol%のTiOと、残部のZnOと、からなる組成を有する原料粉体を焼成する工程を備える光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−165230(P2011−165230A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23356(P2010−23356)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】