説明

光モジュール及びその製造方法

【課題】光モジュールのレンズ付き光透過部材を接着剤により容易にレセプタクルに接着する。
【解決手段】レンズ付き光透過部材(レンズ付きガラス3)とレセプタクル2を備える。レセプタクル2は、光コネクタ差込部11と、レンズ付き光透過部材固定部(レンズ付きガラス固定部12)と、発光素子又は受光素子である半導体素子5が取り付けられる素子取付部13を、この順の配列で同軸上に備える。レンズ付き光透過部材固定部は素子取付部13に連通している。レンズ付き光透過部材は本体部31とレンズ32を備える。本体部31は、外径がレンズ付き光透過部材固定部の内径に略等しい第1部分(端部31a)と、第1部分よりも小径であり、且つ少なくとも本体部31における素子取付部13側の端部を含む部分である第2部分(本体部31における端部31a以外の部分31b)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
XFP(10Gb/s small form factor pluggable)等の光トランシーバに搭載される同軸型送信又は受信用光モジュールは、通信距離が10km〜40kmのテレコム(電話系)用途と220m〜10kmのデータコム(データ通信)用途に分かれる。
【0003】
このような同軸型送信又は受信用光モジュールは、例えば、特許文献1に開示されている。図9は、特許文献1の光モジュールの構成を示す断面図である。
【0004】
図9に示すように、特許文献1の光モジュール101は、レセプタクル102と、レンズ付きガラス103と、を備えている。レンズ付きガラス103は、光学研磨又は型成型により、その一方の端面は球面のレンズ103aに形成され、他方の端面103bは平面に形成されている。このレンズ付きガラス103は、レセプタクル102内の光コネクタ挿入穴104内に固定されている。そして、光コネクタ105を光コネクタ挿入穴104に挿入することにより、該光コネクタ105の端面をレンズ付きガラス103の端面103bに突き当てることができるようになっている。また、レセプタクル102において、レンズ付きガラス103を基準として、光コネクタ105が差し込まれるのとは反対側の部分には、例えば、LD(レーザダイオード)パッケージ106が固定されている。このLDパッケージ106内のLDペレット107からの出射光は、レンズ103aにより集光され、光コネクタ105内の光ファイバ108に結合される。
【0005】
テレコム用途の光モジュールには、例えばSONET OC−48で光反射減衰量が27dB以上であることが要求される。このため、図9に示すように光コネクタ105がレンズ付きガラス103に突き当てられ、これらが相互にフィジカルコンタクトする構造が適用される。レンズ付きガラス103は、レセプタクル102の光コネクタ挿入穴104内に、低融点ガラスを用いた接着により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−243179号公報
【特許文献2】特開2004−37478号公報
【特許文献3】特開平10−260336号公報
【特許文献4】特開2006−323132号公報
【特許文献5】特開平11−54849号公報
【特許文献6】米国特許公報第7160039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような構造(図9)の光モジュール101の場合、レセプタクル102を低コスト化するためにはレセプタクル102を樹脂で構成する方が良い。しかし、低融点ガラスでレンズ付きガラス103をレセプタクル102に固定する場合、低融点ガラスの融点が400℃付近であるため、レセプタクル102を樹脂で構成することはできず、金属等により構成する必要がある。
【0008】
レンズ付きガラス103を低融点ガラスではなく接着剤で固定する方法も考えられるが、特許文献1のような構造の場合には、接着剤の注入ないしは塗布が困難であるため、接着強度が不十分になることがある。加えて、レンズ103aの表面、或いは、光コネクタ105とフィジカルコンタクトする端面103bが、接着剤の付着により汚されるために、光路が妨げられることもある。特許文献1のような構造(図9)の光モジュール101では、接着剤を注入してレンズ付きガラス103をレセプタクル102に固定するのが困難であるということについては、特許文献2でも指摘されている。
【0009】
このように、レンズ付きガラスなどのレンズ付き光透過部材を接着剤により容易にレセプタクルに接着できるようにすることは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レンズ付き光透過部材と、レセプタクルと、を備え、前記レセプタクルは、光コネクタが差し込まれる光コネクタ差込部と、前記レンズ付き光透過部材が内部に固定されるレンズ付き光透過部材固定部と、発光素子又は受光素子である半導体素子が取り付けられる素子取付部と、をこの順の配列で同軸上に備え、前記レンズ付き光透過部材固定部は、前記素子取付部に連通しており、前記レンズ付き光透過部材は、本体部と、前記本体部の一端に設けられているレンズと、を備え、前記レンズ付き光透過部材の前記本体部は、外径が前記レンズ付き光透過部材固定部の内径に略等しい第1部分と、前記第1部分よりも小径であり、且つ、少なくとも当該本体部における前記素子取付部側の端部を含む部分である第2部分と、を備えることを特徴とする光モジュールを提供する。
【0011】
この光モジュールによれば、レンズ付き光透過部材の第2部分が第1部分よりも小径であるため、少なくとも第2部分とレンズ付き光透過部材固定部との隙間に、素子取付部側から接着剤を充填する作業を、容易に行うことができる。よって、レンズ付き光透過部材を接着剤により容易にレセプタクルに接着することができる。このため、レセプタクルを(融点の高い金属等ではなく)樹脂により構成することができるので、光モジュールの低コスト化を図ることもできる。しかも、図9の構造よりも接着剤の塗布可能領域が増大し、レンズ付き光透過部材とレンズ付き光透過部材固定部との接着面積が広くなるので、これらの接着強度を高めることができる。加えて、レンズ付き光透過部材の第2部分とレンズ付き光透過部材固定部との隙間に接着剤を容易に塗布できるため、レンズ付き光透過部材のうち、レンズと、光コネクタが突き当てられる端面と、が接着剤で汚れないようにできる。よって、この汚れにより光路が妨げられる可能性を低減できる。しかも、レンズ付き光透過部材の第1部分の外径は、レンズ付き光透過部材固定部の内径に略等しいため、レンズ付き光透過部材固定部内へのレンズ付き光透過部材の位置決めを容易に行うことができるとともに、接着剤の硬化中に、レンズ付き光透過部材がレンズ付き光透過部材固定部内においてずれ動いてしまうことを好適に抑制することができる。よって、収差増大による光学特性劣化を抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、本発明の光モジュールの前記レンズ付き光透過部材を、前記レンズ付き光透過部材固定部に挿入する工程と、前記レンズ付き光透過部材を接着剤により前記レンズ付き光透過部材固定部に接着することによって固定する工程と、をこの順に行うことを特徴とする光モジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レンズ付き光透過部材を接着剤により容易にレセプタクルに接着できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る光モジュールを示す断面図であり、特に、光コネクタを差し込んだ状態を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る光モジュールが備えるレンズ付きガラスを示す図であり、このうち図2(a)は正面図、図2(b)は図2(a)の下側から見た図である。
【図3】第1の実施形態に係る光モジュールのレセプタクルにレンズ付きガラスを固定する工程の一例を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る光モジュールが備えるレンズ付きガラスを示す図であり、このうち図4(a)は正面図、図4(b)は図4(a)の下側から見た図である。
【図5】軸方向において直線状に形成されているレンズ付きガラスを示す図であり、このうち図5(a)は正面図、図5(b)は図5(a)の下側から見た図である。
【図6】図5のレンズ付きガラスをレセプタクルに固定する工程を示す光モジュールの断面図である。
【図7】図5のレンズ付きガラスをレセプタクルに固定した状態を示す断面図であり、このうち図7(a)はレンズ付きガラス固定部の中心に、図7(b)はレンズ付きガラス固定部の中心からずれた位置に、それぞれ固定された状態を示す。
【図8】図5のレンズ付きガラスを、該レンズ付きガラスとほぼ同径のレンズ付きガラス固定部に固定する工程を示す光モジュールの断面図である。
【図9】特許文献1の光モジュールを示す断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る光モジュールが備えるレンズ付きガラスの変形例を示す図であり、このうち図10(a)は正面図、図10(b)は図10(a)の下側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る光モジュール1の構成を示す断面図であり、特に、光コネクタ4を差し込んだ状態を示す図である。図2は光モジュール1が備えるレンズ付きガラス3の構成を示す図であり、このうち図2(a)は正面図、図2(b)は図2(a)の下側からレンズ付きガラス3を見た図である。図3は光モジュール1のレセプタクル2にレンズ付きガラス3を取り付ける工程の一例を示す断面図である。
【0017】
本実施形態に係る光モジュール1は、レンズ付き光透過部材(例えば、レンズ付きガラス3)と、レセプタクル2と、を備える。レセプタクル2は、光コネクタ4が差し込まれる光コネクタ差込部11と、レンズ付き光透過部材が内部に固定されるレンズ付き光透過部材固定部(例えば、レンズ付きガラス固定部12)と、発光素子又は受光素子である半導体素子5が取り付けられる素子取付部13と、をこの順の配列で同軸上に備える。レンズ付き光透過部材固定部は、素子取付部13に連通している。レンズ付き光透過部材は、本体部31と、本体部31の一端に設けられているレンズ32と、を備える。レンズ付き光透過部材の本体部31は、外径がレンズ付きガラス固定部12の内径に略等しい第1部分(例えば、端部31a)と、第1部分よりも小径であり、且つ、少なくとも当該本体部31における素子取付部13側の端部を含む部分である第2部分(例えば、本体部31における端部31a以外の部分31b)と、を備える。また、本実施形態に係る光モジュールの製造方法では、本実施形態に係る光モジュール1のレンズ付き光透過部材を、レンズ付き光透過部材固定部に挿入する工程と、レンズ付き光透過部材を接着剤7によりレンズ付き光透過部材固定部に接着することによって固定する工程と、をこの順に行う。以下、詳細に説明する。
【0018】
先ず、光モジュール1の構成を説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る光モジュール1は、レセプタクル2と、レンズ付きガラス3と、を備えて構成されている。
【0020】
レセプタクル2は、光コネクタ差込部11と、レンズ付きガラス固定部12と、素子取付部13と、をこの順の配列で同軸上に備える。すなわち、光コネクタ差込部11、レンズ付きガラス固定部12及び素子取付部13は、光モジュール1の光軸16に沿って、この順に配置されている。
【0021】
光コネクタ差込部11は、円筒状の継ぎ手形状に形成され、該光コネクタ差込部11内に光コネクタ4を差し込むことが可能となっている。なお、光コネクタ4は、フェルール41を備え、このフェルール41内に光ファイバ42が配置されている。
【0022】
レンズ付きガラス固定部12は、筒状(例えば、円筒状)に形成されている。例えば、レンズ付きガラス固定部12の内径は、光コネクタ差込部11の内径よりも大径とされている。レセプタクル2は、レンズ付きガラス固定部12と光コネクタ差込部11との境界に、レンズ付きガラス固定部12側に面する段差面14を有している。この段差面14は、光軸16と直交している。この段差面14には、レンズ付きガラス3の端面3a(後述)が突き当てられている。
【0023】
素子取付部13は、筒状(例えば、円筒状)に形成されている。例えば、素子取付部13の内径は、レンズ付きガラス固定部12の内径よりも大径とされており、レンズ付きガラス固定部12と素子取付部13との境界には段差面15が形成されている。
【0024】
この素子取付部13の内周には、CANパッケージ6が、例えば、接着剤8による接着によって取り付けられている。CANパッケージ6は、発光素子又は受光素子である半導体素子5を備えている。つまり、素子取付部13には、発光素子又は受光素子である半導体素子5が取り付けられる。
【0025】
このような構成のレセプタクル2は、例えば、樹脂により構成されている。レセプタクル2は、例えば、射出成型により作成することができる。
【0026】
レンズ付きガラス固定部12は、光コネクタ4の先端をレンズ付きガラス3の端面3a(後述)に突き当てることができるよう、光コネクタ差込部11に連通している。また、レンズ付きガラス固定部12は、素子取付部13側からレンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12との隙間9に接着剤7を塗布でき、且つ、レンズ付きガラス3と半導体素子5とを光学的に結合できるように、素子取付部13に連通している。
【0027】
図2に示すように、レンズ付きガラス3は、本体部31と、この本体部31の一端に設けられているレンズ32と、を備えて構成されている。レンズ付きガラス3は、例えば、光学研磨或いは型成形により作成することができる。
【0028】
本実施形態の場合、レンズ付きガラス3の本体部31は、図2(a)の上端から下端に向けて徐々に縮径している。具体的には、例えば、本体部31はテーパ状に形成されている。本体部31は、詳細には、円錐の頂部を、円錐の底面と平行な面で切断して除去したような形状である。従って、本体部31において最も大径の部分は、レンズ32から遠い側(光コネクタ差込部11側)の端部31aである。この端部31aの外径は、レンズ付きガラス固定部12の内径に略等しく設定されている。
【0029】
レンズ32は、例えば、半球状に形成されている。図2に示すように、レンズ32は、その中心がレンズ付きガラス3の中心軸17に一致するように配置されている。
【0030】
このようなレンズ付きガラス3は、図1に示すように、端部31aの端面3aが段差面14に突き当てられ、レンズ32が素子取付部13側に位置するように、レンズ付きガラス固定部12内に配置されている。この状態で、レンズ付きガラス3の中心軸17は、光軸16に一致している。そして、レンズ付きガラス3は、接着剤7によりレンズ付きガラス固定部12の内部に接着することによって固定されている。
【0031】
ここで、本体部31の端部31aが第1部分であり、本体部31における端部31a以外の部分31bが第2部分であると考えると、レンズ付きガラス3の本体部31は、外径がレンズ付きガラス固定部12の内径に略等しい第1部分と、第1部分よりも小径であり、且つ、少なくとも当該本体部31における素子取付部13側の端部を含む部分である第2部分と、を備えるものである、と言える。また、本実施形態の場合、第1部分は、レンズ付きガラス3における光コネクタ差込部11側の端部である。また、本実施形態の場合、本体部31は、図2(a)の上端から下端に向けて徐々に縮径しているため、レンズ付きガラス3は、第1部分から第2部分に亘って徐々に縮径している、と言える。
【0032】
次に、本実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明する。
【0033】
先ず、図3に示すように、レンズ付きガラス3をレセプタクル2のレンズ付きガラス固定部12内に配置し、レンズ付きガラス3の端面3aを段差面14に突き当てる。この際、レンズ付きガラス3は素子取付部13側からレンズ付きガラス固定部12内に挿入する。
【0034】
ここで、レンズ付きガラス3の端部31aの外径は、レンズ付きガラス固定部12の内径に略等しい。このため、このようにレンズ付きガラス3をレンズ付きガラス固定部12内に挿入し、端面3aを段差面14に突き当てるだけで、該レンズ付きガラス3を該レンズ付きガラス固定部12内に容易に位置決めし、レンズ付きガラス3の中心軸17を光軸16に一致させることができる。なお、レンズ付きガラス3の端部31aの外径は、レンズ付きガラス固定部12の内径に略等しいため、端部31aとレンズ付きガラス固定部12との隙間は極力小さくすることができる。
【0035】
次に、レンズ付きガラス3を接着剤7によりレンズ付きガラス固定部12に接着することによって固定する。
【0036】
この固定は、例えば、図3に示すような接着剤塗布ツール10を用いて行う。この接着剤塗布ツール10は、例えば、接着剤を貯留する貯留部10aと、この貯留部10aよりも細径に形成され先端から接着剤を吐出する吐出部10bと、を備える。なお、吐出部10bの先端の径は、例えば、レンズ付きガラス固定部12とレンズ付きガラス3との隙間9よりも細径であることが好ましい。
【0037】
図3に示すように、接着剤塗布ツール10の吐出部10bの先端を、レンズ付きガラス固定部12とレンズ付きガラス3との隙間9の近傍に配置した状態で、例えば貯留部10aの容積が縮小するように該貯留部10aを押圧する。これにより、貯留部10a内の接着剤を、吐出部10bを介して隙間9へ吐出する(滴下する)。これにより、隙間9内に接着剤7を充填する。接着剤7は、例えば、熱硬化性樹脂、又は、紫外線硬化性樹脂からなる。前者の場合には、接着剤7を加熱することにより該接着剤7を硬化させて、レンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12とを相互に接着する。後者の場合には、接着剤7に紫外線を照射することにより該接着剤7を硬化させて、レンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12とを相互に接着する。
【0038】
ここで、レンズ付きガラス3の端部31aの外径は、レンズ付きガラス固定部12の内径に略等しいため、接着剤7の硬化中に、レンズ付きガラス3がレンズ付きガラス固定部12内においてずれ動いてしまうことを好適に抑制することができる。
【0039】
次に、接着剤8により上述のCANパッケージ6を素子取付部13内に固定する。なお、CANパッケージ6内の半導体素子5が発光素子、すなわち半導体レーザの場合には、光モジュール1は送信用光モジュールとなる。他方、CANパッケージ6内の半導体素子5が受光素子の場合には、光モジュール1は受信用光モジュールとなる。
【0040】
ここで、素子取付部13内にCANパッケージ6を固定する際には、レンズ付きガラス3が固定されたレセプタクル2と、CANパッケージ6と、の調芯を、次のようにして行う。すなわち、光モジュール1が送信用光モジュールの場合には、図1に示すように光コネクタ4を光コネクタ差込部11に差し込んだ状態で、CANパッケージ6が備える半導体素子5(半導体レーザ)から出る光を光コネクタ4の光ファイバ42により受けながら調芯する。また、光モジュール1が受信用光モジュールの場合には、図1に示すように光コネクタ4を光コネクタ差込部11に差し込んだ状態で、光コネクタ4の光ファイバ42から出る光をCANパッケージ6が備える半導体素子5(受光素子)により受けながら調芯する。調芯後、光コネクタ4は光コネクタ差込部11から取り外す。
【0041】
以上により、図1に示す構造の光モジュール1が得られる。
【0042】
以上のような第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0043】
第1の実施形態に係る光モジュール1は、レンズ付きガラス3と、レセプタクル2と、を備え、レセプタクル2は、光コネクタ4が差し込まれる光コネクタ差込部11と、レンズ付きガラス3が内部に固定されるレンズ付きガラス固定部12と、発光素子又は受光素子である半導体素子5が取り付けられる素子取付部13と、をこの順の配列で同軸上に備える。レンズ付きガラス固定部12は、素子取付部13に連通している。レンズ付きガラス3は、本体部31と、本体部31の一端に設けられているレンズ32と、を備える。そして、レンズ付きガラス3の本体部31は、外径がレンズ付きガラス固定部12の内径に略等しい第1部分(端部31a)と、第1部分よりも小径であり、且つ、少なくとも当該本体部31における素子取付部13側の端部を含む部分である第2部分(本体部31における端部31a以外の部分31b)と、を備える。このようにレンズ付きガラス3の第2部分が第1部分よりも小径であるため、少なくとも第2部分とレンズ付きガラス固定部12との隙間9に、素子取付部13側から接着剤7を充填する作業を、容易に行うことができる。よって、レンズ付きガラス3を接着剤7により容易にレセプタクル2に接着することができる。このため、レセプタクル2を(融点の高い金属等ではなく)樹脂により構成することができるので、光モジュール1の低コスト化を図ることもできる。しかも、図9の構造よりも接着剤7の塗布可能領域が増大し、レンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12との接着面積が広くなるので、これらの接着強度を高めることができる。加えて、レンズ付きガラス3の第2部分とレンズ付きガラス固定部12との隙間9に接着剤を容易に塗布できるため、レンズ付きガラス3のうち、レンズ32と、光コネクタ4が突き当てられる端面3aと、が接着剤7で汚れないようにできる。よって、この汚れにより光路が妨げられる可能性を低減できる。しかも、レンズ付きガラス3の第1部分(端部31a)の外径は、レンズ付きガラス固定部12の内径に略等しいため、レンズ付きガラス固定部12内へのレンズ付きガラス3の位置決めを容易に行うことができるとともに、接着剤7の硬化中に、レンズ付きガラス3がレンズ付きガラス固定部12内においてずれ動いてしまうことを好適に抑制することができる。よって、収差増大による光学特性劣化を抑制することができる。
【0044】
また、レンズ付きガラス3は、第1部分(本体部31の端部31a)から第2部分(本体部31における端部31a以外の部分31b)に亘って徐々に縮径しているので、接着剤7の塗布可能領域を十分確保することができる。よって、レンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12との接着強度を十分確保することができる。
【0045】
また、第1部分(本体部31の端部31a)は、レンズ付きガラス3における光コネクタ差込部11側の端部であるため、接着剤7の塗布可能領域を極力拡げることができる。よって、レンズ付きガラス3とレンズ付きガラス固定部12との接着強度を一層高めることができる。
【0046】
また、レンズ付きガラス固定部12の内径は、光コネクタ差込部11の内径よりも大径であり、レセプタクル2は、レンズ付きガラス固定部12と光コネクタ差込部11との境界に、レンズ付きガラス固定部12側に面する段差面14を有し、レンズ付きガラスの端面3aが段差面14に突き当てられている。よって、レンズ付きガラス3をレンズ付きガラス固定部12内に挿入するだけで、該レンズ付きガラス3を容易に位置決めすることができる。
【0047】
ここで、上述したような構造のレンズ付きガラス3に代えて、図5に示すように、本体部51の全体が円筒状である(径が一定である)レンズ付きガラス50を用いた場合に、どのような課題があるのかを説明する。
【0048】
図6は図5に示すレンズ付きガラス50をレセプタクル2に固定する工程の一例を示す、光モジュールの断面図である。
【0049】
図5のレンズ付きガラス50を用いる場合、接着剤の塗布を容易に行えるように、図6に示すように、レンズ付きガラス50とレンズ付きガラス固定部12との間に隙間53を設けることが考えられる。この場合、図7(a)に示すように、レンズ付きガラス50の中心軸17が光軸16に一致するように、接着剤54によってレンズ付きガラス50をレンズ付きガラス固定部12に接着できれば問題がない。しかし、レンズ付きガラス50をレンズ付きガラス固定部12内に配置するとき、或いは、接着剤54を硬化させるときなどに、図7(b)に示すようにレンズ付きガラス50の中心軸17が光軸16からずれることがある。この結果、収差が増大し、所望の光学特性が得られなくなる。
【0050】
他方、図8のようにレンズ付きガラス50とレンズ付きガラス固定部12との間にほとんど隙間がない場合には、レンズ付きガラス50をレンズ付きガラス固定部12内に配置した後で接着剤54を塗布しても、この隙間にほとんど接着剤54が浸透しない。このため、レンズ付きガラス50とレンズ付きガラス固定部12との接着強度が不十分になる場合がある。また、先にレンズ付きガラス固定部12に接着剤54を塗布してから、該レンズ付きガラス固定部12内にレンズ付きガラス50を配置すると、隙間が小さいために、この隙間から接着剤54がはみ出して、レンズ付きガラス50のレンズ32、或いは、光コネクタ4(図1参照)に突き当てられる端面3aに接着剤54が付着し、光路が妨げられることがある。
【0051】
〔第2の実施形態〕
図4は第2の実施形態に係る光モジュール(全体図示略)が備えるレンズ付きガラス60を示す図であり、このうち図4(a)は正面図、図4(b)は図4(a)の下側から見た図である。
【0052】
本実施形態に係る光モジュールは、上記の第1の実施形態に係る光モジュール1のレンズ付きガラス3に代えて、図4のレンズ付きガラス60を備える点で、上記の第1の実施形態に係る光モジュール1と相違している。更に、本実施形態に係る光モジュールのレンズ付きガラス固定部12は、レンズ付きガラス60の形状に合わせて、四角筒状に形成されている。その他の点については、本実施形態に係る光モジュールは、上記の第1の実施形態に係る光モジュール1と同様に構成されている。
【0053】
図4に示すように、レンズ付きガラス60は、本体部61と、レンズ32と、を備える。このうち本体部61は、第1部分61aと、第2部分61bと、を備える。第1部分61aは、外径がレンズ付きガラス固定部12の内径に略等しい。第2部分61bは、第1部分61aよりも小径であり、且つ、少なくとも本体部61における素子取付部13(図1参照)側の端部を含む部分である。ここで、第1部分61aの外径は、第1部分61aを図4(b)の方向から見たときに第1部分61aに外接する円の直径と定義される。同様に、第2部分61bの外径は、第2部分61bを図4(b)の方向から見たときに第2部分61bに外接する円の直径と定義される。
【0054】
本実施形態の場合、レンズ付きガラス60は、第1部分61aと第2部分61bとの境界に位置する段差61cにおいて径が変化している。本実施形態の場合も、第1部分61aは、レンズ付きガラス60における光コネクタ差込部11(図1参照)側の端部である。
【0055】
具体的には、例えば、レンズ付きガラス60の第1部分61aは、相対的に大径の多角柱(例えば、四角柱)からなり、第2部分61bは、相対的に小径の多角柱(例えば、四角柱)からなる。
【0056】
レンズ付きガラス固定部12へのレンズ付きガラス60の固定の仕方は、上記の第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
以上のような第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、第1及び第2部分61a、61bが多角柱形状であるため、レンズ付きガラス60がレンズ付きガラス固定部12内において、レンズ付きガラス60の中心軸17周りに回転しないようにできるため、上記の第1の実施形態よりも、レンズ付きガラス固定部12内におけるレンズ付きガラス60の位置ずれを好適に抑制できる。
【0058】
上記の各実施形態では、第1部分がレンズ付きガラス3における光コネクタ差込部11側の端部である例を説明したが、第1部分は、第2部分よりも光コネクタ差込部11側に位置していれば良く、レンズ付きガラス3における光コネクタ差込部11側の端部よりも素子取付部13側に位置していても良い。
【0059】
また、上記の各実施形態では、レンズ付きガラス固定部12の内径は、光コネクタ差込部11の内径よりも大径であり、レセプタクル2は、レンズ付きガラス固定部12と光コネクタ差込部11との境界に、レンズ付きガラス固定部12側に面する段差面14を有し、レンズ付きガラスの端面3aが段差面14に突き当てられている例を説明したが、レンズ付きガラス固定部12の内径は、光コネクタ差込部11の内径よりも大径でなくても良く、また、レセプタクル2は、レンズ付きガラス固定部12と光コネクタ差込部11との境界に、レンズ付きガラス固定部12側に面する段差面14を有していなくても良い。この場合の構造の一例としては、例えば、図9の構造と同様に、レンズ付きガラス固定部12と光コネクタ差込部11とが互いに同一の径である構造が挙げられる。
【0060】
また、上記の各実施形態では、レセプタクル2を樹脂により構成した例を説明したが、レセプタクル2は、その他の材質(例えば、金属等)により構成しても良い。
【0061】
また、上記の第1の実施形態では、レンズ付きガラス3の本体部31の形状が、円錐の頂部を、該円錐の底面と平行な面で切断除去したような形状である例を説明したが、本体部31は、例えば、多角錐の頂部を、該多角錐の底面と平行な面で切断除去したような形状であっても良い。
【0062】
また、上記の第2の実施形態では、第1及び第2部分61a、61bがそれぞれ多角柱形状である例を説明したが、図10に示すように、第1及び第2部分61a、61bがそれぞれ円柱形状であっても良い。更に、第1及び第2部分61a、61bのうちの何れか一方が多角柱形状であり、他方が円柱形状であっても良い。更に、第2の実施形態では、本体部61の径が2段階に変化する例を説明したが、本体部61の径は、3段階以上に変化しても良い。
【0063】
また、上記においては、レンズ付き光透過部材がガラスからなる(レンズ付きガラス3である)例を説明したが、レンズ付き光透過部材は、その他の材質(例えば、透明樹脂)により構成しても良い。なお、樹脂よりもガラスの方が屈折率の温度依存性が小さいため、レンズ付き光透過部材はガラスにより構成する方が好ましい。また、レンズ付き光透過部材の屈折率の好ましい範囲は、光ファイバの屈折率を1.46とすると、例えば、1.36以上1.56以下であることが挙げられる。
【符号の説明】
【0064】
1 光モジュール
2 レセプタクル
3 レンズ付きガラス(レンズ付き光透過部材)
3a 端面(一端面)
4 光コネクタ
5 半導体素子
6 CANパッケージ
7 接着剤
8 接着剤
9 隙間
10 接着剤塗布ツール
10a 貯留部
10b 吐出部
11 光コネクタ差込部
12 レンズ付きガラス固定部(レンズ付き光透過部材固定部)
13 素子取付部
14 段差面
15 段差面
16 光軸
17 中心軸
31 本体部
31a 端部(第1部分)
31b 部分(第2部分)
32 レンズ
41 フェルール
42 光ファイバ
60 レンズ付きガラス(レンズ付き光透過部材)
61 本体部
61a 第1部分
61b 第2部分
61c 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ付き光透過部材と、
レセプタクルと、
を備え、
前記レセプタクルは、光コネクタが差し込まれる光コネクタ差込部と、前記レンズ付き光透過部材が内部に固定されるレンズ付き光透過部材固定部と、発光素子又は受光素子である半導体素子が取り付けられる素子取付部と、をこの順の配列で同軸上に備え、
前記レンズ付き光透過部材固定部は、前記素子取付部に連通しており、
前記レンズ付き光透過部材は、本体部と、前記本体部の一端に設けられているレンズと、を備え、
前記レンズ付き光透過部材の前記本体部は、外径が前記レンズ付き光透過部材固定部の内径に略等しい第1部分と、前記第1部分よりも小径であり、且つ、少なくとも当該本体部における前記素子取付部側の端部を含む部分である第2部分と、を備えることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記レンズ付き光透過部材は、前記第1部分から前記第2部分に亘って徐々に縮径していることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記レンズ付き光透過部材は、前記第1部分と前記第2部分との境界に位置する段差において径が変化していることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1部分は、前記レンズ付き光透過部材における前記光コネクタ差込部側の端部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記レンズ付き光透過部材固定部の内径は、前記光コネクタ差込部の内径よりも大径であり、
前記レセプタクルは、前記レンズ付き光透過部材固定部と前記光コネクタ差込部との境界に、前記レンズ付き光透過部材固定部側に面する段差面を有し、
前記レンズ付き光透過部材の一端面が前記段差面に突き当てられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記レンズ付き光透過部材は、接着剤により前記レンズ付き光透過部材固定部に接着することによって固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記レセプタクルは樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光モジュールの前記レンズ付き光透過部材を、前記レンズ付き光透過部材固定部に挿入する工程と、
前記レンズ付き光透過部材を接着剤により前記レンズ付き光透過部材固定部に接着することによって固定する工程と、
をこの順に行うことを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−204644(P2010−204644A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11342(P2010−11342)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】