説明

光モジュール及びその製造方法

【課題】簡易な方法によって正確なマイクロホールを備えたマイクロホールアレイを製造することができ、しかもマイクロホールと光デバイスとの調心作業を行うことなく信頼性能高い光接続を可能とする光モジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】N本の光ファイバ20からなる多心光ファイバ2の端部とVCSEL、PD等の複数の光デバイス11との間で光伝送を行う光モジュール1は、複数の光デバイス11を搭載した光デバイスモジュール12と、複数のマイクロホール13が穿設されたマイクロホールアレイ14と、端部がマイクロホール13に挿入された光ファイバ20とを有する。N本の光ファイバ20をマイクロホール13に挿入するのみで、光ファイバ20は無調整で光デバイスモジュール12の光デバイス11に同心に位置決めされて効率の良い光伝送が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及びその製造方法に関し、特に、多心光ファイバと光デバイスとの位置合わせ及び光結合をマイクロホールを備えたマイクロホールアレイ(MHA)を用いて簡単かつ確実に行うことが可能な光モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器では、膨大なデータを高速に処理する必要から、データ等の伝送をメタルワイヤによるメタル伝送に代えて光導波路や光ファイバ等を用いた光伝送で行うようになってきた。その一例を示せば図13に示す如くであり、電子機器100の図示しない筐体内には複数のカード(ここでは、カード101A,101Bの2枚)が収納され、そのデータ伝送には多心光ファイバが用いられている。カード101Aについて説明すると、カード101Aは、所定の配線パターンが設けられているプリント基板102と、プリント基板102に実装されている複数のLSI103と、このLSI103に接続された状態でプリント基板102に実装されている複数の多チャンネル光モジュール104と、カード101Aのフレーム105に取り付けられた複数の光コネクタ106とを備えて構成されている。尚、カード10Bも同様にして構成されている。
【0003】
カード101Aの各光コネクタ106と各多チャンネル光モジュール104とは、多心光ファイバ107A,107Bによって接続されている。また、カード101Aとカード101Bとのデータ伝送は多心光ファイバ108A〜108Dによって行われるようになっている。また、電子機器100と他の電子機器200とのデータ伝送は、多心光ファイバ109A,109Bを介して行われるようになっている。尚、多心光ファイバ107A,107B,108A〜108D,109A,109Bが2本1組になっているのは、送信(TX)用と受信(RX)用に分けられているためである。
【0004】
多心光ファイバ107A,107Bの多チャンネル光モジュール104に接続される側には、SF(Sagged Fiber:「座屈ファイバ」)光コネクタ110が取り付けられている。ここで、SF光コネクタとは、光ファイバの所定箇所を撓ませることによって光ファイバ自身の座屈力を利用して他方の光ファイバを接触させて確実に接続を行うコネクタのことである。このSF光コネクタ110の採用は、光インターフェースの小型化を図ることはでき、光ファイバとの光結合効率の向上及び低消費電力化を図ることができることに理由がある。
【0005】
SF光コネクタ110は、図14に示すように、概略として、樹脂成型によって形成されたプラグ111を備えており、このプラグ111によって多心光ファイバ107A(或いは107B)の端部が保持されている。多心光ファイバ107A(107B)はN本のマルチモード(MM)ファイバ112を一体にして構成されており、各MMファイバ112の端面には、コア113が臨んでいる。
【0006】
一方、プラグ111を受け入れる多チャンネル光モジュール104は、角筒状のレセプタクル114を有し、その底部にはVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)や、PD(Photo Diode:フォトダイオード)等といった複数の光デバイス115を実装した光デバイスモジュール116が配置されている。光デバイスモジュール116の上部には、レセプタクル114に保持された2層(光デバイスモジュール116側が液晶ポリマ基板、後述するマイクロホールアレイ119側がガラス薄板)構成のボード117と、このボード117に搭載されると共に、MMファイバ112のN本のコア113を挿入可能な内径を有するN本のマイクロホール118を備えたマイクロホールアレイ119が配置されている。そして、多心光ファイバ107Aを構成する複数の光ファイバ112のコア113がマイクロホールアレイ119のマイクロホール118に挿入することによって光デバイスモジュール116の各光デバイス115に対して対向するようにして配置される。
【0007】
SF光コネクタ110を多チャンネル光モジュール104に装着するには、まず、SF光コネクタ110のプラグ111に取り付けられた多心光ファイバ107Aを、図14(a)に示すように、プラグ111をレセプタクル114に挿入することにより多心光ファイバ107AのN本のコア113をN本のマイクロホール118に挿入し、さらにマイクロホール118内を降下させることによって最終的には図14(b)に示すように挿入状態とする。この状態において、光デバイス115がVCSELの場合であれば、LSI103から多チャンネル光モジュール104へ伝送された電気信号がVCSELによって光信号に変換され、この光信号がコア113へ送出され光ファイバ112を介して伝送される。また、光デバイス115がPDの場合であれば、光ファイバ112を介して伝送されてきた光信号がコア113からPDへ送出され、PDによって光信号から電気信号に変換され、多チャンネル光モジュール104からLSI103へ伝送される。
【0008】
上述したSF光コネクタの構成の具体例については、例えば、非特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本電信電話株式会社、NTTフォトニクス研究所「光モジュール化技術及び光コネクタ技術−3」2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の光モジュールにあっては、多心光ファイバを構成する複数の光ファイバを挿入するためのマイクロホール備えたマイクロホールアレイをVCSELやPD等の光デバイスの配列や多心光ファイバを構成する複数の光ファイバの配列に合致するようにして穿設する必要がある。これをドリルなどによって直接加工するには極めて精密な加工作業が要求されると共に、光デバイスと光ファイバとの調心作業も必要となる。
【0011】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、簡易な方法によって正確なマイクロホールを備えたマイクロホールアレイを製造することができ、マイクロホールと光デバイスとの調心作業を行うことなく信頼性能高い光接続を可能にする光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、多心光ファイバを構成する複数の光ファイバのそれぞれの一端を保持し、複数の光ファイバのそれぞれと光学的に接続された1又は複数の光デバイスとの間で光伝送を行う光モジュールにおいて、基板上に実装された光デバイスを光硬化性樹脂で覆い、当該光硬化性樹脂に対して選択的に光を照射することによって光デバイスに至る長さの複数の長孔状のマイクロホールが形成されたマイクロホールアレイを備え、複数の長孔状のマイクロホールに複数の光ファイバのそれぞれを挿入することにより複数の光ファイバと光デバイスとの間の光伝送を可能としたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の光モジュールにおいて、複数の長孔状のマイクロホールは、各光ファイバが挿入される挿入側の開口部の大きさが光デバイス側に近づくほど狭くなった先窄まりのテーパー状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、複数の長孔状のマイクロホールを備え、長孔状のマイクロホールに多心光ファイバを構成する複数の光ファイバのそれぞれの一端を保持するマイクロホールアレイと、マイクロホールアレイに保持された光ファイバの端面に光学的に接続される1又は複数の光デバイスとを備え、複数の光ファイバと光デバイスとの間で光伝送を行う光モジュールの製造方法において、基板上に実装された光デバイスを取り囲むようにしてモールド型を配置する工程と、モールド型内に光硬化性樹脂を充填する工程と、モールド型内に充填された光硬化性樹脂に複数の光ファイバの端部の形状及び配列に合致させた遮光パターンを有するフォトマスクを配置して、光硬化性樹脂に対して光を照射することによって光が照射された部分を硬化させると共に、光が照射されなかった部分を複数の光ファイバを挿入可能な複数の長孔状のマイクロホールとしてマイクロホールアレイを形成する工程とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の光モジュールの製造方法において、光が照射されず複数の光ファイバを挿入可能な複数の長孔状のマイクロホールとされた部分の光硬化性樹脂を除去することなく複数の光ファイバの端部を挿入する工程をさらに備えて構成されたことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項3又は4のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法において、照射する光の強度及び/又は照射する光の時間を調整することにより、長孔状のマイクロホールを各光ファイバが挿入される挿入側の開口部の大きさが光デバイス側に近づくほど狭くなった先窄まりのテーパー状に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光モジュールによれば、マイクロホールとVCSELやPD等の光デバイスとの調心作業を行うことなく信頼性能高い光接続を可能にすると共に、光モジュールの小型化、光ファイバとの光結合効率の向上及び低消費電力化の実現を容易に図ることができるという効果がある。
【0018】
本発明に係る光モジュールの製造方法によれば、ドリル等による精密な穴開け加工を行うことなく極めて簡単な方法によって調心も不要で精密なマイクロホールアレイを製造することができ、しかも信頼性能の高い光接続を可能とする光モジュールを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る光モジュールの好ましい一実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る光モジュールの第一の製造方法を示す工程図である。
【図3】図2に示す工程に続く工程を示す工程図である。
【図4】本発明に係る光モジュールの第二の製造方法を示す工程図である。
【図5】他の遮光パターンによる製造方法を示す図である
【図6】さらに別の遮光パターンによる製造方法を示す図である。
【図7】モールド型を用いない場合のフォトマスクを示す平面図である。
【図8】光の回折を示すグラフである。
【図9】光の回り込みを示す図である。
【図10】光の強度とテーパの角度との関係を示すグラフである。
【図11】基板の側端縁部に設けた光モジュールを示す斜視図である。
【図12】図11に示す光モジュールの横断面図である。
【図13】データの伝送に電気−光変換及び光−電気変換の光インターフェースを用いた電子機器の構成例を示す図である。
【図14】図13に示す多チャンネル光モジュール及びこれに接続されるSF光コネクタの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[光モジュールの構成]
以下、本発明に係る光モジュールについて、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る光モジュールの一実施形態を示す断面図である。図示された光モジュール1は、例えば、電子機器のボードに搭載されたLSIと他のボード或いは他の機器とのデータ伝送に伴う電気−光変換、光−電気変換を行う部位に配置される。光モジュール1は、概略として、所定の配線パターンが形成されている絶縁基板10と、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)や、PD(Photo Diode:フォトダイオード)等の複数の光デバイス11を搭載して絶縁基板10上の所定の位置に実装されている光デバイスモジュール12と、長孔状の複数のマイクロホール13が形成されており、下部に設けられた凹部15に光デバイスモジュール12を収容するようにして絶縁基板10上に設置された樹脂製のマイクロホールアレイ14を備えている。尚、「マイクロホール」とは、光ファイバが挿入される直径の小さな長孔のことであり、「マイクロホールアレイ」とは、複数のマイクロホールを配列した構造のことである。
【0021】
絶縁基板10には、上記した光デバイス11の他、各種の電子部品やスロットを介してLSIを搭載した各種の電子機器のボードなどが実装される。そして、絶縁基板10は、光デバイス11や各種の電子部品及び電子機器のボードとの間で電気的な接続を行うための図示しないプリント配線パターンを備えている。
【0022】
光デバイス11を内部に収容するようにして絶縁基板10上に配置されたマイクロホールアレイ14は、光硬化性樹脂、例えば紫外線によって硬化する紫外線硬化樹脂等を用いて成形されており、このマイクロホールアレイ14には後述する方法によってマイクロホール13が複数形成されており、この複数のマイクロホール13のそれぞれには、プラグ3に端部が固定された多心光ファイバ2の複数のMMファイバ20のそれぞれの端面から所定の長さ(例えば、1mm)が挿入される。尚、プラグ3の端面(図1ではプラグ3の底面)はマイクロホールアレイ14と当接することによってストッパとして機能するようになっている。また、複数の長孔状のマイクロホール13は、複数のMMファイバ20がそれぞれ挿入される挿入側の開口部の大きさが光デバイス11側に近づくほど次第に狭くなったテーパー状に形成されている。これにより、複数のMMファイバ20のそれぞれをマイクロホール13内に容易に挿入することができると共に、光デバイス11のそれぞれと確実に光接続することが可能となる。
【0023】
マイクロホールアレイ14のマイクロホール13に挿入される各MMファイバ20は、コア21とクラッド22を備えており、これによって光デバイスモジュール12のVCSELの発光によって生じた光信号はMMファイバ20によって伝送され、一方、MMファイバ20から送られてくる光信号は光デバイスモジュール12のPDに入射されて電気信号に変換される。
【0024】
[光モジュールの製造方法(1)]
次に、上述した光モジュール1の第一の製造方法について説明する。図2(a)〜(e)は本発明に係る光モジュールの第一の製造方法を示す工程図、図3は図2に示す工程に続く工程を示す図である。まず、図2(a)に示すように、絶縁基板10に実装された複数の光デバイス11を搭載した光デバイスモジュール12に対して、図2(b)に示すように、マイクロホールアレイ14の外形を形成するためのモールド型30を光デバイスモジュール12を囲うようにして絶縁基板10上に配置する。次に、図2(c)に示すように、モールド型30内に光を照射することによって硬化する光硬化性樹脂31を流し込む。使用する光硬化樹脂31については特に限定するものではないが、紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化樹脂を簡便に使用することができる。次に、図2(d)に示すように、フォトマスク32を光硬化性樹脂31の上面に配置する。フォトマスク32は、遮光領域が複数の光デバイス11の配列、すなわちそれに対応する複数のMMファイバ20の配列に合致した間隔及び大きさの遮光パターンを有している。具体的には、光を透過させない遮光領域に相当する部分がマイクロホール13となり、光が照射されて硬化する部分がマイクロホールアレイ14の本体となる。そして、図2(e)に示すように、光硬化性樹脂31を硬化させるための光、例えば紫外線硬化樹脂の場合には紫外光(UV)がフォトマスク32の上方から下方に向けて所定時間照射される。尚、フォトマスク32を使用した光デバイス11との位置合わせにおいては極めて高い精度を実現できることは、LSI等の従来の電子デバイスの製作プロセスですでに実証されている。
【0025】
光硬化性樹脂31に所定時間光が照射されて硬化したら、図3(f)に示すように、光硬化性樹脂31の上部に配置したフォトマスク32を除去すると共にモールド型30を除去する。さらに、フォトマスク32の遮光部分によって光が照射されなかった部分である非照射部33を洗浄によって除去又は専用の治具等を用いて抜き取ることによって複数のマイクロホール13が形成される。これにより、図3(g)に示すようなマイクロホールアレイ14が完成する。尚、ここではフォトマスク32の遮光パターンをマイクロホール13に相当する位置のみに有するものとしたために、マイクロホールアレイ14の本体の外周はモールド型30の内壁に沿って形成されるが、図5に示すように、モールド型30の内壁の位置より内側に向かって適当な幅を持った遮光パターン35,35を更に設けることにより、マイクロホールアレイ14の本体の外周を任意な形状にすることが可能である。さらに、図6に示すように、モールド型30を用いずに光硬化性樹脂31の粘性を利用してフォトマスク32と遮光パターン35,35を配置することによってマイクロホールアレイ14を形成することも可能である。図6に示す方法による場合には、図7に示すようなフォトマスク32を用いる。すなわち、図示されたフォトマスク32は、透明のガラスやアクリル樹脂のような平板の中央部に四角形状の透明部37を設けると共に、それ以外の部分を遮光し、この透明部37の内側に所定間隔で一列に円形状の遮光部38を設けて形成されている。尚、この場合、絶縁基板10とフォトマスク32及び遮光パターン35,35との間隔を適宜に保つ必要があるので図示しないスペーサーを設けることが好ましい。
【0026】
次に、図3(g)に示すように、プラグ3に装着された多心光ファイバ2を完成したマイクロホールアレイ14に相対させ、図3(h)に示すように、多心光ファイバ2の複数のMMファイバ20の先端(コア21+クラッド22)をマイクロホールアレイ14の各のマイクロホール13のそれぞれに挿入されるようにして取り付けることにより、図1に示した光モジュール1が完成する。このとき、プラグ3の先端面はストッパとして働いてマイクロホールアレイ14に当接する。
【0027】
ここで、照射する光の照射光強度を上げると、遮光パターンの周りの明部からの照射光はフォトマスク32の円形状の開口部の直径よりも内側に回り込む性質があり、これを利用することによって、下側(光デバイスモジュール12側)に行くに従って次第に径が狭くなるテーパ状のマイクロホール13を形成することができる。図8は、フォトマスク32に紫外光を照射したときの光強度分布の測定結果である。縦軸はフォトマスク32の円形状の遮光部38(図7参照)の中心からの距離(mm)、横軸がフォトマスク32からの距離(μm)である。A〜Dの部分は光の強度を示しており、Aの領域が光の強度が強く、以下B,C,Dの順に光の強度が弱くなっている。そして、フォトマスク32からの距離が約200μm以上の箇所では、光の回折のため紫外光が遮光部38の下側に回り込んでいることがわかる。このことから、次のことがわかる。
(1)光の照射強度を強くするか、あるいは照射時間を長くするとフォトマスク32の遮光部38の下側に光が回り込んでフォトマスク32の下側の光硬化性樹脂31を硬化する。従って、下側に向かって裾拡がりの硬化パターンが形成される。すなわち、これを光が照射されない部分(マイクロホール13に相当)についてみれば、先窄まりのテーパ形状の長孔が形成されることになる(図9参照)。
(2)これに対して、光の照射強度を弱く、あるいは照射時間を短くするとフォトマスク32における光の回り込みの影響が少なくなるので直線状、あるいは先拡がりのテーパ形状の硬化部が形成されることになる。これを光が照射されない部分(マイクロホール13に相当)についてみてみれば、先拡がりのテーパ形状の長孔が形成されることになる。
【0028】
光の照射強度を変化させた場合の図9における角度θについての角度の変化を
図10に示す。図10は照射時間は5秒で固定し、光の照射強度を0.18,0.34,0.54W/cmと変化させた場合の角度θのグラフである。照射強度を強くするに従って角度θもそれぞれ0.4°,1.4°,1.6°と次第に大きくなっていることが確認された。このように、マイクロホール13をMMファイバ20の挿入側の径が大きく光デバイス11側に行くにつれて次第に径が狭くなるようなテーパ形状に形成すれば各MMファイバ20はマイクロホールアレイ14の各マイクロホール13内により円滑に挿入させることができ、従って、MMファイバ20のアライメントが容易になる。
【0029】
[光モジュールの製造方法(2)]
次に、上述した光モジュール1の第二の製造方法について説明する。図4(a)〜(c)は本発明に係る光モジュールの第二の製造方法を示す工程図である。この製造方法では図2(a)〜(e)の工程は共通であるので、図4ではその部分の図示を省略すると共に、これに関する説明を省略する。まず、図2(a)〜(e)に示す工程を終了した後、図4(a)に示すように、光硬化性樹脂31からフォトマスク32及びモールド型30を除去する。この第二の製造方法では、非照射部33の未硬化の光硬化性樹脂31を除去する処理は行わない。従って、このマイクロホールアレイ14においては、非照射部33の光硬化樹脂31は硬化されることなく残されている。そして、図4(b)に示すように、多心光ファイバ2を備えたプラグ3をマイクロホールアレイ14に相対させる。このとき、各MMファイバ20は、未硬化の光硬化性樹脂31が残された各非照射部33と対面している。そして、多心光ファイバ2の端部をマイクロホールアレイ14に接近させ、未硬化の光硬化性樹脂31が残されている非照射部33内に対応するMMファイバ20を挿入する。非照射部33内の光硬化性樹脂31は未硬化であるため、非照射部33の光硬化性樹脂31はMMファイバ20の挿入によって一部マイクロホールアレイ14の外へ押し出されるが、残された光硬化性樹脂31を硬化させることによって、図4(c)に示すように、MMファイバ20を着脱不能に固定した状態で取り付けることができる。これにより、図1に示した光モジュール1が完成する。
【0030】
[光モジュールの製造方法(3)]
次に、上述した光モジュール1の第三の製造方法について説明する。図10は本発明に係る光モジュールの製造方法を絶縁基板内に配設された光配線と接続した状態を示す図、図11はその横断面図である。上述した光モジュール1の第一の製造方法又は第二の製造方法を利用して、絶縁基板10内に配設された光配線40,40と接続する際のコネクタとして利用することができる。すなわち、近年ではデータの伝送をメタルワイヤによるメタル伝送に代えて光導波路や光ファイバ等の光配線を用いた光伝送で行うようになってきている。この場合、絶縁基板10の内部に光導波路や光ファイバを埋め込んだ電気光混合基板が用いられるが光導波路や光ファイバ等の光配線の接続端部は絶縁基板10の縁端面に設けられることが多い。図10は光配線40の接続端部41が絶縁基板10の側縁端面に設けられており、この接続端部41に上述した光モジュール1の第一の製造方法又は第二の製造方法を利用してマイクロホールアレイ14を形成したものである。尚、製造の工程は上述の通りであるので詳しい説明は省略する。尚、モールド型30としては絶縁基板10の側縁端面を内側に収納可能な凹部を備えた枠体を備えたものを利用することができる。
【0031】
[実施形態の効果]
このように、本発明に係る光モジュールによれば、SF光コネクタとして機能させることができるため、光モジュールの小型化、光ファイバとの光結合効率の向上及び光結合効率の向上によって光ファイバを位置決めできるようにしたため、低消費電力化が図れるという効果がある。
【0032】
本実施形態に係る光モジュールの製造方法によれば、絶縁基板10上に実装した光デバイスモジュール12上に直接光硬化性樹脂31を流し込んでフォトマスク32を用いて所定部分だけを選択的に硬化させることによって複数のマイクロホール13を有するマイクロホールアレイ14を形成し、形成されたマイクロホール13に多心光ファイバ2のMMファイバ20を挿入して光デバイスモジュール12との光結合を行うことにより、簡略な構成でありながら光デバイスモジュール12に対する多心光ファイバ2の調心処理を不要にすることができるという効果がある。
【0033】
さらに、本実施形態に係る光モジュールの製造方法によれば、絶縁基板10に実装した光デバイスモジュール12上で紫外線硬化性樹脂31を選択的に硬化させて複数のマイクロホール13を有するマイクロホールアレイ14を形成し、マイクロホール13によって光ファイバを位置決めできるようにしたため、ドリル等による穴開け加工を不要にできると共に端末処理及び調心処理を不要にした高信頼で簡略な製造方法を提供できるという効果がある。
【0034】
尚、上述した各実施形態において、光デバイス11及び光デバイスモジュール12に代えて、多心光ファイバ2と同様の構成を備えた多の多心光ファイバとすることもできる。また、光デバイス11及び光デバイスモジュール12に代えて、例えば、45°反射ミラー、プリズム、レンズ等に配設することも可能である。
【0035】
以上のように、好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る光モジュール及びその製造方法は、光デバイスモジュールに対する光ファイバの接続以外、例えば、カード間及び装置間における光−電気変換、電気−光変換、光ファイバ同士の接続等、光インターフェースの全般に採用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 光モジュール
2 多心光ファイバ
3 プラグ
10 絶縁基板
11 光デバイス
12 光デバイスモジュール
13 マイクロホール
14 マイクロホールアレイ
15 凹部
20 MMファイバ
21 コア
22 クラッド
30 モールド型
31 紫外線硬化性樹脂
32 フォトマスク
33 非照射部
40 光配線
41 接続端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多心光ファイバを構成する複数の光ファイバのそれぞれの一端を保持し、前記複数の光ファイバのそれぞれと光学的に接続された1又は複数の光デバイスとの間で光伝送を行う光モジュールにおいて、
基板上に実装された前記光デバイスを光硬化性樹脂で覆い、当該光硬化性樹脂に対して選択的に光を照射することによって前記光デバイスに至る長さの複数の長孔状のマイクロホールが形成されたマイクロホールアレイを備え、複数の前記長孔状のマイクロホールに前記複数の光ファイバのそれぞれを挿入することにより前記複数の光ファイバと前記光デバイスとの間の光伝送を可能としたことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
複数の前記長孔状のマイクロホールは、各前記光ファイバが挿入される挿入側の開口部の大きさが前記光デバイス側に近づくほど狭くなった先窄まりのテーパー状に形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
複数の長孔状のマイクロホールを備え、前記長孔状のマイクロホールに多心光ファイバを構成する複数の光ファイバのそれぞれの一端を保持するマイクロホールアレイと、前記マイクロホールアレイに保持された前記光ファイバの端面に光学的に接続される1又は複数の光デバイスとを備え、前記複数の光ファイバと前記光デバイスとの間で光伝送を行う光モジュールの製造方法において、
基板上に実装された前記光デバイスを取り囲むようにしてモールド型を配置する工程と、
前記モールド型内に光硬化性樹脂を充填する工程と、
前記モールド型内に充填された前記光硬化性樹脂に前記複数の光ファイバの端部の形状及び配列に合致させた遮光パターンを有するフォトマスクを配置して、前記光硬化性樹脂に対して光を照射することによって前記光が照射された部分を硬化させると共に、前記光が照射されなかった部分を前記複数の光ファイバを挿入可能な複数の前記長孔状のマイクロホールとして前記マイクロホールアレイを形成する工程と、
を備えて構成されたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光モジュールの製造方法において、
前記光が照射されず前記複数の光ファイバを挿入可能な複数の前記長孔状のマイクロホールとされた部分の前記光硬化性樹脂を除去することなく前記複数の光ファイバの端部を挿入する工程をさらに備えて構成されたことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法において、
照射する光の強度及び/又は照射する光の時間を調整することにより、前記長孔状のマイクロホールを各前記光ファイバが挿入される挿入側の開口部の大きさが前記光デバイス側に近づくほど狭くなった先窄まりのテーパー状に形成することを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−32733(P2012−32733A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174227(P2010−174227)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】