説明

光モジュール及び光モジュール搭載基板

【課題】放熱特性と小型化をともに実現する光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光送信モジュール6または光受信モジュール7を収容し、光ファイバ4と接続する穴20を設けた筐体2と、筐体の上部に切り欠き部を有する放熱板3とを備える。放熱板3は、筺体2よりも大きく、一部が筺体2から外側方向に延在して、光ファイバ4の直径よりも大きい幅を備えた切り欠き部を設けており、光ファイバ4は切り欠き部を通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に使用される光モジュール及び光モジュール搭載基板に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光モジュールは、パッケージに収容された光半導体素子を有しており、この光半導体素子は光学系を介して光ファイバと光接続している。光半導体素子は、電力を供給されると駆動し、上述の光学系および光ファイバを通してレーザ光の投受光を行う。
【0003】
近年、光モジュールを用いた光増幅器や信号光源等の光通信機器は、その装置全体を小型化するため、個々の光モジュールについても実装サイズを小型化することが求められてきている。
【0004】
特許文献1には、光ファイバに光接続された光半導体素子を収容するパッケージと、パッケージの外部に延びた導体リードを有する光モジュールが記載されている。この光モジュールは配線基板上に搭載され、パッケージの底面が密着すべき位置の配線基板に開口を形成し、この開口を通じてパッケージの底面にヒートシンクを密着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−273438
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常ヒートシンクは光モジュール上つまり光モジュールを挟んで配線基板とは反対側に設ける。放熱性を向上させるために、ヒートシンクはモジュールより形状が大きい場合が多い。そのため光ファイバを光モジュールから上方つまりヒートシンク側に引き出そうとすると、ヒートシンクに接触しないようヒートシンクの外側を通過させて引き出す必要がある。その結果光ファイバを小さなスペースで引き回すことが困難になり、装置の小型化を阻害する。
【0007】
特許文献1では配線基板に開口を形成してあるが、ヒートシンクが光モジュールより形状が大きい。特許文献1では、この開口から光ファイバを引き出すことを意図していないが、仮に光ファイバを光モジュールからヒートシンク側に引き出そうとしても、ヒートシンクが光モジュールより大きいため上記と同様の問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、放熱性を確保しながら小型化を実現した光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関する光モジュールは、光素子を収容し、光ファイバと接続する穴を設けた筐体と、筐体の上部に切り欠き部を有する放熱板とを備え、光ファイバは前記切り欠き部を通すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明における光モジュールは、放熱特性と小型化をともに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における光モジュールの上面図である。
【図2】第1の実施形態における光モジュールの断面図である。
【図3】切り欠き部を設けていない光モジュールの上面図である。
【図4】切り欠き部を設けていない光モジュールの断面図である。
【図5】第2の実施形態における光モジュールの上面図である。
【図6】第3の実施形態における光モジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0013】
〔第1の実施形態〕次に、本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における光モジュール1の上面図、図2は断面図である。なお図2の断面図は、図1のA−A´位置での切断図である。
【0014】
〔構造の説明〕図1、2に示すように、本実施形態における光モジュール1は、筺体2と、放熱板3と、光ファイバ4とを備えている。
【0015】
筺体2は、内部に少なくとも光半導体素子である光送信モジュール6、あるいは光受信モジュール7、または両方を設けている。なお図2では、両方設けた場合を示している。光送信モジュール6と光受信モジュール7は、それぞれ光ファイバ4と接続している。なお光送信モジュール6と光受信モジュール7は、放熱シート8を介して筺体2と熱的に接続している。つまり光送信モジュール6と光受信モジュール7とから発生する熱は、放熱シート8を介して筺体2に伝わる。
【0016】
筺体2には、光ファイバ4の断面積に対応した穴20を設けている。そして光ファイバ4はその穴20を通り、筺体2の内部に設けられた光送信モジュール6と光受信モジュール7とそれぞれ2本ずつ接続している。
【0017】
放熱板3は、筺体2の上面部の設けられており、筺体2の上面部と一体成形してもよいし、別部材として筺体2の上面部にネジなどにより固定してもよい。放熱板3、筺体2の材質としては、熱伝導率が高いものであれば特に限定されず、それぞれ同一の材料でも、別々の材料でもよい。
【0018】
また放熱板3は、筺体2よりも大きく、一部が筺体2から外側方向に延在している。そして放熱板3は、光ファイバ4の直径よりも大きい幅を備えた切り欠き部9を設けている。
【0019】
放熱板3に設けられた切り欠き部9と、筺体2に光ファイバ4を通すために設けられた穴20とは同一方向に設けられているとよい。言い換えると、筐体2の穴20と切りかき部9を同じ側に設けていると、穴20を通った光ファイバ4は、切り欠き部9を通りやすい。
【0020】
筺体2の内部の光送信モジュール6や光受信モジュール7と接続し、穴20を介して外部に出た光ファイバ4は、放熱板3の方へ曲がり切り欠き部9を通り、光コネクタなどと接続する。その結果、光ファイバ4は、切り欠き部9と接触しないように配線することができる。
【0021】
〔作用・効果の説明〕筺体2の内部に設けられた光送信モジュール6や光受信モジュール7などの光半導体素子は、駆動時の発熱により素子特性が変化しやすい。そのため光半導体素子は、放熱シート8を介して熱的に筐体2と接続している。そして、放熱板3を介して放熱を行う。
【0022】
光送信モジュール6や光受信モジュール7が発する熱の放熱特性を高めるためには、放熱板3を大きくする必要がある。しかし図3と図4に示すように、切り欠き部9を設けていない放熱板3を筐体2より大きくしすぎた場合、光ファイバの取り付け時および取り外し時などで放熱板3が光ファイバ4と接触してしまい、光ファイバ4を損傷してしまうという問題があった。
【0023】
また切り欠き部9を設けていない放熱板3を大きくした場合、放熱板3と光ファイバ4とが接触するのを防ぐためには、光ファイバ4を大きく引き回す必要があり、光ファイバ4の配線に制約を受け、装置全体の小型化という点で問題があった。
【0024】
そこで本実施形態では、放熱板3に光ファイバ4の直径より大きい幅の切り欠き部9を設けている。上記構成により、放熱特性を高めるために放熱板3を大きくしたとしても、光ファイバ4は、切り欠き部9を通ることができる。そのため、放熱板3の最も外側を避けるように大きく光ファイバ4を引き回す必要がない。言い換えれば、光ファイバ4は、小さな曲率半径で曲げて実装することができる。
【0025】
その結果、光ファイバ4は、放熱板3との接触による損傷を防ぎつつ、光ファイバ4の自由な配線が可能となり、装置全体の小型化についても実現することができる。
【0026】
〔第2の実施形態〕次に、第2の実施形態について図面を用いて説明する。図5は、本実施形態における光モジュール1の断面図である。
【0027】
〔構造の説明〕第1の実施形態と異なる点は、図5に示すように、光モジュール1の放熱板3に拡大部10を設けている点である。それ以外の構造、接続関係は、第1の実施形態と同様であり、筺体2と、放熱板3と、光ファイバ4とを備えている。
【0028】
第1の実施形態と同様に、本実施形態における放熱板3は、筺体2の上面部の設けられており、筺体2の上面部と一体成形されていてもよいし、別部材として筺体2の上面部にねじなどにより固定してもよい。放熱板3、筺体2の材質としては、熱伝導率が高いものであれば特に限定されず、それぞれ同一の材料でも、別々の材料でもよい。
【0029】
また放熱板3は、筺体2の断面積よりも大きく、少なくとも一部が筺体2から外周方向に延在している。そして放熱板3は、切り欠き部9を設けており、切り欠き部9の少なくとも一部に幅が光ファイバ4の直径より大きい、円形の拡大部10を設けている。図5では、切り欠き部9の最も奥の部分に、拡大部10を設けている。
【0030】
なお、拡大部10以外の切り欠き部9の幅は、光ファイバ4の直径よりも小さいことが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
〔作用・効果の説明〕放熱板3の放熱特性は、放熱板3の表面積の大きさに起因する。そのため、放熱板3と光ファイバ4との接触とを防ぐために、切り欠き部9全体の幅を光ファイバ4の直径より大きくすると、放熱板3の表面積が小さくなってしまう。
【0032】
そこで本実施形態における放熱板3は、切り欠き部9の一部に光ファイバ4の直径より大きい、円形の拡大部10を設けている。そして光ファイバ4は、切り欠き部9における拡大部10を通り、光コネクタなどと接続する。そのため、拡大部10以外の切り欠き部9の幅は、光ファイバ4の直径より大きく形成する必要がなく、放熱する表面積を確保することができる。
【0033】
その結果、装置全体の小型化を実現できるとともに放熱特性を向上させることができる。なお本実施形態では、拡大部10を切り欠き部9の奥に形成したが、切り欠き部9の途中に形成してもよい。
【0034】
〔第3の実施意形態〕次に、第3の実施形態について図面を用いて説明する。図6は、本実施形態における光モジュール搭載基板11の側面図である。
【0035】
〔構造の説明〕図6に示すように、本実施形態では、接続部12を介して光モジュール1を基板5に実装している点である。光モジュール1に関する構造、接続関係は、第1の実施形態と同様であり、筺体2と、放熱板3と、光ファイバ4とを備えている。
【0036】
光モジュール1は、リード形状の接続部12を筐体2の両側面部に複数設けており、接続部12はそれぞれ筐体2から下方に延伸している。また接続部12は、筐体2の下面と対向して設けられた基板5のスルーホールに挿入実装を行う。接続部にはコネクタ等を用いてもよい。
【0037】
〔作用・効果の説明〕光モジュール1の小型化が進むと、筐体2の高さについても低背化が進む。つまり、筐体2の低背化が進むと、筐体2の上面および放熱板3は、徐々に基板5に近づいていき、放熱板3と基板5との距離が小さくなる。
【0038】
図3や図4に示すように、放熱板3に切り欠き部9が設けられていない場合、放熱板3と基板5との距離が小さくなると、光ファイバ4が放熱板3に接触し、光ファイバ4が損傷してしまう可能性が高くなる。
【0039】
本実施形態における光モジュール搭載基板11は、光モジュール1の放熱板3に切り欠き部9を設けているため、光モジュール1の低背化を進め、放熱板3と基板5との距離を近接させた場合でも、光ファイバ4は切り欠き部9を通ることができる。
【0040】
つまり、放熱板3に切り欠き部9を設けることで、光モジュールの小型化を進めるとともに、光ファイバ4の品質確保も同時に実現することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 光モジュール
2 筐体
3 放熱板
4 光ファイバ
5 基板
6 光送信モジュール
7 光受信モジュール
8 放熱シート
9 切り欠き部
10 拡大部
11 光モジュール搭載基板
12 接続部
20 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を収容し、光ファイバと接続する穴を設けた筐体と、
前記筐体の上部に切り欠き部を有する放熱板とを備え、
前記光ファイバは前記切り欠き部を通すことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記切り欠き部の幅は、前記光ファイバの直径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記光ファイバの直径より幅の大きい拡大部を備え、
前記拡大部以外の前記切り欠き部の幅は、前記光ファイバの直径より小さいことを特徴と請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記放熱板に設けられた前記切り欠き部と、前記筐体に設けられた前記穴は、前記筐体の同じ側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光ファイバは、前記切り欠き部と接触しないで配線されていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光ファイバは、前記切り欠き部側へ曲げて配線することを特徴とする請求項1乃至5に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記放熱板は前記筐体と一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記放熱板と、前記筐体は同じ材質であることを特徴とする請求項7に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記放熱板は、前記筐体にネジ留めにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至6に記載の光モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の光モジュールが接続部を介して基板と接続していることを特徴とする光モジュール搭載基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173393(P2012−173393A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33168(P2011−33168)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】