説明

光モジュール

【課題】光半導体素子の気密封止性が良好な光モジュールを提供する。
【解決手段】透明な電気配線基板11の一方の面11aに光半導体素子21を配置し、他方の面11bに光半導体素子21と光送受信するためのポリマ導波路12を設け、そのポリマ導波路12の光半導体素子21に対向する位置に反射面13を形成した光モジュールであって、光半導体素子21をパッケージ14内に収容し、そのパッケージ14を電気配線基板11に気密に固定すると共に、反射面13をポリマ導波路12の端面を傾斜させて形成した斜面にメタルメッキ17を施して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線基板にLD或いはPD等の光半導体素子とポリマ導波路を備えた光モジュール関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルな電気配線基板にポリマ導波路とLD等の光半導体素子を設け、光−電気変換機能を有する光モジュールが提案されている。光モジュールは、電気配線基板上の一方の面に光半導体素子を搭載し、他方の面に光半導体素子と光送受信するポリマ導波路が設けられている。ポリマ導波路と光信号の送受信を行う光半導体素子としては、面発光型のLDが用いられ、他の関連回路素子(チップ)と共に搭載される。
【0003】
また、光モジュールには、LDからポリマ導波路に向かって出射する光信号をポリマ導波路のコアに入射させるためのミラー構造が設けられている。例えば、そのミラー構造は、ポリマ導波路のコアに対して斜め(特に、45°)に切断し、その切断面を光信号の反射面とするものである。
【0004】
また、特許文献1では、ポリマ導波路にミラー構造を形成し、そのミラー構造に位置して、光−電気変換を有する有機導電体膜を形成して、ポリマ導波路からの光信号を光−電気変換することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−264560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LD等の光半導体素子を、電気配線基板を介してポリマ導波路と光学的結合させた光モジュールでは、光半導体素子に水分(水蒸気)が浸入して、その水分により光半導体素子の特性を劣化させる、及び素子寿命を短くしてしまう問題があった。
【0007】
また、端面を斜めに切断したポリマ導波路では、その端面(切断面)が粗く形成され、光信号の反射時の損失が大きくなるといった別の問題点もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光半導体素子の気密封止性が良好な光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、透明な電気配線基板の一方の面に光半導体素子を配置し、他方の面に上記光半導体素子と光送受信するためのポリマ導波路を設け、そのポリマ導波路の上記光半導体素子に対向する位置に反射面を形成した光モジュールであって、上記光半導体素子をパッケージ内に収容し、そのパッケージを上記電気配線基板に気密に固定すると共に、上記反射面を上記ポリマ導波路の端面を傾斜させて形成した斜面にメタルメッキを施して形成した光モジュールである。
【0010】
請求項2の発明は、上記メタルメッキが、上記ポリマ導波路と上記電気配線基板の一部であって少なくとも上記パッケージに対向する部分を覆う請求項1に記載の光モジュールである。
【0011】
請求項3の発明は、上記気密パッケージは電気配線基板に半田接着されている請求項1または2に記載の光モジュールである。
【0012】
請求項4の発明は、上記光半導体素子が、上記パッケージの上記電気配線基板に対向する面に設けられ、その面には光半導体素子を外部に電気的接続するためのスルーホールが形成されている請求項1〜3いずれかに記載の光モジュールである。
【0013】
請求項5の発明は、上記パッケージが、セラミック或いはSiで形成されている請求項1〜4いずれかに記載の光モジュールである。
【0014】
請求項6の発明は、上記パッケージが、無機フィラーを含有する樹脂で形成されている請求項1〜4いずれかに記載の光モジュールである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光半導体素子の気密封止性を良くすることで、光半導体素子の信頼性、耐久性が向上するという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1(a),図1(b)は本発明に係る好適な実施の形態の光モジュールを示す図であり、図1(a)は上方斜視図、図1(b)は下方斜視図、図2は側面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施の形態の光モジュール10は、透明な電気配線基板11の一方の面11aに光半導体素子を配置し、他方の面11bに光半導体素子と光送受信するためのポリマ導波路12を設け、そのポリマ導波路12の光半導体素子に対向する位置に反射面を形成し、光半導体素子をパッケージ14内に収容し、そのパッケージ14を電気配線基板11に気密に固定したものである。
【0019】
電気配線基板11は、樹脂を用いて形成された光学的に略透明な基板である。電気配線基板11の表面11aには図示されない金属膜の電気配線パターンが形成されている。電気配線基板11は、可撓性を有するフレキシブル電気配線基板でもよい。
【0020】
電気配線基板11の一方の面11aには、パッケージ(気密パッケージ)14が設けられ、その気密パッケージ14内には面発光型のレーザダイオード(LD)或いはフォトダイオード(PD)などの光半導体素子が配置されている。
【0021】
光半導体素子(光電子デバイス)は湿気を嫌うため、雰囲気の水分量を4000ppm以下にして光電子デバイスの製品寿命を確保しなくてはならない。そのためにはパッケージ14に求められる気密性を10-8(Pa・m3/s)以下にする必要がある。
【0022】
図1(b)に示すように、電気配線基板11の他方の面11bには、ポリマ導波路12が設けられている。ポリマ導波路12は、その先端が電気配線基板11を介して光半導体素子の位置になるよう形成されている。ポリマ導波路12は、樹脂(ポリマ)で形成された光導波路であり、光路となるコア15と、そのコア15を覆いコア15より屈折率の低い樹脂で形成されたクラッドとからなる。ポリマ導波路12は、樹脂で形成されているので、電気配線基板11と同じく可撓性を有する。本実施の形態では、1本のコア(光路)15が形成された1チャネルのポリマ導波路12を形成したが、チャネル数及び光路のパターンは図示されたものに限定されない。
【0023】
図2に示すように、ポリマ導波路12の先端には、ポリマ導波路12を伝搬した光を光半導体素子に向けて出射する、或いは光半導体素子から出射した光をポリマ導波路12内に入射させるための反射面13が形成されている。本実施の形態では、反射面13は、ポリマ導波路12の先端がコア15に対して略45°の斜面に形成されてなる。
【0024】
さらに、本実施の形態では、ポリマ導波路12の反射面13は、斜面にメタルメッキ17が施されて形成されている。
【0025】
また、メタルメッキ17は、ポリマ導波路12の先端だけでなく、ポリマ導波路12と電気配線基板11の一部であって少なくとも気密パッケージ14に対向する部分を覆って蒸着されている。例えば、図2では、メタルメッキ17を形成する範囲Lが、気密パッケージ14の長さSよりも大きい。
【0026】
気密パッケージ14について説明する。
【0027】
図3、図4に示すように、気密パッケージ14は、一辺がそれぞれ数mmの略直方体状に形成されたバルクに、電気配線基板11に臨んで光半導体素子21を収容する収容穴22が形成され、その収容穴22は開口している。光半導体素子21は、収容穴22の底面24に設けられ、その底面24には、光半導体素子21に接続される電気配線パターン27が形成され、さらに、光半導体素子21を外部に電気的に接続するためのスルーホール25が形成されている。これにより、光半導体素子21と外部とで電気信号の送受信を行うことができる。
【0028】
気密パッケージ14は、耐湿性のよい材料で形成されるのが好ましい。耐湿性のよい材料としてはセラミック、或いはSi等が挙げられる。気密パッケージ14をセラミック或いはSiで形成することにより、気密パッケージ14の水分(高湿度)による劣化を防ぐ。
【0029】
或いは、気密パッケージ14は、樹脂で形成されてもよい。樹脂は、上記のセラミック、Siに比べて安価であり、パッケージへの加工が容易である。ただし、樹脂は耐湿性に劣るために、樹脂に無機フィラーを含有させた材料を用いてパッケージを形成することが好ましい。無機フィラーを含有させることで、耐湿性を向上させることができる。
【0030】
図5、図6に示すように、気密パッケージ14は、その収容穴22を電気配線基板11に向けて電気配線基板11に固定されることで、収容穴22と電気配線基板11の表面11aとで、外部から遮断された収容室23を形成する。これにより、収容穴22の底面24は収容室23の天井24となり、光半導体素子21は、気密パッケージ14内の電気配線基板11に対向する面(天井24)に形成されたこととなる。
【0031】
さらに、気密パッケージ14は、半田26を用いて電気配線基板11に接着されることで、収容室23の気密性を高くすることができる。
【0032】
以上において、図6に示すように、光モジュール10では、ポリマ導波路12のコア15を伝搬した光信号が、反射面13で全反射されて図示の矢印のように光路が変換され、電気配線基板11を通して光半導体素子21に入射される。
【0033】
また逆に、光半導体素子21からの光信号が、電気配線基板11を通して反射面13で全反射されてポリマ導波路12のコア15に入射される。
【0034】
本実施の形態の光モジュール10は、光半導体素子21を気密パッケージ14に収容し、気密パッケージ14を電気配線基板11上に固定して収容穴22の開口を電気配線基板11で塞ぐことにより、収容室23の気密性を高く保持することができる。従って、収容室23は、光モジュール外部から遮断されているので、外部環境に含まれる水分が収容室23内に浸入して、光半導体素子21に触れることがない。よって、光モジュール10は、光半導体素子21の光学特性の劣化や素子寿命の短縮を防ぐことができる。すなわち、光モジュール10は、外部環境に対する信頼性を向上させることができる。
【0035】
また、ポリマ導波路の端面を斜面に切断しただけで形成した反射面では、光信号を全反射させる際の損失が大きくなってしまうが、本光モジュール10では、斜面に形成されたポリマ導波路12の先端にメタルメッキ17を蒸着して反射面13を形成することで、光信号の全反射時の損失を低減することができる。
【0036】
さらに、メタルメッキ17を、ポリマ導波路12の反射面13、及び、ポリマ導波路12と電気配線基板11の一部であって少なくとも気密パッケージ14に対向する部分を覆って形成することにより、光モジュール外部の水分が、電気配線基板11に染み込んで、収容室23内へ浸入することを防ぐことができる。
【0037】
したがって、メタルメッキ17は、ポリマ導波路12の反射面13の反射損失(散乱損失)を低減する役割と、電気配線基板11を浸透して収容室23内へ浸入する水分に対する防御壁としての役割とを有している。
【0038】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る好適な実施の形態の光モジュールを示す図であり、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【図2】図1の光モジュールを示す側面図である。
【図3】気密パッケージを示す斜視図である。
【図4】図3の気密パッケージの部分破断図である。
【図5】図1の光モジュールの要部拡大側面図である。
【図6】図1の光モジュールの要部拡大断面図である
【符号の説明】
【0040】
10 光モジュール
11 電気配線基板
12 ポリマ導波路
13 反射面
14 気密パッケージ
15 コア
17 メタルメッキ
21 光半導体素子
23 収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な電気配線基板の一方の面に光半導体素子を配置し、他方の面に上記光半導体素子と光送受信するためのポリマ導波路を設け、そのポリマ導波路の上記光半導体素子に対向する位置に反射面を形成した光モジュールであって、
上記光半導体素子をパッケージ内に収容し、そのパッケージを上記電気配線基板に気密に固定すると共に、上記反射面を上記ポリマ導波路の端面を傾斜させて形成した斜面にメタルメッキを施して形成したことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
上記メタルメッキは、上記ポリマ導波路と上記電気配線基板の一部であって少なくとも上記パッケージに対向する部分を覆う請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
上記パッケージは電気配線基板に半田接着されている請求項1または2いずれかに記載の光モジュール。
【請求項4】
上記光半導体素子は、上記パッケージの上記電気配線基板に対向する面に設けられ、その面には光半導体素子を外部に電気的接続するためのスルーホールが形成されている請求項1〜3いずれかに記載の光モジュール。
【請求項5】
上記パッケージは、セラミック或いはSiで形成されている請求項1〜4いずれかに記載の光モジュール。
【請求項6】
上記パッケージは、無機フィラーを含有する樹脂で形成されている請求項1〜4いずれかに記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−193007(P2007−193007A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10065(P2006−10065)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】