説明

光モジュール

【課題】光トランシーバの筐体に容易に収容可能な光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、セラミック層4〜6からなり光素子を内蔵している積層セラミックパッケージ2と、積層セラミックパッケージ2の底面に半田で接合されたフレキシブル基板3と、を備えている。積層セラミックパッケージ2の最下層である下部セラミック層4の側面4aは、下部セラミック層4の上に積層された中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置している。下部セラミック層4の側面4aには、ハーフビア10が設けられている。フレキシブル基板3は、下部セラミック層4の下面に半田で接合されており、下部セラミック層4の側面4aの側方に延びている。積層セラミックパッケージ2とフレキシブル基板3との接合時には、ハーフビア10に半田フィレットが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等で使用される光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の光モジュールは、光素子を内蔵するセラミックパッケージと、このセラミックパッケージの底面にBGA(Ball Grid Array)により接合されたフレキシブル基板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許7476040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックパッケージとフレキシブル基板とをBGAにより接合する場合、セラミックパッケージからフレキシブル基板への熱の拡散が効率的でない。このため、従来から、リフローなどの方法によって、セラミックパッケージの底面とフレキシブル基板とを半田で接合することが広く行われている。
【0005】
ところで、このような光モジュールは、光トランシーバの筐体に収容して用いられる場合がある。その場合、セラミックパッケージの底面に対して垂直に配置された回路基板とフレキシブル基板とを接合するためには、フレキシブル基板を湾曲させる必要がある。その際、半田が付着した領域ではフレキシブル基板を湾曲させることができないので、フレキシブル基板を湾曲させる位置がセラミックパッケージから比較的離れた位置となってしまう場合がある。その場合、フレキシブル基板の湾曲部分がセラミックパッケージの底面に沿った方向に大きく突出してしまい、当該光モジュールを光トランシーバの筐体に収容しにくくなる。
【0006】
本発明の目的は、光トランシーバの筐体に容易に収容可能な光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光モジュールは、光素子を内蔵する積層セラミックパッケージと、積層セラミックパッケージの底面に半田で接合されたフレキシブル基板と、を備える光モジュールにおいて、積層セラミックパッケージにおける最下層のセラミック層の一側面には、積層セラミックパッケージとフレキシブル基板との接合時に半田フィレットを形成するための半田確認用凹部が設けられており、半田確認用凹部は、積層セラミックパッケージにおける他のセラミック層の対応する一側面よりも内側に位置しており、フレキシブル基板は、一側面の側方に延びるように積層セラミックパッケージの底面に半田で接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
このように本発明の光モジュールにおいては、積層セラミックパッケージの最下層のセラミック層の一側面には、半田確認用凹部が形成されている。このため、積層セラミックパッケージの底面とフレキシブル基板とを半田を用いて接合する際に、半田確認用凹部から溢れた半田で形成されるフィレットにより、半田の濡れ具合を目視で確認することができる。また、半田確認用凹部は、積層セラミックパッケージにおける他のセラミック層の対応する一側面よりも内側に位置している。したがって、フレキシブル基板上において、積層セラミックパッケージの外面よりも外側に半田が付着することが防止される。このため、積層セラミックパッケージに比較的近い位置において、フレキシブル基板を湾曲させることができる。その結果、積層セラミックパッケージからのフレキシブル基板の湾曲部分の突出が抑えられる。よって、本発明の光モジュールは、光トランシーバの筐体に容易に収容できる。
【0009】
好ましくは、最下層のセラミック層の一側面には、切り欠き部が形成されており、半田確認用凹部は、切り欠き部に設けられている。この場合には、多層セラミックパッケージの面付け加工の際に、隣接するセラミックシート同士の接続が可能となり、加工性が良好となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光トランシーバの筐体に容易に収容可能な光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる光モジュールの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係わる光モジュールの第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1に示した光モジュールの要部拡大図である。
【図4】図1に示した光モジュールを備えた光トランシーバを示す図である。
【図5】本発明に係わる光モジュールの第2実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)図1及び図2は、本発明に係わる光モジュールの第1実施形態を示す斜視図である。図3は、図1に示した光モジュールの要部拡大図である。各図において、光モジュール1は、発光素子を有する発光モジュールもしくは受光素子を有する受光モジュールとして用いられるものである。
【0014】
光モジュール1は、積層セラミックパッケージ2と、この積層セラミックパッケージ2の底面に接合されたフレキシブル基板3と、を備えている。積層セラミックパッケージ2の内部には、光素子(図示せず)及び複数の電子部品(図示せず)が収容されている。光素子は、光モジュール1が発光モジュールである場合には、半導体レーザ等の発光素子であり、光モジュール1が受光モジュールである場合には、フォトダイオード等の受光素子である。
【0015】
積層セラミックパッケージ2は、下部セラミック層4、中間セラミック層5及び上部セラミック層6からなる3層構造を有している。中間セラミック層5は、下部セラミック層4の上に積層され、上部セラミック層6は、中間セラミック層5の上に積層されている。これらのセラミック層4〜6は、加工性に優れるアルミナで形成されている。積層セラミックパッケージ2は、セラミック層4〜6を重ね合わせた状態で焼結することにより形成される。
【0016】
下部セラミック層4の外形は、略矩形となっている。下部セラミック層4の下面には、金属製の回路配線パターン(メタライズ層)7と、外部接続端子としての複数の配線パッド8と、が設けられている。また、下部セラミック層4の上面には、金属製の回路配線パターン(図示せず)が設けられている。下部セラミック層4には、上下の回路配線パターン同士、或いは、配線パッド8と回路配線パターンとを電気的に接続する複数のビア9が、下部セラミック層4を貫通するように設けられている。
【0017】
中間セラミック層5の外形は、略矩形となっている。また、中間セラミック層5の厚みは、下部セラミック層4と同様である。中間セラミック層5の上面及び下面には、金属性の回路配線パターン(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0018】
上部セラミック層6は、略矩形環状を呈しており、積層セラミックパッケージ2の側壁を構成している。上部セラミック層6の厚みは、下部セラミック層4及び中間セラミック層5の厚みよりも大きくなっている。
【0019】
上部セラミック層6の上面には、略矩形環状の金属リング15がロウ付け等により固定されている。金属リング15の上面には、金属製のホルダ16がシームシール等により気密に固定されている。ホルダ16は、金属リング15に接合され、積層セラミックパッケージ2の上部を覆うフタ部17と、このフタ部17と一体化された筒状部18とを有している。筒状部18の軸心は、積層セラミックパッケージ2の上下面に対して直交している。
【0020】
ホルダ16には、金属製のジョイント19がYAG溶接等により固定されている。ジョイント19は、基部20と、この基部20と一体化された筒状部21とを有している。ジョイント19の基部20には、金属スリーブ22がYAG溶接等により固定されている。金属スリーブ22の内部には、積層セラミックパッケージ2に内蔵された光素子と光結合される光ファイバ(図示せず)が収容されている。この金属スリーブ22の外周面には、環状の保持溝23aを有するフランジ部23が設けられている。
【0021】
ここで、下部セラミック層4の4つの側面4a〜4dの各々には、複数(ここでは3つ)のハーフビア10がそれぞれ設けられている。ハーフビア10は、下部セラミック層4の上面と下面とを連通する略半円柱形状の凹部である。ハーフビア10は、内面に導電性の薄膜が形成されており、下部セラミック層4の上下の回路配線パターン同士、或いは、配線パッド8と回路配線パターンとを電気的に接続している。また、ハーフビア10は、下部セラミック層4の下面(積層セラミックパッケージ2の底面)に半田を用いてフレキシブル基板3を接合する際に、半田フィレットを形成するために利用される。
【0022】
下部セラミック層4の側面4aは、中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置している。また、下部セラミック層4の側面4aに対向する側面4bは、中間セラミック層5の対応する側面5bよりも内側に位置している。つまり、下部セラミック層4の側面4aと側面4bとで規定される長さ寸法は、中間セラミック層5の側面5aと側面5bとで規定される長さ寸法よりも小さい。このため、下部セラミック層4の側面4a,4bに設けられたハーフビア10は、中間セラミック層5の対応する側面5a,5bよりも内側にそれぞれ位置している。一方、下部セラミック層4のもう一方の互いに対向する側面4c,4dは、中間セラミック層5の対応する側面5c,5dとそれぞれ略面一となっている。つまり、下部セラミック層4の側面4cと側面4dとで規定される長さ寸法は、中間セラミック層5の側面5cと側面5dとで規定される長さ寸法と略同一である。
【0023】
中間セラミック層5の側面5c,5dには、複数(ここでは3つ)のハーフビア11がそれぞれ設けられている。ハーフビア11は、中間セラミック層5の上面と下面とを連通する凹部である。ハーフビア11は、内面に導電性の薄膜が形成されており、中間セラミック層5の上下の回路配線パターン同士を電気的に接続している。ハーフビア11は、下部セラミック層4の側面4c,4dに設けられたハーフビア10と対応する位置にそれぞれ配置されている。このため、ハーフビア11の内面は、下部セラミック層4の側面4c,4dに設けられたハーフビア10の内面と連続している。
【0024】
フレキシブル基板3は、下部セラミック層4の側面4aの側方(外方)に延びるように、下部セラミック層4の下面に半田で接合されている。フレキシブル基板3と下部セラミック層4の下面との半田による接合には、例えば、リフローなどの方法を用いることができる。フレキシブル基板3の基端側部分3aの表面には、配線パッド(図示せず)が設けられている。このため、フレキシブル基板3は、その基端側部分3aにおいて下部セラミック層4の下面と半田により接合されることで、下部セラミック層4の下面の回路配線パターン7及び配線パッド8と電気的に接続されている。
【0025】
フレキシブル基板3は、任意の位置で湾曲させることができる。本実施形態では、フレキシブル基板3は、下部セラミック層4の側面4a近傍の位置から湾曲している。フレキシブル基板3の先端部3bの表面には、配線パッド(図示せず)が設けられている。
【0026】
このような光モジュール1は、図4に示されるように、光トランシーバ30に組み込まれる。光トランシーバ30はハウジング31を有し、このハウジング31の前端側部分は、光モジュール1と結合される光コネクタ(図示せず)をガイドするレセプタクル部32を形成している。レセプタクル部32には、光モジュール1を保持するための保持用突起33が設けられている。この保持用突起33が光モジュール1における金属スリーブ22の保持溝23aに嵌合することで、光モジュール1がハウジング31に保持された状態となる。
【0027】
また、光トランシーバ30内には、電子部品(図示せず)が実装される回路基板34が配置されている。回路基板34は、実装面34aが積層セラミックパッケージ2の底面と直交するように配置されている。実装面34aには、フレキシブル基板3の先端部3bが接合されている。したがって、フレキシブル基板3の先端部3bの表面に設けられた配線パッドと回路基板34とが電気的に接続されている。よって、下部セラミック層4の下面の配線パッド8と回路基板34の実装面34aの外部接続端子とは、フレキシブル基板3を介して電気的に接続されている。
【0028】
以上のように第1実施形態の光モジュール1は、セラミック層4〜6を有する積層セラミックパッケージ2を備えており、積層セラミックパッケージ2の最下層である下部セラミック層4の側面4aには、ハーフビア10が設けられている。このため、積層セラミックパッケージ2の底面とフレキシブル基板3とを半田を用いて接合する際に、ハーフビア10から溢れた半田で形成されるフィレットにより、半田の濡れ具合を目視で確認することができる。
【0029】
また、第1実施形態の光モジュール1においては、下部セラミック層4の側面4aに設けられたハーフビア10が、中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置している。このため、フレキシブル基板3上において、積層セラミックパッケージ2の外側面よりも外側に半田が付着することが防止されるので、積層セラミックパッケージ2に比較的近い位置において、フレキシブル基板3を湾曲させることができる。その結果、フレキシブル基板3の湾曲部分が積層セラミックパッケージ2から突出することが抑えられる。よって、光モジュール1を光トランシーバ30のハウジング31に収容する際に、フレキシブル基板3の湾曲部分と光トランシーバ30のハウジング31との接触が防止されるので、光モジュール1を光トランシーバ30のハウジング31に容易に収容できる。
【0030】
なお、上記第1実施形態では、下部セラミック層4の側面4a,4bの各々が、中間セラミック層5の対応する側面5a,5bの各々よりも内側に位置するものとしたが、これに限らず、下部セラミック層4の側面4aのみが、中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置するものとしてもよい。つまり、下部セラミック層4の4つの側面のうちの少なくとも一つの側面に設けられたハーフビア10が、中間セラミック層5の対応する側面よりも内側に位置すると共に、フレキシブル基板3がその側面の側方に延びるように積層セラミックパッケージ2の底面に接合されていればよい。
【0031】
また、上記第1実施形態では、ハーフビア10は、下部セラミック層4の各側面4a〜4dにそれぞれ3つずつ設けられているが、フレキシブル基板3の延びる側の下部セラミック層4の側面(側面4a)に少なくとも一つ設けられていればよい。
【0032】
さらに、上記第1実施形態では、積層セラミックパッケージ2を三層構造としたが、積層セラミックパッケージ2の層数としては2層以上であればよい。
【0033】
(第2実施形態)図5は、本発明に係わる光モジュールの第2実施形態を示す斜視図である。この光モジュール1Aは、上記の積層セラミックパッケージ2に換えて積層セラミックパッケージ2Aを備えている点で上記の光モジュール1と異なっており、その他の構成は光モジュール1と同様である。そして、積層セラミックパッケージ2Aは、上記の下部セラミック層4に換えて下部セラミック層40を有している点で上記の積層セラミックパッケージ2と異なっており、その他の構成は積層セラミックパッケージ2と同様である。
【0034】
下部セラミック層40は、互いに対向する側面40a,40bを有している。下部セラミック層40の側面40a,40bは、中間セラミック層5の対応する側面5a,5bとそれぞれ略面一とされている。また、下部セラミック層40の側面40a,40bには、切り欠き部40g,40hがそれぞれ形成されている。そして、切り欠き部40g,40hの各々の底面には、複数(ここでは3つ)のハーフビア10がそれぞれ設けられている。下部セラミック層40の側面40a側に設けられたハーフビア10は、切り欠き部40gの底面に設けられていることから、中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置している。また、下部セラミック層40の側面40b側に設けられたハーフビア10は、切り欠き部40hの底面に設けられていることから、中間セラミック層5の対応する側面5bよりも内側に位置している。
【0035】
このような光モジュール1Aにおいては、下部セラミック層40の側面40a側のハーフビア10は、中間セラミック層5の対応する側面5aよりも内側に位置している。このため、この光モジュール1Aは、第1実施形態の光モジュール1と同様の理由により、積層セラミックパッケージ2からのフレキシブル基板3の湾曲部分の突出が抑えられるので、光トランシーバ30のハウジング31に容易に収容できる。また、この光モジュール1Aによれば、多層セラミックパッケージ2Aの面付け加工の際に、隣接するセラミックシート同士の接続が可能となり、加工性が良好となる。
【符号の説明】
【0036】
1,1A…光モジュール、2,2A…積層セラミックパッケージ、3…フレキシブル基板、3a…基端側部分、3b…先端部、4,40…下部セラミック層(最下層のセラミック層)、4a,4b,4c,4d,5a,5b,5c,5d,40a,40b…側面、5…中間セラミック層(他のセラミック層)、6…上部セラミック層、7…回路配線パターン、8…配線パッド、9…ビア、10…ハーフビア(半田確認用凹部)、11…ハーフビア、15…金属リング、16…ホルダ、17…フタ部、18…筒状部、19…ジョイント、20…基部、21…筒状部、22…金属スリーブ、23…フランジ部、23a…保持溝、30…光トランシーバ、31…ハウジング、32…レセプタクル部、33…保持用突起、34…回路基板、34a…実装面、40g,40h…切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を内蔵する積層セラミックパッケージと、前記積層セラミックパッケージの底面に半田で接合されたフレキシブル基板と、を備える光モジュールにおいて、
前記積層セラミックパッケージにおける最下層のセラミック層の一側面には、前記積層セラミックパッケージと前記フレキシブル基板との接合時に半田フィレットを形成するための半田確認用凹部が設けられており、
前記半田確認用凹部は、前記積層セラミックパッケージにおける他のセラミック層の対応する一側面よりも内側に位置しており、
前記フレキシブル基板は、前記一側面の側方に延びるように前記積層セラミックパッケージの底面に半田で接合されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記最下層のセラミック層の前記一側面には、切り欠き部が形成されており、
前記半田確認用凹部は、前記切り欠き部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100769(P2011−100769A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252932(P2009−252932)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】