説明

光モジュール

【課題】同一基板上の複数個の光素子からの漏れ光等が隣り合う光素子等に影響しにくくして、クロストークノイズを大幅に低減できるようにした光モジュールを提供する。
【解決手段】基板1の第1溝1a内の内部導波路16と、ミラー部15と、光素子12a,12bと外部導波路2を備えている。基板1の第1溝1aは複数本が独立状態で略平行に形成され、隣り合う第1溝1a−1,1a−2同士は基板1の端面からの長さL1,L2を異ならせている。この長さの異なる第1溝1a−1,1a−2の先端部にそれぞれ形成されたミラー部15と対向するように、光素子12a,12bが基板1の表面に実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光モジュールは、基板の表面に形成された溝内に設けられた内部導波路と、この溝の先端部に形成された光路変換用のミラー部とを備えている。また、このミラー部と対向するように基板の表面に実装され、ミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を発光し、若しくはミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子を備えている。さらに、内部導波路のコア部と光学的に結合されるコア部を有する外部導波路を備えている。(特許文献1参照)。
【0003】
このような光モジュールにおいて、双方向の伝送や伝送容量を増大させるためには、複数個の光モジュールを用いる必要があるので、大型化する。そこで、小型・低背でかつ双方向あるいは複数チャンネルの伝送が可能な光モジュールの実現化が望まれている。
【0004】
このような光モジュールを実現化するためには、基板の表面に複数個の光素子を近接させて実装することが考えられ、この複数個の光素子の間隔に合わせて、内部導波路とミラー部を狭いピッチで形成する必要がある。
【0005】
なお、基板の上に、基板の端面からの長さを異ならせた複数の光伝送路を形成し、各光伝送路の終端に光素子をそれぞれ近接して配置し、各光素子は、発光素子か受光素子のいずれか1種類である光モジュールが提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2では、クロストークノイズの対処が全くなされておらず、かつ光ファイバを用いる場合には、異なる長さで光ファイバ長を加工する必要があるので、作製が非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−260227号公報
【特許文献2】特開2003−294964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数個の光素子を近接させ、また、内部導波路とミラー部を狭いピッチで形成すると、光素子からの漏れ光や、ミラー部、内部導波路からの散乱光が隣り合う光素子のミラー部や内部導波路に入り込んで、クロストークノイズが発生する。このようなクロストークノイズは、伝送エラーの原因となるため、可能な限り低減させたいという要望がある。
【0008】
本発明は、前記要望に応えるためになされたもので、同一基板上の複数個の光素子からの漏れ光等が隣り合う光素子等に影響しにくくして、クロストークノイズを大幅に低減できるようにした光モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、基板の表面に形成された第1溝内に設けられた内部導波路と、この第1溝の先端部に形成された光路変換用のミラー部と、このミラー部と対向するように基板の表面に実装され、ミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を発光し、若しくはミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、内部導波路のコア部と光学的に結合されるコア部を有する外部導波路を備えた光モジュールにおいて、前記基板の第1溝は複数本が独立状態で略平行に形成され、隣り合う第1溝同士は基板の端面からの長さを異ならせて、この長さの異なる第1溝の先端部にそれぞれ形成された前記ミラー部と対向するように、前記光素子が基板の表面にそれぞれ実装されていることを特徴とする光モジュールを提供するものである。
【0010】
前記複数個の光素子には、発光素子と受光素子の双方が含まれていて、前記発光素子は、前記受光素子より長さが短い内部導波路のミラー部と対向するように、前記基板の表面に実装されている構成とすることができる。
【0011】
前記基板の表面に、前記内部導波路の第1溝と連なる第2溝が形成され、この第2溝に前記外部導波路を嵌め込み固定することで、内部導波路と外部導波路の光軸が一致するように設定されている構成とすることができる。
【0012】
前記隣り合う第1溝の間の仕切り壁部分と途切れないように、隣り合う第2溝の間に仕切り壁部分が形成されている構成とすることができる。
【0013】
前記外部導波路は、複数チャンネルの光ファイバである構成とすることができる。
【0014】
前記外部導波路は、複数チャンネルのフレキシブル導波路である構成とすることができる。
【0015】
前記各光素子の間の基板の表面に、前記内部導波路のクラッド部と同材料の凸形層が形成されている構成とすることができる。
【0016】
前記凸形層は、光を吸収する吸収体である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣り合う第1溝の長さを異ならせて、異なる長さの第1溝の先端部のミラー部とそれぞれ対向するように、光素子を基板の表面にそれぞれ実装することにより、長さ方向に互い違いとなった隣り合う光素子の間に大きな距離を隔てることができる。
【0018】
したがって、光素子からの漏れ光や、ミラー部、内部導波路からの反射散乱光が隣り合う光素子のミラー部や内部導波路に入り込みにくくなるので、クロストークノイズが発生しにくくなる。また、内部導波路は、複数本が独立状態で略平行に形成された第1溝内に設けているから、隣り合う第1溝の仕切り壁部分で内部導波路同士も干渉しなくなる。
【0019】
このように、基板に複数個の光素子を幅方向に近接させて実装し、光素子の間隔に合わせて、内部導波路とミラー部を狭いピッチで形成することで、小型・低背でかつ双方向あるいは複数チャンネルの伝送が可能となる。加えて、隣り合う光素子の間に大きな距離を隔てること、および隣り合う内部導波路同士の干渉を防止することが相俟って、クロストークノイズを大幅に低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光モジュールの概略側面図である。
【図2】図1の発光側の光モジュールの第1基板であり、(a)は側面断面図、(b)は(a)のI−I線断面図、(c)は(a)のII−II線断面図である。
【図3】図2の第1基板であり、(a)は斜視図、(b)は内部導波路を形成した斜視図である。
【図4】第1基板であり、(a)は発光素子を実装した斜視図、(b)は光ファイバを挿入した斜視図である。
【図5】(a)は第1基板に押さえブロックを固定した斜視図、(b)は光ファイバの斜視図である。
【図6】(a)は実施形態に係る基板の平面図、(b)は第1溝と内部導波路の拡大平面図である。
【図7】(a)は図6(a)のIII−III線拡大断面図、(b)は図6(a)のIV−IV線拡大断面図である。
【図8】第1溝の間の仕切り壁部分と途切れないように第2溝の間の仕切り壁部分を形成した基板の平面図である。
【図9】変形例であり、(a)は基板の平面図、(b)は(a)のV−V線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る光モジュールの概略側面図である。図2は図1の発光側の光モジュールの第1基板1であり、(a)は側面断面図、(b)は(a)のI−I線断面図、(c)は(a)のII−II線断面図である。図3は第1基板1であり、(a)は斜視図、(b)は内部導波路16を形成した斜視図である。図4は第1基板1であり、(a)は発光素子12aを実装した斜視図、(b)は光ファイバ2を挿入した斜視図である。図5(a)は押さえブロック24を固定した斜視図、図5(b)は光ファイバ2の斜視図である。
【0022】
ここで、図1〜図5は、第1基板1,3の1本の第1溝1a内に1本の内部導波路16を形成した、単チャンネルの光モジュールであるが、この図1〜図5によって、先ず、光モジュールの概要を説明し、その後、本発明に係る多チャンネルの光モジュールについて、図6〜図9で詳細に説明する。
【0023】
図1において、光モジュールは、発光側の第1基板(マウント基板)1と、受光側の第1(マウント)基板3と、この第1基板1,3を光学的に結合する光ファイバ2とを備えている。
【0024】
第1基板1,3は、実装時の熱の影響や使用環境による応力の影響を避けるために、剛性が必要である。また、光伝送の場合は、発光素子12aから受光素子12bまでの光結合効率が必要になるので、発光素子12aと受光素子12bを高精度に実装することや使用中の位置変動を極力抑制する必要がある。このため、第1基板1,3として、本実施形態ではシリコン(Si)基板が採用されている。
【0025】
特にシリコン基板であれば、シリコンの結晶方位を利用して表面に高精度のエッチング溝加工が可能〔この溝を利用して高精度なミラー部15(後述)、溝内に内部導波路16(後述)を形成する。〕となる。また、シリコン基板は、平坦性も良好である。
【0026】
第1基板1,3は、それよりもサイズが大きい第2基板(インタポーザ基板)6の表面(上面)にそれぞれ設置されている。各第2基板6の裏面(下面)には、他の回路装置に電気的に接続するためのコネクタ7がそれぞれ取付けられている。
【0027】
第1基板1の表面(上面)には、電気信号を光信号に変換する発光素子12aが発光面を下向きとしてバンプ12c(図2参照)でフリップチップ実装されている。また、第2基板6の表面には、この発光素子12aに電気信号を送信するためのIC回路が形成されたIC基板(信号処理部)4aが実装されている。
【0028】
発光素子12aとして、本実施形態では、半導体レーザである面発光レーザ〔VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)〕が採用されている。この発光素子12aはLED等でもよい。
【0029】
IC基板4aは、前記VCSELを駆動させるドライバICであり、発光素子12aの近傍に配設されている。そして、発光素子12aおよびIC基板4aは、第1基板1の表面に形成されたメタル回路(銅や金スパッタによるパターニング回路)に接続されている。
【0030】
第1基板1の表面には、図3(a)に示すように、略台形状の第1溝(導波路形成用溝)1aと、第1溝1aよりも深い略V字形状の第2溝1bが前後方向に連なって形成されている。
【0031】
第1溝1aの先端部には、発光素子12aの真下となる位置に、光路を90度屈曲させるための光路変換用のミラー部15が形成されている。
【0032】
第1基板1の第1溝1a内には、図3(b)に示すように、第1基板1の発光素子12aと光学的に結合する内部導波路16が設けられている。この内部導波路16は、ミラー部15から第2溝1bの方向に延在していて、第1溝1aの後端部1dと面一となっている。
【0033】
内部導波路16は、光が伝播する屈折率の高い断面略正方形状のコア部17と、それよりも屈折率の低いクラッド部18とから構成されている。図2(c)のように、コア部17の左右の両面は、クラッド部18で覆われている。
【0034】
図4(a)のように、内部導波路16が設けられた第1基板1の表面の所定位置には、発光素子12aが実装され、この発光素子12aとコア部17との間の空間には、図2(a)のように、光学透明樹脂(アンダーフィル材)13が充填されている。
【0035】
図1に戻って、受光側の第1基板3について説明する。この受光側の第1基板3の基本的な構成は、発光側の第1基板1と同様に構成されている。ただし、受光側の第1基板3の表面(上面)に、光信号を電気信号に変換する受光素子12bが受光面を下向きとしてバンプでフリップチップ実装されている。また、第2基板6の表面に、この受光素子12bに電気信号を送信するためのIC回路が形成されたIC基板(信号処理部)4bが実装されている点で、発光側の第1基板1と異なる。この受光素子12bとしては、PD(Photo Diode)が採用されており、IC基板4bは、電流・電圧の変換を行うTIA(Trans−impedance Amplifier)などの素子である。
【0036】
発光側の第1基板1と受光側の第1基板3およびIC基板4a,4bは、第2基板6の表面に取付けたシールドケース8でそれぞれシールドされていて、光ファイバ2は、シールドケース8の貫通孔8aを貫通させている。
【0037】
次に、光ファイバ(外部導波路)2を説明する。光ファイバ2は、図1および図5に示すように、発光側の第1基板1の内部導波路16のコア部17と、受光側の第1基板3の内部導波路16のコア部17とを光学的に結合可能なファイバコア部21を内部に有している。そして、このファイバコア部21の外周を包囲するファイバクラッド部22と、このファイバクラッド部22の外周を被覆する被覆部23とで構成されるコードタイプである。このファイバコア部21とファイバクラッド部22と被覆部23は円形状である。
【0038】
光ファイバ2は、図1のように、シールドケース8の貫通孔8aを貫通して第1基板1の第2溝1bの手前付近で被覆部23が剥がされて、ファイバクラッド部22が露出されている。
【0039】
そして、図2(a)(c)および図4(b)のように、第1基板1の第2溝1bに光ファイバ2のファイバクラッド部22を設置して、第1溝1aとの境部分の立ち上がり傾斜部でファイバクラッド部22の位置決めをする。このときに、第1基板1の内部導波路16のコア部17と光ファイバ2のファイバコア部21の光軸が一致した位置決め状態で光学的に結合されるようになる。
【0040】
第1基板1の表面の位置において、図2(a)および図5のように、光ファイバ2のファイバクラッド部22の上部には押えブロック24が配置され、この押えブロック24と第2溝1bとの間の空間には、接着剤14が充填されている。
【0041】
このように、光ファイバ2のファイバクラッド部22の先端側は、押えブロック24で第2溝1bに押え付けられた状態で、押えブロック24とともに第1基板1に接着剤14で接着固定されるようになる。
【0042】
一方、図6および図7は、本発明に係る多チャンネルの光モジュールである。図6(a)は基板1の平面図、同(b)は第1溝1a−1,1a−2と内部導波路16−1,16−2の拡大平面図である。なお、図6(b)では、クラッド部18の範囲をわかりやすくするために、クラッド部18にハッチングを施している。
【0043】
図7(a)は図6(a)のIII−III線拡大断面図、同(b)は図6(a)のIV−IV線拡大断面図である。
【0044】
基板1の表面には、複数本(本例では2本)の略台形状の第1溝1a−1,1a−2が独立状態で、つまり隣り合う第1溝1a−1,1a−2の間が仕切り壁部分1eで仕切られた状態で略平行に形成されている。
【0045】
そして、隣り合う第1溝1a−1,1a−2同士は第1基板1の端面(本例では第1溝1aの後端部1d)からの長さL1,L2を異ならせている。各第1溝1a−1,1a−2内には、前述と同様に、内部導波路16−1,16−2がそれぞれ設けられている。
【0046】
この長さの異なる第1溝1a−1,1a−2の先端部にそれぞれ形成されたミラー部15と対向するように、光素子(発光素子12aと受光素子12b)が第1基板1の表面に実装されている。本例では、長さL1の長い内部導波路16−1のミラー部15と受光素子12bを対向させ、長さL2の短い内部導波路16−2のミラー部15と発光素子12aを対向させている。なお、各内部導波路16−1,16−2のミラー部15に、発光素子12aだけを対向させること、あるいは受光素子12bだけを対向させることもできる。また、第1溝1a−1,1a−2は2本だけに限られるものではなく、3本以上であってもよい。この場合には、3本の隣り合う第1溝同士の長さが異なればよく、1本目と3本目の長さは等しくてもよい。4本以上の場合も同様に、隣り合っていない第1溝同士は長さが等しくてもよい。
【0047】
第1基板1の表面には、2本の第1溝1a−1,1a−2にそれぞれ連なる2本の略台形状の第2溝1b−1,1b−2が形成されている。この隣り合う第2溝1b−1,1b−2の間は、第2溝1b−1,1b−2の底部と第1溝1a−1,1a−2の底部との傾斜部分1hにおいて、第1溝1a−1,1a−2の間の仕切り壁部分1eと途切れた状態で、仕切り壁部分1fで仕切られている。
【0048】
光ファイバ(外部導波路)2は、図6(a)のように、各内部導波路16−1,16−2のコア部17と光学的に結合可能な2本の平行なファイバコア部21を有し(複数チャンネル)、各ファイバコア部21の外周はファイバクラッド部22で包囲されている。なお、光ファイバ2に代えて、複数チャンネルのフレキシブル導波路(外部導波路)を用いることもできる。
【0049】
そして、第2溝1b−1,1b−2に各ファイバクラッド部22,22をそれぞれ嵌め込み固定することで、内部導波路16−1,16−2の各コア部17と光ファイバ2の各ファイバコア部21の光軸が一致するように設定されている。
【0050】
図8のように、隣り合う第1溝1a−1,1a−2の間の仕切り壁部分1eと途切れないように、第2溝1b−1,1b−2を独立状態で形成することで、隣り合う第2溝1b−1,1b−2の間の仕切り壁部分1gを形成することもできる。
【0051】
前記のように光モジュールを構成すれば、第1基板1の隣り合う第1溝1a−1,1a−2長さL1,L2を異ならせる。そして、異なる長さL1,L2の第1溝1a−1,1a−2の先端部のミラー部15とそれぞれ対向するように、光素子(発光素子12aと受光素子12b)を第1基板1の表面に実装する。これにより、長さ方向に互い違いとなった隣り合う光素子(発光素子12aと受光素子12b)の間に大きな距離(スペース)S〔図6(a)参照〕を隔てることができる。
【0052】
したがって、光素子、特に発光素子12aからの漏れ光や、ミラー部15、内部導波路16−2からの反射散乱光が隣り合う光素子、特に受光素子12bのミラー部15や内部導波路16−1に入り込みにくくなる。これにより、クロストークノイズが発生しにくくなる。
【0053】
また、内部導波路16−1,16−2は、複数本(本例では2本)が独立状態で略平行に形成された第1溝1a−1,1a−2内に設けているから、隣り合う第1溝1a−1,1a−2の仕切り壁部分1eで内部導波路16−1,16−2同士も干渉しなくなる。
【0054】
このように、第1基板1に複数個の光素子(発光素子12aと受光素子12b)を幅方向に近接させて実装し、光素子(発光素子12aと受光素子12b)の間隔に合わせて、内部導波路16−1,16−2とミラー部15を狭いピッチで形成する。これにより、小型・低背でかつ双方向あるいは複数チャンネルの伝送が可能となる。
【0055】
加えて、隣り合う光素子(発光素子12aと受光素子12b)の間に大きな距離Sを隔てること、および隣り合う内部導波路16−1,16−2同士の干渉を防止することが相俟って、クロストークノイズを大幅に低減できるようになる。
【0056】
また、複数個の光素子に、発光素子12aと受光素子12bの双方が含まれている場合、発光素子12aは、受光素子12bより長さL2が短い内部導波路16−2のミラー部15と対向するように、第1基板1の表面に実装している。
【0057】
このように、発光素子12aは、受光素子12bよりも第1基板1の端面(本例では第1溝1aの後端部1d)側に配置する。これにより、発光素子12a側のミラー部15の向きの関係で、発光素子12a側のミラー部15の反射散乱光が受光素子12b側に影響しにくくなる。したがって、第1基板1に発光素子12aと受光素子12bの双方が実装されていても、クロストークノイズを大幅に低減できるようになる。
【0058】
さらに、第1基板1の表面に、内部導波路16−1,16−2の第1溝1a−1,1a−2と連なる第2溝1b−1,1b−2を形成する。そして、この第2溝1b−1,1b−2に光ファイバ2の各ファイバクラッド部22をそれぞれ嵌め込み固定することで、内部導波路16−1,16−2の各コア部17と光ファイバ2の各ファイバコア部21の光軸が一致するようになる。したがって、第1基板1に、第1溝1a−1,1a−2と、光ファイバ2の各ファイバクラッド部22を嵌合させる第2溝1b−1,1b−2とを形成することで、内部導波路16−1,16−2光ファイバ2との光学組み立てが容易となり、低コストで高精度な光モジュールを作製できるようになる。
【0059】
また、図7では、基板1の表面に、隣り合う第1溝1a−1,1a−2の間の仕切り壁部分1eが途切れないように、隣り合う第2溝1b−1,1b−2の間に仕切り壁部分1gを形成している。これによれば、内部導波路16−1,16−2と光ファイバ2の光学的結合部分で、漏れ光が隣り合う導波路に干渉することがなくなるので、よりクロストークノイズを低減できるようになる。
【0060】
さらに、外部導波路が複数チャンネルの光ファイバ2であると、既製品の光ファイバ2のピッチに、内部導波路16−1,16−2のピッチを合わせることで、光学組み立てが容易になり、低コストで光モジュールを作製できるようになる。
【0061】
また、外部導波路が複数チャンネルのフレキシブル導波路であると、既製品のフレキシブル導波路のピッチに、内部導波路16−1,16−2のピッチを合わせることで、光学組み立てが容易になり、低コストで光モジュールを作製できるようになる。
【0062】
図9は変形例であり、(a)は基板1の平面図、同(b)は(a)のV−V線拡大断面図である。発光素子12aと受光素子12bの間の第1基板1の表面に、内部導波路16のクラッド部18と同材料の凸形層26を形成している。
【0063】
これによれば、屈折率の高いクラッド部18と同材料の凸形層26を発光素子12aと受光素子12bの間の第1基板1の表面に形成することで、発光素子12aと受光素子12b間の漏れ光をトラップできるので、クロストークノイズをより低減できるようになる。また、凸形層26は、発光素子12aと受光素子12bと第1基板1の表面との間に充填する光学透明樹脂13であるアンダーフィル材の流れ止めとしても利用することができる。この凸形層26の材料は、クラッド部18と同材料に限らないが、同材料であれば、クラッド部18の形成工程で同時に形成することができる。
【0064】
また、凸形層26の材料として、クラッド部18と同材料に代えて、光を吸収する吸収体を用いれば、発光素子12aと受光素子12b間の漏れ光を吸収できるので、クロストークノイズをより低減できるようになる。ここで、吸収体としては、着色樹脂、例えば不透明のアクリル樹脂またはエポキシ樹脂がある。
【0065】
以上のように、本発明に係る光モジュールは、基板の表面に形成された第1溝内に設けられた内部導波路と、この第1溝の先端部に形成された光路変換用のミラー部と、このミラー部と対向するように基板の表面に実装され、ミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を発光し、若しくはミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、内部導波路のコア部と光学的に結合されるコア部を有する外部導波路を備えた光モジュールにおいて、前記基板の第1溝は複数本が独立状態で略平行に形成され、隣り合う第1溝同士は基板の端面からの長さを異ならせて、この長さの異なる第1溝の先端部にそれぞれ形成された前記ミラー部と対向するように、前記光素子が基板の表面にそれぞれ実装されていることを特徴とするものである。
【0066】
これによれば、隣り合う第1溝の長さを異ならせて、異なる長さの第1溝の先端部のミラー部とそれぞれ対向するように、光素子を基板の表面にそれぞれ実装することにより、長さ方向に互い違いとなった隣り合う光素子の間に大きな距離を隔てることができる。
【0067】
したがって、光素子からの漏れ光や、ミラー部、内部導波路からの反射散乱光が隣り合う光素子のミラー部や内部導波路に入り込みにくくなるので、クロストークノイズが発生しにくくなる。また、内部導波路は、複数本が独立状態で略平行に形成された第1溝内に設けているから、隣り合う第1溝の仕切り壁部分で内部導波路同士も干渉しなくなる。
【0068】
このように、基板に複数個の光素子を幅方向に近接させて実装し、光素子の間隔に合わせて、内部導波路とミラー部を狭いピッチで形成することで、小型・低背でかつ双方向あるいは複数チャンネルの伝送が可能となる。加えて、隣り合う光素子の間に大きな距離を隔てること、および隣り合う内部導波路同士の干渉を防止することが相俟って、クロストークノイズを大幅に低減できるようになる。
【0069】
前記複数個の光素子には、発光素子と受光素子の双方が含まれていて、前記発光素子は、前記受光素子より長さが短い内部導波路のミラー部と対向するように、前記基板の表面に実装されている構成とすることができる。
【0070】
これによれば、発光素子は、受光素子よりも基板の端面側に配置することで、発光素子側のミラー部の向きの関係で、発光素子側のミラー部の反射散乱光が受光素子側に影響しにくくなる。したがって、基板に発光素子と受光素子の双方が実装されていても、クロストークノイズを大幅に低減できるようになる。
【0071】
前記基板の表面に、前記内部導波路の第1溝と連なる第2溝が形成され、この第2溝に前記外部導波路を嵌め込み固定することで、内部導波路と外部導波路の光軸が一致するように設定されている構成とすることができる。
【0072】
これによれば、基板に、第1溝と、外部導波路を嵌合させる第2溝とを形成することで、内部導波路と外部導波路との光学組み立てが容易となり、低コストで高精度な光モジュールを作製できるようになる。
【0073】
前記隣り合う第1溝の間の仕切り壁部分と途切れないように、隣り合う第2溝の間に仕切り壁部分が形成されている構成とすることができる。
【0074】
これによれば、内部導波路と外部導波路の光学的結合部分で、漏れ光が隣り合う導波路に干渉することがなくなるので、よりクロストークノイズを低減できるようになる。
【0075】
前記外部導波路は、複数チャンネルの光ファイバである構成とすることができる。
【0076】
これによれば、既製品の光ファイバのピッチに、内部導波路のピッチを合わせることで、光学組み立てが容易になり、低コストで光モジュールを作製できるようになる。
【0077】
前記外部導波路は、複数チャンネルのフレキシブル導波路である構成とすることができる。
【0078】
これによれば、既製品のフレキシブル導波路のピッチに、内部導波路のピッチを合わせることで、光学組み立てが容易になり、低コストで光モジュールを作製できるようになる。
【0079】
前記各光素子の間の基板の表面に、前記内部導波路のクラッド部と同材料の凸形層が形成されている構成とすることができる。
【0080】
これによれば、屈折率の高いクラッド部と同材料の凸形層を光素子の間の基板の表面に形成することで、光素子間の漏れ光をトラップできるので、クロストークノイズをより低減できるようになる。また、凸形層は、光素子と基板の表面との間に充填するアンダーフィル材の流れ止めとしても利用することができる。
【0081】
前記凸形層は、光を吸収する吸収体である構成とすることができる。
【0082】
これによれば、吸収体を各光素子の間の基板の表面に形成することで、光素子間の漏れ光を吸収できるので、クロストークノイズをより低減できるようになる。
【符号の説明】
【0083】
1 基板
1a−1,1a−2 第1溝
1b−1,1b−2 第2溝
1e,1f,1g 仕切り壁部分
2 光ファイバ(外部導波路)
12a 発光素子(光素子)
12b 受光素子(光素子)
13 光学透明樹脂
15 ミラー部
16−1,16−2 内部導波路
17 コア部
18 クラッド部
21 ファイバコア部
22 ファイバクラッド部
26 凸形層(吸収体)
L1,L2 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成された第1溝内に設けられた内部導波路と、この第1溝の先端部に形成された光路変換用のミラー部と、このミラー部と対向するように基板の表面に実装され、ミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を発光し、若しくはミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、内部導波路のコア部と光学的に結合されるコア部を有する外部導波路を備えた光モジュールにおいて、
前記基板の第1溝は複数本が独立状態で略平行に形成され、隣り合う第1溝同士は基板の端面からの長さを異ならせて、この長さの異なる第1溝の先端部にそれぞれ形成された前記ミラー部と対向するように、前記光素子が基板の表面にそれぞれ実装されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記複数個の光素子には、発光素子と受光素子の双方が含まれていて、前記発光素子は、前記受光素子より長さが短い内部導波路のミラー部と対向するように、前記基板の表面に実装されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記基板の表面に、前記内部導波路の第1溝と連なる第2溝が形成され、この第2溝に前記外部導波路を嵌め込み固定することで、内部導波路と外部導波路の光軸が一致するように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記隣り合う第1溝の間の仕切り壁部分と途切れないように、隣り合う第2溝の間に仕切り壁部分が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記外部導波路は、複数チャンネルの光ファイバであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記外部導波路は、複数チャンネルのフレキシブル導波路であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記各光素子の間の基板の表面に、前記内部導波路のクラッド部と同材料の凸形層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記凸形層は、光を吸収する吸収体であることを特徴とする請求項7に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4935(P2013−4935A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137962(P2011−137962)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】