説明

光処理装置

【課題】 装置の小型化を図りながら、エキシマランプの高電圧側電極とケーシングとの間での外部放電を防止して所期の紫外線照射処理を確実に行うことのできる光処理装置を提供すること。
【解決手段】 この光処理装置は、光取出窓を有するランプ収容室が内部に形成された金属製のケーシングと、このケーシングにおける前記ランプ収容室内に配置された、高電圧側電極およびアース側電極の一対の電極が放電容器の外表面に対向して配置されてなるエキシマランプとを具えた光放射ユニットを具えてなり、
前記エキシマランプは、放電容器の管壁の肉厚をT〔mm〕とするとき、前記高電圧側電極が、前記ランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に±1.5Tの範囲内に位置された状態で、配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ナノインプリント装置におけるテンプレートの表面をドライ洗浄処理するために好適な光処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップやバイオチップの製造においては、従来のフォトリソグラフィーおよびエッチングを利用したパターン形成方法に比較して低コストで製造することが可能な方法として、光ナノインプリント技術が注目されている。
この光ナノインプリント技術を利用したパターン形成方法においては、パターンを形成すべき基板例えばウエハ上に、液状の光硬化性樹脂を塗布することによってパターン形成用材料層を形成し、このパターン形成用材料層に対して、形成すべきパターンのネガとなるパターンが形成されたテンプレート(モールド)を接触させ、この状態で、パターン形成用材料層に紫外線を照射して硬化させ、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレートを剥がす工程が行われる(特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
このようなパターン形成方法においては、テンプレートの表面に異物などが存在すると、得られるパターンに欠陥が生じるため、テンプレートの表面を洗浄処理することが必要である。
而して、テンプレートを洗浄処理する方法としては、有機溶剤やアルカリ若しくは酸などの薬品を用いたウエット洗浄法が知られている(特許文献3参照。)。
然るに、このようなウエット洗浄法においては、有機溶剤や薬品などによってテンプレートの一部が溶解してパターン形状が変形するおそれがある。また、硬化樹脂層からテンプレートを剥がす際に、当該テンプレートに光硬化性樹脂等の残さが付着する場合には、パターン形成が終了する毎に、テンプレートの洗浄処理を行うことが必要であり、洗浄処理に相当に長い時間を要するため、生産性が著しく低下する、という問題がある。
一方、例えば液晶表示素子の製造において、ガラス基板の洗浄処理する手段として、光洗浄処理装置が用いられている(特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194142号公報
【特許文献2】特開2008−91782号公報
【特許文献3】特開2009−266841号公報
【特許文献4】特開平8−236492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、本発明者らは、エキシマランプを具えた光放射ユニットを、光放射ユニット移動機構によって、ナノインプリント装置におけるテンプレートのパターン面に間隙を介して対向して配置されるよう移動させて、テンプレートの表面を光洗浄処理するために用いられる光処理装置を提案している(特願2010−046127号明細書参照。)。
この光処理装置は、図3を参照して説明すると、エキシマランプ点灯用の昇圧トランス(38)の高圧側に接続される給電線の引き回し距離を短くして電圧低下によるランプ効率の低下を防止するために、エキシマランプ(30)および昇圧トランス(38)が共通のケーシング(21)内に配置された構造の光放射ユニット(20)を具えており、エキシマランプ(30)としては、放電容器(31)の外表面に、高電圧側電極(32)およびアース側電極(33)の一対の外部電極が配置されてなるものが用いられている。
【0006】
しかしながら、このような構成の光処理装置においては、次のような新たな問題が生ずることが判明した。
光放射ユニット(20)におけるケーシング(21)は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼など金属により形成されているので、エキシマランプ(30)の高電圧側電極(32)とケーシング(21)の内面との間での外部放電が生じることを防止するために、ケーシング(21)の内面と高電圧側電極(32)との距離を十分に確保することが必要とされるが、装置が概して大型のものとなってしまう、という問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、装置を小型化されたものとして構成することができ、しかも、エキシマランプにおける高電圧側電極とケーシングとの間で外部放電が生ずることを防止することができて所期の紫外線照射処理を確実に行うことのできる光処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光処理装置は、光取出窓を有するランプ収容室が内部に形成された金属製のケーシングと、このケーシングにおける前記ランプ収容室内に配置された、高電圧側電極およびアース側電極の一対の電極が放電容器の外表面に対向して配置されてなるエキシマランプとを具えた光放射ユニットを具えてなり、
前記エキシマランプは、前記放電容器の管壁の肉厚をT〔mm〕とするとき、前記高電圧側電極が、前記ランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に±1.5Tの範囲内に位置された状態で、配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の光処理装置においては、前記光放射ユニットを光処理領域に対して進入退出可能に往復移動させる光放射ユニット移動機構をさらに具えており、
前記光取出窓は、前記ケーシングにおけるランプ収容室を形成する上壁に形成されており、
前記エキシマランプは、前記高電圧側電極が前記光取出窓と対向し、前記ランプ収容室の高さ方向における中央位置より下方側に位置される状態で、配置された構成とされていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光処理装置においては、前記エキシマランプが前記ケーシングのランプ収容室内において複数本配置された構成とすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の光処理装置においては、前記光放射ユニットが、前記光取出窓がナノインプリント装置におけるテンプレートのパターン面に対向するよう、配置される構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光処理装置によれば、光放射ユニットにおいて、エキシマランプが高電圧側電極がケーシングにおけるランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に特定の範囲内に位置されるよう配置された構成とされていることにより、高電圧側電極とランプ収容室を形成する壁の内面との間の離間距離を可及的に大きく確保しながら、ケーシング自体の高さ方向の寸法を小さくすることができ、従って、装置全体の小型化が図られたものでありながら、エキシマランプにおける高電圧側電極とケーシングとの間での外部放電が生ずることを防止することができて所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。
【0013】
また、光放射ユニットを光処理領域に対して進入退出可能に往復水平移動させる移動機構をさらに具えており、エキシマランプが、高電圧側電極が前記光取出窓と対向し、ランプ収容室の高さ方向の中央位置より下方側に位置される状態で、配置された構成とされていることにより、エキシマランプと光取出窓との間の離間距離を大きくすることができるので、当該光取出窓およびエキシマランプからの輻射熱によって被処理物、例えばナノインプリント装置におけるテンプレートが加熱されることを抑制しながら、当該被処理物の紫外線照射処理を行うことができ、しかも、光放射ユニットの重心位置をランプ収容室の高さ方向の中央位置より下方に位置されることとなるので、光放射ユニット移動機構を安定して動作させることができ、所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光処理装置の一例における構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す光処理装置における光放射ユニットの一例における構成の概略を示す斜視図である。
【図3】図2に示す光放射ユニットを光取出窓に垂直な平面で切断して示す長手方向に沿った説明用断面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図1に示す光処理装置における光放射ユニット移動機構の一例における構成の概略を示す説明図である。
【図6】図2に示す光放射ユニットにおけるエキシマランプの構成の概略を示す斜視図である。
【図7】図2に示す光放射ユニットにおけるエキシマランプの支持構造の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の光処理装置を搭載したナノインプリント装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
【図9】図8に示すナノインプリント装置において、光放射ユニットが、その光取出窓がテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置された状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る光処理装置の他の例における光放射ユニットの構成の概略を光取出窓に平行な平面で切断して示す説明用断面図である。
【図11】図10に示す光放射ユニットを、エキシマランプの配列方向に沿った平面で切断して示す説明用断面図である。
【図12】エキシマランプがアース側電極がケーシングにおける光取出窓と対向するよう配置された光放射ユニットの構成を示す説明用断面図である。
【図13】本発明の光処理装置において用いられるエキシマランプの放電容器の断面形状の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光処理装置の一例における構成の概略を示す斜視図、図2は、図1に示す光処理装置における光放射ユニットの一例における構成の概略を示す斜視図、図3は、図2に示す光放射ユニットを光取出窓に垂直な平面で切断して示す長手方向に沿った説明用断面図、図4は、図3におけるA−A線断面図、図5は、図1に示す光処理装置における光放射ユニット移動機構の一例における構成の概略を示す説明図である。
この光処理装置10は、ナノインプリント装置におけるテンプレートの表面を光洗浄処理するために用いられるものであって、エキシマランプ30を具えた光放射ユニット20と、この光放射ユニット20を光処理領域に対して進入退出可能に直線的に往復水平移動させる光放射ユニット移動機構40と、エキシマランプ30を点灯させると共に光放射ユニット移動機構40を駆動させる電源ユニット11とを具えてなる。
【0016】
この実施の形態に係る光処理装置10における光放射ユニット移動機構40は、上面に光放射ユニット20が固定される水平方向に伸びる平板状のユニット支持台41と、このユニット支持台41の、光処理領域に対する進入方向後方側の端部(図5においては左端部)に連結された、水平方向に伸縮自在なシリンダ装置45とにより構成されており、シリンダ装置45におけるピストン(図示せず)およびピストンロッド47をシリンダ46内を水平方向に往復摺動させることにより光放射ユニット20を同一の高さ位置を保持して(水平面内で)移動させる。
【0017】
光放射ユニット20は、外形が一方向に長い略直方体状の金属製のケーシング21を具えており、このケーシング21内には、ランプ収容室S1および回路室S2が、ランプ収容室S1が光処理領域に対する進入方向前方側に位置される状態で、隔壁22を介してケーシング21の長手方向に並ぶよう形成されている。
ケーシング21におけるランプ収容室S1を形成する上壁21aには、矩形の開口Kが形成されており、この開口Kには、紫外線透過性を有する材料例えば石英ガラスよりなる光取出窓23が、枠状の固定板24によって固定されて設けられている。ここに、ケーシング21を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。
【0018】
また、ケーシング21には、その両側面の各々における上縁部に沿って、冷却用ガス流通管14を介して冷却用ガス供給機構15に接続された、冷却用ガスが流通される矩形の筒状のガス流路部材12が設けられている。具体的に説明すると、ガス流路部材12の各々は、その一側面における上縁部12aに沿って並ぶよう形成された複数のガス流通口13を有し、当該ガス流路部材12の各々の一側面が、その上縁部12aを除いてケーシング21の側面に接するよう配置されて固定され、これにより、ケーシング21における光取出窓23の周囲に、ガス流通口13が位置されている。
さらにまた、ケーシング21には、パージ用ガスをランプ収容室S1内に供給するパージ用ガス供給管17およびランプ収容室S1内からガスを排出するためのパージ用ガス排出管18が設けられており、それぞれ、パージ用ガス供給・排出機構16に接続されている。
【0019】
ケーシング21における回路室S2内には、昇圧トランス38およびその他の電装体が配置されており、昇圧トランス38は、低圧側(一次側)が給電線39を介して電源ユニット11における高周波電源よりなるランプ点灯用電源(図示せず)に接続されると共に高圧側(二次側)が給電線(図示せず)を介して後述するエキシマランプ30における高電圧側電極32およびアース側電極33に接続されている。
従って、この光放射ユニット20においては、比較的重量の大きい昇圧トランス38が光処理領域に対する進入方向後方側の位置に配置された構成とされている。
昇圧トランス38としては、電源ユニット11におけるランプ点灯用電源の電源電圧例えば200Vを例えば3kVに昇圧してエキシマランプ30に供給するものを用いることができる。
【0020】
エキシマランプ30は、図6に示すように、内部に放電空間が形成された、全体が一方向に長尺な板状の放電容器31を具えており、当該放電容器31の放電空間内には、エキシマ用ガスが気密に封入されている。放電容器31の長手方向に沿って伸びる4つの周側面のうち、一方の幅広な周側面31aの外面には、網状の高電圧側電極32が配置され、当該一方の幅広な周側面31aに対向する他方の幅広な周側面31bの外面には、網状のアース側電極33が配置されている。また、放電容器31の両端の各々には、口金35が放電容器31の一部を受容して保持した状態で装着されている。
【0021】
放電容器31を構成する材料としては、真空紫外線を良好に透過するもの、具体的には、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどを用いることができる。
高電圧側電極32およびアース側電極33を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。また、高電圧側電極32およびアース側電極33は、上記の金属材料を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、或いは上記の金属材料を真空蒸着することにより、形成することもできる。
放電容器31の放電空間内に封入されるエキシマ用ガスとしては、真空紫外線を放射するエキシマを生成し得るもの、具体的には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用ガスの具体的な例を、放射される紫外線の波長と共に示すと、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nmである。また、エキシマ用ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0022】
而して、この光放射ユニット20においては、エキシマランプ30は、放電容器31における高電圧側電極32が配置された一方の幅広な周側面31aがケーシング21における光取出窓23と対向し、かつ、光放射ユニット20の移動方向に沿って水平に延びる姿勢(放電容器31の長手方向が光放射ユニット20の移動方向に一致する状態)で、長手方向における両端部がケーシング21に固定されている。
そして、放電容器31の管壁の肉厚をT〔mm〕とするとき、高電圧側電極32具体的には高電圧側電極32の最上面が、ランプ収容室S1の高さ方向の中央位置Lc(h1=h2)を中心に±1.5Tの範囲内に位置された状態で、配置されており、従って、エキシマランプ30は、ランプ収容室S1の高さ方向における中央位置Lcより下方側に位置された構成とされている。また、エキシマランプ30は、放電容器31の管軸がランプ収容室S1の幅方向(図4において紙面に垂直な方向)の中央位置Bc(b1=b2)に位置されるよう配置されている。
エキシマランプ30が、上記の条件を満足する状態で配置されていることにより、ケーシング21自体の小型化を図りながら、高電圧側電極32とケーシング21の上壁21aおよび両側壁21c,21dとの間の離間距離を最大限に大きく確保することができて高電圧側電極32とケーシング21の上壁21aおよび両側壁21c,21dとの間で外部放電が生ずることを防止することができる。一方、高電圧側電極32が高さ方向における上記範囲外に位置される場合には、高電圧側電極32とケーシング21との間に十分な大きさの離間距離を確保するために光放射ユニット20が大型化することとなる。
【0023】
エキシマランプ30のケーシング21に対する固定方法について具体的に説明すると、図7に示すように、エキシマランプ30における口金35を受容して保持する収容凹部51を有するランプ支持部材50の当該収容凹部51に対して、エキシマランプ30の口金35がランプ支持部材50の上面より突出する状態で装着され、さらに、エキシマランプ30の口金35の上面において帯板状の固定部材52がランプ支持部材50にネジ止めされて固定されている。そして、ランプ支持部材50がケーシング21におけるランプ収容室S1を形成する下壁21bにネジ止めされて固定されている。
【0024】
以上において、光照射ユニット20の一構成例を示すと、例えば、ケーシングにおけるランプ収容室S1内の高さ寸法(図3における上下方向の寸法)が50〜100mm、幅方向の寸法(図4における左右方向の寸法)が50〜100mmであり、エキシマランプ30の高さ寸法が10〜20mm、幅方向の寸法が30〜80mm、放電容器31の管壁の肉厚が1〜5mmである。
【0025】
図8は、本発明の光処理装置を搭載したナノインプリント装置の一例における構成の概略を示す説明図である。図8において、61はテンプレート、62は、テンプレート61を保持するテンプレート保持機構、63はチャンバーである。64は可動式のウエハステージであって、このウエハステージ64上には、ウエハWを保持するウエハチャック64aが配置されている。65は、ウエハWの表面にパターン形成用材料(インプリント材料)である液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段、66は加圧機構、67は除振台、68はステージ定盤、69は、ウエハW上に形成された光硬化性樹脂よりなるパターン形成用材料層に紫外線を照射する紫外線光源である。20は、図2乃至図4に示す構成の光放射ユニットであり、この光放射ユニット20は、光放射ユニット移動機構40によってテンプレート61の下方(光処理領域)に進入退出可能に水平移動される。
【0026】
このようなナノインプリント装置においては、ウエハチャック64aにウエハWが保持されたウエハステージ64を塗布手段65の下方位置に移動させ、当該塗布手段65によってウエハWの表面に液状の光硬化性樹脂を塗布することにより、ウエハW上に光硬化性樹脂よりなるパターン形成用材料層を形成する。次いで、ウエハステージ64をテンプレート61の下方位置に移動させ、ウエハW上に形成されたパターン形成用材料層に対して、加圧機構66によってテンプレート61を接触させて加圧し、この状態で、パターン形成用材料層に紫外線光源69によってテンプレート61を介して紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させ、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレート61を剥がすことにより、ウエハWに対するパターン形成が達成される。
このようなウエハWに対するパターン形成が1回または複数回終了すると、図9に示すように、ウエハWが載置されたウエハステージ64が、テンプレート61の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、光放射ユニット20が光放射ユニット移動機構40によってテンプレート61の下方位置に水平移動され、その光取出窓23がテンプレート61のパターン面に間隙を介して対向するよう配置される。
ここで、光取出窓23の外面とテンプレート61のパターン面との間の離間距離は、例えば0.3〜10.0mmである。
【0027】
そして、光処理装置10においては、冷却用ガス供給機構15を作動させ、これにより、冷却用ガスを冷却用ガス流通管14を介してガス流路部材12に供給することによって、ガス流路部材12に形成されたガス流通口13から排出された冷却用ガスが光取出窓23とテンプレート61との間の間隙に流通される。そして、この状態で、ランプ点灯用電源より高周波電圧を回路室S2内に配置された昇圧トランス38によって昇圧してエキシマランプ30に供給してエキシマランプ30を点灯させることにより、エキシマランプ30からの紫外線が光取出窓23を介してテンプレート61のパターン面に照射され、以て、テンプレート61の光洗浄処理が達成される。
その後、光放射ユニット20が光放射ユニット移動機構によってテンプレート61の下方位置から退避されるよう水平移動されると共に、ウエハWが載置されたウエハステージ64が、テンプレート61の下方位置に水平移動され、当該ウエハWに対するパターン形成が実行される。
【0028】
以上において、光取出窓23とテンプレート61との間の間隙に流通される冷却用ガスの流量は、例えば100〜1000リットル/minであり、冷却用ガスの温度は、例えば10〜35℃である。
また、テンプレート61に対する紫外線の照射時間は、例えば3〜3600秒間である。
【0029】
而して、上記の光処理装置10によれば、光放射ユニット20において、エキシマランプ30が高電圧側電極32がケーシング21におけるランプ収容室S1の高さ方向の中央位置Lcを中心に特定の範囲内に位置されるよう配置された構成とされていることにより、高電圧側電極32とランプ収容室S1を形成する上壁21aの内面との間の離間距離を可及的に大きく確保しながら、ケーシング21自体の高さ方向の寸法を小さくすることができ、従って、装置全体の小型化が図られたものでありながら、エキシマランプ30における高電圧側電極32とケーシング21との間での外部放電が生ずることを防止することができて所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。
また、エキシマランプ30は、ケーシング21におけるランプ収容室S1の幅方向の中央位置Bcに配置されて、高電圧側電極32とランプ収容室S1を形成する幅方向の側壁21c,21dの各々との間の離間距離が可及的に大きく確保された状態とされているので、高電圧側電極32とケーシング21との外部放電が生ずることを確実に防止することができる。
【0030】
さらにまた、光放射ユニット20を光処理領域に対して進入退出可能に往復水平移動させる光放射ユニット移動機構40をさらに具えており、エキシマランプ30が、高電圧側電極32が光取出窓23と対向し、ランプ収容室S1の高さ方向の中央位置Lcより下方側に位置される状態で、配置された構成とされていることにより、エキシマランプ30と光取出窓23との間の離間距離を大きくすることができるので、当該光取出窓23およびエキシマランプ30からの輻射熱によって被処理物であるナノインプリント装置におけるテンプレート61が加熱されることを抑制しながら、当該テンプレート61の紫外線照射処理を行うことができ、しかも、光放射ユニット20の重心位置をケーシング21の高さ方向の中央位置Lcより下方に位置されることとなるので、光放射ユニット移動機構40を安定して動作させることができ、所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。
【0031】
さらにまた、上記の光処理装置10によれば、次のような効果が奏される。
(1)光放射ユニット移動機構40によって光処理領域に対して進入退出可能に往復水平移動される光放射ユニット20が、一方向に長尺なエキシマランプ30が、光放射ユニット20の移動方向に沿って水平に延びる姿勢で、長手方向における両端部がケーシング21に固定された構成とされていることにより、光放射ユニット20の往復移動(光放射ユニットの発進、停止)による加速度の影響が光放射ユニット20の移動方向に並んだ位置に形成されたランプ支持部(固定部)に作用されることとなり、当該加速度の影響によるランプ支持部を支点としたモーメントが放電容器31の中央部に作用することがないので、エキシマランプ30の放電容器31に歪が生ずることを確実に防止することができ、所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。また、光放射ユニット20の往復移動を高速で行うことができるようになり、スループットを向上させることができる。
【0032】
(2)光放射ユニット20のケーシング21内において、光処理領域に対する進入方向前方側の位置にエキシマランプ30が配設された構成とされていることにより、光放射ユニット20の退避位置から、光放射ユニット20における光取出窓23がテンプレート61に対向して配置される処理位置までの移動距離を、小さくすることができるので、タクト時間の短縮化を図ることができる。
(3)光放射ユニット20の光処理領域に対する進入方向後方側端部から給電線39が導出されてランプ点灯用電源に接続される構成とされることにより、ランプ点灯用電源と、光処理領域に対する進入方向後方側の位置に配置された昇圧トランス38との距離を小さくすることができるので、給電線の引き回しを簡素化することができる。
(4)比較的重量の大きい昇圧トランスがケーシング21内における光処理領域に対する進入方向後方側の位置に配置された構成とされていることにより、光放射ユニット移動機構40を構成するシリンダ装置45の電源ユニット11に対する固定部を支点とした光放射ユニット20に作用するモーメントに起因するユニット支持台41の傾きを抑制することができるので、光放射ユニット20の高さ位置を安定させることができて、光取出窓23とテンプレート61との間の距離が大きくなることを抑制することができ、従って、所期の紫外線照射処理を確実に行うことができる。
【0033】
(5)ケーシング21の光取出窓23の周囲に位置されたガス流通口13を介して光取出窓23と被処理物であるテンプレート61との間の間隙に冷却用ガスを流通させることにより、光取出窓23およびテンプレート61が冷却されるため、紫外線の照射および光取出窓23からの輻射熱によってテンプレート61の温度が上昇することを確実に抑制しながら、当該当該テンプレート61の紫外線照射処理を行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、光放射ユニット20は、図10および図11に示すように、複数本のエキシマランプ30が配置された構成とすることができ、このような構成のものにおいても、すべてのエキシマランプ30が、放電容器31の管壁の肉厚をT〔mm〕とするとき、高電圧側電極32が、ランプ収容室S1の高さ方向の中央位置Lcを中心に±1.5T〔mm〕の範囲内に位置された状態で、配置された構成とされる。
【0035】
また、図12に示すように、エキシマランプ30が、高電圧側電極32がランプ収容室S1の高さ方向の中央位置Lcを中心に特定の範囲内に位置され、ランプ収容室S1内において、アース側電極33がケーシング21における光取出窓23と対向するよう、配置された構成とされていてもよい。このような構成のものにおいては、光取出窓23から出射されるエキシマランプ30からの紫外線の強度を、図3および図4に示す構成ものに比して高くすることができるので、被照射物例えばナノインプリント装置におけるテンプレートの紫外線照射処理を良好に行うことができる。
【0036】
さらにまた、本発明の光処理装置において用いられるエキシマランプは、図13(a)に示すような、上述の実施の形態に係る断面形状が矩形状の放電容器31を具えたものに限定されるものではなく、図13(b)および図13(c)に示すような断面形状を有する放電容器を具えたものであってもよい。
図13(b)に示す断面形状を有する放電容器31においては、例えば、扁平な面31cの外面に高電圧側電極が設けられると共に当該高電圧側電極が配置された領域に対向する曲面領域の外面にアース側電極が設けられ、高電圧側電極がランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に特定の範囲内に位置されるよう、配置される。
また、図13(c)に示す断面形状を有する放電容器31においては、放電容器31の管軸CLを挟んで互いに対向する外面領域に、高電圧側電極およびアース側電極が放電容器の管壁に沿って設けられるが、この場合には、高電圧側電極の最上面がランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に特定の範囲内に位置されるよう、配置される。
【0037】
さらにまた、本発明の光処理装置の処理対象は、ナノインプリント装置におけるテンプレートに限定されず、紫外線照射処理が必要とされる種々のものに適用することができる。
【0038】
以下、本発明の光処理装置の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
図2〜図4の構成に従い、下記の仕様の光放射ユニットを作製した。
〔ケーシング(21)〕
ランプ収容室(S1)の高さ寸法(図3における上下方向の寸法)が70mm、幅寸法が(図4における左右方向の寸法)が80mm、全長(図3における左右方向の寸法)が350mm、材質がアルミニウムであり、光取出窓は、石英ガラス製で、その縦横の寸法が60mm×60mm、厚みが4mmである。
〔エキシマランプ(30)〕
放電容器(31)の材質が石英ガラス、高さ方向の寸法が15mm、幅方向の寸法が50mm、全長が100mmであり、その内部にキセノンガスが封入され、発光長が50mm、発光幅が40mm、出力が15Wのものである。
このエキシマランプを、ランプ収容室内において、放電容器における高電圧側電極が配置された幅広な周側面が光取出窓と対向し、高電圧側電極の最上面が位置される水平面の、ランプ収容室の高さ方向の中央位置が位置される水平面に対する偏位量(図3および図4におけるX)が下方側に4.5mm(X=−1.5T)となる状態で、配置した。
【0039】
高周波電源よりの200Vの電源電圧を昇圧トランスによって3kVに昇圧してエキシマランプに供給したところ、エキシマランプを確実に点灯することができることが確認された。
【0040】
<比較実験例1>
実験例1において、エキシマランプをランプ収容室内において、放電容器における高電圧側電極が配置された幅広な周側面が光取出窓と対向し、高電圧側電極の最上面が位置される水平面の、ランプ収容室の高さ方向の中央位置が位置される水平面に対する偏位量(X)が上方側に6mm(X=+2T)となる状態で、配置したことの他は、上記実験例1と同一の構成を有する光放射ユニットを作製し、上記実験例1と同一の条件で、高周波電源よりの電圧をエキシマランプに供給したところ、エキシマランプを点灯させることができなかった。この理由としては、高電圧側電極とランプ収容室を形成する上壁との間に十分な大きさの離間距離を確保することができないことにより、高電圧側電極とケーシングとの間で外部放電が生じたためであると考えられる。そして、エキシマランプをこのように配置した場合において、エキシマランプを安定して点灯させるためには、高電圧側電極の最上面とランプ収容室を形成する上壁内面との間の距離を少なくとも60mmとすることが必要であることが確認された。
【符号の説明】
【0041】
10 光処理装置
11 電源ユニット
12 ガス流路部材
12a 上縁部
13 ガス流通口
14 冷却用ガス流通管
15 冷却用ガス供給機構
16 パージ用ガス供給・排出機構
17 パージ用ガス供給管
18 パージ用ガス排出管
20 光放射ユニット
21 ケーシング
21a 上壁
21b 下壁
21c,21d 側壁
22 隔壁
23 光取出窓
24 固定板
K 開口
S1 ランプ収容室
S2 回路室
30 エキシマランプ
31 放電容器
31a 一方の幅広な周側面
31b 他方の幅広な周側面
31c 扁平な面
32 高電圧側電極
33 アース側電極
35 口金
38 昇圧トランス
39 給電線
40 光放射ユニット移動機構
41 ユニット支持台
45 シリンダ装置
46 シリンダ
47 ピストンロッド
50 ランプ支持部材
51 収容凹部
52 固定部材
61 テンプレート
62 テンプレート保持機構
63 チャンバー
64 ウエハステージ
64a ウエハチャック
65 塗布手段
66 加圧機構
67 除振台
68 ステージ定盤
69 紫外線光源
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光取出窓を有するランプ収容室が内部に形成された金属製のケーシングと、このケーシングにおける前記ランプ収容室内に配置された、高電圧側電極およびアース側電極の一対の電極が放電容器の外表面に対向して配置されてなるエキシマランプとを具えた光放射ユニットを具えてなり、
前記エキシマランプは、前記放電容器の管壁の肉厚をT〔mm〕とするとき、前記高電圧側電極が、前記ランプ収容室の高さ方向の中央位置を中心に±1.5Tの範囲内に位置された状態で、配置されていることを特徴とする光処理装置。
【請求項2】
前記光放射ユニットを光処理領域に対して進入退出可能に往復移動させる光放射ユニット移動機構をさらに具えており、
前記光取出窓は、前記ケーシングにおけるランプ収容室を形成する上壁に形成されており、
前記エキシマランプは、前記高電圧側電極が前記光取出窓と対向し、前記ランプ収容室の高さ方向における中央位置より下方側に位置される状態で、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光処理装置。
【請求項3】
前記エキシマランプは前記ケーシングにおいて複数本配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光処理装置。
【請求項4】
前記光放射ユニットが、前記光取出窓がナノインプリント装置におけるテンプレートのパターン面に対向するよう、配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−176341(P2012−176341A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39464(P2011−39464)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】