説明

光制御型アレーアンテナ装置

【課題】不要波を空間に放出することを抑圧できる光制御型アレーアンテナ装置を得る。
【解決手段】多重化された光高周波信号を受信し、光信号と光参照信号とに分配する光放射器21と、光放射器により分配された光信号を、放射する所望の電波ビームの走査方向に対応した個別の波長ごとに空間的に分割し、分割した波長ごとにフーリエ変換レンズへ入力する光信号の入射位置を制御し、フーリエ変換レンズを介して開口分布を有する光信号を出力する光制御走査部30と、光放射器21により分配された光参照信号と、光制御走査部30により出力された開口分布を有する光信号とを合成して合成光信号を生成し、合成光信号を所望のアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させた後に光電変換して所望の指向方向に高周波信号を送信する光制御放射部20とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御型アレーアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光制御型アレーアンテナ装置は、送信において、複数の電波ビームを形成でき、かつ走査できるものである(例えば、特許文献1参照)。このような従来の光制御型アレーアンテナ装置は、開口分布を形成するフーリエ変換レンズへ入力する光の入射位置を制御することで、実際の電波ビームの指向方向を制御する。
【0003】
フーリエ変換レンズへの光の入射位置は、放射レンズアレーおよび光放射器で制御しており、光放射器から電波ビームの所望の指向方向に対応した放射レンズアレーのある一部のみに光を送り出すことで動作する。
【0004】
光放射器より送り出された光は、フーリエ変換レンズでアンテナ開口に対応した光の開口分布に変換され、ファイバアレーに放射されて放射素子アンテナの数にサンプリングされる。サンプリングされた光の開口分布は、光電変換器により高周波信号に変換された後、所望な方向へ放射素子アンテナから放射されることで、電波ビームを制御できるアレーアンテナ装置となる。
【0005】
このような従来の光制御型アレーアンテナ装置は、複数の電波ビームを形成する際、光の波長を変えて複数の電波ビームに対応する高周波信号を光信号に搬送、かつ多重化する。さらに、光放射器は、それら多重化された光信号を独立に、かつ同時に制御し、フーリエ変換レンズでアンテナ開口分布となる複数の光の開口分布を生成する。その後、ファイバアレーを介して光電変換器で高周波信号に変換される際、複数の高周波信号が同時に生成されて、放射素子アンテナを介して空間に放射される。
【0006】
【特許文献1】特開平9−139620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
レーダシステム等の大規模な放射電力を必要とするシステムにおいては、光電変換器と放射素子アンテナとの間にある高周波信号用の増幅器で信号レベルを増幅する。その際、従来の光制御型アレーアンテナ装置では、複数の高周波信号を同時に増幅しようとする。このため、増幅率の低下による放射電力の低下や混変調等による、スプリアス等の不要波を空間に放射してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、従来装置と比較して、不要波を空間に放出することを抑圧できる光制御型アレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光制御型アレーアンテナ装置は、多重化された光高周波信号を受信し、ビーム走査の元となる光信号と、高周波信号情報の元となる光参照信号とに分配する光放射器と、光放射器により分配された光信号を、放射する所望の電波ビームの走査方向に対応した個別の波長ごとに空間的に分割し、分割した波長ごとにフーリエ変換レンズへ入力する光信号の入射位置を制御し、フーリエ変換レンズを介して開口分布を有する光信号を出力する光制御走査部と、光放射器により分配された光参照信号と、光制御走査部により出力された開口分布を有する光信号とを合成して合成光信号を生成し、合成光信号を所望のアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させた後に光電変換して所望の指向方向に高周波信号を送信する光制御放射部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望の電波ビームに対応して波長分散された光信号ごとに開口分布を有する光信号を生成し、生成した光信号と光参照信号とを合成した合成光信号を所望のアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させた後に光電変換し、所望の指向方向に高周波信号を送信することにより、従来装置と比較して、不要波を空間に放出することを抑圧できる光制御型アレーアンテナ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における光制御型アレーアンテナ装置の構成図である。この光制御型アレーアンテナ装置は、光制御励振部10、光制御放射部20、および光制御走査部30で構成される。
【0012】
ここで、光制御励振部10は、N個の光高周波発生器11(1)〜11(N)(ただし、Nは、2以上の整数)、および1個の光多重器15で構成される。さらに、nを、1≦n≦Nの整数としたときのそれぞれの光高周波発生器11(n)は、光源12(n)、高周波信号源13(n)、および光変調器14(n)で構成される。
【0013】
また、光制御放射部20は、光放射器21、放射レンズ22、光合成器23、光空間波長フィルタ24、アンテナ開口分割指示部25、ファイバアレー26、N個の光電変換器27(1)〜27(N)、N個の増幅器28(1)〜28(N)、およびN個の放射素子アンテナ29(1)〜29(N)で構成される。ここで、光空間波長フィルタ24は、第2の光空間波長フィルタに相当する。
【0014】
さらに、光制御走査部30は、ミラー31、光空間波長フィルタ32、放射レンズアレー33、電波ビーム走査指示部34、およびフーリエ変換レンズ35で構成される。ここで、光空間波長フィルタ32は、第1の光空間波長フィルタに相当する。
【0015】
次に、図1に示した光制御型アレーアンテナ装置の動作について説明する。まず始めに、N個の光高周波発生器11(1)〜11(N)の動作について、n個目の光高周波発生器11(n)を例にして説明する。光高周波発生器11(n)において、光源12(n)で生成された光搬送波信号と、高周波信号源13(n)で生成された高周波信号とが、光変調器14(n)に入力される。
【0016】
光搬送波信号と高周波信号とが入力された光変調器14(n)は、光搬送波信号をキャリア信号として高周波信号を搬送するように変調され、高周波信号の情報を搬送する光高周波信号を生成する。そして、光高周波発生器11(n)の出力信号となる。
【0017】
N個の電波ビームの送受信を実現させる場合には、光制御励振部10は、図1に示すように、電波ビームと同数となるN個の光高周波発生器11(1)〜11(N)を有することになる。
【0018】
そして、光多重器15は、N本の光ファイバを介して、それぞれの光高周波発生器11(1)〜11(N)により発生したN個の光高周波信号を受信して多重化し、1つの多重化光信号として出力する。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1における光多重器15で多重化された多重化光信号40に含まれるN個の光高周波信号41(1)〜41(N)の周波数帯域を示した図である。図2の上段に示したように、n個目の光高周波発生器11(n)で生成された光高周波信号41(n)は、周波数fopt(n)を有し、ビーム走査の元となる光信号42(n)と、光信号42(n)から周波数fFRだけ離れた周波数fopt(n)+fFRを有し、高周波信号情報の元となる光参照信号43(n)とが含まれている。
【0020】
そして、N個の光高周波信号41(1)〜41(N)の情報は、図2の下段に示したように、各々が干渉しないような十分離れた周波数帯域で、N個の光高周波発生器11(1)〜11(N)のそれぞれにより生成される。そして、このような光高周波信号41(1)〜41(N)のそれぞれは、光ファイバを介して光多重器15に入力され、最終的に1つの多重化光信号40として波長多重される。
【0021】
なお、このとき、N個の光高周波信号41(1)〜41(N)の情報を搬送する多重化光信号40の高周波信号の周波数は、キャリアとなる光信号の周波数が異なるため、全て同じ周波数でも問題ない。また、本発明の光制御型アレーアンテナ装置は、上述した変調方式には限定されず、任意の変調方式を適用することが可能である。
【0022】
光制御励振部10から出力された、波長多重された高周波信号の情報を搬送する多重化光信号は、光ファイバを介して光放射器21に入力される。光放射器21は、図2における周波数fopt(1)〜fopt(N)を有し、ビーム走査の元となる光信号42(1)〜42(N)と、図2における周波数fopt(1)+fRF〜fopt(N)+fRFを有し、高周波信号情報の元となる光参照信号43(1)〜43(N)とに分配する。
【0023】
そして、分配された光信号42(1)〜42(N)は、空間へ出力され、光参照信号43(1)〜43(N)は、光ファイバを介して放射レンズ22へ出力される。なお、図2おける光信号42(1)〜42(N)と光参照信号43(1)〜43(N)との関係は、例えば、光信号42(1)〜42(N)が周波数fopt(1)+fRF〜fopt(N)+fRFを有し、光参照信号43(1)〜43(N)が周波数fopt(1)〜fopt(N)を有するような逆の関係になった場合にも、本実施の形態1については成立する。
【0024】
空間へ出力された光信号42(1)〜42(N)は、光制御走査部30内のミラー31を介して光空間波長フィルタ32へ入力する。光空間波長フィルタ32は、電波ビーム走査指示部34より、ビーム走査方向の情報を指定する外部指令(第1の外部指令に相当)を受ける。そして、光空間波長フィルタ32は、ビーム走査方向の情報に基づいて、多重化された光信号42(1)〜42(N)を各電波ビームの走査方向に対応した個別の波長を有する光信号に空間的に波長分散して放射レンズアレー33へ入力する。
【0025】
さらに、放射レンズアレー33は、電波ビーム走査指示部34より、外部指令としてビーム走査方向の情報を受けて動作する。
【0026】
次に、電波ビーム走査指示部34による光空間波長フィルタ32および放射レンズアレー33の制御方法について、詳しく説明する。まず、光空間波長フィルタ32および放射レンズアレー33に対して、電波ビーム走査指示部34よりビーム走査方向の情報が外部指令として送られる。
【0027】
放射レンズアレー33は、複数の電波ビームを同時に走査する場合には、各々の電波ビームに対応した光信号に対して独立に制御する必要がある。そのために、まず、光空間波長フィルタ32により、各々の電波ビームに対応した個別の波長を有する光信号に波長分散して、放射レンズアレー33に送る必要がある。
【0028】
ここでは、一例として、3本の電波ビームを形成する場合について、図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における光空間波長フィルタ32と放射レンズアレー33の動作を示す説明図であり、3本の電波ビームを形成する場合を例示している。
【0029】
光空間波長フィルタ32に通過型の液晶などを用いると、通過させる信号色、すなわち、通過させる光信号の波長をフィルタ面内で自由に変化させることができる。この機能を用いると、フィルタ面内のある任意の部分から特定の波長を有する光信号のみを通過させる制御が可能となる。
【0030】
例えば、図3のように、3本の電波ビームに対する走査方向(図3では、仰角+60°、0°、−60°に相当)を光空間波長フィルタ32の面に空間的に割り当てた場合、各々の電波ビームの走査方向に対応した領域のみに、その電波ビームに対応した個別の波長(図3では、λ1〜λ3に相当)を有する光信号を通過させることが可能となる。
【0031】
上記で説明した動作により、光空間波長フィルタ32は、後段にある放射レンズアレー33に対して、空間的に波長毎に分配して光信号を放射することができる。このため、各電波ビーム走査方向に対応する放射レンズアレー33上の領域のみに、所望な光信号のみが照射されることになる。
【0032】
放射レンズアレー33は、各電波ビームに対応した光信号が照射される領域内において、電波ビーム走査指示部34より外部指令として送られたビーム走査方向に対応した放射レンズのみを動作させることで、フーリエ変換レンズ35へビーム走査位置の情報を伝送する。
【0033】
例えば、3本の電波ビームを形成する場合(N=3に相当する場合)には、放射レンズアレー33より、1番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S1、2番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S2、3番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S3が、図1に示すように、フーリエ変換レンズ35に放射される。
【0034】
フーリエ変換レンズ35を通過した1番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S1、2番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S2、3番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S3は、開口分布を有する光信号に変換される。
【0035】
そのとき、1番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S1は、1番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S1’に変換される。同様に、2番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S2は、2番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S2’に、3番目の電波ビームの走査指示に対応する光信号S3は、3番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S3’に変換される。そして、開口分布となる光信号S1’〜S3’は、光合成器23に出力される。
【0036】
一方、光放射器21から出力された光参照信号43(1)〜43(N)は、光ファイバを介して放射レンズ22に伝送される。そして、放射レンズ22は、光参照信号43(1)〜43(N)を、フーリエ変換レンズ35から出力された1番目〜3番目の電波ビームのそれぞれの走査位相勾配を有する開口分布となる3つの光信号S1’〜S3’と同じビーム幅となるように拡大し、光合成器23に出力する。
【0037】
光合成器23は、フーリエ変換レンズ35を介して出力された光信号S1’〜S3’と、放射レンズ22を介してビーム幅が拡大されて出力された光参照信号とを再度合成し、高周波信号情報を搬送する合成光信号となる。そして、高周波信号情報を搬送する合成光信号は、その後段の光空間波長フィルタ24に出力される。
【0038】
光空間波長フィルタ24は、光合成器23から出力された複数の電波ビームの合成光信号を、所望のアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させるように、空間的に分割する。この光空間波長フィルタ24は、先に説明した光空間波長フィルタ32と同じ動作を有しており、外部指令(第2の外部指令に相当)に基づいて波長ごとに通過する領域を変えることができる。
【0039】
光空間波長フィルタ24への外部指令としては、所望の電波ビームを放射するそれぞれのアンテナに対応して分割されるアンテナ開口に関する情報(アンテナ開口分割の情報)が、アンテナ開口分割指示部25より伝送される。
【0040】
3本の電波ビームを形成する場合、1番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S1’、2番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S2’、3番目の電波ビームの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S3’は、図1に示すように、光空間波長フィルタ24を通過する際に空間的に分割され、その分割形状がそのままファイバアレー26に投影される。このため、所望な各々のアンテナ開口に光信号を分配して伝送することができる。
【0041】
ファイバアレー26により分配された光信号は、光ファイバを介して光電変換器27(1)〜27(N)に入力される。そして、光電変換器27(1)〜27(N)は、光信号から高周波信号への変換を行う。
【0042】
このとき、変換された高周波信号は、所望な電波ビームを放射する位相を有する電気信号となり、その先にある増幅器28(1)〜28(N)で所望な振幅に増幅される。そして、最終的に、放射素子アンテナ29(1)〜29(N)から所望なビーム走査方向に高周波信号が放射される。
【0043】
3本の電波ビームを形成する場合には、アンテナ開口が光空間波長フィルタ24で形成された分割形状に対応して3つに開口分割され、1〜3番目の電波ビームのそれぞれの走査位相勾配を有する開口分布となる光信号S1’〜S3’は、第1〜第3の電波ビーム51(1)〜51(3)として空間に放射される。
【0044】
この際、増幅器28(1)〜28(N)には、分割された所望の高周波信号のみしか入力されないため、増幅器28(1)〜28(N)における増幅率の低下や混変調等を招くことなく、増幅できる。この結果、スプリアス等の不要波を空間に放射することを抑圧することができる。
【0045】
以上のように、実施の形態1によれば、複数の電波ビームを放射する際に、複数の電波ビームの高周波信号が増幅器に入力されないように、各々電波ビームに対応したアンテナ開口を設けるためにアンテナ開口を分割する機能を、フーリエ変換光学レンズとファイバアレーとの間に設けられた光空間波長フィルタで行っている。これにより、増幅率の低下や混変調等を招くことなく増幅できるため、スプリアス等の不要波を空間に放射することを抑圧できる光制御型アレーアンテナを得ることができる。
【0046】
さらに、従来の光制御型アレーアンテナでは、複数の電波ビームを同時に形成した場合には、各々の電波ビームが全開口を用いた動作しかできなかった。このため、例えば、大電力を有する電波ビームと小電力を有する電波ビームの両方を形成したい場合には、電波ビーム間に重み付けができなかった。
【0047】
しかしながら、本実施の形態1の光制御型アレーアンテナ装置は、アンテナ開口分割が自由にできるため、大電力を有する電波ビームには大規模なアンテナ開口を、小電力を有する電波ビームには小規模なアンテナ開口を割当てることで、リソースの有効活用を図ることが可能となる。
【0048】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2における光制御型アレーアンテナ装置を適用したECM(Electronic Counter Measures)装置の構成図である。先の実施の形態1における図1の構成と比較すると、図4の構成は、光制御型アレーアンテナ装置に対して情報を与えるレーダシステム60をさらに備えている。
【0049】
本実施の形態2における光制御型アレーアンテナ装置は、電波ビームを放射する基本動作としては、先の実施の形態1と同じである。ただし、光制御型アレーアンテナ装置内において、本実施の形態2の図4の構成におけるアンテナ開口分割指示部25aおよび電波ビーム走査指示部34aの機能が、先の実施の形態1の図1の構成におけるアンテナ開口分割指示部25および電波ビーム走査指示部34の機能とは異なる。
【0050】
アンテナ開口分割指示部25aは、レーダシステム60が見つけた複数のターゲットの個数およびターゲットとの距離の情報を受けることができる。また、電波ビーム走査指示部34aは、レーダシステム60が見つけた複数のターゲットの個数および到来方向情報を受けることができる。
【0051】
まず、レーダシステム60は、複数のターゲットを見つけ、それらターゲットの個数および各々の距離の情報を、アンテナ開口分割指示部25aに送る。
【0052】
アンテナ開口分割指示部25aは、ターゲットの個数からターゲットと同数のアンテナ開口分割を形成するように、そして、ターゲットの距離情報から、距離が遠いターゲットについては大きい面積のアンテナ開口を割当て、距離が近いターゲットについては小さい面積のアンテナ開口を割当てるように、アンテナ開口分割に関する情報を生成し、外部指令として光空間波長フィルタ24に指示を出す。
【0053】
一方、レーダシステム60は、ターゲットの個数および各々のターゲットが存在する到来方向の情報を、電波ビーム走査指示部34aへ送る。電波ビーム走査指示部34aは、ターゲットの個数および到来方向の情報から、ターゲットの個数および同数の電波ビームを、ターゲットの到来方向に指向できるように、ビーム走査方向を決定し、外部指令として光空間波長フィルタ32と放射レンズアレー33に指示を出す。
【0054】
また、レーダシステム60は、ターゲットの個数およびターゲットが照射しているレーダ波の周波数情報を、光制御励振部10に送る。これに対して、光制御励振部10は、ターゲットが照射する周波数で、かつターゲットの個数分の高周波信号を搬送する光信号を生成して出力する。
【0055】
上記のような動作から、本実施の形態2における光制御型アレーアンテナ装置は、ターゲットに妨害波を放射するECM装置に適用することができる。このようなECM装置は、同時に複数のターゲットが到来するような運用時に、同時に妨害波を送信でき、かつターゲットの距離に応じて最適な電力をアンテナから放射できるように、開口分割制御がなされるため、高性能なECM装置となる。
【0056】
以上のように、実施の形態2によれば、レーダシステムよりターゲットの個数と距離と到来方向の情報を受け、アンテナ開口分割指示部と電波ビーム走査指示部が、電波ビームの本数と電波ビーム走査方向とアンテナの分割制御を行う。この結果、同時に複数のターゲットが到来するような運用時に、同時に妨害波を送信でき、かつターゲットの距離に応じて最適な電力をアンテナから放射できるように開口分割制御がなされる光制御型アレーアンテナ装置を得ることができ、高性能なECM装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1における光制御型アレーアンテナ装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光多重器で多重化された多重化光信号に含まれるN個の光高周波信号の周波数帯域を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光空間波長フィルタと放射レンズアレーの動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2における光制御型アレーアンテナ装置を適用したECM装置の構成図である。
【符号の説明】
【0058】
10 光制御励振部、11(1)〜11(N) 光高周波発生器、12(1)〜12(N) 光源、13(1)〜13(N) 高周波信号源、14(1)〜14(N) 光変調器、15 光多重器、20 光制御放射部、21 光放射器、22 放射レンズ、23 光合成器、24 光空間波長フィルタ(第2の光空間波長フィルタ)、25、25a アンテナ開口分割指示部、26 ファイバアレー、27(1)〜27(N) 光電変換器、28(1)〜28(N) 増幅器、29(1)〜29(N) 放射素子アンテナ、30 光制御走査部、31 ミラー、32 光空間波長フィルタ(第1の光空間波長フィルタ)、33 放射レンズアレー、34、34a 電波ビーム走査指示部、35 フーリエ変換レンズ、40 多重化光信号、41 光高周波信号、42 光信号、43 光参照信号、51(1) 第1の電波ビーム、51(2) 第2の電波ビーム、51(3) 第3の電波ビーム、51(N) 第Nの電波ビーム、60 レーダシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化された光高周波信号を受信し、ビーム走査の元となる光信号と、高周波信号情報の元となる光参照信号とに分配する光放射器と、
前記光放射器により分配された前記光信号を、放射する所望の電波ビームの走査方向に対応した個別の波長ごとに空間的に分割し、分割した波長ごとにフーリエ変換レンズへ入力する光信号の入射位置を制御し、前記フーリエ変換レンズを介して開口分布を有する光信号を出力する光制御走査部と、
前記光放射器により分配された前記光参照信号と、前記光制御走査部により出力された前記開口分布を有する光信号とを合成して合成光信号を生成し、前記合成光信号を所望のアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させた後に光電変換して所望の指向方向に高周波信号を送信する光制御放射部と
を備えることを特徴とする光制御型アレーアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光制御型アレーアンテナ装置において、
前記光制御走査部は、
ビーム走査方向を指定する第1の外部指令に応じて、前記光放射器により分配された前記光信号を、前記所望の電波ビームの走査方向に対応した個別の波長ごとに空間的に分割する第1の光空間波長フィルタと、
前記第1の外部指令に応じて、前記第1の光空間波長フィルタにより分割されたそれぞれの光信号の前記フーリエ変換レンズへ入力する入射位置を制御する放射レンズアレーと、
前記所望の電波ビームに対応して分割されたビーム走査方向を前記第1の外部指令として前記第1の光空間波長フィルタおよび前記放射レンズアレーに出力することにより、前記フーリエ変換レンズを介して開口分布を有する光信号を出力させる電波ビーム走査指示部と
を有し、
前記光制御放射部は、
前記光放射器により分配された前記光参照信号と、前記光制御走査部により出力された前記開口分布を有する光信号とを合成して合成光信号を生成する光合成器と、
光信号を通過させるアンテナ開口を指定する第2の外部指令に応じて、前記光合成器により生成された前記合成光信号を、前記所望の電波ビームを放射するそれぞれのアンテナのアンテナ開口に対応して波長ごとに選択的に通過させる第2の光空間波長フィルタと、
前記所望の電波ビームを放射するそれぞれのアンテナに対応して分割されたアンテナ開口分割情報をあらかじめ記憶し、前記アンテナ開口分割情報を前記第2の外部指令として前記第2の光空間波長フィルタに出力することにより、前記第2の光空間波長フィルタにより選択的に通過させた合成光信号を光電変換して所望の指向方向に高周波信号を送信させるアンテナ開口分割指示部と
を有する
ことを特徴とする光制御型アレーアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光制御型アレーアンテナ装置において、
前記光放射器は、外部のレーダシステムからのターゲットの個数およびターゲットが放射する周波数の情報に基づいて生成された多重化された高周波光信号を受信し、
前記電波ビーム走査指示部は、前記レーダシステムから受信したターゲットの個数およびターゲットの到来方向の情報に基づいて、電波ビームの個数および走査方向を決定して前記第1の外部指令を生成し、
前記アンテナ開口分割指示部は、前記レーダシステムから受信したターゲットの個数およびターゲットの距離の情報に基づいて、電波ビームと同数のアンテナ開口分割を決定し、ターゲットの距離に応じて遠い距離に対しては大きなアンテナ開口を割当て、近い距離に対しては小さな開口を割当てるように前記第2の外部指令を生成する
ことを特徴とする光制御型アレーアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−278033(P2008−278033A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117487(P2007−117487)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】