説明

光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物

【課題】
近年要求される短波長で高出力な発光素子の封止に用いることが可能な、硬化物の表面タックがなく、耐光性、耐熱黄変性、密着性に優れた光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
下記の(A)、(B)2成分からなり、
(A)(a1)アルコキシシリル基を有する構成単位a1=3〜30モル%と、(a2)ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位a2=20〜60モル%と、(a3)ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位a3=20〜75モル%からなり、重量平均分子量(Mw)が3000〜20000であるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体
(B)エポキシ基を2個以上有し、下記式(2)で示される構造を有するエポキシ基含有ポリジメチルシロキサン
2成分の含有重量の比率が(A):(B)=20:80〜80:20である光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体(LED)素子を封止し、その保護、接着、波長変更・調整、およびレンズに使用される熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの各方面での需要に対応する技術として、短波長で高出力な発光素子の開発が進んでいる。このような発光素子を封止して、高性能な光半導体装置を得るために、特に短波長領域の光に対する耐光性が高いメチルポリシロキサンが使用されている(例えば、特許文献1、2)。ところが、一般にメチルポリシロキサン系封止剤は表面タックを有しており、そのため、表面に異物が付着したり、発光面が損傷するといった問題があった。また、一般にメチルポリシロキサン系封止剤は、パッケージや素子との密着性が悪く、そのため、剥離する問題があった。
表面タックの問題を解決するためには、メチルポリシロキサン系封止剤に剛性成分を導入することが考えられる。また、密着性の問題を解決するには、パッケージや素子と水素結合のような相互作用を付与できる基を導入することが考えられる。剛性成分の導入には、エポキシ成分やアクリル成分をポリシロキサンに導入する技術が知られている。
しかしながら、エポキシ変性ポリシロキサンは、親油性の高いこれら変性部位と主鎖周りにメチル基が並び非常に撥油性の高いポリシロキサンの部位との相溶性の違いから、硬化時に反応の制御が難しく、要求に適う硬化物を得ることが非常に困難であった。また、アクリル成分をポリシロキサンに導入することは相溶性不良の点から困難である場合が多い。
【0003】
例えば、特許文献3には、エポキシ変性ポリシロキサンと、硬化剤に酸無水物を配合して用いる方法が開示されている。この開示技術を用いた場合、硬化剤の分子量が小さいため配合量が少なく、ポリシロキサンの優れた特性が生かせ、耐光性に優れた樹脂組成物が得られるが、耐熱黄変性に問題が生じるようになり、高性能な光半導体装置の高温になる使用条件を満足しえない。
特許文献4には、シリコーン変性アクリレート系樹脂およびエポキシ変性アクリレートを配合して用いる方法が開示されている。この開示技術を用いた場合、アクリル成分の導入による接着強度に優れた樹脂組成物が得られるが、耐熱黄変性に問題が生じるようになり、高性能な光半導体装置の高温になる使用条件を満足しえない。
このように、ポリシロキサンの優れた耐光性を活かしながら、表面非タック性を改善し、耐光性、耐熱黄変性、密着性に優れた光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が求められているのである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−2922号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2004−155865号公報
【特許文献4】特開2004−189942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、近年要求される短波長で高出力な発光素子の封止に用いることが可能な、硬化物の表面タックがなく、耐光性、耐熱黄変性、密着性に優れた光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の問題点に鑑み鋭意検討した結果、特定構造のポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体と、特定構造のエポキシ基含有ポリシロキサンとを特定量比で配合して用いると、前記の課題を解決しうることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の〔1〕である。
【0007】
〔1〕 下記の(A)、(B)2成分からなり、2成分の含有重量の比率が(A):(B)=20:80〜80:20である光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
(A)(a1)下記式(1)で表される、アルコキシシリル基を有する構成単位と、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基であり、kは0〜2の整数であり、mは0または1の整数である。)
(a2)下記式(2)で表される、ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位と、
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはシクロアルキル基であり、nは0〜10の整数である。)
(a3)下記式(3)で表される、ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、rは0または1の整数であり、pは0〜20の整数であり、qは1〜3の整数である。)
からなり、各構成単位a1、a2、a3の割合が、a1=3〜30モル%、a2=20〜60モル%、a3=20〜75モル%であり、重量平均分子量(Mw)が3000〜20000であるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体
(B)エポキシ基を2個以上有し、下記式(4)で示される構造を有するエポキシ基含有ポリジメチルシロキサン
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基、XはRもしくは下記式(5)または(6)で表される置換基であり、R、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、sは0〜50の整数、tは3〜100の整数である。)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは炭素数が1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基である。)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R10は炭素数が1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基である。)
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、硬化物の表面タックが全く無く、耐光性、耐熱黄変性、密着性に優れた物性を示す光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は、下記のポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)およびエポキシ基含有ポリシロキサン(B)からなる。
<ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)>
本発明に用いるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)は、アルコキシシリル基を有する構成単位(a1)、ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)、および、ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位(a3)からなり、各構成単位はそれぞれ、次の式(1)〜(3)式で示される。
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基であり、kは0〜2の整数であり、mは0または1の整数である。)
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはシクロアルキル基であり、nは0〜10の整数である。)
【0026】
【化9】

【0027】
(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、rは0または1の整数であり、pは0〜20の整数であり、qは1〜3の整数である。)
<アルコキシシリル基を有する構成単位(a1)>
アルコキシシリル基を有する構成単位(a1)は、下記の式(1)で表される構造であり、アルコキシシリル基を有することから、発光素子やパッケージや金属ワイヤーと水素結合の相互作用を生じさせ、硬化物の密着性が良好となる。
【0028】
【化10】

【0029】
式(8)中、Rは水素またはメチル基であり、mは0または1の整数である。すなわち、R=水素かつm=0の場合にはビニル基を表し、R=水素かつm=1の場合にはアクリル基を表し、R=メチル基かつm=1の場合にはメタクリル基を表す。Rが水素またはメチル基でないと、共重合性が低下する。RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基である。炭素数が4以上であると、耐熱性が低下する。kは0〜2の整数であり、3の場合はアルコキシシリル基がなくなるために密着性が低下する。
アルコキシシリル基を有する構成単位(a1)は、下記式(7)で表される単量体から誘導される。
【0030】
【化11】

式(7)におけるR、R、R、m、およびkはそれぞれ、前記の式(1)におけるものと同じである。
【0031】
単量体(a1)として、具体的には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン;メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン;ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシランが挙げられる。この中でも、密着性および共重合性の点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
アルコキシシリル基を有する構成単位(a1)は、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)中に3〜30モル%、好ましくは5〜25モル%含有する。3モル%未満であると密着性が低下し、30モル%を超えると硬化物の靱性が低下し、硬化物のクラックが生じやすくなる。
【0032】
<ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)>
ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)は、式(2)で表される。ヘミアセタールエステル結合は加熱することにより、カルボキシル基とビニルエーテル基に分解し、生成したカルボキシル基はエポキシ基と硬化反応を起こす。カルボキシル基によるエポキシ基の開環により生成した水酸基の働きにより、密着性が向上する。
ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)ではなく、カルボキシル基を含有する構成単位を導入した場合、共重合体がゲル化する。
【0033】
【化12】

【0034】
式(2)中、Rは水素またはメチル基である。水素またはメチル基でないと、共重合性が低下する。Rは炭素数1〜18のアルキル基またはシクロアルキル基である。19以上であると、硬化中に保護基が脱離せず、カルボキシル基が再生しないことから、エポキシ樹脂との硬化不良を生じる。nは0〜10の整数である。11以上であると、耐熱性および耐光性が低下する。
ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)は、下記式(8)で表されるヘミアセタールエステル結合を有する単量体から誘導される。
【0035】
【化13】

【0036】
式中のR、R、およびnはそれぞれ、前記の式(2)におけるものと同じである。
式(8)で表されるヘミアセタールエステル結合を有する単量体は、下記式(9)で表されるエチレン性不飽和結合を含有するカルボン酸と下記式(10)で表されるビニルエーテル化合物との反応により得られる。
【化14】

【0037】
式中のRおよびnはそれぞれ、前記の式(2)および式(8)におけるものと同じである。
【0038】
【化15】

【0039】
式中のRは、前記の式(2)および式(8)におけるものと同じである。
式(9)で表されるエチレン性不飽和結合を含有するカルボン酸として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、デセン酸、ウンデセン酸などが挙げられる。アルキル基が長鎖になると耐熱性が低下することから、nが0〜4の整数であることが好ましく、さらに好ましくは、n=0であるアクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
式(10)で表されるビニルエーテル化合物として具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等の炭素数1〜18の直鎖状アルキル鎖を有するアルキルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等の炭素数1〜18の分岐状アルキル鎖を有するアルキルビニルエーテル;シクロへキシルビニルエーテル等の炭素数6〜18のシクロアルキル鎖を有するシクロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。この中でも、保護基の脱離と脱離後のビニルエーテル化合物の揮発の観点から、Rの炭素数が1〜10であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数が1〜4であることが好ましく、具体的には炭素数が3であるn−プロピルビニルエーテルが挙げられる。
【0040】
エチレン性不飽和結合を含有するカルボン酸とビニルエーテル化合物とのヘミアセタールエステル化反応は、公知の方法で行うことができ、例えば、有機溶媒中で室温〜200℃の温度で行うことができる。好ましくは、室温〜150℃である。また、この反応の反応時間は、反応進行状況に応じて、適宜選定すればよいが、通常1〜100時間でよい。
カルボン酸とビニルエーテル化合物の配合比率は、目的に応じて任意に選択することができるが、通常、カルボキシル基1モルあたり、ビニルエーテル基が1〜5モル、特に、1.2〜1.5モルになるようにビニルエーテル成分を用いるのが適している。
ブロック化反応に際しては、反応を促進させる目的で、酸性リン酸エステル等の酸触媒を用いることができる。
【0041】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒を使用しても良い。例えば、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体が挙げられる。より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)が挙げられる。
前記の有機溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記の有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、通常、5〜95質量部、好ましくは、20〜80質量部である。反応後、用いた溶剤はエバポレータ等機器により留去してもよい。
式(8)で示されるカルボン酸とビニルエーテル化合物は、本発明の光半導体封止用樹脂組成物に用いる場合、保存安定性の面から、酸価は、通常20mgKOH/g以下が好ましい。より好ましくは、10mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは、5mgKOH/g以下である。
【0042】
熱硬化性樹脂組成物において、重合体中のアルコキシシリル基の濃度を上げれば、密着性を向上させることができることが知られている。しかしながら、重合体のアルコキシシリル基の濃度を高くすると、靭性に劣るシロキシ結合が優先的に生成するので、硬化物の密着性は向上するものの、一方で、脆くクラックの入りやすい硬化物となってしまう。
本発明においては、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)中にヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)を導入することにより、ヘミアセタールエステル結合が熱解離してエポキシ樹脂と熱硬化反応することにより水酸基を生じ、水酸基の働きにより密着性が良好となる。また、酸−エポキシ硬化により生成した結合は靱性に優れることから、硬化物のクラックも生じない。
ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位(a2)は、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)中に20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%含有する。20モル%未満であると密着性が低下し、60モル%を超えると硬化物の耐熱性や耐光性が低下し、硬化物の透明性が損なわれる。
【0043】
<ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位(a3)>
ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位(a3)は、式(3)で表される構造であり、主骨格としてポリジメチルシロキサン構造を有することから、耐光性や耐熱黄変性が良好となる。
【0044】
【化16】

【0045】
式(3)中、Rは水素またはメチル基であり、rは0または1の整数である。すなわち、R=水素かつr=0の場合にはビニル基を表し、R=水素かつr=1の場合にはアクリル基を表し、R=メチル基かつr=1の場合にはメタクリル基を表す。Rが水素またはメチル基でないと、共重合性が低下する。Rは炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数が5以上であると、耐熱性が低下する。pは0〜20の整数であり、好ましくは0〜15の整数である。pが21以上の場合はヘミアセタールエステル結合含有単量体(a2)との相溶性が悪くなり、共重合性が低下したり、場合によっては白濁したり単量体成分が分離する。qは1〜3の整数であり、0の場合はポリシロキサン成分がなくなるため、耐光性や耐熱性が低下する。
【0046】
ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位(a3)は、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)中20〜75モル%、好ましくは30〜60モル%含有する。20モル%未満であると硬化物の耐熱性や耐光性が低下し、75モル%を超えると密着性や表面タック性が低下する。
ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位(a3)は、下記式(11)で表される単量体から誘導される。
【0047】
【化17】

【0048】
式(11)におけるR、R、r、pおよびqは、それぞれ式(3)におけるものと同じである。
前記の式(11)で表される単量体は、アクリル主鎖構造を構成するための重合性のエチレン性不飽和結合を分子末端に有し、主骨格がポリジメチルシロキサンであるシリコーンマクロ単量体である。前記の単量体の重量平均分子量は、好ましくは300〜10000のであり、より好ましくは、400〜5000である。重量平均分子量が低すぎると、シリコーン単位に基づく特性が発現し難く、耐熱性や耐光性が低下する恐れがある。重量平均分子量が高すぎると、反応性が低下するため共重合しない遊離シリコーン量が増加する恐れがある。
FM−0711、FM−0721、FM−0725(チッソ(株))、X−22−174DX(信越化学工業(株))などの市販品を用いることができる。
<ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)の重合>
【0049】
本発明に用いるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)は、アルコキシシリル基含有単量体(a1)とヘミアセタールエステル結合含有単量体(a2)とポリジメチルシロキサン構造含有単量体(a3)を重合することにより得ることができる。その分子形態としては、直鎖状であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体いずれの形態であっても良い。
本発明に用いるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)は、常法の重合法により重合することができる。すなわち、重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を採ることができ、より具体的には重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法を採ることができる。
本発明のポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)の重量平均分子量は、3000〜20000であり、好ましくは5000〜10000の範囲である。重量平均分子量が3000未満であると硬度が低下し、20000を上回ると(B)成分との混和性が十分でなくなり硬化性に悪影響を及ぼす。また、蛍光体を分散させる場合に、高粘度になり適切な分散が困難になる。なお、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0050】
本発明の光半導体封止用熱硬化性組成物は、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)を20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%含有する。(A)が20重量%未満の場合は硬化性が不十分となり、耐熱性が低下するので好ましくない。80重量%を超える場合は硬化物中に未反応のカルボキシル基が多く存在することとなり、硬化物の耐湿性が低下するので好ましくない。
本発明の光半導体用熱硬化性樹脂組成物において、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)は、分子量や単量体種の異なる重合体を2種類以上混合して用いても良い。
【0051】
<エポキシ基含有ポリシロキサン(B)>
本発明に用いるエポキシ基含有ポリシロキサン(B)は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ基含有ポリシロキサンであり、下記式(4)で示される構造を有する。
【0052】
【化18】

【0053】
式(4)中、Rは炭素数が1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、Rはすべて同一でも、異なっていてもよい。Rがアルキル基でなく芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基であると、耐光性が低下する。Rの炭素数が6を上回る場合には、シリコーンセグメントとの相溶性が悪くなり、耐熱性が低下する。
としては具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖型アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、3−メチルブチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐型アルキル基が挙げられる。これらのうち耐熱性の点から、メチル基が特に好ましい。
前記式(4)におけるXは、Rもしくは下記式(5)または(6)で表されるエポキシ基を有する置換基である。
【0054】
【化19】

【0055】
【化20】

【0056】
式(5)、式(6)において、RおよびR10はともに炭素数が1〜10、好ましくは2〜5のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基である。R、R10がアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基でなく芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基であると、耐光性が低下する。また、R、R10の炭素数が6を上回る場合には、シリコーンセグメントとの相溶性が悪くなり、耐熱性が低下する。
、R10としては具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのアルキレン基(−R−);メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、メチレンテトラオキシメチレン基などのアルキレンオキシアルキレン基(−ROR−)が挙げられる。
これらのうち、アルキレンオキシアルキレン基が合成のしやすさの点から特に好ましい。
【0057】
本発明に用いるエポキシ基含有ポリシロキサンにおけるエポキシ基含有セグメントの繰り返し単位数、すなわち式(2)におけるsは、0〜50、好ましくは5〜20である。sが0の場合、両末端にのみエポキシ基を有することを意味する。sが1〜50の場合、両末端と側鎖にエポキシ基を有することになり、両末端エポキシ基含有ポリシロキサンを用いるよりも、より密な架橋構造をとることができ、表面非タック性や硬度の点から好ましい。
sが50を超える場合、表面非タック性は良好であるものの、耐熱黄変性が低下する。これは、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)におけるXの占める割合が高くなり、またエポキシ当量が小さくなり、有機成分量が増大するためである。有機成分中の結合(炭素−炭素結合や炭素−酸素結合)はシロキサン結合よりも結合エネルギーが低いために分解しやすいからである。
本発明に用いるエポキシ基含有ポリシロキサンにおけるエポキシ基不含セグメントの繰り返し単位数、すなわち式(2)におけるtは3〜100、好ましくは10〜50である。tが3未満の場合、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)におけるシロキサン含有量が少なくなり、有機成分量が増大するため、耐熱黄変性が低下する。tが100を超える場合、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)の分子量が高くなるとともに粘度が高くなり、混和性に問題を生じ本願の目的を達することができなくなる。
また、本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の配合において、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)における(エポキシ基含有セグメント数)/(エポキシ基不含セグメント数)の比率s/tは、通常0.1〜5、好ましくは0.2〜3である。s/tが小さすぎると、硬化性が不十分な場合がある。また、s/tが大きすぎると、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)との相溶性が悪くなり硬化物の透明性が不十分な場合がある。
【0058】
本発明に用いるエポキシ基含有ポリシロキサン(B)のエポキシ当量は、通常500〜5000、好ましくは1000〜3000である。エポキシ当量が小さすぎると官能基部分の有機成分の比率が高くなるため、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)との相溶性が悪く均一な組成物が得られない場合があり、大きすぎると、硬化物が柔らかくなり、外部応力から素子やワイヤーを保護できず、封止したLEDが破損する場合がある。
本発明に用いるエポキシ基含有ポリシロキサン(B)の分子量は、重量平均分子量として、通常1000〜20000、好ましくは2000〜10000である。分子量が小さすぎると官能基部分の有機成分の比率が高くなるため、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)との相溶性が悪く均一な組成物が得られない場合がある。分子量が大きすぎると粘度が高くなるため、塗工性に支障を来す場合がある。
【0059】
本発明における、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)は公知の方法で製造することができ、製法は特に限定されない。例えば、二重結合含有シロキサンを過酸化物で酸化反応させる方法、アルコキシ基含有シリコーンを水酸基含有エポキシドで縮合させる方法、ハイドロジェンポリシロキサンを二重結合含有エポキシドと反応させる方法などが挙げられる。
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ基含有ポリシロキサン(B)を20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%含有する。エポキシ基含有ポリシロキサン(B)が20重量%未満の場合、硬化物中に未反応のカルボキシル基が多く存在することとなり、硬化物の耐湿性が低下するので好ましくない。80重量%を超える場合、硬化性が不十分となり、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0060】
<各成分の配合>
本発明におけるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)とエポキシ基含有ポリシロキサン(B)との配合量は、(ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)に由来するカルボキシル基のモル濃度)/(エポキシ基含有ポリシロキサン(B)に由来するエポキシ基のモル濃度)の比率が通常0.2〜2.0、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.1になるよう調整する。前記の比率が0.2未満であると、光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の密着性が低下する恐れがあり、2.0を上回るとカルボン酸過剰による硬化不良や透明性が低下することがある。
本発明において、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)とエポキシ基含有ポリシロキサン(B)を上記の割合で用いることによって特異的に、親油性の高い酸/エポキシ変性部位と、撥油性の高いポリシロキサンの部位との相溶性の違いに起因する硬化特性の問題が解決し、本願目的である表面非タック性、耐光性、耐熱黄変性、密着性を同時に満たす優れた性能を有する光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が得られるのである。
【0061】
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は、低温にて短時間で硬化する際に、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能および物理性能を付与する目的で、酸触媒を添加して使用してもよい。酸触媒としては、リン酸、スルホン酸、ホウ酸などのプロトン酸;BF、FeCl、SnCl、AlCl、ZnCl、有機金属錯体などのルイス酸が挙げられる。これらのうち、硬化性や透明性の観点から、スズ系の有機金属錯体が特に好ましい。
前記酸触媒は、単独でも、2種以上を組み合わせてもよく、またその添加量は本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の総固形分量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。酸触媒の量が0.01重量部未満では触媒効果が十分に発揮されないし、10重量部を超える場合には、最終的に得られる硬化物が着色したり、耐水性が低下したりすることがあり好ましくない。
【0062】
一般にエポキシ樹脂やその硬化剤であるカルボキシル化合物は、ポリシロキサン化合物に比べて耐熱性および耐光性に劣る。ポリシロキサン化合物が原子結合エネルギーの高いシロキサン結合(ケイ素−酸素結合)の連鎖で構成されているのに対して、エポキシ樹脂やカルボキシル化合物はこれより遙かに結合エネルギーの低い炭素−炭素結合や炭素−酸素結合で構成されているからである。ポリシロキサン化合物組成物の表面非タック性を改善するために、カルボキシル基とエポキシ基の反応による架橋構造を導入してもポリシロキサン鎖の低いガラス転位温度を補うためには、多数の架橋点を導入する必要があり、それらの架橋点はそのまま耐光性と耐熱黄変性に対する脆弱点を増やすこととなってしまう。あるいは、エポキシ樹脂やカルボキシル化合物ではなくガラス転位温度の高いアクリル樹脂を配合することもまた同様に、表面非タック性の改善が得られたとしても、耐光性と耐熱黄変性の低下を招いてしまう。
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は光半導体の封止に用いて、従来のポリシロキサン化合物組成物の有する優れた耐光性と耐熱黄変性を損なうことなく、表面非タック性と密着性の著しい向上が得られる。この機構については、証明されたわけではないが、次のように推定される。本発明に用いるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)は、アクリル共重合体構造を主鎖に有するため、この主鎖の剛直性に由来して熱硬化後に架橋体となしたとき、いたずらに架橋点を増大させることなく、優れた表面非タック性を発揮することができる。一方でこのアクリル主鎖構造は、側鎖のポリシロキサン鎖に結合しており、さらにポリシロキサン鎖がエポキシ基含有ポリジメチルシロキサン(B)とともに形成するマトリックス中に浮かんでいるために、熱や光による分子鎖の運動エネルギーが上手く散逸される。このため、熱履歴や光負荷をかけても、炭素−炭素結合や炭素−酸素結合の脆弱な化学結合の分解が起こりにくくなり、耐光性や耐熱黄変性が損われないのである。さらに、ポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)中のアルコキシシランと酸−エポキシ硬化で生成した水酸基との両者の効果により、著しい密着性も得られる。
【0063】
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は有機溶剤で希釈して使用することができる。有機溶剤としては、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、エステル類、含ハロゲン脂肪族炭化水素、ケトン類、エーテル類等が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤を添加して使用する場合、光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、溶剤の添加量は通常30重量部以下、好ましくは7重量部以下である。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、赤外線吸収剤、変性剤、充填剤、難燃剤、チクソトロピー性付与剤等の従来公知の添加剤を添加して使用することができる。添加剤は、単独でも、2種以上を組み合わせてもよく、またその添加量は本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の総固形分量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。
本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を封止材として使用する場合には、前記のポリシロキサン組成物を、熱硬化あるいは光硬化することにより硬化することができる。その際には、前記の組成物をオーバーコート、ディップコート等により塗布して硬化させたり、容器内にポリシロキサン組成物を入れてその中に、素子をディップしてそのまま硬化させる方法等により本発明の光半導体素子の封止材とすることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔合成例1〕ヘミアセタールエステル(a2−1)の合成
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸90.84g、ヒドロキノン0.02g、AP−8を0.10g仕込み、攪拌しながら加熱し50℃に昇温した。次いで、n−プロピルビニルエーテル109.04g、温度を50℃に保ちながら滴下し、滴下終了後、反応温度を75℃に昇温した。混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、無色透明なヘミアセタールエステル(a2−1)を得た。
〔合成例2〕ヘミアセタールエステル(a2−2)の合成
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸74.82g、ヒドロキノン0.04g仕込み、攪拌しながら加熱し60℃に昇温した。次いで、n−ブチルビニルエーテル145.36g、温度を60℃に保ちながら滴下し、滴下終了後、反応温度を75℃に昇温した。混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、無色透明なヘミアセタールエステル(a2−2)を得た。
〔合成例3〕ヘミアセタールエステル(a2−3)の合成
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、ウンデセン酸92.0g、イソプロピルビニルエーテル60.2g仕込み、攪拌しながら加熱し60℃に昇温した。混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、無色透明なヘミアセタールエステル(a2−3)を得た。
【0065】
〔重合例1〕ポリシロキサン構造含有アクリル共重合体(A−1)の合成
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、PMAを76.0g仕込み、窒素導入下で95℃まで昇温した。そこに、単量体類(MTM)を16.4g(17.5mol)、合成例1で合成したa2−1を33.8g(51.5mol)、a3−1を49.7g(31.0mol))、開始剤(パーへキシルOを16.0g)およびPMA8.0gの混合物を98℃に保ちながら滴下した。滴下後、95℃で5時間反応させ反応終了した。放冷後、エバポレータにより溶剤であるPMAを留去することにより、無色透明なポリシロキサン構造含有アクリル共重合体(A−1、Mw5500)を得た。
〔重合例2〜8〕ポリシロキサン構造含有アクリル共重合体(A−2〜8)の合成
重合例1と同様に操作を行い、アクリル共重合体(A−2〜8)を得た。各原料の仕込み比、重量平均分子量、当量を重合結果とともに表1に示す。
〔比較重合例1〜3〕(A)成分の類似体(A’−1〜3)の合成
重合例1と同様に操作を行い、(A)成分の類似体(A’−1〜3)を得た。各原料の仕込み比、重量平均分子量、当量を重合結果とともに表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
なお、表1および表2における略号の意味は以下に示すとおりである。
MTM:式(12)で表されるメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
MDE:式(13)で表されるメタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン
ATM:式(14)で表されるアクリロキシプロピルトリメトキシシラン
VTM:式(15)で表されるビニルトリメトキシシラン
a2−1:合成例1で合成されたヘミアセタールエステル(n−プロピルビニルエーテルブロック化メタクリル酸)
a2−2:合成例2で合成されたヘミアセタールエステル(イソプロピルビニルエーテルブロック化アクリル酸)
a2−3:合成例1で合成されたヘミアセタールエステル(イソプロピルビニルエーテルブロック化ウンデセン酸)
a3−1:式(16)で表されるメタクリル基含有ポリシロキサン
a3−2:式(17)で表されるアクリル基含有ポリシロキサン
a3−3:式(18)で表されるメタクリル基含有ポリシロキサン
a3−4:式(19)で表されるビニル基含有ポリシロキサン
【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
〔合成例4〕エポキシ基含有ポリシロキサン(B−1)の合成
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、アリルグリシジルエーテル171g、トルエン90g、エタノール5g、白金(II)ビス(アセチルアセトナート)を0.02g投入し、80℃に加熱した後、下記式(20)で表されるハイドロジェンメチルポリシロキサン753gを滴下して付加反応を行った。
ロータリーエバポレーターを用い、80℃で溶剤を留去することにより、下記式(21)で表される無色透明のエポキシ基含有ポリシロキサン(B−1)を71%の収率で得た。
【0078】
【化29】

【0079】
【化30】

【0080】
〔合成例5〕エポキシ基含有ポリシロキサン(B−2)の合成
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、ビニルシクロヘキセンオキサイド124g、トルエン80g、エタノール4g、白金(II)ビス(アセチルアセトナート)を0.02g投入し、80℃に加熱した後、下記式(22)で表されるハイドロジェンメチルポリシロキサン400gを滴下して付加反応を行った。
ロータリーエバポレーターを用い、80℃で溶剤を留去することにより、下記式(23)で表される無色透明のエポキシ基含有ポリシロキサン(B−2)を82%の収率で得た。
【0081】
【化31】

【0082】
【化32】

【0083】
〔合成例6〕エポキシ基含有ポリシロキサン(B−3)の合成
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、アリルグリシジルエーテル11.4g、トルエン80g、エタノール4g、白金(II)ビス(アセチルアセトナート)を0.02g投入し、80℃に加熱した後、下記式(24)で表されるハイドロジェンメチルポリシロキサン336.0gを滴下して付加反応を行った。
ロータリーエバポレーターを用い、80℃で溶剤を留去することにより、下記式(25)で表される無色透明のエポキシ基含有ポリシロキサン(B−3)を74%の収率で得た。
【0084】
【化33】

【0085】
【化34】

【0086】
実施例、比較例における試験法を下記に示す。
1.[耐熱黄変性]
光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、厚さ1mmの硬化物を作製した。作製した光半導体封止用樹脂硬化物を、150℃で1ヶ月間保管し、その後、分光光度計((株)島津製作所製UV−2450)で硬化物の透過率を測定した。初期透過率との透過率減少率を算出して評価を行った。
透過率減少率が90%以上のとき耐熱黄変性は良好と判断される。
2.[耐光性]
光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、厚さ1mmの硬化物を作製した。これを、ウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を使用し、照射強度0.4kW/m、ブラックパネル温度63℃の条件下で1ヶ月間保管し、その後、分光光度計((株)島津製作所製UV−2450)で硬化物の透過率を測定した。初期透過率との透過率減少率を算出して評価を行った。
透過率減少率が90%以上のとき耐光性は良好と判断される。
【0087】
3.[密着性]
光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物で封止した評価用LEDの高温高湿試験(85℃/85%)を1000時間行った後、チップおよびパッケージからの剥離発生の有無について観察を行った。20個のサンプルを使用して試験を行い、以下の基準に従って評価を行った。
○:剥離サンプルなし。
△:剥離サンプル10〜19個。
×:剥離サンプル9個以下。
4.[表面非タック性]
光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、厚さ1mm硬化物を作製した。作製した光半導体封止用樹脂硬化物を、触指観察により試験片の表面のタック性を観察し、下記の基準で表面非タック性を評価した。
○:タックが認められなかった。
×:タックは認められた。
【0088】
<実施例1〜8および比較例1〜9>
実施例1〜8および比較例1〜9に使用される樹脂組成物を酸/エポキシの等量比が0.9となるように表3および表4に示す組成に従って、各原料を配合し、均一に溶解させることにより調製した。表2および表3に記載の樹脂組成物を上記に示した試験法に合わせた形状に成形し、30分間減圧脱泡を行った後、150℃で4時間硬化させることにより硬化物を得た。なお表3および表4中の略号の意味は以下の通りである。
<A成分以外の硬化剤>
Me−HHPA:4−メチルヘキサヒドロフタル酸(新日本理化(株)製)
<B成分以外のエポキシ樹脂>
X−22−173DX:片末端/エポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製)
CE2021P:(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製)。
<その他>
KF−99:メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学工業(株)製)、粘度20cSt(25℃)
X−22−164:両末端メタクリル変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製)、分子量:約860
Pt(acac):白金(II)ビス(アセチルアセトナート)(シグマアルドリッチジャパン(株)製)。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
表3における実施例1〜8の試験結果から、本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物は、耐光性、耐熱黄変性、密着性、表面非タック性に優れることが明らかになった。
一方で、表4に示すように、本発明のエポキシ基含有ポリシロキサン(B)と構造が異なるエポキシ樹脂を用いた場合、比較例1は耐熱黄変性に劣り、比較例2は硬化物に表面タックがあり、異物付着問題からLED封止剤として好適に用いることができない。(A)と(B)の配合比率が本発明の光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の範囲から外れる場合、比較例3、8において硬化物の密着性に劣ることがわかる。本発明のポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体(A)と構造が異なる硬化剤を用いた場合には、比較例4は密着性に劣り、比較例5、7は耐熱黄変性および耐光性に劣り、比較例6は表面タック性に劣り、LED封止剤として好適に用いることができない。もちろんのこと、アルケニル基を有するシリコーンとハイドロジェンシリコーンを含有する組成物を用いた比較例9では、表面タックが問題であることが再確認された。
以上説明したように、本発明によって、耐光性、耐熱黄変性、密着性、表面非タック性の優れた光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)2成分からなり、2成分の含有重量の比率が(A):(B)=20:80〜80:20である光半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
(A)(a1)下記式(1)で表される、アルコキシシリル基を有する構成単位と、
【化1】

(式中、Rは水素またはメチル基であり、RおよびRは炭素数1〜3のアルキル基であり、kは0〜2の整数であり、mは0または1の整数である。)
(a2)下記式(2)で表される、ヘミアセタールエステル結合を有する構成単位と、
【化2】

(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基またはシクロアルキル基であり、nは0〜10の整数である。)
(a3)下記式(3)で表される、ポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位
【化3】

(式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、rは0または1の整数であり、pは0〜20の整数であり、qは1〜3の整数である。)
からなり、各構成単位a1、a2、a3の割合が、a1=3〜30モル%、a2=20〜60モル%、a3=20〜75モル%であり、重量平均分子量(Mw)が3000〜20000であるポリシロキサン側鎖含有アクリル共重合体
(B)エポキシ基を2個以上有し、下記式(4)で示される構造を有するエポキシ基含有ポリジメチルシロキサン
【化4】

(式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基、XはRもしくは下記式(5)または(6)で表される置換基であり、R、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、sは0〜50の整数、tは3〜100の整数である。)
【化5】

(式中、Rは炭素数が1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基である。)
【化6】

(式中、R10は炭素数が1〜10のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基である。)

【公開番号】特開2010−6955(P2010−6955A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168083(P2008−168083)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】