説明

光学フィルタ及びこの光学フィルタの成膜方法と並びに撮像光量調整装置

【課題】画質性能に優れた光学フィルタ及びこの光学フィルタの成膜方法と撮像光量調整装置を提供する。
【解決手段】染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂材をプレート状に成形する光減衰基板プレート成形工程と、その光減衰基板プレートを一部の連結部を残し所定の光学フィルタ形状にプレス加工により複数の光学フィルタ形状にするフィルタ外形型抜き工程と、この型抜きされた光減衰基板プレートの少なくとも片面に誘電体膜と金属膜とを積層形成する減光膜層成形工程と、この減光膜層が形成された光減衰基板プレートの表面及び端面に主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素結合で構成された高分子ポリマーの減反射コート層を形成する減反射コーティング工程と、この減反射コート層に紫外線を照射する紫外線照射工程と、紫外線照射後に光減衰基板プレートから各光学フィルタ部材を切り離なす光学フィルタとして抜き取り工程と、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラその他の光学器機に搭載され光量調整を行う撮像光量調整装置、特にその撮像光量調整装置に用いられ特定波長の光の通過量を調整する光学フィルタ、及びその光学フィルタの成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光学フィルタは例えばNDフィルタ(Neutral Density Filter)として各種撮像装置に広く用いられている。このNDフィルタは樹脂或いはガラス製の基板に光吸収特性に優れた薄膜を形成している。そしてこのNDフィルタは全体が均一な単濃度の薄膜で成膜する場合と、複数の区割して領域毎に順次濃度が段階的に変化する多段濃度の薄膜で成膜する場合と、更に濃度が連続的に変化(漸減)するグラデーション薄膜で成膜する場合が知られている。
【0003】
近年、撮像装置の高解像化が進むに従い、明るい被写体条件下で光量を絞ると回折光の影響による画像ボケなど画質の劣化が顕著に現れる傾向にある。そこで、例えば特許文献1に開示されているように光量を調整する絞り羽根に同文献図3で示す様にNDフィルタを添着し、小絞り時に発生する回折現象を抑えることが提案されている。
【0004】
また、例えば特許文献2に開示されているように単一濃度のNDフィルタの場合(同文献図1参照)、NDフィルタの端部と開口形状で形成される小絞りにより回折が発生し画質の劣化が現れ、その劣化を防止する為に開口径側に連続的に濃度が漸減するグラデーションフィルタ(同文献図3参照)が提案されている。
【0005】
また、このこのような光学フィルタを作成する成膜方法としては、同特許文献1及び2においても利用されている例えば特許文献3に開示されているように、真空中の成膜材料であるターゲットにアルゴン等の不活性ガスイオンを衝突させ、飛び出した成膜ガスイオンで基板に成膜するスパッタリング(Sputtering)方法が用いられている。
【0006】
また、特許文献4に開示されているように、真空成膜装置を用いて成膜する方法の二つ方法が広く用いられている。
【0007】
そして、同特許文献1に開示される光学フィルタの成膜構造としては、同文献の図4に示すように、光学フィルタに相当する光量制御羽根(26)の光量調整フィルタ(29)は、基材として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)から成るフィルムであるベース部(34)の両面に、それぞれ一酸化珪素又は二酸化珪素から成る密着層(35)、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る金属層(36)、二酸化珪素から成る誘電体層(37)、ニオブから成るニオブ層(38)、二酸化珪素から成る誘電体層(39)、ニオブから成るニオブ層(40 )及び二酸化珪素から成る誘電体層(41)が順次積層されて構成され、これらの各層により多層被膜部(42)が形成されている。
【特許文献1】特開2006−126234号公報
【特許文献2】特開2005−338385号公報
【特許文献3】特開2001−064772号公報
【特許文献4】特開2005−345746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献4に開示されるように、この種の光学フィルタでは、真空蒸着装置を使った成膜方法が一般的である。そして、この真空蒸着装置の場合には、装置構成により成膜室内に一度に蒸着材料であるターゲットを通常6個以上セット可能で、そのターゲットを抵抗加熱方法か電子ビーム加熱方法によりイオン化し飛散させ蒸着するようになっている。
【0009】
この為に、各成膜毎に対応したターゲットを加熱し、まず基板平面上に酸化物下地層(誘電体膜)を成膜して、その上に光吸収層(金属膜)を積層成膜することで減光膜層を形成している。更に、その減光膜層の上に反射防止層(ARコート層)を成膜している。
【0010】
そして、この反射防止層(ARコート層)してMgF2を具体的に成膜している。
【0011】
ところが、従前の成膜方法によって成形された光学フィルタには以下の問題がある。まず、真空蒸着装置やスパッタ装置等を用い成膜イオンを基板に成膜する場合、適宜な透過率の光学フィルタを得ようとすると、各成膜層の層厚を厚くするか、各成膜層を形成する誘電体膜層と金属膜層を交互に多層積載することとなる。そして各成膜層の層厚を厚くすると減反射特性斑が生じ易く画質品質の低下を招き易い。また各成膜層を多層積載すると各成膜条件を各成膜毎に成膜調整管理が必要で有る。
【0012】
また、成膜した光学フィルタ基板を撮像光量調整装置の絞り羽根に添着し光学フィルタとして利用する場合、成膜加工された光学フィルタ基板を適宜光学フィルタ外形に合わせ型抜きして使用する。この型抜き加工ために光学フィルタの端面には成膜され無い地肌が露出して、その端面部分で光が反射及び透過して撮像面に到達し、その結果として画質の劣化を引き起こしている。
【0013】
本発明は上述の課題に鑑みてなしてものであり、成膜時の成膜調整管理が容易で作り安く、しかも光学フィルタの端面での反射を低減し、もって画質性能に優れた光学フィルタ及びこの光学フィルタの成膜方法と並びに撮像光量調整装置の提供に有る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するため本発明に係わる光学フィルタ成形方法は、透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂材をプレート状に成形し光減衰基板プレートを形成する基板プレート成形工程と、その光減衰基板プレートを一部の連結部を残し所定の光学フィルタ形状にプレス加工により複数の光学フィルタ形状に形抜きするフィルタ外形型抜き工程と、この形抜きされた光減衰基板プレートの少なくとも片面に誘電体膜と金属膜とを積層形成した減光膜層を形成する減光膜層成形工程と、この減光膜層が形成された光減衰基板プレートの表面及び端面に高分子ポリマーの減反射コート層を形成する減反射コーティング工程と、この減反射コート層に紫外線を照射する紫外線照射工程と、この紫外線照射後に光減衰基板プレートから各光学フィルタ部材を切り離なす光学フィルタとして抜き取り工程と、とから成っている。尚、前記減反射コート層は、有機溶剤に可溶な主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素(Si-Si)結合で構成されたポリシランをディッピングにより成膜形成している。
【0015】
また、本発明に係わる光学フィルタは、透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂から成る光減衰基板プレートと、この光減衰基板プレートの少なくとも片面に誘電体膜と金属膜とを積層形成した減光膜層と、この減光膜層を形成した光減衰基板プレートの表面及び端面に主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素(Si-Si)結合で構成された高分子ポリマーで有る有機溶剤に可溶なポリシランからなる減反射コート層とを形成してなり、撮像光量調整装置の撮像光路に配置され、その撮像光量を調整する絞り羽根に添着され使用される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、先に記した目的を達成する為に、基板プレートとして透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂材をプレート状にして用いることで、この基板プレート自体に減衰特性を持たせ、その上でその基板プレート上に成膜する減光膜層により最終的な希望する減衰特性が得られるよう成膜調整することで、減光膜層の各成膜層の層厚を適正な反射特性、減衰特性を持たせる厚さ、積載層数の少ない成膜が可能で、もって作り易く、しかも紫外線照射により表面反射率が減衰し安定した低反射の減反射コート層を形成することで減反射特性斑が少なく画質性能に優れた光学フィルタが得られる効果を奏する。
【0017】
また、本発明は、基板プレートを一部の連結部を残し所定の光学フィルタ形状にプレス加工により複数の光学フィルタ形状に形抜きした状態で減反射コート層を形成することで、光減衰基板プレートから切り離なされた光学フィルタの端面にも減反射コート層が形成され、光学フィルタの端面からの反射を低減し得る光学フィルタを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図示の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。図1乃至図3は本発明に係わる光学フィルタの構成を示し、図4乃至図6はその光学フィルタの成膜方法を示し、図7乃至図14はその成膜方法を使って光学フィルタの製造する成膜装置を示し、図15はその成膜装置で作られた光学フィルタを用いた撮像光量絞り装置をそれぞれ説明する為の説明図である。
【0019】
[光学フィルタの構成]
まず、本発明に係わる光学フィルタの膜層構造について図1乃至図3を用いて説明する。
【0020】
図1は光学フィルタの成膜主要構成を説明するもので、10が基板プレート(Base Film)で、その基板プレート10の片面には減光膜層を形成する光の反射特性を改善する透明層から成る誘電体膜層21として二酸化ケイ素(SiO2)と、その上に光吸収特性に富んだ金属膜22として二オブ(Nb)が積載成膜され、他面には減光膜層を形成する光の反射特性を改善する透明層から成る誘電体膜層23として二酸化ケイ素(SiO2)と、その上に光吸収特性に富んだ金属膜24としてチタン(Ti)が積載成膜された膜層構造と成っている。尚、実際の減光膜層は図3で示す様に誘電体膜層21、23と金属膜22、24が交互に必要な透過率が得られるように何層も、また各層の膜厚を必要に応じ調整され成膜されている。
【0021】
特に、基板プレート10の両面に成膜される減光膜層の金属膜22、24は、それぞれ光透過特性が少なくとも可視光全域で互いに相反特性を有し、前記基板プレートの表裏面を透過する光の可視光全域で略均一な光透過特性を成すように異なる金属材料のものが選定されている。
【0022】
図2は、他の実施形態を示すもので、図1の膜層構造との違いは、誘電体膜層21として他面の金属膜24を構成する金属材料をターゲットと用いて酸化形成した酸化チタン(TiO2)を成膜し、誘電体膜層23として他面の金属膜21を構成する金属材料をターゲットと用いて酸化形成した酸化ニオブ(NbO)を成膜したもので、誘電体膜層21、23として互いに反対の面の金属層22、24の金属材料を用いることで、後述する二種類のターゲットしか取り付けることが出来無い成膜装置でも減光膜層を成膜形成可能にしている。

【0023】
図3は、より実施に近い成膜構成を示すもので、本発明の光学フィルタ(NDフィルタ)43は、図示すように透明の基板プレート(成膜ベース基材)10に減光特性を有する減光膜層20をその表裏面に形成する。この表裏面に形成される減光膜層20A、20Bは光吸収層21と中間層22とで積層状に構成され、用途に応じて複数段(図示のものは6層構成)に形成される。光吸収層21(21a、21b、21c)は光吸収特性に富んだ金属膜で構成され、基板プレート10上に濃度を有する半透明層しとして形成される。中間層22(22a、22b、22c)は誘電体で構成され、光吸収層21の上に成膜され光の反射特性を改善する透明層として形成される。
【0024】
図示の減光膜層20A及び20Bは、均一厚さで均一な透光率を有する単濃度領域20aと膜厚さが漸減するグラデーション領域20bとに形成されている。また、最上層の誘電体膜層(中間層)22cの上には後述するコーティング層23が形成されている。これらの金属膜層(光吸収層)21、誘電体膜層(中間層)22、コーティング層23の成膜物質については後述する。
【0025】
図3に示す光学フィルタ(NDフィルタ)43は、片面20Aとして上記誘電体膜層(中間層)21a乃至21dを他面の蒸着金属ターゲットの酸化物か窒化物若しくはフッ化物(図示のものは酸化チタンTiO2)で成膜し、金属膜層(光吸収層)22a乃至22cを蒸着金属(図示のものは二オブNb)で構成し、他面20Bとして上記誘電体膜層(中間層)23a及び23bを他面の蒸着金属ターゲットの酸化物か窒化物若しくはフッ化物(図示のものは酸化二オブNbO)で成膜し、金属膜層(光吸収層)24a及び24bを蒸着金属(図示のものはチタンTi)で構成しする場合を示している。以下各膜層の素材について説明する。
【0026】
尚、蒸着金属ターゲットとしては、二オブNb、チタンTiの組合せ以外に光透過特性が少なくとも可視光全域で互いに相反特性を有し、前記基板プレートの表裏面を透過する光の可視光全域で略均一な光透過特性を得ることが出来る、例えば、蒸着金属ターゲットとしてはアルミニュームAl、バナジウムV、タングステンW、タンタルTa、ケイ素Si、クロメル(ニッケルークロム合金)等が利用されているが、これに限らず金属元素及び半金属元素から適宜光透過特性に応じ選択することが出来る。
【0027】
[基板プレート材の選定]
上述の基板プレート10は透明又は半透明の合成樹脂板で構成する。素材としては例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂などを使用する。この他基板材質は用途に応じて好適な素材を選択する。
【0028】
[金属物質の選定]
上述の金属膜層(光吸収層)22は、二オブ(Nb)が、他面の金属膜層(光吸収層)24には、チタン(Ti)がそれぞれ蒸着金属ターゲットとして使用している。
【0029】
[誘電体物質の選定]
上述の誘電体膜層(中間層)21は、チタン(Ti)の酸化物で、他面の誘電体膜層(中間層)23には、二オブ(Nb)の酸化物で構成する。このため上述の蒸着金属ターゲットを使用する。尚、この蒸着金属ターゲットを使ってそれぞれの誘電体膜層(中間層)を形成することは後述する成膜装置への取り付け可能なターゲット数の制限から成膜可能な設計になっている。
【0030】
[減反射コーティング層の選定]
上述の減反射コーティング層25としてはフッ化マグネシウムなどの硬質性或いは撥水性に富んだ材料がこの種の光学フィルタのコーティング材として一般使用されているが、ここでは実際に基板プレート10の両面に減光膜層を成膜後、成膜室から取り出し、その成膜処理済みの基板プレート10をポリシラン類高分子ポリマー溶液内に漬けるディッピングにより成膜している。
【0031】
尚、この減反射コーティング層25のコーティング材として使用可能な条件として、第一に下記の条件式により算出される屈折率n2の値、若しくはその値に近い高分子ポリマーを選定することが可能。
条件式 n2=√n1
但し、n1は減反射コーティング層25がコーティングされる成膜の屈折率で、この場合は誘電体膜層(中間層)21、23と成る。
【0032】
実際に、屈折率n2≒1.23のポリシランをコーティング処理している。尚、減反射コーティング層25の膜厚を所望の厚さに維持するためには溶液の粘性度と溶液から成膜処理済みの基板プレート10を引き出すスピード等を調整している。
【0033】
更に、ポリシラン類高分子ポリマーで形成された減反射コーティング層25に屈折率を安定させると共に低屈折率に調整するために紫外線照射を行う工程をディッピング工程後に設けている。
【0034】
[成膜装置の構成]
次に、図3に基づいて説明した基板プレート10上に減光膜層20を形成する成膜装置について図7乃至図9に従って説明する。尚、図7乃至図9は反応性スパッタリング装置を示し、その成膜原理を示すものである。また図7は第1の成膜装置で、回転ドラム31の周面側一画に開閉扉を備え、この開閉扉を介し基板プレート10の脱着作業する構造であり、構造上蒸着金属ターゲットは紙面左右の二箇所に取り付け可能となっている。図8は第1の成膜装置の中央断面図。更に、図9は第2の成膜装置で、第1の成膜装置との違いは回転ドラム31を紙面手前側に引き出し基板プレート10の脱着作業する構造であり、構造上蒸着金属ターゲットは紙面左右と上部の三箇所に取り付け可能となっている。
【0035】
[第2の成膜装置の説明]
まず図9で示す第2の成膜装置について説明する。この装置は図示の様に、成膜室30を形成する外筐ケース30aと、この成膜室30内に回転自在に内蔵された円筒形状の回転ドラム31と、この回転ドラム31に距離を隔てて配置されたスパッタ電極35と、成膜室30内に酸素イオン(窒素イオン、フッ素イオンでも可)を注入/排気する反応性ガス発生室39とで構成されている。
【0036】
上記成膜室30内は略々真空に形成され、このため図示しない真空ポンプが備えられている。そして成膜室30内は複数のエリア36a〜36dに遮蔽板37で区割されている。図示のものは図3で説明した金属膜層(光吸収層)22を成膜する第1のターゲット32aをスパッタリングする第1エリア36aと、基板プレート10の裏面に金属膜層(光吸収層)24を成膜する第2のターゲット32bをスパッタリングする第2エリア36bと、誘電体膜層(中間層)21、23を成膜する第3の誘電体ターゲット32cをスパッタリングする第3エリア36cと、活性ガスを照射する第4エリア36dとに区割されている。そして第1、第2、第3エリア36a〜36cには一対のスパッタ電極35a、35bがそれぞれ内蔵されている。
【0037】
この一対のスパッタ電極35a、35bは交流電源に連結され、一方がカソード、他方がアノードとなるように配置されている。各スパッタ電極35a、35bは電源コイル35cに結線され、交流電圧が印加されるように構成されている。上記第1、第2、第3エリア36a〜36cの各スパッタ電極35a、35bにはターゲット32(32a〜32c)が装着されている。このターゲット32は板状材料で構成され、面状蒸着源を構成する。また上記第1、第2、第3エリア36a〜36cにはコントローラ38を介してアルゴンなどの不活性ガス(動作ガス)が導入されるようになっている。図示38gはアルゴンガスの供給ボンベである。
【0038】
第4エリア36dには反応性ガス発生室39が設けられ、コントローラ39cを介して活性ガス(酸素ガス、窒素ガス、フッ素ガスなど)が供給ボンベ39gから供給されるようになっている。そして供給ボンベ39gからのガスをプラズマ化して第4エリア36d内に照射するように構成されている。
【0039】
このような装置構成で回転ドラム31を所定速度で回転し、第3エリア36cの第3のターゲット32cをスパッタリングして誘電体膜層(例えばSi)を基板プレート10上に付膜する。そして回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO)を基板上に照射する。すると基板プレート上の誘電体膜層21aは酸化され酸化物(例えばSiO)の被膜を生成する。この誘電体膜層21aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0040】
上述のように基板プレート10上に所定厚さの誘電体膜層21aが被膜形成された後、次いで第1エリア36aを回転ドラム31の回転で基板プレート10が通過する度に金属ターゲット32aをスパッタリングして金属膜層22a(例えばNb)を基板プレート10に先に成膜された金属膜層22a上に付膜する。同様に金属膜層22aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0041】
このように誘電体膜層(中間層)21a乃至21dと金属膜層(光吸収層)22a乃至22cとを交互に複数層に積層成膜する。
【0042】
同様に、後述する基板プレート10の表裏を反転させた後に、回転ドラム31を所定速度で回転し、第3エリア36cの第3のターゲット32cをスパッタリングして誘電体膜層(例えばSi)を基板プレート10上に付膜する。そして回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO)を基板上に照射する。すると基板プレート上の誘電体膜層23aは酸化され酸化物(例えばSiO)の被膜を生成する。この誘電体膜層23aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0043】
上述のように裏面の基板プレート10上に所定厚さの誘電体膜層23aが被膜形成された後、次いで第2エリア36bを回転ドラム31の回転で基板プレート10が通過する度に第2のターゲット32bをスパッタリングして金属膜層24a(例えばTi)を基板プレート10に先に成膜された金属膜層23a上に付膜する。同様に金属膜層24aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0044】
このように基板プレート10の表面に誘電体膜層(中間層)21a乃至21dと金属膜層(光吸収層)22a乃至22cとを交互に複数層に積層成膜し、裏面に誘電体膜層(中間層)23a乃至23cと金属膜層(光吸収層)24a及び24bとを交互に複数層に積層成膜している。
【0045】
[第1の成膜装置の説明]
次に図7で示す第1の成膜装置について説明する。この第1の成膜装置は先に図示の様に、成膜室30を形成する外筐ケース30aと、この成膜室30内に回転自在に内蔵された円筒形状の回転ドラム31と、この回転ドラム31に距離を隔てて配置されたスパッタ電極35と、成膜室30内に酸素イオン(窒素イオン、フッ素イオンでも可)を注入/排気する反応性ガス発生室39とで構成されている。
【0046】
第2の成膜装置との構造上での大きな違いは、基板プレート10の交換方法の違いから誘電体膜層(中間層)21、23を成膜する第3のターゲット32cをスパッタリングする第3エリア36cを配設出来無い点である。当然、以下に説明するこの誘電体膜層(中間層)21、23の成膜方法でも相違している。
【0047】
そこで、その成膜方法について説明する。この装置構成による成膜では、回転ドラム31を所定速度で回転し、第2エリア36bの第2のターゲット32bをスパッタリングして金属膜層(例えばTi)を基板プレート10上に付膜する。そして回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO)を基板上に照射する。すると基板プレート上の金属膜層21aは酸化され透明の酸化物(例えばTiO2)からなる誘電体膜層21a被膜を生成する。この誘電体膜層21aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0048】
上述のように基板プレート10上に所定厚さの誘電体膜層21aが被膜形成された後、次いで第1エリア36aを回転ドラム31の回転で基板プレート10が通過する度に第1のターゲット32aをスパッタリングして金属膜層22a(例えばNb)を基板プレート10に先に成膜された金属膜層22a上に付膜する。同様に金属膜層22aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0049】
このように誘電体膜層(中間層)21a乃至21dと金属膜層(光吸収層)22a乃至22cとを交互に複数層に積層成膜する。
【0050】
同様に、後述する基板プレート10の表裏を反転させた後に、回転ドラム31を所定速度で回転し、第1エリア36aの第1のターゲット32aをスパッタリングして金属膜層(例えばNb)を基板プレート10上に付膜する。そして回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO)を基板上に照射する。すると基板プレート10上の金属膜層23aは酸化され透明の酸化物(例えばNb2O5)からなる誘電体膜層23aの被膜を生成する。この誘電体膜層23aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0051】
上述のように裏面の基板プレート10上に所定厚さの誘電体膜層23aが被膜形成された後、次いで第2エリア36bを回転ドラム31の回転で基板プレート10が通過する度に第2のターゲット32bをスパッタリングして金属膜層24a(例えばTi)を基板プレート10に先に成膜された金属膜層23a上に付膜する。同様に金属膜層24aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0052】
このように基板プレート10の表面に誘電体膜層(中間層)21a乃至21dと金属膜層(光吸収層)22a乃至22cとを交互に複数層に積層成膜し、裏面に誘電体膜層(中間層)23a乃至23cと金属膜層(光吸収層)24a及び24bとを交互に複数層に積層成膜している。
【0053】
[グラデーション領域を持つ表面の成膜]
図3に示す光学フィルタ(NDフィルタ)43の表面には単濃度領域20aとグラデーション領域20bを形成する場合を示している。このグラデーション領域20bの成膜は図10に示すマスク板33によって成膜する。同図において回転ドラム31に基板プレート10を装着する際にマスク板33Aを組み合わせてセットする。このマスク板33を介して基板プレート10の表面に対して平行な面状蒸着源(上述の各ターゲット)から膜成分のスパッタ粒子を飛翔させて成膜する。このときマスク板33Aと基板プレート10との間には図11に示す所定間隔の成膜ギャップdが形成されている。マスク板33Aのマスク開口33aに対応する基板プレート10には単濃度領域20aと、マスク開口33aの上端縁と下端縁の周辺には膜厚さが直線的に漸減するグラデーション領域20bが形成される。
【0054】
[単濃度領域を持つ裏面の成膜]
また、図3に示す光学フィルタ(NDフィルタ)43の裏面には単濃度領域20aのみを形成する場合を示している。この単濃度領域20aのみの成膜は図10に示すマスク板33Bによって成膜する。同図において回転ドラム31に基板プレート10を装着する際に先のマスク板33Aと共にマスク板33Bを組み合わせてセットする。そして、先の表面の成膜工程が完了した時点で、基板プレート10を180度回転し、このマスク板33Bを面状蒸着源(上述の各ターゲット)に対峙させ、この状態でこのマスク板33Bを介して基板プレート10の裏面に対して平行な面状蒸着源(上述の各ターゲット)から膜成分のスパッタ粒子を飛翔させて成膜する。このときマスク板33Bと基板プレート10との間には図11に示す所定間隔の成膜ギャップdは必ずしも設ける必要は無く、マスク板33Bのマスク開口33bに対応する基板プレート10には単濃度領域20aが形成される。
【0055】
[マスキング方法及びマスク板構造]
そこで上述のような基板プレート上に光学特性を有する減光膜層20A、20Bを形成する場合に使用するマスク板33A、33Bの概観は図4に示す通りである。そして、図5に示す様に基板プレート10の表面にはマスク板33Aに開口した各マスク開口33aの上端縁と下端縁にそれぞれグラデーション領域20bが形成された減光膜層20Aが成膜される。また、図6に示す様に基板プレート10の裏面にはマスク板33Bに開口したマスク開口33bにより単濃度領域20aのみの減光膜層20Bが形成される。
【0056】
[マスク板のギャップ調整]
また、図4に示す様に、先に図11で説明したマスク板33Aの成膜ギャップdは、ターゲット材料によって適宜調整される。例えば、この場合の調整としては、ターゲット材料のの原子量に応じ成膜ギャップを調整するもので、実際に3mmから5mm間隔の中で、原子量41の二オブNbの場合の間隔を3mm±1mmとし、原子量22のチタンTiの場合の間隔を4mm±1mmとし、原子量14のケイ素Siの場合の間隔を5mm±1mmとなるように基板プレート10の表面にマスク板33Aを取り付ける際に調整している。
【0057】
[基板ホルダの構成]
上述の基板ホルダ45は、図8及び図12乃至図14に示すように1枚又は複数(成膜後のNDフィルタ部材に加工し易い大きさ、外形に適する枚数)の基板プレート10を固定支持しするように構成されている。この基板ホルダ45は、基板プレート10の周縁を表裏から挟持するように桟状のフレーム枠で構成されている。図示11はこのフレーム枠で形成された成膜開口であり、基板プレート10の表裏面にそれぞれ形成されている。この基板ホルダ45には基板プレート10の表裏に先に説明した成膜ターゲットに応じた成膜ギャップdに従って3mm乃至5mmの間隔の中で適宜にマスク板33A、33Bが装着されている。尚、マスク板33Bは単濃度の成膜形成で成膜ギャップdは成膜ターゲットに応じ調整の必要は無い。
【0058】
[マスク板の切替え構成]
上記マスク板33A、33Bは、図12乃至図14に示すように上下一対の回転支軸46a、46bで回転ドラム31に回転自在に軸承された基板ホルダ45に、基板プレート10の表裏に互いに対峙して取り付けられている。そして、先に図8で示す様に駆動モータMで回転する回転ドラム31の回転初期の回転を歯車48、歯車47を介し伝達され、回転ドラム31の正転でマスク板33Aが成膜ターゲット32に対峙し、回転ドラム31の逆転でマスク板33Bが成膜ターゲット32に対峙する様に180度反転するようになっている。尚、マスク板33A、33Bは回転ドラム31の回転初期の回転で反転し、引き続く回転ドラム31の回転は図示せぬクラッチと位置規制部材とにより回転運動が切られ、回転ドラム31の回転中で180度反転状態を保持する。
【0059】
[成膜方法の説明]
次に上述の成膜装置(スパッタ装置)で基板プレート10の表裏面に減光膜層20A、20Bを形成する手順について説明する。
【0060】
「基板セット工程」
まず図7及び図9で示す様に成膜室30を開放し、図7の場合にはターゲット物質32a、32bを、図9の場合にはターゲット物質32a、32b、32cをセットする(ターゲットセット)。これと同時に回転ドラム31から基板ホルダ45を取り外す。図示しないが基板ホルダ45の支軸46a、46bは回転ドラム31のフランジ部に着脱自在に軸承されている。そこでこの基板ホルダ45の支軸46a、46bを回転ドラム31の軸承部から取り外す。そして成膜室30の外部に取り出された基板ホルダ45に基板プレート10を取り付け、基板プレート10の表面に図12で示す様にマスク板33Aを装着し、基板プレート10の裏面に図13で示す様にマスク板33Bをそれぞれ装着し、再びこの基板ホルダ45を回転ドラム31に装着する。
【0061】
「表面成膜工程」
次に成膜室30を所定の真空状態にする。成膜室30内を真空状態にした後、各成膜エリアに動作ガス(アルゴンガスなど)を供給し、所定の成膜圧力に制御する。この動作ガス供給と前後して図8で示す駆動モータMを正回転駆動する。このとき駆動ギア48が回転すると、この駆動ギア48に結合した反転ピニオン47が回転し、基板ホルダ45は支軸46a、46bを中心に駆動モータMの正回転駆動で正回転する。これにより基板ホルダ45に装着された基板プレート10は図13で示す様に表面側10Aがターゲット32に対向配置される。
(図7の成膜装置による表面成膜の説明)
【0062】
図7の成膜装置による表面成膜の場合には、回転ドラム31が所定の回転数に達した後、まず第3の成膜エリア36bのスパッタ電極35bに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32bに動作ガスが衝突し、ターゲット物質36bが飛翔し、基板プレート10の表面にターゲット物質36cの被膜(この場合Ti)が成膜される。その状態で回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO2)を基板上に照射する。するとその被膜が活性ガス(この場合O2)で酸化され酸化物(例えばTiO2)の誘電体膜層21aの被膜を生成する。この誘電体膜層21aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0063】
次に、第1の成膜エリア36aのスパッタ電極35aに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32a(この場合Nb)に動作ガスが衝突し、ターゲット物質が飛翔し、基板プレート10の表面の誘電体膜層21aの被膜上に金属膜層22a(この場合Nb)が成膜される。この金属膜層22aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0064】
同様に、誘電体膜層21b、金属膜層22b、誘電体膜層21c、金属膜層22c、誘電体膜層21dの順で積層成膜を繰り返すことで図3で示す基板プレート10の表面10Aに減光膜20Aが形成される。
(図9の成膜装置による表面成膜の説明)
【0065】
図9の成膜装置による表面成膜の場合には、回転ドラム31が所定の回転数に達した後、まず第2の成膜エリア36cのスパッタ電極35cに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32cに動作ガスが衝突し、ターゲット物質36cが飛翔し、基板プレート10の表面10Aにターゲット物質36cの被膜(この場合Si)が成膜される。その状態で回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO2)を基板上に照射する。するとその被膜が活性ガス(この場合O2)で酸化され酸化物(例えばSiO2)の誘電体膜層21aの被膜を生成する。この誘電体膜層21aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0066】
次に、第1の成膜エリア36aのスパッタ電極35aに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32a(この場合Nb)に動作ガスが衝突し、ターゲット物質(金属イオン)が飛翔し、基板プレート10の表面10Aの誘電体膜層21aの被膜上に金属膜層22a(この場合Nb)が成膜される。この金属膜層22aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0067】
同様に、誘電体膜層21b、金属膜層22b、誘電体膜層21c、金属膜層22c、誘電体膜層21dの順で積層成膜を繰り返すことで図3で示す基板プレート10の表面10Aに減光膜20Aが形成される。
【0068】
「裏面成膜工程」
次に、基板プレート10の表面10Aに減光膜20Aを形成したところで図8で示す駆動モータMを逆回転駆動する。このとき駆動ギア48が反転すると、この駆動ギア48に結合した反転ピニオン47が回転し、基板ホルダ45は支軸46a、46bを中心に駆動モータMの逆回転駆動で逆回転する。これにより基板ホルダ45に装着された基板プレート10は図14で示す様に裏面側10Bがターゲット32に対向配置される。
(図7の成膜装置による裏面成膜の説明)
【0069】
図7の成膜装置による裏面成膜の場合には、回転ドラム31が所定の回転数に達した後、まず第1の成膜エリア36aのスパッタ電極35aに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32aに動作ガスが衝突し、ターゲット物質36aが飛翔し、基板プレート10の裏面10Bにターゲット物質36aの被膜(この場合Nb)が成膜される。その状態で回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO2)を基板上に照射する。するとその被膜が活性ガス(この場合O2)で酸化され酸化物(例えばNb2O5)の誘電体膜層23aの被膜を生成する。この誘電体膜層23aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0070】
次に、第3の成膜エリア36bのスパッタ電極35bに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32b(この場合Ti)に動作ガスが衝突し、ターゲット物質が飛翔し、基板プレート10の裏面10Bの誘電体膜層23aの被膜上に金属膜層24a(この場合Ti)が成膜される。この金属膜層24aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0071】
同様に、誘電体膜層23b、金属膜層24bの順で積層成膜を繰り返すことで図3で示す基板プレート10の裏面10Bに減光膜20Aが形成される。
(図9の成膜装置による裏面成膜の説明)
【0072】
図9の成膜装置による裏面成膜の場合には、回転ドラム31が所定の回転数に達した後、まず第3の成膜エリア36cのスパッタ電極35cに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32cに動作ガスが衝突し、ターゲット物質36cが飛翔し、基板プレート10の裏面10Bにターゲット物質36cの被膜(この場合Si)が成膜される。その状態で回転ドラム31が第4エリア36dに位置したとき活性ガス(例えばO)を基板上に照射する。するとその被膜が活性ガス(この場合O)で酸化され酸化物(例えばSiO)の誘電体膜層21aの被膜を生成する。この誘電体膜層21aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0073】
次に、第2の成膜エリア36bのスパッタ電極35bに交流電圧を印加する。するとこの電極に接続されたターゲット32b(この場合Ti)に動作ガスが衝突し、ターゲット物質が飛翔し、基板プレート10の裏面10Bの誘電体膜層23aの被膜上に金属膜層24a(この場合Ti)が成膜される。この金属膜層24aの被膜が所定厚に成るまで引き続き回転ドラム31を回転させ被膜を生成する。
【0074】
同様に、誘電体膜層23b、金属膜層24bの順で積層成膜を繰り返すことで図3で示す基板プレート10の裏面10Bに減光膜20Aが形成される。
【0075】
このように基板プレート10の表裏面にそれぞれ減光膜層20A、20Bを形成することにより、成膜室30を開放することなく、同一の成膜雰囲気(同一バッチ)のなかで基板プレート10の表裏面に薄膜形成することが可能となる。
【0076】
[グラデーション厚膜と均等厚膜の交互成形]
尚、基板ホルダ45のスペースが広く、前記マスク板33A、33Bをそれぞれ基板プレート10の表裏に設けることで、金属膜層21a乃至21cの膜厚さを直線的に漸減させて濃度を変化させグラデーション厚膜とし、誘電体膜層22a乃至22cを均等厚膜に成膜することもできる。
【0077】
[減反射(AR層)コーティング層の成形方法]
上述の成膜工程を経て基板プレート10の表裏面に減光膜20A、20Bが形成された後に、図18に示す様に両減光膜20A、20B上に高分ポリマーから成る減反射層(AR層)をディッピングにより最表層として形成している。
【0078】
この高分ポリマーとして基板プレート10がノルボルネン系樹脂、シクロオルフィン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂で屈折率n1としたとき、前記高分子ポリマーとして屈折率n1の平方根(n2=√n1)から得られる屈折率n2に近い材料を選べば良く、この場合、前記基板プレート10が屈折率n1=1.51のノルボルネン系樹脂であることから、ディッピング溶液とする前記高分子ポリマーとして屈折率n2≒1.23のプリシランを用いている。尚、このプリシランは主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素(Si-Si)結合で構成されている有機溶剤に可溶な機能性ポリマーであり、ケイ素原子間に酸素を含んでいるシリコーンポリマーと異なり、光導電性、発光、非線形光学特性、光分解性、高屈折率などの特異な光機能を持っている。反面、光に対して感受性が高く、不安定なため、長期安定性に欠けるといった欠点を有することから、ディッピング処理後に紫外線光源で紫外線Ur照射して欠点を取り除いている。
【0079】
[NDフィルタ形状カット]
図17及び図18は、以上説明した成膜方法によって成膜成形された基板プレート10の実施形態を示すものである。まず図17で示す実施形態では、図20で示す光学フィルタ製作工程に従い、まず透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂材をプレート状に光減衰基板プレートを成形する基板プレート成形工程、次にその光減衰基板プレートを一部の連結部を残し所定の光学フィルタ形状にプレス加工により複数の光学フィルタ形状に形抜きするフィルタ外形型抜き工程、その次にこの形抜きされた光減衰基板プレートの表面に減反射コーティング層を成膜する成膜工程、最後にこの減反射コーティング層が成膜された形抜きされた光減衰基板プレートから各光学フィルタ部材を切り離し光学フィルタに抜き取り工程と順次行なわれる。つまり、基板プレート10を適宜な減光特性を持ったNDフィルタ基板を作り、そのNDフィルタ基板をNDフィルタ形状に一部接合部分を残した状態で外形を型抜きし、その状態で成膜成形することで、一部接合部分以外は総て上述の減反射(AR層)コーティング層が側端面を含め形成され、後述する撮像光量絞り装置に組み込んだ状態でもその側端面での反射が防止できることから、画質性能の良い画像を得ることが出来る。
【0080】
また、図18で示す実施形態では、基板プレート10を予めNDフィルタ形状に一部接合部分を残した状態にカットしない一般的な場合の成膜形成方法で、当然にNDフィルタ形状にカットすることで、カットされた側端面には減反射(AR層)コーティング層が無く、撮像光量絞り装置に組み込んだ状態での側端面の反射を防止でき無いが、撮像光量絞り装置の仕様上で充分に使えることが有り、成膜形成方法の容易性等から実施されることが多い。
【0081】
更に図19は、本発明に係わる光学フィルタの可視光領域400nm〜700nmにおける光透過特性を説明するものである。図中、33Aグラフは基板プレート10の表面20Aに成膜された減光膜20Aによる光透過特性を示し、33Bグラフは基板プレート10の裏面20Bに成膜された減光膜20Bによる光透過特性を示し、33Cグラフは基板プレート10の表裏を透過する光透過特性を示し、ほぼ均一になっている。
【0082】
[撮像光量絞り装置]
本発明に係わる光量調整装置Eは図15に示すように、基板40と、この基板40に形成された光路開口41に1枚若しくは複数枚の光量調整羽根42を開閉自在に配置する。そしてこの光量調整羽根42で光路開口41を通過する光量を大小調節する。図示のものは一対の羽根42a、42bで光量調整するように構成され、ぞれぞれの羽根には小絞り状態に光量調整するように狭窄部42x、42yが形成してある。そして一方の光量調整羽根42aには狭窄部42xにフィルタ43fが添着してある。このフィルタ43fは前述した基板プレート10上に成膜した単濃度領域20aとグラデーション領域20bをカットして形成されている。そして光路中心に向かうに従って光の透過率が高くなるように光量調整羽根42aに添着されている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係わる光学フィルタの第1の実施例である成膜構成を示す説明図。
【図2】本発明に係わる光学フィルタの第2の実施例である成膜構成を示す説明図。
【図3】本発明に係わる光学フィルタの成膜全体構成を示す説明図。
【図4】本発明に係わる光学フィルタの成膜方法について説明する説明図。
【図5】本発明に係わる光学フィルタの表面成膜状態を説明する説明図。
【図6】本発明に係わる光学フィルタの裏面成膜状態を説明する説明図。
【図7】本発明に係わる光学フィルタの成膜装置の構成を説明する説明図。
【図8】図7の成膜装置の側面断面図を示す説明図。
【図9】本発明に係わる他の光学フィルタの成膜装置の構成を説明する説明図。
【図10】本発明に係わる光学フィルタの成膜原理について説明する説明図。
【図11】本発明に係わる光学フィルタの表面成膜方法について説明する説明図。
【図12】本発明に係わる光学フィルタの表面成膜時の状態について説明する説明図。
【図13】本発明に係わる光学フィルタの表裏反転の状態について説明する説明図。
【図14】本発明に係わる光学フィルタの裏面成膜時の状態について説明する説明図。
【図15】光学フィルタを用いた撮像光量調整装置の構成を示す斜視説明図。
【図16】本発明に係わる光学フィルタの減反射(AR層)コーティング方法について説明する説明図。
【図17】本発明に係わる光学フィルタの成膜状態を説明する説明図。
【図18】本発明に係わる他の光学フィルタの成膜状態を説明する説明図。
【図19】本発明に係わる光学フィルタの可視光領域の光透過特性を説明する説明図。
【図20】本発明に係わる光学フィルタ製作工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0084】
E 光量調整装置
d 成膜ギャップ
10 基板プレート(成膜ベース基材)
20 薄膜層
20a 単濃度領域
20b グラデーション領域
21 光吸収層(金属膜層)(22、24)
22 中間層(誘電体膜層)(21、23)
23 コーティング層
25 回転軸
30 成膜室
31 基板装着体(回転ドラム)
32 ターゲット
33 マスク板
33A 第1マスク開口
33B 第2マスク開口
35 スパッタ電極(35a、35b)
40 基板
41 光路開口
42 光量調整羽根(42a、42b)
43 NDフィルタ(光学フィルタ)
47 反転ピニオン
48 駆動ギア
49 回転盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂材をプレート状に成形し光減衰基板プレートを形成する基板プレート成形工程と、
その光減衰基板プレートを一部の連結部を残し所定の光学フィルタ形状にプレス加工により複数の光学フィルタ形状に形抜きするフィルタ外形型抜き工程と、
この形抜きされた光減衰基板プレートの少なくとも片面に誘電体膜と金属膜とを積層形成した減光膜層を形成する減光膜層成形工程と、
この減光膜層が形成された光減衰基板プレートの表面及び端面に高分子ポリマーの減反射コート層を形成する減反射コーティング工程と、
この減反射コート層に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
この紫外線照射後に光減衰基板プレートから各光学フィルタ部材を切り離なす光学フィルタとして抜き取り工程と、
から成る光学フィルタ成形方法。
【請求項2】
前記減反射コート層は、有機溶剤に可溶な主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素(Si-Si)結合で構成されたポリシランをディッピングにより成膜形成してなる請求項1の光学フィルタ成形方法。
【請求項3】
透過する光を減衰させる染料又は顔料からなる光減衰材料を練り込んだ樹脂から成る光減衰基板プレートと、
この光減衰基板プレートの少なくとも片面に誘電体膜と金属膜とを積層形成した減光膜層と、
この減光膜層を形成した光減衰基板プレートの表面及び端面に高分子ポリマーの減反射コート層とを形成してなる光学フィルタ。
【請求項4】
前記減反射コート層は、有機溶剤に可溶な主鎖構造が1次元のケイ素-ケイ素(Si-Si)結合で構成されたポリシランを成膜形成してなる請求項3の光学フィルタ。
【請求項5】
撮像光路に配置され、撮像光量を調整する絞り羽根と、
上記絞り羽根に添着された光学フィルタと、
から構成され、
上記光学フィルタは請求項3及び4に記載の光学フィルタ成形方法
により成形されてなることを特徴とする撮像光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−288293(P2009−288293A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137785(P2008−137785)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】