説明

光学反射素子

【課題】本発明はレーザープリンタなどのレーザースキャンユニットなどに用いる小型の光学反射素子を実現することを目的とする。
【解決手段】支持体1に支持された第一の支持部2a,2bと、第一の支持部2a,2bに支持された第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bを有する音叉振動子6a,6bと、振動中心9a,9bに支持された第二の支持部11a,11bとミラー部12とを備え、音叉振動子6a,6bをミラー部12に対向配置させ、振動中心9a,9bとミラー部12の回転軸とを同一線上に配置し、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bに突起部を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンユニットなどに用いられる光学反射素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザープリンタなどに用いられるレーザーから発せられた光線を掃引するレーザースキャンユニットとしては、多角形状の回転体の側面にミラーを設けたポリゴンミラーが用いられ、このポリゴンミラーを回転させることにより感光体ドラムの走査面上にレーザー光線を掃引させていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−281908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなカラーレーザープリンタの普及やプリンタの小型化に伴い、レーザースキャンユニットに用いる光学反射素子の小型化が命題となっている。しかしながら、ポリゴンミラーを用いたレーザースキャンユニットにおいては、ポリゴンミラーを小型化することに加え、このポリゴンミラーを駆動させる駆動装置が別途必要となるためその小型化が非常に困難なものとなっていた。
【0004】
そこで、本発明はこのような問題を解決しレーザースキャンユニットを小型化することができる光学反射素子の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、この目的を達成するために、本発明は、支持体に一端が支持された二つの第一の支持部と、この第一の支持部の他端に支持された第一のアームと第二のアームを有する二つの音叉振動子と、この音叉振動子の振動中心に一端が支持された第二の支持部と、この第二の支持部の他端に支持されたミラー部とから構成するとともに、前記二つの音叉振動子をミラー部を介して対向配置させ、二つの音叉振動子の振動中心とミラー部の回転軸とを同一線上に配置し、前記第一のアームと第二のアームに突起部を設けた構成としたのである。
【発明の効果】
【0006】
このような突起部を有する二つの音叉振動子によって発生させた撓み振動をミラー部の捩れ振動として振動させる振動子構成とすることによって、反復回転振動を高精度に制御しながら、ミラー部の振れ角度を大きくできる小型の光学反射素子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における光学反射素子の構成について図面を用いて説明する。
【0008】
図1は本実施の形態1における光学反射素子の平面図であり、図2は図1のAA部における断面図を示している。また、図3は光学反射素子の動作原理を説明するための概念図である。
【0009】
図1〜図3において、本実施の形態1における光学反射素子は、二つの第一の支持部2a,2b、第一のアーム3a,3b、第二のアーム4a,4bおよび連結部5a,5bからなる二つの音叉振動子6a,6bを有し、前記第一の支持部2a,2bの一端を支持体1に固定し、前記音叉振動子6a,6bの振動中心9a,9bに二つの第二の支持部11a,11bの一端を固定し、第二の支持部11a,11bの他端にレーザー光線などの光を反射するためのミラー部12を有し、前記二つの音叉振動子6a,6bをミラー部12に対向配置させるとともに、二つの振動中心9a,9bとミラー部12の回転軸14とを同一線上に配置し、前記第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bに、それぞれ突起部7a,7bを設けた構成を特徴としている。
【0010】
そして、第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bは撓み振動をさせることから、振幅量は第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの自由端が最も大きくなり、前記突起部7a,7bは第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの自由端に設けることが最も効果的である。
【0011】
なお、自由端に設けることができない場合には、第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの中間の所定の箇所に配置することも可能である。
【0012】
以上のように、第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの自由端に突起部7a,7bを設けることによって、二つの音叉振動子6a,6bの自由端が付加質量の支点となり、この支点を軸として音叉振動子6a,6bの厚み方向に可動するように作用し、音叉振動子6a,6bの慣性モーメントが可動振幅量の増加につながり、音叉振動子6a,6bの振幅量を増大させることが可能となり、結果としてミラー部12の反復回転振動の振幅量を大きくすることができ、ミラー部12の振れ角度を小型形状でより大きくすることができる光学反射素子を実現することができる。
【0013】
そして、より好ましくは突起部7a,7bを第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bを直交するように設け、音叉振動子6a,6bの内側に配置することによって、より音叉振動子6a,6bの捩りを効率よく発生させることができる。また、突起部7a,7bは左右対称形とすることが振動特性の観点から好ましく、そのときの突起部7a,7bの形状は特に制限はなく、振動特性、生産性の観点から適宜選択することができる。
【0014】
なお、この突起部7a,7bの質量は大きいことが望ましく、設計上大きな形状を設けることができないときには突起部7a,7bに重りを付加することも可能であり、これによって、さらにその効果を増大させることができる。
【0015】
また、二つの音叉振動子6a,6bの形状は同一形状とすることが好ましく、二つの音叉振動子6a,6bの共振周波数を同一周波数とし、その対称性を高くすることがより好ましい。これによって、より大きなQ値を有する振動子を実現でき、高精度に振動させることができる。
【0016】
そして、図2に示すように、この光学反射素子を構成する基板材料としては、金属、ガラスまたは石英基板などの弾性、機械的強度および高いヤング率を有する弾性部材を基材20として構成することが機械的特性および生産性の観点から好ましく、このような特性を満足する弾性部材としては、金属、水晶、ガラスまたは石英材料を用いることが機械的特性と入手性の観点から好ましい。また、金属をシリコン、チタン、ステンレス、エリンバー、または黄銅合金とすることによって、振動特性、加工性に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0017】
そして、シリコンなどの基材20で構成された前記第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの少なくとも一面には、たわみ振動を起こすための圧電アクチュエータ10を形成している。この圧電アクチュエータ10は第一の電極層21、圧電体層22および第二の電極層23の積層体構造からなる薄膜積層型圧電アクチュエータとすることが好ましい。これによって、多数個取りのウエハー単位で一括して生産することができるとともに、薄型の音叉振動子6a,6bに設計することができる。
【0018】
また、この音叉振動子6a,6bの厚みを第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの幅寸法よりも小さくすることによって、小型の光学反射素子を実現することができる。
【0019】
また、これらの第一の電極層21、圧電体層22および第二の電極層23は音叉振動子6a,6bを形成する基材20の上に順次スパッタリング技術などの薄膜プロセスにより一括して形成することができる。従って、圧電アクチュエータ10を音叉振動子6a,6bの同一面に形成することが生産性の観点から好ましい。
【0020】
そして、前記圧電体層22に用いる圧電体材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの高い圧電定数を有する圧電体材料が好ましい。
【0021】
また、音叉振動子6a,6bの共振周波数を同一とすることが重要であり、さらに、この音叉振動子6a,6bの共振周波数と、ミラー部12と第二の支持部11a,11bで構成された捩れ振動子の共振周波数とが同一周波数となるように振動設計することによって、効率良くミラー部12を反復回転振動させる光学反射素子を実現することができる。
【0022】
すなわち、ミラー部12を中心とし、ミラー部12の回転軸の同一線上に音叉振動子6a,6bを対向配置し、二つの音叉振動子6a,6bの第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの位相が180度異なる方向に撓むように振動させ、この二つの音叉振動子6a,6bの振動エネルギーを利用して第二の支持部11a、ミラー部12および第二の支持部11bとで構成した捩れ振動子が捩れ振動を起こさせることができる。この捩れ振動によって、ミラー部12の反復回転振動を高精度に制御することができるとともに、ミラー部12の振れ角度を大きく設計することができる小型の光学反射素子を実現することができる。
【0023】
このとき、第一のアーム3aと第一のアーム3bは同一方向に撓み、第二のアーム4aと第二のアーム4bとは同一方向に撓むように同期させることが重要である。
【0024】
さらに、第一のアーム3a,3b、第二のアーム4a,4bおよび連結部5a,5bの幅を等幅とすることによって、不要な振動モードを抑制した光学反射素子とすることができる。また、音叉振動子6a,6bをコの字状とすることによっても同様の効果を有する光学反射素子とすることができる。さらには、これらを組み合わせることによって、よりその効果を発揮することができる。
【0025】
また、第一の支持部2a,2b、音叉振動子6a,6b、第二の支持部11a,11bおよびミラー部12の基材20を同一材料とすることによって安定した振動特性と不要な共振を抑制し、生産性に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0026】
また、第一の支持部2a,2bおよび第二の支持部11a,11bの断面形状は円状とすることが好ましい。これによって、捩れ振動の振動モードが安定し、不要共振も抑制することができ、外乱振動に影響されにくい光学反射素子を実現することができる。
【0027】
また、ミラー部12は基材20の表面を鏡面研磨することによって形成することも可能であり、さらに好ましくは光の反射特性に優れた金やアルミニウムの金属薄膜のミラー膜として形成することも可能である。これらの金属薄膜からなるミラー膜の形成は、圧電アクチュエータ10を作製する工程において、前記と同様にスパッタリング技術により形成することができる。
【0028】
このような構成からなる光学反射素子は、シリコンウエハーなどの基材20の上に薄膜プロセス、フォトリソ技術などの半導体プロセスを応用することによって高精度に、一括して作製することが可能であることから、光学反射素子の小型化、高精度化および生産効率に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0029】
また、第二の支持部11a,11bとミラー部12とからなる捩れ振動子の捩れ振動を利用することによって、小型のデバイス構造でありながら、ミラー部12の振れ角を大きくすることが可能となる光学反射素子を実現することができる。
【0030】
さらに、振動の駆動部である二つの音叉振動子6a,6bを構成する第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの撓み振動と第二の支持部11a,11bとミラー部12とで形成される捩れ振動子の構成を有していることから設計の自由度が高まり、それぞれの寸法形状を工夫することによってミラー部12の駆動周波数、振れ角などを広範囲に設計対応することができる光学反射素子を実現することができる。
【0031】
また、前記第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bに形成した圧電アクチュエータ10のそれぞれの第一の電極層21と第二の電極層23の引き出し電極は個別に引き出し線(図示せず)を形成しながらそれぞれの接続端子25a,25bへ接続している。これによって正負反対の電気信号をそれぞれの圧電アクチュエータ10に印加することができる。
【0032】
次に、このような構成からなる光学反射素子の動作原理について説明する。なお、図3は動作原理を説明するために概念図であり、突起部7a,7bの図示は省略している。
【0033】
図1〜図3に示すように、圧電アクチュエータ10を構成する第一の電極層21と第二の電極層23との間に交流の駆動電圧を印加することにより圧電体層22の面方向に伸び・縮みが発生し、この圧電アクチュエータ10を変形させることができる。この圧電特性を利用して、第一のアーム3aと第一のアーム3bどうし、第二のアーム4aと第二のアーム4bどうしは、同じ方向に撓ませるとともに、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの位相が180度異なる方向(矢印方向8a、8b)に撓み振動を起こすように電気信号を印加する。すなわち、第一のアーム3a,3bには同位相の電気信号を印加し、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,3bに形成したそれぞれの圧電アクチュエータ10には逆位相となるように電気信号を印加する。
【0034】
これによって、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bとは反対方向に撓み振動をし、この撓み振動の振動エネルギーは音叉振動子6a,6bの連結部5a,5bへと伝搬される。これによって、音叉振動子6a,6bは二つの第一の支持部2a,2bとともに振動中心9a,9bを振動軸として所定の周波数にて反復回転振動(捩れ振動)をする。このとき、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの自由端には突起部7a,7bを付加していることから、重りの役目を果たし、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの共振周波数を低減することができることから、音叉振動子6a,6bの捩り振動を効率よく振動させる役目を果たす。
【0035】
そして、突起部7a,7bを設けることによって、より低い周波数で振動させた音叉振動子6a,6bの連結部5a,5bへと伝搬される。これによって、音叉振動子6a,6bは振動中心9a,9bを振動軸(回転軸14を中心軸として)として、より低い周波数にて反復回転振動(捩れ振動)をする。
【0036】
次に、この二つの音叉振動子6a,6bの反復回転振動の振動エネルギーが連結部5a,5bに接合された第二の支持部11a,11bに振動エネルギーが伝達され、回転軸14を中心として、第二の支持部11a,11bとミラー部12とで構成される捩れ振動子として捩れ振動を起こすようになる。これによって、ミラー部12に回転軸14を軸中心として反復回転振動を起こす。
【0037】
このとき、音叉振動子6a,6bの反復回転振動の方向と、第二の支持部11a,11bおよびミラー部12で構成される捩れ振動子の反復回転振動の方向は位相が180度異なる反対方向に反復回転振動することとなる。
【0038】
従って、二つの音叉振動子6a,6bの共振周波数と、ミラー部12と二つの第二の支持部11a,11bとで構成された捩れ振動子の共振周波数とは同一周波数とすることが重要である。これによって、高精度な共振振動と高いQ値を実現できることから、外乱振動の影響を受けにくい光学反射素子を実現することができる。
【0039】
このような振動モードを有する振動子を構成し、ミラー部12にレーザー光源またはLED光源などから発生させた光線を入力することによって、ミラー部12の振れ角度を大きくできる小型の光学反射素子を実現することができる。これらの振動部の振動設計をすることによって、大きく出力光の反射角度を変化させることができ、レーザー光線などの入力光を所定の設計値となるように掃引することができる光学反射素子を実現することができる。
【0040】
このように、振動源を高Q値を有する二つの音叉振動子6a,6bとし、この安定した振動エネルギーを第二の支持部11a,11bとミラー部12からなる捩り振動子への捩り振動を発生させる励振エネルギーとして供給することによって、安定した反復回転振動をミラー部12に発生させることができる。
【0041】
なお、音叉振動子6a,6bの反復回転振動をさせるために、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの一面に圧電アクチュエータ10を形成した場合の光学反射素子を例として説明してきたが、音叉振動子6a,6bを構成する少なくともいずれか一方のアームに圧電アクチュエータ10を形成することによっても、前記と同様の光学反射素子の動作を実現することが可能である。これは音叉の振動特性を利用したものであり、どちらか一方のアームを励振させると連結部5を介して他方のアームに運動エネルギーが伝播することによって振動させることが可能となる性質を応用したものである。
【0042】
以上のような構成を有した光学反射素子の応用としては、レーザービームプリンタが一例としてあげられる。このレーザービームプリンタなどに用いられる感光ユニットは、光源となるレーザーと、このレーザーから発せられたレーザー光線が照射される感光ドラムと、レーザー光線を反射させるとともにその反射方向を可変させることで、レーザー光線を感光ドラムの走査面上を掃引させる光学反射素子から構成されており、この感光ユニットに用いられる光学反射素子は図1〜図3に示した構成の光学反射素子を用いることによって小型のレーザービームプリンタを実現することができる。
【0043】
次に、本実施の形態1における光学反射素子の製造方法について説明する。
【0044】
まず始めに、厚みが0.3mmからなるシリコン基板20を準備し、その上にスパッタリング法または蒸着法などの薄膜プロセスを用いて白金電極からなる電極層21を形成している。このとき、シリコン基板20の厚みは厚くても良い。それによって、ウエハ形状の大きなシリコン基板20を用いることができるとともに、反りなどが少ないことから、より高精度な光学反射素子を効率よく作製することができる。
【0045】
その後、この電極層21の上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料を用いてスパッタリング法などによって圧電体層22を形成する。このとき、圧電体層22と電極層21との間に配向制御層としてPbとTiを含む酸化物誘電体を用いることが好ましく、PLMTからなる配向制御層を形成することがより好ましい。これによって、圧電体層22の結晶配向性がより高まり、圧電特性に優れた圧電アクチュエータ10を実現することができる。
【0046】
次に、この圧電体層22の上にチタン/金よりなる電極層23を形成している。
【0047】
このとき、金電極の下層のチタンはPZT薄膜などの圧電体層22との密着力を高めるために形成しており、チタンの他にクロムなどの金属を用いることができる。
【0048】
これによって、圧電体層22との密着性に優れ、かつ、金電極とは強固な拡散層を形成していることから密着強度を高めた圧電アクチュエータ10を形成することができる。そして、このときの白金電極の厚みは0.2μm、PZT薄膜は3.5μm、およびチタン電極は0.01μmとし、金電極は0.3μmで形成している。
【0049】
次に、フォトリソ技術を用いてエッチングすることによってパターン形成された第一の電極層21、圧電体層22および第二の電極層23を形成している。このとき、第二の電極層23のエッチング液としてはヨウ素/ヨウ化カリウム混合溶液と水酸化アンモニウム、過酸化水素混合溶液からなるエッチング液を用いて所定の電極パターンを形成した。
【0050】
また、第一の電極層21、圧電体層22に用いるエッチング方法としてはドライエッチング法とウエットエッチング法のいずれかの方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などを用いることができる。一例として、ドライエッチング法であればフルオロカーボン系のエッチングガス、あるいはSF6ガスなどを用いることができる。圧電体薄膜層を沸酸、硝酸、酢酸および過酸化水素の混合溶液からなるエッチング液を用いてウエットエッチングを行うことによってパターン化された圧電体層22を形成する。その後、さらに、ドライエッチングによって下層の電極薄膜層をエッチングすることによってパターン化された第一の電極層21を形成することによって、図2に示したような圧電アクチュエータ10を形成することができる。
【0051】
次に、XeF2ガスを用いてシリコン基板20を等方的にドライエッチングすることによって不必要なシリコンを除去し、図2に示したような形状を有した光学反射素子を形成することができる。
【0052】
なお、シリコン基板などをドライエッチングによって異方性を活用して高精度にエッチングする場合には、エッチングを促進するSF6ガスとエッチングを抑制するC48ガスなどを用いて、より直線的にエッチングをすることが好ましい。そして、エッチングの際には、前記ガスを用いた混合ガスを用いること、あるいは交互に前記ガスを切り替えてドライエッチングを行うエッチング方法が可能であり、これらの方法を寸法形状、加工精度に合わせて適宜選択してエッチング加工することが可能である。
【0053】
以上のような製造方法によって、小型で、高精度な光学反射素子を一括して効率よく作製することができる。
【0054】
そして、前記のような製造プロセスによって、第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの長さ;0.785mm、幅;0.3mmとし、突起部7a,7bの長さ;0.3mm、幅;0.3mm、第一の支持部2a,2bの長さ;0.2mm、幅;0.1mm、第二の支持部11a,11bの長さ;0.4mm、幅;0.1mm、ミラー部12;1.0×1.0mm、対向するアームのギャップ;0.05mmの寸法形状を有する素子を作製して振動特性を評価したところ、駆動周波数;18kHz、ミラー部12の振れ角;±10度の特性を有した光学反射素子を作製することができた。このとき、同一形状の一つの音叉振動子にて駆動したときの印加電圧に対して約2/3の印加電圧にて同等の振れ角度を実現できるとともに、Q値を高くできることから外乱に対する安定性の高い光学反射素子であることを確認した。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における光学反射素子の構成について図面を用いて説明する。
【0056】
図4は本実施の形態2における光学反射素子の平面図を示している。
【0057】
本実施の形態2における光学反射素子の基本的な構成は実施の形態1の構成とほぼ同様であり、その詳細な説明は省略し、本実施の形態2における光学反射素子が実施の形態1と大きく異なっている構成について図面を用いて説明する。
【0058】
図4において、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bの中間部と第二の支持部11との間に第三の支持部30a,30bを設けたことを特徴としている。これによって、音叉振動子6a,6bの反復回転振動のエネルギーを効率よく第二の支持部11a,11bへ伝達することが可能となり、さらに小型の光学反射素子を実現することができる。
【0059】
図4に示すように、第三の支持部30a,30bを、第二の支持部11a,11bに発生する第二の支持部11a,11bとミラー部12から構成された捩れ振動子の共振周波数の高次の定在波の振動節部に設けたことを特徴としている。この定在波は1/2、1/3、1/4と示されるように整数分の一で現れてくるものであり、第二の支持部11a,11bに発生する定在波の振動節部に第三の支持部30a,30bを設けることが好ましい。また、第三の支持部30a,30bは第二の支持部11a,11bの中間部と連結部5a,5bとの間に配置することが好ましい。これによって、第一のアーム3a,3bと第二のアーム4a,4bのたわみ振動の減衰を抑制しながら効率よくミラー部12の大きな振れ角度を有する反復回転振動をさせることができる。
【0060】
さらに、図4に示すように第一のアーム3aと第一のアーム3b、および第二のアーム4aと第二のアーム4bとの間にはダンパー35を用いてそれぞれ連結している。このような構成とすることによって、二つの音叉振動子6a,6bの製造ばらつきなどによって発生する共振周波数の若干のずれを解消することができる。これによって、軸中心の対称性が高まり、音叉振動子6a,6bの駆動力が大きくなるという効果を発揮することができる。また、これによって振動子としてのQ値が大きくなり、不要共振を低減することもできる。
【0061】
このダンパー35に用いる材料としては、弾性を有する弾性部材が好ましく、このような弾性部材としては電気的特性、入手性の観点から、金属、ゴム、またはエラストマーのいずれかを用いることが好ましい。
【0062】
また、ダンパー35の形状をシート状とすることによって不要な振動を抑制できるとともに連結性を高めることができる。さらに、ダンパー35の弾性率を第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの弾性率よりも大きくすることによって音叉振動子6a,6bの振動の減衰を抑制することができる。
【0063】
また、突起部7a,7bは第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの中間部に配置させている。これはミラー部12の形状によって、より小型の光学反射素子を実現するためのものであり、このような構成とすることによって、効率良く構成部品を配置させることができることから無駄な空間を排除できる。なお、ミラー部12の形状を小さく設計することができるときには、図1に示したように第一のアーム3a,3bおよび第二のアーム4a,4bの自由端に突起部7a,7bを配置することが好ましい。
【0064】
以上説明してきたように、第三の支持部30a,30bを、捩れ振動子の共振周波数の高次の定在波の振動節部に設けた光学反射素子とすることによって、より小型で振れ角度の大きな光学反射素子を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、光学反射素子に関して小型化できるという効果を有し、特に電子写真方式の複写機、レーザープリンタ、光学スキャナ用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の光学反射素子の平面図
【図2】同図1のAA部における断面図
【図3】同実施の形態1における光学反射素子の動作状態を示す概念図
【図4】同実施の形態2における光学反射素子の平面図
【符号の説明】
【0067】
1 支持体
2a,2b 第一の支持部
3a,3b 第一のアーム
4a,4b 第二のアーム
5a,5b 連結部
6a,6b 音叉振動子
7a,7b 突起部
8a,8b 矢印
9a,9b 振動中心
10 圧電アクチュエータ
11a,11b 第二の支持部
12 ミラー部
13 矢印
14 回転軸
20 基材
21 第一の電極層
22 圧電体層
23 第二の電極層
25a,25b 接続端子
30a,30b 第三の支持部
35 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、この支持体に一端が支持された二つの第一の支持部と、この二つの第一の支持部の他端に支持された第一のアームと第二のアームを有する二つの音叉振動子と、この二つの音叉振動子の振動中心に一端が支持された二つの第二の支持部と、この二つの第二の支持部の他端に支持されたミラー部とを備え、このミラー部を介して前記二つの音叉振動子を対向配置させ、二つの音叉振動子の振動中心とミラー部の回転軸とを同一線上に配置し、前記第一のアームと第二のアームに突起部を設けた光学反射素子。
【請求項2】
突起部を第一のアームと第二のアームの自由端に設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項3】
突起部を音叉振動子の左右対称に設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項4】
突起部を音叉振動子の内側に設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項5】
二つの第一の支持部が回転軸を中心として同一方向に捩り振動するように音叉振動子を振動させる請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項6】
二つの音叉振動子の形状を略同一形状とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項7】
二つの音叉振動子の共振周波数を同一周波数とした請求項6に記載の光学反射素子。
【請求項8】
二つの音叉振動子の共振周波数と、ミラー部と二つの第二の支持部で構成された捩れ振動子の共振周波数とが略同一周波数とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項9】
第一の支持部、音叉振動子、突起部、第二の支持部およびミラー部の基材を同一材料とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項10】
基材を弾性部材とした請求項9に記載の光学反射素子。
【請求項11】
弾性部材を金属、ガラス、水晶または石英とした請求項10に記載の光学反射素子。
【請求項12】
金属をシリコン、チタン、ステンレス、エリンバーまたは黄銅合金とした請求項11に記載の光学反射素子。
【請求項13】
第一のアーム、および/または第二のアームの少なくとも一面に圧電アクチュエータを設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項14】
圧電アクチュエータを第一の電極層、圧電体層および第二の電極層からなる積層圧電薄膜とした請求項13に記載の光学反射素子。
【請求項15】
二つの音叉振動子の同一面に圧電アクチュエータを設けた請求項13に記載の光学反射素子。
【請求項16】
第一のアームおよび第二のアームと、第二の支持部との間に第三の支持部を設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項17】
第三の支持部を、捩れ振動子の共振周波数の高次の定在波の振動節部に設けた請求項16に記載の光学反射素子。
【請求項18】
第一のアームの自由端どうし、および第二のアームの自由端どうしをダンパーで連結した請求項1に記載の光学反射素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−223114(P2009−223114A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69030(P2008−69030)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】