説明

光学用フィルムおよびその用途

【課題】400〜800nmの波長領域全てにおいて正の波長依存性を示し、1枚で前記波長範囲において透過光に特定の位相差を与えることができ、かつ低吸水性で低光弾性係数を有し、耐熱性にも優れた光学用フィルムおよびその製造方法、該フィルムからなる偏光板保護フィルム、該フィルムを用いた偏光板を提供すること。
【解決手段】光学用フィルムは、下記一般式(I)で表される構造単位(I)を有するノルボルネン系樹脂を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の熱可塑性ノルボルネン系樹脂を主成分とした光学用フィルムおよびその製造方法、該フィルムからなる偏光板保護フィルム、および、該フィルムを用いた偏光板に関する。詳しくは、本発明は、他材料との密着性や接着性が良好で、高透明であり、透過光に与える位相差(本発明において、位相差とはレターデーション(Retardation)
を意味する。)の均一性が高く、またこの位相差の特性が環境の温度や湿度に影響されにくく、経時安定性に優れ、さらに、この位相差の絶対値が透過光の波長が長波長になるほど大きくなる「正の波長依存性」を有する光学用フィルムおよびその製造方法、該フィルムからなる偏光板保護フィルム、および、該フィルムを用いた偏光板に関する。また、本発明は、光拡散機能、透明導電性、反射防止機能等の機能を有する光学用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学用フィルムとして使用されているポリカーボネート、ポリエステル等のフィルムは、光弾性係数が大きいために微小な応力の変化などにより透過光に位相差が発現したりして位相差が変化する問題がある。また、トリアセチルアセテート等アセテートフィルムは、耐熱性が低く吸水変形等の問題がある。
【0003】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂(環状オレフィン系樹脂)は、ガラス転移温度、光線透過率が高く、しかも屈折率の異方性が小さいことによる従来の光学フィルムに比べ低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されており、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6等に記載されているものが挙げられる。
【0004】
また、上記の特徴を利用して、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤、低誘電材料などの電子・光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状オレフィン系樹脂を応用することが検討されている。
【0005】
上記の環状オレフィン系樹脂の特性は、光学用フィルム用の樹脂としてみても、前記従来の樹脂の問題点を改善できるものであり、このため、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムが光学用の各種フィルムとして提案されている。
【0006】
たとえば、特許文献7、特許文献8および特許文献9には、環状オレフィン系樹脂のフィルムを用いた位相差板が記載されている。また、特許文献10、特許文献11および特許文献12には、環状オレフィン系樹脂のフィルムを、偏光板の保護フィルムに使用することが記載されている。さらに、特許文献13には、環状オレフィン系樹脂のフィルムからなる液晶表示素子用基板が記載されている。
【0007】
これらの特許文献には、環状オレフィン系樹脂は吸水率が容易に0.05%以下のものが得られ、この低吸水性の点が特徴であり、かつ上記用途に必要であると記載されている。しかしながら、このような低吸水性の環状オレフィン系樹脂のフィルムを、例えば、位相差板や液晶表示素子用基板として用いる場合、ハードコート、反射防止膜や透明導電層の密着性、あるいは、偏光板やガラスとの接着性の問題が生じることがある。また、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、上記の問題に加えて、偏光子との貼り合わせに通常使用される水系接着剤の水が乾燥し難いなど光学フィルムの2次加工時に問題も生じる。
【0008】
一方、環状オレフィン系樹脂は広い範囲の構成からなり、すべてが吸水率0.05%以
下になるとは限らない。吸水率を0.05%以下にするためには、環状オレフィン系樹脂は炭素原子と水素原子のみからなるポリオレフィン構造等であることが必要である。
【0009】
そこで、上記低吸水性に由来する問題を解決するために、極性基を分子内に導入した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む光学用フィルムが特許文献14や特許文献15などにおいて提案されている。
【0010】
これらに開示された光学用フィルムは、高透明性、透過光の低位相差、さらに延伸配向させると透過光に均一で安定した位相差を与える等の光学特性において優れ、耐熱性、他材料との密着性や接着性等も良好で、しかも吸水変形が小さいという特徴を有しており、前記従来の樹脂からなる光学用フィルムの問題点を改善したものとして、各種用途分野での応用が検討されている。
【0011】
しかしながら、一般的に位相差フィルムは、延伸配向させて得られる透過光に位相差(複屈折)を与える機能が、透過光の波長が長波長になるにつれて透過光の位相差(複屈折)の絶対値が小さくなるという特性(以下、「負の波長依存性」という。)を有するため、可視光領域(400〜800nm)全てにおいて、例えば1/4波長等の特定の位相差を透過光に与えることが非常に困難であった。実際に位相差が広範囲な波長領域(400〜800nm)において1/4波長としての機能が反射型や半透過型の液晶ディスプレイや光ディスク用ピックアップなどに必要とされている。また、液晶プロジェクターでは、1/2λの位相差が必要であり、従来の環状オレフィン系樹脂からなる光学用フィルムでは
、フィルムを積層化させる以外困難であった。フィルムの積層化では、フィルムの貼り合わせ、切り出し、接着などの工程が複雑化するだけでなく、得られる光学フィルムの厚みも低減させることが困難になる。
【0012】
この課題を解決するためには、波長が長波長になるにつれて透過光の位相差の絶対値が大きくなる特性、すなわち、正の波長依存性を示す光学用フィルムが必要である。この正の波長依存性を示す光学用フィルムとしては、特許文献16、17において、特定のセルロースアセテート系樹脂からなる位相差フィルムやポリカーボネート系樹脂が提案されている。しかしながら、セルロース系樹脂からなるフィルムでは、吸水による特性変化や耐熱性等の点において問題点があり、ポリカーボネート系では、ガラス転移温度が高く、高温での延伸加工が必要になるだけでなく、フィルムの光弾性係数が大きいいために応力による光学ひずみが生じる問題があった。
【0013】
このため、正の波長依存性を示し、低吸水性であって、光弾性係数が小さい優れた位相差フィルムの出現が強く望まれていた。
また、透過型液晶ディスプレイ(特にVA(vertically aligned)モード)を用いた液晶テレビは、ディスプレイの大型化に伴い、広視野角で高輝度といった高精細な表示がこれまで以上に要求されている。二枚の偏光板をクロスニコル状態(偏光板の透過軸が互いに直交している状態)で使用する透過型液晶ディスプレイにおいては、ディスプレイを観察する位置を、ディスプレイ正面から斜め方向に変化させると、見かけ上二枚の偏光板の透過軸が90度からずれるため、黒表示時の光漏れや色抜け(着色)といった問題が生じる。このような問題を解消するため、液晶セルと各偏光板との間に種々の位相差フィルムを介在させて、偏光板の視野角依存の補償を行っているが十分な品質にいたっていない。
【0014】
このため、黒表示時の光漏れや色抜け(着色)が生じないような位相差フィルムの出現が望まれていた。
【特許文献1】特開平1−132625号公報
【特許文献2】特開平1−132626号公報
【特許文献3】特開昭63−218726号公報
【特許文献4】特開平2−133413号公報
【特許文献5】特開昭61−120816号公報
【特許文献6】特開昭61−115912号公報
【特許文献7】特開平4−245202号公報
【特許文献8】特開平5−2108号公報
【特許文献9】特開平5−64865号公報
【特許文献10】特開平5−212828号公報
【特許文献11】特開平6−51117号公報
【特許文献12】特開平7−77608号公報
【特許文献13】特開平5−61026号公報
【特許文献14】特開平7−287122号公報
【特許文献15】特開平7−287123号公報
【特許文献16】特開2000−137116号公報
【特許文献17】特開2002−48919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、400〜800nmの波長領域全てにおいて正の波長依存性を示し、1枚で前記波長範囲において透過光に特定の位相差を与えることができ、かつ低吸水性で低光弾性係数を有し、耐熱性にも優れた光学用フィルムを提供することを目的としている。詳しくは、本発明は、このような特性を有し、特定の構造を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む光学用フィルムを提供することを目的としている。
【0016】
また、本発明は上記光学用フィルムの製造方法、該フィルムからなる偏光板保護フィルム、および、該フィルムを用いた偏光板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光学用フィルムは、下記一般式(I)で表される構造単位(I)を有するノルボルネン系樹脂を含有することを特徴としている。
下記の一般式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
(式(I)中、mおよびnは、それぞれ独立に0〜2の整数であり、Xは、式:−CH=CH
−で表される基、または、式:−CH2CH2−で表される基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、s、t、uは、それぞれ独立に0〜2の整数である。)
本発明の光学用フィルムでは、前記ノルボルネン系樹脂が、下記一般式(II)で表される構造単位(II)をさらに有することが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
(式(II)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m、n、sおよびtは、上記式(I)と同様である。R10、R11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、互いに結合してヘテロ原子を有してもよい単環または多環の基を形成してもよく、R10とR11、または、R12とR13は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。)
また、本発明の光学用フィルムは、前記ノルボルネン系樹脂が、構造単位(II)を全構造単位中98モル%以下の割合で有することが好ましい。
【0022】
本発明の光学用フィルムでは、前記ノルボルネン系樹脂中、構造単位(I)におけるXと、構造単位(II)におけるXの合計の90モル%以上が、式:−CH2CH2−で表される基であることが好ましい。
【0023】
本発明の光学用フィルムでは、前記ノルボルネン系樹脂が、前記一般式(I)において、m=0かつn=0である構造単位(I)を有することが好ましく、前記一般式(I)においてu=0である構造単位(I)を有することも好ましい。
本発明の光学用フィルムは、透過光に位相差を与えることが好ましい。
【0024】
透過光に位相差を与える本発明の光学用フィルムでは、
波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長400nmにおける位相差Re(400)との比Re(400)/Re(550)が1.0〜0.1の範囲にあり、波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長800nmにおける位相差Re(800)との比Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0の範囲にあることが好ましい。
【0025】
また、透過光に位相差を与える本発明の光学用フィルムでは、下記式で表される値が、波長400〜800nmのすべての範囲において、その平均値に対して±30%の範囲内にあることが好ましい。
Re(λ)/λ
(式中、λは光の波長(nm)を表し、Re(λ)は波長λ(nm)における透過光の位相差を表す。)
本発明の光学用フィルムは、少なくとも片面に光拡散機能を有することが好ましく、少なくとも片面に透明導電性層を有することも好ましく、少なくとも片面に反射防止層を有することも好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムは、上記本発明の光学用フィルムからなることを特徴としている。
本発明の偏光板は、上記本発明の光学用フィルムを有することを特徴としている。
【0026】
本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記光学用フィルムを溶剤キャスト法による製膜するか、または溶融押し出し法による製膜すること特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、特定のノルボルネン系樹脂を含有し、高透明性、低複屈折性、あるいは延伸配向した場合に得られる透過光の位相差の均一性や安定性等の光学特性、並びに高耐熱性、他材料との密着性や接着性が良好で吸水変形が小さい光学フィルムおよびその製造法ならびにその用途を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂系フィルムの有する高透明性、低複屈折性、あるいは延伸配向した場合に得られる透過光の位相差の均一性や安定性等の光学特性、並びに高耐熱性、他材料との密着性や接着性が良好で吸水変形が小さい等の特長を維持したうえに、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂系フィルムでは得られなかった正の波長分散性を示す光学用フィルムを提供することができる。
【0029】
本発明の光学用フィルムを位相差フィルムとして使用すると、400〜800nmの波長領域において一定の位相差を示すλ板を一枚の位相差フィルムで実現できる。また、本発明の光学用フィルムは、光拡散機能、透明導電性、反射防止機能等の機能を有する光学用フィルムとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について具体的に説明する。
[光学用フィルム]
本発明の光学用フィルムは、特定のノルボルネン系樹脂を含有することを特徴としている。
【0031】
<ノルボルネン系樹脂>
本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂は、下記一般式(I)で表される構造単位(I)を有し、さらに必要に応じて他の構造単位を含む、熱可塑性ノルボルネン系樹脂である。
【0032】
【化3】

【0033】
上記一般式(I)中、mおよびnは、それぞれ独立に0〜2の整数であり、好ましくは0または、1である。
上記一般式(I)中、sおよびtは、nが1以上の整数のとき独立に0〜2の整数でありる。
上記一般式(I)中、uは、独立に0〜2の整数である。
Xは、式:−CH=CH−で表される基、または、式:−CH2CH2−で表される基である。
【0034】
上記一般式(I)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、独立に、水素原子;炭素数1〜30の炭化水素基;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくは
ケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基からなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。
【0035】
このようなR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の炭素数1〜30の炭化水素基の
具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基等の芳香族基;またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部が、ハロゲン原子、フェニルスルホニル基などによって置換されたもの等が挙げられる。
ここで、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0036】
置換もしくは非置換の炭素数が1〜30の炭化水素基の具体例としては、一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8として例示したものと同様のものが挙げられ、これらの炭化水素基は、芳香環の炭素原子に直接結合していてもよく、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。ここで連結基は、酸素原子、硫黄原子
、窒素原子もしくはケイ素原子を含むものまたは含まない基であり、その具体例としては、炭素数が1〜10の2価の炭化水素基(たとえば、−(CH2k−(但し、kは1〜10の整数)で表されるアルキレン基など)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホン基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテ
ル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−)、シロキサン結合(−Si(R2)O−:但しRはメチル基、エチル基等のアルキル基)、あるいはこれ
らの2種以上が組合さって連なったものなどが挙げられる。
【0037】
極性基としては、例えば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、おカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;エステル基としては、例えば酢酸エステル基、プロピオン酸エステル基等の脂肪酸エステル基、および安息香酸エステル基等の芳香族エステル基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0038】
このような構造単位(I)としては、一般式(I)において、m=0または1、n=0または1、s、tがそれぞれ独立して1、u=0または1、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8のいずれもが水素原子であるものが、モノマーの入手し易さや、耐熱性、溶解性が高く、吸水性を低いノルボルネン系開環重合体が得られる点で好ましい。これらの中でも、一般式(I)においてm=0または1、n=0、かつu=0または1のものがより好ましく、一般式(I)において、m=n=0であり、かつu=0であるものが特に好ましい。
【0039】
このような構造単位(I)は、下記一般式(Im)で表されるノルボルネン系単量体(Im)を開環重合することによって、または開環重合物を水素添加することによって得られる。
【0040】
【化4】

【0041】
(上記式(Im)中、m、n、s、t、u、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、上記一般式(I)における定義と同じである)。
このようなノルボルネン系単量体(Im)としては、例えば、5,6−ビス(ヒドロキ
シメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとフルオレン誘導体あるいは、9,1
0−ジヒドロアントラセン誘導体との反応で得られるスピロ型ノルボルネン化合物が挙げられる。
【0042】
具体的には、上記一般式(Im)で表されるノルボルネン系単量体としては、たとえば以下に示す(1)〜(41)が挙げられる。
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
【化23】

【0062】
【化24】

【0063】
これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせてノルボルネン系単量体(Im)として用いることができる。
本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂は,上記一般式(I)で表される構造単位(I)とともに、下記一般式(II)で表される構造単位(II)を有するものであってもよい。
【0064】
【化25】

【0065】
上記一般式(II)において、mおよびnは、それぞれ独立に0〜2の整数、好ましくはnが0または1、mが0〜2の整数である。
Xは、式:−CH=CH−で表される基、または、式:−CH2CH2−で表される基である。
【0066】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜30の炭化水素基;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基からなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。R10、R11、R12、R13は、互いに結合してヘテロ原子を有してもよい単環または多環の基を形成してもよく、R10とR11、または、R12とR13は、一体化して2価の炭化水素基を形成し
てもよい。)。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、R13の原子または基の具体例としては、一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
このような構造単位(II)としては、耐熱性、溶解性および他素材との密着性・接着性等のバランスが良好な共重合体が得られる点で、一般式(II)において、R10〜R13のうち少なくとも1つが、−(CH2jCOOR14で表されるカルボン酸エステル基(ここで、R14は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、jは0〜10の整数である。)であるものが好ましい。ここで、上記のR14で示される炭素原子数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられ、これらの中では、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、より好ましくは、メチル基である。
【0068】
このような構造単位(II)は、下記一般式(IIm)で表されるノルボルネン系単量体(IIm)を、上述のノルボルネン系単量体(Im)とともに開環共重合することによって得られる。
【0069】
【化26】

【0070】
(上記式(IIm)中、s、tおよびR1、R2、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12
13は、上記一般式(II)における定義と同じである。)
このようなノルボルネン系単量体(IIm)の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。
【0071】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−5―メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−シクロヘキセニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリn-プロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリn-ブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなど。
【0072】
これらの化合物は,1種単独でまたは2種以上を組み合わせてノルボルネン系単量体(IIm)として用いることができる。
このようなノルボルネン系単量体(IIm)のうち、上記一般式(IIm)において、n=0及びm=1であるノルボルネン系単量体(IIm)は、得られる重合体の耐熱性と靱性のバランスの点で好ましい。さらにn=0及びm=0であるノルボルネン系単量体(IIm)は、光学用フィルムを延伸する際に適度なガラス転移温度を有することから好ましい。mが2を超えるもしくはnが2を超えるノルボルネン系単量体(IIm)を用いると、得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が高くなり耐熱性が向上する傾向があり、好ましい場合もあるが、靱性が低下する傾向があり、フィルムとした時に加工あるいは使用時に割れたり破断したりしやすくなる問題が生じる場合がある。
【0073】
また、このようなノルボルネン系単量体(IIm)として、たとえば8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンを用いて得た
ノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度を高め、吸水による変形等の悪影響を殆ど受けずかつ他材料との密着性や接着性が良好となる程度の吸水性を維持できるので好ましい。また、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを用いて得たノルボルネン系樹脂も、光学フィルムを延伸する際に適度なガラス転移温度を持つことから好ましい。
【0074】
本発明に係るノルボルネン系樹脂において、樹脂中の極性基の含量は、所望のノルボルネン樹脂性状に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、ノルボルネン系樹脂の全構造単位中に、極性基を有する構造単位が、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上含まれるのが望ましく、全ての構造単位が極性基を有していてもよい。本発明に係るノルボルネン系樹脂において、極性基の含有量は、ノルボルネン系単量体(Im)と、必要に応じて共重合されるノルボルネン系単量体(IIm)と、必要に応じて共重合される後述するその他の共重合性単量体との、共重合比率や、各単量体の種類を適宜選択することにより調整することができる。
【0075】
本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂が、上記構造単位(II)を有する場合には、ノルボルネン系樹脂中の構造単位(II)の割合は、全構造単位中98モル%以下であるのが好ましい。また、構造単位(I)と構造単位(II)との比は、モル比で、通常100:0〜2:98、好ましくは100:0〜3:95、さらに好ましくは、100:0〜5:95である。構造単位(II)の割合が過大である場合には、正の波長依存性を有する光学用フィルムを得にくくなることがある。
【0076】
本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂が、上記一般式(I)において、m=0または1であり、n=0または1であり、u=0である構造単位(I)を有する場合には、重合収率が高く、適度なガラス転移を維持できるので好ましい。
【0077】
さらに、本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂は、構造単位(I)および構造単位(II)以外の構造単位(以下、「他の構造単位」という。)を有していてもよい。
【0078】
このような他の構造単位を得るための単量体としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン等の環状オレフィン、1,4−シクロオクタジエン、
ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエン等の非共役環状ポリエンを用いることもできる。
【0079】
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂において、他の構造単位を有する場合には、構造単位(I)の割合が全構造単位の2モル%以上であることが好ましく、より好ましくは3モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上である。
構造単位(I)の割合が過小である場合には、複屈折の特異な波長依存性(長波長になるに従って複屈折が大きくなる性質)や低複屈折性が得られないことがある。
【0080】
本発明に係るノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系単量体(Im)を開環重合することにより、またはノルボルネン系単量体(Im)と必要に応じて用いられるノルボルネン系単量体(IIm)およびその他の単量体とを開環共重合することにより、或いはこれらの単量体を開環(共)重合した後にさらに水素添加することにより、製造することができる。
【0081】
さらに、本発明においては、ノルボルネン系単量体(Im)と、必要に応じてノルボルネン系単量体(IIm)およびその他の単量体の開環(共)重合を、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン、エチレン−非共役ジエン重合体、ノルボルネン系単量体の開環(共)重合の未水添物などの存在下で行ってもよい。
【0082】
<開環(共)重合>
・開環重合触媒
本発明に用いられる開環重合用の触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN,J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。
【0083】
このような触媒としては、たとえば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物か
ら選ばれた少なくとも1種と、(b)Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cd、Hg、B、Al、Si、Sn、Pbなどの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなるメタセシス重合触媒が挙げられる。この触媒は、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。また、その他の触媒として(d)助触媒を用いない周期表第4族〜8族遷移金属-カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などか
らなるメタセシス触媒が挙げられる。
【0084】
上記(a)成分として適当なW、Mo、Re、VおよびTiの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3、VOCl3、TiCl4など特開平1−24051
7号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0085】
上記(b)成分としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、
(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特
開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0086】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができ、さらに特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
【0087】
上記触媒(d)の代表例としては、W(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH tBu)(
O tBu)2、Mo(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh3)2Cl2、Ru(=CHPh)(PC611)2Cl2などが挙げられる。
【0088】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と、全単量体(ノルボルネン系単量体(Im)、(IIm)および他の共重合可能な単量体。以下、同じ)とのモル比で「(a)成分:全単量体」が、通常1:500〜1:500000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:100000となる範囲であるのが望ましい。(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:50の範囲であるのが望ましい。また、このメタセシス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲であるのが望ましい。また、触媒(d)の使用量は、(d)成分と全単量体とのモル比で「(d)成分:全単量体」が、通常1:50〜1:50000となる範囲、好ましくは1:100〜1:10000となる範囲であるのが望ましい。
【0089】
・分子量調節剤
開環(共)重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。ここに、好適な分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類、スチレン類、アリル酢酸などを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、開環(共)重合反応に供される全単量体1モルに対して0.001〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルであるのが望ましい。
【0090】
・開環(共)重合反応用溶媒
開環(共)重合反応において用いられる溶媒、すなわち、ノルボルネン系単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロムヘキサン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンな
どのハロゲン化アルカン;アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。本発明では、これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:全単量体(重量比)」が、通常0.5:1〜20:1となる量とされ、好ましくは1:1〜10:1となる量であるのが望ましい。
【0091】
・水素添加
本発明では、上記の開環(共)重合のみによりノルボルネン系開環(共)重合体を製造してもよいが、開環(共)重合で得た開環(共)重合体をさらに水素添加することが好ましい。開環(共)重合のみでは、得られるノルボルネン系開環(共)重合体は、上述の一般式(I)で表される構造単位(I)および一般式(II)で表される構造単位(II)中のXが、いずれも、式:−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和基の状態である。係る開
環(共)重合体は、そのまま使用することもできるが、耐熱安定性の観点から、上記のオレフィン性不飽和基が水素添加されて前記Xが-CH2-CH2-で表される基に転換された水素
添加物であることが好ましい。ただし、本発明でいう水素添加物とは、上記のオレフィン性不飽和基が水素添加されたものであり、ノルボルネン系単量体に基づく側鎖の芳香環は実質的に水素添加されていないものである。
【0092】
なお、水素添加する割合としては、上記構造単位(I)および構造単位(II)におけるXの合計の90モル%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であるのが望ましい。水素添加する割合が高いほど、熱による着色や劣化が抑制することができるため好ましい。
【0093】
このような製造方法では、水素添加反応は、ノルボルネン系単量体(Im)および必要に応じて用いられるノルボルネン系単量体(IIm)などの単量体に基づく側鎖の芳香環が実質的に水素添加されない条件で行われる必要がある。このため通常は、開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜30MPa、好ましくは2〜20MPa、更に好ましくは3〜18MPaで水素を作用させることによって行うのが望ましい。
【0094】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、公知の不均一系触媒および均一系触媒をいずれも用いることができる。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0095】
これらの水素添加触媒は、ノルボルネン系単量体(Im)もしくは他の単量体に基づく側鎖の芳香環が実質的に水素添加されないようにするために、その添加量を調整する必要があるが、通常は、「開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用するのが望ましい。
【0096】
<ノルボルネン系樹脂の特性>
本発明の光学用フィルムに含まれるノルボルネン系樹脂(開環(共)重合体またはその水素添加物)のクロロホルム溶液をウッベローデ型粘度計で測定して得られる対数粘度[η]を、通常0.2〜5.0、好ましくは0.3〜4.0、さらに好ましくは0.35〜3.0とするのが望ましい。
【0097】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン換算)による分子量の測定による、数平均分子量(Mn)を、通常1000〜100万、好ましくは2000〜50万、さらに好ましくは5000〜50万とし、重量平均分子量(Mw)を、通常5000〜500万、好ましくは1万〜200万、さらに好ましくは1万〜100万とするのが望ましい。また、分子量分布を、通常Mw/Mnが1.05〜10.0、好ましくは、1.1〜7.0、さらに好ましくは、1.1〜5.0とするのが望ましい。ここで、対数粘度[η]が0.2未満、Mnが1000未満あるいは、Mwが5000未満であると、得られた開環(共)重合体を用いた成形物の強度が著しく低下する場合がある。一方、対数粘度[η]が5.0以上、Mnが50万以上、はMwが200万以上であると、開環(共)重合体またはその水素添加物の溶融粘度あるいは溶液粘度が高くなりすぎて、得られた開環(共)重合体から所望の成形品を得ることが困難になる場合がある。
【0098】
また、分子量分布は、上記のMw/Mnが通常1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。Mw/Mnが上記範囲より大きい場合、低分子量の成分が多くなりすぎ、得られる光学用フィルムの表面に低分子量成分がブリードしてべとつきが発生することや、所望の位相差が得にくくなることがある。一方、上記範囲より小さい場合、フィルムの強度、特に靱性が低下することがある。
【0099】
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常は80〜350℃、好ましくは100〜350℃である。Tgが80℃未満の場合、熱変形温度が低くなり、得られるフィルムの耐熱性に問題が生じる場合がある。一方、Tgが350℃以上の場合、得られるフィルムを延伸加工等加熱して加工する場合の加工温度が高くなりすぎて、フィルムが熱劣化による強度の低下や着色する問題が生じる場合がある。
【0100】
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂の23℃における飽和吸水率は、通常は0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.7重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差や位相差の均一性あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離などが発生せず、また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。
【0101】
飽和吸水率が0.05重量%未満であると、他材料との密着性や接着性が乏しくなり使用中に剥離を生じやすくなる。また、酸化防止剤等の添加物の配合に制限が生じる。一方、1重量%を超えると、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。
なお、上記の飽和吸水率はASTM D570に準拠し、23℃水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められた値である。
【0102】
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂のSP値(溶解度パラメーター)は、好ましくは10〜30(MPa1/2)、さらに好ましくは12〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)である。SP値を本範囲にすることで、一般的な汎用溶剤に
良好に溶解できるとともにフィルム製造時に安定して製造でき、得られるフィルムの特性も均一でさらに良好な接着性や、基板との密着性を得ることもでき、適度な吸水率をコン
トロールすることが可能となる。
【0103】
<添加物>
このような本発明で用いられるノルボルネン系樹脂には、透明性・耐熱性を損なわない範囲で公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合しても良い。
また、ノルボルネン系樹脂には、酸化防止剤等の添加剤などを添加しても良く、かかる酸化防止剤等の添加剤としては、たとえば次の化合物が挙げられる。
【0104】
酸化防止剤:
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t
−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジエチルフェニルメタン、3,
9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチ
ルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5
.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリ
ックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サ
イクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル
)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが挙げられる。
【0105】
紫外線吸収剤:
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
、2−(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2−(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェ
ノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,2'-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-[(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]〕などが挙げられる
これらの添加剤の添加量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。
さらに、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0106】
<光学用フィルムの製造方法>
本発明の光学用フィルムは、上述のノルボルネン系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルムまたはシートに成形することにより得ることができる。
【0107】
溶剤キャスト法としては、たとえば、上述した本発明に係るノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解又は分散させて適度の濃度の液にし、適当なキャリヤー上に注ぐか又は塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0108】
本発明に係るノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解又は分散させる際には、該樹脂の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%にする。該樹脂の濃度を上記未満にすると、フィルムの厚みを確保することが困難になる、また、溶媒蒸発にともなう発泡等によりフィルムの表面平滑性が得にくくなる等の問題が生じる。一方、上記を超えた濃度にすると溶液粘度が高くなりすぎて得られる光
学用フィルムの厚みや表面が均一になりにくくなるために好ましくない。
【0109】
また、室温での上記溶液の粘度は、通常は1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜100,000(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜10,000(mPa・s)である。
【0110】
ここで使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチ
ルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,
2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0111】
また、上記以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が通常10〜30(MPa1/2
、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特
性の良好な光学用フィルムを得ることができる。
【0112】
上記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。溶媒を2種以上併用する場合には、混合物としてのSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合物としてのSP値は、その重量比から求めることができ、例えば二種の混合物の場合は、各溶媒の重量分率をW1,W2、また、SP値をSP1,SP2とすると混合溶媒のSP値は下記式:
SP値=W1・SP1+W2・SP2
により計算した値として求めることができる。
【0113】
上記の混合溶媒を使用する際、本発明に係るノルボルネン系樹脂の良溶媒と貧溶媒とを組み合わせると、光拡散機能を有する光学用フィルムを得ることができる。具体的には、樹脂、良溶媒及び貧溶媒のSP値をそれぞれ(SP値:樹脂)、(SP値:良溶媒)及び(SP値:貧溶媒)と規定すると、(SP値:樹脂)と(SP値:良溶媒)の差が好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下の範囲であり、かつ、(SP値:樹脂)と(SP値:貧溶媒)の差が好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは9以上であり、(SP値:良溶媒)と(SP値:貧溶媒)の差が好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上とすることにより、得られる光学用フィルムに光拡散機能を付与することができる。
【0114】
なお、貧溶媒の混合溶媒中にしめる割合は、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。また、貧溶媒の沸点と良溶媒の沸点の差は好ましくは1℃以上、さらに好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、特に貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高いことが好ましい。
【0115】
樹脂溶液の調製において、ノルボルネン系樹脂を溶媒で溶解する場合の温度は、室温でも高温でもよい。十分に撹拌することにより均一な溶液が得られる。なお、必要に応じて着色する場合には、溶液に染料、顔料等の着色剤を適宜添加することもできる。
【0116】
また、光学用フィルムの表面平滑性を向上させるためにレベリング剤を添加してもよい。一般的なレベリング剤であれば何れも使用できるが、たとえば、フッ素系ノニオン界面
活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが使用できる。
【0117】
本発明の光学用フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどの基材の上に塗布して塗膜を形成し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離する方法が一般に挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて,樹脂溶液を基材に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、塗布の繰り返しにより厚みや表面平滑性等を制御してもよい。
【0118】
また、基材としてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーティングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
【0119】
また、上記溶液を塗布する基材、例えば金属ドラム、スチールベルト、ポリエステルフィルム等の表面にサンドマット処理やエンボス処理を施したものを使用すると、フィルムの表面に上記処理による凹凸が転写して、本発明の光拡散機能を有する光学用フィルムを製造することができる。
【0120】
上記のようにして光拡散機能を付与する場合は、低波長から高波長までの光の透過率を安定して維持する特性から、一定の大きさで凹凸を付けることが好ましい。この時の凹凸の形状については、凹凸を付ける手法に左右されるために特に制約は無いが、通常は表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)が0.001〜100μm、好ましくは0.005〜10μm、さらに好ましくは0.01〜1μm、特に好ましくは0.05〜1μmである。Raの値が0.001μm未満あるいは100μmを超えると、良好な光拡散機能が期待できにくい。なお、フレネルレンズのようなレンズ機能を付与する場合は、Raの値が100μmを超えることがあってもよい。
【0121】
さらに、ノルボルネン系樹脂の溶液に該樹脂と非相溶の樹脂やフィラーを添加し均一化したものをキャストする方法でも、本発明の光拡散機能を有する光学用フィルムを製造することができる。
【0122】
具体的には、上記非相溶の樹脂を添加する場合には、ノルボルネン系樹脂との屈折率差が通常は0.00001以上、好ましくは0.0001以上、さらに好ましくは0.001以上、特に好ましくは0.01以上の樹脂を選択して使用し、また、溶液に混合した後にキャストして乾燥した後に得られるフィルム中の前記相溶性を有しない樹脂の数平均の粒子径範囲が通常は0.01〜1,000μm、好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.5〜50μmの範囲にすることで、低波長から高波長における光拡散効果を発揮することができる。上記屈折率差が0.00001未満であったり、また、上記粒子径が0.01μm未満であると良好な光拡散機能を付与するのが困難であり、一方、上記粒子径が1,000μmを超えた場合には光線透過率が著しく低下したり、フィルムの厚み精度や表面性に悪影響を及ぼすことがあるために好ましくない。
【0123】
また、上記非相溶の樹脂の添加量は、要求される光拡散の性能により変化するが、本発明に係るノルボルネン系樹脂100重量部に対し、通常は0.001〜100重量部、好
ましくは0.01〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは1〜25重量部である。添加量が0.001重量部未満であると、良好な光拡散機能が期待できにくい。また、添加量が100重量部以上になると光線透過率が著しく低下するために好ましくない。
【0124】
一方、フィラーとしては市販の無機フィラーや熱硬化性樹脂の硬化物を微細化した有機フィラー等を任意に使用することもできる。また、その粒子径及び添加量は、上記非相溶の樹脂を添加する場合と同様である。
【0125】
上記ノルボルネン系樹脂と非相溶の樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、ポリアミドあるいはポリイミドなどを挙げることができる。また、上記フィラーとしては、例えば、金、銀等の金属、SiO2
、TiO2、ZnO2、Al23等の金属酸化物、ガラス、石英などの粒子を挙げることができる。
【0126】
上記溶剤キャスト法の乾燥(溶剤除去)工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法等で実施できるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させるので、これを避けるために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。
【0127】
また、光学用フィルム中の残留溶媒量は、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、残留溶媒量が10重量%以上であると、実際に該光学用フィルムを使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりTgが低くなり、耐熱性も低下することから好ましくない。
【0128】
なお、後述する延伸工程を好適に行うためには、上記残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節する必要がある場合がある。具体的には、延伸配向時の位相差を安定して均一に発現させるために、残留溶媒量を通常は10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。溶媒を微量残留させることで、延伸加工が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
【0129】
本発明の光学用フィルムの厚さは、通常は0.1〜3,000μm、好ましくは0.1〜1,000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。0.1μm未満の厚みの場合実質的にハンドリングが困難となる。一方、3,000μm以上の場合、ロール状に巻き取ることが困難になる。
【0130】
本発明の光学用フィルムの厚み分布は、通常は平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。かかる厚み制御を実施することにより、均質な光学フィルムとすることができるとともに、延伸配向した際の透過光の位相差ムラを防ぐことができる。
【0131】
押出成形法としては、押出機により、樹脂を溶融し、ギアポンプにより定量供給し、これを金属フィルターでろ過により不純物を除去して、ダイにてフィルム形状に賦型し、引き取り機を用いてフィルムを冷却し、巻き取り機を用いて巻き取る方法が一般的に使用される。
【0132】
押出成形に使用される押出機としては、単軸、二軸、遊星式、コニーダー、バンバリーミキサータイプなど、いずれを用いても良いが、好ましくは単軸押出機が用いられる。また、押出機のスクリュウ形状としては、ベント型、先端ダルメージ型、ダブルフライト型、フルフライト型などがあり、圧縮タイプとしては、緩圧縮タイプ、急圧縮タイプなどがあるが、フルフライト型緩圧縮タイプが好ましい。
【0133】
計量に使用するギアポンプに関しては、ギアの間で下流側より戻される樹脂が、系内に入る内部潤滑方式と、外部に排出される外部潤滑方式があるが、熱安定性が良好でない熱可塑性ノルボルネン系樹脂の場合には、外部潤滑方式が好ましい。ギアポンプのギア歯の切り方は、軸に対して、平行な方向よりも、ヘリカルタイプの方が、計量の安定化の点から好ましい。
【0134】
異物のろ過に使用するフィルターに関しては、リーフディスクタイプ、キャンドルフィルタータイプ、リーフタイプ、スクリーンメッシュなどが挙げられるが、比較的滞留時間分布が小さく、ろ過面積を大きくすることが可能な、リーフディスクタイプのものが好ましい。フィルターエレメントとしては、金属繊維焼結タイプ、金属粉末焼結タイプ、金属繊維/粉末積層タイプなどが挙げられる。
【0135】
フィルターのセンターポールの形状には、外流タイプ、六角柱内部流動タイプ、円柱内部流動タイプなどが挙げられるが、滞留部が小さい形状であれば、いずれの形状を選択することも可能であるが、好ましくは、外流タイプである。
【0136】
溶融された熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ダイから吐出され、冷却ドラムに密着固化されて目的とするフィルムに成形される。ダイ形状に関しては、ダイ内部の樹脂流動を均一にすることが必須であり、フィルムの厚みの均一性を保つためには、ダイ出口近傍でのダイ内部の圧力分布が幅方向で一定であることが必須である。また、幅方向での樹脂の流量がほぼ一定であり、ダイの出口での流量の微調整をリップ開度により調整可能な範囲で一定であることが厚みの均一性を得るために必須用件である。上記、条件を満たすためにはマニホールド形状は、コートハンガータイプが好ましく、ストレートマニホールド、フィッシュテールタイプなどは、幅方向での流量分布などが発生しやすくなるために好ましくない。
【0137】
また、上記のフィルムの厚み分布を均一にするためには、ダイ出口での温度分布を幅方向において一定にすることが重要であり、温度分布は好ましくは±1℃以下であり、さらに好ましくは±0.5℃以下である。±1℃を超えて幅方向に温度ムラが生じていると、樹脂の溶融粘度差が生じ、厚みムラ、応力分布ムラなどが生じるため、延伸操作を実施する過程において、位相差ムラが発生しやすくなり好ましくない。
【0138】
さらに、ダイ出口のリップ開き量(以下、「リップギャップ」という。)は、通常、0.05〜1mmであり、好ましくは0.3〜0.8mmであり、さらに好ましくは0.35〜0.7mmである。リップギャップが0.05mm未満であると、ダイ内部の樹脂圧力が高くなり過ぎて、樹脂がダイのリップ以外の場所から樹脂漏れを起こしやすくなるため好ましくない。一方、リップギャップが1mmを超えると、ダイの樹脂圧力が上がりにくくなるため、フィルムの幅方向の厚みの均一性が悪くなり好ましくない。
【0139】
ダイから押出されたフィルムを密着固化させる方法としては、ニップロール方式、静電印加方式、エアーナイフ方式、バキュームチャンバー方式、カレンダー方式などが挙げられ、フィルムの厚さ、用途に従って、適切な方式が選択される。
【0140】
ダイから押出されたフィルムを固化するための冷却ロール表面についても、押出機シリ
ンダー、ダイスの内面などと同様に、各種の表面処理が行われることが好ましい。
押出機(シリンダー・スクリューなど)、ダイスの材質としては、SCM系の鋼鉄、SUSなどのステンレス材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、押出機シリンダー、ダイスの内面ならびに押出機スクリュー表面には、クロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたもの、PVD(Physical Vapor Deposition)法などに
より、TiN、TiAlN、TiCN、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたもの、WCなどのタングステン系物質、サーメットなどのセラミックが溶射されたもの、表面が窒化処理されたものなどを用いることが好ましい。このような表面処理は、樹脂との摩擦係数が小さいため、均一な樹脂の溶融状態が得られる点で好ましい。
【0141】
本発明の光学フィルムを溶融押出により製造する際の樹脂温度(押出機シリンダー温度)としては、通常、200〜350℃、好ましくは220〜320℃である。樹脂温度が200℃未満では、樹脂を均一に溶融させることができず、一方、350℃を超えると、溶融時に樹脂が熱劣化して表面性に優れた高品質なフィルムの製造が困難になる。さらに、上記温度範囲内であって、樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+120℃〜Tg+160℃の範囲内の温度であることが特に好ましい。例えば、樹脂のTgが130℃であれば、フィルム製造にとって特に好ましい温度範囲は250℃〜290℃である。
【0142】
また、溶融押出時のせん断速度としては、通常、1〜500(1/sec)、好ましくは2〜350(1/sec)、より好ましくは5〜200(1/sec)である。押出時のせん断速度が1(1/sec)未満では、樹脂を均一に溶融させることができないため厚み斑が小さい押出フィルムを得ることができず、一方、500(1/sec)を超えると、せん断力が大きすぎて樹脂および添加物が分解・劣化し、押出フィルムの表面に発泡、ダイライン、付着物などの欠陥が生じてしまうことがある。
【0143】
溶融押出により得られた本発明の光学フィルムの厚みは、通常、10〜800μm、好ましくは、20〜500μm、より好ましくは40〜500μmである。10μm未満の厚みの場合、機械的強度不足などにより延伸加工などの後加工する場合に難があることがあり、一方、800μmを超える厚みの場合、厚みや表面性などが均一なフィルムを製造することが難しいばかりか、得られたフィルムを巻き取ることが困難になることがある。
【0144】
原反フィルムの厚み分布は、通常、平均値に対して±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内である。厚み分布が±5%を超えると、延伸処理を行って位相差フィルムとした場合に位相差ムラが発生しやすくなることがある。
【0145】
[透過光に位相差を与える光学用フィルム]
本発明の光学用フィルムは、透過光に位相差を与える光学用フィルム(以下、「位相差フィルム」という)であることも好ましい。本発明に係る位相差フィルムは、上記方法によって得た本発明の光学用フィルムをさらに延伸加工することにより得ることができ、具体的には、公知の一軸延伸法、二軸延伸法、Z軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の速度の異なるロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
【0146】
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜
1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は
120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜5
00%/分である。
【0147】
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明で用いられるノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+15℃の範囲である。前記範囲内とすることで、位相差ムラの発生を抑えることが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
【0148】
延伸倍率は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常はは1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上の場合、位相差の制御が困難になる場合がある。
【0149】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0150】
延伸加工を施さない本発明の光学用フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0151】
また、本発明の位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、本発明中の特定単量体の選択やその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法の条件を調整することも有力な手段である。
【0152】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さ等により制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚さが同じである場合、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。一方、延伸倍率が同じである場合、延伸前のフィルムの厚さが厚いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚さを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、上記延伸加工温度範囲においては、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
【0153】
上記のように延伸して得た位相差フィルムが透過光に与える位相差の値は、その用途により決定されるものであり特に限定はされないが、液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはレーザー光学系の波長板に使用する場合は、通常は1〜10,00
0nm、好ましくは10〜2,000nm、さらに好ましくは15〜1,000nmである。
【0154】
また、位相差フィルムを透過した光の位相差は均一性が高いことが好ましく、波長55
0nmにおける位相差のバラツキは、通常±20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。すなわち、波長550nmにおける位相差は、通常平均値に対して±20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは±5%以下の範囲内にある。位相差のバラツキが±20%を超えると、液晶表示素子等に用いた場合、色ムラ等が発生し、ディスプレイ本体の性能が悪化する場合がある。
【0155】
さらに、本発明に係る位相差フィルムは、波長550nmでの位相差Re(550)と波長400nmでの位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.5、好ましくは0.8〜0.6、さらに好ましくは0.75〜0.65の範囲にあり、かつ、前記位相差Re(550)と波長800nmでの位相差Re(800)の比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0、好ましくは1.5〜1.2、さらに好ましくは1.5〜1.3の範囲にあることが望ましい。このような条件を満たす位相差フィルムでは、ある波長λでの位相差をRe(λ)としたとき、400〜800nmの全波長領域で、Re(λ)/λの値をほぼ一定とすることが可能となる。
【0156】
このRe(λ)/λの値を、400〜800nmの全波長領域で、その平均値に対して±30%以内、好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内に制御すると、たとえば、当該波長領域全てにおいて位相差が1/4λあるいは1/2λであるような広帯域のλ板を得ることができる。すなわち、上記Re(λ)/λの値が、400〜800nmの全波長領域で、0.17〜0.33、好ましくは0.20〜0.30、さらに好ましくは0.23〜0.28である場合、当該波長領域全域で、円偏光と直線偏光とを相互変換する1/4λ板としての機能を有することになり、また、同様に上記Re(λ)/λの値が、0.35〜0.65、好ましくは0.45〜0.60、さらに好ましくは0.45〜0.55である場合、当該波長領域全域で、直線偏光の偏光面を90度回転させる1/2λ板としての機能を有することになり、非常に有用である。
【0157】
本発明の位相差フィルムは単独でまたは透明基板等に貼り合わせて、位相差フィルムまた位相差板として用いることができる。また、上記位相差フィルムまたは位相差板を他のフィルム、シート、基板に積層して使用することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤を用いることができる。これらの粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体例としては天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系、変性ポリオレフィン系、及びこれらにイソシアナートなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアナート系樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0158】
また、上記の位相差フィルム及び位相差板は、他のフィルムシート、基板などとの積層の作業性を向上させるために、あらかじめ、粘着剤層、又は接着剤層を積層することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤としては前述のような粘着剤あるいは接着剤を用いることができる。
【0159】
[透明導電層を有する光学用フィルム]
本発明の光学用フィルムは、その少なくとも片面に透明導電層を積層した、透明導電層を有する光学用フィルムであることも好ましい。透明導電層を形成するための材料としては、Sn、In、Ti、Pb、Au、Pt、Ag等の金属、またはそれらの酸化物が一般的に使用され、金属単体からなる層を基板上に形成したときは、必要に応じてその後酸化することもできる。当初から酸化物層として付着形成させる方法もあるが、最初は金属単体または低級酸化物の形態で被膜を形成し、しかるのち、加熱酸化、陽極酸化あるいは液相酸化等の酸化処理を施して透明化することもできる。これらの透明導電層は、他の透明導電層を有するシート、フィルムなどを接着したり、プラズマ重合法、スパッタリング法
、真空蒸着法、メッキ、イオンプレーティング法、スプレー法、電解析出法などによって本発明の光学用フィルム上に直接形成される。これらの透明導電膜の厚さは、所望する特性により決定され特に限定はされないが、通常は10〜10,000オングストローム、
好ましくは50〜5,000オングストロームである。
【0160】
本発明の光学用フィルムに直接透明導電層を形成する場合、当該フィルムと透明導電層との間に必要に応じて接着層及びアンカーコート層を形成してもよい。この接着層としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂を例示することができる。またアンカーコート層としては、エポキシジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート等のいわゆるアクリルプレポリマーなどを成分として含むものが用いられる。硬化の方法は公知の手法を用いることができ、例えばUV硬化や熱硬化などが用いられる。
【0161】
透明導電層を有する本発明の光学用フィルムは、偏光フィルムと組み合わせて、積層体とすることができる。透明導電層を有する本発明の光学用フィルムと、偏光フィルムとの組合せ方法は、特に限定されず、偏光膜の両面に保護フィルムが積層されてなる偏光フィルムの少なくとも片面に、透明導電層を有する本発明の光学用フィルムを、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して積層してもよいし、偏光膜の保護フィルムの代わりに、透明導電層を有する本発明の光学用フィルムを使用し、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して偏光膜に積層してもよい。もちろん、透明導電層を有さない本発明の光学用フィルムを、偏光フィルムの保護フィルムとして用いることも可能である。この場合、上述した本発明に係る位相差フィルムを保護フィルムとして用いると、保護フィルムが位相差フィルムとしての機能を有するため、偏光フィルムにあらためて位相差フィルムを貼り合わせる必要が無くなる利点がある。
【0162】
また、透明導電層を有する本発明の光学用フィルムには、必要に応じて酸素や水蒸気の透過を小さくする目的のために、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアルコール等のガスバリア性材料を、少なくともフィルムの一方の面に積層することもできる。さらにフィルムの耐傷性及び耐熱性を向上させる目的で、ガスバリア層の上にハードコート層が積層されていてもよい。ハードコート剤としては、有機シリコン系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機ハードコート材料、又は二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料を用いることができる。このうち、有機シリコン系樹脂、アクリル樹脂などのハードコート材料が好ましい。有機シリコン系樹脂の中には、各種官能基を持ったものが使用されるが、エポキシ基を持ったものが好ましい。
【0163】
[反射防止層を有する光学用フィルム]
本発明の光学用フィルムは、反射防止層を有する光学用フィルムであることも好ましい。すなわち、本発明の光学用フィルムには、少なくともその片面に反射防止層を積層することができる。反射防止層の形成方法としては、たとえば、フッ素系共重合体を含む組成物の溶液をバーコーターやグラビアコーターなどを用いてコーテイングする方法がある。反射防止層の厚みは、通常は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.5〜20μmである。0.01m未満であると反射防止効果が発揮できず、50μmを超えると塗膜の厚みにムラが生じやすくなり外観などが悪化する場合があり好ましくない。
【0164】
また、反射防止層を有する本発明の光学用フィルムには、公知のハードコート層や防汚層が積層されていてもよい。また、上記の透明導電層が積層されていてもよい。さらに、透過光に位相差を与える機能を有していてもよく、光拡散機能を有していてもよい。
【0165】
反射防止層を有する本発明の光学用フィルムは、上記のように複数の機能を有することにより、たとえば液晶表示素子に用いた場合、反射防止フィルムが位相差フィルム、光拡散フィルム、偏光板保護フィルムあるいは電極基板(透明導電層)の幾つかを兼用することとなり、従来よりもその部品点数を低減することが可能となる。
【0166】
[光学用フィルムの用途]
本発明の光学用フィルムは、位相差フィルム、偏光板、偏光板保護フィルム、波長板、光拡散板、プリズムシート、反射防止フィルム、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、導光板など、環状オレフィン系重合体の用途として公知の用途へ好適に適用可能である。具体的には、たとえば、携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
【0167】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
以下の実施例、比較例において、各種測定および評価は以下のようにして行った。
【0168】
<ガラス転移温度(Tg)>
セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分の条件で測定した。
【0169】
<残留溶媒量>
サンプルを塩化メチレンに溶解し、得られた溶液を島津製作所製:GC−7Aガスクロマトグラフィー装置を用いて分析した。
【0170】
<全光線透過率、ヘイズ>
スガ試験機社製ヘイズメーター:HGM−2DP型を使用して測定した。
<透過光の位相差>
王子計測機器社製KOBRA−21ADH、並びにKOBRA−CCDを用いて、透過光の位相差測定を行った。
【0171】
[合成例1]
<スピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体、下記式(A)参照)の合成>
【0172】
【化27】

【0173】
【化28】

【0174】
滴下ロートを取り付けた1000mlフラスコにフルオレン15.52g(0.0934mol)をはかり取り、系内を窒素置換した。これに脱水THF 165mlを加え、
スターラーにてよく攪拌して溶解させた。次にn−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液117mlを反応系の温度をドライアイスバス中で−78℃に保ちながら徐々に滴下した。滴下終了後、反応系を−78℃に保持しつつ、1時間攪拌を継続した。この反応液中に、2endo,3endo−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−5−ノルボルネン((B)、endo)21.60gを予め脱水THF 500mlに溶解させたものを、反応系の温度を−78℃に保ちながら徐々に滴下した。滴下終了後、ドライアイスバス中で1時間攪拌を継続し、その後、冷却バスを取りのぞき、反応系が完全に室温に戻るまで攪拌を継続した(約3時間)。これに、食塩水を添加してクエンチした後、反応液を蒸留水で3回洗浄を行い、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、減圧、加熱して溶媒を除去し、得られた結晶をメタノールを用いて再結晶させ、薄黄色の結晶として、上記式(A)で表されるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセ
ン](endo体)5.68gを得た。
【0175】
<重合体合成例1>
ノルボルネン系単量体(Im)として、上記構造式(A)で表されるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)1.90g、下記式(C)で表される8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン6.2g、分子量調節剤の1−ヘキセン 0.419g、および、トルエン 18.6gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリ
エチルアルミニウム(0.6モル/L)のトルエン溶液0.267ml、メタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025モル/L)0.066mlを加え、80℃で3時間
反応させることにより開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は11.4×104であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.60であった。
【0176】
次いで得られた開環共重合体溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを83.8
g加えた。水添触媒であるRuHCl(CO)[P(C65)]3をモノマー仕込み量に対して
2500ppm添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃にて3時間の反応を行った。反応終了後、多量のメタノール溶液に沈殿させることにより水素添加物を得た。得られた開環共重合体の水素添加物(樹脂(P1))は、重量平均分子量(Mw)=10.6×104、分子量分布(Mw/Mn)=3.52、固有粘度[η]=0.7
、ガラス転移温度(Tg)=184.0℃であった。
【0177】
また、樹脂(P1)におけるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)に由来する構造単位(I)の割合が19.6モル%、8−メチ
ル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンに
由来する構造単位(II)の割合が80.4モル%であった。
また、樹脂(P1)を1H−NMRにより分析した結果、オレフィン性二重結合に対する
水素添加率は99%以上であり、また、芳香環の残存率は実質的に100%であった。
【0178】
【化29】

【0179】
[合成例2]
合成例1と同様に得た上記式(A)で表されるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)2.00g、上記式(C)で表される8−
メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン4.90g、分子量調節剤の1−ヘキセン 0.354g、およびトルエン 13.8gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム(0.6モル/L)のトルエン溶液0.050ml、メタノール変性WCl6のトルエン
溶液(0.025モル/L)0.225mlを加え、80℃で3時間反応させることにより開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は8.32×104、分子量分布(Mw/Mn)は5.06であった。
【0180】
次いで、合成例1と同様にして水素添加反応を行い、水素添加物を得た。得られた開環共重合体の水素添加物(樹脂(P2))は、重量平均分子量(Mw)=7.39×104
、分子量分布(Mw/Mn)=4.06、固有粘度[η]=0.54、ガラス転移温度(Tg)=184.0℃であった。
また、樹脂(P2)におけるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)に由来する構造単位(I)の割合が22.7モル%、8−メチ
ル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに
由来する構造単位(II)の割合が77.3モル%であった。
また、樹脂(P2)を1H−NMRにより分析した結果、オレフィン性二重結合に対する
水素添加率は99%以上であり、また、芳香環の残存率は実質的に100%であった。
【0181】
[合成例3]
合成例1と同様に得た上記式(A)で表されるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)3.00g、上記式(C)で表される8−
メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン5.70g、分子量調節剤の1−ヘキセン 0.443g、およびトルエン 17.4gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム(0.6モル/L)のトルエン溶液0.069ml、メタノール変性WCl6のトルエン
溶液(0.025モル/L)0.281mlを加え、80℃で3時間反応させることにより開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は7.63×104、分子量分布(Mw/Mn)は6.34であった。
【0182】
次いで、合成例1と同様にして水素添加反応を行い、水素添加物を得た。得られた開環共重合体の水素添加物(樹脂(P3))は、重量平均分子量(Mw)=6.41×104
、分子量分布(Mw/Mn)=3.77、固有粘度[η]=0.48、ガラス転移温度(Tg)=173.0℃であった。
また、樹脂(P3)におけるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン](endo体)に由来する構造単位(I)の割合が27.0モル%、8−メチ
ル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに
由来する構造単位(II)の割合が73.0モル%であった。
また、樹脂(P3)を1H−NMRにより分析した結果、オレフィン性二重結合に対する
水素添加率は99%以上であり、また、芳香環の残存率は実質的に100%であった。
【0183】
[合成例4]
上記式(C)で表される8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン50g、分子量調節剤の1−ヘキセン3.6gおよびトルエン100gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム(0.6モル/L)のトルエン溶液0.09ml、メタノール変性WCl6
のトルエン溶液(0.025モル/L)0.29mlを加え、80℃で3時間反応させることにより重合体を得た。次いで、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、水素添加
物を得た。得られた開環重合体の水素添加物(樹脂(P4))は、ガラス転移温度(Tg)=167℃、重量平均分子量(Mw)=5.6×104、分子量分布(Mw/Mn)=
3.20であった。
【0184】
[実施例1]
上記の合成例1で得た樹脂(P1)を塩化メチレンキャスト法により厚さ100μm、溶媒残留量0.2%以下の無色透明なキャストフィルムを得た。
このフィルムをテンター内で、Tg+10℃である194℃に加熱し、延伸速度220%/分で2.0倍に延伸した後、冷却して取り出し位相差フィルム(P1−R)を得た。
得られた樹脂フィルム(P1−F)および位相差フィルム(P1−R)の膜厚、全光線透過率、ヘイズ、透過光の位相差を表1〜3にそれぞれ示した。
【0185】
[実施例2〜3]
実施例1において、樹脂(P1)を用いる代わりに、上記の合成例2、3で得た樹脂(P2)および(P3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルム(P2−F)、および(P3−F)を得た。
得られた樹脂フィルムを表1に示す延伸温度、延伸速度、延伸倍率で延伸し、その後、冷却して取り出し、それぞれ対応する位相差フィルム(P2−R)および(P3−R)を得た。
得られた樹脂フィルム(P2−F)および(P3−F)および位相差フィルム(P2−R)および(P3−R)の膜厚、全光線透過率、ヘイズ、透過光の位相差を表1〜3にそれぞれ示した。
【0186】
[比較例1]
実施例1において、樹脂(P1)を用いる代わりに、上記の合成例4で得た樹脂(P4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルム(P4−F)および位相差フィルム(P4−R)を得た。
得られた樹脂フィルム(P4−F)および位相差フィルム(P4−R)の膜厚、全光線透
過率、ヘイズ、透過光の位相差を表1〜3にそれぞれ示した。
【0187】
【表1】

【0188】
【表2】

【0189】
【表3】

【0190】
上記実施例1〜4および比較例1で得た位相差フィルム(P1−R)、(P2−R)、
(P3−R)及び(P4−R)について、波長550nmを基準とした透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/Re(550))を測定した結果を図1に示した。
また、(P1−R)、(P2−R)及び(P5−R)について、波長400〜800nmにおける透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/λ)を測定した結果を図2に示した。
【0191】
図1から明らかなように、ノルボルネン系単量体(Im)を含む単量体混合物を重合して得られた樹脂からなる実施例1〜3の位相差フィルムは、いずれも正の波長依存性を示したのに対して、ノルボルネン系単量体(IIm)のみを重合して得られた樹脂からなる比較例1の位相差フィルムは正の波長依存性を示さなかった。
【0192】
また、図2から明らかなように、ノルボルネン系単量体(Im)を含む単量体混合物を重合して得られた樹脂からなる本発明の位相差フィルム(P1−R)および(P2−R)は、Re(λ)/λの値が400〜800nmの波長領域においてほぼ一定の値(0.178〜0.282)を示し、当該波長領域全てにおいて1/4λ板としての作用が期待できるのに対して、(P3−R)では、長波長領域(550−800nm)は、ほとんど一定の値を示すが、短波長領域では、大きく外れる。また、ノルボルネン系単量体(IIm)のみを重合して得られた樹脂からなる位相差フィルム(P4−R)は、波長550nmにおいては絶対値で約0.25を示しても、波長が550nmからずれるにしたがって大きく0.25からずれており、当該波長領域の一部でしか1/4λ板としての作用が期待できないものであった。
【0193】
また、ASV方式低反射ブラックTFT液晶を採用しているシャープ株式会社製液晶テレビ(LC−13B1−S)の液晶パネルの観察者側の前面に貼付している偏光板および位相差フィルムを剥離し、この剥離した箇所に元々貼付されていた偏光板の透過軸と同一にして、剥離した偏光板および実施例で得た延伸フィルム(P2−R)(位相差の波長依存性を有したRe(550)が137nm±5nm)を液晶セル側になるように貼付した。
【0194】
この延伸フィルム(P2−R)を有する液晶テレビの方位角45度で極角60度方向での光漏れが無く、黒表示における着色が少なくコントラストが良好で視認性に優れることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、実施例1〜3および比較例1で得た位相差フィルムについて、波長550nmを基準とした透過光の位相差の波長依存性を測定した結果を示す。
【図2】図2は、実施例1〜3および比較例1で得た位相差フィルムについて、波長400〜800nmにおける透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/λ)を測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造単位(I)を有するノルボルネン系樹脂を含有することを特徴とする光学用フィルム;
下記の一般式(I):
【化1】

(式(I)中、mおよびnは、それぞれ独立に0〜2の整数であり、Xは、式:−CH=CH
−で表される基、または、式:−CH2CH2−で表される基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、s、t、uは、それぞれ独立に0〜2の整数である。)。
【請求項2】
前記ノルボルネン系樹脂が、下記一般式(II)で表される構造単位(II)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光学用フィルム;
【化2】

(式(II)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m、n、sおよびtは、上記式(I)と同様であり、R10、R11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換
もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、互いに結合してヘテロ原子を有してもよい単環または多環の基を形成してもよく、R10とR11、または、R12とR13は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。)。
【請求項3】
前記ノルボルネン系樹脂が、構造単位(II)を全構造単位中98モル%以下の割合で有することを特徴とする請求項2に記載の光学用フィルム。
【請求項4】
前記ノルボルネン系樹脂中、構造単位(I)におけるXと、構造単位(II)におけるXの合計の90モル%以上が、式:−CH2CH2−で表される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項5】
前記ノルボルネン系樹脂が、前記一般式(I)において、m=0かつn=0である構造単位(I)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項6】
前記ノルボルネン系樹脂が、前記一般式(I)において、u=0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項7】
透過光に位相差を与えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項8】
波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長400nmにおける位相差Re(400)との比Re(400)/Re(550)が1.0〜0.1の範囲にあり、波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長800nmにおける位相差Re(800)との比Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の光学用フィルム。
【請求項9】
下記式で表される値が、波長550〜800nmのすべての範囲において、その平均値に対して±30%の範囲内にあることを特徴とする請求項7または8に記載の光学用フィルム;
Re(λ)/λ
(式中、λは光の波長(nm)を表し、Re(λ)は波長λ(nm)における透過光の位相差を表す。)。
【請求項10】
少なくとも片面に光拡散機能を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項11】
少なくとも片面に透明導電性層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項12】
少なくとも片面に反射防止層を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の光学用フィルムからなることを特徴とする偏光板保護フィルム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の光学用フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学用フィルムを溶剤キャスト法による製膜すること特徴とする光学用フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学用フィルムを溶融押し出し法による製膜すること特徴とする光学用フィルムの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−188671(P2006−188671A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351865(P2005−351865)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】