説明

光学的情報記録用媒体並びにその再生方法及び記録方法

【課題】 広い線速度で使用可能であり、記録マークが安定に存在し、総合的にみて優れた相変化記録媒体を得る。
【解決手段】 基板上に少なくとも相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体であって、相変化型記録層が下記一般式(I)で表される組成からなることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
((Sbx Te1-x y Ge1-y z 1-z
(I)(ただし、xは0.7≦x≦0.85の範囲の数であり、yは0.8≦y<1の範囲の数であり、zは0.88≦z<1の範囲の数である。MはIn及び/又はGaである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き換え可能な相変化媒体を利用した高密度な光ディスクに関する。詳しくは、広い線速度での使用が可能な相変化媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
書き換え型光ディスクとして、結晶状態と非晶質状態との間の可逆的な変化に伴う反射率等の光学特性変化を利用した相変化媒体が知られている。相変化媒体は外部磁界を必要とせず、レーザー光のパワーを変調するだけで記録・消去が可能であり、記録・再生装置を小型化できるという利点を有する。
一般的な相変化媒体は、基板上に、相変化型記録層が設けられ、その両側に誘電体からなる保護層を有している。また、さらに反射層が設けられているのが通常である。また、相変化型の記録層は、通常、未記録・消去状態を結晶状態とし、非晶質のビットを記録マークとして形成している。
【0003】
従来、このような相変化記録層として、SbTe共晶点組成(Sb70Te30)よりもSbを過剰にした組成のものが知られている。例えば、特開平1−303643号公報には、(Sb1-x Tex 1-y y (MはAg、Al、As、Au、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Pb、Pd、Pt、Se、Si、SnおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素)からなる合金膜を記録層として使用することが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、共晶点近傍の合金材料は非晶質形成能は高いものの、結晶化の際に相分離を伴うため、100nsec未満の短時間の加熱では結晶化できず、オーバーライト可能な光記録媒体の記録層としては不適当であると考えられてきた。
一方、本発明者は、このようなSbTeからなる2元合金に注目し、共晶組成近傍の結晶化/非晶質化特性につき、より高密度記録に適した光ディスク評価機を用いて検討を行った。その結果、Sb70Te30共晶組成近傍のSbTe合金を主成分とする記録層は初期結晶化は困難であるものの、一旦初期結晶化してしまえば以後の非晶質−結晶相変化による記録消去は極めて高速に行なうことができることを見出した。共晶点近傍組成を用いる他の利点は、非晶質マークの周辺部あるいは、消去されたマーク内に初期化状態と反射率の異なる粗大グレインが生じにくいということである。これは、結晶成長が相分離によって律速されている共晶点近傍の合金に特有の現象である。さらには、特にマーク間を詰めて記録した場合、上記の組成は、従来のGe2 Sb2 Te5 付近の組成の記録層よりきれいな再生信号が得られるため、高密度化にも適している。
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、このようなSb70Te30共晶点近傍の組成に過剰のSbを含むSbTe合金は、このままでは記録層としては十分に機能しにくいことが判明した。その理由は、記録された非晶質マークが時間とともに結晶化してしまいマークが消えてしまい易いためである。どのような相変化記録膜も室温では結晶状態の方がアモルファスマークより安定であるため十分長い時間が経てばやがて結晶化すると思われる。しかし、記録媒体としては少なくとも10年以上は記録マークが安定して存在することが必要である。Sbx Te1-x (0.6<x<0.9)系記録層は、非晶質状態の結晶化温度が100℃前後と低く、安定なアモルファスマークが存在する時間が短すぎて、実用的な相変化記録膜には適さないと考えられる。
【0006】
また、一般に、現在の相変化媒体は使用可能な線速度の範囲が狭いことが問題である。
ディスク状の記録媒体では、装置的に好ましい一定角速度でディスクを回転させた場合、ディスク内周部と外周部では通常2倍以上の線速度の違いが生じる。また、線速度一定のシステムとして製品化されたものであっても線速度を上げて記録できるような新製品が望まれる例も多く、この場合、前の古い条件での記録(線速度、パルスストラテジー等)は可能としたまま、速い線速度での記録も可能としなければならない。これらの状況下では、広い線速度に対応できる記録媒体が必要となるが、現在の相変化記録媒体では十分とはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、SbTe共晶点近傍よりもSb過剰な組成に、さらに特定の元素を特定量存在させることによって、非晶質マークの安定性が向上し、且つ広い範囲の線速度に対応可能であり、さらには、上記SbTe合金の特性を生かした相変化型の記録媒体が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、基板上に少なくとも相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体であって、相変化型記録層が下記一般式(I)で表される組成からなることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
((Sbx Te1-x y Ge1-y z 1-z (I)
(ただし、xは0.7≦x≦0.85の範囲の数であり、yは0.8≦y<1の範囲の数であり、zは0.88≦z<1の範囲の数である。MはIn及び/又はGaを表す。)
また、発明の他の要旨は、上記の光学的情報記録用媒体にマーク長変調された情報を記録するに当たり、
結晶状態の部分を未記録状態・消去状態とし、非晶質の部分を記録状態とし、
記録マーク間に対しては、非晶質の部分を結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照射し、
記録マークに対しては、記録マークの時間的な長さをnT(Tは基準クロック周期、nは2以上の自然数)としたとき、時間(n−j)Tを
α1 T、β1 T、α2 T、β2 T、・・・・、αm T、βm T、
(ただし、Σαi +Σβi =n−jとする。jは0−2までの任意の数。mはm=n−kを満たす数。kは0−2までの整数。)と分割し、αi T(1≦i≦m)なる時間においては、記録層を溶融させるのに十分な記録パワーPwの記録光を照射し、βi T(1≦i≦m−1)なる時間においては、Pb<PeとなるバイアスパワーPbの記録光を照射する光学的情報記録用媒体の記録方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用可能な線速度範囲が大きく、記録マークが安定に存在し、総合的にみて優れた相変化記録媒体が得られる。また、これに適した再生方法及び記録方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の特徴の1つは、記録層の組成として、
((Sbx Te1-x y Ge1-y z 1-z (I)
(ただし、xは0.7≦x≦0.85の範囲の数であり、yは0.8≦y<1の範囲の数であり、zは0.88≦z<1の範囲の数である。MはIn及び/又はGaを表す。)なるものを用いることにある。
【0010】
元素MはIn及びGaの少なくとも一方の元素を表す。好ましくはInである。
ここで、xは0.7−0.85であるが、好ましい下限値は0.71であり、好ましい上限値は0.8である。xが大きすぎると結晶化速度が大きくなりすぎて非晶質が形成しにくい傾向にある。また、小さすぎると結晶化速度が遅すぎて結晶化させにくくなる傾向にある。
【0011】
上記の記載からもわかるように、本発明において、Sb/Te比によって結晶化速度を制御することができる。すなわち母体となるSbTe共晶点組成に対する過剰Sb量が結晶化速度を決める1つの因子となる。Sbが多くなれば急冷状態で析出するSbクラスタサイトが増え、結晶核生成が促進されると考えられる。これは、各結晶核から同一結晶成長速度を仮定しても、成長した結晶粒で埋め尽くされるに要する時間が短縮され、結果として非晶質マークを結晶化するに要する時間が短縮されることを意味する。従って、高線速度で短時間のレーザー光照射で消去する場合に有利である。一方、記録層の冷却速度は記録時の線速度にも依存する。すなわち、同一層構成であっても低線速度ほど冷却速度は低下する。従って、低線速度ほど非晶質形成のための臨界冷却速度が小さい組成、すなわち過剰Sb量の少ない組成が望ましいことになる。まとめるとSbTe共晶点組成を基準として、過剰Sb量が多い組成ほど高線速度に適しているといえる。
【0012】
また、yは0.8以上1未満であるが、好ましい下限値は0.9である。また上限値に関してはyは0.97以下が好ましい。yが大きすぎると高密度での低ジッタ特性を長期間安定に維持しがたく、本発明の効果が不十分になる傾向にある。一方、yが小さすぎると記録時のノイズが増加し、また特に高密度でのマーク長記録を行う場合のジッタを低減しがたくなる傾向にある。さらに、zは0.88以上1未満であるが、好ましい上限値は0.999である。また、好ましい下限値は0.94である。zが大きすぎると、広い範囲での線速度に対応しにくくなる。また、zが小さすぎると、多数回での記録後に記録信号のノイズが増加する傾向にある。
【0013】
本発明においては、記録層の結晶状態と非晶質状態との間の光学特性の差を利用して再生を行うのが通常であり、特に、非晶質状態を未記録・消去状態に対応させ、結晶状態を記録状態に対応させるのが通常である。即ち、本発明の記録媒体は、通常、非晶質部分をマークとして記録・再生が行われる。本発明においては、前記記録層が、上記結晶状態において、面心立方晶構造を有する結晶相からなるのが好ましい。この場合、記録層は、単一の結晶相からなっていてもよく、複数の結晶相からなっていてもよいが、複数の結晶相からなる場合、格子不整合を有しないのが好ましい。その結果、ノイズを減少させる、保存安定性が向上する、高速での結晶化が容易である等特性を向上させることができる。これは、Sb2Te3等の六方晶構造を有する結晶相やSb等の立方晶ではあるが格子定数が大きく異なる結晶相、さらにはSb7Te、Sb2Te3等のその他の空間群に属する他の結晶相が存在する場合、格子不整合の大きな結晶粒界が形成された結果、マークの周辺形状が乱れたり、光学的なノイズが発生したりすると考えられるのに対し、上記結晶相からなる場合には、このような結晶粒界が生じないためと考えられる。
【0014】
前記好ましい結晶相の単位格子定数は、通常5.5Å以上、好ましくは5.8Å以上であり、また通常6.8Å以下、好ましくは6.5Å以下である。複数の結晶相が存在する場合、格子不整合を生じず、実質的に単一相とみなすためには、同じ結晶構造を有するとともに、単位格子定数の差異が±5%程度以下であることが好ましい。結晶相は、熱平衡状態で得られる安定結晶相であってもよく、また、製造条件によって現れる準安定結晶相であってもよい。準安定相結晶相は、熱力学的には必ずしも最低エネルギー状態に対応するものではないが、全く不安定というものでもなく、光学的情報記録用媒体に使用する相変化型記録層において実質的に安定に存在することが可能な結晶相である。
【0015】
本発明において好ましい上記結晶相は、Fm3m空間群及び/又はF43m空間群に属すると考えられる。図5は、後述する実施例において製造された相変化型光学的情報記録用媒体と同様の製造方法によって得られた媒体から、記録層(厚さ約20nm)を剥離して得られたIn3Ge5Sb70Te22薄膜の透過電子顕微鏡(TEM)による電子線回折像である。図中、A,B,C,Dの各点は、それぞれミラー指数(220)、(002)、
(222)、(111)に帰属できる。この回折像で現れるA,B,C,Dの各点に対するミラー指数を矛盾なく説明し、かつ、同様に得られる異なるパターンの回折像をも矛盾なく説明しうるものは、面心立方晶構造であり、Fm3mもしくはF43m空間群に属する結晶構造である。また、電子線回折像には、面方位の回転はあるものの実質的に図5しか得られておらず、ほぼ単一の結晶相から形成されていると推定される。また、X線回折法において、Sb相のような他の結晶構造にかかわる明確なピークは観察されないことも確認した。
【0016】
図5の電子線回折像から、記録層は、格子定数約6.4ÅのF43m空間群に属するか、又は、格子定数約6.1ÅのFm3m空間群に属するかのいずれかであることが分かる。前者は、面心立方晶であるGe3In13Sb7Te3固溶体、又はAgInTe2のF43m空間群に属する結晶型と同じ構造を有するものであり、後者は、AgInTe2のFm3m空間群に属する結晶系、又はAgSbTe2のFm3m空間群に属する結晶型と同じ構造を有するものである。
【0017】
なお、GaSbやInSbにも同じ空間群に属する結晶系が存在し、やはり単位格子定数もそれぞれ、約6.1Å、及び約6.5Åと上記図5の電子線回折像から得られる単位格子定数の値と極めて近い。このことは、本発明の記録層組成においてIn及び/又はGaの存在が必須であることと考え合わせると、これらの結晶が母体となるSb−Te−Ge固溶体における準安定構造の形成を促進していることを示唆している。
【0018】
なお、SbTe共晶組成よりもSbが過剰の組成においては、特に、上記他の結晶相が形成されやすいので、後述するような初期化の工夫をするなどの手段を施すことによって、面心立方晶構造からなるようにする必要がある。
記録層の結晶相の形態は、記録層の初期化方法に大きく依存する。即ち、本発明において好ましい上記結晶相を形成させるためには、記録層の初期化方法を下記のように工夫するのが好ましい。
【0019】
記録層は通常スパッタ法等の真空中の物理蒸着法で成膜されるが、成膜直後のas−deposited状態では、通常非晶質であるため、通常はこれを結晶化させて未記録消去状態とする。この操作を初期化と称する。初期化操作としては、例えば、結晶化温度(通常150〜300℃)以上融点以下での固相でのオーブンアニールや、レーザー光やフラッシュランプ光などの光エネルギー照射でのアニール、溶融初期化などの方法が挙げられるが、上記好ましい結晶状態の記録層を得るためには、溶融初期化が好ましい。固相でのアニールの場合は、熱平衡を達成するための時間的余裕があるために、他の結晶相が形成されやすい。
【0020】
溶融初期化においては、記録層を溶融させて再凝固時に直接再結晶化させてもよく、また、再凝固時にいったん非晶質状態とした後、融点近傍で固相再結晶化させてもよい。この際、結晶化の速度が遅すぎると熱平衡を達成するための時間的余裕があるために他の結晶相が形成されることがあるので、ある程度冷却速度を速めるのが好ましい。
例えば、融点以上に保持する時間は、通常2μs以下、好ましくは1μs以下とすることが好ましい。また、溶融初期化には、レーザ光を用いるのが好ましく、特に、走査方向にほぼ平行に短軸を有する楕円型のレーザ光を用いて初期化を行う(以下この初期化方法を「バルクイレーズ」と称することがある)のが好ましい。この場合、長軸の長さは、通常10〜1000μmであり、短軸の長さは、通常0.1〜10μmである。なお、ここでいうビームの長軸及び短軸の長さは、ビーム内の光エネルギー強度分布を測定した場合の半値幅から定義される。走査速度は、通常1〜10m/s程度である。レーザ光源としては、半導体レーザ、ガスレーザ等各種のものが使用できる。レーザ光のパワーは通常100mWから2W程度である。
【0021】
バルクイレーズによる初期化の際、例えば円盤状の記録媒体を使用した際、楕円ビームの短軸方向をほぼ円周方向と一致させ、円盤を回転させて短軸方向に走査するとともに、1周(1回転)ごとに長軸(半径)方向に移動させて、全面の初期化を行うことができる。1回転あたりの半径方向の移動距離は、ビーム長軸より短くしてオーバーラップさせ、同一半径が複数回レーザー光ビームで照射されるようにするのが好ましい。その結果、確実な初期化が可能となると共に、ビーム半径方向のエネルギー分布(通常10〜20%)に由来する初期化状態の不均一を回避することができる。一方、移動量が小さすぎると、かえって前記他の好ましくない結晶相が形成されやすいので、通常半径方向の移動量は、通常ビーム長軸の1/2以上とする。
【0022】
溶融初期化の際、2本のレーザビームを使用し、先行するビームで一旦記録層を溶融させ、後続する2番目のビームで再結晶化を行うことによって溶融初期化を行うこともできる。ここで、各々のビーム間の距離が長ければ、先行ビームで溶融された領域は、いったん固化してから、2番目のビームで再結晶化される。
溶融再結晶化を行ったかどうかは、実際の1μm程度の記録光で非晶質マークのオーバーライトを行った後の消去状態の反射率R1と、初期化後の未記録状態の反射率R2が実質的に等しいかどうかで判断できる。ここでR1の測定は、非晶質マークが断続的に記録されるような信号パターンを用いた場合、複数回のオーバーライト、通常は5から100回程度のオーバーライト後に行う。こうすることで、一回の記録だけでは未記録状態のまま残りうるマーク間の反射率の影響を除去する。
【0023】
上記消去状態は、必ずしも記録用集束レーザー光を実際の記録パルス発生方法に従って変調しなくても、記録パワーを直流的に照射して記録層を溶融せしめ、再凝固させることによっても得られる。
本発明の記録用媒体の場合、R1とR2の差は小さい方が好ましい。
具体的には、R1とR2とで定義される下記値が10(%)以下、特には5(%)以下となるようにするのが好ましい。
【0024】
2|R1−R2|/(R1+R2)×100(%)
例えば、R1が17%程度の相変化媒体では、概ねR2が16〜18%の範囲にあればよい。
かかる初期化状態を達成するためには、概ね実際の記録条件と等しい熱履歴を初期化によって与えるのが好ましい。
【0025】
本発明で使用する記録層は、本発明の効果を損なわない範囲でさらに他の元素を含有していても良いが、通常は上記の4元系組成である。
記録層の厚さは、通常5nm以上であるが、10nm以上、特に15nm以上が好ましく、また30nm以下、特に25nm以下が好ましい。あまりに薄いと、結晶と非晶質状態の反射率の間に十分なコントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での記録消去が困難となりやすい。また、反射率が低くなりすぎる傾向にもある。一方、あまりに厚いと、やはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、クラックが生じやすくなる。また、熱容量が大きくなり記録感度が悪くなりやすい傾向にもある。さらにまた、相変化に伴う体積変化が著しくなるため、オーバーライトを繰り返した際に、記録層自身やその上下に設けることができる保護層に微視的かつ不可逆な変形が蓄積されノイズとなりやすい。その結果、繰り返しオーバーライト耐久性が低下する傾向にもある。書き換え型DVDのような高密度媒体ではノイズに対する要求はいっそう厳しいために、より好ましい記録層の厚さは25nm以下である。
【0026】
上記記録層は所定の合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でDCまたはRFス
パッタリングにより得ることができる。
また、記録層の密度はバルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上である。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記(II)式による近似値を用いるが、合金塊を作成して実測することもできる。
【0027】
ρ=Σmi ρi (II)
(ここで、mi は各元素iのモル濃度であり、ρi は元素iの原子量である。)
スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(通常Ar等の希ガス:以下Arの場合を例に説明する)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配置するなどして、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることによって、記録層の密度を上げることができる。高エネルギーArは、通常スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。このような高エネルギーの希ガスの照射効果をatomic peening効果というが、一般的に使用されるArガスでのスパッタではAtomic peening効果により、Arがスパッタ膜に混入される。膜中のAr量により、Atomic peening効果を見積もることができる。すなわち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。一方、Ar量が多ければ、高エネルギーArの照射が激しく密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたArが繰り返しオーバーライト時にvoidとなって析出し、繰り返しの耐久性を劣化させやすい(J.Appl.Phys., Vol.78(1995), pp6980-6988 )。従って、記録層中の適当なAr量は、0.1原子%以上、1.5原子%未満である。さらに、直流スパッタリングよりも高周波スパッタリングを用いた方が、膜中Ar量が少なくして、高密度膜が得られるので好ましい。
【0028】
本発明の光学的情報記録用媒体の構造の他の構成要素について説明する。
本発明で使用する基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの透明樹脂、あるいはガラス、アルミニウム等の金属を用いることができる。通常基板には20―80nm程度の案内溝が設けられているので、案内溝を成形によって形成できる樹脂製の基板が好ましい。
【0029】
記録層の相変化に伴う蒸発・変形を防止し、その際の熱拡散を制御するため、通常記録層の上下一方又は両方、好ましくは両方に保護層が形成される。保護層の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。より具体的には、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と酸化物、窒化物、炭化物、弗化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。例えば、ZnSとSiO2 の混合物は好ましい保護層組成の一例である。
【0030】
繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい(Thin Solid Films,第278巻(1996年)、74〜81ページ)。誘電体の混合物を用いる場合には、バルク密度として下式(III)の理論密度を用いる。
ρ=Σmiρi (III)
(ここで、miは各成分iのモル濃度であり、ρiは成分iの単独のバルク密度である。)
保護層の厚さは、一般的に通常10nmから500nmである。あまりに薄いと、基板や記録膜の変形防止効果が不十分であり、保護層としての役目をなさない可能性がある。
また、あまりに厚いと、保護層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生しやすくなる。
【0031】
特に、基板と記録層の間に保護層(下部保護層と称することがある)を設ける場合、下部保護層は、熱による基板変形を抑制する必要があるため、その厚さは50nm以上が好ましい。薄すぎると、繰り返しオーバーライト中に微視的な基板変形が蓄積され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなる傾向にある。一方、下部保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から通常200nm以下、好ましくは150nm以下程度である。厚すぎると記録層面で見た基板の溝形状が変わってしまうことがある。すなわち、溝の深さや幅が基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象が起こりやすくなる。
【0032】
一方、記録層の基板とは反対側に保護層(上部保護層と称することがある)を設ける場合、上部保護層は、記録層の変形抑制のために、通常その厚さは10nm以上である。また、厚すぎると、繰り返しオーバーライトに伴って上部保護層の内部に微視的な塑性変形が蓄積され、再生光を散乱されてノイズ上昇が著しくなる傾向にあるため、通常は50nm以下、好ましくは30nm以下である。
【0033】
なお、記録層および保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信号の振幅すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
本発明の相変化型情報記録用媒体は、さらに反射層を設けることができる。反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存し、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。即ち、基板側から再生光を入射する場合は、基板に対して記録層の反対側に反射層を設けるのが通常であり、記録層側から再生光を入射する場合は記録層と基板との間に反射層を設けるのが通常である。
【0034】
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましく、特に放熱効果が期待できるAu、Ag又はAl等の金属が好ましい。反射層自体の熱伝導度制御や、耐腐蝕性の改善のため上記の金属にTa、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr等を少量加えてもよい。添加量は通常0.01−20原子%程度である。Ta及び/又はTiを15原子%以下含有するアルミニウム合金、特に、Alx Ta1-x (0<x<0.15)なる合金は、耐腐蝕性に優れており本光学的情報記録用媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。反射層の膜厚としては、透過光がなく完全に入射光を反射させるために50nm以上が望ましい。また、あまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなるので、通常は500nm以下である。上部保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には特に、反射層を高熱伝導率にするため、含まれる不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。
【0035】
本発明の情報記録用媒体の好ましい層構成は、再生光の入射方向に沿って順に、第1保護層、記録層、第2保護層、反射層が設けされている構成である。即ち、基板側から再生光を入射する場合は、順に基板、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層の層構成とされ、記録膜側から再生光を入射する場合は、順に基板、反射層、下部保護層、記録層、上部保護層の層構成とされるのが好ましい。無論、これらの層はそれぞれ2層以上で形成されていても良く、また、それらの間に中間層が設けられていても良い。例えば、基板側入射の場合の基板/保護層間や、基板とは反対側からの入射の場合の保護層上に、半透明の極めて薄い金属、半導体、吸収を有する誘電体層等を設けて、記録層に入射する光エネルギー量を制御することも可能である。
【0036】
記録層、保護層、反射層は通常スパッタリング法などによって形成される。
記録膜用ターゲット、保護膜用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを
同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
本発明の記録用媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、異物との接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コートを設けるのが好ましい。保護コートは通常1μmから数百μmの厚さである。また、あるいは、硬度の高い誘電体保護層さらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
【0037】
本発明の記録用媒体に使用できる記録再生光は、通常半導体レーザーやガスレーザーなどのレーザー光であって、通常その波長は300〜800nm、好ましくは350〜800nm程度である。特に1Gbit/inch2 以上の高面記録密度を達成するためには、集束光ビーム径を小さくする必要があり、波長350から680nmの青色から赤色のレーザー光と開口数NAが0.5以上の対物レンズを用いて集束光ビームを得ることが望ましい。
【0038】
本発明では、前記のように非晶質状態を記録マークとするのが通常である。また、本発明では、マーク長変調方式によって情報を記録するのが有効である。これは、特に最短マーク長が4μm以下、特に1μm以下となるマーク長記録の際に特に顕著である。マーク長が長すぎる場合や、マーク位置記録の場合には、そもそもある程度十分な特性を得ることが可能であるので、本発明による効果が顕在化しにくい。記録マークを形成する際、従来の2値変調方式による記録を行うこともできるが、本発明においては下記のような記録マークを形成する際にオフパルス期間を設ける3値以上の多値変調方式による記録方法を採用するのが特に好ましい。
【0039】
図1は、本発明の記録方法における記録光のパワーパターンを示す模式図である。長さnT(Tは基準クロック周期、nはマーク長変調記録において取りうるマーク長であり、整数値である)にマーク長変調された非晶質マークを形成する際、(n−j)T(ただしjは0−2の実数)を、m=n−k(ただしkは0≦k≦2なる整数)個の記録パルスに分割し、個々の記録パルス幅をαi T(1≦i≦m)とし、個々の記録パルスにβi T(1≦i≦m)なる時間のオフパルス区間を付随させる。ここでαi ≦βi とするのが好ましい。なおΣαi +Σβi は通常nであるが、正確なnTマークを得るためΣαi +Σβi=n−j(jは0より大きく2以下の数)とすることもできる。
【0040】
記録の際、マーク間においては、非晶質を結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照射する。また、αi T(i=1〜m)においては、記録層を溶融させるのに十分な記録パワーPwの記録光を照射し、βi T(1≦i≦m−1)なる時間においては、Pb<Pe、好ましくはPb≦(1/2)PeとなるバイアスパワーPbの記録光を照射する。
なお、期間βm Tなる時間において照射する記録光のパワーPbは、βi T(1≦i≦m−1)の期間と同様、通常Pb<Pe、好ましくはPb≦1/2Peとするが、Pb≦Peとなっていてもよい。
【0041】
上記の記録方法を採用することによって、パワーマージンや記録時線速マージンを広げることができる。この効果は、特にPb≦1/2PeなるようにバイアスパワーPbを十分低くとる際に顕著である。
図2にαi =βi =0.5とした時に,Pb=Peとした場合(a)と、Pb≒0(極端な場合)とした場合(b)の記録層の温度変化を模式的に示した。ここでは、3個に分割された分割パルスの、1番目のパルスが照射される位置を想定している。(a)では後続の記録パルスによる加熱の影響が前方に及ぶために、1番目の記録パルス照射後の冷却速度が遅く、かつオフパルス区間でもPeが照射されるため、オフパルス区間での温度降下で到達する最低温度TL が融点近傍に留まっている。一方、(b)では、オフパルス区間のPbがほとんど0のため、TL は融点から十分下がった点まで下がり、かつ、途中の
冷却速度も大きい。非晶質マークは1番目のパルス照射時に溶解し、その後のオフパルス時の急冷によって形成される。本発明の記録層は融点近傍でのみ大きな結晶化速度を示すと考えられるため、(b)に示す温度プロファイルをとることは、再結晶化を抑制し、良好な非晶質マークを得る上で重要なことである。逆に、冷却速度及びTL を制御することで再結晶化をほぼ完全に抑制し、溶融領域とほぼ一致するクリアな輪郭を有する非晶質マークが得られるためマーク端において低ジッタが得られる。従来使用されてきているGeTe−Sb2 Te3 擬似2元系合金の場合では、図2(a),(b)いずれの温度プロファイルでも非晶質マーク形成プロセスに大差がない。なぜなら、速度は若干遅いものの広い温度範囲で再結晶化を示すからである。この場合、パルス分割方法によらずある程度の再結晶化が生じ、これが非晶質マーク周辺の粗大グレインとなってマーク端でのジッタを悪化させる傾向がある。このような記録層組成では、オフパルスは必須ではなく、むしろ従来の2値変調によるオーバーライトが単純で望ましい。すなわち、本発明の記録層にとっては上記の記録方法は極めて有効であるが、従来のGeTe−Sb2 Te3 系記録層を用いた場合や、ピット位置記録に適用した場合についてはこのような記録方法を採用する必然性は全くない。
【0042】
なお、記録マークは、溝部又は溝間部のいずれにも設けることができ、両方に設けることもできるが、好ましくは溝部に設ける。
【実施例】
【0043】
実施例1〜3および比較例1〜2
GeSbTeターゲットとInSbTeターゲットを同時にスパッタリングすることによりGeInSbTe膜を得た。スパッタリング時は、Arガス圧0.4Paとし、GeSbTeターゲットには300WのRF電力を印可した。InSbTeターゲットには電流制御でDC電力を印可し電流値を変化させることにより組成を5種類変化させた。組成分析の結果それらの組成は下記のようであった。
【0044】
比較例1:Ge5 Sb71Te24(=(Sb0.75Te0.250.95Ge0.05
実施例1:Ge5 In1 Sb70Te24(=((Sb0.74Te0.260.95Ge0.050.99In0.01
実施例2:Ge5 In3 Sb68Te24(=((Sb0.74Te0.260.95Ge0.050.97In0.03
実施例3:Ge5 In7 Sb63Te25(=((Sb0.72Te0.280.95Ge0.050.93In0.07
比較例2:Ge4 In12Sb58Te26(=((Sb0.69Te0.310.95Ge0.050.88In0.12
次に、下記の方法にて、上記の記録層と同様の方法で製造された記録層を有する相変化型光ディスクを作製した。
【0045】
1.2mm厚の円盤状のポリカーボネート基板上にZnS- SiO2 下部保護層(95nm)、GeInSbTe記録層(18nm)、ZnS- SiO2 上部保護層(40nm)、Al合金反射層(200nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。記録層のスパッタ条件を前記と同様にして、前記同様の組成の記録層とした。
【0046】
これらのディスクを溶融結晶化した。即ち、成膜後非晶質状態となっていた記録層に対し、長軸約100μm、短軸約1.5μmの楕円形のレーザービームを短軸方向をディスクの円周方向に、長軸方向を半径方向に致せて照射した。ディスク4m/sで回転させ、ディスク一周毎に約40μmづつ半径方向に移動させることによってディスク全面を初期化した。照射パワーは約400mWであった。
【0047】
続いて780nm、NA0.55の光学系を用い以下の記録、測定をおこなった。
即ち、図3(a)に示す単一記録パターン用記録パルスを用いて5回オーバーライトをおこなった部分に、図3(b)に示す単一記録パターン用記録パルスを用いてさらに1回オーバーライト記録をおこなった後、マークジッタを測定した。
ここで、図3(a)は,基準クロック周期Tに対して8Tマークと8Tスペース(マーク間)を交互に繰り返したパターン、図3(b)は11Tマークと11Tスペース(マーク間)を交互に繰り返したパターンである。いずれの場合も本発明の記録方法に準じた記録パターンであり、各マークをm=n個に分割し、すべてのiに対して,一律αi=βi=0.5とした。αiT(i=1〜m)における記録パワーPwはiによらず一定とし、且つ、βiT(i=1〜m)におけるバイアスパワーPbもiによらず一定とした。この際、Pbは0.8mWとし、マーク間における消去パワーPeと記録パワーPwの比Pe/Pwは0.5で一定とした。
【0048】
記録パワーPwは8〜17mWの間を1mWごと(合計10点)に変化させ、線速度は1.2〜8.1m/sの間の12点(1.2,1.4,1.7,2.0,2.4,2.9,3.4,4.0、4.8、5.7、6.8、8.1m/s)でマーク長ジッタを測定した。
また、各線速度vにおいて基準クロック周期Tは、(115.7*2.4)/vナノ秒とし、線速度に反比例させて、マーク長が一定となるようにした。すなわち、8Tマーク及びスペースは約2.2μm、11Tマーク及びスペースは約3.1μmの長さに相当する。これは通常のコンパクトディスクの8T及び11Tマーク長と同等の長さである。
【0049】
なお、記録後のマークジッタ(マーク長ジッタ)の測定は・BR>A記録線速度に関係なくすべて2.4m/sで行った。
以上の結果を図4に示す。
図4は、上記実施例におけるマークジッタ、記録パワー及び線速度の関係を示す図である。縦軸及び横軸をそれぞれ線速度及び記録パワーとし、マークジッタを等高線で示している。マークジッタの単位はnsである。図4よりInの添加によって使用可能な線速度範囲が広がることがわかる。
【0050】
次に、上記測定に使用したのと同様の測定系を用いて、線速度2.4m/s、記録パワー11mW、消去パワー5.5mW、その他の条件はオレンジブックパート3に準拠しEFMランダム信号の繰り返しオーバーライト記録をおこない3Tマーク間ジッタを測定した。ここで、オレンジブックパート3に準拠した記録パルスは、図1において、m=n−1、α1 =1、αi=0.5(i=2〜m)、β=0.5(i=1〜m)、j=0.5としたものであって、nは3〜11の整数であった。
【0051】
結果を表−1に示す。比較例2のディスクは数百回の繰り返し記録では劣化しないものの1000回以内の記録で劣化してオレンジブックパート3の規格である17.5ns以上のジッタとなっている。それ以外のディスクは1000回の記録後でも17.5ns以下である。1000回以上の繰り返し記録劣化については、傾向としてはIn量の多い方が劣化がはやいことが分かる。
【0052】
【表1】

【0053】
なお、上記実施例1〜3において、いずれも結晶状態における記録層は、面心立方構造を有する単一の結晶相から構成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の記録方法における記録光のパワーパターンを示す模式図
【図2】本発明の記録方法の効果を示す、記録層の温度変化を示す模式図
【図3】本発明の実施例における記録光のパワーパターンを示す模式図
【図4】本発明の実施例における、マークジッタ、記録パワー及び線速度の関係を示す図
【図5】本発明の媒体の記録層におけるTEMによる電子線回折像の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体であって、該相変化型記録層が下記一般式(I)で表される組成からなることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
((Sbx Te1-x y Ge1-y z 1-z (I)
(ただし、xは0.7≦x≦0.85の範囲の数であり、yは0.8≦y<1の範囲の数であり、zは0.88≦z<1の範囲の数である。MはIn及び/又はGaを表す。)
【請求項2】
0.7≦x≦0.8である請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項3】
0.9≦y<1である請求項1又は2のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項4】
0.94≦z<1である請求項1乃至3のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項5】
相変化型記録層は、結晶状態において面心立方晶構造を有する結晶相からなる請求項1乃至4のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項6】
相変化型記録層の片側又は両側に保護層が設けられている請求項1乃至5のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項7】
さらに反射層が設けられている請求項1乃至6のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項8】
基板上に、記録再生用光ビームの入射方向から順に、少なくとも第1保護層、相変化型記録層、第2保護層及び反射層をこの順に設けた請求項1乃至7のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項9】
相変化型記録層の厚さが5−30nmである請求項1乃至8のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項10】
マーク長変調方式による情報が記録される請求項1乃至9のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体に対して、波長が350nm以上800nm以下のレーザー光を、開口数NAが0.5以上の対物レンズによって集光した集束光を照射して再生することを特徴とする光学的情報記録用媒体の再生方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の光学的情報記録用媒体にマーク長変調された情報を記録するに当たり、
結晶状態の部分を未記録状態・消去状態とし、非晶質の部分を記録状態とし、
記録マーク間に対しては、非晶質の部分を結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照射し、
記録マークに対しては、記録マークの時間的な長さをnT(Tは基準クロック周期、nは2以上の自然数)としたとき、時間(n−j)Tを
α1 T、β1 T、α2 T、β2 T、・・・・、αm T、βm T、(ただし、Σαi +Σβi =n−jとする。jは0−2までの任意の数。mはm=n−kを満たす数。kは0−2までの整数。)と分割し、αi T(1≦i≦m)なる時間においては、記録層を溶融させるのに十分な記録パワーPwの記録光を照射し、βi T(1≦i≦m−1)なる時間においては、Pb<PeとなるバイアスパワーPbの記録光を照射することを特徴とする光学的情報記録用媒体の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−38685(P2007−38685A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256471(P2006−256471)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【分割の表示】特願2000−53146(P2000−53146)の分割
【原出願日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】