説明

光学薄膜の形成材料および光学薄膜の形成方法

【課題】高屈折率を有する光吸収率の小さい光学薄膜用材料であり、大電流の電子ビームの照射を行っても材料の割れやビーム照射面の陥没などの起こらない真空蒸着用材料として用いることのできる金属酸化物焼結体を提供する。
【解決手段】金属成分としてジルコニウムとチタニウムとニオブを含み、化学量論的にZrTiNbの組成で表され、かつ酸素欠損を有する複合酸化物であり、該w、x、y、zは、3.8≦w≦7.9、0.16≦x≦5.6、0.01≦y≦1.83、13.6≦z<20.15の範囲にあり、および、該酸素欠損の量は、完全酸化に対して0.089mol%以上17.084mol%以下の範囲にあることを特徴とする光学薄膜の形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の表面に特定の機能を持たせる光学薄膜の形成材料、およびそれを用いた光学薄膜の形成方法に関する。より詳しくは、光学薄膜の形成材料である金属酸化物焼結体、およびそれを用いた光学薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子の表面に特定の機能を持たせるために薄いコーティングを施すことは、広く一般的に行われている技術である。例えば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡といった各種光学レンズへの反射防止、ビームスプリッター、プリズム、ミラーなどに用いられている。
【0003】
このような光学薄膜の形成方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、ゾルゲル法などが挙げられる。中でも真空蒸着法は処理時間も短く、同じ装置で大きさや形状の異なる基材も条件変更のみで対応できるほか、膜形成材料の利用効率が良く産業廃棄物等の発生も少ないため、コスト面および環境面での利点も多く、多岐産業分野で用いられている。
【0004】
光学薄膜を形成する物質としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化タンタル、酸化ニオブといった金属酸化物、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、硫化亜鉛などの金属硫化物、およびこれらの混合物などが使用される。これらの物質から、それぞれの屈折率や使用する波長域における光吸収率などを考慮して最適なものが選択される。
【0005】
また、前記の真空蒸着法は、処理される基材の数や大きさにかかわらず少量の材料で膜の形成が可能であることも特徴であるが、材料の形状としてはほとんどがタブレット状かグラニュール状のものが使用される。
【0006】
このような材料の形状は、物質の融点や蒸発温度との関係で選択されることが多く、電子ビーム加熱を行う際の蒸発の仕方が昇華性あるいは融点が高く溶融されにくい場合はタブレット状のものが用いられ、容易に溶融されるものはグラニュール状の材料をライナーと呼ばれる容器に満たして用いることが多い。
【0007】
酸化ジルコニウムあるいは酸化ジルコニウムを主成分とする真空蒸着用材料は、高屈折率を有し光吸収率も非常に小さいため、光学用ガラスなど多くの基材への反射防止膜等に最も用いられている材料である。酸化ジルコニウムの融点は2700℃以上と非常に高く電子ビーム加熱によって溶融されにくいため、タブレット型の真空蒸着材料として多く使用されている。
【0008】
また、酸化ジルコニウムと酸化チタニウム、あるいは酸化ニオブを混合した複合酸化物も、高屈折率を有する光学薄膜の形成材料として、真空蒸着法において用いられている。
【0009】
これらの複合酸化物は、真空蒸着用薄膜材料として特許文献1および特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、それらがコーティングされたメガネレンズが開示されている。
【特許文献1】特開2004−300580号公報
【特許文献2】特表平11−504987号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0017303号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年において真空蒸着装置の大型化に伴い、膜の形成物質が基材に到達するまでの距離も拡大されているため、従来よりも大電流の電子ビームを材料に照射する必要が出てきている。このような成膜条件の変化に伴い、タブレット型材料のひび割れやビーム照射面の陥没などが発生する場合がある。
【0011】
材料のひび割れが発生すると、電子ビームによる熱が材料に対して均等に伝達されなくなり、効率よく蒸発する部分とそうでない部分との分布が生じてしまう。この蒸発の分布は、そのまま基材側に形成される膜厚に反映され、再現性の良い成膜の妨げとなる。
【0012】
また、ビーム照射面の陥没が発生すると、材料が蒸発できる面積が小さくなるため、材料が基材に到達できる範囲が小さくなってしまう。このことにより、成膜の初期と終了期とで、基材の位置によって膜厚に差が生じるため、得られる特性にばらつきがでることがある。
【0013】
具体的には、特許文献1では、酸化チタニウムあるいは酸化ニオブを主成分とした高屈折率を有する真空蒸着用タブレット型材料が開示されているが、いずれの成分も物質固有の光吸収率が大きいため、コーティング膜の光損失が大きくなってしまう。ほかにも、それは完全に酸化された状態の複合酸化物であるため熱伝導率が低く、電子ビームの照射により成膜中に材料の割れが生じやすいという問題もある。
【0014】
また、特許文献2では、酸化ジルコニウムと酸化チタニウム、あるいは酸化ジルコニウムと酸化ニオブ、あるいは酸化チタニウムと酸化ニオブを同モルづつ混合し、酸素欠損状態である高屈折率を有する真空蒸着用グラニュール状材料が開示されているが、酸素欠損量が大きいためコーティングされた膜が酸素欠損状態になりやすく、コーティング膜の光損失が大きくなるという問題がある。ほかにも、材料の形状がグラニュール状態であるため、酸化ジルコニウムのような溶融されにくい材料は、蒸発中のライナー容器への充填性にばらつきが生じやすく、このことは蒸発量や蒸発スピードに直接影響するため、再現性の良い成膜を行うことが難しいという問題もある。
【0015】
また、特許文献3には、ジルコニウムおよびチタニウムを含む酸化物層をレンズ表面に形成したメガネレンズが開示されているが、このコーティングはレンズの表面層に防曇性をもたせるための界面活性剤を含浸させる目的で意図的に凸凹を持つ構造に形成されている。しかし、膜の形成が溶液状の材料を用いるゾルゲル法と呼ばれる方法でなされているため、膜厚にばらつきが生じやすく、用途が極めて限定されてしまう。さらに、使用後の材料溶液は産業廃棄物を含む廃液として処理しなければならず、製造コストおよび環境影響においても好ましくないという問題がある。
【0016】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、安定した高屈折率を有しかつ光吸収の少ない光学薄膜が得られ、大電流電子ビームの照射が可能なタブレット型の光学薄膜の形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、金属成分としてジルコニウムとチタニウムとニオブを含み、化学量論的にZrTiNbの組成で表され、かつ酸素欠損を有する複合酸化物であり、該w、x、y、zは、3.8≦w≦7.9、0.16≦x≦5.6、0.01≦y≦1.83、13.6≦z<20.15の範囲にあり、および、該酸素欠損の量は、完全酸化に対して0.089mol%以上17.084mol%以下の範囲にあることを特徴とする光学薄膜の形成材料である。
【0018】
また、本発明は、前記の材料を蒸発源として用いて、真空蒸着を行うことを特徴とする光学薄膜の形成方法である。
【0019】
さらに、本発明は、前記の方法により形成されたことを特徴とする光学薄膜である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の酸化物焼結体を用いて真空蒸着を行うことにより、大電流の電子ビームの照射を行っても材料の割れやビーム照射面の陥没などが起こらない安定した条件での成膜が可能となる。それによって、膜の特性が安定し、かつ高屈折率を有し光吸収率の小さい光学薄膜を提供することができるので、各種光学部品を製造する上で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
これより、本発明の光学薄膜の形成材料および光学薄膜の製造方法について、図および表を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
まず、前記課題に関係して、各種金属を含有する複合酸化物の焼結体を用いて行った、以下の実験結果について説明する。
【0023】
最初に、ジルコニウムとチタニウムを含む複合酸化物について金属モル比率を変えてタブレット型の焼結体を作成した。このとき、該複合酸化物は完全酸化物であった。この焼結体に対して真空蒸着を行い、BK−7ガラス基板上に単層膜にて膜厚3/4λ(540nm)となるように成膜を行った。基板は真空槽内のドーム状ホルダーの中心位置から外周部へ向けて3箇所に設置し、加熱中および成膜中はドーム回転を行った。基板温度は300℃とし、成膜中の酸素ガス導入は行わなかった。成膜前真空度は1×10−3Paとした。
【0024】
電子銃はJEOL製JST−10C電源を使用し、照射条件は加速電圧6kV、エミッション電流値180mAとした。
【0025】
蒸着後の材料の様子と成膜された膜について、以下の(1)〜(4)に示す評価を行った結果を下記の表1に示す。
【0026】
(1)電子ビーム照射によるひび割れの発生
○:発生なし
△:3mm以下
×:3mm以上
(2)電子ビーム照射面の陥没
○:5.1mm以下
△:5.2mm〜5.9mm
×:6mm以上
(3)屈折率の安定性
○:全ての基板の屈折率が2.03〜2.13の範囲に入る
△:3つの基板のうちひとつでもこの範囲以外の屈折率をもつ
(4)400nm〜700nmにおける光吸収
○:0.1%以下
△:0.2%〜0.3%
×:0.4%以上
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示したように、金属成分がジルコニウムとチタニウムからなる複合酸化物の場合、いずれの比率においても電子ビームの照射によるひび割れや陥没が発生した。また、チタニウムのモル比率の高い複合酸化物の場合、屈折率の安定性や400nm〜700nmにおける光吸収において問題があった。
【0029】
次に、金属成分がジルコニウムとチタニウムからなる複合酸化物において、前記の完全酸化物に対して、酸素欠損量が2.5mol%となる低級酸化物の焼結体を作成し、同様の真空蒸着を行った。
【0030】
この結果を下記の表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示したように、酸素欠損が2.5mol%の複合酸化物の場合、表1の完全酸化物である複合酸化物と比較して、電子ビーム照射によるひび割れが起こりにくいという結果が得られた。
【0033】
次に、金属成分にジルコニウムとチタニウムとニオブとを含む焼結体を作製した。該焼結体では、ニオブの含有量は全金属成分中の5mol%の一定とし、残りの金属部分がジルコニウムとチタニウムからなっている。また、該複合酸化物は完全酸化物である。そのような複合酸化物を、ジルコニウムとチタニウムのモル比率を変えて作成し、同様の実験を行った。結果を下記の表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
表3に示されるように、ニオブを5mol%含むジルコニウムとチタニウムの複合酸化物においても、表1に示されるジルコニウムとチタニウムのみを含む酸化物の焼結体と比較して、電子ビームの照射によるひび割れが起こりにくいという結果が得られた。
【0036】
次に、金属部分の組成が表3に示される比率と同様で、酸素欠損量が2.5mol%である低級酸化物の焼結体を作成し、同様の真空蒸着を行った。結果を下記の表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
表4に示されるように、酸素欠損状態である、特定の金属含有比率の複合酸化物においては、表1、表2および表3の結果では見られなかった現象として、電子ビームの照射面の陥没が改善されるという結果が得られた。
【0039】
以上のように、金属成分としてジルコニウムとチタニウムとニオブを含み、かつ酸素欠損状態である複合酸化物においては、ある特定の比率においてのみ、真空蒸着を行った際に電子ビームの照射面の陥没が起こらないため、大電流電子ビームの照射が可能であることがわかった。この複合酸化物をタブレット型真空蒸着用金属酸化物焼結体として用いることで、安定した高屈折率を有し、かつ光吸収の少ない光学薄膜を得ることが可能である。
【0040】
さらに、より良質な真空蒸着用金属酸化物焼結体を提供するために、最良の含有比率を見出す研究を重ねたところ、下記の表5に示す結果が得られた。
【0041】
【表5】

【0042】
これにより、化学量論的にZrTiNbの組成で表されかつ酸素欠損を有する本発明の光学薄膜の形成材料、すなわち酸化物焼結体においては、該w、x、y、zを、3.8≦w≦7.9、0.16≦x≦5.6、0.01≦y≦1.83、13.6≦z<20.15の範囲に、および酸素欠損量を0.089mol%以上17.084mol%以下とすることで、最も良い結果が得られることを見出した。図1に、該酸化物焼結体の酸素以外の金属元素組成比範囲を示す。
【0043】
表5に示されるように、ジルコニウムの比率が前記指定の範囲よりも小さい場合は、得られた膜の光吸収率が増大してしまうほか、電子ビームの照射により容易に変形してしまい、照射面の陥没が起こるため望ましくない。また、この範囲よりも大きい場合は成形される薄膜の屈折率が成膜中に変化する不均質と呼ばれる現象が起こり、安定した特性が得られないため望ましくない。
【0044】
また、チタニウムの比率については、前記指定の範囲よりも小さい場合、成形された薄膜の屈折率が小さくなってしまい目的の特性が得られなくなるため望ましくない。また、この範囲よりも大きい場合は物質固有の光吸収が大きくなってしまい光損失量が増大するため望ましくない。
【0045】
また、ニオブの比率については、少量の含有でも5価イオン構造の影響でジルコニウムおよびチタニウムを含む酸化物全体の焼結度を促進させる働きがあり、大電流電子ビームの照射においても割れや陥没などの変形を防止する効果が得られるが、前記指定の範囲より小さい場合では、十分な効果は得られない。また、この範囲よりも大きい場合は溶融性が高くなりすぎるためタブレット状での使用が困難になるほか、物質固有の光吸収が起こりやすくなり望ましくない。
【0046】
酸素の比率については、他の金属元素が指定する前記範囲のいずれの比率で含有される場合であっても、完全酸化物に対する欠損率が0.089mol%以上17.084mol%以下であることが望ましい。酸素欠損量がこの範囲より小さい場合は、得られる焼結体の熱伝導率が低いため、電子ビームの照射により材料の割れが生じやすく望ましくない。また、酸素欠損量が大きい場合は、金属的性質が大きくなり、溶融性が高くなりすぎるためタブレット状での使用が困難となってしまい望ましくない。さらに、酸素欠損量が大きいと形成される膜中の酸素量が十分でなくなり、膜の光吸収を増大させるため好ましくない。
【0047】
本発明における金属酸化物焼結体を製造するための原料は、酸化物、金属、塩化物、窒化物、硼化物などいずれの状態であってもよい。焼結させる雰囲気については、真空中あるいは不活性ガス中であることが望ましいが、これらに限るものではない。
【実施例】
【0048】
これより、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例に限定されはしない。
【0049】
(実施例1)
酸化ジルコニウム粉末6molと酸化チタニウム粉末1.5molと金属チタニウム粉末2molと酸化ニオブ粉末0.9molを混合し、300kgf/cmの圧力にてタブレット状に成形した。これをアルゴンガスフロー条件において1300℃で2時間焼成し、化学量論的にZrTi3.5Nb1.819.5で表される焼結体を得て、これを真空蒸着用タブレット型材料とした。
【0050】
この焼結体に対して真空蒸着を行い、BK−7ガラス基板上に単層膜にて膜厚3/4λ(540nm)となるように成膜を行った。基板は真空槽内のドーム状ホルダーの中心位置から外周部へ向けて3箇所に設置し、加熱中および成膜中はドーム回転を行った。基板温度は300℃とし、成膜中の酸素ガス導入は行わなかった。成膜前真空度は1×10−3Paで行った。
【0051】
電子銃はJEOL製JST−10C電源を使用し、照射条件は加速電圧6kV、エミッション電流値180mAとした。
【0052】
この実験の結果、電子ビームの照射による割れやビーム照射面の陥没は起こらず、得られた膜の屈折率は2.08で安定しており、400nm〜700nmにおける光吸収率は0.1%以下であった。
【0053】
(実施例2)
酸化ジルコニウム粉末5molと金属ジルコニウム粉末0.5molと酸化チタニウム粉末3molと酸化ニオブ粉末0.5molを混合し、300kgf/cmの圧力にてタブレット状に成形した。これをアルゴンガスフロー条件において1300℃で2時間焼成し、化学量論的にZr5.2TiNbO18.5で表される焼結体を得て、これを真空蒸着用タブレット型材料とした。
【0054】
この焼結体に対して実施例1と同様の実験を行った結果、電子ビームの照射による割れやビーム照射面の陥没は起こらず、得られた膜の屈折率は2.12で安定しており、400nm〜700nmにおける光吸収率は0.1%以下であった。
【0055】
(実施例3)
酸化ジルコニウム粉末4.3molと金属ジルコニウム粉末0.1molと酸化チタニウム粉末4molと金属チタニウム粉末0.3mol%酸化ニオブ粉末0.05molを混合し、300kgf/cmの圧力にてタブレット状に成形した。これを真空中にて1200℃で3時間焼成し、化学量論的にZr4.4Ti4.3Nb0.116.75で表される焼結体を得て、これを真空蒸着用タブレット型材料とした。
【0056】
この焼結体に対して実施例1および実施例2と同様の実験を行った結果、電子ビームの照射による割れやビーム照射面の陥没は起こらず、得られた膜の屈折率は2.11で安定しており、400nm〜700nmにおける光吸収率は0.1%以下であった。
【0057】
(比較例1)
酸化ジルコニウム粉末6molと酸化チタニウム粉末3.5molと酸化ニオブ粉末0.9molを混合し、300kgf/cmの圧力にてタブレット状に成形した。これをアルゴンガスフロー条件において1300℃で2時間焼成し、化学量論的にZrTi3.5Nb0.923.5で表される焼結体を得て、これを真空蒸着用タブレット型材料とした。
【0058】
この焼結体に対して実施例1〜3と同様の実験を行った結果、電子ビームの照射によって3mm〜5mmの大きさの割れが発生した。また照射面の陥没は4mm以上に達した。得られた膜の屈折率は1.98〜2.10の範囲でばらつきが生じた。400nm〜700nmにおける光吸収率は0.1%以下であった。
【0059】
(比較例2)
酸化ジルコニウム粉末0.5molと酸化チタニウム粉末1.2molと金属チタニウム粉末1.8mol%と酸化ニオブ粉末3molを混合し、300kgf/cmの圧力にてタブレット状に成形した。これを真空中にて1200℃で3時間焼成し、化学量論的にZr0.5TiNb18.4で表される焼結体を得て、これを真空蒸着用タブレット型材料とした。
【0060】
この焼結体に対して実施例1〜3と同様の実験を行った結果、電子ビームの照射によりタブレットが溶融し、形状を保つことが出来なかった。得られた膜の屈折率は2.08〜2.22の範囲でばらつきが生じた。400nm〜700nmにおける光吸収率は0.4%であった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の酸化物焼結体の酸素以外の金属元素組成比範囲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成分としてジルコニウムとチタニウムとニオブを含み、化学量論的にZrTiNbの組成で表され、かつ酸素欠損を有する複合酸化物であり、該w、x、y、zは、3.8≦w≦7.9、0.16≦x≦5.6、0.01≦y≦1.83、13.6≦z<20.15の範囲にあり、および、該酸素欠損の量は、完全酸化に対して0.089mol%以上17.084mol%以下の範囲にあることを特徴とする光学薄膜の形成材料。
【請求項2】
請求項1に記載の材料を蒸発源として用いて、真空蒸着を行うことを特徴とする光学薄膜の形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法により形成されたことを特徴とする光学薄膜。

【図1】
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【公開番号】特開2009−62237(P2009−62237A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232739(P2007−232739)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(591111112)キヤノンオプトロン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】