説明

光導波路および電子機器

【課題】伝送効率および受発光素子等に対する光結合効率が高く、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路1は、その光入射端部1A近傍が、横断面上に線を引いたときその線上における屈折率分布がステップインデックス型になっているSI部で構成され、光入射端部1A近傍以外の部位は、屈折率分布がグレーデッドインデックス型になっているGI部で構成されている。なお、ステップインデックス型の屈折率分布とは、屈折率が階段状に変化した分布を指し、グレーデッドインデックス型の屈折率分布とは、屈折率が高い領域とその両側にそれぞれ隣接する屈折率が低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布を指す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ここで、光導波路としては、従来、一定の屈折率を有するコア部と、コア部より低い一定の屈折率を有するクラッド部とを有するステップインデックス型のものが一般的であったが、近年、屈折率が連続的に変化したグレーデッドインデックス型のものが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ポリマー基体中に屈折率調整剤を拡散させることにより、横断面において屈折率が同心円状に分布した光導波路が提案されている。このようなグレーデッドインデックス型の光導波路によれば、ステップインデックス型のものに比べ、伝送損失の低減が図られるとされている。
【0009】
ところが、グレーデッドインデックス型の光導波路は、コア部に相当する高屈折率部の横断面積が小さいため、ステップインデックス型の光導波路に比べて、光を入射させる発光素子との光結合効率が低くなり易い。このため、発光素子の位置合わせをする際には高いアライメント精度が要求されることとなり、実装容易性が低いことが問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−276735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、伝送効率および受発光素子等に対する光結合効率が高く、信頼性の高い光導波路、およびかかる光導波路を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 横断面上に線を引いたときその線上における屈折率分布がステップインデックス型になっているSI部と、グレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有していることを特徴とする光導波路。
【0013】
(2) 前記SI部と前記GI部とが接続部において一体的に接続されている上記(1)に記載の光導波路。
【0014】
(3) 前記接続部における横断面の屈折率分布は、前記接続部の一端から他端の間でステップインデックス型またはグレーデッドインデックス型の一方から他方へと徐々に変化するよう構成されている上記(2)に記載の光導波路。
【0015】
(4) 前記SI部は、当該光導波路の光入射端部に設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0016】
(5) 前記GI部は、当該光導波路の光出射端部に設けられている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路。
【0017】
(6) 前記GI部の長さは、前記SI部の長さより長い上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0018】
(7) 前記GI部における前記屈折率分布は、2つの極小値と、1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい2つの第2の極大値と、を有し、前記第2の極大値、前記極小値、前記第1の極大値、前記極小値、および前記第2の極大値がこの順で並んだ領域を含んでおり、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している分布である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(8) 当該光導波路は、帯状をなしており、
横断面上において当該光導波路の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Wがステップインデックス型になっているSI部と、グレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有し、かつ、
横断面上において当該光導波路の厚さ方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Tが、当該光導波路全体でステップインデックス型になっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0020】
(9) 当該光導波路は、帯状をなしており、
横断面上において当該光導波路の幅方向および厚さ方向に線を引いたときその線上における幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tがそれぞれステップインデックス型になっているSI部と、前記屈折率分布Wおよび前記屈折率分布Tがそれぞれグレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0021】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、伝送効率および受発光素子等に対する光結合効率が高く、信頼性の高い光通信を行うことが可能な光導波路が得られる。
【0023】
また、グレーデッドインデックス型の屈折率分布をより最適化することにより、伝送効率をさらに向上させつつパルス信号の鈍りを抑制することができる。さらに、複数のコア部を形成して多チャンネル化した際に、クロストークを確実に抑制し得る光導波路が得られる。
また、このような光導波路を用いることにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示すY−Y線断面図である。
【図3】図3(a)は、図1のX1−X1線断面図であり、図3(b)は、X1−X1線断面図の幅方向に引かれた中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図であり、図3(c)は、X1−X1線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図4】図4(a)は、図1のX2−X2線断面図であり、図4(b)は、X2−X2線断面図の幅方向に引かれた中心線C3上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図であり、図4(c)は、X2−X2線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C4上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図5】GI部のコア部に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【図6】図6(a)は、第2実施形態についての図1に示すX2−X2線断面図であり、図6(b)は、X2−X2線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C4上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【図7】図6に示す屈折率分布Tの他の構成例である。
【図8】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図9】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図10】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図11】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図12】図1に示す光導波路の第1の製造方法を説明するための図である。
【図13】GI部形成用組成物で構成された層において、照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【図14】SI部形成用組成物で構成された層において、照射領域と未照射領域との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【図15】図1に示す光導波路の第3の製造方法を説明するための図である。
【図16】図6に示す光導波路の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すY−Y線断面図である。なお、以下の説明では、図1、2中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1、2は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0028】
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。ここでは、一例として図1に示す光導波路1の光入射端部1Aから光を入射し、光出射端部1Bから光を出射する場合について説明する。
【0029】
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順で積層してなるものであり、細長い帯状をなしている。
【0030】
また、コア層13中には、光入射端部1Aから光出射端部1Bにかけて並列して延在する2つのコア部14が形成されている。コア層13のうち、コア部14以外の部分は側面クラッド部15である。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
【0031】
このような光導波路1のうち、光入射端部1A近傍では、その屈折率分布がステップインデックス型になっている。具体的には、光入射端部1A近傍では、横断面上に線を引いたとき、その線上における屈折率分布が階段状(ステップ状)に変化しており、この屈折率分布に基づいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14になっており、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、12または側面クラッド部15になっている。本発明では、このように屈折率分布がステップインデックス型になっている部分を光導波路1の長手方向のいずれかの位置(本実施形態では光入射端部1A近傍)に有しており、この部分をSI部(図1、2の符号SI)という。なお、本発明におけるSI部とは、横断面上のうち光導波路1の幅方向に引いた線上における屈折率分布Wと、厚さ方向に引いた線上における屈折率分布Tの双方が、階段状に変化した分布、すなわちステップインデックス型の分布になっている部位のことをいう。
【0032】
一方、光導波路1のうち、光入射端部1A近傍以外では、その屈折率分布がグレーデッドインデックス型になっている。具体的には、光入射端部1A近傍以外では、横断面上に線を引いたとき、その線上における屈折率分布が、屈折率が高い領域とその両側にそれぞれ隣接する屈折率が低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。そして、この屈折率分布に基づいて相対的に屈折率が高い領域に対応する部分が各コア部14、相対的に屈折率が低い領域に対応する部分がクラッド層11、12または側面クラッド部15になっている。本発明では、このように屈折率分布がグレーデッドインデックス型になっている部分を光導波路1の長手方向のいずれかの位置(本実施形態では光入射端部1A近傍以外)に有しており、この部分をGI部(図1、2の符号GI)という。なお、本発明におけるGI部とは、横断面上のうち光導波路1の幅方向に引いた線上における屈折率分布Wと、厚さ方向に引いた線上における屈折率分布Tの双方または少なくとも一方が、上述した屈折率が連続的に変化している分布、すなわちグレーデッドインデックス型の分布になっている部位のことをいう。したがって、GI部は、屈折率分布Wと屈折率分布Tのいずれか一方が、ステップインデックス型の分布になっている形態も含んでいる。本実施形態では、一例として、屈折率分布Wはグレーデッドインデックス型の分布になっており、屈折率分布Tはステップインデックス型の分布になっている形態について説明する。
【0033】
1つの光導波路1中に上記のようなSI部とGI部とが形成されていることにより、光導波路1は、受発光素子や光ファイバー等との光結合効率に優れたものとなる。
【0034】
以下、光導波路1の各部について詳述する。
本実施形態は、上述したように、光入射端部1A近傍に位置するSI部と、それ以外に位置するGI部とを有している。
【0035】
(SI部)
このうち、SI部では、幅方向の屈折率分布Wと厚さ方向の屈折率分布Tの双方が、屈折率が階段状に変化する分布(ステップインデックス型の分布)になっている。屈折率が階段状に変化する分布とは、相対的に屈折率が高くかつほぼ一定の値をとる領域と、相対的に屈折率が低くかつほぼ一定の値をとる領域とを有する分布であり、入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
【0036】
図3(a)は、図1のX1−X1線断面図であり、図3(b)は、X1−X1線断面図の幅方向に引かれた中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図であり、図3(c)は、X1−X1線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【0037】
図3(b)に示す屈折率分布Wは、前述したように、相対的に屈折率が高くかつほぼ一定の値をとる高屈折率領域W2、W4と、相対的に屈折率が低くかつほぼ一定の値をとる低屈折率領域W1、W3、W5とを有している。そして、屈折率分布Wは、左側から低屈折率領域W1、高屈折率領域W2、低屈折率領域W3、高屈折率領域W4、低屈折率領域W5がこの順で並ぶよう分布している。このため、高屈折率領域の左右の両側に低屈折率領域が隣接することとなり、この界面において光の反射が生じる。したがって、高屈折率領域W2、W4に入射された光は、隣接する低屈折率領域W1、W3、W5との界面で反射を繰り返すこととなり、光導波路1の光入射端部1Aから光出射端部1Bへの信号光の伝搬が可能になる。そして、屈折率の大小関係に基づいて、各低屈折率領域W1、W3、W5に対応する部分がそれぞれ側面クラッド部15となり、各高屈折率領域W2、W4に対応する部分がそれぞれコア部14となる。
【0038】
一方、図3(c)に示す屈折率分布Tは、前述したように、相対的に屈折率が高くかつほぼ一定の値をとる高屈折率領域T2と、相対的に屈折率が低くかつほぼ一定の値をとる低屈折率領域T1、T3とを有している。そして、屈折率分布Tは、下側から低屈折率領域T1、高屈折率領域T2、低屈折率領域T3がこの順で並ぶよう分布している。このため、高屈折率領域の上下の両側に低屈折率領域が隣接することとなり、この界面において光の反射が生じる。したがって、高屈折率領域T2に入射された光は、隣接する低屈折率領域T1、T3との界面で反射を繰り返すこととなり、光導波路1の光入射端部1Aから光出射端部1Bへの信号光の伝搬が可能になる。そして、屈折率の大小関係に基づいて、各低屈折率領域T1、T3に対応する部分がクラッド層11、12となり、高屈折率領域T2に対応する部分がコア部14となる。
【0039】
なお、SI部は、光導波路1の光路に沿って延在しているが、上記のような屈折率分布W、Tは、それぞれSI部の光路上においてほぼ同じ分布になるよう設定されている。
【0040】
コア部14の屈折率は、クラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)の屈折率より高ければよく、その差は特に限定されないものの、クラッド部の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝搬する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0041】
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をn、クラッド部の屈折率をnとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|n/n−1|×100
【0042】
以上のような屈折率分布Wに伴い、SI部のコア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが設けられている。同様に、屈折率分布Tに伴い、SI部には、前記コア部14と、その各上下面に隣接するクラッド層11、12とが設けられている。
【0043】
なお、このようなSI部では、コア部14における幅方向および厚さ方向の屈折率はほぼ一定であるため、信号光が伝搬する幅が広く、厚さも厚い。このため、SI部が入射側端面に露出している場合、発光素子からその光導波路1への光入射効率が高くなる。これは、SI部では、信号光が伝搬可能な面積が広いため、受光可能な面積がGI部に比べて広くなり、相対的に光入射効率が高くなるからである。その結果、光導波路1と他の光学素子との光結合効率を高めることができる。
【0044】
また、SI部が入射側端面に露出している場合、発光素子からの信号光を受光可能な面積が相対的に大きくなるため、光導波路1に対する発光素子の位置ズレの許容量をより大きくすることができる。この場合、光導波路1を実装する際に、それほど高いアライメント精度が必要とされないため、実装容易性を高めることができる。
【0045】
(GI部)
GI部では、幅方向の屈折率分布Wが、屈折率が連続的に変化する分布(グレーデッドインデックス型の分布)になっている一方、厚さ方向の屈折率分布Tは、屈折率が階段状に変化する分布(ステップインデックス型の分布)になっている。
【0046】
図4(a)は、図1のX2−X2線断面図であり、図4(b)は、X2−X2線断面図の幅方向に引かれた中心線C3上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図であり、図4(c)は、X2−X2線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C4上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【0047】
図4(b)に示す屈折率分布Wは、屈折率が相対的に高い領域とその両側にそれぞれ隣接する低い領域とを有し、かつ屈折率が連続的に変化している分布になっている。図4(a)に示すX2−X2線断面図のうち、図4(b)に示す屈折率分布Wの屈折率が高い領域に対応する部分がコア部14になっており、屈折率が低い領域に対応する部分が側面クラッド部15になっている。グレーデッドインデックス型の分布は、コア部14に屈折率の極大値が位置し、そこから両側にかけて裾を引くように屈折率が連続的に低下する分布を含んでいればよいが、その裾の先に極小値や別の極大値(前記極大値よりも小さな極大値)を含むような分布もグレーデッドインデックス型の分布の一種である。このような分布が形成されたコア層13に入射された光は、この極大値近傍に集中し易くなる。このため、コア部14を伝搬する信号光はより中心部に閉じ込められることとなり、側面クラッド部15側への漏出が抑制される。その結果、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
【0048】
図4(b)に示す屈折率分布Wは、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む分布になっている。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の高い極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の低い極大値(第2の極大値)とが存在している。
【0049】
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の高い極大値Wm2、Wm4が存在している。
【0050】
GI部では、図4に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間に、相対的に屈折率の高い極大値Wm2が位置していることから、この領域に対応する部分がコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間にも極大値Wm4が位置していることから、この領域に対応する部分もコア部14となる。なお、図4では、各コア部14のうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間に位置しているのをコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間に位置しているのをコア部142とする。
【0051】
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間の領域、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14の側面に隣接する領域であることから、この領域に対応する部分がそれぞれ側面クラッド部15となる。なお、図4では、各側面クラッド部15のうち、極小値Ws1の左側に位置しているのを側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間に位置しているのを側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側に位置しているのを側面クラッド部153とする。
【0052】
このように屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有している。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられる。本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値とが交互に並ぶ領域を有していればよい。つまり、コア部14の数に応じて第1の極大値の数が同数に設定され、さらにそれに応じて第2の極大値や極小値の数が決まることとなる。例えばコア部14がn個である場合には、屈折率分布Wは、第1の極大値をn個、極小値を2n個、第2の極大値をn+1個有していればよい。なお、このような極大値と極小値に対する一定の規則は、屈折率分布Wの全体に適用されている必要はなく、屈折率分布Wの一部のみに適用されていればよい。
【0053】
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値が第1の極大値や第2の極大値より低く、第2の極大値が第1の極大値より低いという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0054】
また、GI部は、光導波路1の光路に沿って延在しているが、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の光路上においてほぼ同じ分布になるよう設定されている。
【0055】
以上のような屈折率分布Wに伴い、GI部のコア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
【0056】
2つのコア部141、142の平均屈折率は、3つの側面クラッド部151、152、153の平均屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。
【0057】
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間には、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各コア部14と各側面クラッド部15との境界付近では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが確実に抑制されることとなる。その結果、GI部では伝送損失を特に小さくすることができる。
【0058】
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、SI部に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0059】
さらに、上述したような屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い部分を信号光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、信号光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、GI部では光通信の品質をより高めることができる。
【0060】
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、かつ微分可能な曲線であるということである。
【0061】
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理による制約から、コア部14の平均屈折率と側面クラッド部15の平均屈折率との間で十分な屈折率差を形成することが難しいが、本発明によれば、平均屈折率の差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造されるGI部において、本発明は特にその効果を発揮する。
【0062】
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図4に示すように、極小値Ws1とWs2との間(コア部141)および極小値Ws3とWs4との間(コア部142)に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、信号光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0063】
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1の位置と極小値Ws2の位置との中点から、その両側にコア部141の幅の30%の距離の領域である。
【0064】
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0065】
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
【0066】
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図4に示すように、極小値Ws1の左側(側面クラッド部151)、極小値Ws2と極小値Ws3との間(側面クラッド部152)、極小値Ws4の右側(側面クラッド部153)に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の信号光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
【0067】
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
【0068】
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から、それぞれに隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かって、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保されることとなり、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができるため、前述したコア部141、142からの信号光の漏出をより確実に抑制することができる。
【0069】
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも相対的に小さいので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が若干高くなっているため、側面クラッド部151、152、153はわずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した信号光を閉じ込めることができ、漏出した信号光が他のコア部へと波及するのを防止することを可能にする。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、各コア部14間のクロストークを抑制することができる。
【0070】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0071】
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0072】
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図4(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の幅方向の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0073】
また、GI部における屈折率分布Wは、図4(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍、極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極小値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。
【0074】
なお、上述したような屈折率分布Wが形成されたGI部では、複数のコア部141、142のうち、一方のコア部に光を入射したとき、他方のコア部への光の漏出が抑制される。すなわち、GI部ではクロストークを確実に抑制することができる。
【0075】
図5は、GI部のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
【0076】
GI部のコア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端面の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、GI部では、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにGI部では、光を入射したコア部141に隣り合うコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致するため、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなる。その結果、GI部は、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止することができる。
【0077】
このような出射光の強度分布は、GI部における屈折率分布Wの特徴的な分布形状に起因したものであると考えられる。すなわち、屈折率分布Wが、極小値とそれに隣接する高さの異なる2種類の極大値とを有し、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な分布になっているため、従来であればコア部142に漏れ出ていた光を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせ、その結果、コア部142には強度分布の極小値が位置することになったと考えられる。このような理由から、GI部においてクロストークが抑えられることとなり、このGI部を備える光導波路1は、クロストークの発生が抑制され、光通信の品質を高め得るものとなる。
【0078】
また、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
【0079】
なお、上記のような出射光の強度分布は、屈折率分布Wが上記のような分布になっていれば必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、あるいは極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
【0080】
また、図4(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
【0081】
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
【0082】
一方、図4(c)に示す屈折率分布Tは、SI部における屈折率分布Tと同様である。すなわち、相対的に屈折率が高くかつほぼ一定の値をとる高屈折率領域T2と、相対的に屈折率が低くかつほぼ一定の値をとる低屈折率領域T1、T3とを有している。そして、図4(c)の下側から低屈折率領域T1、高屈折率領域T2、低屈折率領域T3がこの順で並ぶよう分布している。各低屈折率領域T1、T3に対応する部分がクラッド層11、12となり、高屈折率領域T2に対応する部分がコア部14となる。
【0083】
このようなGI部では、コア部14における幅方向の屈折率は中央部ほど高くなっているため、信号光が伝搬する幅が狭い一方、中央部に信号光が集中し易い。このため、GI部が出射側端面に露出している場合、その光導波路1から受光素子への光入射効率が高くなる。その結果、光導波路1と他の光学素子との光結合効率を高めることができる。
【0084】
なお、本明細書では、説明の便宜上、コア層13をコア部14と側面クラッド部15とに分けて説明しているが、上述したように屈折率分布Wの変化は連続的であり、それとともに各部の界面ではその組成も連続的に変化しているため、各層の境界は明瞭にはならず、視覚上で境界を識別することができない場合もある。
【0085】
(SI部とGI部との接続部)
上述したようなSI部とGI部とは、接続部5において接続されている。この接続部5は、SI部とGI部とを個別に製造した後、両者を結合する方法で形成することもできるが、SI部とGI部とを一体的に製造する方法で形成するのが好ましい。これにより、接続部5では、SI部とGI部とが一体的に接続されることとなる。その結果、接続部5の機械的強度が高く、かつSI部とGI部との光結合効率に優れた光導波路1が得られる。
【0086】
ここで、接続部5における屈折率分布Wおよび屈折率分布Tは、SI部とGI部との間で徐々に変化するよう接続されているのが好ましい。これにより、SI部からGI部へと信号光が移動する際の伝送効率をより高めることができる。すなわち、接続部5において屈折率分布が不連続的に接続されていると、その箇所で信号光の散乱、反射等が生じ、信号光が減衰するおそれがある。したがって、SI部とGI部とを個別に製造し、これらを接着するようにして光導波路1を製造した場合、本発明の効果が得られるものの、接続部における光結合損失がやや大きくなるおそれがある。
【0087】
なお、接続部5において屈折率分布が徐々に変化している場合、接続部5の長さは、光導波路1の全長に応じて適宜設定される。具体的には、光導波路1の全長の0.5〜20%程度であるのが好ましく1〜15%程度であるのがより好ましい。接続部5の長さを前記範囲内に設定することにより、接続部5における屈折率分布の変化割合が比較的緩やかになるため、SI部とGI部との光結合性の低下を確実に抑制することができ、かつ、接続部5が長くなり過ぎて光導波路1の全体の伝送効率に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0088】
また、図1、2では、GI部の長さが、SI部の長さより長くなるよう構成されている。これにより、光導波路1全体の伝送効率が低下するのを防止することができる。これは、SI部は信号光の入射効率が高い一方、伝送効率についてはGI部に比べて劣るため、少なくとも光入射端部1A近傍がSI部であれば、それ以外はGI部にした方が全体の伝送効率の観点から有効であるからである。具体的には、SI部の長さは、光導波路1全体の0.5〜20%程度であるのが好ましく、1〜15%程度であるのがより好ましい。SI部の長さを前記範囲内とすることにより、SI部における信号光の入射効率と、GI部における信号光の伝送効率および他の光学デバイスとの結合効率とを高度に両立することができる。
【0089】
以上のように本発明の光導波路は、SI部とGI部とを備えることにより、伝送効率と他の光学素子との光結合効率とを高度に両立することができる。
【0090】
なお、SI部、GI部のいずれにおいても、図1では、コア部14は平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。
【0091】
また、図1に示すコア部14の横断面形状は、図1に示すような正方形、長方形のような四角形(矩形)に限らず、例えば、真円、楕円、長円のような円形、三角形、五角形、六角形のような多角形であってもよい。
【0092】
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0093】
上述したようなSI部およびGI部では、コア層13の構成材料(主材料)として、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよく、未重合のモノマーを含んでいてもよい。
【0094】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0095】
一方、SI部およびGI部では、クラッド層11、12の構成材料として、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料が挙げられ、特にノルボルネン系ポリマーが好ましく用いられる。
【0096】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
【0097】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0098】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。両者の構成材料として同じものを用いることにより、界面の密着性を高めることができる。
【0099】
また、クラッド層11、12は必要に応じて設ければよく、いずれか一方または双方を省略してもよい。この場合、コア層13の表面は大気(空気)に露出することとなるが、空気の屈折率は十分に低いため、この空気がクラッド層11、12の機能を代替することとなり、信号光の伝搬は可能である。
【0100】
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
【0101】
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0102】
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
【0103】
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
【0104】
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0105】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0106】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0107】
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
【0108】
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
【0109】
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
【0110】
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
【0111】
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
【0112】
また、本実施形態では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の積層体からなる光導波路1について説明したが、これらが一体的に形成されたものでもよい。
【0113】
また、本実施形態では、コア層13が2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0114】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0115】
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0116】
前述した第1実施形態では、GI部において、横断面上の幅方向に引いた線上における屈折率分布Wのみグレーデッドインデックス型の分布であり、厚さ方向に引いた線上における屈折率分布Tはステップインデックス型の分布であったが、本実施形態では、GI部において、屈折率分布Wと屈折率分布Tの双方でグレーデッドインデックス型の分布になっている。それ以外は、第1実施形態と同様である。
【0117】
図6(a)は、第2実施形態についての図1に示すX2−X2線断面図であり、図6(b)は、X2−X2線断面図の厚さ方向に引かれた中心線C4上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。
【0118】
図6(b)に示す屈折率分布Tは、図4(c)に示す屈折率分布Tと異なる。以下、この分布について特に説明する。
【0119】
図6(b)に示す屈折率分布Tは、GI部の厚さ方向のほぼ中心に位置し、屈折率がほぼ一定である高屈折率領域Tと、高屈折率領域Tの厚さ方向の両側に位置し、厚さ方向の両側に向かって屈折率が連続的に低下している中屈折率領域Tと、各中屈折率領域Tの厚さ方向の両側に位置し、屈折率がほぼ一定である低屈折率領域Tと、を有している。すなわち、屈折率分布Tのうち、高屈折率領域Tにおける屈折率は相対的に高く、低屈折率領域Tにおける屈折率は高屈折率領域Tより相対的に低く、中屈折率領域Tでは、高屈折率領域Tの屈折率と低屈折率領域Tの屈折率とをつなぐように屈折率が連続的に変化している。
【0120】
このような屈折率分布Tのうち、高屈折率領域Tおよび中屈折率領域Tに対応するのがコア部14であり、低屈折率領域Tに対応するのが各クラッド層11、12である。
【0121】
換言すれば、コア部14は、高屈折率領域Tに対応する高屈折率層と、中屈折率領域Tに対応する中間層により構成されており、各クラッド層11、12は、それぞれ、低屈折率領域Tに対応する低屈折率層により構成されている。
【0122】
このような屈折率分布Tを有するGI部では、中屈折率領域Tにおいて、コア部14に入射された光が、その光路を徐々にコア部14の中心軸側に変更しつつ伝搬される、という挙動を示す。このため、入射光は、コア部14の中心軸に沿って伝搬し、各クラッド層11、12側には漏出し難くなる。その結果、このような屈折率分布Tを有するGI部では、伝送損失が抑えられることとなる。
【0123】
ここで、図6に示す屈折率分布Tでは、高屈折率領域Tが、コア部14の厚さ方向の中心部に位置している。これにより、コア部14を伝搬する光は、コア部14の厚さ方向の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率がより低くなる。その結果、コア部14の伝送損失をより低減することができる。
【0124】
また、このような屈折率分布Tは、特に、上述した光導波路1を複数枚積層してなる光導波路において、その層間(光導波路同士の間)におけるクロストークの発生を確実に防止する作用をもたらす。具体的には、1層目のコア部14に光を入射したとき、その光が2層目のコア部14に侵入して混信を招くことが確実に防止される。したがって、図6に示すGI部は、厚さ方向の多チャンネル化、高密度化を容易にするものである。
【0125】
なお、コア部14に対応する領域の中心部とは、コア部14の厚さ方向の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域である。
【0126】
また、高屈折率領域Tの位置は、必ずしもコア部14に対応する領域の中心部でなくてもよく、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。これにより、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0127】
なお、コア部14の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域である。
【0128】
また、屈折率分布Tのうち、高屈折率領域Tにおける屈折率nと、低屈折率領域T(クラッド層11およびクラッド層12)における屈折率nとの屈折率差の割合(屈折率nに対する割合)は、できるだけ大きいほどよいが、好ましくはクラッド層11、12の屈折率の0.5%以上とされ、より好ましくは0.8%以上とされる。なお、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝送する効果が低下する場合があり、一方、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0129】
なお、屈折率nと屈折率nとの前記屈折率差の割合は、次式で表わされる。
屈折率差の割合(%)=|n/n−1|×100
【0130】
また、高屈折率領域Tや低屈折率領域Tでは、屈折率がほぼ一定であるが、具体的には、各領域における平均屈折率からのずれ量が、平均屈折率の10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
【0131】
以上のような屈折率分布Tに基づいて、光導波路1は、クラッド層11、コア層13(コア部14)およびクラッド層12の3層に分けられている。
【0132】
なお、本明細書では、説明の便宜上、光導波路1を上記3層に分けて説明しているが、上述したように屈折率分布Tの変化は連続的であり、それとともに3層の界面ではその組成も連続的に変化しているため、各層の境界は明瞭にはならず、視覚上で境界を識別することができない場合もある。
【0133】
(他の構成例)
また、高屈折率領域Tにおける屈折率や低屈折率領域Tにおける屈折率は、それぞれ一定でなくてもよく、屈折率分布T全体が連続的に変化していてもよい。
【0134】
図7は、図6に示す屈折率分布Tの他の構成例である。
以下、図7に示す屈折率分布Tについて説明するが、図7に示すGI部は屈折率分布Tの形状が異なる以外、図6に示すGI部と同様である。
【0135】
図7に示す屈折率分布Tは、その中心部に位置する極大値Tmと、極大値Tmの両側にそれぞれ位置する極小値Ts1、Ts2を有している。なお、説明の便宜上、図7に示す極小値のうち、極大値Tmの下側に位置する極小値をTs1とし、上側に位置する極小値をTs2とする。
【0136】
光導波路1では、図7に示すように、極小値Ts1と極小値Ts2との間の領域に極大値Tmを含んでおり、かつ、この領域がコア部14となる。
【0137】
一方、極小値Ts1の下側の領域がクラッド層11となり、極小値Ts2の上側の領域がクラッド層12となる。
【0138】
すなわち、屈折率分布Tは、極小値、極大値、極小値がこの順で並ぶ領域を有している。
【0139】
なお、この領域は、光導波路1が積層される数に応じて繰り返し設けられ、例えば光導波路1を2層積層した場合、屈折率分布Tでは、極小値4つと極大値3つが交互に並ぶこととなる。この場合、極大値については、相対的に大きい第1の極大値と、相対的に小さい第2の極大値が、交互に並んでいるのが好ましい。すなわち、前述したGI部における屈折率分布Wと同様、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値・・・のように並んでいるのが好ましい。
【0140】
また、これらの複数の極小値、複数の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ズレ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
【0141】
ここで、極小値Ts1、Ts2は、それぞれクラッド層11、12における平均屈折率TA未満である。これにより、コア部14と各クラッド層11、12との間に、各クラッド層11、12よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ts1、Ts2の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14から各クラッド層11、12への光の漏れが確実に抑制されることとなる。その結果、伝送損失の特に小さいGI部が得られる。
【0142】
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、屈折率が階段状に変化している屈折率分布を有するSI部に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
【0143】
さらに、上述したような各極小値Ts1、Ts2を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、GI部では光通信の品質をより高めることができる。
【0144】
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、かつ微分可能な曲線であるということである。
【0145】
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tmは、図7に示すようにコア部14の中でもその厚さの中心部に位置している。これにより、コア部14では、信号光がコア部14の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
【0146】
なお、コア部14の厚さの中心部とは、極小値Ts1と極小値Ts2の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域である。
【0147】
また、極大値Tmの位置は、必ずしも中心部でなくても、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
【0148】
なお、コア部14の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域である。
【0149】
一方、屈折率分布Tでは、各クラッド層11、12において、コア部14との界面近傍以外で最も高く、コア部14との界面近傍で最も低くなるよう屈折率が変化している。これにより、コア部14中の極大値Tmと、各クラッド層11、12中における屈折率の高い領域とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部14中の伝送光が、各クラッド層11、12中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部14の伝送損失を低減することができる。
【0150】
なお、各クラッド層11、12におけるコア部14との界面近傍とは、この界面から内側に、各クラッド層11、12の厚さの5%の距離の領域である。
【0151】
また、各クラッド層11、12における平均屈折率TAは、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12における最大値との中点で近似することができる。
【0152】
また、前述したように複数の光導波路1を積層する場合には、相対的に大きい第1の極大値がコア部中に位置し、相対的に小さい第2の極大値はクラッド層中に位置することとなる。この場合、好ましくは、第2の極大値は、クラッド層の厚さの中央部に位置しているのが好ましい。これにより、コア部中に位置する第1の極大値と、クラッド層中に位置する第2の極大値との離間距離が、最大限確保され、しかもコア部から漏れ出た光が、他のコア部に侵入しないよう、クラッド層中に閉じ込めることができるようになる。これにより、複数の光導波路1を積層した場合でも、層間におけるクロストークを確実に抑制することができる。
【0153】
なお、極小値Ts1、Ts2は、前述したように、各クラッド層11、12の平均屈折率TA未満であるが、両者の差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2とクラッド層11、12の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、各クラッド層11、12は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、各クラッド層11、12における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、各クラッド層11、12における光伝送性が大き過ぎて、コア部14の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0154】
また、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部14中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
【0155】
また、コア部14における屈折率分布Tは、横軸にコア部14の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Tm近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは上に凸(図7では右に凸)の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。屈折率分布Tがこのような形状をなしていると、コア部14における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
【0156】
また、屈折率分布Tは、極小値Ts1近傍および極小値Ts2近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であればよいが、好ましくは下に凸(図7では左に凸)の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)形状とされる。
【0157】
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
【0158】
≪第1の製造方法≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態を製造する第1の方法(第1の製造方法)について説明する。
【0159】
図8〜12は、それぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図8〜12中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0160】
光導波路1は、クラッド層11と、コア層13と、クラッド層12をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
【0161】
光導波路1の第1の製造方法は、[1]支持基板951上にSI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902をそれぞれ塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0162】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とを用意する。
【0163】
このうち、GI部形成用組成物902は、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)とを含有するものである。このようなGI部形成用組成物902は、活性放射線の照射により、GI部形成用組成物902中において少なくともモノマーの反応が生じ、それに伴ってモノマーが移動することで屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、GI部形成用組成物902は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0164】
一方、SI部形成用組成物901は、活性放射線の照射により分子構造が変化し、屈折率が変化するポリマー915を含むものである。また、必要に応じて添加剤920を含む。このようなSI部形成用組成物901は、活性放射線の照射により、ポリマー915の分子構造が変化し、それに伴って屈折率が変化する材料である。すなわち、SI部形成用組成物901は、活性放射線の照射の有無または照射量の大小によってポリマー915の分子構造に差を生じさせ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
【0165】
次に、用意したSI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とをそれぞれ支持基板951上に塗布して液状被膜を形成する。塗布する際には、支持基板951上の隣り合う位置に、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とをそれぞれ供給する(図8(a)参照)。この際、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とが接触していてもよいが、接触しないように供給するのが好ましい。これにより、両者が混じり合う範囲を容易に調整することができる。
【0166】
その後、ブレード905を矢印のように走査することにより、供給した各組成物901、902を塗り広げる(図8(b)参照)。ブレード905は、供給されたSI部形成用組成物901を、隣り合って供給されたGI部形成用組成物902側に塗り広げつつ走査する。その結果、SI部形成用組成物901は、その一部がGI部形成用組成物902と混ざり合い、両者は1つの液状被膜を形成する。その後、支持基板951をレベルテーブルに置いて、液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る(図8(c)参照)。なお、層910のうち、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とが混ざり合った部分は、最終的に接続部5となる。このようにして形成された接続部5は、SI部とGI部とが一体的に接続されたものとなる。
【0167】
ブレード905としては、例えば、ドクターブレード、各種スキージ、各種ローラー等が挙げられる。
【0168】
また、接続部5となる部分において、ブレード905を複数回往復させるようにしてもよいが、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とはあまり均一にならない方が好ましい。これにより、接続部5には、2つの組成物の混合比率に連続的な勾配ができ易くなり、それに伴って最終的には、接続部5の一端から他端にかけて屈折率分布が徐々に変化する構造が形成される。かかる観点から、ブレード905の走査回数は、3往復以下であるのが好ましく、2往復以下であるのがより好ましい。
なお、ブレード905の走査方向は、上記の方向と反対であってもよい。
【0169】
また、ブレード905の走査方向は、上記のように光導波路1におけるコア部14の延在方向(信号光の伝搬方向)に対して平行な方向であるのが好ましいが、これ以外の方向、例えばコア部14の延在方向と直交する方向であってもよい。
【0170】
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0171】
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0172】
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、GI部形成用組成物902中の添加剤920は、ポリマー915に対して実質的に一様かつランダムに分散している。
【0173】
層910の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜300μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましい。
【0174】
(ポリマー)
ポリマー915は、コア層13のベースポリマーとなるものである。
【0175】
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0176】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、SI部形成用組成物901中、GI部形成用組成物902中、および層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
【0177】
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0178】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層13を得ることができる。
【0179】
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
【0180】
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
【0181】
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0182】
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0183】
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0184】
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0185】
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記構造式Bで表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
【0186】
【化1】

【0187】
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する構造式Cで表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
【0188】
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
【0189】
中でも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0190】
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
【0191】
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
【0192】
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0193】
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0194】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0195】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0196】
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
【0197】
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
【0198】
【化2】

(式(1)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0199】
式(1)のノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
【0200】
【化3】

【0201】
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
【0202】
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH=CH−CH−OH)を高温高圧下で反応させる。
【0203】
【化4】

【0204】
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
【0205】
【化5】

【0206】
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
【0207】
式(1)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0208】
【化6】

(式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0209】
式(2)のノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0210】
なお、式(2)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
【0211】
【化7】

(式(3)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0212】
式(3)の樹脂は、Rを有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0213】
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、Xがメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
【0214】
【化8】

(式(4)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p/(q+r)が20以下である。)
【0215】
式(4)の樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0216】
【化9】

(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
【0217】
【化10】

(式(6)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
【0218】
【化11】

(式(7)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
【0219】
なお、式(4)で表されるノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
【0220】
【化12】

(式(8)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、Xは、酸素原子またはメチレン基を表し、Xは、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。)
【0221】
式(8)の樹脂は、Rを有するノルボルネンと、側鎖に−(CH−X−X(R3−j(Ar)を含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0222】
なお、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
【0223】
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基、Rがメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0224】
【化13】

(式(9)におけるR、p、q、iは、式(8)と同じである。)
【0225】
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、Xがメチレン基、Xが炭素原子、Arがフェニル基、Rが水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
【0226】
【化14】

(式(10)において、R10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p/qは20以下である。)
【0227】
また、p/q〜p/q、p/q、p/qまたはp/(q+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
【0228】
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン等であってもよい。
【0229】
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0230】
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
【0231】
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
【0232】
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
【0233】
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
【0234】
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0235】
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
【0236】
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
【0237】
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
【0238】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0239】
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
【0240】
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0241】
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0242】
なお、コア層13の各部の屈折率は、各部におけるポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率の相対的な大小関係とその存在比率に応じて決定されるため、用いるモノマーの種類に応じてポリマー915の屈折率を適宜調整するようにしてもよい。
【0243】
例えば、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
【0244】
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
【0245】
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
【0246】
また、SI部形成用組成物901が含むポリマー915は、特に、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有している。離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。なお、GI部形成用組成物902も離脱性基を有するポリマー915を含んでいてもよい。
【0247】
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
【0248】
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
【0249】
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0250】
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
【0251】
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、Xが酸素原子、Xがシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
【0252】
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−Xの部分で脱離する場合がある。
【0253】
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
【0254】
【化15】

【0255】
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することでクラッド層11、12や基材に対して密着性に優れたコア層13が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
【0256】
【化16】

(式(31)において、p/(q+r)は、20以下である。)
【0257】
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH−O−Si(CH)(Ph)を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
【0258】
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
【0259】
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に離脱性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
【0260】
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
【0261】
(添加剤)
GI部形成用組成物902中に添加される添加剤920は、モノマーと重合開始剤とを含んでいる。また、SI部形成用組成物901中に添加される添加剤920は、モノマーおよび重合開始剤を含まない以外、GI部形成用組成物902と同様の組成にすることができる。
【0262】
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0263】
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0264】
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
【0265】
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
【0266】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
【0267】
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が屈折率分布Wの極小値を形成し、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が屈折率分布の極大値を構成する。
【0268】
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
【0269】
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0270】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13(光導波路1)が得られる。
【0271】
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
【0272】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
【0273】
【化17】

【0274】
【化18】

【0275】
【化19】

【0276】
【化20】

【0277】
【化21】

【0278】
【化22】

【0279】
【化23】

【0280】
【化24】

(式(18)においてnは0以上、3以下である。)
【0281】
【化25】

【0282】
【化26】

【0283】
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0284】
さらには、ポリマー915の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
【0285】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
【0286】
【化27】

【0287】
【化28】

(式(33)において、nは1または2である)
【0288】
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
【0289】
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
【0290】
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
【0291】
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
【0292】
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
【0293】
【化29】

【0294】
【化30】

【0295】
【化31】

【0296】
【化32】

【0297】
【化33】

【0298】
【化34】

【0299】
さらに、モノマーとしては、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
【0300】
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0301】
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、上記成分Bを含むモノマーを「第2モノマー」とすると、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
【0302】
なお、第2モノマーに相当するモノマーには、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーやビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの第2モノマーを用いることにより、第1モノマーとポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
【0303】
このような第2モノマーの具体例としては、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
【0304】
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Dで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
【0305】
【化35】

【0306】
【化36】

[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R12〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R12およびR13のいずれか一方、R14およびR15のいずれか一方は存在しない。]
【0307】
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R12およびR13、R14およびR15が、それぞれ炭素数1〜10(C〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
【0308】
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0309】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0310】
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0311】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0312】
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
【0313】
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
【0314】
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
【0315】
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものであり、モノマーの反応性を考慮し、必要に応じて添加される。
【0316】
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
【0317】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0318】
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
【0319】
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
【0320】
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
【0321】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
【0322】
なお、モノマーの反応性が著しく高い場合には、重合開始剤の添加を省略してもよい。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
【0323】
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0324】
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0325】
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0326】
増感剤の含有量は、GI部形成用組成物902中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
【0327】
なお、SI部形成用組成物901やGI部形成用組成物902には、添加剤920として上記の他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0328】
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
【0329】
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図9参照)。
【0330】
以下では、GI部形成用組成物902中に含まれるモノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。
【0331】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
【0332】
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、GI部においては両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
【0333】
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0334】
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
【0335】
また、図9においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
【0336】
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0337】
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
【0338】
また、活性放射線930の照射量は、0.05〜9J/cm程度であるのが好ましく、0.1〜6J/cm程度であるのがより好ましく、0.1〜3J/cm程度であるのがさらに好ましい。
【0339】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、層910のうち、GI部形成用組成物902を含んでいる部分では、照射領域925において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域925においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域925におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940中のモノマーが照射領域925に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴って照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0340】
図13は、GI部形成用組成物902で構成された層910において、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0341】
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域940の屈折率が高くなるとともに、照射領域925の屈折率は低くなる(図13(a)参照)。
【0342】
モノマーの拡散移動は、照射領域925においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域940全体のモノマーが一斉に照射領域925に向かうのではなく、照射領域925に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域940の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図13(a)に示すように、照射領域925と未照射領域940との境界を挟んで、未照射領域940側に高屈折率部H、照射領域925側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
【0343】
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域925では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。
【0344】
一方、未照射領域940では、重合開始剤やモノマーが活性化されないため、モノマーは重合しない。
【0345】
また、照射領域925ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域925では、未照射領域940に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域925に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域940側の勾配はより急峻なものとなる。
【0346】
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有していてもよい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域925に活性放射線930が照射されると、GI部形成用組成物902で構成された層910では、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下することとなる(図13(b)参照)。
【0347】
この屈折率の低下は、照射領域925全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図13(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図13(a)における屈折率の変化と、図13(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こり、屈折率分布Wが形成されることとなる。図13(a)では、屈折率分布を誇張して表現しているが、実際のモノマーの拡散移動に伴う高屈折率部Hと低屈折率部Lとの屈折率差は比較的小さい。図13(b)における屈折率変化によってこの屈折率差は十分に拡大し、グレーデッドインデックス型の屈折率分布Wが形成される。
【0348】
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。
【0349】
次に、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射した照射領域925中のモノマーがさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射領域940のモノマーは揮発することとなる。これにより、未照射領域940ではモノマーがさらに少なくなり、屈折率が高くなってポリマー915に近い屈折率となる。
【0350】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0351】
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0352】
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上のような原理で、コア層13のうちのGI部が得られる(図10参照)。
【0353】
GI部の屈折率分布Wにおいては、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており(図4(b)参照)、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
【0354】
なお、GI部における屈折率分布Wは、モノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、GI部が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
【0355】
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
【0356】
さらには、GI部の出射光の強度分布が、屈折率分布Wと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wを間接的に特定することができる。
【0357】
もちろん、GI部の屈折率分布Wは、屈折ニアフィールド法、微分干渉法等により、直接特定することもできる。
【0358】
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
【0359】
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
【0360】
一方、SI部形成用組成物901で構成された層910では、活性放射線930の照射に伴ってポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域925の屈折率は照射前から低下する。
【0361】
図14は、SI部形成用組成物901で構成された層910において、照射領域925と未照射領域940との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
【0362】
照射領域925では、活性放射線930の照射に伴ってポリマー915中の離脱性基が離脱し、これによりポリマー915の屈折率が低下する(図14参照)。その結果、層910の照射領域925には低屈折率部Lが形成され、未照射領域940には高屈折率部Hが形成される。低屈折率部Lは側面クラッド部15となり、高屈折率部Hはコア部14となる。
以上のような原理で、コア層13のうちのSI部が得られる。
【0363】
なお、SI部における屈折率分布Wは、離脱性基の濃度に一定の相関関係を有している。したがって、離脱性基の濃度を測定することにより、SI部が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
離脱性基の濃度の測定は、前述した各種分析法を用いることができる。
【0364】
[3]次に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
【0365】
これにはまず、支持基板952上に、クラッド層11(12)を形成する(図11参照)。
【0366】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用組成物)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0367】
次に、コア層13を支持基板951から剥離し、コア層13を、クラッド層11が形成された支持基板952と、クラッド層12が形成された支持基板952とで挟持する(図12(a)参照)。
【0368】
そして、図12(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0369】
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される(図12(b)参照)。
【0370】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ支持基板952を剥離、除去する。これにより、光導波路1が得られる。
【0371】
その後、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
【0372】
なお、コア層13は、支持基板951上ではなく、クラッド層11上に成膜するようにしてもよい。さらに、クラッド層12は、コア層13上に張り合わせるのではなく、コア層13上に材料を塗布して形成するようにしてもよい。
【0373】
≪第2の製造方法≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態を製造する第2の方法(第2の製造方法)について説明する。
【0374】
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0375】
第2の製造方法では、GI部形成用組成物902の組成が異なる以外は、第1の製造方法と同様である。
【0376】
光導波路1の第2の製造方法は、[1]支持基板951上にSI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902をそれぞれ塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射した後、層910に加熱処理を施すことで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[3]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0377】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、SI部形成用組成物901とGI部形成用組成物902とを用意する。
【0378】
第2の製造方法で用いられるGI部形成用組成物902は、重合開始剤に代えて、触媒前駆体および助触媒を含有している。
【0379】
触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、光の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、光の照射領域925と未照射領域940との間で、モノマーの反応を開始させる温度に差が生じ、その結果、照射領域925のみにおいてモノマーを反応させることができる。
【0380】
触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路1)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0381】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0382】
【化37】

[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0383】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0384】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0385】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0386】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0387】
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0388】
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)およびPd(OAc)(P(Cy)のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
【0389】
助触媒は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0390】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の離脱性基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0391】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)等が挙げられる。
【0392】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記式で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0393】
【化38】

【0394】
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
【0395】
なお、助触媒として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
【0396】
[2]
[2−1]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
【0397】
照射領域925では、助触媒が活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0398】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0399】
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことをいう。
【0400】
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して後述する加熱処理を施すことにより、コア層13を得ることができ、利便性が高い。
【0401】
また、上記のような触媒前駆体の分子構造の変化に加え、第1の製造方法と同様、ポリマー915から離脱性基が離脱する。これにより、層910の照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。
【0402】
[2−2]次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0403】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散移動して照射領域925に集まってくる。
その結果、層910には、第1の製造方法と同様の屈折率分布が形成される。
【0404】
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
【0405】
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0406】
次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
【0407】
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
【0408】
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
【0409】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0410】
次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
【0411】
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0412】
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
【0413】
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理以降または第3の加熱処理を省略してもよい。
【0414】
[3]次に、第1の製造方法と同様に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
【0415】
≪第3の製造方法≫
次に、本発明の光導波路の第1実施形態を製造する第3の方法(第3の製造方法)について説明する。
【0416】
図15は、図1に示す光導波路1の第3の製造方法を説明するための図である。
以下、第3の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0417】
第3の製造方法では、1種類のコア層形成用組成物900を用い、部分的に加熱処理を施してコア層13を形成するようにした以外、第1の製造方法と同様である。
【0418】
光導波路1の第3の製造方法は、[1]支持基板951上にコア層形成用組成物900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951をレベルテーブルに置いて液状被膜を平坦化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、層910を得る。[2]次いで、層910のうち、SI部を形成すべき部分を加熱し、層910のモノマーを揮発・除去する。[3]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得る。[4]次いで、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層し、光導波路1を得る。
【0419】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、コア層形成用組成物900を用意する。
【0420】
第3の製造方法で用いられるコア層形成用組成物900は、ポリマー915として離脱性基を有するものを必須とする以外、第1の製造方法で用いられるGI部形成用組成物902と同様である。
次いで、コア層形成用組成物900を用いて層910を形成する。
【0421】
[2]次に、層910のうち、SI部を形成すべき部分911に加熱処理を施す(図15参照)。これにより、加熱処理を施した部分911からモノマーを揮発させ、除去する。その結果、この部分911ではモノマーの含有率が小さくなるため、モノマーの拡散移動が生じなくなり、屈折率の連続的な分布が形成されないこととなる。
【0422】
加熱処理における加熱温度は、モノマーの組成に応じて適宜設定されるが、一例として100℃超であるのが好ましく、110〜200℃であるのがより好ましく、120〜180℃であるのがさらに好ましい。これにより、ポリマー915等を変質させることなく、モノマーを揮発させ除去することができる。
【0423】
また、加熱時間は、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
【0424】
なお、モノマーを除去した結果、モノマーの含有率は重量比で半分以下になっているのが好ましく、3分の1以下になっているのがより好ましい。
【0425】
加熱方法としては、例えば、ペルチェ素子、電気ヒーター等による加熱、赤外線の照射等が挙げられるが、この中でもペルチェ素子による加熱が好ましく用いられる。この加熱方法では、加熱する範囲と加熱温度とを極めて厳密に制御することができるので、モノマーの除去量を高度に制御することができる。その結果、最終的に、SI部を確実に形成することができる。
【0426】
また、加熱処理を施す部分911について、その全体で同じ条件の加熱処理を施すようにしてもよいが、部分的に条件を異ならせるようにしてもよい。例えば、部分911のうち、GI部を形成すべき部分に近いほど、加熱温度を徐々に低くするか、あるいは加熱時間を徐々に短くするようにすれば、モノマーの除去量を徐々に減らすことができる。その結果、最終的に、SI部とGI部との接続部5における屈折率分布の変化を連続的なものにすることができる。
【0427】
[3]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
【0428】
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、層910のうち、SI部を形成すべき部分911では、モノマーをほとんど含んでいないため、ポリマー915から離脱性基が離脱する反応が支配的となり、これによって照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。すなわち、モノマーの拡散移動はほとんど生じないため、照射領域925と未照射領域940との間の屈折率分布は、階段状の分布となる。その結果、SI部を形成すべき部分911は、コア層13のうちのSI部となる。
【0429】
一方、層910のうち、SI部を形成すべき部分911以外では、モノマーを含んでいるため、モノマーの拡散移動が生じる。その結果、この部分は、コア層13のうちのGI部となる。
【0430】
[4]次に、第1の製造方法と同様に、コア層13の両面にクラッド層11、12を積層する。これにより、SI部とGI部とを備えた光導波路1が得られる。
【0431】
≪第4の製造方法≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態を製造する方法(第4の製造方法)について説明する。
【0432】
図16は、図6に示す光導波路1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図16中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0433】
以下、第4の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0434】
第4の製造方法では、クラッド層形成用組成物、コア層形成用組成物、クラッド層形成用組成物を3層で押し出すように多色成形し、これに活性放射線を照射するようにした以外は、第1の製造方法と同様である。
【0435】
光導波路1の第4の製造方法は、[1]支持基板951上に、クラッド層形成用組成物、コア層形成用組成物、クラッド層形成用組成物を3層で押し出すように多色成形して液状被膜を形成し、乾燥させて層912を得る。[2]次いで、層912のうち、SI部を形成すべき部分を加熱し、層912のモノマーを揮発・除去する。[3]次いで、層912の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成する。これにより、光導波路1を得る。
【0436】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、支持基板951上に、下からクラッド層形成用組成物9121、コア層形成用組成物9122、クラッド層形成用組成物9123の順で並ぶように3つの組成物を同時に押し出し、液状被膜9120を多色成形する(図16(a)参照)。この際、多色成形の途中で押し出し条件を変更し、層間での組成物の混じり合いが生じない部分と生じる部分とに分ける。その結果、液状被膜9120の一部では各組成物が混じり合っておらず、他部では各組成物が混じり合った状態を形成することができる。前者の部分は最終的にSI部となり、後者の部分は最終的にGI部となる。
【0437】
すなわち、最終的にGI部となる部分では、図16(a)に示すように、支持基板951の上面には、クラッド層形成用組成物9121のみからなる液状被膜9120aと、クラッド層形成用組成物9121とコア層形成用組成物9122とが混合してなる液状被膜9120bと、コア層形成用組成物9122のみからなる液状被膜9120cと、コア層形成用組成物9122とクラッド層形成用組成物9123とが混合してなる液状被膜9120dと、クラッド層形成用組成物9123のみからなる液状被膜9120eとが積層されてなる液状被膜9120が得られる。
【0438】
なお、組成物の混じり合いを制御するためには、例えば、組成物の粘性や互いの相溶性等を途中で変更することにより、組成物の流動性を変化させ、相互の拡散の容易性を調整する方法や、押し出し時に組成物同士を強制的に混じり合わせる機構を作動させるか否かを調整する方法等が用いられる。
【0439】
その後、液状被膜9120を乾燥させ、層912を得る。より詳しくは、主に液状被膜9120aからクラッド層11が形成され、主に液状被膜9120b、9120c、9120dからコア層13が形成され、主に液状被膜9120eからクラッド層12が形成される(図16(b)参照)。
【0440】
[2]次に、第3の製造方法と同様、層912のうち、SI部を形成すべき部分911に加熱処理を施す(図16(b)参照)。これにより、加熱処理を施した部分911からモノマーを揮発させ、除去する。その結果、この部分911ではモノマーの含有率が小さくなるため、モノマーの拡散移動が生じなくなり、屈折率の連続的な分布が形成されないこととなる。
【0441】
[3]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層912に活性放射線930を照射する。
【0442】
マスク935を介して層912に活性放射線930を照射すると、層912のコア層形成用組成物9122から形成された層のうち、SI部を形成すべき部分911では、モノマーをほとんど含んでいないため、ポリマー915から離脱性基が離脱する反応が支配的となり、これによって照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差が生じる。すなわち、モノマーの拡散移動はほとんど生じないため、照射領域925と未照射領域940との間の屈折率分布は、階段状の分布となる。その結果、SI部を形成すべき部分911は、SI部の一部となる。
【0443】
一方、層912のコア層形成用組成物9122から形成された層のうち、SI部を形成すべき部分911以外では、モノマーを含んでいるため、モノマーの拡散移動が生じる。その結果、この部分は、GI部の一部となる。
以上のようにして光導波路1が得られる。
【0444】
得られた光導波路1は、SI部とGI部とを有し、かつGI部では、幅方向の屈折率分布Wと厚さ方向の屈折率分布Tの双方が、屈折率が連続的に変化したものとなる。このような光導波路1では、GI部での伝送効率が特に高くなるため、光導波路1全体の伝送効率をより高めることができ、かつ、光出射端部において他の光学素子との光結合効率をより高めることができる。
【0445】
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、他の光学素子(受発光素子等)との光結合効率が高く、かつ光伝送効率および長期信頼性にも優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0446】
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0447】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0448】
また、本発明の光導波路は、パルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
【0449】
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0450】
例えば、光導波路には、光路を変換するミラー等の光路変換部が形成されていてもよい。
【0451】
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射線により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
【0452】
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
【0453】
また、前記各実施形態は、SI部を光導波路の光入射端部近傍に配置し、GI部をそれ以外の部位に配置する形態であるが、SI部およびGI部の位置はこの位置に限定されない。例えば、GI部が光導波路の長手方向の中央部に配置され、光入射端部近傍および光出射端部近傍にそれぞれSI部が配置された形態であっても、本発明の効果が得られる。
【実施例】
【0454】
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
【0455】
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0456】
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
【0457】
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0458】
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
【0459】
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0460】
【化39】

【0461】
【化40】

【0462】
(2)SI部形成用組成物の製造
得られたポリマー#1に対して、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なSI部形成用組成物を得た。
【0463】
(3)GI部形成用組成物の製造
得られたSI部形成用組成物に対してさらにシクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示した第1モノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2gを加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なGI部形成用組成物を得た。
【0464】
(4)光導波路の製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
【0465】
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上の一部にSI部形成用組成物を載せ、このSI部形成用組成物から少し離れた位置にはGI部形成用組成物を載せた。なお、GI部形成用組成物の供給量は、SI部形成用組成物よりやや多くした。また、自重で広がっても互いに接触しない程度に両者の供給位置を離すようにした。
【0466】
次いで、ドクターブレードにより、SI部形成用組成物とGI部形成用組成物とを均一に塗り広げた。この際、SI部形成用組成物をGI部形成用組成物側に塗り広げるようドクターブレードを走査した。そして、形成すべき光導波路の全長相当まで走査した後、走査方向を反転させ、走査開始位置まで戻した。この往復走査をもう一度行い、液状被膜を形成した。
【0467】
次いで、得られた液状被膜を45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。
【0468】
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
【0469】
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、マスクの遮蔽部の幅を50μm、開口部の幅を80μmとした。また、光導波路の厚さを200μmとした。
また、接続部の長さは約1cm、SI部の長さは約5mmであった。
【0470】
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路の横断面について、幅方向および厚さ方向にそれぞれ引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定し、幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。得られた屈折率分布の各パラメーターを表1、2に示す。
【0471】
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cmに高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0472】
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0473】
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0474】
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0475】
(実施例6)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0476】
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が20mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が80mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0477】
(実施例8)
紫外線の照射量を300mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0478】
(実施例9)
紫外線の照射量を500mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0479】
(実施例10)
紫外線の照射量を100mJ/cmに減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0480】
(実施例11)
紫外線の照射量を1500mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0481】
(実施例12)
紫外線の照射量を3000mJ/cmに高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0482】
(実施例13)
GI部形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0483】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なGI部形成用組成物を得た。
【0484】
(実施例14)
GI部形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0485】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なGI部形成用組成物を得た。
【0486】
(実施例15)
GI部形成用組成物として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0487】
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P) 1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なGI部形成用組成物を得た。
【0488】
(実施例16)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0489】
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0490】
【化41】

【0491】
(実施例17)
クラッド層形成用組成物、コア層形成用組成物、クラッド層形成用組成物の3つの組成物が下からこの順で並ぶように基板上に押し出し、3層の液状被膜を多色成形するようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。なお、SI部を形成するときには、各組成物同士が混じり合わないように粘性が低くなり、GI部を形成するときには、各組成物同士が混じり合うように粘性が高くなるよう、多色成形装置に供給する組成物の条件を変更するようにした。これにより、GI部の厚さ方向においても連続的な屈折率分布を得た。
【0492】
(実施例18)
まず、GI部形成用組成物として、前述のSI部形成用組成物を用いるようにした。
【0493】
そして、SI部を形成すべき領域に露光する際に用いるマスクと、GI部を形成すべき領域に露光する際に用いるマスクとを異なるものとした。
【0494】
すなわち、GI部形成用のフォトマスクとして、側面クラッド部を形成すべき領域に対応した開口を有し、その周囲では紫外線透過率が徐々に低下するように構成されたものを用いて紫外線を照射した。これにより、紫外線の積算光量に連続的な分布を形成した。なお、紫外線の積算光量は、紫外線の照射によりポリマーから脱離する離脱性基の量に対応し、離脱性基の脱離に伴う屈折率の低下量に対応している。したがって、最終的に形成すべき屈折率分布の形状に応じてフォトマスクの透過率分布を設定するようにした。
【0495】
以上のようなGI部形成用組成物と用いるとともに、GI部の形成に際して上記のようなフォトマスクを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0496】
なお、得られた光導波路では、側面クラッド部の屈折率がほぼ一定である一方、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下していた。
【0497】
(比較例1)
下記のようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0498】
まず、下側クラッド層を形成後、その上にSI部形成用組成物を塗布し、露光、加熱してコア層を得た。
その後、上側クラッド層を形成することにより、光導波路を得た。
【0499】
なお、得られた光導波路では、光導波路全体で幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tがそれぞれ階段状の分布となった。また、屈折率分布Wおよび屈折率分布Tは、実施例1のSI部における屈折率分布Wおよび屈折率分布Tとほぼ同様であった。
【0500】
(比較例2)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて、コア層全体を露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
【0501】
なお、得られた光導波路では、側面クラッド部の屈折率がほぼ一定である一方、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下していた。また、屈折率分布Wは、実施例18のGI部における屈折率分布Wとほぼ同様であり、屈折率分布Tは、実施例1のSI部における屈折率分布Tとほぼ同様であった。
【0502】
【表1】

【0503】
【表2】

【0504】
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のSI部の横断面について、幅方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。屈折率分布Wの形状は、図3(b)に示すような、2つの高屈折率領域W2、W4と3つの低屈折率領域W1、W3、W5とが交互に並んだ形状であった。
【0505】
そして、得られた屈折率分布Wから、各低屈折率領域W1、W3、W5の平均値および各高屈折率領域W2、W4の平均値をそれぞれ求めた。
【0506】
一方、SI部の横断面について厚さ方向に引いた線上における屈折率分布Tについても同様に測定した。
【0507】
また、得られた光導波路のGI部の横断面について、幅方向に引いた線上における屈折率分布を屈折ニアフィールド法により測定した。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。屈折率分布Wの形状は、図4(b)に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。
【0508】
そして、得られた屈折率分布Wから、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4および各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5を求めるとともに、クラッド部における平均屈折率WAを求めた。
【0509】
また、屈折率分布Wにおいて、コア部に形成された極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が、平均屈折率WA以上の値を有している部分の幅a[μm]の平均値、および、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が、平均屈折率WA未満の値を有している部分の幅b[μm]の平均値をそれぞれ測定した。
【0510】
その結果、各実施例で得られたGI部の屈折率分布Wは、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
【0511】
一方、GI部の横断面について厚さ方向に引いた線上における屈折率分布Tについても同様に測定した。
【0512】
2.2 光導波路の伝送損失および挿入損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから光導波路の伝送損失を算出した。なお、このようにして得られた伝送損失は、光導波路自体の伝送損失(単位dB/cm)である。
【0513】
一方、長さ10cmの光導波路について測定された挿入損失は、光導波路自体の伝送損失と光導波路と光ファイバーとの結合損失とを含むものである。そこで、各実施例および各比較例で得られた光導波路の損入損失について、比較例1で得られた光導波路の損入損失を1としたときの相対値を求めた。
【0514】
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
【0515】
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
【0516】
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表3に示す。
【0517】
【表3】

【0518】
表3から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失、挿入損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。特に挿入損失については、各比較例で得られた光導波路に比べて優れていた。これは、SI部においては、屈折率分布の形状に基づき、入射可能な横断面積が広いため、光ファイバーからの信号光をもれなく受けることができ、一方、GI部においては、伝送効率が高くかつ出射時の収束性が高いため、受光用光ファイバーに対して信号光をもれなく入射させることができるため、SI部とGI部とが併設された光導波路では、2つの効果を両立させることができたためと考えられる。
【0519】
また、屈折率分布が図4(b)に示すような極小値と極大値とが交互に並んだ連続的な分布になっている場合、光導波路の伝送損失および挿入損失を特に抑えることができる。また、光導波路の幅方向のみならず、厚さ方向についても連続的な分布になっている場合には、その傾向が顕著である。
【符号の説明】
【0520】
1 光導波路
1A 光入射端部
1B 光出射端部
11、12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
141、142 コア部
15 側面クラッド部
151、152、153 側面クラッド部
2 支持フィルム
3 カバーフィルム
5 接続部
900 コア層形成用組成物
901 SI部形成用組成物
902 GI部形成用組成物
905 ブレード
910、912 層
911 SI部を形成すべき部分
9120 液状被膜
9120a、9120b、9120c、9120d、9120e 液状被膜
9121、9123 クラッド層形成用組成物
9122 コア層形成用組成物
915 ポリマー
920 添加剤
930 活性放射線
935 マスク(マスキング)
9351 開口(窓)
925 照射領域
940 未照射領域
951、952 支持基板
W、T 屈折率分布
WA 側面クラッド部における平均屈折率
W1、W3、W5 低屈折率領域
W2、W4 高屈折率領域
Ws1、Ws2、Ws3、Ws4 極小値
Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5 極大値
TA クラッド層における平均屈折率
T1、T3 低屈折率領域
T2 高屈折率領域
Ts1、Ts2 極小値
Tm 極大値
低屈折率領域
中屈折率領域
高屈折率領域
C1、C2、C3、C4 中心線
H 高屈折率部
L 低屈折率部
a、b 幅
SI SI部
GI GI部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面上に線を引いたときその線上における屈折率分布がステップインデックス型になっているSI部と、グレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記SI部と前記GI部とが接続部において一体的に接続されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記接続部における横断面の屈折率分布は、前記接続部の一端から他端の間でステップインデックス型またはグレーデッドインデックス型の一方から他方へと徐々に変化するよう構成されている請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記SI部は、当該光導波路の光入射端部に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記GI部は、当該光導波路の光出射端部に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記GI部の長さは、前記SI部の長さより長い請求項1ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記GI部における前記屈折率分布は、2つの極小値と、1つの第1の極大値と、前記第1の極大値より小さい2つの第2の極大値と、を有し、前記第2の極大値、前記極小値、前記第1の極大値、前記極小値、および前記第2の極大値がこの順で並んだ領域を含んでおり、かつ、全体で屈折率が連続的に変化している分布である請求項1ないし6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
当該光導波路は、帯状をなしており、
横断面上において当該光導波路の幅方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Wがステップインデックス型になっているSI部と、グレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有し、かつ、
横断面上において当該光導波路の厚さ方向に線を引いたときその線上における屈折率分布Tが、当該光導波路全体でステップインデックス型になっている請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
当該光導波路は、帯状をなしており、
横断面上において当該光導波路の幅方向および厚さ方向に線を引いたときその線上における幅方向の屈折率分布Wおよび厚さ方向の屈折率分布Tがそれぞれステップインデックス型になっているSI部と、前記屈折率分布Wおよび前記屈折率分布Tがそれぞれグレーデッドインデックス型になっているGI部と、をそれぞれ長手方向のいずれかの位置に有している請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−181427(P2012−181427A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45164(P2011−45164)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】