説明

光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡

【課題】信号光を高感度かつ高SNRで検出できる光検出装置を提供することにある。
【解決手段】信号光を受光して、該信号光を光増幅して伝送する第1光伝送部101と、信号光を受光して、該信号光を伝送する第2光伝送部102と、第1光伝送部101および第2光伝送部102からそれぞれ伝送されて出力される光を光電変換する光電変換部103と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体観察、センサ、セキュリティ、レーザレーダ等の光を利用する様々なシステムにおいて、所望の信号光(被検出光)を検出する技術はその性能を大きく左右する基本的かつ重要な要素になっている。特に、高速かつ高感度な検出技術に対するニーズは高い。
【0003】
例えば、生体観察では、生体の状態や形状が時々刻々と変化するため、正確な観察を行うためには、高速に光検出を行う必要がある。また、光照射によって生体は損傷を受け易いため、生体試料に照射できる照明光や励起光の光量には上限がある。そのため、生体から得られる信号光は通常微弱になってしまう。これらの理由から、例えば、顕微鏡や内視鏡等を用いた生体観察では、高速かつ高感度な光検出技術が強く求められている。
【0004】
その要望に応えるのに適用可能な技術として、前置光増幅検出技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、PD(Photo Diode)等の光電変換素子の直前に光増幅器を配置した構成をとっている。そして、信号光を光増幅器により光増幅して光量を増大させることで、光検出感度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3069687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光増幅器は、励起効率の観点から主に導波路型のものが利用される。また、顕微鏡や内視鏡等による生体観察等で検出される光は、その殆どが生体等で散乱された微弱な光である。このような微弱な散乱光を信号光として検出する場合、導波路のモード数が多いほど、取り込める散乱信号光量が大きくなる。そのため、高い信号対雑音比(Signal-to-noise ratio;SNR)で信号光を増幅するためには、モード数の多い光増幅器を用いることが有効であると考えられる。
【0007】
しかしながら、モード数の多い光増幅器は、励起効率が非常に低くなる。そのため、十分な利得を持つように動作させるには、非常に高強度な励起光が必要となる。ところが、励起光の強度を高めると、発熱の問題が生じることになる。そのため、使用できる励起光強度には上限がある。つまり、多モード光増幅器を用いるようにしても、モード数の多すぎる光増幅器を用いると、光増幅器を十分に励起することが困難となって、必要な増幅作用が得られなくなる。
【0008】
したがって、多モード光増幅器の使用に当たっては、取り込める散乱光量(信号光量)をある程度犠牲にしながら、つまりSNRをある程度犠牲にしながら、十分励起可能な数モードの光増幅器を用いることになる。その結果、微弱な信号光量を、高感度かつ高SNRで検出することができないことになる。つまり、微弱な散乱光を検出するには、光増幅効果による信号光出力の増大、取り込む散乱光量の向上、および高い励起効率、の全てが満たされるのが理想的であるが、上述したように、単に、モード数の多い光増幅器を用いようとすると、その実現が困難である。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、信号光を高感度かつ高SNRで検出できる光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係る光検出装置は、
信号光を受光して、該信号光を光増幅して伝送する第1光伝送部と、
前記信号光を受光して、該信号光を伝送する第2光伝送部と、
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部からそれぞれ伝送されて出力される光を光電変換する光電変換部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成において、信号光は、第1光伝送部により光増幅されて伝送されるとともに、第2光伝送部により伝送される。そして、これら第1光伝送部および第2光伝送部により伝送される信号光は、光電変換部により光電変換される。したがって、光電変換部からは、第1光伝送部および第2光伝送部により伝送された信号光が合成された光電変換信号が得られるので、信号光を高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、前記第1光伝送部および前記第2光伝送部の少なくとも一方は、複数の光伝送手段により構成する。
【0013】
このように構成すると、信号光の受光効率を高めることができ、信号光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記光電変換部は、一つの光電変換手段を備え、
前記光電変換手段により、前記第1光伝送部および前記第2光伝送部から出力されて合成された光を光電変換するように構成する。
【0015】
このように構成すると、光電変換部を簡単にでき、コストダウンを図ることが可能となる。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記光電変換部は、複数の光電変換手段と、信号加算部とを備え、
前記複数の光電変換手段により、前記第1光伝送部および前記第2光伝送部から出力される光を分担して光電変換し、該複数の光電変換手段の出力信号を前記信号加算部により加算するように構成する。
【0017】
このように構成すると、例えば、第1光伝送部に対応する光電変換手段および第2光伝送部に対応する光電変換手段に応じて、光電変換信号の増幅利得等の回路特性をそれぞれ最適に設定して両者の光電変換信号を加算部で加算することが可能となる。また、第1光伝送部、第2光伝送部、および各光電変換手段のレイアウトも比較的自由に設定することが可能となる。これにより、装置設計等の自由度を向上できるとともに、信号光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部は、前記信号光として、試料上の所定領域からの信号光を受光するように構成する。
【0019】
このように構成すると、例えば、硬性内視鏡に適用して、生体内の血管の走行状態を可視化することが可能となる。
【0020】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部は、前記信号光として、試料上の異なる方向からの信号光を受光するように構成する。
【0021】
このように構成すると、例えば、蛍光観察装置に適用して、試料から発生する微弱な蛍光(信号光)を種々の方向から受光して検出することが可能となり、蛍光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0022】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記第1光伝送部の前段に配置されたモード調整部を備え、
前記モード調整部により、前記第1光伝送部が光増幅して伝送する前記信号光のモード状態を調整するように構成する。
【0023】
かかる構成において、第1光伝送部に入射する信号光は、モード調整部により第1光伝送部に適した空間モードに調整される。これにより、第1光伝送部において、入射する信号光を効率的に光増幅して伝送することが可能となり、信号光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0024】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記光電変換部の出力に基づいて、前記第1光伝送部による前記信号光の増幅率を制御する制御部を備える。
【0025】
これにより、第1光伝送部から適切に増幅された信号光を得ることができ、信号光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0026】
本発明の一実施の形態に係る光検出装置においては、
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部を、
前記第1光伝送部が伝送する前記信号光のモード数が、前記第2光伝送部が伝送する前記信号光のモード数よりも少なくなるように構成する。
【0027】
このように構成すると、第1光伝送部により、少ないモード数の信号光を効率よく増幅して光電変換部に伝送することが可能となる。また、第2光伝送部により、残余の多モードの信号光を無駄なく受光して、受光光量を増大させて光電変換部に伝送することが可能となる。これにより、信号光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0028】
さらに、上記課題を解決する本発明に係る光検出方法は、
信号光を受光して、該信号光を光増幅して伝送する第1光伝送ステップと、
前記信号光を受光して、該信号光を伝送する第2光伝送ステップと、
前記第1光伝送ステップおよび前記第2光伝送ステップでそれぞれ伝送されて出力される光を光電変換する光電変換ステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【0029】
これにより、光電変換ステップにおいて、第1光伝送ステップおよび第2光伝送ステップにより伝送された信号光が合成された光電変換信号が得られるので、信号光を高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。
【0030】
さらに、上記課題を解決する本発明に係る顕微鏡は、
上記の本発明にかかる光検出装置を有し、該光検出装置により、観察試料からの信号光を検出するように構成する。
【0031】
これにより、観察試料を高感度かつ高SNRで観察できる顕微鏡を提供することが可能となる。
【0032】
さらに、上記課題を解決する本発明に係る内視鏡は、
上記の本発明にかかる光検出装置を有し、該光検出装置により、体腔内からの信号光を検出するように構成する。
【0033】
これにより、体腔内を高感度かつ高SNRで観察できる内視鏡を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る光検出装置および光検出方法によると、信号光を高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。また、本発明による顕微鏡によると、観察試料を高感度かつ高SNRで観察することが可能となる。さらに、本発明による内視鏡によると、体腔内を高感度かつ高SNRで観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る光検出装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る血管可視化装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2の部分詳細図である。
【図4】本発明の第2実施の形態に係る蛍光イメージング装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係るスキャン内視鏡の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5の部分詳細図である。
【図7】本発明の第4実施の形態に係る蛍光イメージング装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
先ず、本発明の実施の形態の説明に先立って、本発明に係る光検出装置の基本構成について説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る光検出装置の基本構成を示すブロック図である。光検出装置は、第1光伝送部101、第2光伝送部102および光電変換部103を備える。第1光伝送部101および第2光伝送部102は、それぞれ信号光を受光して、光電変換部103に伝送する。光電変換部103は、第1光伝送部101および第2光伝送部102から伝送される信号光を光電変換し、その光電変換信号すなわち信号光の検出信号を、図示しない信号処理系に供給する。
【0038】
第1光伝送部101は、光増幅機能を有するもので、例えば、ファイバ型光増幅器や半導体光増幅器により構成される。ファイバ型光増幅器としては、例えば、希土類添加ファイバ型光増幅器、誘導ラマン増幅器、パラメトリック増幅器等を用いることができる。第2光伝送部102は、例えば、石英ガラス多モードファイバにより構成される。光電変換部103は、PD,APD(Avalanche Photo Diode)、PMT(Photo Multiplier Tube)等により構成される。
【0039】
ここで、第1光伝送部101は、好ましくは、伝送する信号光のモード数が、第2光伝送部102が伝送するモード数よりも少なくなるように構成される。モード数は、例えば、ステップインデックス型ファイバを用いた場合、下式により推定することができる(「Barry R. Masters and Peter T. So, Handbook of biomedical nonlinear optical microscopy, Ch.9, Oxford University Press, New York, 2008.」参照)。
【0040】
【数1】

【0041】
上式から、第1光伝送部101のファイバ型光増幅器のファイバを、n1=1.45,Δ=0.01,2a=15μmとし、信号光の波長をλ=1.0μmとした場合、モード数は、N≒47となる。また、第2光伝送部102の石英ガラス多モードファイバを、n1=1.45,Δ=0.01,2a=75μmとした場合、モード数は、N≒1170となる。なお、これらのモード数は、実際には、それぞれ一桁程度少なくなる。これは、ファイバにかかる応力等によって、高い次数のモードが放射されるものと考えられる。したがって、第1光伝送部101で許容されるモード数は、好ましくは、10以下とする。
【0042】
このように構成すれば、第1光伝送部101において、少ないモード数の信号光を効率よく増幅して光電変換部103に伝送することができる。また、第2光伝送部102により、残余の多モードの信号光を無駄なく受光して、受光光量を増大させて光電変換部103に伝送することができる。したがって、これら第1光伝送部101および第2光伝送部102からそれぞれ伝送される光を、光電変換部103により光電変換すれば、信号光を高感度かつ高SNRで検出することができる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0044】
(第1実施の形態)
図2は、本発明の第1実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、硬性内視鏡に組み込まれる血管可視化装置として構成されたものである。この血管可視化装置は、照明用のレーザ光により生体試料200を走査し、これにより生体試料200の表面や内部で反射または散乱された信号光を光電変換して、その電気信号に基づいて生体試料200の脂肪下に存在する血管を可視化して表示するものである。
【0045】
図2において、照明用光源201から射出された照明光は、単一モードファイバ202を経てレンズ203により生体試料200に、例えば直径が2mm程度のスポット状に集光される。照明用光源201は、例えば、波長1034nm,光強度100mWの波長安定化LD(Laser Diode)が使用され、その光強度は信号処理部204によりドライバ205を介して制御される。信号処理部204は、パーソナルコンピュータ(PC)を有して構成される。
【0046】
照明スポットの中心から所定距離、例えば約10mm離れた生体試料200のスポット領域から発生する信号光は、レンズ206により捕集されて、2本の数モードファイバ211a,211bと、2本の多モードファイバ212a,212bとに入射される。数モードファイバ211a,211bは、各々が、例えば、コア径15μm、長さ約1mからなる。また、多モードファイバ212a,212bは、各々が、例えば、コア径75μm、長さ約2mからなる。したがって、数モードファイバ211a,211bは、モード数が10以下の光を伝送可能であり、多モードファイバ212a,212bは、モード数が数百の光を伝送可能である。これら数モードファイバ211a,211bおよび多モードファイバ212a,212bは、図3に部分詳細図としての端面図を示すように、それらの入射端部が共通のクラッド213により結合されている。
【0047】
数モードファイバ211a,211bは、各々の射出端部が2入力−2出力の光カプラ215a,215bの一方の入力ポートに結合される。これら光カプラ215a,215bの他方の入力ポートには、励起光源216からの励起光が入力される。励起光源216は、例えば、波長976nm,光強度50mWの励起光を射出可能なLDを有して構成され、該励起光源216からの励起光を光カプラ215a,215bのそれぞれの他方の入力ポートに入射させる。励起光源216は、信号処理部204によりドライバ217を介して制御される。
【0048】
光カプラ215a,215bの一方の出力ポートには、それぞれYb添加ファイバ218a,218bの一端部が結合される。Yb添加ファイバ218a,218bは、コア径が、例えば15μmからなる。これにより、Yb添加ファイバ218a,218bには、対応する数モードファイバ211a,211bからの信号光と、励起光源216からの励起光とが合波されて入力され、他端部に伝送される。そして、その伝送中に、信号光が増幅される。
【0049】
Yb添加ファイバ218a,218bからの出力光は、それぞれ光フィルタ219a,219bに入射され、ここで残留励起光および自然放出光が除去されて、信号光が透過する。そして、これら光フィルタ219a,219bを透過した信号光が、レンズ221を経て光電変換手段であるPD222で受光される。同様に、多モードファイバ212a,212bに入射した信号光は、レンズ221を経てPD222で受光される。これにより、Yb添加ファイバ218a,218bにより光増幅されて伝送された数モードの信号光と、多モードファイバ212a,212bにより伝送された多モードの信号光とが合波され、その合波された信号光が一つのPD222で受光されて光電変換される。
【0050】
したがって、本実施の形態において、Yb添加ファイバ218a,218bは、第1光伝送部を構成し、その各々は光伝送手段を構成している。また、多モードファイバ212a,212bは、第2光伝送部を構成し、その各々は光伝送手段を構成している。そして、PD222は、光電変換部を構成している。
【0051】
PD222で光電変換された電気信号は、増幅器223で増幅された後、ADC(Analog Digital Converter)224でデジタル信号に変換されて信号処理部204に供給され、ここで所要の画像処理が行われてモニタ225に血管像が表示される。この際、信号処理部204は、ADC224からの入力信号レベル(デジタル値)に応じて、ドライバ217を介して励起光源216の出力光強度を調整、すなわちYb添加ファイバ218a,218bによる信号光の増幅率を制御する。したがって、信号処理部204およびドライバ217は、Yb添加ファイバ218a,218bによる信号光の増幅率を制御する制御部を構成する。
【0052】
このように、本実施の形態においては、Yb添加ファイバ218a,218bにより数モードの信号光を取り込んで増幅して伝送する。また、多モードファイバ212a,212bにより、残余の多モードの信号光を取り込んで伝送する。そして、伝送されたそれらの信号光を合波して光電変換するようにしたので、信号光を効率よく増幅することができるとともに、全体の受光光量を増大させることができる。したがって、信号光を高感度かつ高SNRで検出することができるので、血管像を鮮明に可視化して表示することができる。
【0053】
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、蛍光イメージング装置として構成されたものである。この蛍光イメージング装置は、照明用のレーザ光により細胞試料300の観察視野を照明し、それにより細胞試料300から発生する蛍光を光電変換して、その電気信号に基づいて細胞試料300の蛍光像を表示するものである。なお、細胞試料300には、波長488nmの光で励起されて緑色の蛍光を放つ蛍光物質(例えば、Green Fluorescent Protein :GFP)が含まれているものとする。
【0054】
図4において、照明用光源301から射出された照明光は、単一モードファイバ302を経てレンズ303により細胞試料300の観察視野に照射される。これにより、細胞試料300は励起されて蛍光を発生する。照明用光源301は、例えば、波長488nm,光強度10mWの照明用DPSS(Diode Pumped Solid State)レーザが使用され、その光強度はPCを含む信号処理部304によりドライバ305を介して制御される。
【0055】
細胞試料300から発生する蛍光のうち、細胞試料300の前方側(反射側)に発生する蛍光は、レンズ306aにより捕集されて、数モードファイバ311aと多モードファイバ312aとに入射される。また、細胞試料300の後方側(透過側)に発生する蛍光は、レンズ306bにより捕集されて、数モードファイバ311bと多モードファイバ312bとに入射される。数モードファイバ311a,311bは、各々が、例えば、コア径10μmからなる。また、多モードファイバ312a,312bは、各々が、例えば、コア径75μmからなる。したがって、数モードファイバ311a,311bは、モード数が10以下の光を伝送可能であり、多モードファイバ312a,312bは、モード数が数百の光を伝送可能である。
【0056】
数モードファイバ311a,311bは、各々の射出端部が2入力−2出力の光カプラ315a,315bの一方の入力ポートに結合される。これら光カプラ315a,315bの他方の入力ポートには、励起光源316からの励起光が入力される。励起光源316は、例えば、波長488nm,光強度50mWの励起光を射出可能なDPSSレーザを有して構成され、該励起光源316からの励起光を光カプラ315a,315bのそれぞれの他方の入力ポートに入射させる。励起光源316は、信号処理部304によりドライバ317を介して制御される。
【0057】
光カプラ315a,315bの一方の出力ポートには、それぞれTb添加ファイバ318a,318bの一端部が結合される。Tb添加ファイバ318a,318bは、コア径が、例えば10μmからなる。これにより、Tb添加ファイバ318a,318bには、対応する数モードファイバ311a,311bからの蛍光(信号光)と、励起光源316からの励起光とが合波されて入力され、他端部に伝送される。そして、その伝送中に、蛍光が増幅される。
【0058】
Tb添加ファイバ318a,318bからの出力光は、それぞれ光フィルタ319a,319bに入射され、ここで残留励起光および自然放出光が除去されて、蛍光が透過する。そして、これら光フィルタ319a,319bを透過した蛍光が、レンズ321を経て光電変換手段であるPD322で受光される。同様に、多モードファイバ312a,312bに入射した蛍光は、それぞれ光フィルタ319c,319dに入射され、ここで残留励起光および自然放出光が除去されて、蛍光が透過する。そして、これら光フィルタ319c,319dを透過した蛍光が、レンズ321を経てPD322で受光される。これにより、Tb添加ファイバ318a,318bにより光増幅されて伝送された数モードの蛍光と、多モードファイバ312a,312bにより伝送された多モードの蛍光とが合波され、その合波された蛍光が一つのPD322で受光されて光電変換される。
【0059】
したがって、本実施の形態において、Tb添加ファイバ318a,318bは、第1光伝送部を構成し、その各々は光伝送手段を構成している。また、多モードファイバ312a,312bは、第2光伝送部を構成し、その各々は光伝送手段を構成している。そして、PD322は、光電変換部を構成している。
【0060】
PD322で光電変換された電気信号は、増幅器323で増幅された後、ADC324でデジタル信号に変換されて信号処理部304に供給され、ここで所要の画像処理が行われてモニタ325に、細胞試料300の蛍光像が表示される。この際、信号処理部304は、ADC324からの入力信号レベル(デジタル値)に応じて、励起光源316の出力光強度を調整、すなわちTb添加ファイバ318a,318bによる蛍光の増幅率を制御する。したがって、信号処理部304およびドライバ317は、Tb添加ファイバ318a,318bによる信号光の増幅率を制御する制御部を構成する。
【0061】
このように、本実施の形態においては、Tb添加ファイバ318a,318bにより、細胞試料300の前方側および後方側に発生する蛍光のうちの数モードの蛍光を取り込んで増幅して伝送する。また、多モードファイバ312a,312bにより、細胞試料300の前方側および後方側に発生する蛍光のうちの残余の多モードの蛍光を取り込んで伝送する。そして、伝送されたそれらの蛍光を合波して光電変換するようにしたので、蛍光を効率よく増幅することができるとともに、全体の受光光量を増大させることができる。したがって、蛍光を高感度かつ高SNRで検出することができるので、細胞試料300からの微弱な蛍光による蛍光像を鮮明に可視化して表示することができる。
【0062】
(第3実施の形態)
図5は、本発明の第3実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、スキャン内視鏡として構成されたものである。このスキャン内視鏡は、照明用のレーザ光により生体試料400を走査し、これにより励起されて生体試料400から発生する蛍光(信号光)を光電変換して、その電気信号に基づいて生体試料400の蛍光像を表示するものである。
【0063】
図5において、照明用光源401から射出された照明光は、多モードファイバ402を経てレンズ403により生体試料400にスポット状に集光される。これにより、生体試料400は励起されて蛍光を発生する。照明用光源401は、例えば、波長542nm,光強度10mWのDPSSレーザが使用され、その光強度はPCを含む信号処理部404によりドライバ405を介して制御される。多モードファイバ402には、内視鏡ハウジング406内において、射出端部を光軸直交面内で変位可能に圧電アクチュエータ407が結合されている。圧電アクチュエータ407は、信号処理部404によりドライバ408を介して駆動され、これにより生体試料400に対して照明光が走査される。
【0064】
生体試料400から発生する蛍光は、レンズ410により捕集されて、2本の数モードファイバ411a,411bと、1本の多モードファイバ412とに入射される。数モードファイバ411a,411bは、各々が、例えば、コア径35μmからなる。また、多モードファイバ412は、例えば、コア径75μmからなる。したがって、多モードファイバ412は、モード数が数百の光を伝送可能であり、数モードファイバ411a,411bは、多モードファイバ412よりもモード数が少ないが、上記実施の形態の場合よりは多いモード数の光が伝送可能である。
【0065】
数モードファイバ411a,411bおよび多モードファイバ412は、内視鏡ハウジング406内において、図6に部分詳細図としての射出端面図を示すように結合されている。すなわち、多モードファイバ412は、ロッド状に形成され、その中央部に照明用の多モードファイバ402が変位可能に延在して配設されており、対称な位置に数モードファイバ411a,411bが延在して配設されている。なお、多モードファイバ412の外周面および照明用の多モードファイバ402が配置される内周面には、それぞれ高反射層413が形成されている。
【0066】
数モードファイバ411a,411bは、それぞれモード調整部414a,414bを介して2入力−2出力の光カプラ415a,415bの一方の入力ポートに結合される。これら光カプラ415a,415bの他方の入力ポートには、励起光源416からの励起光が入力される。励起光源416は、例えば、波長488nm,光強度60mWの励起光を射出可能なLDを有して構成され、該励起光源416からの励起光を光カプラ415a,415bのそれぞれの他方の入力ポートに入射させる。励起光源416は、信号処理部404によりドライバ417を介して制御される。
【0067】
光カプラ415a,415bの一方の出力ポートには、それぞれTb添加ファイバ418a,418bの一端部が結合される。Tb添加ファイバ418a,418bは、第2実施の形態の場合と同様、コア径が、例えば10μmからなる。これにより、Tb添加ファイバ418a,418bには、対応するモード調整部414a,414bからの蛍光と、励起光源416からの励起光とが合波されて入力され、他端部に伝送される。そして、その伝送中に、蛍光が増幅される。本実施の形態においては、数モードファイバ411a,411bから伝送される信号光の空間モード(モード状態)を、対応するモード調整部414a,414bにより、Tb添加ファイバ418a,418bに適した空間モードに調整する。
【0068】
Tb添加ファイバ418a,418bからの出力光は、それぞれ光フィルタ419a,419bに入射され、ここで残留励起光および自然放出光が除去されて、蛍光が透過する。そして、これら光フィルタ419a,419bを透過した蛍光が、レンズ421を経て光電変換手段であるPD422で受光される。同様に、多モードファイバ412に入射した蛍光は、レンズ421を経てPD422で受光される。これにより、Tb添加ファイバ418a,418bにより光増幅されて伝送された数モードの蛍光と、多モードファイバ412により伝送された多モードの蛍光とが合波され、その合波された蛍光が一つのPD422で受光されて光電変換される。
【0069】
したがって、本実施の形態において、Tb添加ファイバ418a,418bは、第1光伝送部を構成し、その各々は光伝送手段を構成している。また、多モードファイバ412は、第2光伝送部を構成している。そして、PD422は、光電変換部を構成している。
【0070】
PD422で光電変換された電気信号は、増幅器423で増幅された後、ADC424でデジタル信号に変換されて信号処理部404に供給され、ここで所要の画像処理が行われてモニタ425に、生体試料400の蛍光像が表示される。この際、信号処理部404は、ADC424からの入力信号レベル(デジタル値)に応じて、励起光源416の出力光強度を調整、すなわちTb添加ファイバ418a,418bによる蛍光の増幅率を制御する。したがって、信号処理部404およびドライバ417は、Tb添加ファイバ418a,418bによる信号光の増幅率を制御する制御部を構成する。
【0071】
したがって、本実施の形態によれば、第2実施の形態の場合と同様に、蛍光を高感度かつ高SNRで検出することができるので、生体試料400からの微弱な蛍光による蛍光像を鮮明に可視化して表示することができる。また、数モードファイバ411a,411bから伝送される信号光の空間モードを、対応するモード調整部414a,414bにより、Tb添加ファイバ418a,418bに適した空間モードに調整するので、数モードファイバ411a,411bとして、比較的コア径の大きな安価なファイバを使用でき。コストダウンが図れる。
【0072】
(第4実施の形態)
図7は、本発明の第4実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、蛍光イメージング装置として構成されたもので、第2実施の形態に示した蛍光イメージング装置において、蛍光の光電変換部を2つのPD501a,501bで構成し、それらの出力を合成するようにしたものである。
【0073】
すなわち、図7に示す蛍光イメージング装置では、Tb添加ファイバ318a,318bを経て光増幅されて伝送される蛍光を、レンズ502aを経てPD501aで受光して光電変換する。また、多モードファイバ312a,312bを経て伝送される蛍光は、レンズ502bを経てPD501bで受光して光電変換する。そして、PD501a,501bの出力を増幅器503a,503bでそれぞれ増幅した後、加算器504で加算して、その加算出力をADC324でデジタル信号に変換するようにしたものである。その他の構成および動作は、第2実施の形態と同様であるので、同一作用を成す構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施の形態によれば、例えば、光増幅された蛍光の光電変換信号を増幅する増幅器503aの増幅利得と、他の蛍光の光電変換信号を増幅する増幅器503bの増幅利得とをそれぞれ独立して設定する等、回路特性を最適に設定することができるので、蛍光をより高感度かつ高SNRで検出することが可能となる。また、各種ファイバやPD501a,501b等のレイアウトも比較的自由に設定することが可能となるので、装置設計等の自由度を向上することも可能となる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形または変更が可能である。例えば、上記各実施の形態では、数モードの信号光を増幅して伝送し、多モードの信号光は増幅することなく伝送するようにしたが、逆に、多モードの信号光を増幅して伝送し、数モードの信号光は増幅することなく伝送するようにしてもよい。この場合、光増幅の効率は低下するが、増幅されない数モードの信号光も加算されるので、光増幅した信号光のみを光電変換する場合や、信号光を光増幅することなく光電変換する場合と比較すると、信号光を高感度かつ高SNRで検出することができる。
【0076】
また、第1光伝送部および第2光伝送部は、それぞれ任意の数の光伝送手段で構成することができる。したがって、例えば、図6において、多モードファイバ412をほぼ半分として、残余のほぼ半分の領域に多数の数モードファイバを細密充填して配設して、各々の数モードファイバで受光される信号光を増幅するように構成することも可能である。さらに、第2実施の形態に示したように、試料の異なる方向からの信号光を検出する場合、各方向に対して第1光伝送部および第2光伝送部を対応させて、方向毎に信号光を光電変換したり、一の方向に対して第1光伝送部を対応させ、他の方向に対して第2光伝送部を対応させて、それぞれの信号光を光電変換したりすることもできる。また、本発明に係る光検出装置は、上記実施の形態に限らず、カプセル内視鏡等の他の装置にも有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
101 第1光伝送部
102 第2光伝送部
103 光電変換部
200 生体試料
201 照明用光源
204 信号処理部
211a,211b 数モードファイバ
212a,212b 多モードファイバ
216 励起光源
217 ドライバ
218a,218b Yb添加ファイバ
222 PD
300 細胞試料
301 照明用光源
304 信号処理部
311a,311b 数モードファイバ
312a,312b 多モードファイバ
316 励起光源
317 ドライバ
318a,318b Tb添加ファイバ
322 PD
400 生体試料
401 照明用光源
404 信号処理部
411a,411b 数モードファイバ
412 多モードファイバ
414a,414b モード調整部
416 励起光源
417 ドライバ
418a,418b Tb添加ファイバ
422 PD
501a,501b PD
503a,503b 増幅器
504 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を受光して、該信号光を光増幅して伝送する第1光伝送部と、
前記信号光を受光して、該信号光を伝送する第2光伝送部と、
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部からそれぞれ伝送されて出力される光を光電変換する光電変換部と、
を備えることを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部の少なくとも一方は、複数の光伝送手段を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記光電変換部は、一つの光電変換手段を備え、
前記光電変換手段により、前記第1光伝送部および前記第2光伝送部から出力されて合成された光を光電変換する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記光電変換部は、複数の光電変換手段と、信号加算部とを備え、
前記複数の光電変換手段により、前記第1光伝送部および前記第2光伝送部から出力される光を分担して光電変換し、該複数の光電変換手段の出力信号を前記信号加算部により加算する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部は、前記信号光として、試料上の所定領域からの信号光を受光するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部は、前記信号光として、試料上の異なる方向からの信号光を受光するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第1光伝送部の前段に配置されたモード調整部を備え、
前記モード調整部により、前記第1光伝送部が光増幅して伝送する前記信号光のモード状態を調整する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記光電変換部の出力に基づいて、前記第1光伝送部による前記信号光の増幅率を制御する制御部を備える、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記第1光伝送部および前記第2光伝送部は、
前記第1光伝送部が伝送する前記信号光のモード数が、前記第2光伝送部が伝送する前記信号光のモード数よりも少なくなるように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
信号光を受光して、該信号光を光増幅して伝送する第1光伝送ステップと、
前記信号光を受光して、該信号光を伝送する第2光伝送ステップと、
前記第1光伝送ステップおよび前記第2光伝送ステップでそれぞれ伝送されて出力される光を光電変換する光電変換ステップと、
を含むことを特徴とする光検出方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光検出装置を有し、
前記光検出装置により、観察試料からの信号光を検出するように構成した、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光検出装置を有し、
前記光検出装置により、体腔内からの信号光を検出するように構成した、ことを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196878(P2011−196878A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65193(P2010−65193)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】