説明

光源装置

【課題】生産コスト及び運用コストを低減すること。
【解決手段】放電電極(8)が内部に配置された光発生室(6)と、前記放電電極(8,43)が放電したときに所定の波長の真空紫外光を発生する真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)内に流入させるガス流入口(16)と、前記光発生室(6)内に流入した前記真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)から流出させるガス流出口(17)と、前記ガス流出口(17)および前記ガス流入口(16)とを接続する循環路(21+22)と、を有し、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口(16)から前記光発生室(6)内に流入させることにより前記真空紫外光発生用ガスを循環させることを特徴とする光源装置(4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外光を照射する光源装置に関し、特に、真空紫外光発生用ガスが充満した光発生室内に配置された放電電極の放電により真空紫外光を発生させる光源装置に関する。
本発明の光源装置は、試料室に配置された試料を洗浄する試料洗浄装置に好適に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
所定の波長の光を照射可能な光源装置では、光発生室に流入させた光発生用ガスを放電により励起状態にし、基底状態に戻る時の発光により光を得るものがある。このような光源装置は、アルゴンガス等のエキシマガスを光発生用ガスとして使用して真空紫外光を発生させ、真空紫外光を試料に照射して試料の汚染物質(有機物質、表面吸着した水分や二酸化炭素等)を分解、放出させて除去する場合に使用されることもある。
例えば、オージェ電子分光装置(Auger electron spectrometer、AES)、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)、電子顕微鏡などを使用して顕微分析を行う場合に、測定する試料表面の汚染が問題になることがしばしばある。特に、高精度の顕微分析を行う際には、極微量の汚染でも分析結果に多大な悪影響を与えることがある。したがって、測定する試料表面に真空紫外光を照射して、汚染物質を分解除去して洗浄することは従来から行われている。
【0003】
試料表面に真空紫外光を照射する光源装置に関する従来技術として、特許文献1(特開2005−251656号公報)記載の技術がある。前記特許文献1には、ランプ室(光発生室)内でアルゴンガス(エキシマガス、光発生用ガス)を流し放しにして、ランプ室内の放電電極を放電させて光(真空紫外光)を発生させ、真空排気された試料交換室に真空紫外光を照射することにより、試料交換室内の試料を洗浄する技術が記載されている。
また、比較的波長が長く(172nm)良質の石英が光をよく透過するクセノンガスを使用して真空紫外光を発生させる場合は、石英管に電極と真空紫外光発生用クセノン(Xe)ガスを封入して封入型ランプを形成した製品もある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−251656号公報(「0028」、「0029」、第1図〜第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(前記従来技術の問題点)
前記特許文献1記載の従来技術では、放電励起により光を発生させる場合、光発生用ガス(エキシマガス)は流し放しの状態で光発生室を通過させるだけであり、光発生室から流出したガスは回収されて、専門の処理施設等で不純物等を除去する処理(再処理)がされた後で再利用されるか又はそのまま廃棄されていた。
一方、ガス封入型の希ガスエキシマランプがあるが、クセノンエキシマランプは発生する光172nmを良く透過する石英管や石英窓が使用できるため、封入型ランプが容易に製作できるが、アルゴンエキシマランプ126nmやクリプトンエキシマランプ146nmは透過材料が限られるため封入型ランプを設計・製作する場合に、ランプの形状、照射面積に大きな制限を受けるだけでなく、波長が短いためにガスの純度に対する特性の変化が非常に顕著で長寿命の封入型ランプを製作するには高度の技術を要しコストも高くなるという問題があった。
また、アルゴンエキシマランプやクリプトンエキシマランプでガス封入型ランプを形成した場合、照射波長を変えるためには3種類のランプを用意する必要がある。
【0006】
仮に、真空紫外光発生室に真空紫外光発生用ガスを封止した状態で放電を行うと、発生した真空紫外光は、試料表面だけでなく、真空紫外光発生室の壁面にも照射されて、壁面を洗浄することとなり、汚染物質(分解した有機物質、酸素や水蒸気、炭酸ガス等)が真空紫外光発生室内に放出される。したがって、真空紫外光発生用ガスを封止した場合、封止された真空紫外光発生室に汚染物質が放出されて短時間で充満し、光発生用ガスの割合が低下して真空紫外光の発光強度が低下したり、場合によっては発生しなくなったりする問題がある。
【0007】
一方、従来技術のように、長期間に渡って安定して真空紫外光を発生させるために、エキシマガスを流し放しの状態で使用する場合、比較的低価格なアルゴン(Ar)ガスを使用する場合には、それほど問題にならないが、高価なクリプトン(Kr)ガスやキセノン(Xe)ガスを使用する際に、流し放しの状態で使用すると、運用コスト(ランニングコスト)が非常に高くなるという問題がある。
特に、エキシマガスから発生する真空紫外光はガスの種類によって波長が決まっているため、コスト面から特定の波長の光しか照射できない状況は望ましくないという問題がある。
【0008】
また、試料の取出や装置の分解メンテナンス等により真空紫外光発生室が大気に曝されると、汚染物質が真空紫外光発生室に付着し、真空紫外光発生時に放出されやすくなる。光源装置の使用前に真空紫外光発生室の汚染物質を洗浄する方法も考えられるが、非常に手間がかかり、コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑み、次の記載内容(O01),(O02)を技術的課題とする。
(O01)光源装置の運用コストを低減すること。
(O02)1台で様々な波長の真空紫外光を照射可能な光源装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施例の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。なお、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0011】
(第1発明)
前記課題を解決するために、第1発明の光源装置(4,4′,4″)は、
放電電極(8,43)が内部に配置された光発生室(6)と、
前記放電電極(8,43)が放電したときに真空紫外光を発生する真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)内に流入させるガス流入口(16)と、
前記光発生室(6)内に流入した前記真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)から流出させるガス流出口(17)と、
前記ガス流出口(17)および前記ガス流入口(16)とを接続する循環路(21+22)と、
前記循環路(21+22)上に配置され、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスから不純物を除去して精製するガス精製器(26)と、
を有し、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口(16)から前記光発生室(6)内に流入させることにより前記真空紫外光発生用ガスを循環させることを特徴とする。
【0012】
(第1発明の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の光源装置(4,4′,4″)では、光発生室(6)の内部には放電電極(8,43)が配置されている。ガス流入口(16)から前記光発生室(6)内に流入した真空紫外光発生用ガスは、前記放電電極(8,43)が放電したときに真空紫外光を発生する。前記光発生室(6)内に流入した前記真空紫外光発生用ガスは、ガス流出口(17)から流出する。循環路(21+22)は、前記ガス流出口(17)および前記ガス流入口(16)とを接続する。前記循環路(21+22)上に配置されたガス精製器(26)により、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスから不純物が除去されて精製される。したがって、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスは、ガス精製器(26)により精製され、前記ガス流入口(16)から前記光発生室(6)内に流入するので、前記真空紫外光発生用ガスが循環する。
【0013】
この結果、第1発明の光源装置(4,4′,4″)では、真空紫外光発生用ガスが循環して繰り返し使用されるので、ガス放流型に比べて使用するガスの全体量を顕著に減らすことができる。したがって、ガスのコストを抑えることができ、光源装置(4,4′,4″)の運用コストを低減することができる。また、真空紫外光発生用ガスを循環し繰り返し使用するので、流し放しで使用する従来の場合に比べて、高価なガスを低い運用コストで使用することができる。
また、第1発明の光源装置(4,4′,4″)では、真空紫外光発生用ガスを循環させて流しながら使用し、真空紫外光発生用ガスを封入しないので、真空紫外光発生用ガスが汚染され真空紫外光の強度が減衰した場合には容易に新しいガスと交換できるので、照射装置の長寿命化を図ることができる。
【0014】
さらに、循環する前記真空紫外光発生用ガスから不純物が除去されて精製されるので、不純物により発光しにくくなったり、不純物により真空紫外光が吸収され所望の真空紫外光の強度が弱くなったりすることを抑えることができる。
また、長寿命の封入型の光源装置を作製する場合に比べて、それほど高度な技術を必要とせずに十分な寿命の光源装置(4,4′,4″)を作製できるので、生産コストも低減できる。
【0015】
(第1発明の形態1)
第1発明の形態1の光源装置(4,4′,4″)は、前記第1発明において、
前記真空紫外光発生用ガスを冷却する冷却器(24)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態1の光源装置(4,4′,4″)では、放電や前記循環ポンプ(23)の通過等により昇温した前記真空紫外光発生用ガスが冷却器(24)により冷却される。したがって、真空紫外光発生用ガスの昇温により光が発生しにくくなるという希ガスエキシマに特有の特性を低減でき、安定して光を発生させることができる。
【0016】
(第1発明の形態2)
第1発明の形態2の光源装置(4,4′,4″)は、前記第1発明または第1発明の形態1において、
前記循環路(21+22)上に配置され、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口(16)に移送する循環ポンプ(23)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態2の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態2の光源装置(4,4′,4″)では、前記循環路(21+22)上に配置された循環ポンプ(23)により、前記ガス流出口(17)から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口(16)に移送できる。
【0017】
(第1発明の形態3)
第1発明の形態3の光源装置は、前記第1発明および第1発明の形態1,2のいずれかにおいて、
前記光発生室(6)に供給される新たな前記真空紫外光発生用ガスが移送されるガス供給路(19)と、
前記ガス供給路(19)を開閉する供給路開閉バルブ(V1)と、
前記真空紫外光発生用ガスを排気する排気装置と前記光発生室(6)とを接続する排気路(27)と、
前記排気路(27)を開閉する排気路開閉バルブ(V4)と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
(第1発明の形態3の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態3の光源装置では、前記光発生室(6)に供給される新たな前記真空紫外光発生用ガスは、ガス供給路(19)を移送される。供給路開閉バルブ(V1)は、前記ガス供給路(19)を開閉する。排気路(27)は、前記真空紫外光発生用ガスを排気する排気装置と前記光発生室(6)とを接続する。排気路開閉バルブ(V4)は、前記排気路(27)を開閉する。
すなわち、第1発明の形態3の光源装置では、ガス供給路(19)から光発生室(6)に新たな真空紫外光発生用ガスを供給することができ、使用された真空紫外光発生用ガスを排気装置で排気することができる。そして、前記供給路開閉バルブ(V1)および排気路開閉バルブ(V4)を閉じることで、循環路(21+22)で真空紫外光発生用ガスを循環させることができる。したがって、前記ガス供給路(19)から光発生室(6)に、所定の波長の真空紫外光を発生させる真空紫外光発生用ガスを供給することができ、真空紫外光発生用ガスを変える場合には、排気後、所望の真空紫外光発生用ガスを供給することができる。この結果、光発生室(6)に任意の真空紫外光発生用ガスを供給することができ、1台の光源装置で任意の波長の真空紫外光を発生させることができる。
【0019】
(第1発明の形態4)
第1発明の形態4の光源装置は、前記第1発明の形態3において、 所望の波長の真空紫外光を発生させる真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)内に流入させる前に、内部洗浄用の真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)に供給した状態で、前記放電電極(8,43)による放電により真空紫外光を発生させて、前記光発生室(6)の洗浄を行うことを特徴とする。
【0020】
(第1発明の形態4の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態4の光源装置では、所望の波長の真空紫外光を発生させる真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)内に流入させる前に、内部洗浄用の真空紫外光発生用ガスを前記光発生室(6)に供給した状態で、前記放電電極(8,43)による放電により真空紫外光を発生させて、前記光発生室(6)の洗浄を行う。
したがって、予め洗浄され、汚染物質が除去された状態で真空紫外光の発生を行うことができる。なお、高価なガスを真空紫外光発生用ガスとして使用する場合でも、前記内部洗浄用の真空紫外光発生用ガスとして、低コストの真空紫外光発生用ガスを使用することができ、この場合、洗浄コストを低減することができる。
【0021】
(第1発明の形態5)
第1発明の形態5の光源装置(4)は、前記第1発明および第1発明の形態1〜4のいずれかにおいて、
前記光発生室(6)に連通し且つ前記ガス流出口(17)が形成され、内部に前記真空紫外光が照射される試料が配置される試料室(3)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態5の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態5の光源装置(4)では、前記光発生室(6)に連通し且つ前記ガス流出口(17)が形成された試料室(3)の内部には、前記真空紫外光が照射される試料が配置される。したがって、前記試料室(3)内の試料に真空紫外光を照射することができる。
【0022】
また、第1発明の形態5の光源装置(4)では、前記光発生室(6)と試料室(3)とが連通しているため、光発生室(6)と試料室(3)とを仕切る窓材が必要ない。したがって、窓材の特性や形状などに制限されることなく、放電条件のみによって光源装置(4)の設計を行うことができ、設計、製作が容易になるだけでなく、真空紫外光照射の応用範囲も拡大する。
さらに、試料室(3)内を真空紫外光発生用ガスが循環することにより、試料表面から除去された汚染物質を、循環するガスにより試料室(3)外に効率良く運び出すことができる。真空紫外光は光子エネルギーが大きいので、真空紫外光が照射された試料によっては表面が活性化し、逆に他の物質を吸着しやすくなり、洗浄効果が減退する場合がある。このとき、光発生用ガスの循環がその減退を抑えることができる。
【0023】
(第1発明の形態6)
第1発明の形態6の光源装置(4′)は、前記第1発明および第1発明の形態1〜5のいずれかにおいて、
窓材(31)を介して前記光発生室(6)と仕切られ、前記窓材(31)を通過した真空紫外光が照射される試料が内部に配置される試料室(3)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態6の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態6の光源装置(4′)では、窓材(31)を介して前記光発生室(6)と仕切られた試料室(3)の内部には、前記窓材(31)を通過した真空紫外光が照射される試料が配置される。したがって、光発生室(6)と分離された試料室(3)内の試料に光を照射できる。
また、第1発明の形態6の光源装置(4′)では、試料室(3)が窓材(31)を介して前記光発生室(6)と仕切られているので、試料室内に真空紫外光発生用ガス以外のガスを導入することもできる。この場合、真空紫外光と、導入されたガスとにより、例えば、真空紫外光CVDや表面改質を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
前記本発明は次の効果(E01)〜(E05)を奏する。
(E01)運用コスト及び生産コストを低減することができる。
(E02)高価なガスを使用しても運用コストが低い真空紫外光源を提供することができる。
(E03)封入させずガスを流しながら循環させるので、ガスの交換が容易であり装置の長寿命化を図ることができる。
(E04)真空紫外光発生用ガスを交換可能とすることができ、この場合、1台の光源装置で様々な波長の真空紫外光を照射することができる。
(E05)異なる種類の真空紫外光発生用ガスを混合して使用することができるので、単独の真空紫外光発生用ガスを使用する場合より得られる波長が拡大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(実施例)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の実施例1の光源装置が適用された試料洗浄装置の説明図である。
図1に示す実施例1の試料洗浄装置1は、内部に試料2が載置される試料室3と、前記試料室3に試料洗浄用の光を照射する光源装置(真空紫外光源装置)4と、を有する。前記光源装置4は、前記試料室3と連通する光発生室6を有する。前記光発生室6内部には、誘電体7で被覆された内側電極(放電電極)8が配置され、光発生室6の外周には内側電極8に対向して誘電体11が被覆された外側電極(放電電極)12が設けられている。前記内側電極8と外側電極12との間には、給電装置13により高電圧高周波電圧が印加されている。
【0027】
前記光発生室6の一端部には、真空紫外光発生用ガスが流入するガス流入口16が形成されており、光発生室6に連通する試料室3にはガスが流出するガス流出口17が形成されている。なお、実施例1では、前記真空紫外光発生用ガスとして、用途に応じて、波長126nmの真空紫外光を発生するアルゴンガスや波長146nmの真空紫外光を発生させるクリプトンガス、波長172nmの真空紫外光を発生させるキセノンガス、アルゴン/クリプトン混合ガス、クリプトン/キセノン混合ガス等のエキシマガスが使用される。したがって、前記内側電極8と外側電極12との間で放電させることにより、光発生室6の放電領域6a(図1の破線で示す領域参照)において、エキシマガスが励起され試料洗浄用の真空紫外光が発生する。
【0028】
前記ガス流入口16およびガス流出口17には、ガス循環装置18が接続されている。前記ガス循環装置18は、図示しないガスボンベ等から新たなガスを供給するためのガス供給路19と、前記ガス供給路19とガス流入口16とを接続するガス流入路21と、前記ガス流入路とガス流出口17とを接続するガス流出路22と、前記ガス流出路22に接続され排気ポンプ(排気装置、図示せず)に接続された排気路27とを有する。したがって、前記ガス流入路21およびガス流出路22とによりガス流出口17から流出したガスをガス流入口16に移送して循環させるガス循環路(21+22)が構成されている。
【0029】
前記ガス供給路19には、ガス供給路19を開閉して、新たなガスの供給を制御する供給路開閉バルブV1が設けられている。
前記ガス流入路21とガス流出路22との間には、ガス流入路21とガス流出路22との間を開閉して、循環路(21+22)内のガスの流量や光発生室6へのガスの流入を制御する流入路開閉バルブV2が設けられている。また、ガス流入路21のガス流入口16側には圧力計Mが設置されている。
前記排気路27との分岐部分からガス移送方向下流側のガス流出路22には、ガス流出路22を開閉してガスの移送を制御する流出路開閉バルブV3が設けられている。
前記排気路27には、真空ポンプによる試料室3および光発生室6の排気を行う際に排気路27を開放して真空ポンプと接続するための排気路開閉バルブV4が設けられている。
【0030】
前記ガス流出路22には、ガス循環路(21+22)内のガスを移送して、前記ガス流出口17から流出したガスをガス流入口16に移送する循環ポンプ23が支持されている。前記ガス流出路22の循環ポンプ23のガス移送方向下流側には、ガス循環路(21+22)を移送されるガスを冷却するための冷却器(熱交換器)24が配置されている。前記冷却器24の下流側のガス流入路21上には、試料2の洗浄時に放出され、ガス流出口17から光発生用ガスと共に流出した汚染物質(有機汚染物質、水蒸気や炭酸ガス等の不純物)を分離、除去して光発生用ガスのみをガス流入口16側に通過させるガス精製器(汚染物質除去装置)26が配置されている。なお、前記循環ポンプ23や冷却器24、ガス精製器26は、従来公知の市販品を使用可能である。
【0031】
実施例1の光源装置4では、光源装置4を使用する前に、以下の手順(1)〜(5)により予め光発生室6や試料室3等の装置内部の洗浄を行う。
(1)供給路開閉バルブV1を閉じ且つ、その他のバルブV2〜V4を開放して、真空ポンプにより光発生室6や試料室3、循環路(21+22)の空気を排気する。
(2)十分に空気が排気されると、排気路開閉バルブV4を閉じると共に、供給路開閉バルブV1を開けて、圧力計Mを見ながら、所定の気圧まで真空紫外光発生用ガス(使用前内部洗浄用ガス)を供給する。
(3)バルブV1〜V3を閉じて、放電を行い、放電と、放電による真空紫外光によって、光発生室6や試料室3の洗浄を行う。
(4)所定の時間放電を行った後、放電を停止し、バルブV2〜V4を開いて真空ポンプで排気を行う。
(5)光発生室6等がきれい(清浄)になるまで(2)〜(4)を繰り返す。
【0032】
光源装置4の内部洗浄が終了すると、排気路開閉バルブV4を閉じ、その他のバルブV1〜V3を開き、所望の波長の真空紫外光を発生させる真空紫外光発生用ガスを所定の圧力まで供給する。そして、供給路開閉バルブV1を閉じ、バルブV2,V3を開き、循環ポンプ23、冷却器24およびガス精製器26を作動させて、ガスを循環させながら放電を行い、真空紫外光を発生させる。
なお、光源装置4の使用前の内部洗浄用ガスとしての真空紫外光発生用ガスは、試料の洗浄に使用する真空紫外光発生用ガスと同一のガスを使用することも可能であるが、必ずしもその必要は無く、例えば、内部洗浄用ガスとしてコストの安いアルゴンガスを使用し、試料洗浄用ガスとして、所望のガス(アルゴンガスやクリプトンガス、キセノンガス又はこれらの混合ガス)を使用できる。また、前記内部洗浄は、必要に応じて実行されればよく、省略することも可能である。
前記符号19〜26を付した部材等により実施例1のガス循環装置18が構成されており、符号6〜26を付した部材等により、実施例1の光源装置4が構成されている。
【0033】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の光源装置4を有する試料洗浄装置1では、光発生用のガス(エキシマガス)は、ガス流入口16から光発生室6に流入し、光発生室6の放電領域6aで真空紫外光を発生する。前記真空紫外光により試料2が洗浄される。光発生室6の光発生用ガスは、洗浄時に試料2表面や、光発生室6や試料室3の壁面から放出された前記汚染物質と共にガス流出口17から流出する。ガス流出口17から光発生室6外に流出したガスは、循環ポンプ23により下流側に移送される際に、冷却器24で冷却されて、ガス精製器26に移送される。ガス精製器26で汚染物質が分離されたガスは、ガス流入口16から光発生室6に再流入して光発生用ガスとして再使用される。
【0034】
したがって、実施例1の光源装置4では、光発生用のガスがガス循環装置により精製され高純度で光発生室6に供給され真空紫外光を発生するので、光発生室6内で封止する場合のように短時間で真空紫外光が発生しなくなることを防止できる。また、光発生用のガスは、ガス循環路(21+22)を循環して繰り返し使用されるので、一度使用されたガスが廃棄される従来の光源装置に比べ、使用するガスの全体量を低減することができる。この結果、ガスにかかるコストを低減することができ、運用コスト(ランニングコスト)を低減できる。したがって、ガス封入型でなくても高価なキセノン(Xe)ガスやクリプトン(Kr)ガスを使用したランプ(光源装置)が実現できると共に、安価なアルゴンガス等を使用する場合でも運用コストを更に低減することができる。
【0035】
また、従来のガス封入型の光源装置では、(1)ガス封入容器を真空排気し、(2)容器を数日間炙って壁面に付着した不純物を放出、排気し、(3)ガスを流入させ、(4)ゲッターと呼ばれる不純物を吸着する材料を導入し、(5)容器を密封していた。特に、ゲッター導入工程(4)や、昇温を伴う容器密封工程(5)は高度な技術を要し、ガス封入型光源装置を長寿命化する際の問題となっていた。これに対し、実施例1の光源装置4では、高度な技術を要する前記工程(4)、(5)を必要としないので、それほど高度な技術を必要とせず、低コストで十分な寿命の光源装置を生産、提供することができる。
【0036】
また、エキシマガスは高温になると発光しにくくなるが、実施例1の光源装置4では、冷却器24を備え、循環するガスが冷却されるので、低温の新たなガスを補給しなくても安定して真空紫外光を得ることができる。
さらに、実施例1の光源装置4では、ガス精製器26を備え、汚染物質が除去されるので、汚染物質によりエキシマガスが発光しにくくなったり、汚染物質の吸収により真空紫外光が減衰したりすることを防止できる。この結果、長期に渡って安定して所定の波長の真空紫外光を得ることができる。また、試料2の交換時や分解メンテナンス時等に、光発生室6や試料室3が大気に曝されて大気中の水蒸気や炭酸ガス等が付着しても、少ないガス量で速やかに汚染物質を放出、洗浄できる。
【0037】
また、実施例1の光源装置4では、ガス供給路19から供給するガスを交換するだけで、共通の光源装置4で多種多様な波長の光を照射することができる。すなわち、エキシマガスを交換することにより、1台の光源装置4で、波長126nmの真空紫外光(アルゴンガス)だけでなく、波長146nmの真空紫外光(クリプトン(Kr)ガス)や波長172nmの真空紫外光(キセノン(Xe)ガス)を発生させることができる。また、これらのガスの混合比を調整した混合ガスを供給することにより、126nm〜172nmの間の任意の波長の真空紫外光を1台の光源装置4で発生させることもできる。
【0038】
さらに、実施例1の光源装置4では、光発生室6と試料室3とが連通しているため、光発生室6と試料室3とを仕切る窓材が必要ない。したがって、窓材の特性や形状などに制限されることなく、放電条件のみによって光源装置4の設計を行うことができ、設計、製作が容易になるだけでなく、真空紫外光照射の応用範囲も拡大する。
また、試料室3内を真空紫外光発生用ガスが循環することにより、試料表面から除去された汚染物質を、循環するガスにより試料室3外に効率良く運び出すことができる。真空紫外光は光子エネルギーが大きいので、真空紫外光が照射された試料によっては表面が活性化し逆に他の物質を吸着しやすくなり洗浄効果が減退する場合がある。このとき、光発生用ガスの循環がその減退を抑えることができる。
【実施例2】
【0039】
図2は本発明の実施例2の試料洗浄装置の説明図である。
なお、この図2に示す実施例2の説明において、前記実施例1の図1に示す構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図2において、実施例2の試料洗浄装置1′では、光発生室6と試料室3との間は、光発生室6で発生した光を透過させる窓材(例えば、MgFの窓材等)31により仕切られており、実施例1の場合と異なり光発生室6と試料室3とは連通していない。これに伴い、ガス流出口17は光発生室6に形成されている。
【0040】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の光源装置4′を備えた試料洗浄装置1′では、光発生室6と試料室3とが隔離されているので、例えば、ガスの種類や試料の種類の組み合わせにより、試料2が光発生用ガスに接触することが望ましくない場合でも、光発生用ガスに試料2を接触させることなく光を照射することができる。また、光発生室6と試料室3が隔離され、光発生室6が密閉されているので、試料室3内の試料2を交換する際に光発生室6が大気に曝されることを防止でき、光発生室6の壁面に汚染物質が付着することを抑えることができる。さらに、試料室3に真空紫外光発生用ガス以外のガスを導入することが出来、そのガスのアシストにより汚染物質の除去作用を高めたり、表面改質効果を高めたりすることも出来る場合がある。その他、実施例2の光源装置4′は、実施例1の光源装置4と同様の作用、効果を奏する。
【実施例3】
【0041】
図3は本発明の実施例3の試料洗浄装置の説明図である。
なお、この図3に示す実施例3の説明において、前記実施例1の図1に示す構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例3は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図3において、実施例3の光源装置4″では、光発生室6内に複数対の放電用電極部材41、42が配置され、各放電用電極部材41,42には給電装置13が接続されている。前記放電用電極部材41,42は、それぞれ電極部(放電電極)43と、前記電極部43の外周を被複する誘電体44とを有し、放電用電極部材41,42間で放電する。
実施例3の試料洗浄装置1″では、光発生室6と試料室3とが共通化されており、光発生室6内の試料ホルダ46上に、光が照射されて洗浄される試料2が載置されている。
【0042】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の光源装置4″を有する試料洗浄装置1″では、前記実施例1と同様の作用、効果を有する。さらに、実施形態3では電極対の長さを長くしたり、数を増加したりすることにより、放電部の面積を任意の大きさにすることができ、大面積照射装置が容易に製作できる。
【0043】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、試料洗浄装置の光源装置に限定されず、顕微分析や露光用の光源装置、半導体、精密電子回路製造過程における洗浄、光学素子の洗浄、試料の表面改質や樹脂の光硬化等、任意の光源装置として使用可能である。
(H02)前記実施例において、光発生用のガスとして、エキシマガスとしてのアルゴンガスやキセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガスを例示したが、これに限定されず、希ガスハライド等のエキシマガスや窒素(N)ガス等の放電により発光する任意のガスを使用可能である。
【0044】
(H03)前記実施例において、試料は試料室内に固定状態で配置したが、これに限定されず、例えば、特願2004−295455号に記載されているように、試料をベルトコンベアで移動させながら光を照射するように構成することも可能である。
(H04)前記実施例において、放電電極の構成は実施例記載の構成に限定されず、特許文献1記載の構成を採用することも可能である。
(H05)前記実施例において、循環ポンプ23、冷却器24、精製器26をガスが通過する順序は、実施例記載の構成が望ましいが、これに限定されず、任意に変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明の実施例1の光源装置が適用された試料洗浄装置の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例2の試料洗浄装置の説明図である。
【図3】図3は本発明の実施例3の試料洗浄装置の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
3…試料室、
4,4′,4″…光源装置、
6…光発生室、
8,43…放電電極、
16…ガス流入口、
17…ガス流出口、
19…ガス供給路、
21+22…循環路、
23…循環ポンプ、
24…冷却器、
26…ガス精製器、
27…排気路、
31…窓材、
V1…供給路開閉バルブ、
V4…排気路開閉バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極が内部に配置された光発生室と、
前記放電電極が放電したとき真空紫外光を発生する真空紫外光発生用ガスを前記光発生室内に流入させるガス流入口と、
前記光発生室内に流入した前記真空紫外光発生用ガスを前記光発生室から流出させるガス流出口と、
前記ガス流出口および前記ガス流入口とを接続する循環路と、
前記循環路上に配置され、前記ガス流出口から流出した前記真空紫外光発生用ガスから不純物を除去して精製するガス精製器と、
を有し、前記ガス流出口から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口から前記光発生室内に流入させることにより前記真空紫外光発生用ガスを循環させることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記真空紫外光発生用ガスを冷却する冷却器を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記循環路上に配置され、前記ガス流出口から流出した前記真空紫外光発生用ガスを前記ガス流入口に移送する循環ポンプを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光発生室に供給される新たな前記真空紫外光発生用ガスが移送されるガス供給路と、
前記ガス供給路を開閉する供給路開閉バルブと、
前記真空紫外光発生用ガスを排気する排気装置と前記光発生室とを接続する排気路と、
前記排気路を開閉する排気路開閉バルブと、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
所望の波長の真空紫外光を発生させる真空紫外光発生用ガスを前記光発生室内に流入させる前に、内部洗浄用の真空紫外光発生用ガスを前記光発生室に供給した状態で、前記放電電極による放電により真空紫外光を発生させて、前記光発生室の洗浄を行うことを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記光発生室に連通し且つ前記ガス流出口が形成され、内部に前記真空紫外光が照射される試料が配置される試料室を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光源装置。
【請求項7】
窓材を介して前記光発生室と仕切られ、前記窓材を通過した真空紫外光が照射される試料が内部に配置される試料室を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−134073(P2007−134073A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323659(P2005−323659)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(505088983)株式会社NTP (5)
【Fターム(参考)】