説明

光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】保存安定性に優れ、一液型に組成することができると共に、基材に対する密着性、耐クラック性、可撓性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化物を与える光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム及びそれらによりソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板を提供する。
【解決手段】光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、(A)分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートを含有する。好適な態様においては、上記熱硬化性成分(C)として、(C−1)ブロックイソシアネートと(C−2)エポキシ樹脂、好ましくは室温で固形のエポキシ樹脂とを組み合わせて含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造等に用いられる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムに関し、さらに詳しくは、保存安定性に優れ、一液型に組成することができ、且つ、基材に対する密着性、耐クラック性、可撓性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化物を与える光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムに関する。本発明はまた、かかる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物やそのドライフィルムによりソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プリント配線板のレジストとして用いられる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の硬化性組成物が主流になっている。
このようなアルカリ現像型の光硬化性・熱硬化性組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸の反応物に多塩基酸無水物を付加させて得られる硬化性樹脂、光重合開始剤、光重合性モノマー及び1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂からなる組成物(特許文献1参照)、多官能エポキシ化合物と、ヒドロキシル基含有置換基を有するフェノール化合物と、不飽和基含有モノカルボン酸との反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性プレポリマー、光重合開始剤、感光性(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ樹脂及び硬化触媒を含むことを特徴とする組成物(特許文献2参照)、1分子中に2個のグリシジル基を有する芳香族エポキシ樹脂と1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する芳香族アルコール樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基にエピハロヒドリンを反応させ、得られた反応物に不飽和基含有モノカルボン酸、次いで酸無水物を付加して得られる硬化性樹脂、光重合開始剤、多官能エポキシ樹脂あるいはさらに感光性(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする組成物(特許文献3及び4参照)、ノボラック型フェノール樹脂とアルキレンオキサイドとの反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、多官能エポキシ樹脂、あるいはさらに感光性(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物(例えば、特許文献5参照)等が挙げられる。
【0003】
上記のように、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物としては従来幾つかの組成系が提案されており、現在、実際のプリント配線板の製造において大量に使用されている。しかしながら、従来の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、はんだ耐熱性などを向上させるために、通常、2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂が熱硬化性成分として含まれている。しかしながら、この多官能エポキシ樹脂は反応性が高いために、これを含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、シェルフライフ(保存寿命)が短く、回路板ブランクへの塗布前に増粘し易いため、一液型に組成することが困難である。そのため、一般に、多官能エポキシ樹脂を主体とした硬化剤溶液と、感光性プレポリマーを主体とし、これに硬化促進剤等を配合した主剤溶液の二液型に組成し、使用に際してこれらを混合して用いられており、作業性の点で問題があった。
【0004】
また、最近では、加工性や硬化膜表面の平滑性の観点から、ソルダーレジストのドライフィルム化が要求されるようになってきた。しかしながら、多官能エポキシ樹脂を含む光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、ドライフィルムの如き形態にすると、室温保存性に問題があり、シェルフライフ(保存寿命)が短くなる。そのため、現在、殆どのソルダーレジストのドライフィルムは、0℃以下で保存する必要があり、輸送や保管に手間が掛かるといったことが問題となっている。
【0005】
上記のような保存安定性の問題を解消するために、熱硬化性成分として、エポキシ樹脂に代えてブロックイソシアネートを用いることが提案されている(特許文献6〜8参照)。エポキシ樹脂に代えてブロックイソシアネートを用いることにより、確かに保存安定性を向上させることはできるが、そのため、基材に対する密着性や無電解金めっき耐性等の特性を確保することが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特公平1−54390号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−288091号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平5−32746号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】国際公開WO 01/53375A1公報(請求の範囲)
【特許文献5】国際公開WO 02/024774A1公報(請求の範囲)
【特許文献6】特開2001−209175号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2002−293874号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特開2007−10794号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、保存安定性に優れ、一液型に組成することができると共に、基材に対する密着性、耐クラック性、可撓性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化物を与える光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルムを提供することにある。
さらに本発明の目的は、かかる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物やそのドライフィルムによりソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートを含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提供される。
好適な態様によれば、上記熱硬化性成分(C)として、(C−1)ブロックイソシアネートと(C−2)エポキシ樹脂、好ましくは室温で固形のエポキシ樹脂とを組み合わせて含有する。別の好適な態様によれば、上記各成分に加えてさらに(D)熱硬化触媒を含有し、好ましくは該熱硬化触媒(D)はメラミンである。尚、本明細書において「室温」とは、通常の作業環境の温度範囲である20〜25℃をいう。
【0008】
本発明の他の側面によれば、支持体と、該支持体上に形成された前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物からなる層とを備えることを特徴とするドライフィルム、あるいは前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物が提供される。
また、本発明の別の側面によれば、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物又はドライフィルムによりソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、(A)光硬化性成分としての分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂と、(C)熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートとを組み合わせて含有するため、保存安定性に優れ、一液型に組成することができると共に、得られる硬化皮膜は可撓性に優れ、基材に対する密着性、耐クラック性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性にも優れている。また、本発明の好適な態様においては、上記熱硬化性成分(C)として、(C−1)ブロックイソシアネートと(C−2)エポキシ樹脂、特に室温で固形のエポキシ樹脂とを組み合わせて含有するため、得られる硬化皮膜の基材に対する密着性や無電解金めっき耐性等の諸特性をさらに向上させることができる。また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、光硬化性及び熱硬化性であると共に、その塗膜はアルカリ水溶液により現像可能である。従って、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、プリント配線板の高密度化、面実装化に対応可能なレジストなどに要求される電気絶縁性、PCT耐性等の特性を充分に満足し、且つ、各種基材に対する密着性、はんだ耐熱性、耐クラック性、可撓性、耐薬品性、無電解めっき耐性などに優れた硬化皮膜が得られると共に、微細な皮膜パターンを容易に形成可能である。
さらに、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、保存安定性に優れているために、この組成物を用いることにより、0℃以上での室温保存性に優れた感光性ドライフィルムを作製することができる。従って、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板の製造において、作業性の点でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者は、前記した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、(A)光硬化性成分としての分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂(以下、カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂という)と、(C)熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートとを組み合わせて含有する場合、保存安定性に優れ、一液型に組成することができると共に、得られる硬化皮膜は可撓性に優れ、基材に対する密着性、耐クラック性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの特性を満足することを見出した。即ち、従来のエポキシアクリレート系のカルボキシル基含有感光性樹脂と熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートを用いることによる特性低下の問題は、カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂とブロックイソシアネートとを組み合わせて用いることにより解消されることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
さらに本発明者の研究によれば、上記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性成分として、(C−1)ブロックイソシアネートと(C−2)エポキシ樹脂、特に室温で固形のエポキシ樹脂とを組み合わせて含有する場合、カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂使用による可撓性向上等の効果を損なうことなく、また熱硬化性成分としてのブロックイソシアネート使用による組成物の保存安定性向上等の効果を損なうことなく、基材、特にポリイミド基板に対する密着性や無電解金めっき耐性をさらに向上させることができ、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト等として有用であることを見出した。特に、室温で固形のエポキシ樹脂を用いることにより、硬化前の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に、固形のエポキシ樹脂が微粒状に分散している状態となる。このように、硬化前の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に、固形のエポキシ樹脂が微粒状に分散していると、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物のポットライフが長くなるため、上記ブロックイソシアネート(C−1)を用いたことによる作用・効果と相俟って、組成物の保存安定性のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性成分としてブロックイソシアネート(C−1)とエポキシ樹脂(C−2)が共存する場合、露光、現像後の後加熱工程で、前記光硬化性成分としてのカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基と、加熱により解離したブロックイソシアネート(C−1)のイソシアネート基との反応によりウレア結合が生成すると共に、前記エポキシ樹脂(C−2)のエポキシ基が反応し、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。またその際に、上記カルボキシル基とエポキシ基の反応により生成した水酸基にイソシアネート基が反応し、樹脂中にウレタン結合が導入されることにより、基材に対する密着性や、得られる硬化皮膜の可撓性をさらに向上させることができる。また、ジャパンエポキシレジン社製JER1004などのビスフェノール型の核体数が2以上のエポキシ樹脂は、フェノキシ結合も併せ持つため、効果的にウレタン結合が得られ易いものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
まず、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物における光硬化性成分としてのカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)としては、分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂であれば、従来公知の各種カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、以下に列挙するようなカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂を好適に用いることができる。
【0014】
(A−1)ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)と、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合と1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(d)との重付加反応により得られるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂、特にポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の1つのヒドロキシル基と1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(d)を加え、末端に不飽和二重結合を導入したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0015】
(A−2)前記ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物などの分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端を(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0016】
(A−3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応生成物、あるいは上記反応により生成した水酸基にさらに無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の飽和又は不飽和多塩基酸無水物を部分的に付加した変性物(e)と、ポリソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)との重付加反により得られるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0017】
(A−4)前記(A−3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物などの分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端を(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0018】
前記したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂の中でも、前記(A−1)及び(A−3)のカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂が好ましい。前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A−1)は、ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)と、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合と1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(d)とを一括混合して反応させてもよく、あるいは上記ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)(1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)の少なくとも1種を含む)とを反応させ、続いて反応停止剤としても機能する上記1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合と1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(d)を反応させてもよい。
【0019】
前記反応は、室温〜100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70〜100℃に加熱することが好ましい。また、上記(a)〜(d)成分の反応比率(モル比)としては、(a):(b+c)=1:1〜2:1、好ましくは1:1〜1.5:1、(a+b+c):(d)=1:0.01〜0.5、好ましくは0.1〜0.3の割合が適当である。反応に際しては、上記1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合と1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(d)の熱重合を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤を添加することができる。また、イソシアネート基とヒドロキシル基の反応を促進するために、例えば、スズ系、アミン系などの触媒を添加することもできる。
【0020】
前記ポリイソシアネート(a)としては、従来公知の各種ポリイソシアネートを使用でき、特定の化合物に限定されない。ポリイソシアネート(a)の具体例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、(o,m,又はp)−キシリレンジイソシアネート、(o,m,又はp)−水添キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられ、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
次に、ポリオール(b)としては、従来公知の各種ポリオールを使用でき、特定の化合物に限定されないが、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテルジオール等のポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、水素化ポリブタジエン系ポリオール、水素化イソプレンポリオール、リン含有ジオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加物ジオール、フェノール性ヒドロキシル基とアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、リン含有ポリオール等を好適に用いることができる。また、ジヒドロキシ脂肪族カルボン酸とε−カプロラクトンの反応生成物など、カルボキシル基を有するポリオールを用いることもでき、この場合、後述する1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)は使用しなくてもよい。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール、又は直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールが挙げられる。また、リン含有ポリオールを用いた場合、ウレタン樹脂に難燃性を付与することができる。これらのポリオールは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールの具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0023】
前記、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールの具体例としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0024】
前記、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールの具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0025】
前記直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、低反り性や可撓性に優れる傾向がある。また、脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、耐錫めっき性、はんだ耐熱性に優れる傾向にある。以上の観点から、これらポリカーボネートジオールは2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールを用いることができる。低反り性や可撓性と、はんだ耐熱性や耐錫めっき性とをバランスよく発現させるには、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3のポリカーボネートジオールを用いるのが好ましい。
【0026】
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200〜5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3である場合は、数平均分子量が400〜2,000のものが好ましい。
【0027】
前記ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、ポリプロピレングリコールのプロピレンオキサイド付加物、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物もしくはブチレンオキサイド付加物、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物、ソルビトールのプロピレンオキサイド付加物、蔗糖のプロピレンオキサイド付加物、蔗糖グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物の末端ヒドロキシル基をエチレンオキサイドでブロックしたトリオール、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物の末端ヒドロキシル基をエチレンオキサイドでブロックしたテトラオール、ポリプロピレングリコールの末端ヒドロキシル基をエチレンオキサイドでブロックしたジオール、ポリプロピレングリコールとエチレンオキサイドをランダム重合させたジオール、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物とエチレンオキサイドをランダム重合させたトリオール、ポリマーポリオール、含燐タイプの反応型難燃ポリオール等が挙げられ、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
前記、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物の具体例としては、6−ヒドロキシ−5−メチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2,4−ジ(ヒドロキシメチル)−6−シクロヘキシルフェノール、3,3’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンゼンメタノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、2−ヒドロキシ−5−フルオロ−1,3−ベンゼンジメタノール、4,4’−メチレンビス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,5−ジメチル−3−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−5−エチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−(1−メチルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタノール、4−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニル)メチル]−3,4−ジメチルフェノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−シクロヘキシルフェノール、2−ヒドロキシ−1,3,5−ベンゼントリメタノール、3,5−ジメチル−2,4,6−トリヒドロキシメチルフェノール、4,4’,4”−エチリジントリス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、2,3,5,6−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,4−ベンゼンジオール、4,4’−メチレンビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]等が挙げられる。
【0029】
前記リン含有ポリオールの具体例としてはFC−450(旭電化工業(株)製)、M−Ester(三光(株)製)、M−Ester−HP(三光(株)製)等が挙げられる。このリン含有ポリオールを用いることによりウレタン樹脂中にリン化合物を導入することができ、難燃性を付与することができる。
【0030】
前記ポリオール(b)がカルボキシル基を有しない場合、1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(c)を用いる必要がある。該化合物(c)の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジヒドロキシ脂肪族カルボン酸や、3官能以上のポリオール化合物と多塩基酸無水物との反応生成物などが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの1分子中に1つ以上のカルボキシル基と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。これらの中でも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸などのエステル結合を有しない化合物を用いると、PCT耐性に優れる硬化物が得られるので、特に好適に使用することができる。
【0031】
前記、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合と1つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(d)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート−アクリル酸付加物、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、トリメチロールプロパン−酸化アルキレン付加物−ジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの1分子中に1つのエチレン性不飽和二重結合を有するモノヒドロキシル化合物は、ポリウレタンの末端封止剤(反応停止剤)として機能するので、合成のし易さの点で有利であり、また、ポリウレタンの末端にエチレン性不飽和二重結合を導入できるので、得られるポリウレタンの光硬化性の点で好ましく、また硬化物の可撓性等の点でも好ましい。
【0032】
前記したようなカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)の酸価は、30〜200mgKOH/gの範囲にあることが望ましく、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの形成が困難となるので好ましくない。尚、樹脂の酸価はJIS K5407に準拠して測定した値である。
【0033】
また、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000の範囲が望ましく、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。重量平均分子量が2,000未満であると、塗膜のタックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0034】
このようなカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)の配合量は、全組成物の20〜70質量%の範囲にあることが望ましく、好ましくは30〜60質量%の範囲である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、組成物の粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0035】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない量的割合で、アルカリ可溶性のカルボキシル基含有樹脂(A’)を上記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)と組み合わせて含有することができる。カルボキシル基含有樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂や、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用でき、特定のものに限定されないが、特に以下に列挙するようなカルボキシル基含有感光性樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでも良い)を好適に使用できる。
【0036】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体の一部に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基とエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0037】
(2)グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0038】
(3)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物と不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0039】
(4)後述するような分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂又は多官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基とをエステル化反応(全エステル化又は部分エステル化、好ましくは全エステル化)させ、生成した水酸基にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0040】
(5)後述するような分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン化合物中の一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0041】
(6)ビスエポキシ化合物とビスフェノール類との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0042】
(7)ノボラック型フェノール樹脂と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のアルキレンオキサイド及び/又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、2,3−カーボネートプロピルメタクリレート等の環状カーボネートとの反応生成物に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた反応生成物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0043】
前記したカルボキシル基含有樹脂(A’)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)100質量部(固形分として、以下同様)に対して50質量部以下の割合が好ましい。
【0044】
前記光重合開始剤(B)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N- ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド等の有機過酸化物;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特に好ましい光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等であるが、特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。そして、その使用量は前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.5〜25質量部の割合が好ましい。
【0045】
前記ブロックイソシアネート(C−1)は、イソシアネート化合物(R−(N=C=O))とブロック剤(BH)とを、下記一般式(1)で示されるように反応させることにより得られる。
【化1】

上記式(1)中、mは2以上の整数であり、通常、2又は3である。
【0046】
ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられるが、組成物の保存安定性や得られる硬化皮膜の基材に対する密着性の点から、イソシアヌレート型が好ましい。イソシアネート化合物の具体例としては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマー並びにそれらの重合体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネート並びにそれら重合体等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート及びその重合体等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硬化皮膜の可撓性等の点からジイソシアネートが好ましい。
【0047】
ブロック剤(BH)としては、活性水素を有しているものが好ましく、活性メチレン化合物、ジケトン化合物、オキシム化合物、フェノール化合物、アルカノール化合物、カプロラクタム化合物などが挙げられる。具体的には、メチルエチルケトンオキシム、ε−カプロラクタムなどを用いることができる。これらのブロック剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、ブロックイソシアネートについては、特開2001−209175号公報及び特開2007−10794号公報に詳細に説明されているので参照されたい。
【0048】
ブロックイソシアネート(C−1)の配合割合は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、ブロック化されたイソシアネート基が0.75〜1.5当量となる範囲にあることが好ましい。上記ブロックイソシアネート(C−1)の配合割合が0.75当量未満である場合、硬化皮膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、1.5当量を超える場合、保存安定性などが低下するので、好ましくない。
【0049】
前記エポキシ樹脂(C−2)の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。また、難燃性付与のために、燐等の原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。
これらエポキシ樹脂(C−2)は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ樹脂(C−2)のエポキシ基が0.1〜1.0当量となる割合で併用することが好ましい。このエポキシ樹脂を併用する場合には、前記ブロックイソシアネート(C−1)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、ブロック化されたイソシアネート基が0.2〜1.5当量となる割合であることが好ましい。
【0050】
前記したエポキシ樹脂(C−2)の中でも、室温で固形のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。室温で固形のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、N−グリシジルフタルイミドなどが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、軟化点が高いエポキシ樹脂や結晶性のエポキシ樹脂が好ましい。尚、室温で固形のエポキシ樹脂の粒径は、スクリーン印刷等に支障をきたさない程度が好ましい。
【0051】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化触媒(D)を含有することができる。そのような熱硬化触媒(D)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特にこれらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体など、密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒として単独で用いることもでき、また前記熱硬化触媒と併用することもできる。これらの熱硬化触媒の中でも、メラミンは、熱による銅の変色を防止するのにも好適であることから特に好ましく、また変色防止剤として添加することもできる。
【0052】
これら熱硬化触媒(D)の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記ブロックイソシアネート(C−1)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0053】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、光硬化性を向上させる目的で、反応性希釈剤として感光性(メタ)アクリレート化合物(E)を含有することができる。感光性(メタ)アクリレート化合物(E)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類;カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ε―カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレートなどのカプロラクトン変性のアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などの感光性(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、組成物の光硬化性を向上させる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。しかし、室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物を多量に使用すると、塗膜の指触乾燥性が得られず、また塗膜の特性も悪化する傾向があるので、多量に使用することは好ましくない。感光性(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、100質量部以下、好ましくは50質量部以下が適当である。
【0054】
また、本発明に用いる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記光硬化性成分や熱硬化性成分を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整するために、有機溶剤(F)を配合することができる。
有機溶剤(F)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。有機溶剤の配合量は、用途等に応じた任意の量とすることができる。
【0055】
本発明で用いる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーを単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させる目的で用いられる。無機フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、300質量部以下、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0056】
本発明で用いる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、着色剤を配合することができる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなど、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0057】
また、本発明で用いる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、フェノチアジン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロールなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤等の難燃剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0058】
ドライフィルム化に際しては、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を前記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム(支持体)上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法や、ノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0059】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の透明もしくは透光性のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルム(保護フィルム)を積層することが望ましい。
【0060】
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、透明もしくは透光性のポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムや、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜とキャリアフィルムとの接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0061】
以上のような組成を有する本発明の液状の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、前記ドライフィルムの形態の場合、基材上にホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる(前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層と基材とが接触するように貼り合わせる)。上記フィルムの光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを備えたドライフィルムの場合、カバーフィルム(又はキャリアフィルム)を剥がした後、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層と基材とが接触するようにホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる。
【0062】
その後、得られた塗膜(光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層)に対し(上記ドライフィルムを用いた場合は、基材上にラミネート後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥がさず)、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。露光は、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光する方法、あるいはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する方法のいずれでもよい。この露光により、塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。次いで、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される(上記ドライフィルムを用いた場合、露光後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥がし、未露光部を現像する)。その後さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、又は活性エネルギー線の照射後加熱硬化もしくは加熱硬化後活性エネルギー線の照射で最終硬化(本硬化)させることにより、前記カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基と、加熱により解離したブロックイソシアネート(C−1)のイソシアネート基との反応によりウレア結合が生成すると共に、前記エポキシ樹脂(C−2)のエポキシ基が反応し、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。またその際に、上記カルボキシル基とエポキシ基の反応により生成した水酸基にイソシアネート基が反応し、樹脂中にウレタン結合が導入されることにより、基材に対する密着性や、得られる硬化皮膜の可撓性を向上させることができる。
【0063】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板や、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0064】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザー、固体レーザーのどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜1000mJ/cm、好ましくは100〜900mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0065】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0067】
合成例1
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製、T−5650J、平均分子量800)280部(3モル)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチロールプロピオン酸70部(4.5モル)、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート220部(8.5モル)及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノヒドロキシル化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレート40部(2.6モル)を投入した。撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50質量%となるようにジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタンを得た。得られたカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂の固形分酸価は48mgKOH/gであった。
【0068】
合成例2
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物として、2官能ビスフェノール−A型エポキシ樹脂(日本化薬社製RE−310S、エポキシ当量:183.5g/当量)を367.0部、エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物としてアクリル酸(分子量:72.06)を144.1部、熱重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテルを1.02部及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを1.53部仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(理論分子量:511.1)を得た。次いで、この反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを445.93部、熱重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.70部、カルボキシル基を有するジオール化合物としてジメチロールプロピオン酸(分子量:134.1)を118.8部加え、60℃に昇温させた。この溶液にジイソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネート(分子量:222.29)209.6部を反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させた。この溶液に、多塩基酸無水物として無水コハク酸(分子量:100.1)36.7部、カルビトールアセテート43.0部を添加した。添加後、温度を95℃に昇温し、6時間反応させ、カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂65重量%を含む樹脂溶液を得た。酸価を測定したところ、66.61mgKOH/g(固形分酸価:102.48mgKOH/g)であった。
【0069】
合成例3
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子(株)製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部及びトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部及びトルエン252.9部を、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部及びトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形分酸価87.7mgKOH/gであった
【0070】
実施例1〜6及び比較例1、2
前記合成例1〜3で得られた各ワニスを用いた表1に示す配合成分を3本ロールミルで混練し、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
評価用ドライフィルムの作製:
得られた各光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、フィルムアプリケーターにて乾燥後膜厚約40μmとなるように支持フィルムである16μm厚のPETフィルムに塗工し、熱風循環式乾燥炉にて80℃にて30分間乾燥を行い、組成物層を形成した。その後、組成物層面に保護フィルムである25μm厚のエンボス付ポリプロピレンフィルムを60℃の熱ロールにて貼り合わせ、ドライフィルムを作製した。
得られた各ドライフィルムを用い、以下のような試験方法にて現像性(ラミネートから現像までの現像マージンの確認)、感度、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、保存安定性、可撓性の各試験を行った。その結果を表2に示す。
【0073】
現像性(ラミネートから現像までの現像マージンの確認):
現像工程までの基板作製工程における現像マージンを確認するため、上記のようにして得られたドライフィルムから保護フィルムを剥がし、組成物層面が基板表面に接触するように、酸洗浄及び水洗・乾燥した銅貼積層基板に重ね合わせた。その後、PETフィルム面を上面にして、真空ラミネーター(名機製作所製MVLP−500)にてラミネートした。得られた試験基板を、90℃の熱風順環式乾燥炉に30分間投入することで熱的に加速試験を行い、PETフィルムを剥がした後、液温30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで120秒間スプレー現像を行い、目視にて残渣の有無を評価した。
○:現像残渣が殆ど残っていない。
△:現像残渣が若干残っている。
×:現像残渣が残っている。
【0074】
感度:
コダックステップタブレットNo.2(21段)を試験片のPETフィルム上に密着させ、オーク製作所社製HMW−680GW型露光機を用い、PETフィルム上から350mJ/cmのエネルギー量を照射させた。照射後にPETフィルムを剥離し、液温30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで120秒間スプレー現像を行い、残存感度を評価した。段数が高いほど露光量に対する感度が高いこととなる。
【0075】
はんだ耐熱性:
銅箔厚18μmのプリント基板の銅箔表面をバフ研磨し、水洗後に乾燥を行った。一方、前記のようにして得られたドライフィルムから保護フィルムを剥がし、組成物面層が基板表面に接触するようにプリント基板に重ね合わせた。その後、PETフィルム面を上面にして、真空ラミネーター(名機製作所製MVLP−500)にてラミネートした。次いで、ラミネート後の基板に対して、紫外線露光装置((株)オーク製作所製HMW−680GW)を用いて露光を行い、1%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで120秒間スプレー現像を行った後、150℃の熱風順環式乾燥炉にて熱硬化反応を行った。露光量はステップタブレット(コダック社製No.2 21段)にて5段の残存感度が得られる露光量とした。得られた各試験基板に、ロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽に10秒浸漬後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行った後の塗膜状態を評価した。
○:ピーリング後に塗膜に変化のないもの。
×:ピーリング後に剥離を生じるもの。
【0076】
無電解金めっき耐性:
上記はんだ耐熱性試験に用いた試験基板と同じ方法、条件にて熱硬化まで行った試験基板に、市販の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、めっき処理後150℃にて10分間十分に乾燥した後、テープピーリングにより、硬化塗膜の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した。
○:全く剥がれがないもの。
×:硬化塗膜に剥がれがあるもの。
【0077】
保存安定性:
ドライフィルム化前のインキの状態にて、50℃の恒温恒湿槽に5日間保管し、保管前後の粘度変化を測定し、増粘率を求めた。粘度測定はコーンプレート型粘度計にて、インキ温度25℃にて測定した。増粘率は、増粘率(%)=保管後粘度÷保管前粘度×100にて算出した。
○:増粘率が200%未満のもの。
×:増粘率が200%を超えるか又はゲル化したもの。
【0078】
可撓性:
25μm厚のポリイミドフィルム(東レデュポン社製 カプトン100EN)の片面に、前記のようにして作製したドライフィルムを用いて、前記はんだ耐熱性試験と同様の方法、条件にてラミネート、露光、現像、熱硬化まで行った。得られた試験基板を8cm×1cmの短冊状にカットし、組成物層面を外側にして180°折り曲げ、50倍のスコープを用いてクラックの発生などを確認した。
○:クラック、しわの発生無し。
△:しわが発生。
×:クラックが発生。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例7、8及び比較例3、4
前記合成例1〜3で得られた各ワニスを用いた表3に示す配合成分を3本ロールミルで混練し、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0081】
【表3】

【0082】
評価基板の作製:
得られた各光硬化性・熱硬化性組成物をスクリーン印刷法にて、120メッシュのポリエステルスクリーンフィルムを用い、乾燥後膜厚約20μmとなるようにプリント基板に印刷し、熱風循環式乾燥炉にて80℃にて30分間仮乾燥を行った。次に、所定のパターンを得るためのネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製HMW−680GW)を用いて露光を行い、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行った後、150℃の熱風順環式乾燥炉にて熱硬化反応を行った。露光量はステップタブレット(コダック社製No.2 21段)にて5段の残存感度が得られる露光量とした。得られた試験基板を用い、前記と同様にしてはんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、可撓性の各試験を行った。さらに、乾燥管理幅及び仮乾燥後の指触乾燥性(タック性)についても以下のようにして評価を行った。その結果を表4に示す。
【0083】
乾燥管理幅:
前記実施例7、8及び比較例3、4の各光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、プリント基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、90℃で乾燥時間を各々10分間隔で変えた基板を用意した。その後、1%NaCO水溶液によりスプレー圧0.2MPaで120秒間現像し、乾燥管理幅(現像可能な最長乾燥時間)を調べた。
【0084】
仮乾燥後の指触乾燥性:
前記実施例7、8及び比較例3、4の各光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、プリント基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分間、乾燥させた基板を作成し、その塗膜表面の指触乾燥性を評価した。
○:ベタ付きのないもの。
△:わずかにベタ付きのあるもの。
×:ベタ付きのあるもの。
【0085】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中にカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性成分としてのブロックイソシアネートを含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱硬化性成分(C)として、(C−1)ブロックイソシアネートと(C−2)エポキシ樹脂とを組み合わせて含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(D)熱硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化触媒(D)がメラミンであることを特徴とする請求項3に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物からなる層とを備えることを特徴とするドライフィルム。
【請求項6】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化物又は請求項5に記載のドライフィルムによりソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板。

【公開番号】特開2009−185182(P2009−185182A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26843(P2008−26843)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】