説明

光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物。

【課題】 紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、若しくはさらに加熱によって硬化し、加水分解性が低く、電気絶縁性、HAST耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供する。
【解決手段】 (A)二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸から誘導されるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂、(B)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物、さらに前記組成物に、(C)一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂、又はさらに、(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含む組成物、及びその硬化物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、特にプリント配線板製造に有用な光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、ソルダーレジストを必要とするプリント配線板等や、各種電子部品の絶縁樹脂層として有用な紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、若しくはさらに加熱によって硬化し、加水分解性が低く、電気絶縁性、HAST耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線の照射による樹脂の硬化は、その硬化速度が速いこと、無溶剤であることなどから、金属塗装、木材コーティング、印刷インキ、電子材料などに広く利用されている。これらの分野において用いられる光硬化性樹脂組成物は、一般的に、不飽和二重結合を有するプレポリマー、重合性モノマー、及び光重合開始剤を必須成分としている。光硬化性成分として主に用いられる上記プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及びエポキシアクリレートなどのアクリレート系樹脂が挙げられる。これらアクリレート系樹脂は、製造が容易であり、光硬化性に優れていることから、広く用いられている。
【0003】
また、最近の半導体部品の急速な進歩により、電子機器は小型軽量化、高性能化、多機能化の傾向にあり、これらに追従してプリント配線板の高密度化が進みつつある。このような高密度化に対応して、QFP(クワッド・フラットパック・パッケージ)、SOP(スモール・アウトライン・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージに代わって、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、CSP(チップ・スケール・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージが登場した。このようなパッケージ基板や車載用のプリント配線板に用いられるソルダーレジスト(例えば、特許文献1参照)などの絶縁材料に対しては、高い絶縁信頼性が要求されている。しかしながら、前述のアクリレート系樹脂は、加水分解性が高く、電気絶縁性に劣るという問題があった。一方、電気絶縁性に優れるメタクリレート系樹脂は、光硬化性がアクリレート系樹脂に比べて、著しく劣るという問題があった。このような問題に対して、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどの多官能メタクリレート系化合物の合成も試みられたが、結晶性が強く、製品化には至っていないというのが、現状である。
【0004】
さらに、最近、光硬化性に優れる多分岐構造を持つ不飽和基含有多分岐化合物が、提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この不飽和基含有多分岐化合物は、二官能以上のエポキシ化合物と二官能以上のポリカルボン酸又はポリフェノール化合物を反応させているため、自己発熱により反応のコントロールが難しなり、工業的に大量生産することは、困難であった。
【特許文献1】特開平11−315107号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】国際公開WO03/087186公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、若しくは、さらに加熱によって硬化し、加水分解性が低く、電気絶縁性、HAST耐性に優れる光硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の基本的な態様としては、(A)二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸から誘導されるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂、(B)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物が提供される。
さらに、上記組成物に、(C)一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂を含むことを特徴とするアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物、及び前記アルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物に、さらに(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含むことを特徴とするアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物が提供される。
また、他の態様として、前記光硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線照射、若しくはさらに熱硬化して得られる硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、加水分解性が低く、電気絶縁性、HAST耐性に優れていることから、高い絶縁信頼性を要求されるパッケージ基板や、自動車の電子制御システムに組み込まれる車載用プリント配線板に用いることができる。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物に用いられるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂は、通常、固形となることから、指触乾燥性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供することができ、プリント配線板の生産性を向上することができる。
さらに、このような固形のメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂を用いることにより、ドライフィルム化も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸から誘導されるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂、(B)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物が、加水分解性が低く、電気絶縁性、HAST耐性に優れており、さらに多分岐構造をとることにより、メタクリロイル基含有化合物でありながら、活性エネルギー線硬化性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、上記光硬化性樹脂組成物に、(C)一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂を含む光硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線を選択的に照射した後、希アルカリ水溶液により現像することにより、パターン形成が可能なことを見出した。さらにまた、前記希アルカリ水溶液により現像することにより、パターン形成が可能な光硬化性樹脂組成物に、(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含む光硬化性樹脂組成物が、電気絶縁性、HAST耐性、耐熱性に優れ、高い絶縁信頼性を要求されるパッケージ基板や、自動車の電子制御システムに組み込まれる車載用プリント配線板に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
以下、本発明の光硬化性樹脂組成物の構成成分について、詳細に説明する。
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸から誘導されるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)は、下記反応式
のように、








【化1】



初めに、二官能エポキシ樹脂(a)にメタクリル酸が反応し、エポキシ基が開環し、二級のアルコール性水酸基が生成する。さらに、この反応系を窒素系の塩基性触媒の存在下で維持し続けると、前記二級のアルコール性水酸基に、二官能エポキシ樹脂のエポキシ基が、順次反応して、多分岐化が起こる。
【0010】
このメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)の合成に用いられる二官能エポキシ樹脂(a)としては、公知慣用の二官能エポキシ化合物が用いられるが、耐熱性等から、芳香族二官能エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性の芳香族二官能エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂;芳香族二価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;キシレノールから誘導された二官能エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂をジシクロペンタジエンで変性したエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂をジカルボン酸類で変性したエステル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】
前記エステル変性エポキシ樹脂としては、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がジカルボン酸類中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で変性して得られるものが挙げられる。ここで用いるジカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0012】
前記ジカルボン酸類は、1種または2種以上を用いることが可能である。また、一部に安息香酸の様な芳香族モノカルボン酸やプロピオン酸、ステアリリル酸等の脂肪族モノカルボン酸も使用することが可能である。芳香族二官能エポキシ樹脂をジカルボン酸類で変性する場合は、エポキシ基に対して少ないモル量のカルボン酸を反応させ、分子中にエポキシ基を残存させることが必要である。
【0013】
このような二官能エポキシ樹脂(a)としては、硬化性に優れる樹脂組成物が得るために、エポキシ当量が135〜1,000g/当量であるものが好ましく、エポキシ当量が135〜500g/当量であるものがより好ましい。また、硬化物の機械物性に優れる樹脂組成物が得られることから、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又は1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が最も好ましい。
【0014】
上記多分岐化反応に用いられる触媒としては、窒素系の塩基性触媒が好適に用いられる。具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、ジエタノールアミン等の3級アミン類;テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニュウムハイドロオキサイド等の4級アンモニュウムヒドロキシド類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;その他の非ハロゲン系窒素化合物が挙げられる。
【0015】
上記のように、多分岐化を行なうためには、二官能エポキシ樹脂(a)中のエポキシ基がメタクリル酸のカルボキシル基に対して過剰であることが必須であり、二官能エポキシ樹脂(a)の仕込み当量数が、メタクリル酸1当量に対して、1.1〜5.5当量となる範囲、より好ましくは1.25〜3.0となる範囲であることがより好ましい。
上記範囲より少ない場合、二官能エポキシ樹脂のメタクリレート化物が主体となり、多分岐化が起こらなくなるから、好ましくない。一方、上記範囲より、多い場合、多分岐化していない未反応のエポキシ樹脂が残ったり、未反応のエポキシ基が保存安定性を低下させるので、好ましくない。
【0016】
前記触媒の使用量としては、触媒量が多いほど反応が進行しやすいがゲル化しやすくなり、組成物の安定性が悪化するため、二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸の合計重量に対して10〜10,000ppmの範囲が好ましい。また、このような窒素系の塩基性触媒は、反応の進行に合わせて、反応途中で追加しても良い。
反応温度は、通常、攪拌を行ないながら温度70〜170℃、好ましくは100〜150℃で反応させる。このとき重合禁止剤や酸化防止剤を使用してもよく、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルハイドロキノン、2−6−ジターシャリブチル−4−メトキシフェノール、銅塩類、フェノチアジン等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸エステル類、亜リン酸ジエステル類等が挙げられる。
反応時間は、温度との影響を受けるが、前記した温度範囲では、メタクリレート化が0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間であり、多分岐化が1〜20時間、好ましくは2〜15時間である。
【0017】
また、上記反応は、無溶剤、有機溶剤存在下及び/又は反応性希釈剤存在下で行なうことが可能である。樹脂成分に対する有機溶剤や反応性希釈剤量が多くなると、反応速度は遅くなるため、合成中の樹脂割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
前記有機溶剤、反応性希釈剤としては、種々のものが使用することが可能であり、有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエーテル系溶剤や酢酸エステル類等が挙げられる。また、反応性希釈剤としては、各種アクリレートやメタクリレートのモノマー、オリゴマー、ビニルモノマー等を使用することが可能である。
【0019】
このようにして得られる本発明のメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂の平均分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で1,500〜10,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で3,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、数平均分子量(Mn)で1,500〜8,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で3,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲より、分子量が小さいと、多分岐構造による感度向上効果がえられなくなるため、好ましくない。一方、上記範囲より、大きいとゲル化が起こり易く、合成が困難となるので、好ましくない。
【0020】
このようにして得られるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)は、反応性の高いメタクリル酸のカルボキシル基がエポキシ基と反応した後、生成した二級のアルコール性水酸基がエポキシ基と反応するため、上記樹脂末端に未反応のエポキシ基を有している場合が多く、後述のカルボン酸含有樹脂(C)と配合した場合、保存安定性が低下するため、上記多分岐化反応後、未反応のエポキシ基に不飽和モノカルボン酸又は飽和モノカルボン酸を反応させ、未反応のエポキシ基の量を減らすことが好ましい。上記不飽和モノカルボン酸又は飽和モノカルボン酸としては、光硬化性の面から、不飽和モノカルボン酸であるアクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましいが、酢酸や乳酸などの飽和カルボン酸を用いることもができる。
上記反応は、多分岐化終了後の反応物のエポキシ当量を測定し、その結果を基に、エポキシ基1当量に対して、上記不飽和モノカルボン酸又は飽和モノカルボン酸を、0.9〜1.1となる範囲で反応させることが経時安定性の面から、好ましい。
【0021】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)を効率良く、光硬化させるため、光重合開始剤(B)が用いられる。
前記光重合開始剤(B)としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシー2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンジル、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類、更に下記一般式(I)で示されるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤
【化2】


(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

が、挙げられる。
上記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアーOXE)、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure PDO)や、
下記式(II)で表わされる光重合開始剤
【化3】


が挙げられる。上記式(II)で表わされる光重合開始剤、即ち2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー下CGI−325と略す。)は、有機溶剤に難溶であるため指触乾燥性に優れ、プリント配線板製造に対して有用な350〜420nmの紫外線に対して少量で効率良くラジカルを発生し光重合させる事、更に熱硬化時やレーザー露光時の熱により光重合開始剤が昇華し難いことが無い事から、レーザー・ダイレクト・イメージング装置用光硬化性樹脂組成物として、好ましく用いられる。
また、通常の接触露光機に対しては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類が好適に用いられる。
これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤(B)の配合割合は、前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜75質量部が適当であるが、上記オキシムエステル系光重合開始剤の場合、0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜5質量部が適当である。光重合開始剤の使用量が上記範囲より少ない場合、光硬化性が悪くなり、一方、多い場合は、硬化塗膜特性が低下するので好ましくない。
【0022】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、光開始助剤として、3級アミン化合物やベンゾフェノン化合物を含有することができる。そのような3級アミン類としては、エタノールアミン類、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)等が挙げられる。これら公知慣用の3級アミン化合物は、単独で又は2種類以上の混合物として使用できる。特に好ましい3級アミン化合物は、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンであるが、特にこれらに限られるものではなく、波長350〜420nmの領域で光を吸収し、水素引き抜き型光重合開始剤と併用することによって増感効果を発揮するものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0023】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂(C)を配合することにより、希アルカリ水溶液でパターン形成可能な現像型レジストにすることができる。
上記一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂(C)としては、分子中にカルボキシル基を有する公知慣用の共重合樹脂が使用できる。さらに、分子中にエチレン性不飽和結合を併せ持つカルボン酸含有感光性樹脂(C’)が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましく、使用できる。
具体的には、下記に列挙するようなカルボン酸含有樹脂(C)が挙げられる。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上とを共重合することにより得られるカルボン酸含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライドなどによって、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(6)ポリビニルアルコール誘導体などの水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基含有のカルボン酸含有感光性樹脂、
(7)多官能エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物(例えば、ジメチロールプロピオン酸など)との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(8)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の第一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(9)多官能エポキシ樹脂(例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)に不飽和モノカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)を反応させた後、多塩基酸無水物(例えば、テトラヒドロフタル酸無水物など)を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂に、更に、一分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(10)ビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させて得られる二官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物と、ジメチロールプロピオン酸又はジメチロールブタン酸、及びイソホロンジイソシアネートを反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、又は更に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂、
(11)ジメチロールプロピオン酸又はジメチロールブタン酸、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、ポリオール、及びポリイソシアナートを反応させて得られるカルボン酸含有感光性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
これらの例示の中で好ましいものとしては、上記(2)、(5)、(7)、(9)、(10)、(11)のカルボン酸含有感光性樹脂であり、特に上記(9)、(10)及び(11)のカルボン酸含有感光性樹脂が、光硬化性、硬化塗膜特性の面から好ましい。
上記(9)のカルボン酸含有含有感光性樹脂は、感光性のエチレン性不飽和基の含有率が高く、また、樹脂骨格から離れた位置にあるため、高感度化が容易であり、レーザー・ダイレクト・イメージング工法にも対応し得るアルカリ現像型で、熱硬化性を有する光硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。また、上記(10)、(11)のカルボン酸含有含有感光性樹脂は、ウレタン結合を有する線状高分子であり、可撓性に優れており、また、硬化収縮が少ないことから、フレキシブルプリント配線板や薄板プリント配線板に用いた時、反り等が無い硬化塗膜を提供することが可能となる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0025】
上記のようなカルボン酸含有樹脂(C)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記カルボン酸含有樹脂(C)の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボン酸含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
また、上記カルボン酸含有樹脂(C)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
本発明の光硬化性樹脂組成物を、アルカリ水溶液でパターン形成できるアルカリ現像型にする場合、このようなカルボン酸含有樹脂(C)及び/又はカルボン酸含有感光性樹脂(C’)を、全組成物中に、20〜70質量%、好ましくは30〜50質量%配合する必要がある。上記範囲より少ない場合、希アルカリ水溶液でパターン形成が出来なくなる。一方、上記範囲より多い場合、耐現像性が低下したり、塗膜特性が低下するので好ましくない。
【0026】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物を、耐熱性に優れるアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物にする場合、アルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物に、一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)(以下、環状(チオ)エーテル化合物と略す場合がある。)を配合することができる。
前記一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)としては、一分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、一分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(D−1)、一分子内に少なくとも2つ以上のオキセタン基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(D−2)、一分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0027】
前記多官能性エポキシ化合物(D−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製エピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0028】
前記多官能オキセタン化合物(D−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0029】
前記一分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0030】
このような環状(チオ)エーテル化合物(D)の配合量は、前記カルボン酸含有樹脂(C)のカルボキシル基1当量に対して、0.5〜2.0当量、好ましくは、0.8〜1.5当量となる範囲である。環状(チオ)エーテル化合物(D)の配合量が、上記範囲より少ない場合、カルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、上記範囲を超えた場合、低分子量の環状(チオ)エーテル化合物(D)が残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0031】
上記環状(チオ)エーテル化合物(D)を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などがある。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0032】
熱硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えばカルボン酸含有樹脂(C)または環状(チオ)エーテル化合物(D)100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。
【0033】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物は、前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)やカルボン酸含有樹脂(C)の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。
このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0034】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性モノマーで、希釈することもできる。
上記重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルのアクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。これらの中で、特に分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である多官能(メタ)アクリレート化合物が、光硬化性に優れ好ましい。
さらに、ビスフェノールA、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0035】
このような一分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性モノマーの配合量は、前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)100質量部に対して、120質量部以下、より好ましくは、10〜70質量部の割合である。前記配合量が、120質量部を超えた場合、電気絶縁性等が低下したり、塗膜が脆くなるので好ましくない。
【0036】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0037】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、例えば前記重合性モノマーで塗布方法に適した粘度に調整し、スクリーン印刷法でパターン印刷し、活性エネルギー線を照射して光硬化させることができる。
また、前記カルボン酸含有樹脂(C)を含むアルカリ現像型の場合、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により全面塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。
さらに、前記一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)を含む場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記不飽和基含有カルボン酸樹脂(C)のカルボキシル基と、一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0038】
上記基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0039】
上記アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
また、活性エネルギー線照射に用いられる照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0040】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0042】
合成例1:メタクリロイル基含有多分岐化合物の合成
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた1Lセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート82.8gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製 EPICLON850、エポキシ当量=188g/当量)376gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン2.0gを加えた後、メタクリル酸103.2g(1.2モル、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.6)を仕込んだ。触媒としてテトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド1.0g(樹脂分の0.21%)を添加し、撹拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートの混合物を得た。この時の酸価(固形分換算)は0.50mgKOH/gであった。さらに、前記反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として、約2.5時間毎にサンプリングを行い、酸価、エポキシ当量、及びGPCによる分子量分布を測定した。その時の測定結果を、表1に示した。









【0043】
【表1】


【0044】
表1の結果から判るように、分子量が安定化した10時間で、反応を終了した。この反応溶液には、未反応のエポキシ基が残存することから、反応溶液を、100℃まで冷却後、上記エポキシ当量の測定結果に基づき、アクリル酸8.4g(0.117モル)を添加し、約8時間反応させた。得られた反応溶液のエポキシ当量は、36,500に上昇しており、未反応のエポキシ基は、約0.007モルであることから、反応を終了し、出光石油化学社製の石油系溶剤(イプゾール#150)82.8gを添加し、希釈・混合後、取り出した。
このようにして得られたメタクリロイル基含有多分岐化合物は、不揮発分=74.3質量%、二重結合当量=390g/当量、重量平均分子量=8,700であった。以下、このメタクリロイル基含有多分岐樹脂溶液を、A−1ワニスと称す。
【0045】
合成例2:カルボン酸含有感光性樹脂の合成1
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた1Lセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製 ECON−104S、エポキシ当量=220g/当量)220部(1当量)を入れ、カルビトールアセテート218部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸50.4部(0.7当量)、p−ヒドロキシフェネチルアルコール41.5部(0.3
当量)を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物(水酸基:1.3当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物91.2部(0.6当量)を加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボン酸含有感光性樹脂溶液は、不揮発分=65質量%、固形分酸価=83mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をC−1ワニスと称す。
【0046】
合成例3:カルボン酸含有感光性樹脂の合成2
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ化合物として、日本化薬社製RE310S(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0g(2当量)、アクリル酸を142.7g(2当量)、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを2.94g、及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.53g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシアクリレート化合物を得た。
次いで、この反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを581.1g、ジメチロールプロピオン酸 100.6g(0.75当量)を加え、45℃に昇温させた。この溶液に、イソホロンジイソシアネート333.4g(3.0当量)を反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、イソシアネート基の吸収波長である2250cm−1付近の吸収が無くなるまで6時間反応させ、更に98℃の温度で2時間反応させた。
更に、この反応溶液を85℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物 38.0g(0.25当量)を加え、酸無水物基の吸収波長である1780cm−1付近の吸収がなくなるまで4時間反応させた。このようにして得られたカルボン酸含有感光性樹脂溶液は、不揮発分=60質量%、固形分酸価=66.8mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をC−2ワニスと称す。
【0047】
合成例4:カルボン酸含有感光性樹脂の合成3
温度計、撹拌機および環流冷却器を備えた5Lセパラブルフラスコに、ポリマーポリオールとしてポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製PLACCEL208、分子量830) 1,245g(3.0当量)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチロールプロピオン酸 201g(1.5当量)、ポリイソシアナートとしてイソホロンジイソシアナート 777g(7.0当量)及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート 119g(1.02当量)、さらにp−メトキシフェノール及びジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエンを各々0.5gずつ投入した。攪拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート0.8gを添加した。反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して、80℃で攪拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了し、粘稠液体のウレタンアクリレート化合物を得た。カルビトールアセテートを用いて不揮発分=50質量%に調整した。このようにして得られたカルボン酸含有感光性樹脂溶液は、不揮発分=50質量%、固形分酸価=47.0mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をC−3ワニスと称す。
【0048】
〈光硬化性樹脂組成物の調整〉
実施例1及び比較例1
前記合成例1で得られたA−1ワニスを用いた表2に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、光硬化性樹脂組成物を得た。



















【0049】
【表2】

【0050】
性能評価:
回路形成されたFR−4基板をバフ研磨した後、上記実施例1及び比較例1の光硬化性樹脂組成物を、スクリーン印刷法にて、パターン印刷した。その後、80W/cm 3灯の高圧水銀灯で、1500mJ/cm照射し、紫外線硬化した(乾燥膜厚15μm)。その後、150℃、30分間、熱風循環式乾燥炉で、エージングを行なった。
このようにして得られた評価基板を用いて、以下のようにして、はんだ耐熱性と、鉛筆硬度を測定した。その結果を、表3に示した。
【0051】
(1)はんだ耐熱性
上記のようにして得られた評価基板に、ロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬し、硬化塗膜の状態を以下の基準で評価した。
○:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化塗膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0052】
(2)鉛筆硬度
上記のようにして得られた評価基板の銅箔上の鉛筆硬度を、JIS K −5400 の試験方法に従い、荷重1kgをかけ、皮膜にキズが付かない最も高い硬度を求めた。




【0053】
【表3】


【0054】
表3から明らかなように、本発明のメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂を用いた光硬化性樹脂組成物は、従来のフェノールノホラック型エポキシアクリレート樹脂を用いたものと、ほぼ同様の耐熱性と硬度を有している。
【0055】
〈アルカリ現像型で熱硬化性を有する光硬化性樹脂組成物の調整〉
実施例2〜4及び比較例2〜6
前記合成例1〜4で得られたA−1ワニス、C−1ワニス、C−2ワニス、及びC−3ワニスを用いた表4に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、光硬化性樹脂組成物を得た。




























【0056】
【表4】


【0057】
性能評価:
回路形成されたFR−4基板をバフ研磨した後、上記実施例2、3及び比較例2〜6のアルカリ現像型で熱硬化性を有する光硬化性樹脂組成物を、スクリーン印刷法にて、全面印刷し、80℃、20分乾燥し、評価基板を作成した。
【0058】
(3)指触乾燥性
上記評価基板の塗膜表面の指触乾燥性を、以下の評価基準で評価した。
○:全く、べた付きないもの
△:ほんの僅かに、べた付きのあるもの
×:べた付きのあるもの
【0059】
(4)はんだ耐熱性
上記のそれぞれの評価基板を用い、ココダックNo.2のステップタブレットを当て、6段となる露光量を求めた。上記の各評価基板にソルダーレジストパターンが描かれたネガパターンを当て、前記結果の露光量を照射し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧0.2MPaの現像機で、現像し、パターン形成した。その後、150℃、60分間、熱硬化して、硬化塗膜を得た。
この硬化塗膜に、ロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に30秒間浸漬し、硬化塗膜の状態を以下の基準で評価した。
○:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化塗膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化塗膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0060】
(5)無電解金めっき耐性
上記と同様に、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作成した。各評価基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミッド社製、MetexL−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬して脱脂し、次いで流水中に3分間浸漬して水洗した。この評価基板を14.3wt%過硫酸アンモン水溶液に室温で1分間浸漬し、ソフトエッチングを行い、次いで流水中に3分間浸漬して水洗した。10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後、流水中に30秒〜1分間浸漬して水洗した。この評価基板を30℃の触媒液(メルテックス社製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に5分間浸漬し、触媒付与を行った後、流水中に3分間浸漬して水洗した。触媒付与を行った評価基板を、85℃のニッケルめっき液(メルテックス社製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に30分間浸漬して、無電解ニッケルめっきを行った。10vol%硫酸水溶液に室温で評価基板を1分間浸漬した後、流水中に30秒〜1分間浸漬して水洗した。次いで、試験基板を95℃の金めっき液(メルテックス社製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に30分間浸漬して無電解金めっきを行った後、流水中に3分間浸漬して水洗し、さらに60℃の温水に3分間浸漬して湯洗した。十分に水洗後、水をよくきり、乾燥し、無電解金めっきをした評価基板を得た。このように無電解金めっきをした基板を用いて、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について、次の基準で評価した。
○:全く変化が認められない。
△:塗膜がほんの僅かに剥がれ、又は変色が認められた。
×:塗膜に剥がれが認められる。
【0061】
(6)PCT耐性
上記と同様に、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作成した。この評価基板を、121℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽に48時間入れ、硬化塗膜の状態変化を評価した。以下の評価基準で評価した。
○:剥がれ、変色そして溶出なし。
△:剥がれ、変色、溶出のいずれかがあり。
×:剥がれ、変色そして溶出が多く見られる。
【0062】
(7)HAST試験後の絶縁性
上記と同様に、クシ型電極(L/S=100/100μm)が形成されたFR−4基板に、前記光硬化性樹脂組成物を全面印刷し、露光・現像した後、熱硬化して評価基板を作成した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、168時間、HAST試験を行なった。HAST試験後の電気絶縁性を、測定した。
【0063】
(8)反りの評価
上記と同様に、基材厚60ミクロンのFR−4基板に、前記光硬化性樹脂組成物を全面印刷し、露光・現像した後、熱硬化して評価基板を作成した。この評価基板(400mm×300mm)を試験片とし、平面上で試験片の4隅を測定し、その値の合計を、そり変形量として測定した。
【0064】
上記のようにして、実施例2〜4及び比較例2〜6の光硬化性樹脂組成物を評価した結果を、以下の表5に示した。
【0065】
【表5】


【0066】
表5の結果から明らかなように、本発明のメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂を用いたアルカリ現像型で熱硬化性を有する光硬化性樹脂組成物は、指触乾燥性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、PCT耐性、HAST試験後の電気絶縁性に優れていることが判る。
また、合成例3及び4で得られたウレタン結合を有するカルボン酸含有感光性樹脂を用いた光硬化性樹脂組成物(実施例3及び4)は、反りが少なく、フレキシブルプリント配線板や薄板プリント配線板などに好適に使用できることが判る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)二官能エポキシ樹脂(a)とメタクリル酸から誘導されるメタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂、(B)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記請求項1に記載の組成物に、さらに(C)一分子中に1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸含有樹脂を含むことを特徴とするアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記請求項2に記載の組成物に、さらに(D)一分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含むことを特徴とするアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)の合成に用いられる二官能エポキシ樹脂(a)が、エポキシ当量が135〜1,000g/当量の芳香族二官能エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)の合成時の二官能エポキシ樹脂(a)の仕込み当量数が、メタクリル酸1当量に対して、1.1〜5.5当量であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記メタクリロイル基含有多分岐ポリエーテル樹脂(A)の重量平均分子量が、3,000〜100,000であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の光硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線照射、若しくはさらに熱硬化して得られる硬化物。


【公開番号】特開2007−224169(P2007−224169A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47978(P2006−47978)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】