説明

光硬化性防湿絶縁塗料、この光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁された電子部品及びその製造方法

【課題】短時間処理が可能で、耐湿性、基材との接着性及び樹脂強度(硬度)に優れた光硬化性防湿絶縁塗料及びこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化性防湿絶縁塗料は、(A)アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエンと、(B)ビスフェノールA系(メタ)アクリレートと、(C)下記一般式(I)で表される化合物と、及び(D)光重合開始剤とを含有する。(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の全量に対して、1〜30重量%である。
【化1】


(Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数5〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の防湿、絶縁等に適した光硬化性防湿絶縁塗料、この光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁された電子部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、実装回路板及びハイブリッドIC(integrated circuit)等の電子部品には、ガラスエポキシ、紙フェノール、アルミナセラミック等の基板に配線図が印刷されてマイコン、抵抗体、コンデンサ等の各種部品が搭載されており、それらを湿気、ほこりなどから保護する目的で絶縁処理が行われている。この絶縁処理方法には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の塗料による保護コーティング処理が広く採用されている(特許文献1又は2参照)。
【0003】
このような実装回路板及びハイブリッドICは、過酷な環境下、特に高湿度下で使用され、例えば自動車、洗濯機等の機器に搭載されて使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−89343号公報
【特許文献2】特開平6−305778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記保護コーティング処理に使用される塗料は加熱硬化性であるため、塗料を完全に硬化させて絶縁効果を得るためには、高温での処理、そして長時間に亘る処理が必要であった。一方、短時間処理、例えば数秒〜数分での硬化が可能な紫外線硬化性樹脂塗料が開発されているが、まだ充分な耐湿性を有するものが得られていない。また、基材と樹脂塗料の接着性が悪く、電子部品の信頼性が低下するおそれがあった。さらには、樹脂塗料の硬度が低く、他の部材の接触により、基材から樹脂塗料が剥離するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたものであって、短時間処理が可能で、耐湿性、基材との接着性及び樹脂強度(硬度)に優れた光硬化性防湿絶縁塗料及びこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光硬化性防湿絶縁塗料は、(A)アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエンと、(B)ビスフェノールA系(メタ)アクリレートと、(C)下記一般式(I)で表される化合物と、及び(D)光重合開始剤とを含有する光硬化性防湿絶縁塗料であって、前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分及び前記(B)成分の全量に対して、1〜30重量%であることを特徴とする。
【0008】
【化1】

(Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数5〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0009】
また、本発明による光硬化性防湿絶縁塗料にあっては、前記(C)成分の含有量は、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分の全量に対して、10〜70重量%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による電子部品にあっては、前記光硬化性防湿絶縁塗料を用いて絶縁処理されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による電子部品の製造方法にあっては、前記光硬化性防湿絶縁塗料を電子部品に塗布し、次いで、塗布した光硬化性防湿絶縁塗料を硬化して絶縁処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる光硬化性防湿絶縁塗料は、短時間処理が可能で、耐湿性、基材との接着性及び樹脂強度(硬度)に優れ、この塗料によって絶縁処理された電子部品は信頼性が高く、マイクロコンピュータや各種の部品を搭載した実装回路板に有用であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による光硬化性防湿絶縁塗料、これを用いた電子部品及びその製造方法を実施の形態により詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
[光硬化性防湿絶縁塗料]
本発明による光硬化性防湿絶縁塗料は、(A)アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエンと、(B)ビスフェノールA系(メタ)アクリレートと、(C)下記一般式(I)で表される化合物と、及び(D)光重合開始剤とを含有する。以下、各成分について説明する。
【0015】
〔(A)成分:アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエン〕
本発明に用いられる光硬化性のアクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエン(以下、(A)成分とする)としては、水素添加率が70%以上の末端ヒドロキシポリブタジエンを、ポリイソシアネートと反応させ、その後にヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートを反応させて得られるアクリル変性水素添加ポリブタジエン樹脂が好ましい。
【0016】
上記(A)成分の数平均分子量は、300〜30000が好ましく、500〜20000であることがより好ましく、1000〜10000であることが特に好ましい。また、上記(A)成分の水素添加率は、70%以上が好ましく、80以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0017】
上記数平均分子量が300未満では造膜性が悪くなり、30000を超えると粘度が高く、作業性に劣る。また上記水素添加率が70%未満では得られる塗膜の加熱劣化後の可撓性が低下し、耐熱性が劣る。
【0018】
なお、数平均分子量の測定方法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。測定機器は日立製作所株式会社製L6000であり、検出器は日立製作所株式会社製L−330 RI、カラムはGelpack GL−R420、GL−R430、GL−R440の3本を使用し、測定温度は24℃、溶媒はTHFである。
【0019】
上記アクリル変性水素添加ポリブタジエン樹脂の市販品としては、日本曹達株式会社製の商品名TEAI−1000、TE−3000等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合わせて使用できる。
【0020】
〔(B)成分:ビスフェノールA系(メタ)アクリレート〕
本発明におけるビスフェノールA系(メタ)アクリレート(以下、(B)成分とする)としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むものである。
【0021】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0023】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0025】
本発明に用いられる(B)成分の含有量は、樹脂強度(硬度)及び相溶性の観点から、(A)成分及び(B)成分の全量に対して、1〜30重量%の範囲が好ましく、3〜25重量%の範囲がより好ましく、5〜20重量%の範囲がさらに好ましい。
【0026】
〔(C)成分:下記一般式(I)で表される化合物〕
本発明には、下記一般式(I)で表される化合物(以下、(C)成分とする)が用いられる。
【0027】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数5〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0028】
上記一般式(I)におけるRで表される基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基やこれらの構造異性体等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、炭素数6〜18のアルキル基であることが好ましく、炭素数8〜16のアルキル基であることが特に好ましい。
【0030】
本発明に用いられる(C)成分の含有量は、希釈性の点から、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全量に対して、10〜70重量%の範囲が好ましく、30〜50重量%の範囲がより好ましい。
【0031】
また、本発明の特性をさらに向上させるたに、(B)成分及び(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることもできる。(B)成分及び(C)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0032】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
〔(D)成分:光重合開始剤〕
本発明に用いられる光重合開始剤(以下、(D)成分とする)としては、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾインチオエーテル類、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、2−エチルアントラキノンフロイン、ベンゾインエーテルミヒラーケトン系、α−アミノアルキルフェノン系、塩化デシルノチオキサントン類等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0034】
(D)成分の配合割合は、硬化速度と造膜性の点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全量に対して、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%の範囲がより好ましい。
【0035】
〔その他の添加成分〕
本発明の光硬化性防湿絶縁塗料は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を配合し、加熱溶解することによって得られる。さらに、本発明による光硬化性防湿絶縁塗料には、必要に応じて架橋性単量体、シランカップリング剤、重合禁止剤等を添加することができる。
【0036】
架橋性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、2−ヒドロオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロオキシプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メタクリル酸とカージュラE−10(シェル化学社製、高級脂肪酸のグリシジルエステルの商品名、以下同様)の反応物等の1官能性のメタクリル酸エステル、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等の2官能性のメタクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能性のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロオキシエチルアクリレート、2−ヒドロオキシプロピルアクリレート、アクリル酸とカージュラE−10の反応物等の1官能性のアクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能性のアクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能性のアクリル酸エステル等が用いられ、これらは単独で又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0037】
シランカップリング剤としては、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−ターシャリーブチルカテコール、ピロガロール等のキノン類その他一般に使用されているものが用いられる。
【0039】
[電子部品]
本発明による電子部品は、上述した光硬化性防湿絶縁塗料を用いて絶縁される電子部品である。このような電子部品としては、マイクロコンピュータ、トランジスタ、コンデンサ、抵抗、リレー、トランス等、及びこれらを搭載した実装回路板などが挙げられ、さらにこれら電子部品に接合されるリード線、ハーネス、フィルム基板等も含むことができる。
【0040】
また、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、フィールドエミッションディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイパネルの信号入力部等も、電子部品として挙げられる。特に、電子部品用ディスプレイパネル用基板等のIC周辺部やパネル貼り合せ部等に、光硬化性防湿絶縁塗料を好ましく使用できる。
【0041】
[電子部品の製造方法]
本発明による電子部品は、電子部品を光硬化性防湿絶縁塗料を用いて絶縁することにより製造される。電子部品の製造方法としては、まず、一般に知られている浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、線引き塗布法等の方法によって上述した防湿絶縁塗料を上記電子部品に塗布する。次に、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED等を光源として紫外線を照射し、電子部品に塗布した防湿絶縁塗料の塗膜を硬化することにより、電子部品が得られる。特に、光硬化性防湿絶縁塗料は、電子部品用ディスプレイパネル用基板等のIC周辺部やパネル貼り合せ部にディスペンサー装置等で塗布され、ランプ方式及びLED方式のUV照射装置を用い、必要量の紫外線を照射し硬化させて製造される。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1〜3、比較例1〜5
実施例1〜3、及び比較例1〜5における塗料A〜Hを、以下の表1に示す各成分と配合量により調整した。なお、表1中の数値は、重量部を示す。
【0044】
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、(C)成分としてラウリルアクリレート(上記一般式(I)において、Rが水素原子でありRが炭素数12のアルキル基である化合物)と、(D)成分としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製)とを、表1に示す割合で仕込み、110℃で45分間攪拌して溶解させた。その後、この溶液に、(A)成分としてTEAI−1000(日本曹達株式会社製商品名、アクリル変性水素添加ポリブタジエン樹脂、数平均分子量:約1000、水素添加率:97%)と、(B)成分としてBP−4PA(共栄社化学株式会社製商品名、ビスフェノールAのプロピレングリコール付加物ジアクリレート)又は(B)成分の代替成分としてTMP−A(共栄社化学株式会社製商品名、トリメチロールプロパントリアクリレート)と、その他の添加成分としてγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランとを表1に示す割合で加え、90℃で140分間攪拌、混合して、各塗料A〜Hを得た。
【0045】
【表1】

【0046】
以上で得た塗料A〜Hをガラス製試験管に入れ、90℃で攪拌器(600rpm)により1分間攪拌した後、室温で24時間放置後に樹脂状態を観察し、相溶性(白濁の有無)を目視で評価した。
【0047】
また、これらの塗料A〜Hをガラス板上に500μmの厚みになるように塗布し、日本電池社製のUV照射装置(4Kw(160W/cm×1灯))を使用し、照射出力が400mW/cmで総照射量が1500mJ/cmとなるように紫外線照射して試験片を作成し、接着性(JIS K5400 碁盤目テープ法)にて接着性を評価した。
【0048】
また、これらの塗料A〜Hを金属シャーレに3000μm厚みになるように流し入れ、日本電池社製のUV照射装置(4Kw(160W/cm×1灯))を使用し、照射出力が400mW/cmで総照射量が1500mJ/cmになるように紫外線照射して試験片を作成し、株式会社上島製作所製の硬度計(JIS A HD−101N)により樹脂硬度を測定した。
【0049】
また、これらの塗料A〜HをITO電極基板(L/S=40/10μm)に、100μm厚みになるように塗布し、日本電池社製UV照射装置(4Kw(160W/cm×1灯))を使用し、照射出力が400mW/cmで総照射量が1500mJ/cmとなるように紫外線照射して試験片を作成し、60℃/90%RH/DC10Vの条件により高温高湿バイアス試験を実施し、500時間経過後の耐湿性として絶縁抵抗を測定し、耐腐食性(電極腐食の有無)について評価を実施した。以上の各評価結果を表2にまとめて示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2中において、「相溶性」について、丸印は透明、三角はやや白濁、Xは白濁したことをそれぞれ示す。「接着性」は、碁盤目の格子寸法1mm角で切り目を入れて、テープにより剥離の度合いを評価した。その判定は(残存枚数/格子数)の数値とした。「耐腐食性」について、丸印は腐食なく良好、三角は点状腐食が発生、Xは線状腐食が発生し導通したことをそれぞれ示す。
【0052】
表2から明らかなとおり、比較例1〜4では、相溶性及び耐腐食性が劣る結果であった。比較例5では、相溶性及び耐腐食性は良好であり接着性及び絶縁抵抗も良好であったが、硬度が低い値であった。これに対して、実施例1〜3では、表2に掲げるいずれの特性についても優れた結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明による光硬化性防湿絶縁塗料は、ガラスとの高い接着性を有し、さらに樹脂強度(硬度)が向上し、これらにより耐湿性評価においても優れた特性を示す塗料であり、この塗料によって絶縁処理された電子部品は信頼性が高く、マイクロコンピュータや各種の部品を搭載した実装回路板に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエンと、(B)ビスフェノールA系(メタ)アクリレートと、(C)下記一般式(I)で表される化合物と、及び(D)光重合開始剤とを含有する光硬化性防湿絶縁塗料であって、前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分及び前記(B)成分の全量に対して、1〜30重量%であることを特徴とする光硬化性防湿絶縁塗料。
【化1】

(Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数5〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記(C)成分の含有量は、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分の全量に対して、10〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性防湿絶縁塗料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光硬化性防湿絶縁塗料を用いて絶縁処理されることを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の光硬化性防湿絶縁塗料を電子部品に塗布し、次いで、塗布した光硬化性防湿絶縁塗料を硬化して絶縁処理することを特徴とする電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2008−303362(P2008−303362A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154479(P2007−154479)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】