説明

光記録媒体

【課題】十分な表面硬度を有し、かつ環境温度及び環境湿度が変化した際の変形が少ない、特性のバランスに優れた光記録媒体を提供する。
【解決手段】樹脂基板と、記録再生機能層と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含む放射線硬化性組成物の硬化物である保護層と、表面硬度がB以上であるハードコート層とをこの順に具備する光記録媒体であって、 前記保護層の25℃、湿度45%における引っ張り弾性率に対する飽和吸水時における引っ張り弾性率の比を、0.20以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録再生ディスク等の光記録媒体に関するものであり、さらに詳しくは、温度変化及び環境湿度の変化に対応可能であり、高密度型光ディスク等にも利用可能な光記録媒体に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、動画情報等の膨大な情報を記録ないし保存する情報記録の媒体として再生専用光ディスクや光記録ディスク等の光情報媒体が多く用いられるようになってきた。その中の一つとして、例えば波長400nmのレーザー光を利用する高密度型光ディスク(いわゆるブルーレイディスク、以下適宜「ブルーレイディスク」ともいう)が提案されている(特許文献1参照)。上記ブルーレイディスクは、樹脂基板、記録再生機能層、保護層、及びハードコート層をこの順に具備する光記録媒体である。上記ハードコート層に対しては耐擦傷性および硬度が求められる。一方、ディスク全体に対しては、環境の温度や湿度が変化しても安定的に情報の読み書きができるように、環境温度や環境湿度が変化した際におけるディスクの変形が小さいことが求められる。
【0003】
ここで、環境の温度変化に伴うディスクの変形は、上記保護層の弾性率に支配されることが本発明者らの検討によって明らかになっている。すなわち、保護層の弾性率が大きいと、温度変化に伴うディスクの変形が大きくなる。逆に保護層の弾性率が小さいと、上記変形は小さくなる。したがって、環境温度の変化に伴う変形が少ないという観点からは保護層の弾性率が小さいことが好ましい。
【0004】
しかしながら、一般的に保護層の弾性率が小さくなればなるほど、保護層上に形成されているハードコートの硬度が低下する。したがって、ハードコート層の硬度、すなわち光記録媒体の耐擦傷性や硬度等の観点からは、保護層の弾性率が大きいことが好ましい。
【0005】
また環境の湿度変化に伴う光記録媒体の変形は、樹脂基板の吸脱水に伴う変形が支配的であると推定される。このことは、樹脂基板と記録再生機能層のみの光記録媒体の変形が非常に大きいことからも分かる。上記記録再生機能層上にさらに保護層やハードコート層を形成すると、通常、上記変形を小さくすることができる。これは、保護層やハードコート層の吸脱水に伴う変形が、記録再生機能層という比較的硬い層を介して反対側に存在する樹脂基板の変形を相殺するためであると考えられる。なお、上記変形を低減させる度合いは、膜厚が厚い層に依存すると考えられ、一般的にハードコート層より大きな膜厚を有する保護層の弾性率に主として依存すると考えられる。すなわち、保護層の弾性率が適度な範囲(比較的高弾性率)である場合は、環境湿度の変化に伴うディスクの変形が小さくなるので好ましい。保護層の弾性率が小さすぎる場合は、環境湿度の変化による樹脂基板の吸脱水に伴う変形を抑制しきれずに、結果として環境湿度の変化によるディスク全体の変形が大きくなることがある。また、保護層の弾性率が大きすぎる場合には、保護層の変形の方が樹脂基板の変形より大きくなり、樹脂基板とは逆側の変形を増大させる。したがって、環境湿度の変化に伴う変形が少ないという観点からは保護層の弾性率が比較的高弾性率である適度な範囲内であることが好ましい。
【0006】
以上の保護層の弾性率と要求される性能との関係性をまとめると、(1)光記録媒体の表面硬度の観点からは、保護層が高弾性率であることが好ましく、(2)環境温度変化に伴う変形の観点からは、保護層が低弾性率であることが好ましく、さらに(3)環境湿度変化に伴う変形の観点からは、比較的高弾性率である適度な範囲内であることが好ましい。
【0007】
ここで、上記(2)環境温度の変化及び(3)環境湿度の変化に対して変形が少ない材料については、例えば特許文献1に提案されている。上記文献には、ウレタンアクリレートとその他のアクリレートとを含有する組成物が光情報媒体の光透過層用材料として好適であることが示されており、本発明者らの検討によれば、上記光透過層用材料を用いると、環境の温湿度変化に伴う変形がさほど大きくならない光記録媒体を製造できる可能性がある。
また、(1)表面硬度が高く、かつ(3)環境湿度の変化に対する変形が少ない材料が、例えば特許文献2に提案されている。
【特許文献1】特開2003−263780号公報
【特許文献2】特開2007−131698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された光透過層用材料を用いた光記録媒体では、(1)表面硬度を十分とすることができない場合があった。また、上記特許文献2に記載された材料を用いた光記録媒体では、(2)環境温度の変化に対して変形が生じる可能性があることが、本発明者らの研究によって明らかになった。
また、(2)環境温度の変化に対する変形が少なく、さらに(1)表面硬度が高い光記録媒体については、報告がない。以上のことから、上記全ての要求を満たす光記録媒体、すなわち、環境温度湿度変化に伴う変形が少なく、さらに表面硬度が高い光記録媒体の提供が望まれている。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、十分な表面硬度を有し、かつ環境温度及び環境湿度が変化した際の変形が少ない、特性のバランスに優れた光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが、上記の目的を満足し得る光記録媒体について鋭意研究したところ、保護層を形成するための放射線硬化性組成物の材料、及び保護層の吸水時の弾性率が重要であることを見出した。具体的には、上記保護層がウレタン(メタ)アクリレート(A)、及びそれ以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含有すること、及び保護層の通常時における弾性率と、吸水時における弾性率との比を所定の値以上とすることにより、環境温度が変化した際の変形、及び環境湿度が変化した直後の変形が少なく、また十分な表面硬度を有する光記録媒体とすることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の第1の要旨は、樹脂基板と、記録再生機能層と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含む放射線硬化性組成物の硬化物である保護層と、表面硬度がB以上であるハードコート層とをこの順に具備する光記録媒体であって、前記保護層の25℃、湿度45%における引っ張り弾性率に対する飽和吸水時における引っ張り弾性率の比が、0.20以上であることを特徴とする光記録媒体に存する(請求項1)。
【0012】
この際、前記保護層の25℃における吸水率が2(wt/wt)%以下であることが好ましく(請求項2)、また前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、(a1)ポリイソシアネート、(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上、1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートを含む組成物を反応させた反応生成物であることが好ましい(請求項3)。
【0013】
また前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)が、脂環式アクリレートであることが好ましく(請求項4)、さらに前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)が、単官能(メタ)アクリレート及び/または分子量が300以下である多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分な表面硬度を有し、環境温度が変化した際の変形、及び環境湿度が変化した直後の変形が少ない、特性のバランスに優れた光記録媒体とすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明は、記録再生ディスク等の光記録媒体に関するものであり、本発明の光記録媒体は、樹脂基板と、記録再生機能層と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含む放射線硬化性組成物の硬化物である保護層と、表面硬度がB以上であるハードコート層とをこの順に具備する。
【0016】
また、本発明の光記録媒体は、下記式で示される上記保護層の25℃、湿度45%における引っ張り弾性率に対する飽和吸水時における引っ張り弾性率の比e(以下、適宜「引っ張り弾性率の比」ともいう。)が、0.20以上であることを特徴とする。
e=(飽和吸水時における引っ張り弾性率)/(25℃、45%RHにおける引っ張り弾性率)
【0017】
上記引っ張り弾性率とは、0.1mm厚のフィルムを形成し、引っ張り強度試験機を用い、引っ張り速度1mm/minにて引っ張り試験を行った際の弾性率を意味する。また飽和吸水時における引張り弾性率とは、上記フィルムを25℃において水に3時間浸漬した直後のフィルムについて、上記引っ張り試験を行った際の弾性率を意味する。
【0018】
本発明によれば、上記保護層が、所定の材料(ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B))を含有することから、光記録媒体の表面硬度を高いものとすることができ、さらに環境温度に対する変形性が少ないものとすることが可能となる。
表面硬度及び耐環境温度性を良好なものとすることができる理由は必ずしも明らかではないが、所定の材料を用いた場合は、その骨格に由来する微小な結晶ドメインに類するものが形成され、このドメインが無機フィラーのような役割を果たして高い表面硬度をもたらす一方で、架橋密度そのものは適度に低く、分子運動のバッファのようなものが存在し、これが熱膨張収縮を抑制していると推定される。
【0019】
また本発明においては、保護層の上記引っ張り弾性率の比が所定の値以上とされていることから、環境湿度が変化した直後の変形を少ないものとすることができる。このメカニズムは下記のように推測される。
上述したように、環境湿度が変化した際の光記録媒体の変形は、保護層及び樹脂基板の吸脱水に伴う変形が支配的である。本発明においては、吸湿時の引っ張り弾性率と通常時の引っ張り弾性率との比が所定の範囲内である保護層を記録再生機能層上に形成する。通常の放射線硬化性組成物等の樹脂材料は、吸湿時には膨潤して軟らかくなり、弾性率が大幅に低下する。その低下が大きい材料は、吸湿時の引っ張り弾性率と通常時の引っ張り弾性率との比が小さくなることになる。本発明においては、保護層の吸湿時弾性率の通常時弾性率に対する比が大きい、すなわち吸湿時に弾性率低下しにくいことから、吸湿時における保護層の、樹脂基材が吸湿時に起こす変形を相殺する応力が大きくなり、その変形を十分に抑制することができる。したがって、環境湿度変化が生じた場合でも光記録媒体が変形しにくいものとすることができると考えられる。
【0020】
以上のことから、本発明の光記録媒体では、表面硬度が十分であり、また環境温度が変化した際の変形が少なく、さらに環境湿度が変化した直後の変形も少ないものとすることができる。
以下、本発明の光記録媒体の各部材について説明する。
【0021】
[保護層]
まず、本発明の光記録媒体に用いられる保護層について説明する。本発明に用いられる保護層は、後述する記録再生機能層に接して設けられ、通常平面円環形状を有するものとすることができる。またこのような保護層は、記録再生に用いられるレーザー光を透過可能な材料により形成される。
以下、本発明の光記録媒体に用いられる保護層の物性、保護層の材料、及び形成方法について説明する。
【0022】
(保護層の物性)
上記保護層における上記引っ張り弾性率の比eは通常0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは0.7以上である。また上限としては、通常1以下である。上記引っ張り弾性率の比eが小さすぎると、吸湿時の弾性率が小さくなる傾向があり、環境湿度が変化した際に、樹脂基板の変形を抑制しきれず、光記録媒体の変形が大きくなる傾向がある。
【0023】
また上記保護層の吸水率は、2(wt/wt)%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5(wt/wt)%以下、更に好ましくは1(wt/wt)%以下、特に好ましくは0.7(wt/wt)%以下である。保護層の吸水率が高すぎると、前記引っ張り弾性率の比eが上記範囲より小さくなる傾向があり、環境湿度の変化に伴う光記録媒体の変形が大きくなることがある。上記吸水率は、下記の方法により求められる。0.1mm厚のフィルムを形成して初期重量Woを測定する。次いで、上記フィルムを25℃において純水で満たした容器に3時間浸漬させた後、フィルムを取り出し、付着している純水をワイパーで軽く拭き取り、ただちに重量Wを測定する。初期重量Woに対する浸漬後の重量増加(W−W0)を求めることにより算出される。すなわち、吸水率は下式で表される。
吸水率A(%)=(W−Wo/Wo)×100
【0024】
また上記保護層の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは70μm以上、特に好ましくは85μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは115μm以下である。これにより、ゴミ等による情報の読み書きへの影響と透過率とのバランスを良好なものとすることができる。
【0025】
また上記保護層は、通常、溶剤等に不溶不融の性質を示し、厚膜化した場合であっても光学部材の用途に有利な性質を備え、密着性、表面硬化度に優れていることが好ましい。具体的には、低い光学歪み性(低複屈折性)、高い光線透過率、機械的強度、寸法安定性、高密着性、高表面硬度、及び一定以上の耐熱・耐湿変形性、低収縮性を示すことが好ましい。また光記録媒体の記録再生に用いる波長付近のレーザー光に対して十分に透明性が高く、かつ後述する樹脂基板上に形成された記録再生機能層を、水や塵埃から保護し、劣化を防止するような性質を持つことが望ましい。
【0026】
上記保護層の硬度は、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度で、通常6B程度、好ましくは4B以上、より好ましくは3B以上である。これにより後述するハードコート層の表面硬度を高くすることができ、耐摩耗性や記録膜保護性に優れた光記録媒体とすることができる。
【0027】
また上記保護層の光線透過率は、波長550nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が、通常80%以上であり、好ましくは85%以上、さらに好ましくは89%以上である。また上限はなく、100%に近いほど好ましい。光線透過率が低すぎると、保護層の透明性が劣る。従って、光記録媒体において、記録された情報の読み出し時にエラーが増加する傾向がある。
【0028】
また保護層の光線透過率は、記録・再生に用いられる光の波長において、通常、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは89%以上である。このような範囲であれば、記録再生光の吸収による損失を最小限にすることができる。一方、光線透過率は100%になることが特に好ましいが、用いる材料の性能上、通常、99%以下となる。上記光線透過率は、例えば、ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて公知の方法で、室温で測定することができる。
【0029】
保護層の光線透過率を上記範囲とするには、後述する放射線硬化性組成物を構成する各成分として光線透過率の高いものを用いることが好ましい。具体的には、可視光領域の光線透過率を低下させないために、各成分中の有色物や分解物等の不純物量が少ないことが好ましい。また各成分を製造する際の触媒量が少ないことが好ましい。また紫外領域の光線透過率を低下させないためには、各成分に芳香環を含まない、脂肪族或いは脂環式骨格のものを選択することが好ましい。
【0030】
さらに、上記保護層と後述する記録再生機能層との密着性が高いことが好ましく、経時密着性も高いほうが好ましい。具体的には、80℃、80%RHの環境下に100時間、さらに好ましくは200時間置いた後の保護層と記録再生機能層との密着面積の割合が、当初密着面積の50%以上を保持していることが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは100%である。
【0031】
(保護層の材料)
上記保護層は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、及び上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含む放射線硬化性組成物の硬化物である。上記放射線硬化性組成物中には、必要に応じて適宜上記以外の材料が含有されていてもよい。
【0032】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)>
上記保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物中には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)が含有される。これにより、光記録媒体の環境の温度変化に対する変形を小さいものとし、かつ光記録媒体が高い表面硬度を有するものとすることが可能となる。
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、特に限定されるものではなく、通常、ヒドロキシル基を含有する化合物と、ポリイソシアネートと、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるものとすることができる。
【0033】
本発明においては特に、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、(a1)ポリイソシアネート、(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上、1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートを含む組成物を反応させた反応生成物であることが好ましい。
【0034】
〔(a1)ポリイソシアネート〕
ポリイソシアネートとは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。本発明に用いられるポリイソシアネートは特に限定されるものではなく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。これらの中でも、得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)の色相が良好である点で、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、及びイソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0035】
なお、(a1)ポリイソシアネートの分子量としては、保護層の強度と弾性率とのバランスの面から、通常100以上であり、好ましくは150以上である。また通常1000以下であり、好ましくは500以下である。
【0036】
上記(a1)ポリイソシアネートは、上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートと上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物との総和において、通常2×10-4mol/g以上、好ましくは6×10-4mol/g以上用いられ、また通常22×10-4mol/g以下、好ましくは16×10-4mol/g以下用いられる。
【0037】
〔(a2)分子量400未満のジオール〕
分子量400未満のジオールとは、2個のヒドロキシル基を含有する分子量400未満の化合物を意味する。本発明に用いられる分子量400未満のジオールは特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ジシクロペンタジエニルジメタノール等のアルキレンジオール類が挙げられ、これらを1種または2種以上、任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0038】
上記の中でも、炭素数4〜10の脂肪族ジオールが好ましく、具体的には1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールが、光記録媒体の変形を生じにくいものとすることができ、かつ光記録媒体の表面硬度が高くなる傾向があるため、特に好ましい。
【0039】
なお、(a2)分子量400未満のジオールの分子量としては硬化収縮に由来する樹脂基板の変形と表面硬度のバランスの面から好ましくは250以下、より好ましくは150以下であり、また通常80以上、好ましくは100以上である。
【0040】
また上記(a2)分子量400未満のジオールは、上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートと上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物との総和において、通常1×10-4mol/g以上、好ましくは3×10-4mol/g以上用いられ、また通常10×10-4mol/g以下、好ましくは8×10-4mol/g以下用いられる。
【0041】
〔(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオール〕
数平均分子量が400以上1500未満のポリオールとは、数平均分子量が400以上1500未満であり、かつ分子中に2個以上の水酸基を有する化合物である。
上記数平均分子量が400以上1500未満のポリオールとしては、例えば上記(a2)分子量400未満のジオール(以下、適宜単に「ジオール」という場合がある。)の多量体であるポリエーテルポリオールや、上記ジオールと多塩基酸との反応によるエステル結合、或いは環状エステルの開環重合によるエステル結合を有するポリエステルポリオール、及び上記ジオールとカーボネートとの反応によるカーボネート結合を有するポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0042】
上記ポリエーテルポリオールの具体例としては、上記ジオールの多量体の他に、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合体としてのポリテトラメチレングリコール、及び上記ジオールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキサイドの付加物等が挙げられる。
【0043】
上記ポリエステルポリオールの具体的としては、上記ジオールと、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等の多塩基酸との反応物、及び、カプロラクトン等の環状エステルの開環重合体としてのポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0044】
またポリカーボネートポリオールの具体例としては、上記ジオールと、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、又は、ジフェニルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチルジフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、4,4’−ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート、又は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等のジアルキルカーボネート等との反応物等が挙げられる。
【0045】
これらのポリオール類は、1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。上記ポリオール類の中でも、ポリエーテルポリオールが好ましく、中でもポリアルキレングリコールが好ましく、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0046】
上記(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオールの数平均分子量の上限は、表面硬度が向上する点で、より好ましくは1100以下、更に好ましくは900以下、特に好ましくは800以下である。
【0047】
上記(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオールは、上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートと上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物との総和において、通常0.1×10-4mol/g以上、好ましくは0.5×10-4mol/g以上用いられ、また通常2.0×10-4mol/g以下、好ましくは1.3×10-4mol/g以下用いられる。
【0048】
〔(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール〕
数平均分子量が1500以上のポリオールとは、数平均数平均分子量が1500以上であり、かつ分子中に2個以上の水酸基を有する化合物である。
このような数平均分子量が1500以上のポリオールとしては、特に限定されるものではなく、例えば上記(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオールの欄で例示したポリオール等が挙げられる。上記の中でもポリエーテルポリオールが好ましく、ポリアルキレングリコールがより好ましく、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。また上記(a4)数平均分子量が1500以上のポリオールは、1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0049】
上記(a4)数平均分子量が1500以上のポリオールの数平均分子量の下限は、保護層の吸水時の弾性率低下が小さくなる点で、好ましくは1900以上である。
また上記(a4)数平均分子量が1500以上のポリオールは、上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートと上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物との総和において、通常0.05×10-4mol/g以上、好ましくは0.1×10-4mol/g以上用いられ、また通常1×10-4mol/g以下、好ましくは0.5×10-4mol/g以下用いられる。
【0050】
(a5)水酸基含有(メタ)アクリレート
水酸基含有(メタ)アクリレートとは、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを併せ持つ化合物である。水酸基含有(メタ)アクリレートは特に限定されるものではなく、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコールのモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0051】
なお、(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートの分子量としては、40以上、更には80以上であることが好ましく、また800以下、更には400以下であることが好ましい。
【0052】
上記(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートは、上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートと上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物との総和において、通常2×10-4mol/g以上、好ましくは6×10-4mol/g以上用いられ、また通常21×10-4mol/g以下、好ましくは17×10-4mol/g以下用いられる。
【0053】
〔(A)ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法〕
上記(a1)ポリイソシアネート、(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートを含む組成物を付加反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)を製造することができる。
上記付加反応の際、上記(a1)〜(a5)を含む組成物中のイソシアネート基及びヒドロキシル基が化学量論量になるように調整することが好ましい。
【0054】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際、使用する上記(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオールに対する(a4)数平均分子量が1500以上のポリオールの重量比、すなわち{(a4)の重量}/{(a3)の重量}は、通常0.05以上、好ましくは0.1以上であり、また通常10以下、好ましくは7以下である。この比が小さすぎると保護層の吸水時における弾性率が低下する傾向がある。逆に大きすぎると表面硬度が低下する。
【0055】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際に使用する上記(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシル基量は、上記(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレート中に含有される全ヒドロキシル基量に対して、通常20モル%以上であり、好ましくは40モル%以上である。また、通常80モル%以下であり、好ましくは60モル%以下である。上記割合に応じて、得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレートの分子量を制御することが可能となる。
【0056】
上記(a1)ポリイソシアネート、(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートを含む組成物の付加反応は、公知の何れの方法でも行うことができる。例えば、(a1)ポリイソシアネートと、(a2)〜(a5)を含む組成物(以下、水酸基含有組成物ともいう。)及び付加反応触媒を含む混合物とを、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また通常90℃以下、好ましくは75℃以下の条件下で混合する。その際の混合の方法としては、(a1)ポリイソシアネート存在下に、上記水酸基含有組成物と付加反応触媒とを含む混合物を同時に、または順次滴下する方法とすることができる。
【0057】
この際、用いられる付加反応触媒としては、例えば、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及び、ジオクチルスズジオクトエート等が好ましく、これらの1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意の比率及び組み合わせて用いてもよい。
【0058】
なお、(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際、上述したように、(a1)〜(a5)以外の成分を1種または2種以上、任意の比率及び組み合わせで含有させてもよい。また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートは通常粘度が高く、作業性が低くなることがあるので、作業性を向上させるために、後述の(メタ)アクリレート等の低粘度液状の化合物を混合して粘度を低下させることができる。
【0059】
〔ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の特性〕
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)としては、透明性が高いものが好ましく、例えば、芳香環を有していない化合物であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート化合物が芳香環を有する場合、芳香環を有する放射線硬化性組成物及びその硬化物は、得られるものが着色物であったり、最初は着色していなくても保存中に着色したり着色が強まること(いわゆる黄変)がある。これは芳香環を形成する二重結合部分が、エネルギー線によってその構造を不可逆的に変化させることが原因であると考えられている。このため、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、芳香環を有しない構造を持つことで、色相の悪化がなく、かつ光線透過率が低下することないものとすることができる。芳香環を有しない(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、上記(a1)〜(a5)として、それぞれ芳香環を有しないものを選択することにより製造できる。なお、本発明においては、組成物としての表面硬化性に優れ、タック(べたつき)が残りにくい面から、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ウレタンアクリレートであることが特に好ましい。
【0060】
また上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は、粘度と機械特性とのバランスの面から通常1,000以上であり、更には1,500以上であることが好ましく、また通常10,000以下であり、更には5,000以下であることが好ましい。
【0061】
なお、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)には、2種以上の数平均分子量の異なるポリオールが使用されているが、2種以上の数平均分子量の異なるポリオールがウレタン(メタ)アクリレート(A)中に含有されているか否かは、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を、熱分解GC/MSまたはアルカリメチル化熱分解GC/MS等の方法を組み合わせて用い、ポリオールの分子量を分析することにより判断可能である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析を実施し、得られた分子量分布のプロファイルが2つの極大点を持つかどうかによっても判定することが出来る。
【0062】
<ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)>
保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物中には、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)(以下、適宜「(メタ)アクリレート化合物(B)ともいう。」が含有される。(メタ)アクリレート化合物(B)はウレタン(メタ)アクリレート(A)の粘度を低下させる希釈剤の役割を果たし、平滑かつ均質な保護層形成を可能とすると同時に、高い表面硬度の発現を助ける働きを持つ。
【0063】
上記(メタ)アクリレート(B)としては、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いられてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0064】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート類等が挙げられ、これらの中で、脂環式(メタ)アクリレート類が好ましい。また例えば、炭素数5以上、好ましくは炭素数5以上、7以下の脂環式炭化水素環の1つ以上の炭素原子が窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている環基を1つ以上有する複素脂環式(メタ)アクリレートを好ましく用いることもできる。複素脂環式(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、上記の中でも(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート類が特に好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレートであるジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートが吸水時の弾性率低下が小さいため、特に好ましい。
【0066】
また多官能(メタ)アクリレート化合物としては、脂肪族ポリ(メタ)アクリレート類、脂環式ポリ(メタ)アクリレート類、芳香族ポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられ、具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF、或いはビスフェノールS等のビスフェノールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、或いはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF、或いはビスフェノールS等のビスフェノールの水添誘導体のジ(メタ)アクリレート、各種ポリエーテルポリオール化合物と他の化合物とのブロック、或いはランダム共重合体のジ(メタ)アクリレート等のポリエーテル骨格を有する(メタ)アクリレート類、及び、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、メチルオクタンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン等の2官能の(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、グリセリントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート類、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリレート類等の不定多官能の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0067】
上記の中でも、架橋生成反応の制御性から2官能の(メタ)アクリレート類が好ましい。2官能の(メタ)アクリレート類としては脂肪族ポリ(メタ)アクリレートが好ましく、さらには、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、メチルオクタンジオールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。また保護層の環境温度変化に伴う変形の抑制、及び表面硬度の向上等を目的として、3官能以上の(メタ)アクリレート類を好ましく用いることもできる。3官能以上の(メタ)アクリレート類としては、上記に例示されたトリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、及び、イソシアヌレート骨格を有する3官能の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記の中でも特に、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート等の脂環式多官能(メタ)アクリレートが保護層の吸水時の弾性率低下が小さいため好ましい。
【0068】
上記多官能モノマーの分子量は、硬化性及び表面硬度を向上させる点から通常300以下であることが好ましく、より好ましくは280以下である。逆に、硬化収縮が小さくなる点から好ましくは200以上、より好ましくは250以上である。
【0069】
なお、保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物においては、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及びそれ以外の(メタ)アクリレート化合物(B)の合計重量に対する、上記(a3)数平均分子量が400以上1500未満のポリオール及び(a4)数平均分子量が1500以上のポリオールの合計重量の割合、すなわち、
{(a3)+(a4)の重量}/{(A)+(B)の重量}
が所定の範囲内であることが好ましい。具体的には下限が通常0.03以上、より好ましくは0.08以上であり、上限が通常0.3以下、より好ましくは0.1以下である。この割合が小さすぎると、放射線硬化性組成物を硬化させたときに、その硬化収縮率が大きくなり過ぎ、光記録媒体を変形させることがある。逆に割合が大きすぎると、表面硬度が低下することがある。
【0070】
<その他>
保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物は、さらに、放射線(例えば、活性エネルギー線、紫外線、電子線等)によって進行する重合反応を開始するための、重合開始剤や補助成分等を含有してもよい。
【0071】
〔重合開始剤〕
重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物であるラジカル発生剤が一般的であり、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知の何れのラジカル発生剤でも使用可能であり、さらにラジカル発生剤と増感剤との併用系であってもよい。
【0072】
このようなラジカル発生剤の具体例としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇させることができることから、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがさらに好ましい。
【0074】
なお、本発明の光記録媒体が、波長380〜800nmのレーザーを光源とする装置に用いられるものである場合には、読み取りに必要なレーザー光が十分に上記保護層を通過するように、ラジカル発生剤の種類及び使用量を選択して用いることが好ましい。この場合、放射線硬化性組成物にレーザー光を吸収し難い短波長感光型のラジカル発生剤を使用することが特に好ましい。
【0075】
上記のラジカル発生剤のうち、このような短波長感光型のラジカル発生剤としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の水酸基を有するものが特に好ましい。
【0076】
これらのラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。また、ラジカル発生剤の使用量は、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及びそれ以外の(メタ)アクリレート化合物(B)の合計100重量部に対し、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは7重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下、最も好ましくは4重量部以下である。使用量が少なすぎると、放射線硬化性組成物を十分に硬化させることができなくなる傾向となり、一方、多すぎると、重合反応が急激に進行して、光学歪みの増大をもたらすだけでなく色相も悪化する傾向がある。
【0077】
また、これらのラジカル発生剤と共に、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の増感剤を併用してもよい。増感剤は1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0078】
また特に重合開始剤としてベンゾフェノン系重合開始剤を用いる場合、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及びそれ以外の(メタ)アクリレート化合物(B)の総和100重量部に対して、ベンゾフェノン系重合開始剤は好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下、また、通常0.5重量部以上用いる。ベンゾフェノン系重合開始剤量が多いと、保護層中の揮発成分が多くなり、高温、高湿環境下での膜厚が減少する場合があるためである。
【0079】
なお、放射線として、電子線によって重合反応を開始させる場合には、上記ラジカル発生剤を用いることも出来るが、ラジカル発生剤やその他の開始剤を使用しない方が好ましい。重合開始剤を使用しなくても十分硬化するためである。また、上述したラジカル発生剤以外の重合開始剤としては、酸化剤等が挙げられる。
【0080】
これらの重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0081】
〔補助成分〕
また保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、必要に応じて添加剤等の補助成分が含有されていてもよい。その補助成分の具体例としては、酸化防止剤、熱安定剤、或いは光吸収剤等の安定剤類;ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属繊維、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して無機成分と称する。);帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;モノマー及び/またはそのオリゴマー、または無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類等が挙げられ、これらの補助成分は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。これら補助成分の含有量は、放射線硬化性組成物の通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0082】
これらの中で、フィラー類としてのシリカについて詳述する。上記放射線硬化性組成物に用いるシリカとは、珪素酸化物一般を指し、珪素と酸素の比率や、結晶であるかアモルファスであるかは問わない。上記シリカ粒子としては、工業的に生産されている、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、または粉体のシリカ粒子;アルコキシシラン等の原料から誘導、合成されたシリカ粒子等を挙げることができる。中でも、上記放射線硬化性組成物に用いる場合、混合や分散のしやすさから、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、または、アルコキシシラン等の原料から誘導、合成されたシリカ粒子が好ましい。
【0083】
上記シリカ粒子の粒径は任意であるが、TEM(透過型電子顕微鏡)等を用いた形態観察によって測定される数平均粒径として、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上であり、また、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは15nm以下、より好ましくは12nm以下である。シリカ粒子としては超微粒子であることが好ましいが、小さすぎると、超微粒子の凝集性が極端に増大して、硬化物の透明性や機械的強度が極端に低下する傾向があり、量子効果による特性が顕著でなくなる傾向があるためである。
【0084】
(保護層の形成方法)
保護層の形成に用いられる放射線硬化性組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)、及び必要に応じて用いられる上記重合開始剤や補助成分等を、放射線を遮断した状態で、攪拌し均一に混合することにより調製される。その際の各成分の混合順序としては、特に限定されるものではないが、低粘度の液体成分に高粘度の液体成分及び/または固体成分を加え攪拌することが好ましい。また重合開始剤は、最後に加えることが好ましい。
【0085】
また、その際の攪拌条件は、特に限定されるものではない。攪拌温度としては、通常常温とするが、通常90℃以下、好ましくは70℃以下の温度に加熱してもよい。攪拌速度としては、通常100rpm以上、好ましくは300rpm以上、また、通常1000rpm以下とし、攪拌時間としては、通常10秒以上、好ましくは3時間以上、また、通常24時間以下とする。
【0086】
また、上記保護層は、上記放射線硬化性組成物を後述する記録再生機能層上に塗布し、放射線(活性エネルギー線や電子線)を照射して重合反応を開始させる、いわゆる「放射線硬化」することによって得られる。上記塗布方法に制限はなく、例えばスピンコート法等、一般的な方法とすることができる。
【0087】
また上記放射線硬化性組成物の重合反応の形式に制限はなく、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の公知の重合形式を用いることができる。これら重合形式の例示のうち、特に好ましい重合形式はラジカル重合である。理由は定かではないが、重合反応の開始が重合系内で均質かつ短時間に進行することによる生成物の均質性によるものと推定される。
【0088】
ここで、上記放射線とは、必要とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して上記重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等)、または粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。本発明において好ましく用いられる放射線の一例は、エネルギーと汎用光源とを使用可能であることから、紫外線、可視光線、及び電子線が好ましく、特に好ましくは紫外線及び電子線である。
【0089】
放射線として紫外線を用いる場合、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤を上記重合開始剤として使用することが好ましい。この時、必要に応じて増感剤を併用してもよい。上記紫外線の波長は、通常200nm以上、好ましくは240nm以上、また、通常400nm以下、好ましくは350nm以下の範囲である。
【0090】
紫外線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波によって紫外線を発生させる構造の紫外線ランプ等、公知の装置を好ましく用いることができる。上記装置の出力は通常10W/cm以上、好ましくは30W/cm以上、また、通常200W/cm以下、好ましくは180W/cm以下であり、上記装置は、被照射体に対して通常5cm以上、好ましくは30cm以上、また、通常80cm以下、好ましくは60cm以下の距離に設置するようにすると、被照射体の光劣化や熱劣化、熱変形等が少なく、好ましい。
【0091】
上記放射線硬化性組成物は、電子線によっても好ましく硬化することができ、機械特性、特に引張伸び特性に優れた硬化物を得ることができる。電子線を用いる場合、その光源及び照射装置は高価であるものの、重合開始剤の使用が省略可能であること、及び酸素による重合阻害を受けず、従って表面硬度が良好となるという利点がある。電子線照射に用いられる電子線照射装置としては、特にその方式に制限はないが、例えばカーテン型、エリアビーム型、ブロードビーム型、パルスビーム型等が挙げられる。電子線照射の際の加速電圧は通常10kV以上、好ましくは100kV以上、また、通常1000kV以下、好ましくは200kV以下が好ましい。
【0092】
これらの放射線は、照射強度を、通常0.1J/cm2 以上、好ましくは0.2J/cm2 以上、また、通常20J/cm2 以下、好ましくは10J/cm2 以下、より好ましくは5J/cm2 以下、さらに好ましくは3J/cm2 以下、特に好ましくは2J/cm2 以下で照射する。照射強度がこの範囲内であれば、放射線硬化性組成物の種類によって適宜選択可能である。
【0093】
放射線の照射時間は通常1秒以上、好ましくは10秒以上、また、通常3時間以下、反応促進と生産性の点で好ましくは1時間以下である。放射線の照射エネルギーや照射時間が極端に少ない場合、重合が不完全なため保護層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない場合がある。また、逆に極端に過剰な場合は黄変等光による色相悪化に代表される劣化を生じる場合がある。
【0094】
上記放射線の照射は、一段階で照射してもよく、或いは複数段階で照射してもよい。その線源としては、通常、放射線が全方向に広がる拡散線源を用いる。放射線の照射は、通常、放射線硬化性組成物が塗布されたディスクを固定静置した状態、またはコンベアで搬送された状態で、放射線源を固定静置して行なう。
【0095】
[ハードコート層]
本発明の光記録媒体は、保護層の上にハードコート層が形成されている。ハードコート層は、表面硬度がHB以上のものであれば、その種類は特に限定されず、一般的な光記録媒体におけるハードコート層として公知のものを用いることができる。また本発明において上記表面硬度は好ましくはB以上、さらに好ましくはHB以上、更に好ましくはF以上、最も好ましくはH以上である。本発明でいうハードコート層の表面硬度とは、光記録媒体(樹脂基板、記録再生機能層、保護層、及びハードコート層を積層した状態)のハードコート層表面について、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験により測定した表面硬度をいうこととする。
【0096】
また上記ハードコート層は、波長550nmにおける光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは89%以上である。光線透過率の測定は、上述した保護層の光線透過率の測定方法と同様とされる。
また水に対する接触角が90°以上であることが好ましく、より好ましくは100°以上である。これにより、光記録媒体の防汚性を高いものとすることができる。水に対する接触角の測定は、接触角計等を用いた公知の方法で実施することができる。
【0097】
上記ハードコート層の膜厚は、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上とされる。また通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下とされる。
【0098】
本発明のハードコート層は、上述の水に対する接触角が高いこと等の防汚性を有していることが好ましい。防汚性を有するハードコート材料としては、耐汚染性付与剤としてシリコーン化合物やフッ素化合物を含有し、かつ多官能(メタ)アクリレートモノマーやエポキシ化合物、無機ナノ粒子等の無機成分を含有する放射線硬化性組成物が好ましく用いられる。耐汚染性付与剤については具体的には、オルガノポリシロキサン骨格等のシリコーン骨格を有する重合体、シリコーン骨格とアクリル基とを有する放射線硬化性化合物、シリコーン系界面活性剤等のシリコーン化合物、フッ素原子を含有する重合体、フッ素原子とアクリル基とを有する放射線硬化性化合物、フッ素系界面活性剤等のフッ素化合物が挙げられる。
【0099】
ただし、青色レーザーを用いる光記録媒体等の高記録密度媒体の場合は、そのレーザースポット径が小さいため、指紋や塵、埃などの汚れに敏感である。特に指紋のように有機物を含む汚れについては、汚れが光記録媒体のレーザー光入射側の表面に付着した場合、レーザーによる記録/再生エラー等の深刻な影響を生じる場合があり、またその除去もしにくいことがあることから、これらの点に留意することが好ましい。
【0100】
本発明において用いることのできる防汚ハードコート層形成用材料としては、基本的にはポリシロキサンまたはフッ素含有基を含む耐汚染性付与剤を含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であれば特に制限されないが、耐汚染性付与剤に活性エネルギー線硬化性が付与されていることが好ましい。具体例としては、以下が挙げられる。
(1)末端に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物および/またはフッ素化合物を含み、かつ無機成分を含まない活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
(2)活性エネルギー線硬化性基、およびポリシロキサンユニットおよび/または有機フッ素基ユニットを含む重合体を含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
(3)側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物および/またはフッ素化合物を含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【0101】
以下に、上記(1)〜(3)を詳述する。
活性エネルギー線硬化性ハードコート剤(1)は、末端に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物および/またはフッ素化合物を0.01重量部以上、10重量部以下、1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを30重量%以上含有する(メタ)アクリレート組成物を88重量部以上、99.5重量部以下、光重合開始剤を0.1重量部以上、10重量部以下(合計100重量部)を必須成分として含むことが好ましい。また、さらに必要に応じ、粘度や塗布性などを調節するためにこれら必須成分を溶解しうる有機溶剤を加えてもよい。
【0102】
末端に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物としては、片末端あるいは両末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリシロキサンであれば、特に限定されず、1種類を単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも、数平均分子量500以上、10000以下の、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサンが好ましい。
また、末端に活性エネルギー線基を有するフッ素化合物としては、片末端あるいは両末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するパーフルオロアルキル化合物、パーフルオロアルキレン化合物、パーフルオロアルキレンポリエーテル化合物等を例示することができ、これらを1種単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0103】
1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを30重量%以上含有する(メタ)アクリレート組成物は、他に1分子内に1個以上、2個以下の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。
1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを例示すると、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリエステルアクリレート類、多官能ウレタンアクリレート類、ポリエポキシアクリレート類、イソシアヌレート環を有するトリエトキシアクリレート(例えば、東亞合成製、アロニックスM315、M313等)が挙げられ、これらを1種単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。もちろんこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0104】
1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ブチルメタクリレートやステアリルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートやイソボルニルメタクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどのヘテロ原子含有環状構造含有アクリレート、等を挙げることができるが、その他芳香環を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート等も好ましく用いることが可能である。これらは1種単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。もちろんこれら以外のものを排除するものではない。
【0105】
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ヘキサンジオールジアクリレート等の脂肪族または脂環式ジオールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、二官能のエポキシアクリレート等が好ましく、これらを1種単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。もちろんこれら以外のものを排除するものではない。
【0106】
光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、アルキルフェノン型化合物(α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系)、アシルホスフィンオキシド型化合物、オキシムエステル化合物、オキシフェニル酢酸エステル類、ベンゾインエ−テル類、フェニルギ酸エステル類、ケトン/アミン化合物等である。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、メチルベンゾイルフォルメート、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が好ましい。これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
【0107】
溶剤で希釈する場合、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アルコキシ基を有するアルコール類(メトキシエタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルエステル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル等)等、が好ましい例として挙げられ、また、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで混合して使用することができる。なお、他の成分との相溶性および/または均一分散性に優れるものを適宜選択することが好ましい。
【0108】
活性エネルギー線硬化性基およびポリシロキサンユニットおよび/または有機フッ素基ユニットを含む重合体を含有する活性エネルギー線硬化性ハードコート剤(2)は、活性エネルギー線硬化性基およびポリシロキサンユニットおよび/または有機フッ素基ユニットを含む重合体を0.1重量部以上、20重量部以下、1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを30重量%以上含有する(メタ)アクリレート組成物を79.8重量部以上、99.5重量部以下、及び光重合開始剤を0.1重量部以上、10重量部以下(合計100重量部)を必須成分として含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリレート組成物全体の50重量%を越えない範囲で、例えばシリカ等の無機(酸化物)微粒子を含むように、有機無機ハイブリッド型の(メタ)アクリレートを加えてもよい。また、さらに必要に応じ、粘度や塗布性などを調節するためにこれら必須成分を溶解しうる有機溶剤を加えてもよい。
【0109】
活性エネルギー線硬化性基およびポリシロキサンユニットおよび/または有機フッ素基ユニットを含む重合体としては、特に限定されないが、例えばジメルカプトシリコンおよび/またはパーフルオロアルキル(メタ)アクリレートとエポキシ基含有(メタ)アクリレートを必須成分として共重合し、その共重合体のエポキシ基に(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸を付加させて得られる重合体等を好ましい例として例示することができるが、もちろんこれに限定されるわけではない。
【0110】
活性エネルギー線硬化性ハードコート剤(3)は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物および/またはフッ素化合物を0.01重量部以上、10重量部以下、1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを30重量%以上含有する(メタ)アクリレート組成物を88重量部以上、99.5重量部以下、及び光重合開始剤を0.1重量部以上、10重量部以下(合計100重量部)を必須成分として含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリレート組成物全体の50重量%を越えない範囲で、シリカなどの無機(酸化物)微粒子を含むように、有機無機ハイブリッド型の(メタ)アクリレートを加えてもよい。また、さらに必要に応じ、粘度や塗布性などを調節するためにこれら必須成分を溶解しうる有機溶剤を加えてもよい。
【0111】
側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有するポリシロキサン化合物および/またはフッ素化合物としては、特に限定はされないが、好ましい例をいくつか例示すると、側鎖に1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する、ポリ(ジメチルシロキサン−メチル(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサン)またはポリ(ジメチルシロキサン−メチル(メタ)アクリロイルシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン−メチル(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシシロキサン)、や、側鎖に1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する、ポリパーフルオロアルキレンポリエーテル、パーフルオロアルキルメルカプタン末端封止ポリグリシジルメタクリレートオリゴマーの(メタ)アクリル酸変性物等を挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0112】
また上記ハードコート層を形成する際のハードコート層形成用放射線硬化性組成物の塗布方法は特に限定されるものではなく、例えばスピンコート法等の一般的な塗布方法とすることができる。また上記ハードコート層形成用放射線硬化性組成物の硬化に用いられる放射線についても特に限定されず、例えば上記保護層の形成の際に用いられる放射線と同様とすることができる。
【0113】
[樹脂基板]
本発明に用いられる樹脂基板について制限は無く、光記録媒体の樹脂基板として公知のものを任意に用いることができる。光記録媒体の樹脂基板の形状は任意であるが、通常は円板形状に形成される。
【0114】
また、樹脂基板の材料は光透過性材料であれば他に制限は無い。即ち、光情報の記録や再生に用いる波長の光が透過しうる任意の素材で形成することができる。その具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等においても特に広く用いられているものであり、安価であるので特に好ましい。なお、樹脂基板の材料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0115】
さらに、樹脂基板の寸法にも制限は無く任意である。ただし、樹脂基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、また、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは3mm以下である。中でも、1.2±0.2mm程度の厚さの樹脂基板がしばしば使用される。また、樹脂基板の外径は、一般的には120mm程度である。
また、樹脂基板の製造方法に制限は無く任意であるが、例えば、光透過性樹脂の射出成形などによって製造することができる。
【0116】
[記録再生機能層]
本発明に用いられる記録再生機能層は、本発明の光記録媒体が、再生専用の媒体(ROM媒体)である場合と、一度の記録のみ可能な追記型の媒体(Write Once媒体)である場合と、記録消去を繰り返し行える書き換え可能型の媒体(Rewritable媒体)である場合とによって、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。例えば、再生専用の媒体においては、記録再生機能層は、通常、Al、Ag、Au等の金属を含有する単層で構成される。また、追記型の媒体や書き換え可能型の媒体においては、記録再生機能層は、通常、反射層、誘電体層及び記録層等から構成される。例えば書き換え可能型の光記録媒体における記録再生機能層は、樹脂基板上に直接設けられた金属材料から形成された反射層と、相変化型材料により形成された記録層と、記録層を上下から挟むように設けられた2つの誘電体層とで構成されるもの等とすることができる。
【0117】
上記反射層としては、例えばAg、Ag合金、Al、Al合金、Au、Au合金等種々の材料を用いることができ、これらの1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。より好ましくは、純Ag、AgにTi、Mg、Au、Cu、NdまたはPd等の元素を含む合金、AlにTa、Ti、Cr、Mo等の元素を含む合金が用いられる。また誘電体層としては、SiO2、ZnO、Al23、Ta25、Nb25等の酸化物、GeN、SiN、GeN、TaN等の窒化物、SiC等の炭化物、MgF2、CaF2等のフッ化物、ZnS、Y22S等の硫化物が好ましく用いられる。中でもZnS−SiO2、SiN、Ta25、Y22Sが成膜速度が大きく膜応力が小さい点で特に好ましい。
【0118】
また記録層としては、無機元素で構成された材料や、有機色素等の有機化合物で構成された材料を用いることができる。無機元素で構成された材料としては、加熱して分解する物質と熱的に安定な物質の両方を含有する材料が挙げられる。加熱して分解する物質の具体例としては、Cr、Mo、W、Fe、Ge、Sn及びSbからなる群から選ばれる元素の窒化物やIr、Au、Ag及びPtからなる群から選ばれる元素の酸化物等が挙げられる。熱的に安定な物質の具体例としては、Ti、Zr、Hf、V,Nb、Ta、Al及びSiからなる群から選ばれる元素の窒化物やZn、Al、Y、Zr、Ti、Nb、Ni、Mg、Siからなる群から選ばれる元素の酸化物等が挙げられる。記録層には、これらの1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0119】
[光記録媒体]
本発明の光記録媒体は、上記樹脂基板上に記録再生機能層、保護層、及びハードコート層を有するものであれば、その構成や用途等は特に限定されるものではなく、上述した各層以外に、適宜必要な層を有していてもよい。本発明においては特に、上記光記録媒体が膜面入射型、またはブルーレーザーを用いる次世代高密度光記録媒体であることが好ましい。
次世代高密度光記録媒体とは、波長380〜800nmのレーザー光、好ましくは波長380〜450nmのレーザー光を用いる光記録媒体を意味する。
【0120】
なお、本発明の光記録媒体は単板で用いられるものであってもよく、2枚以上を貼り合わせて用いられるものであってもよい。また、必要に応じてハブを付け、カートリッジへ組み込んで用いられるものであってもよい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(保護層用放射線硬化性組成物Aの調製)
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4つ口フラスコに(a1)イソホロンジイソシアネート147gとジブチルスズラウレート0.1gとを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。温度が一定になったら、(a2)1,4−ブタンジオール25.5gと(a3)ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:約650)22.5gと(a4)ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:約2000)24.7gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌する。温度を70℃まで下げてから、(a5)ヒドロキシエチルアクリレート76.7gとメトキノン0.1gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンアクリレートオリゴマー(A)を合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマー(A)にテトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機社製)174.5g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B2)(共栄社化学社製)29g、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Aを調製した。また、(a3)および(a4)の量は、以下の如くであった。
{(a4)の重量}/{(a3)の重量}=1.10
{(a4)のモル数}/{(a3)のモル数}=0.36
{(a3)+(a4)の重量}/{(A)+(B)の重量}=0.094
【0122】
(保護層用放射線硬化性組成物Bの調製)
保護層用放射線硬化性組成物Aの調製と同様にウレタンアクリレートオリゴマーAを合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマーAにテトラヒドロフルフリルアクリレート(B1)(大阪有機社製)116.9g、ジシクロペンタジエニルアクリレート(B2)(日立化成社製)57.6g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B3)(共栄社化学社製)29g及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Bを調製した。(a3)および(a4)の量は、保護層用放射線硬化性組成物Aと同様である。
【0123】
(保護層用放射線硬化性組成物Cの調製)
保護層用放射線硬化性組成物Aの調製と同様にウレタンアクリレートオリゴマーAを合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマーAにテトラヒドロフルフリルアクリレート(B1)(大阪有機社製)174.5g、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(B2)(新中村化学社製)9.6g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B3)(共栄社化学社製)19.4g、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Cを調製した。(a3)および(a4)の量は、保護層用放射線硬化性組成物Aと同様である。
【0124】
(保護層用放射線硬化性組成物Dの調製)
保護層用放射線硬化性組成物Aの調製と同様にウレタンアクリレートオリゴマーAを合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマーAにテトラヒドロフルフリルアクリレート(B1)(大阪有機社製)122.2g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B2)(共栄社化学社製)29g、イソボルニルアクリレート(B3)(大阪有機社製)52.4g、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Dを調製した。(a3)および(a4)の量は、保護層用放射線硬化性組成物Aと同様である。
【0125】
(保護層用放射線硬化性組成物Eの調製)
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4つ口フラスコに(a1)イソホロンジイソシアネート146.7gとジブチルスズラウレート0.1gを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。温度が一定になったら、(a2)1,4−ブタンジオール23.8gと(a3)ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:約650)42.9gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌した。温度を70℃まで下げてから、(a5)ヒドロキシエチルアクリレート76.6gとメトキノン0.1gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンアクリレートオリゴマー(C)を合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマー(C)にテトラヒドロフルフリルアクリレート(B1)(大阪有機社製)195gおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B2)(共栄社化学社製)15g及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Eを調製した。また、(a3)および(a4)の量は、以下の如くであった。
{(a4)の重量}/{(a3)の重量}=0
{(a4)のモル数}/{(a3)のモル数}=0
{(a3)+(a4)の重量}/{(C)+(B)の重量}=0.086
【0126】
(保護層用放射線硬化性組成物Fの調製)
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4つ口フラスコに(a1)イソホロンジイソシアネート158gとジブチルスズラウレート0.1gを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。温度が一定になったら、(a2)1,4−ブタンジオール28.8gと(a3)ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:約650)23.1gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌した。温度を70℃まで下げてから、(a5)ヒドロキシエチルアクリレート82.6gとメトキノン0.1gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンアクリレートオリゴマー(C)を合成した。合成したウレタンアクリレートオリゴマー(C)にテトラヒドロフルフリルアクリレート(B1)(大阪有機社製)172.5g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(B2)(共栄社化学社製)35g及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本シイベルヘグナー社製)20gを加えて5時間混合して希釈し、均一液状の保護層用放射線硬化性組成物Fを調製した。また、(a3)および(a4)の量は、以下の如くであった。
{(a4)の重量}/{(a3)の重量}=0
{(a4)のモル数}/{(a3)のモル数}=0
{(a3)+(a4)の重量}/{(C)+(B)の重量}=0.046
【0127】
(ハードコート層用組成物Aの調製)
ハードコート層用硬化性組成物としてジペンタエリスリトール(ヘキサ/ペンタ)アクリレート(商品名:カヤラッドDPHA(日本化薬社製))99.5g、撥水・撥油・低摩擦化剤として、TEGO(登録商標)Rad2200N(デグッサ社製、側鎖にアクリル基を含むポリジメチルシロキサン)を0.5g、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを2g加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)50g、及び1−アセトキシ−2−メトキシプロパン(PGMA)103gを、暗所/室温で、2時間攪拌し、ハードコート層用組成物A(固形分40重量%)を調製した。
【0128】
(ハードコート層用組成物Bの調製)
ハードコート層用硬化性組成物としてジペンタエリスリトール(ヘキサ/ペンタ)アクリレート(商品名:カヤラッドDPHA(日本化薬社製))90g、撥水・撥油・低摩擦化剤として、メタクリル酸メチル(MMA)とパーフルオロオクチルエチルメタクリレートとX−22−167B(両末端メルカプトのポリジメチルシロキサン、信越化学社製)とメタクリル酸グリシジル(GMA)の25/40/5/30(重量比)共重合体へのアクリル酸付加物(35%PGM溶液)を28.57g、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを2g加え、PGMAを固形分40重量%になる分の量だけ加え、暗所/室温で、2時間攪拌し、ハードコート層用組成物Bを調製した。
【0129】
(ハードコート層用組成物Cの調製)
ハードコート層用硬化性組成物としてジペンタエリスリトール(ヘキサ/ペンタ)アクリレート(商品名:カヤラッドDPHA(日本化薬社製))75g、無機成分として、PMA−ST(日産化学社製、平均粒径12nmのコロイダルシリカの30%濃度1−アセトキシ−2−メトキシプロパン分散液)とKBE9007(信越化学社製、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン)の20/1(重量比)反応物へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物20g、撥水・撥油・低摩擦化剤として、LMA(メタクリル酸ラウリル)とパーフルオロオクチルエチルメタクリレートとX−22−167B(両末端メルカプトのポリジメチルシロキサン、信越化学社製)とメタクリル酸グリシジル(GMA)の20/40/3/37(重量比)共重合体へのアクリル酸付加物(35%PGM溶液)を28.57g、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1g加え、PGM/PGMAの1/1(重量比)混合溶媒を固形分35重量%になる分の量だけ加え、暗所/室温で、2時間攪拌し、ハードコート用組成物C(固形分35重量%)を調製した。
【0130】
(実施例1)
上記で調製した保護層用放射線硬化性組成物Aを、100mm角、厚さ3mmのフッ素コートガラス板上にスピンコーターにより塗布し、高圧水銀ランプにて照射強度1J/cm2で紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚100μmの硬化塗膜とし、その塗膜を注意深く剥離した。同様の操作を繰り返し、剥離塗膜を3枚得た。このうち2枚の塗膜から10mm×80mmの短冊状サンプルを10本切り出して引っ張り弾性率測定用サンプルとし、また残り1枚の塗膜から80mm角の四角形フィルムを切り出して吸水率測定用サンプルとし、以下に示す評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(吸水前引っ張り弾性率Eb)
テンシロン引っ張り試験器を用いて、室温25℃においてJIS K7127に準拠した方法にて弾性率Ebを測定した。
【0132】
(吸水後引っ張り弾性率Ea)
サンプルを、1Lの純水を入れた容器に25℃において3時間浸漬し、取り出して水滴を軽く拭き取り、ただちにテンシロン引っ張り試験器を用いて、室温25℃においてJIS K7127に準拠した方法にて弾性率Eaを測定した。
以下の定義に基づき、引っ張り弾性率の比eを求めた。
引っ張り弾性率の比e=Ea/Eb
【0133】
(光記録媒体の作成)
直径120mm、厚み1.1mmのポリカーボネート製光記録媒体基板表面に、100nmの厚みのAg−Cu−Nd反射層、25nmの厚みのZnS−SiO2誘電体層、15nmの厚みのSn−Nb−N記録層、30nmの厚みのZnS−SiO2誘電体層をこの順にスパッタにて形成し、記録再生機能層を得た。記録再生機能層の最表層の誘電体層表面に、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物Aをスピンコーターにて厚み100μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ(東芝ハリソン製;トスキュア752)を用いて、波長365nmにおける照射量100mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ保護層を形成させた。紫外線照射量は、UVメーター(ウシオ電機社製;UIT−250)にて測定した。
次に保護層表面にハードコート層材料としてハードコート層用組成物Aをスピンコーターにより塗布し、高圧水銀ランプ(ジャテック社製;J−cure100)を用いて、波長365nmにおける照射量400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、厚み2μmのハードコート層を形成させた。同様の操作を繰り返し、光記録媒体を3枚得た。
上記で作成した光記録媒体のうちの1枚につき、下記の方法によりハードコート表面の表面硬度評価を行った。また、ハードコート表面の水およびヘキサデカン接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0134】
(表面硬度評価)
JIS K5400に準拠した方法にて行った。具体的操作を下に示す。
硬度4B、3B、2B、B、HB、F、Hの鉛筆(三菱鉛筆社製;品番UNI、日塗検査済、鉛筆引っ掻き値試験用)を用意した。
鉛筆硬度測定装置(新東科学社製;トライボギアType18)を用いて、硬度4Bを装着し、加重750gf、引っ掻き速度30mm/minにて1cm走引し、走引痕の有無を目視で確認した。走引痕が観測されなかった場合は1段階硬い鉛筆に交換し、同様の操作を繰り返した。
結果は、以下のように整理した。
【表1】

【0135】
上記で作製した光記録媒体の2枚目につき、下記の方法により耐湿度ディスク変形評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0136】
(対湿度ディスク変形評価試験)
光記録媒体サンプルを恒温恒湿槽内に静置し、恒温恒湿槽内の温度を25℃、湿度を90%RHに設定して100時間保った。その後、ディスクを取り出し、気温25℃、45%RHの環境下にて変位センサ(キーエンス社製;LT−9010)を用いて、ディスクの変形を測定した。0時間後、1時間後、3時間後、5時間後、6時間後、8時間後、10時間後、24時間後に測定し、その経時変化を記録した。そのソリ変化のグラフを図1に示す。ただし、ハードコート層側に凸状に変形する場合のソリ値はマイナス、ハードコート層側に凹状の変形する場合のソリ値はプラスとした。
図1に見られるように、6〜8時間後にソリ変形の極大値が見られ、その変形値は131μmであった。この値を対湿度変形最大絶対値として表2に示す。変形値の絶対値が150μmより大きい場合は、代表的なレンズであるNA=0.85、口径3mmのレンズを使用する際の適切なワーキング距離を確保できないので、判定を「×」とし、それ以外の場合を判定「○」とした。
【0137】
上記で作製した光記録媒体の3枚目につき、下記の方法により耐湿度ディスクソリ評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0138】
(対温度ディスクソリ評価試験)
ディスクドライブ(NEC製CD−ROMドライブ;型番PCCD60D)筐体上面に40mm角の窓を開け、この窓の上方に変位センサ(キーエンス社製;LT−9010)を固定して、ディスクドライブにディスクを挿入した際にディスクの中心から58mmの位置の垂直方向の変位をリアルタイムで検出し、データを計算機に出力できるようにしたディスク変形検出ユニットを作製した。このユニットを、恒温槽(日立社製恒温器コスモピア;型番EC−10HHP)のチャンバー内に設置した。このシステムの概要を図3に示した。図に示した通り、保護層・ハードコート側に凹変形の場合は変形値をマイナスとし、保護層・ハードコート側に凸変形の場合は変形値をプラスとした。
上記で作製した光記録媒体1枚をディスクドライブに挿入し、恒温槽を密閉した後、恒温槽内の温度を25℃に設定し、20分間保ち、ディスクの変形を測定した。この変形の値を変形基準値とした。
次に恒温槽内の温度を55℃に設定を変更し、1時間保ち、ディスクの変形を測定した。この変形値の基準値からの差を高温時変形値として記録した。
次に、25℃に設定を変更して3時間保った後、恒温槽内の温度を5℃に設定を変更し、1時間保ち、ディスクのソリを測定した。このソリ値の基準値からの差を低温時変形値として記録した。
ソリ基準値を変形値0として、高温時変形値および低温時変形値を図2にプロットした。図2に見られるように、高温時変形値は正であり、低温時変形値は負であった。高温変形値と低温変形値とで絶対値の大きい方を対温度変形最大絶対値として表2に示した。
変形値の絶対値が150μmより大きい場合は、代表的なレンズであるNA=0.85、口径3mmのレンズを使用する際の適切なワーキング距離を確保できないので、判定を「×」とし、それ以外の場合を判定「○」とした。
【0139】
(実施例2)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物A、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Bを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。
【0140】
(実施例3)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物A、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Cを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度ディスク変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。
【0141】
(実施例4)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物B、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Aを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。
【0142】
(実施例5)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物C、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Aを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。
【0143】
(実施例6)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物D、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Aを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。対湿度ディスク変形評価試験においては、図1に示すように、3時間後に変形の極小値が見られ、その変形値は−98μmであった。また表2にはその絶対値98μmを示した。
【0144】
(比較例1)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物E、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Aを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。対湿度ディスク変形評価試験においては、図1に示したように8時間後に変形の極大値が見られ、その変形値は194μmであった。
【0145】
(比較例2)
実施例1において、保護層用材料として保護層用放射線硬化性組成物F、ハードコート用材料としてハードコート層用組成物Aを用いた以外は実施例1と同様に行った。ハードコートの表面硬度、保護層のEb、Ea、e、吸水率、光記録媒体の対湿度変形最大絶対値、対温度変形最大絶対値を表2に示す。対湿度ディスク変形評価試験においては、8時間後に変形の極大値が見られ、その変形値は177μmであった。対温度ディスクソリ評価試験においては、図2に示したように低温時変形値が−200μmと大きかった。
【表2】

(評価)
表2から明らかなように、本発明を用いた実施例1から実施例6までの光記録媒体では、対湿度ディスク変形最大絶対値及び対温度変形最大絶対値が好ましい値を示しており、耐湿度性及び耐温度性に優れているといえる。また表面硬度についても十分なものであった。
一方、比較例1の光記録媒体では、対湿度変形最大絶対値が大きく、耐湿度性が十分ではなかった。また比較例2は、対湿度変形最大絶対値、及び対温度変形最大絶対値が大きく、耐湿度性及び耐温度性が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の光記録媒体は、環境の温度及び湿度変化にも対応可能であり、かつ耐摩耗性や記録保護層の保護性にも優れている。したがって、本発明はブルーレイディスク等の次世代高密度光記録媒体等も含む光記録媒体に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】実施例1、6及び比較例1の対湿度ディスク変形試験の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1及び比較例2の対温度ディスク変形評価試験の結果を示すグラフである。
【図3】対温度ディスク変形評価試験のシステムの概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、記録再生機能層と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)を含む放射線硬化性組成物の硬化物である保護層と、表面硬度がB以上であるハードコート層とをこの順に具備する光記録媒体であって、
前記保護層の25℃、湿度45%における引っ張り弾性率に対する飽和吸水時における引っ張り弾性率の比が、0.20以上である
ことを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記保護層の25℃における吸水率が2(wt/wt)%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、(a1)ポリイソシアネート、(a2)分子量400未満のジオール、(a3)数平均分子量が400以上、1500未満のポリオール、(a4)数平均分子量が1500以上のポリオール、及び(a5)水酸基含有(メタ)アクリレートを含む組成物を反応させた反応生成物である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)が、脂環式アクリレートである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(B)が、単官能(メタ)アクリレート及び/または分子量が300以下である多官能(メタ)アクリレートである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−48739(P2009−48739A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215934(P2007−215934)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】