説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】振動系の特性の温度変化や経年変化及び製造時の加工精度による特性のばらつきがあった場合にも、振動時のジッタを軽減する光走査装置及び画像形成装置の提供。
【解決手段】揺動体とねじりバネとを有する振動系100と、揺動体に形成された反射ミラーと、光ビームを発生する光源131と、振動系100に駆動力を印加するコイルと、揺動体が変位角θBDをなすときの時間を計測する受光素子140と、コイル161を制御する駆動制御部600と、駆動制御部600の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整器620とを備え、駆動制御部600は、受光素子140で検出した時間151と目標時間152との時間差153を算出し、時間差153に基づき振動系100を制御し、制御ゲイン調整器620は、時間差153に基づき制御ゲインを調整し、駆動制御部600に設定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に関する。特に、マイクロ揺動構造体などの揺動体を有する光偏向装置に関する。また、この光偏向装置を使用した走査型ディスプレイやレーザビームプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射ミラーが共振駆動される揺動体である光偏向器(光走査装置)が色々と提案されている。共振型揺動体は、ポリゴンミラー等の回転多面鏡を使用した光走査光学系に比べて、大幅に小型化することが可能である。また、消費電力が少ないこと、面倒れが理論的に存在しないこと、特に半導体プロセスによって製造されるSi単結晶からなる揺動体は理論上金属疲労が無く耐久性にも優れていること等の特徴がある(例えば、特許文献1)。このような共振型揺動体を、以下、共振型光偏向器と記す。
【0003】
また、共振型光偏向器においては、原理的に反射ミラーの偏向角(変位角)が正弦的に変化するため、角速度が一定でない。この特性を補正するために、次のような手法が提案されている(例えば、特願2006−035491参照)。なお、本明細書では、反射ミラーの偏向角と反射ミラーで偏向・走査される走査光の走査角は一定の関係にあって同等に扱えるので、偏向角(変位角)と走査角は同等な意味で用いる。
【0004】
特願2006−035491に記載の手法では、2つの揺動体を有する共振型光偏向器を用い、一方の揺動体に基本周波数の振動を、他方の揺動体に基本周波数の整数倍の周波数の振動を発生させる構成である。基本周波数と、基本周波数の2倍の周波数の振動を発生させることで、略鋸波駆動を実現することができる。図13に略鋸波駆動を実現した共振型光偏向器を示す。
【0005】
振動系400は揺動体401、402、ねじりバネ411、412、支持部421、駆動部420、光源431、第1及び第2の受光素子441,442、駆動制御部450から構成される。また、432は光源431からの光ビーム、433は揺動体401により反射された走査光である。この振動系は、基本周波数と基本周波数の整数倍の共振周波数を持ち、基本周波数と基本周波数の整数倍の周波数との合成周波数で駆動する。基本周波数と基本周波数の例えば2倍の周波数との合成周波数で駆動するとき、反射面を有する揺動体401が略鋸波駆動で駆動し、その偏向角は正弦波駆動に比べて角速度の変化の少ない光偏向を実現する。駆動制御部450により目標振動波形を実現するために必要な駆動信号を生成し、駆動部420が振動系400を駆動している。
【0006】
図14に特願2006−035491の駆動制御部450を示す。図中、351、352は2000Hz及び4000Hzの正弦波を生成する任意波形発生器である。それぞれの正弦波の位相及び振幅は演算部454の指令により任意に変更可能である。生成された2つの正弦波は加算器370で足し合わされた後に増幅器380により増幅され、例えばコイルなどの駆動部420に電流が流される。コイルなど駆動部420に流れる電流により、揺動体402に取り付けられた例えば永久磁石などの駆動部420にトルクが作用し、揺動体402を駆動する。
【0007】
第1及び第2の受光素子441、442は後述の実施例で説明する図7に示す受光素子141、142のように配置される。第1及び第2の受光素子441、442からの出力451は予め設定された基準となる値452とに基づき得られる値453となって演算部454に取り込まれる。演算部454は、第1及び第2の受光素子441、442の出力451が任意の値を示すように任意波形発生器351,352に操作量455を出力する。つまり光偏向装置の走査光433が所望する任意の時間で第1及び第2の受光素子441、442を通過するように、任意波形発生器351,352のそれぞれの正弦波の位相及び振幅を制御する。
【特許文献1】特開昭57−8520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記半導体プロセスで製造された揺動体の共振周波数は可動板及び弾性支持部の材質及び形状の加工精度により決定されるため、材質や加工精度によって、作成した揺動体の共振周波数、慣性モーメント、ねじりバネのバネ定数等に固体差が生じる。そのため、作製した全ての揺動体を同一の駆動周波数と同一の制御ゲインで駆動しようとすると、駆動可能なものを選別して使用しなければならず、歩留まりを下げるおそれがある。
【0009】
また、この個体差を有する揺動体を、同一の駆動周波数及び同一の制御ゲインを設定した駆動制御部450により制御すると、揺動体の慣性モーメントやねじりバネのバネ定数の個体差により、振動運動のジッタが大きくなる可能性がある。
【0010】
更に、温度変化や経年変化により揺動体の慣性モーメント、ねじりバネのバネ定数、固有周波数等が変化する。従って、同一の制御ゲインを設定した駆動制御部450により制御する場合、揺動体の温度変化や経年変化によって振動運動のジッタが大きくなるという問題がある。
【0011】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、揺動体の振動波形と目標振動波形とのずれが少なくなるような制御ゲインを選択でき、光走査の精度を高めることができる光走査装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の光走査装置及び画像形成装置は以下の構成を備える。
【0013】
(1)1つ以上の揺動体と前記揺動体に連結された1つ以上のねじりバネとを有する振動系と、前記揺動体の少なくとも1つに形成された反射ミラーと、光ビームを発生する光源と、所定の周波数で振動運動を行わせるために前記振動系に駆動力を印加する駆動手段と、前記揺動体の少なくとも1つが、少なくとも1つ以上の変位角をなすときの時間を計測するための変位角検出手段と、前記変位角検出手段により計測された時間に基づき前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記反射ミラーに前記光ビームを照射して光を走査する光走査装置であって、前記駆動制御手段の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整手段を備え、前記駆動制御手段は、前記周波数の1周期内における所定の時間を基準または原点の時間とした場合に、前記揺動体が少なくとも1つ以上の所定の変位角をなすときの少なくとも1つの時間と予め設定した設定時間との時間差を算出し、前記時間差に基づき前記振動運動の振動波形の振幅と位相のうち少なくとも1つを制御し、前記制御ゲイン調整手段は、前記時間差に基づき前記制御ゲインを調整し、前記駆動制御手段に設定することを特徴とする光走査装置。
【0014】
(2)1つ以上の揺動体と前記揺動体に連結された1つ以上のねじりバネとを有する振動系と、前記揺動体の少なくとも1つに形成された反射ミラーと、光ビームを発生する光源と、所定の周波数で振動運動を行わせるために前記振動系に駆動力を印加する駆動手段と、前記揺動体の少なくとも1つが、異なる第1及び第2の変位角をなすときの時間を計測するための変位角検出手段と、前記変位角検出手段により計測された時間に基づき前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記反射ミラーに前記光ビームを照射して光を走査する光走査装置であって、前記駆動制御手段の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整手段を備え、前記駆動制御手段は、前記周波数の1周期内における所定の時間を基準または原点の時間とした場合に、前記揺動体の1つが前記第1の変位角をなすときの互いに異なる時間と、前記揺動体の1つが前記第2の変位角をなすときの互いに異なる時間と、から成る複数の時間の内の少なくとも2つの時間と設定時間との時間差を算出し、前記時間差に基づき前記振動運動の振動波形の振幅と位相のうち少なくとも1つを制御し、前記制御ゲイン調整手段は、前記時間差に基づき前記制御ゲインを調整し、前記駆動制御手段に設定することを特徴とする光走査装置。
【0015】
(3)前記(1)または(2)に記載の光走査装置を備える画像形成装置であって、前記制御ゲイン調整手段は、画像形成時以外に前記制御ゲインを前記駆動制御手段に設定することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造工程で揺動体の慣性モーメント、ねじりバネのバネ定数、固有周波数等に個体差が生じた場合でも、揺動体の振動と目標振動波形とのずれが最も少なくなるような制御ゲインを選択することができる。そのため、揺動体の振動運動におけるジッタを改善できる。更に、従来、ある範囲の共振周波数から外れた揺動体はジッタが大きくなるため不良とみなしていたが、揺動体の個体差に適した制御ゲインを設定することでジッタが低減され、歩留まりを改善することができる。
【0017】
さらに、温度変化や経年変化により揺動体の慣性モーメント、ねじりバネのバネ定数、固有周波数等が変化した場合でも、揺動体の振動波形と目標振動波形とのずれが最も少なくなるような制御ゲインを選択することができるようになる。その結果、揺動体の振動が目標振動波形に近づくため、光走査の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の光偏向装置(光走査装置)の実施例を、以下に詳しく説明する。実施例1は揺動体の数が1つ、実施例3は揺動体の数が2つの共振型光偏向装置としてそれぞれ構成されている。以下に、本発明の更に具体的な実施例を図面に沿って説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1においては、1つの揺動体とその揺動体に連結された少なくとも1つのねじりバネとで振動系を構成している。揺動体には反射ミラーを形成している。そして、変位角計測部は、反射ミラー付き揺動体がある変位角を取るときの走査光で照射される位置に配された受光素子(変位角計測手段)を少なくとも1つ有する。また、走査光は、直接受光素子に入射するようにしてもよいし、少なくとも1つの反射部材を経て受光素子に入射するようにしてもよい。すなわち、少なくとも1つの受光素子が、反射ミラー付き揺動体がある変位角を取ってある偏向角(走査角)になった走査光を受光して検出できるように配置されていればよい。
【0020】
実施例1の光偏向装置を説明する。実施例1の光偏向装置の振動系は、1つの揺動体とその揺動体に連結する少なくとも1つのねじりバネを含み、基本共振周波数での振動運動を発生可能である。そして、光偏向装置は、振動系を動作させる駆動部(駆動手段)と、揺動体に形成された反射ミラーと、光ビームを照射する光源とを更に有して、反射ミラーに光ビームを照射して光を走査する。
【0021】
本実施例による光偏向装置のブロック図を図1に示す。振動系100は、揺動体102を含み、揺動体102と支持部121を連結するねじりバネ112が設けられている。
【0022】
駆動制御部(駆動制御手段)600は、揺動体102に、電磁・静電・圧電などにより振動系100の固有振動モードを同時に励振する駆動力を加える(印加する)。本実施例では駆動制御部600はコイル161に適当な電流を流すように制御する信号を送るものとする。コイル161に流れる電流により、揺動体102に取り付けられた永久磁石162にトルクが作用し、振動系100を駆動する。揺動体102は表面に反射ミラーを有し、光源131からの光ビーム132を走査する。走査光133は、各周期の往復走査において、受光素子140を2回通過する。駆動制御部600は、走査光133が受光素子140を2回通過する時間に基づいて、コイル161への駆動信号を生成する。なお、620は、後述する制御ゲイン調整器(制御ゲイン調整手段)である。
【0023】
図2に本実施例に係る光偏向装置の偏向角(走査角)について示す。揺動体102は表面に反射ミラーを有し、光源131からの光ビーム132を走査する。光偏向装置は受光素子140を有し、受光素子140は光偏向装置の最大偏向角より小さい偏向角の位置(θBDの位置)に配置される。図2では光偏向装置の直接の走査光路に受光素子140を配置したが、上述したように、別の反射ミラー(反射部材)等によって更に偏向された走査光の光路に受光素子140を配置してもよい。
【0024】
本実施例の光偏向装置の偏向角θ(ここでは図2に示すように走査中心160の位置を基準として測っている)は、振動運動の振幅、角周波数、位相をA、ω、φ、適当な時間を原点または基準時間としたときの時間をtとしたときに、次式のように表現できる。
θ(t)=Asin(ωt+φ) 式2
【0025】
走査光133が照射される所望の位置に受光素子140を配置し、振動運動の1周期内において所望の互いに異なる2つの時間に走査光133が受光素子140上を通過するように振動運動の振幅、位相を調整する。こうして、所望する任意の光偏向装置の偏向角θを得ることができる。この際、2つの時間は、受光素子140の位置に相当する偏向角をθBD(図2参照)とした場合、次のようになる。
ある時間t1及びt2において、
θ(t1)=θ(t2)=θBD 式3
【0026】
駆動制御部600により、2つの時間t1、t2がそれぞれ所望する任意の時間t10、t20となるように制御することで、振動運動の振幅と位相を一意に決定できる。より具体的には、駆動制御部600は2つの時間をそれぞれ任意の時間にするために、コイル161に適当な電流が流れるように制御することで振動運動の振幅、位相を制御する。
【0027】
ここで、本実施例の光偏向装置において、振動運動の振幅Aのみを制御すればよく、位相φを制御する必要が無い場合には、2つの時間t1、t2の相対時間を考えるのみでよい。具体的には、例えば受光素子140を走査光133が通過する目標時間(設定時間)t10、t20の内のt10を基準の時間とする。受光素子140を走査光133が通過する検出相対時間tA=t2−t1が目標相対時間tA0=t20−t10になるように駆動制御部600により駆動信号を制御することで、振動運動の振幅Aを制御することができる。
【0028】
tAとtA0との時間差ΔtAとすると、ΔtAは以下のように表される。
ΔtA=tA−tA0=(t2−t1)−(t20−t10) 式4
【0029】
本実施例の制御方法を詳述する。光偏向装置の振幅Aを含む制御パラメータXが目標値から微小に変化した場合に受光素子140を走査光133が通過する検出相対時間tA=t2−t1の変化を表す係数Mを予め求めておく。これは次のように表される。


【0030】
したがって、反射ミラーの振幅の操作量ΔAは、検出相対時間tAと目標相対時間tA0との時間差ΔtAによって、次の式で求まる。

【0031】
上記関係式により、時間差ΔtAから操作量ΔAが算出される。そして、その値に基づき駆動制御部600の出力を変更する。以上の制御を繰り返すことでtAが目標相対時間tA0に収束し、所望の偏向角θを得ることができる。
【0032】
上記工程を図3のブロック図により説明する。図3は、本実施例に係る光偏向装置の制御を説明するブロック図である。光源131からの光ビーム132を光偏向装置の駆動部120が駆動した振動系100により偏向することで、走査光133(偏向光)は受光素子140を通過する。駆動制御部600では、受光素子140で検出された検出時間151と目標時間152とを差分し、時間差153を算出する。さらに、式7に示すように時間差153に基づいて演算器154により演算することで操作量155を算出し、制御器610と増幅器180によって光偏向装置の駆動部120のコイル161(駆動手段)に入力する信号を生成する。この場合、t10を基準時間としているので、図3に示す制御器610への操作量155は1つになる。
【0033】
以上の構成に加えて本実施例では、時間差ΔtA(153)を制御ゲイン調整器620(図1及び図3に示す)に入力し、制御ゲイン調整器620においては時間差ΔtAに基づいて、制御器610の制御ゲインを調整する信号を出力し、制御ゲインを調整している。
【0034】
ここで、振動運動の振幅、角周波数をそれぞれA、ω、振動運動の1周期内の任意の基準時間を原点(0)としたときの時間をtとする。このとき、本実施例に係る光偏向装置の偏向角θは、式2のように表現できる。但し、φ=0とおく。ここで、A=1、ω=2π×2000とすると、本実施例に係る光偏向装置の偏向角θは図4に示すようになる。図4は、本実施例に係る光偏向装置の偏向角θの時間変化を示すグラフである。
【0035】
この際、受光素子140をAの8割、つまり偏向角θが0.8となる位置に配置すると、偏向角θが0(走査中心160)の時間を0とした場合、次のようになる。すなわち、受光素子140を走査光133が通過する目標時間t10、t20は、0.074msec、0.176msecとなる。これら目標時間は予め求められて記憶されている(こうしたことは、以下の実施例でも同様である)。よって、受光素子140を走査光133が通過する2つの時間t1、t2が上記値になるように駆動制御部600により駆動信号を制御することで、図4に示す光偏向装置の偏向角θを得ることができる。
【0036】
本実施例では、光偏向装置の走査中心160から偏向角θが0.8となる位置に受光素子140を配置したが、任意の偏向角θでもよい。また、本実施例では、偏向角θが0の時間を0としたが、第1の振動運動の角周波数の1周期の任意の時間を原点(0)としてもよい。
【0037】
検出時間t1、t2を式3のように表すと、t2−t1が0.102msecになるように制御器610で制御することができれば、振動運動の振幅Aを所望のAとすることができる。本実施例では、決める値は1つなので、この方法でAを求めることができる。
【0038】
t2とt1との差をtAとする。tA=t2−t1である。tAの目標値tA0とtAとの差を時間差ΔtAとする。ΔtA=tA−tA0=(t2−t1)−(t20−t10)である。ΔtAは式7により振幅Aの操作量ΔAを算出することができる。この操作量ΔAを制御器610に入力し、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120のコイル161(駆動手段)に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。
【0039】
本実施例ではt10、t20を決まった値としたが、ある範囲を持った値としてもよい。
【0040】
ここで、N回測定した平均の値を評価関数として用いることとし、k回目の測定(k回測定)の時の時間差ΔtAをΔtA(k)とするとき、評価関数Jを例えば次のように表すことにする。

Nは測定回数であり、任意に値を定めることができる。この評価関数Jを最小にするように、制御ゲイン調整器620が制御器610の制御ゲインを決定する構成を以下に述べる。
【0041】
制御器610がPI制御器であるとき、制御器610への入力をΔAとし、Adefをある固定値とすると、出力は以下の式で表される。
KA(1+KA’/s)ΔA+Adef 式9
KA及びKA’は制御ゲインであり、KA’はPI制御器の積分時間の逆数を意味する。sはラプラス演算子である。本実施例ではKA’の調整および変更は行わず、評価関数Jを用いてKAのみを調整する構成を示す。
【0042】
図5は、評価関数Jを用いて制御ゲインKAを決定する処理を説明するフローチャートである。
【0043】
x個の制御ゲイン候補KAi(iは1からxまでの自然数)を予め定めておき、1つずつ順番にKA=KAiとなるように制御器610の制御ゲインの値を設定するための信号を、制御ゲイン調整器620から制御器610に送る。例えば、最初はi=1とし、KA=KA1となるように設定する(ステップS101、S102)(以下、「ステップ」を省略する)。
【0044】
まず、制御ゲインKAにKAi(例えば、i=1のときKA1)を設定した状態で、時間差ΔtAを演算器154に送ることで操作量155(ΔA)を算出する。そして、制御器610、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120のコイル161(駆動手段)に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。振動系100の振動運動を制御し、一定時間経過した後に(S103、振動運動が定常状態とみなせるようになったとき)、検出された時間差ΔtAをN回分測定した値を用いて評価関数Jを計算する(S104)。但し、本実施例においてはN=1とする。その際に、評価関数Jの値と、その時の制御ゲインKAの値の組を、制御ゲイン調整器620に記憶する(S105)。
【0045】
次に、全ての制御ゲイン候補を制御ゲインとして設定したかを確認する(iがxより大きいか否かを確認する)(S107)。まだ設定していない制御ゲイン候補がある場合には、S102に戻る。すなわち、制御器610の制御ゲインを、異なる制御ゲイン候補に設定し直す(例えば、iに1を加え(S106)、KA=KA2とする)信号を、制御ゲイン調整器620が制御器610に送り、制御ゲインを設定し直す(S102)。制御ゲインを設定した後に、時間差ΔtAを演算器154に送ることで操作量155を算出し、制御器610、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120のコイル161(駆動手段)に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。その際に、評価関数Jを計算し(S104)、評価関数Jの値とその時の制御ゲインKAの値の組を、制御ゲイン調整器620に記憶する(S105)。
【0046】
上記の工程をx回繰り返し、全ての制御ゲイン候補を実際に制御ゲインとして設定する。全ての制御ゲイン候補を制御ゲインとして設定した場合には(S107でYESであれば)、x個の評価関数Jの値とその時の制御ゲインの値の組が、制御ゲイン調整器620に記憶されている。制御ゲイン調整器620では、それぞれの評価関数Jの値を比較し(S108)、評価関数Jが最小であるときの制御ゲインの値を制御器610に設定するための信号を送る(S109)。この後は、一定時間経過した後に(S110)上記のように設定した制御ゲインを用いて、光偏向を行う。
【0047】
以上の説明では、制御ゲインKAの値と評価関数Jの値の組を制御ゲイン調整器620にx組分を全て記憶し、記憶した組の中から評価関数Jを最小にする制御ゲインKAを選択し、設定した。しかしながら、制御ゲイン調整器620では評価関数Jの値とそのときの制御ゲインKAの値の組を1組のみ記憶するようにして、以下のような操作を行ってもよい。すなわち、制御ゲインKAを変更し、そのときの評価関数Jの値が、制御ゲイン調整器620の記憶器(記憶手段)に記憶されている評価関数Jの値よりも小さいときにのみ、その評価関数Jと制御ゲインKAの組を記憶器に上書きして記憶するという操作である。このときも同様に、評価関数Jを最小とする制御ゲインKAを得ることができる。
【0048】
また、本実施例では制御器610をPI制御器とし、その最適な制御ゲインの値を1つ決定した。ここで、制御器610はP制御器であっても良く、その場合は、KA’を0に設定することで、本実施例と同様の構成で実現することができる。
【0049】
本実施例では制御ゲインKA’の調整は行わず、KAのみを調整する構成を示した。KAとKA’の両方を変更する場合においては、制御ゲインの組み合わせが増えるのみで、基本的な構成は変えずに本実施例の構成を適用することができる。例えば、制御ゲインKAの候補をx個、制御ゲインKA’の候補をy通り定めた場合、x×y通りの制御ゲインの組み合わせを試せばよい。
【0050】
本実施例では、時間差をΔtA=tA−tA0=(t2−t1)−(t20−t10)と定義し、評価関数Jを式8のように定義している。しかし、k回目の測定時の時間差をΔt1(k)=t1−t10、Δt2(k)=t2−t20と定義して、Nを測定回数、mを自然数、Wiを重みを表す0以上の任意の実数として、評価関数Jを以下のように定義してもよい。

【0051】
式8及び式10のNの値を大きくすることで測定誤差を少なくすることができるが、測定時間が長くなってしまう。また、Nの値を小さくすることで、制御ゲインを変更する周期が短くなり、振動系の振動運動のジッタが大きくなってしまう可能性がある。以上のことに鑑みてNの値を定める必要がある。
【0052】
本実施例において、一定時間経過するのを待つという動作(図5のS103、S110)は、制御ゲインの変更に伴って、振動運動が過渡状態となっている可能性を踏まえている。評価関数Jを算出する際に、この過渡状態における測定値を無視するために、一定時間経過するのを待つという動作を加えている。従って、過渡状態が極めて短い場合や、無視できるほどであれば、一定時間待つという動作を省いてもよい。このことは他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2による光偏向装置を説明する。光偏向装置の構成は実施例1と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。
【0054】
駆動制御部600が振動系100を制御する周期を第1の周期、制御ゲイン調整器620で制御ゲインを変更する周期を第2の周期とする。このとき、本実施例において、第2の周期を第1の周期と比べて長く設定する。
【0055】
第2の周期は時間差ΔtAの値を用いて、制御ゲイン調整器620によって制御ゲインを変更する周期である。制御ゲイン調整器620によって制御器610の制御ゲインを変更すると、その変更された制御ゲインを用いて制御器610、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120のコイル161に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。制御ゲインを変更し、一定時間経過した後に揺動体102の振動運動が定常状態に達した時の時間差ΔtAを測定し、評価関数Jを計算する。
【0056】
制御ゲインを変更した直後の揺動体102の振動運動は、変更する前の制御ゲインの影響により、または制御ゲインを変更したことにより、振動運動が定常状態ではない可能性がある。従って、制御ゲイン変更直後のΔtAを用いて計算された評価関数Jは、定常状態のジッタの状態を評価できるとは限らない。
【0057】
そこで、第2の制御周期を第1の制御周期と比べて長く設定することで、変更後の制御ゲインに対応した評価関数Jの値を得ることができる。
【実施例3】
【0058】
本実施例においては、2つの揺動体とその揺動体を直列に連結する同軸上に配置された複数のねじりバネとで振動系を構成している。少なくとも1つの揺動体に反射ミラーが形成されている。そして、変位角計測部は、反射ミラー付き揺動体が第1の変位角を取るときの走査光で照射される位置に配された第1の受光素子(変位角計測手段)を有する。さらに、反射ミラー付き揺動体が第2の変位角を取るときの走査光で照射される位置に配された第2の受光素子を有する。第1及び第2の受光素子は、異なる素子でもよいし、同じ素子でもよい。また、走査光は、直接受光素子に入射するようにしてもよいし、少なくとも1つの反射部材を経て受光素子に入射するようにしてもよい。すなわち、少なくとも1つの受光素子が、反射ミラー付き揺動体が第1及び第2の変位角を取って第1及び第2の偏向角(走査角)になった走査光を受光して検出できるように配置されていればよい。
【0059】
次に、本実施例の光偏向装置を説明する。本実施例の光偏向装置の振動系は、2つの揺動体とそれらの揺動体を直列に連結する複数のねじりバネを含む。また、分離した基本共振周波数(第1の周波数)で運動する第1の振動運動(第1の周期的駆動力)とその整数倍の共振周波数(第2の周波数)で運動する第2の振動運動(第2の周期的駆動力)とを発生可能(印加可能)である。そして、光偏向装置は、振動系を動作させる駆動手段と、揺動体の少なくとも1つに形成された反射ミラーと、光ビームを照射する光源とを更に有して、反射ミラーに光ビームを照射して光を走査する。
【0060】
本実施例による光偏向装置のブロック図を図6に示す。振動系100は、揺動体101、102を含み、揺動体101と102を直列に連結するねじりバネ111及び揺動体102と支持部121を連結するねじりバネ112が設けられている。
【0061】
駆動制御部(駆動制御手段)600は、揺動体102に、電磁・静電・圧電などにより振動系100の複数の固有振動モードを同時に励振する駆動力を加える。本実施例では駆動制御部600はコイル161に適当な電流を流すように制御する信号を送るものとする。コイル161に流れる電流により、揺動体102に取り付けられた永久磁石162にトルクが作用し、振動系100を駆動する。揺動体101は表面に反射ミラーを有し、光源131からの光ビーム132を走査する。走査光133は、各周期の往復走査において、第1及び第2の受光素子141、142をそれぞれ2回通過する。駆動制御部(駆動制御手段)600は、走査光133が第1及び第2の受光素子141、142をそれぞれ2回通過する時間に基づいて、コイル161へ適当な電流を流す信号を生成する。
【0062】
図7に本実施例の光偏向装置の偏向角(走査角)について示す。揺動体101は表面に反射ミラーを有し、光源131からの光ビーム132を走査する。光偏向装置は2つの受光素子を有し、第1及び第2の受光素子141、142はそれぞれ光偏向装置の最大偏向角より小さい偏向角の位置(θBD1とθBD2の位置)に配置される。図7では光偏向装置の直接の走査光路に第1及び第2の受光素子141、142を配置したが、上述したように、別の反射ミラー(反射部材)等によって更に偏向された走査光の光路に第1及び第2の受光素子141、142を配置してもよい。
【0063】
本実施例の光偏向装置の偏向角θ(ここでは図7に示す如く走査中心160の位置を基準として測っている)は、次式のように表現できる。なお、第1の振動運動の振幅、角周波数、位相をそれぞれA1、ω1、φ1、第2の振動運動の振幅、角周波数、位相をそれぞれA2、ω2、φ2、適当な時間を原点または基準時間としたときの時間をtとしている。
θ(t)=A1sin(ω1t+φ1)+A2sin(ω2t+φ2) 式11
【0064】
また、光偏向装置の偏向角θは、第1の振動運動の振幅、角周波数をそれぞれA1、ω1、第2の振動運動の振幅、角周波数をそれぞれA2、ω2、2つの周波数の相対位相をφ、適当な時間を基準時間としたときの時間をtとしたときに、次式のように表現できる。
θ(t)=A1sin(ω1t)+A2sin(ω2t+φ) 式12
若しくは
θ(t)=A1sin(ω1t+φ)+A2sin(ω2t) 式13
【0065】
式13は、制御時に基本波ω1側の位相を制御する可能性がある場合に、対応するものである。式11と式12並びに式13は、基準または原点の時間の取り方で表現の形が異なっているのみで、4つの未知の値を含む式である点(例えば、式12並びに式13中のφはφ1−φ2若しくはφ2−φ1と表せる)において本質的に同じものである。
【0066】
ここで、走査光が照射される所望の位置に第1及び第2の受光素子141、142を配置する。そして、第1の振動運動の1周期内において所望の互いに異なる4つの時間に走査光が第1及び第2の受光素子141、142上を通過するように第1及び第2の振動運動の振幅、位相を調整する。こうして、4つの未知の値を決定する。このことで、所望する任意の光偏向装置の偏向角θを得ることができる。この際、この4つの時間は、第1及び第2の受光素子141、142の位置に相当する偏向角をそれぞれθBD1、θBD2(図7参照)とした場合、次のようになる。
ある時間t1及びt2において、
θ(t1)=θ(t2)=θBD1 式14
ある時間t3及びt4において、
θ(t3)=θ(t4)=θBD2 式15
【0067】
駆動制御部600により4つの時間t1、t2、t3、t4がそれぞれ所望する任意の時間t10、t20、t30、t40となるように制御することで、第1及び第2の振動運動の振幅と位相を一意に決定できる。より具体的には、駆動制御部600は4つの時間をそれぞれ任意の時間にするために、コイル161に適当な電流が流れるように制御することで、第1及び第2の振動運動のそれぞれの振幅、位相または相対位相を制御する。
【0068】
光偏向装置の偏向角θが式11の何れか一項のみで表現される場合には、所望する少なくとも2つの時間に走査光が第1または第2の受光素子140、141上を通過するように第1または第2の振動運動の振幅、位相を調整すればよい。
【0069】
ここで、光偏向装置において、この第1及び第2の振動運動の振幅と、第1の振動運動と第2の振動運動との相対位相を制御すればよい場合には、4つの時間t1、t2、t3、t4の相対時間を考えればよい。具体的には、例えば第1及び第2の受光素子141、142を走査光133が通過する目標時間t10、t20、t30、t40の内のt10を基準の時間とする。第1及び第2の受光素子141、142を走査光133が通過する3つの検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1が目標相対時間t20−t10、t30−t10、t40−t10になるように駆動制御部600により駆動信号を制御する。これにより、第1及び第2の振動運動の振幅と、第1の振動運動と第2の振動運動との相対位相を制御することができる。
【0070】
この検出相対時間と目標相対時間との時間差をΔt2、Δt3、Δt4、とすると、時間差Δt2、Δt3、Δt4は以下のように表される。
Δti=(ti−t1)−(ti0−t10),(i=2,3,4) 式16
【0071】
本実施例の制御方法を詳述する。光偏向装置のA1、A2、φの何れかを含む制御パラメータXが目標値から微小に変化した場合に、走査光133が第1及び第2の受光素子141、142を通過する時間の相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1の変化を表す係数及び行列Mを予め求めておく。これらは次のように表される。


【0072】
したがって、反射ミラーの振幅と位相の操作量ΔA1、ΔA2、Δφは、検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1と目標相対時間t20−t10、t30−t10、t40−t10との時間差Δt2、Δt3、Δt4によって、次の式で求まる。

【0073】
上記関係式により、時間差Δt2、Δt3、Δt4から操作量ΔA1、ΔA2、Δφが算出される。そして、その値に基づき駆動制御部600の出力を変更する。以上の制御を繰り返すことで、この検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1が目標相対時間t20−t10、t30−t10、t40−t10に収束し、所望の偏向角θを得ることができる。
【0074】
上記工程を図8のブロック図により説明する。光源131からの光ビーム132を光偏向装置の駆動部120が駆動した振動系100により偏向することで、偏向光(走査光)133は第1及び第2の受光素子141、142を通過する。駆動制御部600では、第1及び第2の受光素子141、142で検出された検出時間151と目標時間152とを差分し、時間差153(Δt2、Δt3、Δt4)を算出する。図8の151、152、153の太い矢印は、数個(ここでは3個)の時間情報を伝達していることを示す。さらに、式19に示すように時間差153に基づいて演算器154により行列演算することで操作量155を算出し、制御器611、612と加算器170と増幅器180によって光偏向装置の駆動部120の駆動手段(コイル161)に入力する信号を生成する。この場合、t10を基準時間としているので、図8に示す制御器611への操作量155が2つではなく、1つになるか、若しくは制御器612への操作量155が2つではなく、1つになる。つまり、2つの周波数のそれぞれの位相差φは、制御器611と制御器612のどちらによってでも調整され得る。
【0075】
以上の構成に加えて本実施例では、時間差Δt2、Δt3、Δt4を制御ゲイン調整器620に入力する。そして、制御ゲイン調整器620においては時間差Δt2、Δt3、Δt4に基づいて、制御器611、612の制御ゲインを調整する信号を出力し、制御ゲインを調整している。
【0076】
本実施例の光偏向装置は、変位角検出手段として2つの受光素子141、142を有している。2つの受光素子141、142は、光偏向装置の揺動体101の反射ミラーで反射された走査光133が、異なる2つの偏向角(走査角)に位置することを検出するために設けられている。しかしながら、必ずしも2つの受光素子141、142を用いなくてもよい。すなわち、例えば図7における第2の受光素子142の位置に反射板を設置し、反射板により走査光133が偏向され、その偏向光が直接、または少なくとも1つの反射部材を経て第1の受光素子141を通過する構成としてもよい。この場合も、1つの受光素子を用いて、振動運動の1周期に、互いに異なる4つのタイミング(時間)を検出することができる。この4つのタイミング(時間)をそれぞれt1、t2、t3、t4とすることで、受光素子を1つのみ有する光偏向装置に対しても本実施例を適用することができる。
【0077】
本実施例に係る光偏向装置を説明する。揺動体101、102及びねじりバネ111、112を含む振動系100は2つの振動モードを有するが、それらの周波数の一方が他方の略2倍になるように調整が施されている。例として、揺動体101、102の慣性モーメントをI1、I2とし、ねじりバネ111、112のバネ定数をk1/2、k2/2とする。2つの固有角振動数は、ω1=2π×2000[Hz](第1の周波数)、ω2=2π×4000[Hz](第2の周波数)とする。
【0078】
本実施例に係る光偏向装置の偏向角θは、式11のように表現される。ここで、A1=1、A2=0.2、φ1=0、φ2=0、ω1=2π×2000、ω2=2π×4000とすると、本実施例に係る光偏向装置の偏向角θの時間変化は図9に示すようになる。図9の実線で示す偏向角θは、正弦波(破線で示す)に比べ鋸波に近くなり、ある領域において略等角速度で運動することができる。本実施例ではA1=1、A2=0.2、φ1=0、φ2=0、ω1=2π×2000、ω2=2π×4000とするが、偏向角の角速度の変化量が正弦波に比べ略等角速度領域において少なくなる如何なるA1、A2、φ1、φ2、ω1、ω2としてもよい。
【0079】
この際、第1及び第2の受光素子141、142をA1の8割、つまり偏向角θが0.8となる光偏向装置の走査中心160から対称の位置にそれぞれ配置すると、次のようになる。すなわち、第1及び第2の受光素子141、142を走査光133が通過する所望の目標時間t10、t20、t30、t40(図9参照)は0.052msec、0.154msec、0.346msec、0.448msecとなる。よって、第1及び第2の受光素子141、142を走査光133が通過する検出時間t1、t2、t3、t4が上記所望値になるように、制御器611,612により駆動信号を制御することで、図9の実線で示す光偏向装置の偏向角θを得ることができる。本実施例では、偏向角θが0.8となる光偏向装置の走査中心160から対称の位置に第1及び第2の受光素子141、142を配置したが、任意の偏向角θの所でもよい。
【0080】
本実施例における、より具体的な偏向角θの制御の方法を以下に説明する。
【0081】
時間t1、t2、t3、t4について、t1を基準とした相対時間を考える。反射ミラーの振幅と位相の操作量ΔA1、ΔA2、Δφは、3つの検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1と3つの目標相対時間t20−t10、t30−t10、t40−t10との時間差Δt2、Δt3、Δt4によって、式19で求まる。式19と時間差Δt2、Δt3、Δt4の値により振幅A1、A2、相対位相φの操作量ΔA1、ΔA2、Δφを算出することができる。操作量ΔA1、ΔA2、Δφを制御器611,612に入力し、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120(駆動手段)のコイル161に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。
【0082】
更にこの時間差Δt2、Δt3、Δt4を、制御ゲイン調整器620に送る。制御ゲイン調整器620では、このΔt2、Δt3、Δt4に基づいて、Δt2、Δt3、Δt4を変数に持つ評価関数が最適な値となるように、制御ゲインを変更する信号を制御器611,612に送る。
【0083】
本実施例ではt1、t2、t3、t4、t10、t20、t30、t40を決まった値としたが、一定の範囲を持った値としてもよい。t20−t10、t30−t10、t40−t10も決まった値としたが、ある範囲を持った値としてもよい。また、本実施例ではt1、t2、t3、t4、t10、t20、t30、t40を時刻として取り扱ったが、あるクロックを基準とするカウンタ値でもよい。また、これらのことは、他の実施例でも同様である。
【0084】
Nを測定回数、nを該時間差の個数、mを自然数、Wiを重みを表す0以上の任意の実数としたとき、この時間差Δt2、Δt3、Δt4を変数とする評価関数Jを、次のように表すことにする。

ここで、本実施例ではN=1、m=2、Wi=1とする。また、n=3であり、評価関数Jは以下のように表される。

この評価関数Jを最小にするような、制御器611,612の制御ゲインを決定する。
【0085】
制御器611,612がA1、A2、φのそれぞれに対してPI制御器を構成しているとき、制御器611,612への入力をΔA1、ΔA2、Δφとし、A1def、A2def、Aφdefを固定値とすると、それぞれの出力は以下の式で表される。
K1(1+K1’/s)ΔA1+A1def 式22
K2(1+K2’/s)ΔA2+A2def 式23
K3(1+K3’/s)Δφ+φdef 式24
K1、K2、K3、K1’、K2’、K3’はそれぞれ制御ゲインであり、K1’、K2’、K3’はPI制御器の積分時間の逆数を意味する。sはラプラス演算子である。本実施例ではK1’、K2’、K3’の調整は行わず、評価関数Jを用いてK1、K2、K3のみを調整する構成を示す。
【0086】
予め定めたx個の制御ゲイン候補K1p(pは1からxまでの自然数)、y個の制御ゲイン候補K2q(qは1からyまでの自然数)、z個の制御ゲイン候補K1r(rは1からzまでの自然数)を制御器611,612の制御ゲインとして設定する操作を行う。この組み合わせはx×y×z通りとなる。
【0087】
ここで、図10のフローチャートを用いて説明する。制御ゲインを制御ゲイン候補の1組に設定する。例えば、ステップS201(以下、単にS201のように記す)でp=q=r=1とし、K1=K11、K2=K21、K3=K31とする(S202、S203、S204)。このようにした状態で、時間差Δt2、Δt3、Δt4(153)を演算器154に送ることで操作量155を算出する。そして、制御器611,612、加算器170、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120(駆動手段)のコイル161に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。
【0088】
制御ゲインを変更した後に振動系100の振動運動を制御し、一定時間経過した後に(S205)、時間差Δt2、Δt3、Δt4をN回分測定した値を用いて評価関数Jを計算する(S206)。本実施例ではN=1としているため、1回測定した値を用いる。その際に、評価関数Jを計算した値と、その時の制御ゲインK1、K2、K3の値の組を、制御ゲイン調整器620に記憶する(S207)。
【0089】
次に制御器611,612の制御ゲインを、異なる制御ゲイン候補に設定し直す信号を、制御ゲイン調整器620が制御器611,612に送り、制御ゲインを設定し直す。rに1を加え(S208)、rがz未満である間はS204の処理に戻り、例えばK3=K32とすることで、次の制御ゲインの1組を、K1=K11、K2=K21、K3=K32とする。
【0090】
制御ゲインを設定した後に、時間差Δt2、Δt3、Δt4(153)を演算器154に送ることで操作量155を算出する。そして、制御器611,612、加算器170、増幅器180によって光偏向装置の駆動部120(駆動手段)に入力する信号を生成し、振動系100を駆動する。一定時間経過した後に(S205)、評価関数Jを計算し(S206)、評価関数Jの値とその時の制御ゲインK1、K2、K3の値の組を、制御ゲイン調整器620に記憶する(S207)。
【0091】
上記の工程をx×y×z回繰り返し、全ての制御ゲイン候補を実際に制御ゲインとして設定する。S208からS215の工程により、制御ゲインの候補の組み合わせを全通り設定することが可能である。S208からS215の工程と同じでなくとも、x×y×z通りの制御ゲインの組み合わせが行えればよい。S215までの処理を行うことで、x×y×z個の評価関数Jの値とその時の制御ゲインの値の組が、制御ゲイン調整器620に記憶される。制御ゲイン調整器620では、それぞれの評価関数Jの値を比較し(S216)、評価関数Jが最小であるときの制御ゲインの値を制御器611,612に設定するための信号を送る(S217)。一定時間経過した後(S218)、上記のように設定した制御ゲインK1、K2、K3を用いて、光偏向を行う。
【0092】
本実施例において、制御ゲインK1、K2、K3と評価関数Jの組を制御ゲイン調整器620に全て記憶し、評価関数Jを最小にする制御ゲインの組み合わせを選択し、設定する操作を行った。しかしながら、制御ゲイン調整器620では評価関数Jとそのときの制御ゲインの組を1組のみ記憶するようにして、以下のような操作を行ってもよい。すなわち、制御ゲインK1、K2、K3を変更し、そのときの評価関数Jの値が、記憶されている評価関数Jの値よりも小さいときにのみ、その評価関数Jと制御ゲインの組を前の値に上書きして記憶するという操作を行う。このときも同様に、評価関数Jを最小とする制御ゲインK1、K2、K3を得ることができる。
【0093】
また、本実施例では制御器611,612をPI制御器とし、その最適な制御ゲインの組を1つ決定した。ここで、制御器611,612はP制御器であっても良く、その場合は、K1’、K2’、K3’を0に設定することで、本実施例と同様の構成で実現することができる。
【0094】
本実施例では制御ゲインK1’、K2’、K3’の調整は行わず、K1、K2、K3のみを調整する構成を示した。K1、K2、K3に加えてK1’、K2’、K3’の全ての制御ゲインを変更する場合においても、制御ゲインの組み合わせが増えるのみで、基本的な構成は変えずに本実施例の構成を適用することができる。例えば、制御ゲインK1’、K2’、K3’の候補の個数をそれぞれx’個、y’個、z’個とすれば、x×y×z×x’×y’×z’通りの組み合わせを考えればよい。
【0095】
本実施例では、時間差をΔti=(ti−t1)−(ti0−t10),(i=2,3,4)と定義し、評価関数Jを式20のように定義している。しかし、時間差をΔti=ti−ti0,(i=1,2,3,4)と定義して、式20の評価関数Jを用いてもよい。この場合、n=4となる。
【0096】
また、時間差Δti(i=2,3,4)を、図11に示すようにΔt2=t2−t1、Δt3=t3−t2、Δt4=t4−t3、というように設定しても、同様に評価関数Jを用いて制御ゲインを調整することができる。式20の評価関数Jにおいて、Wiを用いて重み付けを行っているため、Δtiの定義が本実施例と異なる場合にも、本発明を適用することができる。Δtiの定義を変更する場合は、式18及び式19に示した行列演算も変更する必要がある。
【0097】
Δti=ti−ti0(i=1,2,3,4)と定義した場合に、ΔtiからΔA1、ΔA2、Δφ1、Δφ2を求める関係式が特願2006−035491に開示されている。この関係式に基づいて、時間差をΔti=ti−ti0(i=1,2,3,4)と定義した場合に評価関数Jを最適な値とする制御ゲインを求めてもよい。この場合も、Δtiの定義の変更に伴って、式18及び式19に示した行列演算を変更する必要がある。
【0098】
本実施例では、この評価関数Jを最適な値にする制御ゲインを設定している。但し、評価関数Jが最適であったとしても、少なくとも1つ以上のある時間差(例えばΔt2)の値が設定した範囲から外れてしまった場合に、所望とする光走査が実現されなくなる可能性がある。この場合の評価関数Jが最適(最小)であったとしても、所望の光走査が実現できなくなるため、制御ゲインの値としては不適当である。
【0099】
そこで、この時間差Δtiについて、それぞれもしくはある時間差が設定された範囲から外れた場合には、その時の評価関数Jが如何なる値であっても、そのときの制御ゲインの値は制御器611,612に再設定しないという操作を行ってもよい。
【0100】
この場合、その時間差と設定した時間とを比較する手段とを有する構成とする。そして、設定された範囲からその時間差が外れた場合には、その時の評価関数Jの値と制御ゲインの値の組を記憶しない、若しくは記憶してもその制御ゲインを用いないようにするという内容を記憶する手段等が必要である。このことは、他の実施例でも同様である。
【0101】
本実施例では、3つの制御ゲインを変更している。変更すべき制御ゲインの数を限定せずにこの評価関数Jを最適化する方法として、実施例1から3で行った方法以外に、次のような方法が挙げられる。例えば、実験計画法、品質工学の手法、応答曲面法、感度解析、ニュートン法、準ニュートン法、最急降下法、共役勾配法、ニューラルネットの手法、焼きなまし法、タブー探索法、遺伝的アルゴリズムの手法などがある。本発明における光偏向装置はその手法を限定されない。多数の制御ゲインを変更する場合に、解の収束性や計算時間を考慮して、最適化する手法を選択すればよい。このことは、他の実施例においても同様である。
【0102】
評価関数Jを最適化する上記の手法等を用いることで、制御ゲインを変更する回数を少なくすることができる。その結果、ゲイン調整に要する時間を短縮することができ、最適なゲインを早く得ることができる。
【実施例4】
【0103】
本発明の実施例4による画像形成装置を説明する。本実施例の光偏向装置のブロック図は図1または図6に示されるものと同じである。また、その構成は図3または図8に示されるものと同じである。
【0104】
本実施例の全体の外観構成を図12の斜視図に示す。光源131から出射した光は、コリメータレンズ520で整形された後、光偏向装置の駆動部120が駆動した振動系100によって1次元に偏向される。走査光は結合レンズ530を経て感光ドラム540上に結像する。感光ドラム540の有効領域を画成する範囲以外にある振動系100の偏向角の所に、2つの受光素子141,142が配置される。そして、上記実施例1、2、3などで説明した制御方法によって、光偏向装置の振動系100の偏向角θの角速度を所定の領域(略等角速度領域)で略等角速度になるように制御する。その結果、結合レンズ530に所謂fθ機能を持たせることで感光ドラム540の有効領域上で略等速度に光走査できるようになる。本実施例により、正弦波で駆動した場合に比べ角速度の変化が少ないため、良好な印字が可能となる。
【0105】
図12では、2つの受光素子141,142を配置しているが、上述のとおり、2つの受光素子を用いなくてもよい。すなわち、少なくとも1つの受光素子を有していれば、検出したい偏向角の位置に反射板を設置し、反射板により走査光が偏向され、その偏向光が直接、または少なくとも1つの反射部材を経てその受光素子を通過する構成としてもよい。
【0106】
本実施例において、制御ゲインを調整する構成は、実施例1から3に示した何れを用いてもよい。本実施例の画像形成装置において、制御ゲインを調整し最適な制御ゲインを求める操作を行うタイミングを、画像形成時以外とする。
【0107】
制御ゲインを調整することは、上述のとおり振動系100のジッタを大きくさせてしまう可能性がある。その結果、画像形成時に制御ゲイン調整を行うことで、画像形成の精度が低下してしまう可能性がある。そこで、本実施例では、画像形成時以外、具体的には、画像形成装置の感光ドラム540の前多回転時やクリーニング時等で画像形成を行っていない状態において、評価関数Jを最適化する制御ゲインの調整を行う。
【0108】
調整する制御ゲインの数が増加するに従い、また制御ゲイン候補の数が増加するに従って、制御ゲイン調整の時間が長くなる。制御ゲインの組み合わせが多くなれば、制御ゲイン調整の時間も長くなるため、ファーストプリントアウト時間が長くなってしまう可能性もある。そこで、画像形成装置の前多回転時間内でゲイン調整が終わるように、制御ゲインの個数、制御ゲイン候補の組み合わせの個数、測定回数N、評価関数Jの最適化手法等を定める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施例1に係る光偏向装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1に係る光偏向装置の偏向角の平面図である。
【図3】実施例1に係る光偏向装置の制御を説明するブロック図である。
【図4】実施例1に係る光偏向装置の偏向角の時間変化を示すグラフである。
【図5】実施例1に係る評価関数を用いて制御ゲインを決定する処理を説明するフローチャートである。
【図6】実施例3に係る光偏向装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施例3に係る光偏向装置の偏向角の平面図である。
【図8】実施例3に係る光偏向装置の制御を説明するブロック図である。
【図9】実施例3に係る光偏向装置の偏向角の時間変化を示すグラフである。
【図10】実施例3に係る評価関数を用いて制御ゲインを決定する処理を説明するフローチャートである。
【図11】実施例3に係る光偏向装置の偏向角の時間変化を示すグラフである。
【図12】実施例4に係る光偏向装置の感光ドラムへの走査を説明する上面斜視図である。
【図13】従来例に係る光偏向装置の構成を示すブロック図である。
【図14】従来例に係る光偏向装置の制御を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
100 振動系
101、102 揺動体
111、112 ねじりバネ
120 駆動部(駆動手段)
121 支持部
131 光源
132 光ビーム
133 走査光
140 受光素子(変位角計測手段)
141 第1の受光素子(変位角計測手段)
142 第2の受光素子(変位角計測手段)
160 走査中心
161 コイル(駆動手段)
162 永久磁石(駆動手段)
170 加算器
180 増幅器
420 駆動部(駆動手段)
431 光源
432 走査光
441 第1の受光素子(変位角計測手段)
442 第2の受光素子(変位角計測手段)
450 駆動制御部(駆動制御手段)
454 演算器
520 コリメータレンズ
530 結合レンズ
540 感光ドラム
600 駆動制御部(駆動制御手段)
610 制御器
611,612 制御器
620 制御ゲイン調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の揺動体と前記揺動体に連結された1つ以上のねじりバネとを有する振動系と、前記揺動体の少なくとも1つに形成された反射ミラーと、光ビームを発生する光源と、所定の周波数で振動運動を行わせるために前記振動系に駆動力を印加する駆動手段と、前記揺動体の少なくとも1つが、少なくとも1つ以上の変位角をなすときの時間を計測するための変位角検出手段と、前記変位角検出手段により計測された時間に基づき前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記反射ミラーに前記光ビームを照射して光を走査する光走査装置であって、
前記駆動制御手段の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整手段を備え、
前記駆動制御手段は、前記周波数の1周期内における所定の時間を基準または原点の時間とした場合に、前記揺動体が少なくとも1つ以上の所定の変位角をなすときの少なくとも1つの時間と予め設定した設定時間との時間差を算出し、前記時間差に基づき前記振動運動の振動波形の振幅と位相のうち少なくとも1つを制御し、
前記制御ゲイン調整手段は、前記時間差に基づき前記制御ゲインを調整し、前記駆動制御手段に設定することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
1つ以上の揺動体と前記揺動体に連結された1つ以上のねじりバネとを有する振動系と、前記揺動体の少なくとも1つに形成された反射ミラーと、光ビームを発生する光源と、所定の周波数で振動運動を行わせるために前記振動系に駆動力を印加する駆動手段と、前記揺動体の少なくとも1つが、異なる第1及び第2の変位角をなすときの時間を計測するための変位角検出手段と、前記変位角検出手段により計測された時間に基づき前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記反射ミラーに前記光ビームを照射して光を走査する光走査装置であって、
前記駆動制御手段の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整手段を備え、
前記駆動制御手段は、前記周波数の1周期内における所定の時間を基準または原点の時間とした場合に、前記揺動体の1つが前記第1の変位角をなすときの互いに異なる時間と、前記揺動体の1つが前記第2の変位角をなすときの互いに異なる時間と、から成る複数の時間の内の少なくとも2つの時間と設定時間との時間差を算出し、前記時間差に基づき前記振動運動の振動波形の振幅と位相のうち少なくとも1つを制御し、
前記制御ゲイン調整手段は、前記時間差に基づき前記制御ゲインを調整し、前記駆動制御手段に設定することを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
前記振動系が、基本周波数である第1の周波数で運動する第1の振動運動と、基本周波数の整数倍の周波数である第2の周波数で運動する第2の振動運動とを同時に発生可能であり、前記駆動手段は、前記第1の周波数を有する第1の周期的駆動力と前記第2の周波数を有する第2の周期的駆動力を前記振動系に印加可能であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御ゲイン調整手段により前記制御ゲインを調整する周期が、前記駆動制御手段により前記揺動体を制御する周期と比べて長いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記制御ゲイン調整手段が、前記時間差を変数とする評価関数を計算する手段と、前記計算された評価関数に基づき前記駆動制御手段に前記制御ゲインを設定する手段と、を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記制御ゲインを設定し、前記時間差をk回測定したときの前記時間差の値をΔti(k)として、Nを測定回数、nを前記時間差の個数、mを自然数、Wiを重みを表す0以上の任意の実数としたとき、前記評価関数が、次式にて表されることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。

【請求項7】
前記制御ゲイン調整手段は、記憶手段を有し、
前記記憶手段は、複数の制御ゲインの値と、前記式1により求めた前記複数の制御ゲインに対応する複数の評価関数の値とを記憶し、
前記制御ゲイン調整手段は、前記記憶手段により記憶した前記複数の評価関数の中から最小となる値をもつ評価関数を選択し、前記最小となる値をもつ評価関数に対応する制御ゲインを前記駆動制御手段に設定することを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記制御ゲイン調整手段は、前記時間差の値が設定した範囲から外れた場合には、前記評価関数の値に関わらず、このときの制御ゲインの値を、前記駆動制御手段の制御ゲインとして設定しないことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光走査装置を備える画像形成装置であって、
前記制御ゲイン調整手段は、画像形成時以外に前記制御ゲインを前記駆動制御手段に設定することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−20404(P2009−20404A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184215(P2007−184215)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】