光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュール
【課題】光を受光する面積を増大させることのできる光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュールを提供することにある。
【解決手段】太陽電池素子2は、棒状の支持棒3を備え、支持棒3の外周面に、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13が順に積層されている。そして、太陽電池素子2の下面側の透明電極13の外周面に、断面略半円状の光反射性を有する反射層15が形成されている。太陽電池モジュール1は、その太陽電池素子2を列設して形成されている。
【解決手段】太陽電池素子2は、棒状の支持棒3を備え、支持棒3の外周面に、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13が順に積層されている。そして、太陽電池素子2の下面側の透明電極13の外周面に、断面略半円状の光反射性を有する反射層15が形成されている。太陽電池モジュール1は、その太陽電池素子2を列設して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、多種の太陽電池が開発されており、その中でもシリコンを用いた太陽電池が注目を集めている。特に、多結晶シリコンを用いた太陽電池やアモルファスシリコンを用いた太陽電池が、産業用や家庭用として実用化されている。
【0003】
一般的な太陽電池は、平板状の基板の表面に金属電極を形成し、その金属電極の表面に、P型、N型及びI型等の半導体層からなる光電変換層を形成し、さらにその光電変換層の表面に透明電極を形成した平面状の受光構造になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−289173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、太陽光を受光する面積(有効面積)が広くなるに連れて、その太陽電池による発電電力が増大する。しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池のように受光面が平面状の場合には、有効面積を、太陽電池の設置面積と同等の面積しか確保することができないため、太陽電池の発電電力を増大させることが困難であった。
【0005】
本発明は、前述した上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、光を受光する面積を増大させることのできる光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる光電変換素子は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって光電変換層に向かって光を反射させることができる。従って、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0008】
また、本発明にかかる光電変換素子は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極と、前記第2電極の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とするようにしてもよい。
【0009】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって光電変換層に向かって光を反射させることができる。従って、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0010】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、円筒状であってもよい。
これによれば、光電変換素子の有効面積を、平板状の光電変換素子に比べて例えばπ/2倍などに増大させることができる。また、平板状の光電変換素子では、例えば太陽光の入射方向に対して指向性が強く、太陽の移動による太陽光の入射角度の変化に伴って光電変換効率が変化していたが、受光面を円筒状にすることによって、太陽の位置が変化しても、太陽光の入射角度を略一定にすることができる。そのため、光電変換素子の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0011】
この光電変換素子において、前記反射層は、断面半円状に形成されるようにしてもよい。
これによれば、断面半円状の反射層によって光電変換素子の外周を覆うことができるため、より効率的に、光電変換層に光を反射させて入射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0012】
この光電変換素子において、前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であってもよい。
これによれば、第1電極と反射層との間で内部反射が繰り返されるため、その第1電極と反射層に挟まれた光電変換層はより効率的に光を受光することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0013】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0014】
これによれば、光を受光する面積を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に向かって光を反射させることができるため、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0015】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0016】
これによれば、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とによって形成される内部電界領域の幅を拡張することができる。これによって、光の受光により光電変換層内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0017】
本発明にかかる光電変換装置は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極とを備えた光電変換素子と、前記光電変換素子の少なくとも一部の面に対向して設置されて、光反射性を有する反射台とを備えたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に光を受光することができる。さらに、反射台によって入射される光を、光電変換層に向かって反射させることができるため、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0019】
この光電変換装置において、前記光電変換素子の前記一部の面は第1の曲率を有し、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には側面が弧状の凹部が含まれ、前記凹部が前記第1の曲率と異なる第2の曲率を有するようにしてもよい。
【0020】
これによれば、光電変換素子の一部の面と対向する一側面に形成された弧状の凹部によって、光電変換層に効率的に光を反射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0021】
この光電変換装置において、前記光電変換素子の前記一部の面が第1の曲率を有し、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、前記光電変換素子の前記第1の曲率と同一の曲率を有する、断面が弧状の凹部が含まれるようにしてもよい。
【0022】
これによれば、光電変換素子の一部の面と対向する一側面に形成された弧状の凹部によって、光電変換層に効率的に光を反射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0023】
この光電変換装置において、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、断面放物線状の凹部が形成されて、前記光電変換素子の光電変換層の一部を前記放物線の焦点に配置してもよい。
【0024】
これによれば、凹部を形成する放物線の焦点に、光電変換素子の光電変換層の一部を配置した。反射台は、その一側面の放線方向と平行に凹部に入射する光を、放物線の焦点に集光するように反射させることができるため、光電変換層の一部に光を効率的に入射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0025】
この光電変換装置において、前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であってもよい。
これによれば、光電変換層の内側面に形成された第1電極を光反射性を有する金属電極とした。これによって、第1電極と支持台との間で内部反射が繰り返されるため、その第1電極と支持台との間に挟まれた光電変換層がより効率的に光を受光することができる。
【0026】
この光電変換装置において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0027】
この光電変換装置によれば、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の光を受光する面積を増大させることができ、効率的に光を受光することができる。さらに、反射台によって、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に向かって光を反射させることができるため、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0028】
この光電変換装置において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0029】
この光電変換装置によれば、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とによって形成される内部電界領域の幅を拡張することができる。これによって、光の受光により光電変換層内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0030】
本発明の光電変換モジュールは、上記の光電変換素子を列設した。
本発明の光電変換モジュールによれば、各光電変換素子の光を受光する面積を増大させることができるため、発電電力を増大させることができる。
【0031】
本発明の光電変換モジュールは、上記の光電変換装置を列設した。
本発明の光電変換モジュールによれば、各光電変換装置の光を受光する面積を増大させることができるため、発電電力を増大させることができる。
【0032】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極とを備えた光電変換素子の前記光電変換層の外側面の一部をマスクし、前記光電変換層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成することができる。
【0033】
これによれば、反射層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の反射層を光電変換層の外側面の特定の領域に容易に形成することができる。
【0034】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された第2電極とを備えた光電変換素子の同第2電極の外側面の一部をマスクし、前記第2電極の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成することができる。
【0035】
これによれば、反射層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の反射層を第2電極の外側面の特定の領域に容易に形成することができる。
【0036】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極とを備えた光電変換素子が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記光電変換素子を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記光電変換層の外側面の一部に前記反射層を形成するようにしてもよい。
【0037】
これによれば、反射層の形成された基台の凹部に、第1電極と光電変換層の形成された光電変換素子を嵌合するだけで、光電変換層の外側面に反射層を形成することができるため、簡単な設備で簡便に光電変換素子を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって反射層の形状を変更することができ、容易に反射層を所望の形状に形成することができる。
【0038】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された第2電極とを備えた光電変換素子が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記光電変換素子を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記第2電極の外側面の一部に前記反射層を形成するようにした。
【0039】
これによれば、反射層の形成された基台の凹部に、第2電極の形成された光電変換素子を嵌合するだけで、第2電極の外側面に反射層を形成することができるため、簡単な設備で簡便に光電変換素子を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって反射層の形状を変更することができ、容易に反射層を所望の形状に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図13に従って説明する。図1は、光電変換モジュールとしての太陽電池モジュール1を説明するための概略斜視図であって、図2は、太陽電池素子2を説明するための断面図である。
【0041】
図1に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池素子2が、Y方向に列設されて形成されている。また、太陽光Lが、太陽電池素子2に対して反Z矢印方向に入射するようになっている。
【0042】
太陽電池素子2は、略円柱状に形成された絶縁材料からなる支持棒3を有している。支持棒3は、例えば各種ガラス材料等の無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等の可撓性樹脂材料で形成されている。本実施形態の支持棒3は、内径が約5mm、長さが約200mmで形成されているが、これに限らず、その外周面3aに後述する各種液状膜を形成可能なサイズであればよい。
【0043】
図2に示すように、支持棒3の外周面3aには、断面円筒状の反射電極5が形成されている。第1電極としての反射電極5は、支持棒3の外周面3aの全体にわたって均一な膜厚で形成される光反射性の電極である。反射電極5は、例えば、Al,Ag,Au,Pd,Pt,Cu,Ni,Ti,Mo,Wもしくはこれらの合金からなる金属が導電性材料として用いられるが、仕事関数の低い導電性材料も用いることができる。例えば、Li,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb,Cs,Rbの金属元素単体等を含んでいてもよい。なお、反射電極材料は、その安定性を向上させるために、これらを含む2成分、3成分の合金系を用いてもよい。特に、合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。
【0044】
反射電極5の外周面5aには、断面円筒状のP型半導体層7が形成されている。光電変換層を構成する第1導電型半導体層としてのP型半導体層7は、反射電極5の外周面5aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。P型半導体層7の膜厚は、特に限定されないが、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05〜0.3μm程度であるのがより好ましい。P型半導体層7の膜厚を前記範囲とすることにより、光電変換効率を向上させることができる。
【0045】
本実施形態のP型半導体層7を構成するP型半導体層材料は、周期表の3B族元素を含むシラン化合物の液体材料である。詳述すると、P型半導体層材料は、一般式SinXmで表される環系を有する液状体の前記シラン化合物に、ホウ素(B)を含有する化合物を添加し、これに紫外線を照射した後、トルエン等の溶媒で希釈し、フィルタを通した液体材料である。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であることが好ましく、1010〜1017程度であることがより好ましい。
【0046】
ここで、前記一般式SinXmのXは水素元素及びハロゲン元素のうち少なくとも一種の元素を表し、nは5以上の整数を表し、mはn、2n−2または2nの整数を表す。また、ホウ素を含有する化合物としては、例えばホウ素原子を含有するシラン化合物、ジボラン、テトラボラン、ペンタボラン、ヘキサボラン、デカボラン、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリフェニルホウ素等を利用することができる。また、希釈に使用する溶媒としては、シラン化合物及びホウ素の少なくとも1種を含有する化合物を溶解し、ホウ素単体又はホウ素を含有する化合物を溶解し、且つ溶質と反応しないものであれば特に限定されない。
【0047】
また、シラン化合物としては、具体的には、1個の環状構造を有するものとして、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン等を利用することができる。また、2個の環状構造を有するものとして、1、1’−ビシクロブタシラン、1、1’−ビシクロペンタシラン、1、1’−ビシクロヘキサシラン、1、1’−ビシクロヘプタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、 1、1’−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1、1’−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2、2]ペンタシラン、スピロ[3、3]ヘプタタシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[4、6]ウンデカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ウンデカシラン、スピロ[6、6]トリデカシラン等を利用することができる。その他には、上記化合物の骨格の水素原子を部分的にSiH3基やハロゲン原子に置換したシラン化合物を利用することができる。また、これらのうちの2種以上を混合して利用することもできる。
【0048】
これらのシラン化合物は、不活性ガス雰囲気中で焼成することによって、シリコン膜に変換される。この際の焼成温度としては、一般に到達温度が約550℃以下の温度ではアモルファス状のシリコン膜が、それ以上の温度では多結晶状のシリコン膜が得られる。アモルファス状のシリコン膜を得たい場合は、到達温度を、300℃〜550℃程度にすることが好ましく、350℃〜450℃程度にすることがより好ましい。到達温度が300℃未満の場合は、シラン化合物の熱分解が十分に進行せず、十分な特性のシリコン膜を形成できない場合がある。焼成を行う場合の雰囲気は窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、もしくは水素等の還元性ガスを混入したものが好ましい。
【0049】
P型半導体層7の外周面7aには、断面円筒状のI型半導体層9が形成されている。光電変換層を構成する真性半導体層としてのI型半導体層9は、P型半導体層7の外周面7aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。I型半導体層9の膜厚は、特に限定されないが、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。I型半導体層9の膜厚を前記範囲とすることにより、P型半導体層7と後述するN型半導体層11によるpn接合の幅を適度に拡張することができ、光電変換効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態のI型半導体層9を構成するI型半導体層材料は、前記一般式SinXmで表される環系を有する液状体の前記シラン化合物に紫外線を照射して一部の分子量を増大させた後、トルエン等の溶媒で希釈してフィルタを通した液体材料である。なお、シラン化合物については、P型半導体層7に利用されるものと同様である。
【0051】
I型半導体層9の外周面9aには、断面円筒状のN型半導体層11が形成されている。光電変換層を構成する第2導電型半導体層としてのN型半導体層11は、I型半導体層9の外周面9aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。N型半導体層11の膜厚は、特に限定されないが、膜厚が薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、膜厚が厚すぎると、I型半導体層9への光透過量が減少し、光電変換効率も低下してしまうおそれがある。そのため、N型半導体層11の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。
【0052】
本実施形態のN型半導体層11を構成するN型半導体層材料は、周期表の5B族元素を含むシラン化合物の液体材料である。詳述すると、N型半導体層材料は、一般式SinXmで表される環系を有する液状体のシラン化合物に、リンを含有する化合物を添加し、これに紫外線を照射した後、トルエン等の溶媒で希釈してフィルタを通した液体材料である。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0053】
ここで、リンを含有する化合物としては、例えばリン原子を含有するシラン化合物、リン原子を含有する変性シラン化合物、ホスフィン、ジホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等を利用することができる。また、希釈に使用する溶媒としては、シラン化合物及び黄リン等のリン単体またはリンを含有する化合物を溶解し、且つ溶質と反応しないものであれば特に限定されない。また、シラン化合物については、P型半導体層7に利用されるものと同様である。
【0054】
N型半導体層11の外周面11aには、第2電極としての透明電極13が形成されている。透明電極13は、N型半導体層11の外周面11aの全体にわたって均一な膜厚で形成される光透過性の電極である。透明電極13は、仕事関数の大きい導電性材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の無機酸化物、あるいはポリチオフェンやポリピロール等の透明導電樹脂等)によって形成されている。
【0055】
透明電極13の外周面13aには、断面略半円状の反射層15が形成されている。反射層15は、透明電極13の外周面13aの図2における下部に、均一な膜厚で略半円状に形成される反射層15である。反射層15は、例えば、Al,Ag,Au,Pd,Pt,Cu,Ni,Ti,Mo,Wもしくはこれらの合金からなる金属が導電性材料として用いられるが、仕事関数の低い導電性材料も用いることができる。例えば、Li,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb,Cs,Rbの金属元素単体等を用いることができ、これによって形成されて光反射性を有している。
【0056】
本実施形態の太陽電池素子2の光電変換層は、真性半導体であるI型半導体層9が、P型半導体層7とN型半導体層11とに挟まれたpin接合構造になっている。その太陽電池素子2に太陽光Lが入射すると、太陽光Lの一部はI型半導体層9において吸収される。すると、I型半導体層9内において光励起キャリア、すなわち電子−正孔対が生成され、その電子がN型半導体層11側に、正孔がP型半導体層7側に移動することにより太陽電池素子2の光電変換層内に電流が生じる。N型半導体層11側に移動した電子は透明電極13によって収集され、P型半導体層7側に移動した正孔は反射電極5によって収集されるようになっている。
【0057】
さらに、各太陽電池素子2の透明電極13には、共通の陰極線(図示しない)がそれぞれ電気的に接続されており、その陰極線によって各透明電極13で収集された電子が収集されるようになっている。また、各太陽電池素子2の反射電極5には、共通の陽極線(図示しない)がそれぞれ電気的に接続されており、その陽極線によって各反射電極5で収集された正孔が収集されるようになっている。そして、その陰極線と陽極線を外部負荷に接続することにより、その外部回路に電流が流れて太陽電池モジュール1全体で発電されるようになっている。
【0058】
図1に示すように、円柱状の太陽電池素子2をY方向に列設して太陽電池モジュール1を構成すると、各太陽電池素子2の太陽と対向する受光表面積が、平板状の太陽電池素子の受光表面積に比べてπ/2倍、すなわち約1.5倍増大される。そのため、太陽電池モジュール1の太陽と対向する受光表面積を、平板状の太陽電池モジュールの受光表面積に比べて約1.5倍に増大させることができる。その結果、太陽電池モジュール1の発電電力を、平板状の太陽電池モジュールの発電電力よりも増大させることができる。また、太陽電池素子2の受光面2aは円弧状になっているため、太陽電池モジュール1を固定した状態で、太陽の位置が変化しても、太陽電池モジュール1全体として見ると、太陽光Lの入射角度は略一定になる。そのため、太陽電池モジュール1の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0059】
図2に示すように、太陽光Lは、太陽電池素子2の上面(受光面2a)から太陽電池素子2内部に入射されて、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7を透過して反射電極5によって反射されるようになっている。反射された太陽光Lは、再びP型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を透過して太陽電池素子2外部に出射されるようになっている。これによって、受光面2a側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを入射させることができる。
【0060】
また、太陽光Lは、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して反射層15に入射し、反射層15によって再び太陽電池素子2内に反射されるようになっている。これによって、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子2の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに反射層15を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0061】
また、本実施形態の太陽電池素子2では、上記したように光電変換層がpin接合構造になっているため、I型半導体層9によって、P型半導体層7及びN型半導体層11のpn接合の実質的な幅、すなわち内部電界領域を拡張することができる。これによって、太陽光Lの受光によってI型半導体層9内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、それぞれP型半導体層7及びN型半導体層11に移動されるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0062】
次に、上記した太陽電池モジュール1の製造方法について、図3〜図13に従って説明する。
まず、太陽電池素子2を形成するために、支持棒3の外周面3aに反射電極5を形成する反射電極形成工程を行う。すなわち、図3に示すように、支持棒3の外周面3a全体を、反射電極形成液21の中に浸漬する。本実施形態の反射電極形成液21は、上記した反射電極材料の中の銀のナノ微粒子を有機系分散媒に分散させた液状体であって、後述する反射電極液状膜21Lを形成しやすくするために、好ましくは支持棒3の外周面3aに対する後退接触角θ1が45°以下となる液状体である。
【0063】
支持棒3を反射電極形成液21の中に浸漬すると、浸漬した支持棒3を徐々に引き出し、その外周面3aの全体に、反射電極形成液21からなる反射電極液状膜21Lを形成する。この際、反射電極液状膜21Lの膜厚は、後退接触角θ1に支配されており、後退接触角θ1を一定に保持して支持棒3を反射電極形成液21から引き出すことによって、支持棒3の外周面3aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、引き出す支持棒3が反射電極形成液21から離間するとき、反射電極形成液21側の支持棒3の端面(底面3b)には、外周面3aに比べて、不均一な膜厚の反射電極液状膜21Lが形成されやすい。そのため、本実施形態では、底面3bに形成した反射電極液状膜21Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、例えば底面3bを半球面状の曲面に形成して、底面3bに均一な反射電極液状膜21Lを形成する構成にしてもよい。
【0064】
反射電極液状膜21Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬送し、反射電極形成液21に対応した所定の乾燥温度及び焼成温度まで昇温して、反射電極液状膜21Lを乾燥・焼成する。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、支持棒3の外周面3aの全体に、均一な膜厚の反射電極5を形成することができる。
【0065】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成によって形成した反射電極5の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成を繰り返して、反射電極5を厚膜化する構成にしてもよい。また、反射電極形成液21の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ1を低下させ、反射電極液状膜21Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0066】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成によって形成した反射電極5の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、支持棒3の外周面3aの全体に加圧エアーを吹き付けて、反射電極液状膜21Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、反射電極形成液21の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ1を増加させ、反射電極液状膜21Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0067】
反射電極形成工程を終了すると、反射電極5の外周面5a上にP型半導体層7を形成するP型半導体層形成工程を行う。すなわち、図4に示すように、支持棒3に形成された反射電極5の外周面5a全体を、P型半導体層形成液23の中に浸漬する。本実施形態のP型半導体層形成液23は、上記したP型半導体層材料のデカボランとシクロペンタシラン混合物に波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するP型半導体層液状膜23Lを形成しやすくするために、好ましくは反射電極5の外周面5aに対する後退接触角θ2が45°以下となる液状体である。また、このP型半導体層形成液23はホウ素の濃度勾配がないため、液状体中にホウ素が略均一に分布されるようになっている。なお、P型半導体層形成液23は、上記したP型半導体層形成材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0068】
反射電極5の外周面5aをP型半導体層形成液23の中に浸漬すると、浸漬した外周面5aを徐々に引き出し、その外周面5aの全体に、P型半導体層形成液23からなるP型半導体層液状膜23Lを形成する。この際、P型半導体層液状膜23Lの膜厚は、後退接触角θ2に支配されており、後退接触角θ2を一定に保持して支持棒3をP型半導体層形成液23から引き出すことによって、反射電極5の外周面5aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるP型半導体層液状膜23Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なP型半導体層液状膜23Lを形成する構成にしてもよい。
【0069】
P型半導体層液状膜23Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、P型半導体層形成液23に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、P型半導体層液状膜23Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において550℃で熱分解を行えば、P型半導体層7を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、反射電極5の外周面5aの全体に、均一な膜厚のP型半導体層7を形成することができる。このP型半導体層7は、ホウ素が略均一に分布されているP型半導体層形成液23から形成されるため、ホウ素の濃度勾配がなく、シリコン層中にホウ素が略均一に分布されるようになっている。
【0070】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したP型半導体層7の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、P型半導体層7を厚膜化する構成にしてもよい。また、P型半導体層形成液23の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ2を低下させ、P型半導体層液状膜23Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0071】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したP型半導体層7の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、P型半導体層7の外周面7aの全体に加圧エアーを吹き付けて、P型半導体層液状膜23Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、P型半導体層形成液23の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ2を低下させ、P型半導体層液状膜23Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0072】
P型半導体層形成工程を終了すると、P型半導体層7の外周面7a上にI型半導体層9を形成するI型半導体層形成工程を行う。すなわち、図5に示すように、支持棒3に形成されたP型半導体層7の外周面7a全体を、I型半導体層形成液25の中に浸漬する。本実施形態のI型半導体層形成液25は、シクロペンタシランを波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するI型半導体層液状膜25Lを形成しやすくするために、好ましくはP型半導体層7の外周面7aに対する後退接触角θ3が45°以下となる液状体である。なお、I型半導体層形成液25は、上記したI型半導体層材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0073】
P型半導体層7の外周面7aをI型半導体層形成液25の中に浸漬すると、浸漬した外周面7aを徐々に引き出し、その外周面7aの全体に、I型半導体層形成液25からなるI型半導体層液状膜25Lを形成する。この際、I型半導体層液状膜25Lの膜厚は、後退接触角θ3に支配されており、後退接触角θ3を一定に保持して支持棒3をI型半導体層形成液25から引き出すことによって、P型半導体層7の外周面7aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるI型半導体層液状膜25Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なI型半導体層液状膜25Lを形成する構成にしてもよい。
【0074】
I型半導体層液状膜25Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、I型半導体層形成液25に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、I型半導体層液状膜25Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において550℃で熱分解を行えば、I型半導体層を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、P型半導体層7の外周面7aの全体に、均一な膜厚のI型半導体層9を形成することができる。
【0075】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したI型半導体層9の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、I型半導体層9を厚膜化する構成にしてもよい。また、I型半導体層形成液25の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ3を低下させ、I型半導体層液状膜25Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0076】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したI型半導体層9の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、I型半導体層9の外周面9aの全体に加圧エアーを吹き付けて、I型半導体層液状膜25Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、I型半導体層形成液25の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ3を低下させ、I型半導体層液状膜25Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0077】
I型半導体層形成工程を終了すると、I型半導体層9の外周面9a上にN型半導体層11を形成するN型半導体層形成工程を行う。すなわち、図6に示すように、支持棒3に形成されたI型半導体層9の外周面9a全体を、N型半導体層形成液27の中に浸漬する。本実施形態のN型半導体層形成液27は、黄リンとシクロペンタシラン混合物に波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するN型半導体層液状膜27Lを形成しやすくするために、好ましくはI型半導体層9の外周面9aに対する後退接触角θ4が45°以下となる液状体である。また、このN型半導体層形成液27はリンの濃度勾配がないため、液状体中にリンが略均一に分布されるようになっている。なお、N型半導体層形成液27は、上記したN型半導体層材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0078】
I型半導体層9の外周面9aをN型半導体層形成液27の中に浸漬すると、浸漬した外周面9aを徐々に引き出し、その外周面9aの全体に、N型半導体層形成液27からなるN型半導体層液状膜27Lを形成する。この際、N型半導体層液状膜27Lの膜厚は、後退接触角θ4に支配されており、後退接触角θ4を一定に保持して支持棒3をN型半導体層形成液27から引き出すことによって、I型半導体層9の外周面9aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるN型半導体層液状膜27Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なN型半導体層液状膜27Lを形成する構成にしてもよい。
【0079】
N型半導体層液状膜27Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、N型半導体層形成液27に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、N型半導体層液状膜27Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において450℃で熱分解を行えば、N型半導体層11を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、I型半導体層9の外周面9aの全体に、均一な膜厚のN型半導体層11を形成することができる。このN型半導体層11は、リンが略均一に分布されているN型半導体層形成液27から形成されるため、リンの濃度勾配がなく、シリコン層中にリンが略均一に分布されるようになっている。
【0080】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したN型半導体層11の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、N型半導体層11を厚膜化する構成にしてもよい。また、N型半導体層形成液27の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ4を低下させ、N型半導体層液状膜27Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0081】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したN型半導体層11の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、N型半導体層11の外周面9aの全体に加圧エアーを吹き付けて、N型半導体層液状膜27Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、N型半導体層形成液27の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ4を低下させ、N型半導体層液状膜27Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0082】
N型半導体層形成工程を終了すると、N型半導体層11の外周面11a上に透明電極13を形成する透明電極形成工程を行う。すなわち、図7に示すように、支持棒3に形成されたN型半導体層11の外周面11a全体を、透明電極形成液29の中に浸漬する。本実施形態の透明電極形成液29は、上記した透明電極形成材料のITOのナノ微粒子を有機系分散媒に分散させた液状体であって、後述する透明電極液状膜29Lを形成しやすくするために、好ましくはN型半導体層11の外周面11aに対する後退接触角θ5が45°以下となる液状体である。
【0083】
N型半導体層11の外周面11aを透明電極形成液29の中に浸漬すると、浸漬した外周面11aを徐々に引き出し、その外周面11aの全体に、透明電極形成液29からなる透明電極液状膜29Lを形成する。この際、透明電極液状膜29Lの膜厚は、後退接触角θ5に支配されており、後退接触角θ5を一定に保持して支持棒3を透明電極形成液29から引き出すことによって、N型半導体層11の外周面11aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同じく、底面3b側に形成される透明電極液状膜29Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一な透明電極液状膜29Lを形成する構成にしてもよい。
【0084】
透明電極液状膜29Lを形成すると、支持棒3を乾燥炉に搬送し、透明電極形成液29に対応した所定の乾燥温度まで昇温して、透明電極液状膜29Lを乾燥する。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、N型半導体層11の外周面11aの全体に、均一な膜厚の透明電極13を形成することができる。
【0085】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成した透明電極13の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、透明電極13を厚膜化する構成にしてもよい。また、透明電極形成液29の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ5を低下させ、透明電極液状膜29Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0086】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成した透明電極13の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、透明電極13の外周面13aの全体に加圧エアーを吹き付けて、透明電極液状膜29Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、透明電極形成液29の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ5を低下させ、透明電極液状膜29Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0087】
透明電極形成工程を終了すると、透明電極13の外周面13a上に反射層15を形成する反射層形成工程を行う。すなわち、図8に示すように、透明電極13を形成した支持棒3の所定箇所に、蒸着装置30を用いて反射層形成材料を蒸着する。詳しくは、透明電極13を形成した支持棒3を、蒸着装置30と対向するように蒸着装置30の上方に配置する。また、支持棒3には回転装置(図示しない)が取り付けられており、その回転装置は、回転軸線LAを中心にして支持棒3を回転させる。そして、支持棒3を回転させながら、透明電極13の外周面13aに対して、蒸着装置30から放出される反射層形成材料を蒸着する。なお、本実施形態では、透明電極13の外周面13aに略半円筒状のシャドウマスク31を形成することによって、透明電極13の外周面13aに略半円筒状の反射層15を形成するようにした。従って、このシャドウマスク31の形状を変更することによって、反射層15の形状を容易に変更することができる。
【0088】
そして、形成された太陽電池素子2を、図1に示すように隣接する太陽電池素子2同士の反射層15が接触されるように列設して、太陽電池モジュール1を形成する。
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
【0089】
(1)本実施形態によれば、円柱状の太陽電池素子2をY方向に列設して太陽電池モジュール1を形成した。これによって、各太陽電池素子2の太陽と対向する受光表面積が、平板状の太陽電池素子の受光表面積に比べてπ/2倍、すなわち約1.5倍増大されるため、太陽電池モジュール1の太陽と対向する受光表面積を、平板状の太陽電池モジュールの受光表面積に比べて約1.5倍に増大させることができる。その結果、太陽電池モジュール1の発電電力を、平板状の太陽電池モジュールの発電電力よりも増大させることができる。
【0090】
また、図1に示すように、太陽電池素子2の受光面2aは円弧状になっているため、太陽電池モジュール1を固定した状態で、太陽の位置が変化しても、太陽電池モジュール1全体として見ると、太陽光Lの入射角度は略一定になる。そのため、太陽電池モジュール1の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0091】
(2)本実施形態によれば、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成するようにした。これによって、図2に示すように、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して反射層15に入射する太陽光Lを、再び太陽電池素子2内に反射させることができる。従って、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子2の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに反射層15を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0092】
(3)本実施形態によれば、光電変換層をP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11からなるpin接合構造とした。そのため、I型半導体層9によって、P型半導体層7及びN型半導体層11のpn接合の実質的な幅、すなわち内部電界領域を拡張することができる。従って、太陽光Lの受光によりI型半導体層9内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、それぞれN型半導体層11及びP型半導体層7に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0093】
(4)本実施形態によれば、透明電極13の外周面13aに略半円筒状のシャドウマスク31を形成して、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成するようにした。従って、透明電極13の外周面13aをシャドウマスク31で覆うことによって、所望の形状の反射層15を容易に形成することができる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9及び図10に従って説明する。図9は、太陽電池モジュール40を説明するための概略斜視図であって、図10は、光電変換装置としての太陽電池装置42を説明するための断面図である。なお、第2実施形態でも、上記第1実施形態で説明した太陽電池素子2と略同様の構造を有する太陽電池素子46を使用するため、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
図1に示すように、太陽電池モジュール40は、複数の太陽電池装置42が、Y方向に列設されて形成されている。また、太陽光Lが、太陽電池モジュール40に対して反Z矢印方向に入射するようになっている。
【0096】
太陽電池装置42は、四角柱状であって光反射性を有する反射台としての支持台44と、その支持台44に固定された太陽電池素子46とから構成されている。支持台44の上面44aには、断面放物線状の凹部48が形成されるとともに、その凹部48の先端部48a及び基端部48bには、平板状の固定板49(凹部48の基端部48b側は図示しない)の基端49aがそれぞれ固着されている。
【0097】
各固定板49は、絶縁性樹脂によって形成されるとともに、太陽電池素子46の半径よりも長く形成されている。また、各固定板49は、その先端49bが太陽電池素子46の支持棒3の略中心に固着されるようになっている。この両固定板49によって、太陽電池素子46の両端が支持固定されて、太陽電池素子46を、支持台44の凹部48の上方に配置固定することができる。
【0098】
なお、本実施形態の太陽電池素子46は、図10に示すように、支持台44の凹部48を形成する放物線Bの焦点fに光電変換層のI型半導体層9が配置されるように、両固定板49によって固定されている。また、両固定板49の長さを変更することによって、放物線Bからの太陽電池素子2(I型半導体層9)の位置を容易に変更することができる。
【0099】
Z方向と平行に入射される太陽光Lは、太陽電池素子46の上面(受光面46a)から太陽電池素子46内部に入射されて、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7を透過して反射電極5によって反射されるようになっている。反射された太陽光Lは、再びP型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を透過して太陽電池素子46外部に出射されるようになっている。これによって、受光面46a側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを入射させることができる。
【0100】
また、Z方向と平行に入射される太陽光Lは、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して支持台44の凹部48に入射する、あるいは直接凹部48に入射するようになっている。そして、凹部48は、入射した太陽光Lを放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射するようになっている。これによって、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子46(太陽電池装置42)の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台44を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0101】
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、太陽電池素子46を固定支持する支持台44の上面44aに断面放物線状の凹部48を形成した。また、その凹部48を形成する放物線Bの焦点fに、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層のI型半導体層9を配置した。これによって、図10に示すように、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して支持台44の凹部48にZ方向と平行に入射する太陽光Lを、放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射させることができる。また、直接凹部48にZ方向と平行に入射する太陽光Lを、放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射させることができる。従って、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台44を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0102】
なお、上記各実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成した。これに限らず、例えば図11に示すように、N型半導体層11の外周面11aに形成される透明電極13を省略して、N型半導体層11の外周面11aに断面略半円状の反射層15を形成するようにしてもよい。なお、この場合、上記第1実施形態の透明電極13が担っていた光電変換層からの正孔の収集の機能も、反射層15が担うようになる。
【0103】
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに形成した反射層15を断面略半円状の形状に具体化したが、この形状に制限されるものではない。透明電極13の外周面13aのうち、太陽電池素子2の下面2b側の一部に反射層15が形成されていればよい。従って、反射層15は、半円よりも小さく形成されてもよく、半円よりも大きく形成されてもよい。
【0104】
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに、蒸着法によって反射層形成材料を蒸着して反射層15を形成した。これを、スパッタ法によって反射層形成材料を、透明電極13の外周面13aにスパッタして反射層15を形成するようにしてもよい。また、図12に示すように、基台としてのバンク50の断面略半円状の凹部51に反射層15を形成し、その反射層15が形成されたバンク50の凹部51に、透明電極13を形成した支持棒3を嵌合して、透明電極13の外周面13aに反射層15を貼り合わせて太陽電池素子2を形成するようにしてもよい。また、透明電極13の外周面13aの一部を反射層形成材料を含む反射層形成液に浸漬して引き出し、透明電極13の外周面13aの一部に堆積した反射層形成液の液状膜を乾燥させて反射層15を形成するようにしてもよい。
【0105】
・上記第2実施形態では、支持台44の上面44aに断面放物線状の凹部48を形成するようにした。これに限らず、例えば図13に示すように、支持台52の上面52aに断面円弧状の凹部54を形成するようにしてもよい。この凹部54によって、その凹部54に入射した太陽光Lを、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11)に反射させることができる。従って、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができるため、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台52を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。なお、この場合、凹部54の曲率は、太陽電池素子46の曲率と同一にすることが好ましい。
【0106】
あるいは、図14に示す支持台56のように、凹部48を形成しなくてもよい。これによっても、支持台56に入射する太陽光Lを、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層に反射させることができる。従って、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができるため、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台56を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0107】
・上記各実施形態では、反射電極5の外周面5aに、P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11の順に積層するようにした。これに限らず、反射電極5の外周面5aに、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7の順に積層するようにしてもよい。なお、この場合のP型半導体層7の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。一方、N型半導体層11の膜厚は、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがより好ましい。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であるのが好ましく、1010〜1017atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0108】
・上記各実施形態では、反射電極5の外周面5aに、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を順に積層するようにした。これに限らず、例えばN型半導体層11を形成した後に、P型半導体層形成工程、I型半導体層形成工程及びN型半導体層形成工程を繰り返し実行し、光電変換層(P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11)を多層に積層する、いわゆるタンデム構造にしてもよい。これらの場合、特に、禁制帯幅の異なる複数の光電変換層を積層することによって、太陽光Lの入射側の光電変換層から順に短波長の光を利用して発電し、より長波長の光はより内周の光電変換層で利用することができる。その結果、太陽光Lの各波長域の光エネルギー、特に長波長までの光エネルギーを電気エネルギーに変換することができるため、上記実施形態の単結合の場合に比べてより高い光電変換効率を得ることができる。
【0109】
・上記各実施形態では、光電変換層をP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11からなるpin接合構造としたが、これに限らず、例えばI型半導体層9を省略してP型半導体層7及びN型半導体層11からなるpn接合構造としてもよい。なお、この場合のP型半導体層7の膜厚は、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがより好ましい。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であるのが好ましく、1010〜1017atom/cm3程度であるのがより好ましい。一方、N型半導体層11の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0110】
・上記各実施形態では、支持棒3を断面円形状として充実構造としたが、これに限らず、例えば支持棒3を断面円筒状として中空構造としてもよい。
・上記各実施形態では、支持棒3の断面及び外形を、それぞれ断面が円形状であって、外形が棒状に具体化した。これに限らず、断面形状が楕円形状であってもよい。また、断面形状が多角形状や一部に平面を有する形状であってもよい。これによって、例えば太陽電池素子2,46を列設させる場合に、隣接する太陽電池素子2,46の接触面積が広くなるため、太陽電池素子2,46を配置しやすくなる。あるいは、外形が螺旋形に曲折した形状であってもよい。
【0111】
・上記第1実施形態における反射層15を、光反射性を有する導電性材料から形成するようにしたが、光反射性を有する材料であれば特に制限されない。
・上記第2実施形態における支持台44を、光反射性を有する導電性材料から形成するようにしたが、光反射性を有する材料であれば特に制限されない。
【0112】
・上記各実施形態では、支持棒3を絶縁材料によって構成したが、これに限らず、支持棒3を導電性材料、例えば反射電極材料によって構成してもよい。これによれば、支持棒3の外周面3aに、別途反射電極5を形成する必要がなく、反射電極形成工程を省略することができ、太陽電池素子2,46の生産性を向上することができる。また、部品点数も減らすことができることから、太陽電池素子2,46を小型化することができる。
【0113】
・上記各実施形態では、支持棒3の外周面3aに光反射性を有する反射電極5を形成するようにしたが、これに限らず、例えば反射電極5に代えて光透過性を有する電極を支持棒3の外周面3aに形成するようにしてもよい。
【0114】
・上記各実施形態では、棒状の支持棒3を、各種形成液(反射電極形成液21、P型半導体層形成液23、I型半導体層形成液25、N型半導体層形成液27及び透明電極形成液29)に浸漬して引き出すことによって、支持棒3の外周面3aに各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを形成するようにした。そして、その各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを乾燥・焼成して、支持棒3の外周面3aに、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を順に積層するようにした。これに限らず、例えば管状のチューブに各種形成液21,23,25,27,29を導入・導出して、管状のチューブの内側面に各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを形成してもよい。そして、その各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを乾燥・焼成することによって、チューブの内側面に透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9、P型半導体層7及び反射電極5を順に形成するようにしてもよい。
【0115】
・上記各実施形態では、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を液相プロセスによって形成する構成にしたが、これに限らず、蒸着等の気相プロセスによって形成する構成にしてもよい。
【0116】
・上記各実施形態におけるP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11を形成するときの乾燥温度及び焼成温度に特に制限はない。
・上記各実施形態では、P型半導体層材料、I型半導体層材料及びN型半導体層材料をシラン化合物から構成したが、これに限らず、例えばシリコン及びカーボンからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。また、シリコン及びゲルマニウムからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。あるいは、シリコン、カーボン及びゲルマニウムからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態における太陽電池モジュールを説明するための概略斜視図。
【図2】同じく、太陽電池素子を説明するための断面図。
【図3】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図4】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図5】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図6】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図7】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図8】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための斜視図。
【図9】第2実施形態における太陽電池モジュールを説明するための概略斜視図。
【図10】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【図11】別例における太陽電池素子を説明するための断面図。
【図12】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図13】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【図14】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0118】
B…放物線、f…焦点、L…太陽光、1,40…光電変換モジュールとしての太陽電池モジュール、2,46…光電変換素子としての太陽電池素子、2a,46a…受光面、2b,46b…下面、3…支持棒、5…第1電極としての反射電極、7…第1導電型半導体層としてのP型半導体層、9…真性半導体層としてのI型半導体層、11…第2導電型半導体層としてのN型半導体層、13…第2電極としての透明電極、15…反射層、31…シャドウマスク、42…光電変換装置としての太陽電池装置、44,52,56…反射台としての支持台、48,54…凹部、49…固定板、50…基台としてのバンク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、多種の太陽電池が開発されており、その中でもシリコンを用いた太陽電池が注目を集めている。特に、多結晶シリコンを用いた太陽電池やアモルファスシリコンを用いた太陽電池が、産業用や家庭用として実用化されている。
【0003】
一般的な太陽電池は、平板状の基板の表面に金属電極を形成し、その金属電極の表面に、P型、N型及びI型等の半導体層からなる光電変換層を形成し、さらにその光電変換層の表面に透明電極を形成した平面状の受光構造になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−289173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、太陽光を受光する面積(有効面積)が広くなるに連れて、その太陽電池による発電電力が増大する。しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池のように受光面が平面状の場合には、有効面積を、太陽電池の設置面積と同等の面積しか確保することができないため、太陽電池の発電電力を増大させることが困難であった。
【0005】
本発明は、前述した上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、光を受光する面積を増大させることのできる光電変換素子、光電変換装置及び光電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる光電変換素子は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって光電変換層に向かって光を反射させることができる。従って、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0008】
また、本発明にかかる光電変換素子は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極と、前記第2電極の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とするようにしてもよい。
【0009】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって光電変換層に向かって光を反射させることができる。従って、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0010】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、円筒状であってもよい。
これによれば、光電変換素子の有効面積を、平板状の光電変換素子に比べて例えばπ/2倍などに増大させることができる。また、平板状の光電変換素子では、例えば太陽光の入射方向に対して指向性が強く、太陽の移動による太陽光の入射角度の変化に伴って光電変換効率が変化していたが、受光面を円筒状にすることによって、太陽の位置が変化しても、太陽光の入射角度を略一定にすることができる。そのため、光電変換素子の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0011】
この光電変換素子において、前記反射層は、断面半円状に形成されるようにしてもよい。
これによれば、断面半円状の反射層によって光電変換素子の外周を覆うことができるため、より効率的に、光電変換層に光を反射させて入射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0012】
この光電変換素子において、前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であってもよい。
これによれば、第1電極と反射層との間で内部反射が繰り返されるため、その第1電極と反射層に挟まれた光電変換層はより効率的に光を受光することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0013】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0014】
これによれば、光を受光する面積を増大させることができ、効率的に太陽光を受光することができる。さらに、反射層によって第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に向かって光を反射させることができるため、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0015】
この光電変換素子において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0016】
これによれば、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とによって形成される内部電界領域の幅を拡張することができる。これによって、光の受光により光電変換層内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0017】
本発明にかかる光電変換装置は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極とを備えた光電変換素子と、前記光電変換素子の少なくとも一部の面に対向して設置されて、光反射性を有する反射台とを備えたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、光電変換層の光を受光する面積(有効面積)を増大させることができ、効率的に光を受光することができる。さらに、反射台によって入射される光を、光電変換層に向かって反射させることができるため、光電変換層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0019】
この光電変換装置において、前記光電変換素子の前記一部の面は第1の曲率を有し、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には側面が弧状の凹部が含まれ、前記凹部が前記第1の曲率と異なる第2の曲率を有するようにしてもよい。
【0020】
これによれば、光電変換素子の一部の面と対向する一側面に形成された弧状の凹部によって、光電変換層に効率的に光を反射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0021】
この光電変換装置において、前記光電変換素子の前記一部の面が第1の曲率を有し、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、前記光電変換素子の前記第1の曲率と同一の曲率を有する、断面が弧状の凹部が含まれるようにしてもよい。
【0022】
これによれば、光電変換素子の一部の面と対向する一側面に形成された弧状の凹部によって、光電変換層に効率的に光を反射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0023】
この光電変換装置において、前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、断面放物線状の凹部が形成されて、前記光電変換素子の光電変換層の一部を前記放物線の焦点に配置してもよい。
【0024】
これによれば、凹部を形成する放物線の焦点に、光電変換素子の光電変換層の一部を配置した。反射台は、その一側面の放線方向と平行に凹部に入射する光を、放物線の焦点に集光するように反射させることができるため、光電変換層の一部に光を効率的に入射させることができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0025】
この光電変換装置において、前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であってもよい。
これによれば、光電変換層の内側面に形成された第1電極を光反射性を有する金属電極とした。これによって、第1電極と支持台との間で内部反射が繰り返されるため、その第1電極と支持台との間に挟まれた光電変換層がより効率的に光を受光することができる。
【0026】
この光電変換装置において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0027】
この光電変換装置によれば、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の光を受光する面積を増大させることができ、効率的に光を受光することができる。さらに、反射台によって、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に向かって光を反射させることができるため、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の有効面積を効率的に利用することができる。その結果、発電電力を増大させることができる。
【0028】
この光電変換装置において、前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むようにしてもよい。
【0029】
この光電変換装置によれば、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とによって形成される内部電界領域の幅を拡張することができる。これによって、光の受光により光電変換層内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0030】
本発明の光電変換モジュールは、上記の光電変換素子を列設した。
本発明の光電変換モジュールによれば、各光電変換素子の光を受光する面積を増大させることができるため、発電電力を増大させることができる。
【0031】
本発明の光電変換モジュールは、上記の光電変換装置を列設した。
本発明の光電変換モジュールによれば、各光電変換装置の光を受光する面積を増大させることができるため、発電電力を増大させることができる。
【0032】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極とを備えた光電変換素子の前記光電変換層の外側面の一部をマスクし、前記光電変換層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成することができる。
【0033】
これによれば、反射層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の反射層を光電変換層の外側面の特定の領域に容易に形成することができる。
【0034】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された第2電極とを備えた光電変換素子の同第2電極の外側面の一部をマスクし、前記第2電極の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成することができる。
【0035】
これによれば、反射層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の反射層を第2電極の外側面の特定の領域に容易に形成することができる。
【0036】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極とを備えた光電変換素子が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記光電変換素子を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記光電変換層の外側面の一部に前記反射層を形成するようにしてもよい。
【0037】
これによれば、反射層の形成された基台の凹部に、第1電極と光電変換層の形成された光電変換素子を嵌合するだけで、光電変換層の外側面に反射層を形成することができるため、簡単な設備で簡便に光電変換素子を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって反射層の形状を変更することができ、容易に反射層を所望の形状に形成することができる。
【0038】
上記の光電変換素子の製造方法は、管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された第2電極とを備えた光電変換素子が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記光電変換素子を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記第2電極の外側面の一部に前記反射層を形成するようにした。
【0039】
これによれば、反射層の形成された基台の凹部に、第2電極の形成された光電変換素子を嵌合するだけで、第2電極の外側面に反射層を形成することができるため、簡単な設備で簡便に光電変換素子を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって反射層の形状を変更することができ、容易に反射層を所望の形状に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図13に従って説明する。図1は、光電変換モジュールとしての太陽電池モジュール1を説明するための概略斜視図であって、図2は、太陽電池素子2を説明するための断面図である。
【0041】
図1に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池素子2が、Y方向に列設されて形成されている。また、太陽光Lが、太陽電池素子2に対して反Z矢印方向に入射するようになっている。
【0042】
太陽電池素子2は、略円柱状に形成された絶縁材料からなる支持棒3を有している。支持棒3は、例えば各種ガラス材料等の無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等の可撓性樹脂材料で形成されている。本実施形態の支持棒3は、内径が約5mm、長さが約200mmで形成されているが、これに限らず、その外周面3aに後述する各種液状膜を形成可能なサイズであればよい。
【0043】
図2に示すように、支持棒3の外周面3aには、断面円筒状の反射電極5が形成されている。第1電極としての反射電極5は、支持棒3の外周面3aの全体にわたって均一な膜厚で形成される光反射性の電極である。反射電極5は、例えば、Al,Ag,Au,Pd,Pt,Cu,Ni,Ti,Mo,Wもしくはこれらの合金からなる金属が導電性材料として用いられるが、仕事関数の低い導電性材料も用いることができる。例えば、Li,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb,Cs,Rbの金属元素単体等を含んでいてもよい。なお、反射電極材料は、その安定性を向上させるために、これらを含む2成分、3成分の合金系を用いてもよい。特に、合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。
【0044】
反射電極5の外周面5aには、断面円筒状のP型半導体層7が形成されている。光電変換層を構成する第1導電型半導体層としてのP型半導体層7は、反射電極5の外周面5aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。P型半導体層7の膜厚は、特に限定されないが、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05〜0.3μm程度であるのがより好ましい。P型半導体層7の膜厚を前記範囲とすることにより、光電変換効率を向上させることができる。
【0045】
本実施形態のP型半導体層7を構成するP型半導体層材料は、周期表の3B族元素を含むシラン化合物の液体材料である。詳述すると、P型半導体層材料は、一般式SinXmで表される環系を有する液状体の前記シラン化合物に、ホウ素(B)を含有する化合物を添加し、これに紫外線を照射した後、トルエン等の溶媒で希釈し、フィルタを通した液体材料である。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であることが好ましく、1010〜1017程度であることがより好ましい。
【0046】
ここで、前記一般式SinXmのXは水素元素及びハロゲン元素のうち少なくとも一種の元素を表し、nは5以上の整数を表し、mはn、2n−2または2nの整数を表す。また、ホウ素を含有する化合物としては、例えばホウ素原子を含有するシラン化合物、ジボラン、テトラボラン、ペンタボラン、ヘキサボラン、デカボラン、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリフェニルホウ素等を利用することができる。また、希釈に使用する溶媒としては、シラン化合物及びホウ素の少なくとも1種を含有する化合物を溶解し、ホウ素単体又はホウ素を含有する化合物を溶解し、且つ溶質と反応しないものであれば特に限定されない。
【0047】
また、シラン化合物としては、具体的には、1個の環状構造を有するものとして、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン等を利用することができる。また、2個の環状構造を有するものとして、1、1’−ビシクロブタシラン、1、1’−ビシクロペンタシラン、1、1’−ビシクロヘキサシラン、1、1’−ビシクロヘプタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、 1、1’−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1、1’−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2、2]ペンタシラン、スピロ[3、3]ヘプタタシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[4、6]ウンデカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ウンデカシラン、スピロ[6、6]トリデカシラン等を利用することができる。その他には、上記化合物の骨格の水素原子を部分的にSiH3基やハロゲン原子に置換したシラン化合物を利用することができる。また、これらのうちの2種以上を混合して利用することもできる。
【0048】
これらのシラン化合物は、不活性ガス雰囲気中で焼成することによって、シリコン膜に変換される。この際の焼成温度としては、一般に到達温度が約550℃以下の温度ではアモルファス状のシリコン膜が、それ以上の温度では多結晶状のシリコン膜が得られる。アモルファス状のシリコン膜を得たい場合は、到達温度を、300℃〜550℃程度にすることが好ましく、350℃〜450℃程度にすることがより好ましい。到達温度が300℃未満の場合は、シラン化合物の熱分解が十分に進行せず、十分な特性のシリコン膜を形成できない場合がある。焼成を行う場合の雰囲気は窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、もしくは水素等の還元性ガスを混入したものが好ましい。
【0049】
P型半導体層7の外周面7aには、断面円筒状のI型半導体層9が形成されている。光電変換層を構成する真性半導体層としてのI型半導体層9は、P型半導体層7の外周面7aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。I型半導体層9の膜厚は、特に限定されないが、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。I型半導体層9の膜厚を前記範囲とすることにより、P型半導体層7と後述するN型半導体層11によるpn接合の幅を適度に拡張することができ、光電変換効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態のI型半導体層9を構成するI型半導体層材料は、前記一般式SinXmで表される環系を有する液状体の前記シラン化合物に紫外線を照射して一部の分子量を増大させた後、トルエン等の溶媒で希釈してフィルタを通した液体材料である。なお、シラン化合物については、P型半導体層7に利用されるものと同様である。
【0051】
I型半導体層9の外周面9aには、断面円筒状のN型半導体層11が形成されている。光電変換層を構成する第2導電型半導体層としてのN型半導体層11は、I型半導体層9の外周面9aの全体にわたって均一な膜厚で形成されるシリコン層である。N型半導体層11の膜厚は、特に限定されないが、膜厚が薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、膜厚が厚すぎると、I型半導体層9への光透過量が減少し、光電変換効率も低下してしまうおそれがある。そのため、N型半導体層11の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。
【0052】
本実施形態のN型半導体層11を構成するN型半導体層材料は、周期表の5B族元素を含むシラン化合物の液体材料である。詳述すると、N型半導体層材料は、一般式SinXmで表される環系を有する液状体のシラン化合物に、リンを含有する化合物を添加し、これに紫外線を照射した後、トルエン等の溶媒で希釈してフィルタを通した液体材料である。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0053】
ここで、リンを含有する化合物としては、例えばリン原子を含有するシラン化合物、リン原子を含有する変性シラン化合物、ホスフィン、ジホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等を利用することができる。また、希釈に使用する溶媒としては、シラン化合物及び黄リン等のリン単体またはリンを含有する化合物を溶解し、且つ溶質と反応しないものであれば特に限定されない。また、シラン化合物については、P型半導体層7に利用されるものと同様である。
【0054】
N型半導体層11の外周面11aには、第2電極としての透明電極13が形成されている。透明電極13は、N型半導体層11の外周面11aの全体にわたって均一な膜厚で形成される光透過性の電極である。透明電極13は、仕事関数の大きい導電性材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の無機酸化物、あるいはポリチオフェンやポリピロール等の透明導電樹脂等)によって形成されている。
【0055】
透明電極13の外周面13aには、断面略半円状の反射層15が形成されている。反射層15は、透明電極13の外周面13aの図2における下部に、均一な膜厚で略半円状に形成される反射層15である。反射層15は、例えば、Al,Ag,Au,Pd,Pt,Cu,Ni,Ti,Mo,Wもしくはこれらの合金からなる金属が導電性材料として用いられるが、仕事関数の低い導電性材料も用いることができる。例えば、Li,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb,Cs,Rbの金属元素単体等を用いることができ、これによって形成されて光反射性を有している。
【0056】
本実施形態の太陽電池素子2の光電変換層は、真性半導体であるI型半導体層9が、P型半導体層7とN型半導体層11とに挟まれたpin接合構造になっている。その太陽電池素子2に太陽光Lが入射すると、太陽光Lの一部はI型半導体層9において吸収される。すると、I型半導体層9内において光励起キャリア、すなわち電子−正孔対が生成され、その電子がN型半導体層11側に、正孔がP型半導体層7側に移動することにより太陽電池素子2の光電変換層内に電流が生じる。N型半導体層11側に移動した電子は透明電極13によって収集され、P型半導体層7側に移動した正孔は反射電極5によって収集されるようになっている。
【0057】
さらに、各太陽電池素子2の透明電極13には、共通の陰極線(図示しない)がそれぞれ電気的に接続されており、その陰極線によって各透明電極13で収集された電子が収集されるようになっている。また、各太陽電池素子2の反射電極5には、共通の陽極線(図示しない)がそれぞれ電気的に接続されており、その陽極線によって各反射電極5で収集された正孔が収集されるようになっている。そして、その陰極線と陽極線を外部負荷に接続することにより、その外部回路に電流が流れて太陽電池モジュール1全体で発電されるようになっている。
【0058】
図1に示すように、円柱状の太陽電池素子2をY方向に列設して太陽電池モジュール1を構成すると、各太陽電池素子2の太陽と対向する受光表面積が、平板状の太陽電池素子の受光表面積に比べてπ/2倍、すなわち約1.5倍増大される。そのため、太陽電池モジュール1の太陽と対向する受光表面積を、平板状の太陽電池モジュールの受光表面積に比べて約1.5倍に増大させることができる。その結果、太陽電池モジュール1の発電電力を、平板状の太陽電池モジュールの発電電力よりも増大させることができる。また、太陽電池素子2の受光面2aは円弧状になっているため、太陽電池モジュール1を固定した状態で、太陽の位置が変化しても、太陽電池モジュール1全体として見ると、太陽光Lの入射角度は略一定になる。そのため、太陽電池モジュール1の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0059】
図2に示すように、太陽光Lは、太陽電池素子2の上面(受光面2a)から太陽電池素子2内部に入射されて、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7を透過して反射電極5によって反射されるようになっている。反射された太陽光Lは、再びP型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を透過して太陽電池素子2外部に出射されるようになっている。これによって、受光面2a側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを入射させることができる。
【0060】
また、太陽光Lは、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して反射層15に入射し、反射層15によって再び太陽電池素子2内に反射されるようになっている。これによって、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子2の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに反射層15を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0061】
また、本実施形態の太陽電池素子2では、上記したように光電変換層がpin接合構造になっているため、I型半導体層9によって、P型半導体層7及びN型半導体層11のpn接合の実質的な幅、すなわち内部電界領域を拡張することができる。これによって、太陽光Lの受光によってI型半導体層9内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、それぞれP型半導体層7及びN型半導体層11に移動されるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0062】
次に、上記した太陽電池モジュール1の製造方法について、図3〜図13に従って説明する。
まず、太陽電池素子2を形成するために、支持棒3の外周面3aに反射電極5を形成する反射電極形成工程を行う。すなわち、図3に示すように、支持棒3の外周面3a全体を、反射電極形成液21の中に浸漬する。本実施形態の反射電極形成液21は、上記した反射電極材料の中の銀のナノ微粒子を有機系分散媒に分散させた液状体であって、後述する反射電極液状膜21Lを形成しやすくするために、好ましくは支持棒3の外周面3aに対する後退接触角θ1が45°以下となる液状体である。
【0063】
支持棒3を反射電極形成液21の中に浸漬すると、浸漬した支持棒3を徐々に引き出し、その外周面3aの全体に、反射電極形成液21からなる反射電極液状膜21Lを形成する。この際、反射電極液状膜21Lの膜厚は、後退接触角θ1に支配されており、後退接触角θ1を一定に保持して支持棒3を反射電極形成液21から引き出すことによって、支持棒3の外周面3aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、引き出す支持棒3が反射電極形成液21から離間するとき、反射電極形成液21側の支持棒3の端面(底面3b)には、外周面3aに比べて、不均一な膜厚の反射電極液状膜21Lが形成されやすい。そのため、本実施形態では、底面3bに形成した反射電極液状膜21Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、例えば底面3bを半球面状の曲面に形成して、底面3bに均一な反射電極液状膜21Lを形成する構成にしてもよい。
【0064】
反射電極液状膜21Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬送し、反射電極形成液21に対応した所定の乾燥温度及び焼成温度まで昇温して、反射電極液状膜21Lを乾燥・焼成する。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、支持棒3の外周面3aの全体に、均一な膜厚の反射電極5を形成することができる。
【0065】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成によって形成した反射電極5の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成を繰り返して、反射電極5を厚膜化する構成にしてもよい。また、反射電極形成液21の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ1を低下させ、反射電極液状膜21Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0066】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥・焼成によって形成した反射電極5の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、支持棒3の外周面3aの全体に加圧エアーを吹き付けて、反射電極液状膜21Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、反射電極形成液21の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ1を増加させ、反射電極液状膜21Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0067】
反射電極形成工程を終了すると、反射電極5の外周面5a上にP型半導体層7を形成するP型半導体層形成工程を行う。すなわち、図4に示すように、支持棒3に形成された反射電極5の外周面5a全体を、P型半導体層形成液23の中に浸漬する。本実施形態のP型半導体層形成液23は、上記したP型半導体層材料のデカボランとシクロペンタシラン混合物に波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するP型半導体層液状膜23Lを形成しやすくするために、好ましくは反射電極5の外周面5aに対する後退接触角θ2が45°以下となる液状体である。また、このP型半導体層形成液23はホウ素の濃度勾配がないため、液状体中にホウ素が略均一に分布されるようになっている。なお、P型半導体層形成液23は、上記したP型半導体層形成材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0068】
反射電極5の外周面5aをP型半導体層形成液23の中に浸漬すると、浸漬した外周面5aを徐々に引き出し、その外周面5aの全体に、P型半導体層形成液23からなるP型半導体層液状膜23Lを形成する。この際、P型半導体層液状膜23Lの膜厚は、後退接触角θ2に支配されており、後退接触角θ2を一定に保持して支持棒3をP型半導体層形成液23から引き出すことによって、反射電極5の外周面5aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるP型半導体層液状膜23Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なP型半導体層液状膜23Lを形成する構成にしてもよい。
【0069】
P型半導体層液状膜23Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、P型半導体層形成液23に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、P型半導体層液状膜23Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において550℃で熱分解を行えば、P型半導体層7を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、反射電極5の外周面5aの全体に、均一な膜厚のP型半導体層7を形成することができる。このP型半導体層7は、ホウ素が略均一に分布されているP型半導体層形成液23から形成されるため、ホウ素の濃度勾配がなく、シリコン層中にホウ素が略均一に分布されるようになっている。
【0070】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したP型半導体層7の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、P型半導体層7を厚膜化する構成にしてもよい。また、P型半導体層形成液23の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ2を低下させ、P型半導体層液状膜23Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0071】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したP型半導体層7の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、P型半導体層7の外周面7aの全体に加圧エアーを吹き付けて、P型半導体層液状膜23Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、P型半導体層形成液23の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ2を低下させ、P型半導体層液状膜23Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0072】
P型半導体層形成工程を終了すると、P型半導体層7の外周面7a上にI型半導体層9を形成するI型半導体層形成工程を行う。すなわち、図5に示すように、支持棒3に形成されたP型半導体層7の外周面7a全体を、I型半導体層形成液25の中に浸漬する。本実施形態のI型半導体層形成液25は、シクロペンタシランを波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するI型半導体層液状膜25Lを形成しやすくするために、好ましくはP型半導体層7の外周面7aに対する後退接触角θ3が45°以下となる液状体である。なお、I型半導体層形成液25は、上記したI型半導体層材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0073】
P型半導体層7の外周面7aをI型半導体層形成液25の中に浸漬すると、浸漬した外周面7aを徐々に引き出し、その外周面7aの全体に、I型半導体層形成液25からなるI型半導体層液状膜25Lを形成する。この際、I型半導体層液状膜25Lの膜厚は、後退接触角θ3に支配されており、後退接触角θ3を一定に保持して支持棒3をI型半導体層形成液25から引き出すことによって、P型半導体層7の外周面7aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるI型半導体層液状膜25Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なI型半導体層液状膜25Lを形成する構成にしてもよい。
【0074】
I型半導体層液状膜25Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、I型半導体層形成液25に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、I型半導体層液状膜25Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において550℃で熱分解を行えば、I型半導体層を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、P型半導体層7の外周面7aの全体に、均一な膜厚のI型半導体層9を形成することができる。
【0075】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したI型半導体層9の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、I型半導体層9を厚膜化する構成にしてもよい。また、I型半導体層形成液25の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ3を低下させ、I型半導体層液状膜25Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0076】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したI型半導体層9の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、I型半導体層9の外周面9aの全体に加圧エアーを吹き付けて、I型半導体層液状膜25Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、I型半導体層形成液25の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ3を低下させ、I型半導体層液状膜25Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0077】
I型半導体層形成工程を終了すると、I型半導体層9の外周面9a上にN型半導体層11を形成するN型半導体層形成工程を行う。すなわち、図6に示すように、支持棒3に形成されたI型半導体層9の外周面9a全体を、N型半導体層形成液27の中に浸漬する。本実施形態のN型半導体層形成液27は、黄リンとシクロペンタシラン混合物に波長308nmの紫外線を20mW/cm2で5分間照射した後、トルエンに溶解させた液状体であって、後述するN型半導体層液状膜27Lを形成しやすくするために、好ましくはI型半導体層9の外周面9aに対する後退接触角θ4が45°以下となる液状体である。また、このN型半導体層形成液27はリンの濃度勾配がないため、液状体中にリンが略均一に分布されるようになっている。なお、N型半導体層形成液27は、上記したN型半導体層材料に対応した有機系又は無機系の溶媒あるいは分散媒からなる液状体であってもよい。
【0078】
I型半導体層9の外周面9aをN型半導体層形成液27の中に浸漬すると、浸漬した外周面9aを徐々に引き出し、その外周面9aの全体に、N型半導体層形成液27からなるN型半導体層液状膜27Lを形成する。この際、N型半導体層液状膜27Lの膜厚は、後退接触角θ4に支配されており、後退接触角θ4を一定に保持して支持棒3をN型半導体層形成液27から引き出すことによって、I型半導体層9の外周面9aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同様に、底面3b側に形成されるN型半導体層液状膜27Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一なN型半導体層液状膜27Lを形成する構成にしてもよい。
【0079】
N型半導体層液状膜27Lを形成すると、支持棒3を乾燥・焼成炉に搬入し、N型半導体層形成液27に対応した所定の乾燥温度の220℃まで昇温して、N型半導体層液状膜27Lを乾燥する。乾燥した後、水素3%含有アルゴン中において450℃で熱分解を行えば、N型半導体層11を形成することができる。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、I型半導体層9の外周面9aの全体に、均一な膜厚のN型半導体層11を形成することができる。このN型半導体層11は、リンが略均一に分布されているN型半導体層形成液27から形成されるため、リンの濃度勾配がなく、シリコン層中にリンが略均一に分布されるようになっている。
【0080】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したN型半導体層11の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、N型半導体層11を厚膜化する構成にしてもよい。また、N型半導体層形成液27の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ4を低下させ、N型半導体層液状膜27Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0081】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成したN型半導体層11の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、N型半導体層11の外周面9aの全体に加圧エアーを吹き付けて、N型半導体層液状膜27Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、N型半導体層形成液27の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ4を低下させ、N型半導体層液状膜27Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0082】
N型半導体層形成工程を終了すると、N型半導体層11の外周面11a上に透明電極13を形成する透明電極形成工程を行う。すなわち、図7に示すように、支持棒3に形成されたN型半導体層11の外周面11a全体を、透明電極形成液29の中に浸漬する。本実施形態の透明電極形成液29は、上記した透明電極形成材料のITOのナノ微粒子を有機系分散媒に分散させた液状体であって、後述する透明電極液状膜29Lを形成しやすくするために、好ましくはN型半導体層11の外周面11aに対する後退接触角θ5が45°以下となる液状体である。
【0083】
N型半導体層11の外周面11aを透明電極形成液29の中に浸漬すると、浸漬した外周面11aを徐々に引き出し、その外周面11aの全体に、透明電極形成液29からなる透明電極液状膜29Lを形成する。この際、透明電極液状膜29Lの膜厚は、後退接触角θ5に支配されており、後退接触角θ5を一定に保持して支持棒3を透明電極形成液29から引き出すことによって、N型半導体層11の外周面11aの略全体にわたり均一な膜厚で形成されるようになる。なお、本実施形態では、反射電極形成工程と同じく、底面3b側に形成される透明電極液状膜29Lを払拭して除去する構成にしているが、これに限らず、底面3bの形状を半球面状の曲面に変更して、底面3bに均一な透明電極液状膜29Lを形成する構成にしてもよい。
【0084】
透明電極液状膜29Lを形成すると、支持棒3を乾燥炉に搬送し、透明電極形成液29に対応した所定の乾燥温度まで昇温して、透明電極液状膜29Lを乾燥する。これによって、支持棒3の外形や長さ、形状の変更に対応して、N型半導体層11の外周面11aの全体に、均一な膜厚の透明電極13を形成することができる。
【0085】
なお、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成した透明電極13の膜厚が、所定の膜厚に満たない場合には、再度上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥を繰り返して、透明電極13を厚膜化する構成にしてもよい。また、透明電極形成液29の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ5を低下させ、透明電極液状膜29Lを厚膜化する構成にしてもよい。
【0086】
反対に、上記した支持棒3の浸漬、引き出し、乾燥によって形成した透明電極13の膜厚が、所定の膜厚を超える場合には、支持棒3を引き出した後に、透明電極13の外周面13aの全体に加圧エアーを吹き付けて、透明電極液状膜29Lの膜厚を薄くする構成にしてもよい。また、透明電極形成液29の溶媒あるいは分散媒を変更して後退接触角θ5を低下させ、透明電極液状膜29Lを薄膜化する構成にしてもよい。
【0087】
透明電極形成工程を終了すると、透明電極13の外周面13a上に反射層15を形成する反射層形成工程を行う。すなわち、図8に示すように、透明電極13を形成した支持棒3の所定箇所に、蒸着装置30を用いて反射層形成材料を蒸着する。詳しくは、透明電極13を形成した支持棒3を、蒸着装置30と対向するように蒸着装置30の上方に配置する。また、支持棒3には回転装置(図示しない)が取り付けられており、その回転装置は、回転軸線LAを中心にして支持棒3を回転させる。そして、支持棒3を回転させながら、透明電極13の外周面13aに対して、蒸着装置30から放出される反射層形成材料を蒸着する。なお、本実施形態では、透明電極13の外周面13aに略半円筒状のシャドウマスク31を形成することによって、透明電極13の外周面13aに略半円筒状の反射層15を形成するようにした。従って、このシャドウマスク31の形状を変更することによって、反射層15の形状を容易に変更することができる。
【0088】
そして、形成された太陽電池素子2を、図1に示すように隣接する太陽電池素子2同士の反射層15が接触されるように列設して、太陽電池モジュール1を形成する。
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
【0089】
(1)本実施形態によれば、円柱状の太陽電池素子2をY方向に列設して太陽電池モジュール1を形成した。これによって、各太陽電池素子2の太陽と対向する受光表面積が、平板状の太陽電池素子の受光表面積に比べてπ/2倍、すなわち約1.5倍増大されるため、太陽電池モジュール1の太陽と対向する受光表面積を、平板状の太陽電池モジュールの受光表面積に比べて約1.5倍に増大させることができる。その結果、太陽電池モジュール1の発電電力を、平板状の太陽電池モジュールの発電電力よりも増大させることができる。
【0090】
また、図1に示すように、太陽電池素子2の受光面2aは円弧状になっているため、太陽電池モジュール1を固定した状態で、太陽の位置が変化しても、太陽電池モジュール1全体として見ると、太陽光Lの入射角度は略一定になる。そのため、太陽電池モジュール1の光電変換効率を略一定に維持することができ、安定した電力を発電することができる。
【0091】
(2)本実施形態によれば、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成するようにした。これによって、図2に示すように、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して反射層15に入射する太陽光Lを、再び太陽電池素子2内に反射させることができる。従って、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子2の下面2b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子2の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに反射層15を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0092】
(3)本実施形態によれば、光電変換層をP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11からなるpin接合構造とした。そのため、I型半導体層9によって、P型半導体層7及びN型半導体層11のpn接合の実質的な幅、すなわち内部電界領域を拡張することができる。従って、太陽光Lの受光によりI型半導体層9内に生じる電子−正孔対が、その内部電界領域によって分離されて再結合されることなく、それぞれN型半導体層11及びP型半導体層7に移動することができるため、広範な光スペクトルを利用した高効率な発電を行うことができる。
【0093】
(4)本実施形態によれば、透明電極13の外周面13aに略半円筒状のシャドウマスク31を形成して、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成するようにした。従って、透明電極13の外周面13aをシャドウマスク31で覆うことによって、所望の形状の反射層15を容易に形成することができる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9及び図10に従って説明する。図9は、太陽電池モジュール40を説明するための概略斜視図であって、図10は、光電変換装置としての太陽電池装置42を説明するための断面図である。なお、第2実施形態でも、上記第1実施形態で説明した太陽電池素子2と略同様の構造を有する太陽電池素子46を使用するため、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
図1に示すように、太陽電池モジュール40は、複数の太陽電池装置42が、Y方向に列設されて形成されている。また、太陽光Lが、太陽電池モジュール40に対して反Z矢印方向に入射するようになっている。
【0096】
太陽電池装置42は、四角柱状であって光反射性を有する反射台としての支持台44と、その支持台44に固定された太陽電池素子46とから構成されている。支持台44の上面44aには、断面放物線状の凹部48が形成されるとともに、その凹部48の先端部48a及び基端部48bには、平板状の固定板49(凹部48の基端部48b側は図示しない)の基端49aがそれぞれ固着されている。
【0097】
各固定板49は、絶縁性樹脂によって形成されるとともに、太陽電池素子46の半径よりも長く形成されている。また、各固定板49は、その先端49bが太陽電池素子46の支持棒3の略中心に固着されるようになっている。この両固定板49によって、太陽電池素子46の両端が支持固定されて、太陽電池素子46を、支持台44の凹部48の上方に配置固定することができる。
【0098】
なお、本実施形態の太陽電池素子46は、図10に示すように、支持台44の凹部48を形成する放物線Bの焦点fに光電変換層のI型半導体層9が配置されるように、両固定板49によって固定されている。また、両固定板49の長さを変更することによって、放物線Bからの太陽電池素子2(I型半導体層9)の位置を容易に変更することができる。
【0099】
Z方向と平行に入射される太陽光Lは、太陽電池素子46の上面(受光面46a)から太陽電池素子46内部に入射されて、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7を透過して反射電極5によって反射されるようになっている。反射された太陽光Lは、再びP型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を透過して太陽電池素子46外部に出射されるようになっている。これによって、受光面46a側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを入射させることができる。
【0100】
また、Z方向と平行に入射される太陽光Lは、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して支持台44の凹部48に入射する、あるいは直接凹部48に入射するようになっている。そして、凹部48は、入射した太陽光Lを放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射するようになっている。これによって、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子46(太陽電池装置42)の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台44を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0101】
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、太陽電池素子46を固定支持する支持台44の上面44aに断面放物線状の凹部48を形成した。また、その凹部48を形成する放物線Bの焦点fに、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層のI型半導体層9を配置した。これによって、図10に示すように、透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7等を透過して支持台44の凹部48にZ方向と平行に入射する太陽光Lを、放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射させることができる。また、直接凹部48にZ方向と平行に入射する太陽光Lを、放物線Bの焦点f(I型半導体層9)に向かって反射させることができる。従って、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7,I型半導体層9及びN型半導体層11)に太陽光Lを効率的に入射させることができる。すなわち、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層を、受光面として利用することができ、円筒状の光電変換層全てに太陽光Lを入射させることができるため、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができる。その結果、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台44を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0102】
なお、上記各実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに断面略半円状の反射層15を形成した。これに限らず、例えば図11に示すように、N型半導体層11の外周面11aに形成される透明電極13を省略して、N型半導体層11の外周面11aに断面略半円状の反射層15を形成するようにしてもよい。なお、この場合、上記第1実施形態の透明電極13が担っていた光電変換層からの正孔の収集の機能も、反射層15が担うようになる。
【0103】
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに形成した反射層15を断面略半円状の形状に具体化したが、この形状に制限されるものではない。透明電極13の外周面13aのうち、太陽電池素子2の下面2b側の一部に反射層15が形成されていればよい。従って、反射層15は、半円よりも小さく形成されてもよく、半円よりも大きく形成されてもよい。
【0104】
・上記第1実施形態では、透明電極13の外周面13aに、蒸着法によって反射層形成材料を蒸着して反射層15を形成した。これを、スパッタ法によって反射層形成材料を、透明電極13の外周面13aにスパッタして反射層15を形成するようにしてもよい。また、図12に示すように、基台としてのバンク50の断面略半円状の凹部51に反射層15を形成し、その反射層15が形成されたバンク50の凹部51に、透明電極13を形成した支持棒3を嵌合して、透明電極13の外周面13aに反射層15を貼り合わせて太陽電池素子2を形成するようにしてもよい。また、透明電極13の外周面13aの一部を反射層形成材料を含む反射層形成液に浸漬して引き出し、透明電極13の外周面13aの一部に堆積した反射層形成液の液状膜を乾燥させて反射層15を形成するようにしてもよい。
【0105】
・上記第2実施形態では、支持台44の上面44aに断面放物線状の凹部48を形成するようにした。これに限らず、例えば図13に示すように、支持台52の上面52aに断面円弧状の凹部54を形成するようにしてもよい。この凹部54によって、その凹部54に入射した太陽光Lを、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層(P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11)に反射させることができる。従って、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができるため、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台52を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。なお、この場合、凹部54の曲率は、太陽電池素子46の曲率と同一にすることが好ましい。
【0106】
あるいは、図14に示す支持台56のように、凹部48を形成しなくてもよい。これによっても、支持台56に入射する太陽光Lを、太陽電池素子46の下面46b側に形成された光電変換層に反射させることができる。従って、太陽電池素子46の有効面積を増大させることができるため、従来の太陽電池素子に比べて発電電力を増大させることができ、さらに支持台56を備えていない円筒状の太陽電池素子に比べても発電電力を増大させることができる。
【0107】
・上記各実施形態では、反射電極5の外周面5aに、P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11の順に積層するようにした。これに限らず、反射電極5の外周面5aに、N型半導体層11、I型半導体層9及びP型半導体層7の順に積層するようにしてもよい。なお、この場合のP型半導体層7の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。一方、N型半導体層11の膜厚は、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがより好ましい。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であるのが好ましく、1010〜1017atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0108】
・上記各実施形態では、反射電極5の外周面5aに、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を順に積層するようにした。これに限らず、例えばN型半導体層11を形成した後に、P型半導体層形成工程、I型半導体層形成工程及びN型半導体層形成工程を繰り返し実行し、光電変換層(P型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11)を多層に積層する、いわゆるタンデム構造にしてもよい。これらの場合、特に、禁制帯幅の異なる複数の光電変換層を積層することによって、太陽光Lの入射側の光電変換層から順に短波長の光を利用して発電し、より長波長の光はより内周の光電変換層で利用することができる。その結果、太陽光Lの各波長域の光エネルギー、特に長波長までの光エネルギーを電気エネルギーに変換することができるため、上記実施形態の単結合の場合に比べてより高い光電変換効率を得ることができる。
【0109】
・上記各実施形態では、光電変換層をP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11からなるpin接合構造としたが、これに限らず、例えばI型半導体層9を省略してP型半導体層7及びN型半導体層11からなるpn接合構造としてもよい。なお、この場合のP型半導体層7の膜厚は、0.1μm〜50μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがより好ましい。また、P型半導体層7としてホウ素を含有する化合物の添加量は、ホウ素原子として換算した場合に、1010〜1018atom/cm3程度であるのが好ましく、1010〜1017atom/cm3程度であるのがより好ましい。一方、N型半導体層11の膜厚は、0.01μm〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.05μm〜0.3μm程度であるのがより好ましい。また、N型半導体層11としてリンを含有する化合物の添加量は、リン原子として換算した場合に、1019〜1021atom/cm3程度であるのが好ましく、1020〜1021atom/cm3程度であるのがより好ましい。
【0110】
・上記各実施形態では、支持棒3を断面円形状として充実構造としたが、これに限らず、例えば支持棒3を断面円筒状として中空構造としてもよい。
・上記各実施形態では、支持棒3の断面及び外形を、それぞれ断面が円形状であって、外形が棒状に具体化した。これに限らず、断面形状が楕円形状であってもよい。また、断面形状が多角形状や一部に平面を有する形状であってもよい。これによって、例えば太陽電池素子2,46を列設させる場合に、隣接する太陽電池素子2,46の接触面積が広くなるため、太陽電池素子2,46を配置しやすくなる。あるいは、外形が螺旋形に曲折した形状であってもよい。
【0111】
・上記第1実施形態における反射層15を、光反射性を有する導電性材料から形成するようにしたが、光反射性を有する材料であれば特に制限されない。
・上記第2実施形態における支持台44を、光反射性を有する導電性材料から形成するようにしたが、光反射性を有する材料であれば特に制限されない。
【0112】
・上記各実施形態では、支持棒3を絶縁材料によって構成したが、これに限らず、支持棒3を導電性材料、例えば反射電極材料によって構成してもよい。これによれば、支持棒3の外周面3aに、別途反射電極5を形成する必要がなく、反射電極形成工程を省略することができ、太陽電池素子2,46の生産性を向上することができる。また、部品点数も減らすことができることから、太陽電池素子2,46を小型化することができる。
【0113】
・上記各実施形態では、支持棒3の外周面3aに光反射性を有する反射電極5を形成するようにしたが、これに限らず、例えば反射電極5に代えて光透過性を有する電極を支持棒3の外周面3aに形成するようにしてもよい。
【0114】
・上記各実施形態では、棒状の支持棒3を、各種形成液(反射電極形成液21、P型半導体層形成液23、I型半導体層形成液25、N型半導体層形成液27及び透明電極形成液29)に浸漬して引き出すことによって、支持棒3の外周面3aに各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを形成するようにした。そして、その各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを乾燥・焼成して、支持棒3の外周面3aに、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を順に積層するようにした。これに限らず、例えば管状のチューブに各種形成液21,23,25,27,29を導入・導出して、管状のチューブの内側面に各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを形成してもよい。そして、その各種液状膜21L,23L,25L,27L,29Lを乾燥・焼成することによって、チューブの内側面に透明電極13、N型半導体層11、I型半導体層9、P型半導体層7及び反射電極5を順に形成するようにしてもよい。
【0115】
・上記各実施形態では、反射電極5、P型半導体層7、I型半導体層9、N型半導体層11及び透明電極13を液相プロセスによって形成する構成にしたが、これに限らず、蒸着等の気相プロセスによって形成する構成にしてもよい。
【0116】
・上記各実施形態におけるP型半導体層7、I型半導体層9及びN型半導体層11を形成するときの乾燥温度及び焼成温度に特に制限はない。
・上記各実施形態では、P型半導体層材料、I型半導体層材料及びN型半導体層材料をシラン化合物から構成したが、これに限らず、例えばシリコン及びカーボンからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。また、シリコン及びゲルマニウムからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。あるいは、シリコン、カーボン及びゲルマニウムからなる高分子化合物から構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態における太陽電池モジュールを説明するための概略斜視図。
【図2】同じく、太陽電池素子を説明するための断面図。
【図3】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図4】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図5】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図6】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図7】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図8】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための斜視図。
【図9】第2実施形態における太陽電池モジュールを説明するための概略斜視図。
【図10】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【図11】別例における太陽電池素子を説明するための断面図。
【図12】同じく、太陽電池素子の製造方法を説明するための断面図。
【図13】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【図14】同じく、太陽電池装置を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0118】
B…放物線、f…焦点、L…太陽光、1,40…光電変換モジュールとしての太陽電池モジュール、2,46…光電変換素子としての太陽電池素子、2a,46a…受光面、2b,46b…下面、3…支持棒、5…第1電極としての反射電極、7…第1導電型半導体層としてのP型半導体層、9…真性半導体層としてのI型半導体層、11…第2導電型半導体層としてのN型半導体層、13…第2電極としての透明電極、15…反射層、31…シャドウマスク、42…光電変換装置としての太陽電池装置、44,52,56…反射台としての支持台、48,54…凹部、49…固定板、50…基台としてのバンク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の光電変換層と、
前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、
前記光電変換層の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
管状の光電変換層と、
前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、
前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極と、
前記第2電極の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、円筒状であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
請求項3に記載の光電変換素子において、
前記反射層は、断面半円状に形成されたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極とを備えた光電変換素子と、
前記光電変換素子の少なくとも一部の面に対向して設置されて、光反射性を有する反射台とを備えたことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換装置において、
前記光電変換素子の前記一部の面は第1の曲率を有し、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には側面が弧状の凹部が含まれ、前記凹部が前記第1の曲率と異なる第2の曲率を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光電変換装置において、
前記光電変換素子の前記一部の面が第1の曲率を有し、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、前記光電変換素子の前記第1の曲率と同一の曲率を有する、断面が弧状の凹部が含まれることを特徴とする光電変換装置。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の光電変換装置において、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、断面放物線状の凹部が形成されて、前記光電変換素子の光電変換層の一部を前記放物線の焦点に配置したことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換装置。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換装置。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光電変換素子を列設したことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれか1つに記載の光電変換装置を列設したことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項1】
管状の光電変換層と、
前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、
前記光電変換層の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
管状の光電変換層と、
前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、
前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極と、
前記第2電極の外側面の少なくとも一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、円筒状であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
請求項3に記載の光電変換素子において、
前記反射層は、断面半円状に形成されたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電変換素子において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
管状の光電変換層と、前記光電変換層の内側面に形成された第1電極と、前記光電変換層の外側面に形成された管状の第2電極とを備えた光電変換素子と、
前記光電変換素子の少なくとも一部の面に対向して設置されて、光反射性を有する反射台とを備えたことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換装置において、
前記光電変換素子の前記一部の面は第1の曲率を有し、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には側面が弧状の凹部が含まれ、前記凹部が前記第1の曲率と異なる第2の曲率を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光電変換装置において、
前記光電変換素子の前記一部の面が第1の曲率を有し、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、前記光電変換素子の前記第1の曲率と同一の曲率を有する、断面が弧状の凹部が含まれることを特徴とする光電変換装置。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の光電変換装置において、
前記反射台の前記光電変換素子の前記一部の面と対向する一側面には、断面放物線状の凹部が形成されて、前記光電変換素子の光電変換層の一部を前記放物線の焦点に配置したことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記第1電極は、光反射性を有する金属電極であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換装置。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1つに記載の光電変換装置において、
前記光電変換層は、前記第1電極の外側面に形成された第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の外側面に形成された真性半導体層と、前記真性半導体層の外側面に形成された第2導電型半導体層とを含むことを特徴とする光電変換装置。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光電変換素子を列設したことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれか1つに記載の光電変換装置を列設したことを特徴とする光電変換モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−250858(P2007−250858A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72663(P2006−72663)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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