説明

光電変換素子、固体撮像素子、撮像装置、光電変換素子の製造方法

【課題】有機材料を含む受光層を有する光電変換素子において、受光層の材料の選択幅を狭めることなく、光電変換素子の耐熱性を向上させること。
【解決手段】基板101上に酸化膜で構成された絶縁膜102が形成され、当該絶縁膜102上に並べて形成された複数の画素電極104と、複数の画素電極104の上にこれらを覆って形成された有機材料を含む受光層107と、受光層107上に形成された対向電極108とを有する固体撮像素子であって、画素電極104が、酸化窒化チタンで構成され、受光層107を形成する直前における画素電極104の組成が、(1)画素電極104全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上、又は、(2)画素電極104の基板101側から10nmまでの範囲或いは画素電極104の基板101側から画素電極104厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上の条件を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、固体撮像素子、撮像装置、光電変換素子の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板内にフォトダイオードを有する一般的な固体撮像素子は、画素サイズが微細化の限界に達しており、感度等の性能向上が難しくなっている。そこで、半導体基板上方に光電変換層を設けて開口率100%を達成できるようにした高感度の積層型固体撮像素子が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたような積層型固体撮像素子は、半導体基板上方に複数の画素電極が配列形成され、複数の画素電極の上方に有機材料を含む受光層(光電変換層を少なくとも含む)が形成され、この受光層の上方に対向電極が形成された構成である。このような積層型固体撮像素子は、対向電極にバイアス電圧を印加することで受光層に電界を加え、受光層内で発生した電荷を画素電極に移動させ、画素電極に接続された読み出し回路によって当該電荷に応じた信号を読み出す。
【0004】
積層型固体撮像素子では、画素電極、受光層、及び対向電極を形成後、その上方に、例えば、外気(水、酸素)を遮断するための保護膜、カラーフィルタやその他の機能膜等を形成する場合がある。そのような場合、例えば、カラーフィルタであれば、その薬剤の塗布とともに、硬化のために一般には200℃程度の温度で加熱される加熱工程が受光層に対してなされる。
【0005】
また、基板回路とパッケージを電気接続するためのワイヤーボンディングの際や、パッケージへのチップのダイボンディング、パッケージのIC基板への接続のための半田リフローなどの際も、加熱工程が行われる。さらに、上記ワイヤーボンディングのためには、チップ周辺などにPAD開口部を設ける必要があり、その際、レジストパターン形成やエッチングが行われ、その工程毎に、受光層が形成された基板は加熱工程を経る事となる。
【0006】
以上のように、有機材料を含む受光層を用いた固体撮像素子を作製しようとした場合、通常のシリコンデバイスで用いられている加工方法を流用すると、高温の加熱工程が必要となり、受光層は、これらの加熱工程に耐性を有する必要がある。
【0007】
受光層の耐熱性を向上させる手法としては、熱変化が少ない材料(例えばガラス転移点Tgが高い材料)を用いる事が一般に行われている。しかし、受光層には、耐熱性だけでなく、高光電変換効率、低暗電流等の特性も求められるため、これらの特性と耐熱性とを満足できる材料を選択する必要がある。したがって、受光層の材料の選択の幅が狭まってしまう。
【0008】
上述したように、受光層の耐熱性を向上させる手法として受光層そのものを改善する手法は多く提案されているが、受光層以外の構成要素に着目して耐熱性を向上させたものは知られていない。
【0009】
なお、固体撮像素子に限らず、受光層を用いた太陽電池等の他のデバイスであっても、受光層形成後に加熱工程があるものであれば、このような耐熱性の課題が同様に発生する。
【0010】
特許文献2〜4には、ガラス基板上にITOをスパッタで成膜し、これをパターニングして画素電極を形成後、基板を250℃で加熱乾燥させ、その後、受光層と対向電極を形成する光電変換素子の製造方法が記載されている。
【0011】
しかし、この製造方法はITO画素電極を乾燥のために250℃で加熱しているだけであり、耐熱性向上を目的としたものではない。また、耐熱性を向上させるための具体的な構成については記載されていない。
【0012】
また、特許文献5,6には、画素電極をCVD法で形成することが記載されている。しかし、耐熱性を向上させるための具体的な構成については記載されていない。
【0013】
また、特許文献7には、画素電極を形成後230℃以上で加熱する製造方法が記載されている。しかし、耐熱性を向上させるための具体的な構成については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−263178号公報
【特許文献2】特開2005−085933号公報
【特許文献3】特開2008−072435号公報
【特許文献4】特開2008−072589号公報
【特許文献5】特開2009−071057号公報
【特許文献6】特開平11−326038号公報
【特許文献7】特開2001−007367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機材料を含む受光層を有する光電変換素子であって、受光層の材料に関わらずに耐熱性を向上させられる光電変換素子を提供することを目的とする。また、この光電変換素子を備える固体撮像素子、この固体撮像素子を備える撮像装置、この光電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光電変換素子は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上の条件を満たすものである。
【0017】
本発明の光電変換素子は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすものである。
【0018】
本発明の固体撮像素子は、前記光電変換素子と、前記受光層内で発生し前記第一の電極で捕集された電荷の電荷量に応じた信号を読み出す前記基板に形成された信号読み出し回路とを備えるものである。
【0019】
本発明の撮像装置は、前記固体撮像素子を備えるものである。
【0020】
本発明の光電変換素子の製造方法は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上の条件を満たすように、前記第一の電極を形成するものである。
【0021】
本発明の光電変換素子の製造方法は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすように前記第一の電極を形成するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、有機材料を含む受光層を有する光電変換素子であって、受光層の材料に関わらずに耐熱性を向上させられる光電変換素子を提供することができる。また、この光電変換素子を備える固体撮像素子、この固体撮像素子を備える撮像装置、この光電変換素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための固体撮像素子の概略構成を示す断面模式図
【図2】図1に示した固体撮像素子における受光層の好ましい例を示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
発明者らは、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された画素電極と、前記画素電極の上形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された対向電極とを有する光電変換素子において、耐熱性を向上させる検討を行う中で、画素電極が酸化窒化チタン(TiON)で構成されている場合、画素電極中の酸素及び窒素の少なくとも一方のチタンに対する割合によっては、同じ受光層を用いた場合でも、光電変換素子の耐熱性が異なることを見出した。
【0026】
具体的には、受光層を形成する直前における画素電極の組成が、(1)画素電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上(好ましくは85atm%以上、更に好ましくは100atm%以上)、又は、(2)画素電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは画素電極の前記基板側からの全体厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上(好ましくは60atm%以上、更に好ましくは70atm%以上)、の条件を満たすことで、その上に形成される受光層の耐熱性を向上させることができる。なお、画素電極内の酸素比率が多すぎると導電性が低下するため、(1)、(2)いずれの条件においても、酸素量はチタンに対して150atm%以下であることが好ましい。
【0027】
または、受光層を形成する直前における画素電極の組成が、(3)画素電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下(好ましくは65atm%以下、更に好ましくは50atm%以下)、又は、(4)画素電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは画素電極の前記基板側からの全体厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下(好ましくは80atm%以下、更に好ましくは50atm%以下)、の条件を満たすことで、その上に形成される受光層の耐熱性を向上させることができる。
【0028】
本規定により、耐熱性が向上する要因は明らかではないが、上記規定と異なるTiONが形成された基板に対し受光層を形成すると、後に光電変換素子に対して行われる加熱工程時に、受光層に作用するような画素電極の変質が生じ、その作用により、性能を劣化させると考えられる。
【0029】
なお、後に光電変換素子に対して行われる加熱工程とは、対向電極の形成後に行われる、カラーフィルタの硬化、ワイヤーボンディング、ダイボンディング、半田リフロー、PAD開口の形成等を行う際に行われる高温加熱処理(一般的には200℃以上の加熱処理)のことを示す。
【0030】
後に光電変換素子に対して行われる加熱工程によって画素電極下にある酸化膜(例えばSiO2膜)から酸素が画素電極に混入し、その結果、画素電極から極微量のガスが湧き出すなどして受光層に作用し、性能を劣化させる過程が有りうると考えられる。
【0031】
揮発するガスの種類は定かではないが、画素電極中の窒素量を一定量以下に制御することにより受光層の性能劣化を抑制できること、画素電極を加熱する前と加熱した後で、チタンに対する窒素比率が減少していることから、窒素を含むガスが揮発していると推定される。このため、画素電極中の窒素量は一定量以下に抑えることが好ましいと考えられ、したがって、上記(3)の条件を満たしていることが有効と考えられる。
【0032】
また、後に光電変換素子に対して行われる加熱工程時に伴う窒素含ガス成分の揮発は、基板表面の酸化膜からの酸素が混入することに伴い生じると考えられる。このため、画素電極全体に限らず基板表面付近の窒素比率が少ない態様であってもよい。したがって、上記(3)の条件の代わりに、上記(4)の条件を満たしていることも有効と考えられる。
【0033】
また、後に光電変換素子に対して行われる加熱工程時に伴う窒素含ガス成分の揮発は、基板表面の酸化膜からの酸素が混入することに伴い生じると考えられる。このため、加熱工程の後に画素電極に酸素が多く侵入しないように、受光層形成直前における画素電極の組成が、上記(1)の条件を満たしていることが有効と考えられる。
【0034】
また、酸素の侵入は、基板表面の酸化膜から画素電極に混入するケースがあるため、画素電極全体に限らず基板表面付近の酸素比率が多い態様であってもよい。したがって、上記(1)の条件の代わりに、上記(2)の条件を満たしていることも有効と考えられる。
【0035】
もちろん、上記(1)又は(2)の条件と、上記(3)又は(4)の条件との両方を満たしていることでも、酸素の混入とガスの揮発を効果的に防げると考えられるため、耐熱性向上の上で好ましい。
【0036】
上記(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たす方法としては、次のような方法がある。
【0037】
まず、酸化膜(例えば酸化珪素)をシリコンやガラス等の基板上に形成後、その上に酸化窒化チタンをスパッタにより成膜し、この酸化窒化チタン膜をフォトリソ及びエッチングによってパターニングして複数の画素電極を形成する。次に、複数の画素電極を加熱した後、複数の画素電極の上に受光層、対向電極を順に形成して光電変換素子を完成させる。
【0038】
複数の画素電極を加熱する際には、対向電極の形成後に光電変換素子に対して行われる基板を加熱する加熱工程のうち最も加熱温度が高い工程における当該加熱温度より高い温度(好ましくは50℃以上高い温度、更に好ましくは100℃以上高い温度)で加熱を行うことで、(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすことができる。なお、複数の画素電極を加熱する際の温度は、270℃以上であることが好ましい。800℃を超える温度では、加熱工程環境中に酸素が存在している場合に、この酸素と画素電極とが反応して画素電極が絶縁体になってしまうため、複数の画素電極を加熱する際の温度は、800℃以下とすることが好ましい。
【0039】
このように、画素電極を形成後、受光層を形成する前に、後の加熱工程における加熱温度よりも高い温度(後の加熱工程で画素電極の組成がほぼ変化しなくなる程度の温度)で加熱を行うことで、この加熱によって、画素電極には十分な量の酸素が混入し、窒素が十分に揮発すると考えられ、この結果、耐熱性を向上させられる条件(1)〜(4)の少なくとも1つを満たすことができる。
【0040】
(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすことで、対向電極形成後に加熱工程が行われた場合でも、画素電極には酸素の混入がそれほど起こらず、窒素の揮発もそれほど発生しなくなり、受光層に作用するような画素電極の変質が生じなくなって、耐熱性が向上する。
【0041】
上記(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たす別の方法としては次の方法がある。
【0042】
酸化膜(例えば酸化珪素)をシリコンやガラス等の基板上に形成後、その上に酸化窒化チタンをCVD法により成膜し、この酸化窒化チタン膜をフォトリソ及びエッチングによってパターニングして複数の画素電極を形成する。次に、複数の画素電極の上に受光層、対向電極を順に形成して光電変換素子を完成させる。この方法によれば、画素電極の形成後に加熱を行うことなく、(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすことができる。
【0043】
なお、以上の説明では、画素電極を複数形成することを前提としているが、1つの画素電極と、この上の受光層と、この上の対向電極とを有する光電変換素子であっても、上記のように画素電極の加熱又は画素電極をCVD法によって形成することで、(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすことができる。
【0044】
以下、有機材料を含む受光層を有する光電変換素子を用いた固体撮像素子の実施形態を説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための固体撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この固体撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子内視鏡装置、カメラ付携帯電話機等の撮像装置に搭載して用いられる。
【0046】
図1に示す固体撮像素子100は、基板101と、絶縁層102と、接続電極103と、画素電極104と、接続部105と、接続部106と、受光層107と、対向電極108と、緩衝層109と、封止層110と、カラーフィルタ111と、隔壁112と、遮光層113と、保護層114と、対向電極電圧供給部115と、読出し回路116とを備える。
【0047】
基板101は、ガラス基板又はシリコン等の半導体基板である。基板101上には酸化珪素からなる絶縁層102が形成されている。絶縁層102の表面には複数の画素電極104が並べて形成され、絶縁層102内には画素電極104に対応して接続電極103が形成されている。
【0048】
受光層107は、有機材料を含む層であり、光電変換層を少なくとも含んで構成されている。光電変換層は、受光した光に応じて電荷を発生するものである。受光層107は、複数の画素電極104の上にこれらを覆って設けられている。受光層107は、画素電極104の上では一定の膜厚となっているが、画素部以外(有効画素領域外)では膜厚が変化していても問題ない。受光層107の詳細については後述する。なお、受光層107は、有機材料のみからなる層で構成されたものだけでなく、一部の層が無機材料を含む構成であるものも含む。
【0049】
対向電極108は、画素電極104と対向する電極であり、受光層107上にこれを覆って設けられている。対向電極108は、受光層107よりも外側に配置された接続電極103の上にまで形成されており、接続電極103と電気的に接続されている。
【0050】
対向電極108は、光電変換層を含む受光層107に光を入射させるため、透明導電膜で構成されることが好ましく、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。
【0051】
具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。
【0052】
透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。
【0053】
接続部106は、絶縁層102に埋設されており、接続電極103と対向電極電圧供給部115とを電気的に接続するためのプラグ等である。
【0054】
対向電極電圧供給部115は、基板101に形成され、接続部106及び接続電極103を介して対向電極108に所定の電圧を印加する。
【0055】
対向電極108に印加すべき電圧が固体撮像素子100の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給する。
【0056】
画素電極104は、画素電極104とそれに対向する対向電極108との間にある受光層107内で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。
【0057】
画素電極104は、酸化窒化チタン(TiON)で構成されている。画素電極104の受光層107形成直前での組成は、上記(1)〜(4)のいずれか、或いは、上記(1)又は(2)と上記(3)又は(4)の両方を満たしている。
【0058】
読出し回路116は、複数の画素電極104の各々に対応して基板101に設けられており、対応する画素電極104で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。
【0059】
読出し回路116は、例えばCCD、MOS回路、又はTFT回路等で構成されており、絶縁層102内に配置された図示しない遮光層によって遮光されている。
【0060】
緩衝層109は、対向電極108上に、対向電極108を覆って形成されている。
【0061】
封止層110は、緩衝層109上に、緩衝層109を覆って形成されている。
【0062】
カラーフィルタ111は、封止層110上の各画素電極104と対向する位置に形成されている。
【0063】
隔壁112は、カラーフィルタ111同士の間に設けられており、カラーフィルタ111の光透過効率を向上させるためのものである。
【0064】
遮光層113は、封止層110上のカラーフィルタ111及び隔壁112を設けた領域以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された受光層107に光が入射することを防止する。
【0065】
保護層114は、カラーフィルタ111、隔壁112、及び遮光層113上に形成されており、固体撮像素子100全体を保護する。
【0066】
なお、図1の例では、画素電極104及び接続電極103が、絶縁層102の表面部に埋設された形となっているが、これらは絶縁層102の上に形成されてあっても良い。
【0067】
また、接続電極103、接続部106、及び対向電極電圧供給部115のセットが複数設けられているが、これは1組のみであっても良い。図1の例のように、対向電極108の両端部から対向電極108へ電圧を供給することで、対向電極108での電圧降下を抑制することができる。このセットの数は、素子のチップ面積を勘案して、適宜増減すれば良い。
【0068】
以下では、受光層107の好ましい構成について説明する。
【0069】
図2は、受光層107の構成の一例を示す断面である。図2に示すように受光層107は、画素電極104側に設けられた電荷ブロッキング層107bとこの上に設けられた光電変換層107aとを含む。電荷ブロッキング層107bと光電変換層107aの位置関係は逆であってもよい。
【0070】
電荷ブロッキング層107bは、暗電流を抑制する機能を有する。電荷ブロッキング層は複数層で構成してもよい。電荷ブロッキング層107bを複数層にすることにより、複数の電荷ブロッキング層の間に界面が形成され、各層に存在する中間準位に不連続性が生じることで、中間準位を介して電荷担体が移動しにくくなり、暗電流を強く抑制することができる。
【0071】
光電変換層107aは、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む。p型有機半導体とn型有機半導体を接合させてドナー‐アクセプタ界面を形成することにより励起子解離効率を増加させることができる。このために、p型有機半導体とn型有機半導体を接合させた構成の光電変換層107aは高い光電変換効率を発現する。特に、p型有機半導体とn型有機半導体を混合した光電変換層107aは、接合界面が増大して光電変換効率が向上するので好ましい。
【0072】
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプタ性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0073】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプタ性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、n型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプタ性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、p型(ドナ性)化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプタ性有機半導体として用いてよい。
【0074】
p型有機半導体、又はn型有機半導体としては、いかなる有機色素を用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0075】
n型有機半導体として、電子輸送性に優れた、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが特に好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0076】
光電変換層107aがフラーレン又はフラーレン誘導体を含むことで、フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子を経由して、光電変換により発生した電子を画素電極104又は対向電極108まで早く輸送できる。フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子が連なった状態になって電子の経路が形成されていると、電子輸送性が向上して光電変換素子の高速応答性が実現可能となる。このためにはフラーレン又はフラーレン誘導体が光電変換層107aに40%以上含まれていることが好ましい。もっとも、フラーレン又はフラーレン誘導体が多すぎるとp型有機半導体が少なくなって接合界面が小さくなり励起子解離効率が低下してしまう。
【0077】
光電変換層107aにおいて、フラーレン又はフラーレン誘導体と共に混合されるp型有機半導体として、特許第4213832号公報等に記載されたトリアリールアミン化合物を用いると光電変換素子の高SN比が発現可能になり、特に好ましい。光電変換層107a内のフラーレン又はフラーレン誘導体の比率が大きすぎると該トリアリールアミン化合物が少なくなって入射光の吸収量が低下する。これにより光電変換効率が減少するので、光電変換層107aに含まれるフラーレン又はフラーレン誘導体は85%以下の組成であることが好ましい。
【0078】
光電変換層107aに使用するp型有機半導体としては、下記一般式(1)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0079】
【化1】

【0080】
(式中、L、Lは、それぞれメチン基を表す。nは0〜2の整数を表す。Arは、2価の置換アリーレン基、又は無置換アリーレン基を表す。Ar、Arは、それぞれ独立に、置換アリール基、無置換アリール基、置換アルキル基、無置換アルキル基、置換へテロアリール基、又は無置換ヘテロアリール基を表す。また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換アルキル基、無置換アルキル基、置換アリール基、無置換アリール基、置換へテロアリール基、又は無置換ヘテロアリール基を表し、隣接するものが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0081】
Arが表すアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリーレン基である。該アリーレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基である。例えば、フェニレン基、ナフチレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
Ar、Arが表すアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基である。該アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、アンスリル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。nは0又は1が好ましい。
【0082】
Ar、Arが表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0083】
Ar、Arが表すヘテロアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3〜30のヘテロアリール基であり、より好ましくは炭素数3〜18のヘテロアリール基である。該ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数3〜18のヘテロアリール基である。また、Ar、Arが表すヘテロアリール基は縮環構造であってもよく、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環からから選ばれる環の組み合わせ(同一でも良い)の縮環構造が好ましく、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ビチエノベンゼン環、ビチエノチオフェン環が好ましい。
【0084】
〜Rが表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。R〜Rとしては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
nは0又は1が好ましい。
【0085】
〜Rが表すヘテロアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3〜30のヘテロアリール基であり、より好ましくは炭素数3〜18のヘテロアリール基である。該ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数3〜18のヘテロアリール基である。また、R〜Rが表すヘテロアリール基は5員、6員又は7員の環又はその縮合環からなるヘテロアリール基が好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子挙げられる。ヘテロアリール基を構成する環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、トリアジン環等が挙げられる。
縮合環としては、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノキサジン環、チアントレン環、チエノチオフェン環、インドリジン環、キノリジン環、キヌクリジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。
【0086】
〜Rが表すアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基である。該アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェナントレニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、又はアントラセニル基が好ましい。
【0087】
Ar、Ar、Ar、R〜Rのうち隣接するものはそれぞれ互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ピラン環等が挙げられる。
【0088】
Ar、Ar、R〜Rが置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0089】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
【化2】

【0091】
電荷ブロッキング層107bには、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0092】
電荷ブロッキング層107bとしては無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電荷ブロッキング層107bに用いた場合に、光電変換層107aに電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電荷ブロッキング層107bとなりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。
【0093】
複数層からなる電荷ブロッキング層107bにおいて、複数層のうち光電変換層107aと隣接する層が該光電変換層107aに含まれるp型有機半導体と同じ材料からなる層であることが好ましい。電荷ブロッキング層107bにも同じp型有機半導体を用いることで、光電変換層107aと隣接する層の界面に中間準位が形成されるのを抑制し、暗電流を更に抑制することができる。
【0094】
電荷ブロッキング層107bが単層の場合にはその層を無機材料からなる層とすることができ、複数層の場合には1つ又は2以上の層を無機材料からなる層とすることができる。
【0095】
電荷ブロッキング層107bに使用する材料としては、下記一般式(1−A1)又は一般式(1−A2)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0096】
【化3】

【0097】
一般式(1−A1)及び一般式(1−A2)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基で置換されていてもよい、ヘテロ環基を表す。X、Xはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。n及びnはそれぞれ独立に、1〜4の整数を表す。
【0098】
及びRが表すヘテロ環基としては、2〜5個の単環からなる縮合環を含んでいてもよい。また、好ましくは炭素数6〜30であり、より好ましくは炭素数6〜20である。
【0099】
また、ヘテロ環基に置換してもよいアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、直鎖状・分岐状のアルキル基でもよいし、環状のアルキル基(シクロアルキル基)でもよく、複数のアルキル基が互いに結合して環(例えば、ベンゼン環)を形成してもよいが、好ましくは分岐アルキル基である。該アルキル基として具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基を挙げることができ、t−ブチル基が好ましい。
【0100】
Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す。Lは、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば−CH=CH−)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基又はアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6のイミノ基がさらに好ましく、単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基が特に好ましい。
Lがアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環が挙げられる。
【0101】
及びRが表すアルキル基で置換されていてもよいヘテロ環基としては、下記N1〜N15を挙げることができる。好ましくはN13である。
【0102】
【化4】

【0103】
、Xが有する置換基としては、アルキル基又はアリール基が好ましい。
アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イゾプロピル基、又はt−ブチル基が挙げられ、メチル基であることがより好ましい。
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20のアリール基である。該アリール基は、アルキル基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基である。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、9−ジメチルフルオレニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、9−ジメチルフルオレニル基が好ましい。
【0104】
電子ブロッキング層の材料として特に好ましいものとしては、下記式に示すものが挙げられる。
【0105】
【化5】

【0106】
【化6】

【0107】
このような構成の固体撮像素子100は次のようにして製造する。
【0108】
まず、図1に示す接続部105,106を含む絶縁層102が形成された基板101を準備し、この基板101の絶縁層102上に、TiONをスパッタ法によって成膜する。
【0109】
次に、接続部106,105上にTiON膜が残るように、TiON膜をフォトリソ及びエッチングによってパターニングし、複数の画素電極104と複数の接続電極103を形成する。なお、このパターニングは、基板に受光層の劣化因子が付着するのを防止することを考慮して真空下で行うことが好ましい。
【0110】
複数の画素電極104と複数の接続電極103を形成した後、その上に絶縁膜を形成し、これを平坦化して、図2に示した構成の絶縁層102を完成させる。
【0111】
次に、対向電極108を形成した後に行われる加熱工程のうちの最も高い加熱温度で行われる加熱工程の当該加熱温度よりも高い温度で、基板101を加熱する。このときの加熱温度及び加熱時間は、上記(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすように設定する。
【0112】
基板101の加熱終了後は、受光層107、対向電極108、緩衝層109、封止層110、カラーフィルタ111、保護層114を順次形成して、固体撮像素子100を完成させる。
【0113】
このような製造方法により、光電変換素子の形成後に行われる加熱工程での画素電極104の変質を防止して固体撮像素子100の耐熱性を向上させることができる。
【0114】
なお、固体撮像素子100は次のようにして製造してもよい。
【0115】
まず、図1に示す接続部105,106を含む絶縁層102が形成された基板101を準備し、この基板101の絶縁層102上に、TiONをCVD法によって成膜する。このときのCVDの条件は、上記(1)〜(4)の少なくとも1つの条件を満たすように設定する。
【0116】
次に、接続部106,105上にTiON膜が残るように、TiON膜をフォトリソ及びエッチングによってパターニングし、複数の画素電極104と複数の接続電極103を形成する。
【0117】
画素電極104と複数の接続電極103を形成した後、その上に絶縁膜を形成し、これを平坦化して、図2に示した構成の絶縁層102を完成させる。
【0118】
次に、基板101を加熱する処理は行わずに、受光層107、対向電極108、緩衝層109、封止層110、カラーフィルタ111、保護層114を順次形成して、固体撮像素子100を完成させる。
【0119】
このような製造方法であっても、光電変換素子の形成後に行われる加熱工程での画素電極104の変質を防止して固体撮像素子100の耐熱性を向上させることができる。
【0120】
以下、実施例で本発明の効果について説明する。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
信号読み出し回路を有し、表面にSiOによる絶縁膜(接続部を含む)が形成されたCMOS基板上にスパッタ法により酸化窒化チタン(TiON)を15nm成膜し、この膜をフォトリソグラフィ及びドライエッチング法によりパターニングして画素電極を形成した。画素電極の形成は真空中で行った。なお、画素電極は絶縁膜内の接続部を通して基板内の信号読み出し回路と電気的に接続されている。その後、この基板を300℃30分大気中で加熱した。
【0122】
その後、該基板上に、下記化合物2を真空加熱蒸着法により100nmの厚みで成膜して電子ブロッキング層を形成後、下記化合物1とC60を共蒸着法により、単膜換算で1:2になるように成膜して受光層を形成した。
【0123】
その後、スパッタ法によりITOを10nm成膜して対向電極を形成し、その上に、ALCVD法でアルミナを200nm成膜して緩衝層を形成し、その上にスパッタ法により酸化窒化珪素膜を100nm成膜して封止層を形成し、図1に示す封止層までを持つ固体撮像素子を作製した。
【0124】
(実施例2、4〜7)
電子ブロッキング層の材料と、光電変換層の材料と、受光層形成前の画素電極の加熱処理における基板加熱温度を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に固体撮像素子を作製した。表1の受光層構成の欄に示した“**/***”の表記は、**が電子ブロッキング層を示し、***が光電変換層を示す。
【0125】
(実施例3)
実施例1で使用したものと同じCMOS基板上にCVD法により酸化窒化チタン(TiON)を15nm成膜し、この膜をフォトリソグラフィ及びドライエッチング法によりパターニングして画素電極を形成した。なお、画素電極は接続部を通して基板内の信号読み出し回路と電気的に接続されている。
【0126】
その後は、該基板上に、下記化合物2を真空加熱蒸着法により100nmの厚みで成膜して電子ブロッキング層を形成した。この後は、実施例1と同様にして光電変換層以降を形成し、図1に示す封止層までを持つ固体撮像素子を作製した。
【0127】
(比較例1〜4)
酸化窒化チタンの成膜方法をスパッタ法に変更し、電子ブロッキング層と光電変換層の材料を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例3と同様にして固体撮像素子を作製した。
【0128】
(比較例5)
受光層形成前の画素電極の加熱処理における基板加熱温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様に固体撮像素子を作製した。
(比較例6)
受光層形成前の画素電極の加熱処理における基板加熱温度を260℃に変更した以外は、実施例1と同様に固体撮像素子を作製した。
【0129】
【表1】

【0130】
【化7】

【0131】
実施例1,2,4−7と比較例5,6の固体撮像素子については、受光層形成前の加熱前後における画素電極の組成を測定し、それ以外の固体撮像素子については受光層形成前の画素電極の組成を測定し、その結果を表1に示した。また、作製した全ての固体撮像素子に対し、画素電極側にマイナス方向に、2×10V/cmの電界を印加した場合の暗電流密度について、固体撮像素子の作製を完了した後と、その固体撮像素子を後工程で行われる加熱工程と同様の温度である220℃30分で加熱した後とのそれぞれで測定し、加熱した後の測定結果を加熱前の測定結果に対する相対値として表1に示した。
【0132】
表1に示したように、上記(1)〜(4)のいずれの条件も満たさない比較例1〜6において220℃30分の加熱工程により大幅に暗電流が増加するのに対し、上記(1)〜(4)のいずれかの条件を満たしている実施例1〜7のいずれの固体撮像素子も、加熱工程を経ても暗電流が増加しておらず、本発明規定の内容により、大幅に耐熱性を向上させられることが分かった。
【0133】
また、260℃で画素電極を加熱する比較例6に対し、280℃で画素電極を加熱する実施例7では暗電流が大幅に低減している。このことから、270℃以上の温度で画素電極の加熱を行った場合に、耐熱性向上の効果が得られることが分かった。
【0134】
なお、特許文献2〜4の製造方法は画素電極がITOのときの実施例であり、画素電極をTiONで構成している本願とはその前提が大きく異なる。したがって、特許文献2〜4記載の発明から本発明規定の組成の画素電極を得ることは容易ではない。また、基板を加熱する温度は乾燥に必要な温度であり、後の加熱工程での最高温度との関係については考慮されていない。
【0135】
また、特許文献5,6には、画素電極(TiO含む)をCVD法で形成することが記載されている。しかし、TiONについての記載はなく、また、TiOでは加熱工程によって絶縁膜から酸素が混入する可能性はあっても、その混入によって窒素ガスが揮発する可能性はない。
【0136】
このため、特許文献5,6の画素電極において酸素含有量や窒素含有量を規定する必要はなく、これら公報に記載の発明から本発明をすることは容易ではない。
【0137】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0138】
開示された光電変換素子は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上の条件を満たすものである。
【0139】
開示された光電変換素子は、前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、更に、(3)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(4)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすものである。
【0140】
開示された光電変換素子は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすものである。
【0141】
開示された光電変換素子は、前記絶縁膜上に前記第一の電極が複数個並べて形成され、当該複数の第一の電極を覆って前記受光層が形成されているものである。
【0142】
開示された光電変換素子は、前記受光層は、有機材料を含む電荷ブロッキング層と、有機材料を含む光電変換層とを含むものである。
【0143】
開示された固体撮像素子は、前記光電変換素子と、前記受光層内で発生し前記第一の電極で捕集された電荷の電荷量に応じた信号を読み出す前記基板に形成された信号読み出し回路とを備えるものである。
【0144】
開示された撮像装置は、前記固体撮像素子を備えるものである。
【0145】
開示された光電変換素子の製造方法は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上の条件を満たすように、前記第一の電極を形成するものである。
【0146】
開示された光電変換素子の製造方法は、前記第一の工程では、更に、(3)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(4)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすように、前記第一の電極を形成するものである。
【0147】
開示された光電変換素子の製造方法は、基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下、又は、(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下の条件を満たすように前記第一の電極を形成するものである。
【0148】
開示された光電変換素子の製造方法は、前記第一の工程では、前記絶縁膜上に前記第一の電極を複数個並べて形成し、前記第二の工程では、当該複数の第一の電極を覆う前記受光層を形成する光電変換素子の製造方法。
【0149】
開示された光電変換素子の製造方法は、前記第一の工程が、前記絶縁膜上に前記酸化窒化チタンをスパッタ法で成膜する工程と、成膜した前記酸化窒化チタンの膜をパターニングする工程と、前記パターニング後に前記基板を270℃以上で加熱する工程とで構成される。
【0150】
開示された光電変換素子の製造方法は、前記第一の工程が、前記絶縁膜上に前記酸化窒化チタンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜する工程と、成膜した前記酸化窒化チタンの膜をパターニングする工程とで構成されるものである。
【符号の説明】
【0151】
100 固体撮像素子
101 基板
102 絶縁層
104 画素電極
107 受光層
108 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、
前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、
前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、
(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上
又は、
(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上
の条件を満たす光電変換素子。
【請求項2】
請求項1記載の光電変換素子であって、
前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、更に、
(3)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下
又は、
(4)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下
の条件を満たす光電変換素子。
【請求項3】
基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子であって、
前記第一の電極が、酸化窒化チタンで構成され、
前記受光層を形成する直前における前記第一の電極の組成が、
(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下
又は、
(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下
の条件を満たす光電変換素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光電変換素子であって、
前記絶縁膜上に前記第一の電極が複数個並べて形成され、当該複数の第一の電極を覆って前記受光層が形成されている光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の光電変換素子であって、
前記受光層は、有機材料を含む電荷ブロッキング層と、有機材料を含む光電変換層とを含む光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の光電変換素子と、
前記受光層内で発生し前記第一の電極で捕集された電荷の電荷量に応じた信号を読み出す前記基板に形成された信号読み出し回路とを備える固体撮像素子。
【請求項7】
請求項6記載の固体撮像素子を備える撮像装置。
【請求項8】
基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、
前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、
前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、
前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、
(1)前記第一の電極全体に含まれる酸素量がチタン量の75atm%以上
又は、
(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、酸素量がチタン量の40atm%以上
の条件を満たすように、前記第一の電極を形成する光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記第一の工程では、更に、
(3)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下
又は、
(4)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下
の条件を満たすように、前記第一の電極を形成する光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
基板上に酸化膜で構成された絶縁膜が形成され、当該絶縁膜上に形成された第一の電極と、前記第一の電極の上に形成された有機材料を含む受光層と、前記受光層上に形成された第二の電極とを有する光電変換素子の製造方法であって、
前記絶縁膜上に前記第一の電極を形成する第一の工程と、
前記第一の電極の上に前記受光層を形成する第二の工程と、
前記受光層上に前記第二の電極を形成する第三の工程とを備え、
前記第一の工程では、前記第一の工程終了後に、
(1)前記第一の電極全体に含まれる窒素量がチタン量の73atm%以下
又は、
(2)前記第一の電極の前記基板側から10nmまでの範囲或いは前記第一の電極の前記基板側から前記第一の電極厚みの2/3までの範囲において、窒素量がチタン量の90atm%以下
の条件を満たすように前記第一の電極を形成する光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記第一の工程では、前記絶縁膜上に前記第一の電極を複数個並べて形成し、前記第二の工程では、当該複数の第一の電極を覆う前記受光層を形成する光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記第一の工程は、前記絶縁膜上に前記酸化窒化チタンをスパッタ法で成膜する工程と、成膜した前記酸化窒化チタンの膜をパターニングする工程と、前記パターニング後に前記基板を270℃以上で加熱する工程とで構成される光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記第一の工程は、前記絶縁膜上に前記酸化窒化チタンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜する工程と、成膜した前記酸化窒化チタンの膜をパターニングする工程とで構成される光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−51383(P2013−51383A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209209(P2011−209209)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】