説明

光電変換素子,光電変換素子の製造方法及び撮像素子

【課題】電荷ブロッキング層における欠陥準位の発生を抑えることで光学特性を改善することができる光電変換素子,光電変換素子の製造方法及び撮像素子を提供する。
【解決手段】一対の電極と、一対の電極の間に挟まれた光電変換層と、一対の電極の少なくとも一方と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子であって、電荷ブロッキング層が、2種の金属酸化物を含む単一の層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子,光電変換素子の製造方法及び撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極間に光電変換層が設けられ、電極間に電界を印加することで電子や正孔などの電荷を生成する構成の光電変換素子がある。このような光電変換素子では、大きな電界が印加された場合に、電極から光電変換層に電荷が注入されることに起因して暗電流が発生する。光電変換素子の暗電流低減の対策の一つとして、電極からの電荷注入を防止するため、電極と光電変換層との間に、無機酸化物で構成された電荷ブロッキング層を設ける構成が採用されている。電荷ブロッキング層を備えた光電変換素子としては、後述するものがある。
【0003】
特許文献1の光電変換素子は、有機光電体層及びブロッキング層を介して設けられた電極対を備え、ブロッキング層が酸化珪素を主成分とする構成である。
【0004】
特許文献2の光電変換素子は、一対の電極間に光電変換層が配置され、電極と光電変換層との間に複数層からなる電荷ブロッキング層が設けられた構成である。
【0005】
特許文献3の光電変換素子は、一対の電極の間に光電変換層が配置され、各電極と光電変換層との間に、光電変換層に正孔が注入されるのを防止する正孔ブロッキング層と、光電変換層に電子が注入されるのを防止する電子ブロッキング層とを備えた構成である。
【0006】
【特許文献1】特開平5−129576号公報
【特許文献2】特開2008−72090号公報
【特許文献3】特開2007−273945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電荷ブロッキング層に無機酸化物を用いた場合には、該電荷ブロッキング層の内部に、不純物や酸素欠陥に起因してバンドギャップ中に欠陥準位が発生する。すると、電極から欠陥準位を介して電荷が注入されることや、欠陥準位が生じた部位からのキャリアの湧き出しにより暗電流が増加し、光電変換素子の光学特性が劣化してしまう点の改善が望まれていた。
【0008】
特許文献2に記載の光電変換素子は、電荷ブロッキング層を複数積層させた構成とし、各層に存在する欠陥準位が生じている位置を層ごとにずらすことによって、注入された電荷が輸送されることを防止するものであるが、欠陥準位そのものの発生を抑えるものではない。
【0009】
特許文献3では、光電変換層よりも比誘電率が大きい材料を電荷ブロッキング層として用いて外部電圧を過度に上げることなく、外部量子効率を上げることによって、電極からの電荷注入を抑制するものであるが、欠陥準位そのものの発生を抑えるものではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電荷ブロッキング層における欠陥準位の原因となる酸素欠陥の発生を抑えることで光学特性を改善することができる光電変換素子,光電変換素子の製造方法及び撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の形態を含む。
(1)一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟まれた光電変換層と、
前記一対の電極の少なくとも一方と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層が、複数の金属酸化物を含む単一の層である光電変換素子。
(2)上記(1)に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物それぞれの価数が異なる光電変換素子。
(3)上記(1)に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物それぞれのモル比が異なる光電変換素子。
(4)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物は、価数が大きい金属酸化物が価数の小さい金属酸化物よりモル比が大きい光電変換素子。
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物は、前記第1金属酸化物と、該第1金属酸化物より価数が小さい前記第2金属酸化物とからなり、前記第1金属酸化物と前記第2金属酸化物とのモル比が、50:1〜50:3の範囲である光電変換素子。
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンのイオン半径が同等である光電変換素子。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換素子が上方に形成された基板と、
前記光電変換素子で生成された電荷に応じた信号を読み出す信号読出部とを備えた撮像素子。
(8)一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟まれた光電変換層と、
前記一対の電極の少なくとも一方と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
前記電荷ブロッキング層を、複数の金属酸化物を共蒸着又は共スパッタすることによって形成する工程を有する光電変換素子の製造方法。
(9)上記(8)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物それぞれの価数が異なる光電変換素子の製造方法。
(10)上記(8)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物それぞれのモル比が異なる光電変換素子の製造方法。
(11)上記(8)又は(9)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物は、価数が大きい金属酸化物が価数の小さい金属酸化物よりモル比が大きい光電変換素子の製造方法。
(12)上記(8)から(11)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物は、前記第1金属酸化物と、該第1金属酸化物より価数が小さい前記第2金属酸化物とからなり、前記第1金属酸化物と前記第2金属酸化物とのモル比が、50:1〜50:3の範囲である光電変換素子の製造方法。
(13)上記(8)から(12)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンのイオン半径が同等である光電変換素子の製造方法。
【0012】
光電変換素子は、電荷ブロッキング層が複数の金属酸化物を含む単一の層で構成されており、全体が均一の固相となったものである。このような電荷ブロッキング層を形成するときに、複数の金属酸化物のうち一つの金属酸化物で酸素欠陥が生じても、該酸素欠陥が他の金属酸化物によって置換される。このように、電荷ブロッキング層における酸素欠陥を複数の金属酸化物の相互間で置換して補修することで、酸素欠陥を除去することができる。したがって、光電変換素子は光学特性の劣化を防止することができる。なお、以下では、電荷ブロッキング層における酸素欠陥を複数の金属酸化物間で補修することを、置換ともいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電荷ブロッキング層における欠陥準位の原因となる酸素欠陥の発生を抑えることで光学特性を改善することができる光電変換素子,光電変換素子の製造方法及び撮像素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態を説明するための光電変換素子の構成を示す断面図である。
光電変換素子は、下部電極11と、該下部電極11と対向するように上方に設けられた上部電極14とを備えている。下部電極11と上部電極14との間には、光電変換層12と、電荷ブロッキング層15,16とが設けられている。光電変換層12と上部電極14との間には電荷ブロッキング層15が設けられ、光電変換層12と下部電極11との間には電荷ブロッキング層16が設けられている。
【0015】
電荷ブロッキング層15,16とのうち一方を、隣接する電極からの正孔注入障壁が大きくかつ光電流キャリアである電子の輸送能が高い「正孔ブロッキング層」とし、電荷ブロッキング層15,16とのうち他方を、隣接する電極からの電子注入障壁が大きくかつ光電流キャリアである正孔の輸送能が高い「電子ブロッキング層」とする。
【0016】
電荷ブロッキング層15,16のうち少なくとも一方が、2種の金属酸化物を含む単一の層とする。ここで、2種の金属酸化物を含む単一の層とは、それぞれの金属酸化物が互いに混ざり合い、全体が均一の固相となったものである。こうすれば、電荷ブロッキング層15,16が無機材料を含む場合に、一方の金属酸化物で酸素欠陥が生じても、他方の金属酸化物によって補修できるため、結果として、酸素欠陥の発生を抑えることができる。
【0017】
2種の金属酸化物が、第1金属酸化物と、該第1金属酸化物より含まれる金属の価数が小さい第2金属酸化物とからなるものとし、第1金属酸化物が第2金属酸化物よりモル比が大きくなるように単一の電荷ブロッキング層を構成していることが好ましい。こうすることで、2種の金属酸化物のうち、価数の大きい金属酸化物で生じた酸素欠陥を価数の小さい金属酸化物によって効率良く置換することができる。2種の金属酸化物としては、上記条件を満たせばあらゆるものを用いることができるが、その一例を後述の実施例で示す。
【0018】
第1金属酸化物と第2金属酸化物とのモル比は、50:1〜50:3の範囲とることが好ましい。
【0019】
また、2種の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンのイオン半径が同等であることが好ましい。こうすれば、金属の置換が起こりやすいため、酸素欠陥の発生をより一層確実に抑えることができる。ここで、「同等」とは、置換する金属イオンと置換される金属イオンのイオン半径の差が置換される金属イオンのイオン半径に対して±5%の範囲以内であることを意味する。
【0020】
2種の金属酸化物を含む単一の層を形成する方法としては、各金属酸化物を共蒸着する方法がある。共蒸着する方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法又はスパッタ法による共スパッタを用いることができる。
【0021】
電荷ブロッキング層は、2つの金属酸化物を含む単一の層に限定されず、複数の金属酸化物を含む単一の層とすることもできる。このとき、複数の金属酸化物それぞれの価数が異なるように構成することができる。例えば、電荷ブロッキング層が価数の異なる3つの金属酸化物を含む単一の層からなる構成とした場合には、最も価数の大きい金属酸化物の酸素欠陥を2番目に価数の大きい金属酸化物で補修し、該2番目に価数の大きい金属酸化物の酸素欠陥を最も価数の小さい金属酸化物で補修することができる。
【0022】
複数の金属酸化物それぞれの価数が異なるように構成とするときは、価数が大きい金属酸化物が価数の小さい金属酸化物よりモル比が大きくする。こうすることで、置換される金属酸化物と置換する金属酸化物との間で置換がおこりやすくなる。
【0023】
電荷ブロッキング層が、複数の金属酸化物を含む単一の層とするとき、複数の金属酸化物それぞれのモル比が異なるように構成することができる。例えば、電荷ブロッキング層がモル比の異なる3つの金属酸化物を含む単一の層からなる構成とした場合には、最もモル比の大きい金属酸化物の酸素欠陥を2番目にモル比の大きい金属酸化物で補修し、該2番目にモル比の大きい金属酸化物の酸素欠陥を最もモル比の小さい金属酸化物で補修することができる。
【0024】
なお、電荷ブロッキング層15,16のうち一方を、従来と同様に有機材料で構成してもよい。
【0025】
次に、正孔ブロッキング層および電子ブロッキング層を構成する有機材料の候補について説明する。
【0026】
(正孔ブロッキング層)
正孔ブロッキング層には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
【0027】
正孔ブロッキング層の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0028】
正孔ブロッキング材料の候補として、具体的には、下記のHB−1〜5及びBCPで示される材料が例として挙げられる。Eaはその材料の電子親和力、lpはその材料のイオン化ポテンシャルを示す。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
実際に正孔ブロッキング層に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換層の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものがよい。
【0036】
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0037】
電子ブロッキング層の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0038】
また、電子ブロッキング材料の候補として、具体的には、例えば下記のEB−1〜5、TPD及びm−MTDATAで示される材料が挙げられる。
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
実際に電子ブロッキング層に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換層の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものがよい。
【0047】
光電変換層12は、p型有機半導体とn型有機半導体の混合薄膜で形成されている。しかし、光電変換層12は、少なくとも1つのn型有機半導体を含んでいる構成とすることができる。
【0048】
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0049】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0050】
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0051】
次に金属錯体化合物について説明する。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0052】
配位子としては、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座配位子である。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子が挙げられる。
【0053】
n型有機半導体としては、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0054】
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0055】
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でもよい。
【0056】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0057】
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でもよい。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、またはウレイド基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表す。
【0058】
また、2つのWが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0059】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、または−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、またはアリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0060】
フラーレン誘導体として好ましくは、下記一般式(1)で表される場合である。
一般式(1)
【0061】
【化14】

【0062】
一般式(1)においてRは置換基を表す。置換基としては、前述のWを用いることができる。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基であり、好ましいもの及びそれらの好ましい具体例はWで示したものが挙げられる。アルキル基としてさらに好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、nが2以上のとき複数のRは同一であっても異なっていても良い。また、複数のRは可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0063】
nは1から60までの整数を表すが、好ましくは1から10までの整数である。
【0064】
以下に、好ましく用いられるフラーレン誘導体の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
フラーレン及びフラーレン誘導体は、日本化学会編季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。本発明に用いられるフラーレン及びフラーレン誘導体は例えば、日本化学会編季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の方法又は記載の方法に準じて製造することができる。
【0068】
次に、光電変換素子を備えた撮像素子の構成の一例を説明する。図2は、撮像素子の一部表面を模式的に示す図である。図3は、図2に示す撮像素子のX−X線の断面を模式的に示す図である。なお、図2では、図3に示されるマイクロレンズの図示を省略している。
【0069】
n型シリコン基板1上にはpウェル層2が形成されている。以下では、n型シリコン基板1とpウェル層2とを併せて半導体基板(基板)という。半導体基板上方の同一面上のx方向とこれに直交するy方向には、主としてR光を透過するカラーフィルタ23rと、主としてG光を透過するカラーフィルタ23gと、主としてB光を透過するカラーフィルタ23bとの3種類のカラーフィルタがそれぞれ多数配列されている。
【0070】
カラーフィルタ23rは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、R光の他に、赤外光の一部も透過する。カラーフィルタ23gは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、G光の他に、赤外光の一部も透過する。カラーフィルタ23bは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、B光の他に、赤外域の光の一部も透過する。
【0071】
カラーフィルタ23r,23g,23bの配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
【0072】
n型シリコン基板1の上方には、TiNなどで構成された画素電極11r、11g、11bが形成されている。画素電極11r,11g,11bは、図1や図3の光電変換素子における下部電極11に相当し、それぞれカラーフィルタ23r,23g,23bの各々に色ごとに対応して分割されている。
【0073】
画素電極11r,11g,11bの各々の上には、カラーフィルタ23r,23g,23bの各々で共通の一枚構成である光電変換膜12が形成されている。
【0074】
光電変換膜12上には、電荷ブロッキング層15が設けられ、該電荷ブロッキング層15上にカラーフィルタ23r,23g,23bの各々で共通の一枚構成である上部電極14が形成されている。
【0075】
画素電極11rと、それに対向する上部電極14と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ23rに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子を、半導体基板上に形成されたものであるため、R基板上光電変換素子という。
【0076】
画素電極11gと、それに対向する上部電極14と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ23gに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をG基板上光電変換素子という。
【0077】
画素電極11bと、それに対向する上部電極14と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ23bに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をB基板上光電変換素子という。
【0078】
pウェル層2内には、R基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するための高濃度のn型不純物領域(以下、n+領域という)4rが形成されている。尚、n+領域4rに光が入るのを防ぐために、n+領域4r上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0079】
pウェル層2内には、G基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4gが形成されている。尚、n+領域4gに光が入るのを防ぐために、n+領域4g上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0080】
pウェル層2内には、B基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4bが形成されている。尚、n+領域4bに光が入るのを防ぐために、n+領域4b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0081】
n+領域4r上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6rが形成され、コンタクト部6r上に画素電極11rが形成されており、n+領域4rと画素電極11rはコンタクト部6rによって電気的に接続されている。コンタクト部6rは、可視光及び赤外光に対して透明な絶縁層5内に埋設されている。
【0082】
n+領域4g上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6gが形成され、コンタクト部6g上に画素電極11gが形成されており、n+領域4gと画素電極11gはコンタクト部6gによって電気的に接続されている。コンタクト部6gは絶縁層5内に埋設されている。
【0083】
n+領域4b上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6bが形成され、コンタクト部6b上に画素電極11bが形成されており、n+領域4bと画素電極11bはコンタクト部6bによって電気的に接続されている。コンタクト部6bは絶縁層5内に埋設されている。
【0084】
n+領域4r,4g,4bが形成されている以外の領域には、R光電変換素子で発生してn+領域4rに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読出部5rと、G光電変換素子で発生してn+領域4gに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読出部5gと、B光電変換素子で発生してn+領域4bに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読出部5bとが形成されている。信号読出部5r,5g,5bは、それぞれ、CCDやMOS回路を用いた公知の構成を採用することができる。尚、信号読出部5r,5g,5bに光が入るのを防ぐために、信号読出部5r,5g,5b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0085】
なお、図2及び3に示す撮像素子の光電変換素子の構成は、図1に示すものと同様とすることができ、すなわち、電荷ブロッキング層15,16のうち少なくとも一方が、2種の金属酸化物を含む単一の層とすることができる。
【0086】
次に、以下の実施例及び比較例で示す光電変換素子について、暗電流の増加の抑制を検証する。この検証によって、単層構造の従来の電荷ブロッキング層に比べて、本発明の多層構造の電荷ブロッキング層の方が暗電流抑制効果が高いことを実証する。
【0087】
(実施例1)
ITO電極付きガラス基板(以下、ITO電極ともいう。)を、洗浄後、その基板を金属蒸着室に移動し、室内を1×10−4Pa以下に減圧した。その後、基板ホルダーを回転させながら、ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法によりAlとSnOをそれぞれ蒸着速度0.5〜0.6Å/Sec、4.0〜5.0Å/SecでSnOの厚み500Åとなるように共蒸着して無機ブロッキング層を形成した。この無機ブロッキング層は、正孔ブロッキング層として機能する。次に、この基板を真空環境中で保った状態で、有機蒸着室に搬送した。その後、室内を1×10−4Pa以下に保ったまま、化学式1に示される材料を蒸着速度1.0〜1.2Å/Secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に化学式2に示される材料を室内を1×10−4Pa以下に保ったまま、蒸着速度1.8〜1.9Å/Secで厚み1000Åとなるように蒸着した。なお、ここで使用する化学式1及び化学式2は以下のとおりであり、他の実施例及び比較例においても同じである。
【0088】
【化17】

【0089】
【化18】

【0090】
その後、再度、金属蒸着室に搬送し、光電変換層上に対向電極としてAlを厚み800Åとなるように蒸着した。また、ITO電極と対向電極となるAlが形成する光電変換領域の面積は2mm×2mmとした。この基板を大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、UV効果樹脂を用いて、吸着剤を張ったガラスの封止缶で封止を行った。
【0091】
また、実施例1では、上記処理によって作製した素子を、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメーターはケースレー6430を使用)を用いて、素子に対して1.0×10V/cmの外部電界を与えた場合の、光非照射時に流れる暗電流の測定を行った。
【0092】
(比較例1)
実施例1と同様に洗浄したITO電極付き基板に対して、実施例と同じ条件で化学式1を抵抗加熱蒸着法により蒸着速度1.0〜1.2Å/secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に化学式2を抵抗加熱蒸着法により蒸着速度1.8〜1.9Å/secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に、実施例1と同様にこの基板を金属蒸着室に搬送し、Al蒸着を行い、更に封止した上で、暗電流の測定を行った。
【0093】
(実施例2)
実施例1と同様に洗浄したITO電極付き基板に対して、ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法によりAlとCeOをそれぞれ蒸着速度0.5〜0.6Å/Sec、4.0〜5.0Å/SecでCeOの厚み500Åとなるように共蒸着して無機ブロッキング層を形成した。
【0094】
(実施例3)
実施例1と同様に洗浄したITO電極付き基板に対して、ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法によりAlとSnOをそれぞれ蒸着速度0.1〜0.3Å/Sec、4.0〜5.0Å/SecでSnOの厚み500Åとなるように共蒸着して無機ブロッキング層を形成した。
【0095】
(実施例4)
実施例1と同様に洗浄したITO電極付き基板に対して、ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法によりAlとSnOをそれぞれ蒸着速度0.7〜0.8Å/Sec、4.0〜5.0Å/SecでSnOの厚み500Åとなるように共蒸着して無機ブロッキング層を形成した。
【0096】
(比較例2)
実施例1と同様に洗浄したITO電極付き基板に対して、ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法によりSnOを蒸着速度4.0〜5.0Å/Sec、で厚み500Åとなるように蒸着して無機ブロッキング層を形成した。
【0097】
実施例及び比較例の光電変換素子の構成をそれぞれ、電極/正孔ブロッキング層/光電変換層/電子ブロッキング層/電極の順に以下にまとめる。ここで、構成材料とその構成材料のモル比を示している。なお、Al電極の括弧内には、電極の厚みを示している。
【0098】
実施例1:ITO電極/Al (3):SnO(50)/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
実施例2:ITO電極/Al (3):CeO(50)/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
実施例3:ITO電極/Al (1):SnO(50)/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
実施例4:ITO電極/Al (5):SnO(50)/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
比較例1:ITO電極/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
比較例2:ITO電極/SnO (50)/化学式1(100)/化学式2(100)/Al電極(80nm)
【0099】
測定の結果を図4に示す。図4は、上述の実施例及び比較例の、電界強度(V/cm)に対する暗電流密度(A/cm)の変化を示すグラフである。
【0100】
図4に示すように、実施例1から4では、高い電界強度を印加しても暗電流密度の増加を抑制することができた。具体的には、3.0E+05V/cmの電界強度を印加した場合には、比較例1及び2ではいずれも、暗電流密度が1.0E−06A/cm以上となったが、実施例1から4はいずれも、暗電流密度が1.0E−09A/cm以下に抑えることができた。
【0101】
また、実施例2のように、共蒸着する無機材料としてCeOを用いても、暗電流は比較例に比べ大幅に減少している。つまり、置換する金属を含む酸化物と置換される金属を含む酸化物はそれぞれ、互い置換が可能であればそれぞれの材料は限定されないことが分かる。
【0102】
2種の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンそれぞれのイオン半径の差が置換される金属イオンのイオン半径に対して±5%の範囲以内であることが好ましい。
【0103】
さらに、SnO:Al=3:50のとき、最も暗電流が低く、SnO:Al=5:50では、暗電流は3:50に比べて約2桁増加している。一方で、比較例2におけるSnO単体からなる電荷ブロッキング層を備えた光電変換素子では、暗電流が大幅に増加している。このことからも、置換する割合は、置換する金属を含む酸化物と置換される金属を含む酸化物とがモル比で1:50〜3:50の範囲とすることが望ましいことが分かる。
【0104】
上述した検証の実施例では、正孔ブロッキング層を2種の金属酸化物を含む単一の層としているが、電子ブロッキング層を2種の金属酸化物を含む単一の層とすることで、同様に暗電流の増加を抑制する効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための光電変換素子の構成を示す断面図である。
【図2】撮像素子の一部表面を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す撮像素子のX−X線の断面を模式的に示す図である。
【図4】実施例及び比較例の、電界強度(V/cm)に対する暗電流密度(A/cm)の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
11 下部電極
12 光電変換層
14 上部電極
15,16 電荷ブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟まれた光電変換層と、
前記一対の電極の少なくとも一方と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層が、複数の金属酸化物を含む単一の層である光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物それぞれの価数が異なる光電変換素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物それぞれのモル比が異なる光電変換素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物は、価数が大きい金属酸化物が価数の小さい金属酸化物よりモル比が大きい光電変換素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物は、前記第1金属酸化物と、該第1金属酸化物より価数が小さい前記第2金属酸化物とからなり、前記第1金属酸化物と前記第2金属酸化物とのモル比が、50:1〜50:3の範囲である光電変換素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記複数の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンのイオン半径が同等である光電変換素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換素子が上方に形成された基板と、
前記光電変換素子で生成された電荷に応じた信号を読み出す信号読出部とを備えた撮像素子。
【請求項8】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟まれた光電変換層と、
前記一対の電極の少なくとも一方と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
前記電荷ブロッキング層を、複数の金属酸化物を共蒸着又は共スパッタすることによって形成する工程を有する光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物それぞれの価数が異なる光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物それぞれのモル比が異なる光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物は、価数が大きい金属酸化物が価数の小さい金属酸化物よりモル比が大きい光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
請求項8から11に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物は、前記第1金属酸化物と、該第1金属酸化物より価数が小さい前記第2金属酸化物とからなり、前記第1金属酸化物と前記第2金属酸化物とのモル比が、50:1〜50:3の範囲である光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記複数の金属酸化物のそれぞれに含まれる金属イオンのイオン半径が同等である光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−98249(P2010−98249A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270000(P2008−270000)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】