説明

光音響イメージング装置

【課題】被検体に対して音響波検出器を置く方向に制限がある場合、吸収体の形状によっては発生した音波が音響検出器に入らず、形状がかけてしまう。
【解決手段】光音響イメージング装置は、被検体に光を照射する光源(11)、光吸収体で発生する光音響波を検出する検出器(14)、光音響波を反射させる反射部(15)、被検体の情報画像を生成する演算処理部(16)を備える。演算処理部は、検知した光音響波に再構成処理を施して得られる像を、検出器へ直接入射した音響波による像と、反射部で反射して検出器へ入射した像とに区別する。反射音響波による像を実像に変換して直接音響波による像と重ね合わせて補完処理を行って、被検体の情報画像を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響イメージングに好適に適用できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から照射した可視〜赤外領域の光を生体内に伝播させ、光及び音響波を検出することで、生体内の情報を得る非侵襲の光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。
この光イメージングの一つとして、PAT(Photo Acoustic Tomography)と呼ばれる光音響イメージング技術がある。光音響イメージングは、光源から発生したパルス光を生体に照射し、生体内で伝播・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波を音響波検出器により検出する。その検知信号から生体内の光特性分布、特に、光エネルギー吸収密度分布をイメージングする技術である。
【0003】
光音響イメージング装置の例として、非特許文献1などにその装置の例が開示されている。非特許文献1では、被検体の周囲のうち一部にのみ検出器を配置している。被検体から発生する球面波はあらゆる方向に放出されることや、検出器の大きさや配線の問題などを考慮すると、限られた範囲にのみ検出器を置くことは常套手段である。このように、非特許文献1では、光吸収体から発生した音響波のうち、ある一方向に発生した音響波のみを取得するように音響検出器を配置している。
特許文献1では、楕円球面体の音響反射部材の一方の焦点に被検体を置き、他方の焦点に検出器を置くことで、被検体から放出される音響波を全て検出して信号強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−208050号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Srirang Manohar, et. al., “Region-of-interest breast images with the Twente Photoacoustic Mammoscope (PAM)”, Proc. of SPIE, Vol. 6437, 643702, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1のように特定の方向のみの音響波を検出するように音響波検出器を配置した場合は、光吸収体からその他の方向に放出される音響波を受信できないため、形状再現性を保てなくなる。形状再現性とは、音源となる光吸収体の形状を再構成画像で再現できる可能性のことを言う。例えば、図9(A)に示すように点状または球状の光吸収体からは球面波が放出され、検出器方向へ向かう光音響波が必ず存在するため、再構成時に図9(B)のように形状再現性を保てる。しかし、図9(C)に示すようにスラブ状または線状の光吸収体では、端からは球面波が検出方向へも放出されるが、中間部分からは平面波が垂直方向にのみ放出される。そのため、検出器方向に向かう光音響波を放出しない部分(ここでは全ての中間部分)が存在することになり、図9(D)のような画像が得られるだけで形状再現性を保てない。
【0007】
また、特許文献1も、検出器に向かう音響波を放出する光吸収体からの音響波を、音響反射部材を用いて他の方向から受信しているだけである。つまり、特許文献1でも、検出
器に向かわない方向に音響波を放出する光吸収体についての情報は得られず、形状再現性を保つことはできない。
【0008】
上記のような問題点を考慮して、本発明は、音波源の形状や音波源と検出器との位置関係によって、検出器に向かう音響波が存在しない場合であっても、音波源の形状再現性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様は、
被検体に光を照射する光源と、
前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波を検出する音響波検出部と、
前記光吸収体から放射される光音響波を前記音響波検出部へ反射する音響反射部と、
前記音響波検出部によって検出された光音響波から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理部と、
を有し、
前記演算処理部は、
前記音響波検出部によって検出された光音響波に再構成処理を施して空間情報を算出し、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された空間情報に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別し、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出し、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完する
ことによって前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める
ことを特徴とする光音響イメージング装置である。
【0010】
本発明の第二態様は、
音響波検出部と音響反射部とを備える光音響イメージング装置における被検体情報の解析方法であって、
被検体に照射した光により前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波を音響波検出部によって検出する検出工程と、
前記音響波検出部によって検出された光音響波から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理工程と、
を含み、
前記演算処理工程は、
前記音響波検出部によって検出された光音響波に再構成処理を施して空間情報を算出するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された情報画像に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出するステップと、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完するステップと、
を含むことを特徴とする被検体情報の解析方法である。
【0011】
本発明の第三態様は、
音響波検出部と音響反射部とを備える光音響イメージング装置において被検体の情報を得るためのコンピュータープログラムであって、
コンピューターに、
被検体に照射した光により前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波の検出信号を取得する取得工程と、
前記取得した検出信号から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理工程と、
を実行させるものであり、
前記演算処理工程は、
前記取得した検出信号に再構成処理を施して情報画像を算出するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された情報画像に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出するステップと、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光音響波検出器で吸収体から発生した多方面の音響波を検出できるようになるため、形状の再現性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る生体情報イメージング装置の構成例
【図2】生体情報イメージング装置の機能ブロック図
【図3】生体情報イメージング装置が行う処理のフローチャート
【図4】第1の実施形態における画像形成処理および最終画像の説明図
【図5】第2の実施形態に係る生体情報イメージング装置の構成例
【図6】第2の実施形態における画像形成処理の説明図
【図7】第3の実施形態に係る生体情報イメージング装置の構成例
【図8】第3の実施形態における画像形成処理の説明図
【図9】従来技術による再構成画像の例
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
[概要説明]
本発明の第1の実施形態における生体情報イメージング装置(光音響イメージング装置)について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における生体情報イメージング装置の構成例を示した図である。本実施形態の生体情報イメージング装置は、乳癌などの腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などのため、生体(被検体)内の光学特性分布の画像化を可能とするものである。被検体情報が画像化されたものを情報画像と称する。
【0015】
本実施形態の生体情報イメージング装置では、パルス光源11からの光20が生体12に照射される。照射された光20は生体内で拡散し、腫瘍、血管、生体内に導入された造影剤またはこれらに類する生体内(被検体内)の光吸収体13に吸収される。光吸収体13の熱膨張によって発生した音響波(弾性波)18は、音響波検出器(音響波検出部)14によって検出される。演算処理部16は、検出した音響波を再構成することによって生
体情報をイメージングする。
【0016】
また、音響波検出器14に直接入らなかった音響波18を音響波検出器14に入射させるために、生体と音響反射部15の間を音響マッチング材21で満たした音響反射部15を、音響波検出器14とは異なる方向に備える。これにより、音響波検出器14に直接入る音響波と、音響波検出器に直接入らない音響波18の一部を、検出器14で受信することが可能になる。
【0017】
本実施形態の生体情報イメージング装置は以下の各部によって構成される。
[パルス光源]
パルス光源11は、生体を構成する成分のうち特定の成分に吸収される特定の波長のパルス光を照射する手段として用いられる。本実施形態においては、10ナノ秒以下のパルス幅を有する近赤外光をパルス光として採用するが、数ナノから数百ナノ秒オーダーのパルス幅のパルス光を採用しても良い。
光源としてはレーザーが好ましいが、レーザーのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。
パルス光源11は、一個の光源で構成しても良いが、複数の光源で構成しても良い。複数の光源を用いてパルス光源11を構成する場合は、生体に照射する光の照射強度を上げるため、同じ波長を発振する光源を複数用いても良い。また、光学特性値分布の波長による違いを測定するために、発振波長の異なる光源を複数個用いても良い。なお、発振する波長の変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)を用いることができれば、光学特性値分布の波長による違いを測定することも可能になる。使用する光源の波長に関しては、生体内において吸収が少ない700nmから1100nmの領域が好ましい。比較的生体表面付近の生体組織の光学特性値分布を求める場合は、上記の波長領域よりも範囲の広い、例えば400nmから1600nmの波長領域を使用することも可能である。
【0018】
[音響波検出器]
音響波検出器(以下、単に「検出器」とも呼ぶ)14は、生体に照射された光のエネルギーを吸収した生体内の光吸収体から発生する音響波を検出し、電気信号に変換する。すなわち、検出器14は、音響波を受信し、受信した音響波の圧力に応じて電気信号を出力する。検出器14としては、圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなどを用いることができ、その種類に関しては特に限定しない。
また、本実施形態では、アレイ状の検出器を生体表面に配置させた場合を示しているが、このような配置に限らず、トモグラフィーを行うため、複数の箇所で音響波が検知可能に構成されていればよい。
すなわち、複数の個所で音響波を検知できれば同じ効果が得られるため、1個の音響波検出器を生体表面上で2次元に走査しても良い。また、光源と音響波検出器の位置関係は図に示す態様に限られず、例えば、音響波検出器を生体に対して同一方向に配置してもよい。
【0019】
[音響反射部]
音響反射部(以下、単に「反射部」とも呼ぶ)15は、生体12内の光吸収体13から放出される光音響波を検出器14方向へ反射する。反射部15は、一つまたは複数の反射部によって構成することができる。生体12の境界面での光音響信号のロスを避けるために、反射部15は、生体12とほぼ同じ音響インピーダンスを有する音響マッチング材21の中に配置される。反射部15は、光音響信号に対して反射率が高く、音響マッチング材21に対して安定なステンレスやアルミなどの材料により作成することが望ましい。
また、本実施形態では平面の音響反射面を有する反射部15を検出器14に対して垂直方向に配置しているが、反射部15の配置はこれに限られない。対象領域内から放射され検出器14に向かわない音響波を、検出器14に反射させることのできる位置および角度であれば、反射部15をどのように配置しても良い。なお、対象領域内というのは、イメージングの対象とする領域のことであり、光源照射されたパルス光が伝播できる範囲を言う。
反射部15は、様々な領域からの音響波を音響波検出器へ反射させるために、角度や位置を変更する反射部制御軸(制御部)23を備えていても良い。
【0020】
[演算処理部]
演算処理部16は、検出器14によって検出される音響波の検出信号を再構成することで、ボクセル化した生体の空間情報を演算する。演算処理部16は、検出される音響波の強さとその時間変化の情報に、逆射影法などによる再構成処理を施し、光学特性値分布(光エネルギー吸収密度分布)に変換する。演算処理部16は、反射部15の位置情報および角度情報を用いて、反射部15で反射して検出器14に入射した音響波(反射音響波)による像と、検出器14に直接入射した音響波(直接音響波)による像とを区別する。反射音響波の実際の音源位置は、反射部15の角度や、反射部15と検出器14の位置関係から求めることができる。つまり、演算処理部16は反射音響波から生体の空間情報を演算することができる。そして、演算処理部16は、直接音響波から得られる空間情報を、反射音響波から得られる空間情報で補完することで、画像情報を作成する。演算処理部16の処理により得られた画像情報は、画像表示部17に表示される。
演算処理部16は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置などを備えるコンピューターで構成することができる。コンピューターの補助記憶装置には、演算処理部16の機能を実現するためのコンピュータープログラムが格納されている。CPUが補助記憶装置からプログラムを主記憶装置にロードし実行することにより、図2に示される各機能部として機能する。また、演算処理部16は、図3に示されるS3〜S5の処理ステップを実行して、測定データから生体画像データ(情報画像)を生成する。
【0021】
以下、図面を参照しながら演算処理部16が行う、被検体情報の解析方法の詳細を説明する。まず、生体12にパルス光源11から光を照射し(S1)、光吸収体13から放出される光音響波を検出器14によって検出する(S2)。そして、空間情報算出手段103は、検出した音響波の情報を使って、ボクセル化した空間情報(ボクセルデータ)を演算する(S3)。なお、この段階では検出された音響波が直接音響波であるか反射音響波であるかの区別をせずに、検出された全ての音響波を使って再構成処理を実施して空間情報を演算する。したがって、空間情報算出手段103が演算する空間情報には、図4(A)に示すように反射部15で反射した反射音響波から得られる像50が含まれる。
次に、空間情報識別手段104は、生成された空間情報を、直接音響波から得られる像と、反射音響波から得られる像に区別する(S4)。直接音響波および反射音響波から得られる像の位置は、反射部位置・角度検知手段101から得られる反射部15の位置および角度と、検出器位置検知手段102から得られる検出器14の位置から求めることができる。具体的には、検出器14から見て反射部15の影となる領域51を算出し、この領域51に含まれる像を反射音響波による像であると判断できる。また、その他の領域52に含まれる像を直接音響波による像であると判断できる。ここで、反射音響波による像が位置する領域を虚空間と称し、直接音響波による像が位置する領域を実空間と称する。
空間情報識別手段104は、検出器14と反射部15の位置関係から、虚空間の範囲(領域51)を算出可能である。そして、虚空間以外の範囲(領域52)を実空間の範囲とみなす。このようにして求めた実空間の範囲には生体12が存在し得ない領域も含まれるが、上記のようにみなしても問題は生せず、簡便な処理で演算処理が実現可能である。空間情報識別手段104は、このようにして直接音響波による像(空間情報)と反射音響波
による像(空間情報)とを分離する。
なお、反射部15や検出器14の位置は、リニアエンコーダやロータリーエンコーダで構成されるセンサである反射部位置・角度検知手段101と検出器位置検知手段102によって取得できる。また、検出器14と反射部のそれぞれの位置を検出せずに、反射部15の検出器14に対する相対的な位置・角度を検出する構成としても良い。
空間情報補完手段105は、反射部15での反射波から得られる虚像(虚空間情報)から対応する実空間の像(実像)を求めて、直接音響波から得られる像(実空間情報)と合わせて、補完した情報画像を得る(S5)。虚空間内の位置に対応する実空間内の位置は、虚空間の座標を実空間の座標に合わせる座標変換によって実現できる。本実施形態のように平面型の反射部を用いている場合は、反射部に対する面対称性を使って、虚空間と実空間の間の情報を変換できる。虚空間情報を利用して実空間情報を補完した空間情報を図4(B)に示す。このようにして、実空間情報と虚空間情報とを用いて生成した空間情報は、画像表示部17に表示される(S6)。図4(A)では、虚像空間を説明のために表示したが、実際のイメージング装置としては必ずしもこの虚空間を表示しなくてもよい。
【0022】
さらに、生体中の腫瘍や血管疾患と疑われる部分などを詳細に見る場合は、音響波検出器と光照射位置を固定して、反射部制御軸23を使って反射部の角度または位置を変化させ、それぞれの角度または位置で測定を行う。このとき、それぞれの反射部の角度または位置において実空間情報を虚空間情報で補完し、それぞれ補完した分布図を足し合わせることが好ましい。反射部の位置や角度を変えることで、様々な領域の光吸収体をイメージングできるだけでなく、特定方向にしか光音響波を放出しない光吸収体を再現性良くイメージングできるようになる。
反射板が複数の場合、多重反射して検出器に入ってきた音波による虚空間情報も使って実空間情報を補完してもよい。多重反射が発生しているか否かの判断や、多重反射が発生している場合の音波源の位置特定(座標変換処理)も、上記手法と同様にして行うことが可能である。
【0023】
このように、検出部に向かう方向への音響波を放出しない光吸収体からの音響波を、音響反射部を用いて反射させて検出器で検出することで、スラブ状や線状の光吸収体の形状再現性を向上させられる。
【0024】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態における生体情報イメージング装置について説明する。図5に、本実施形態における生体情報イメージング装置の構成例を説明する図を示す。なお、図1と同じ構成については同じ符号を付している。
【0025】
本実施形態においては、光源11から照射された光を、光導波路22を介して生体12に横(検出器面の法線と直交する方向)から照射している。そして、光照射側と反対側に、曲面の音響反射面を持った反射部24を備えている。この反射部24は、検出器14に入らない音響波18を検出器14に入射させるためのものである。なお、反射部24を移動したり回転させるための反射部制御軸(制御部)23をさらに備えることも好ましい。反射部24の位置や角度を変えることで、様々な領域からの音響波を検出器14へ反射させることができる。
【0026】
演算処理部16は、第1の実施形態と同様に、検出器14が検出する音響波から空間情報を演算し、それを直接音響波による像と反射音響波による像(虚像)に区別し、虚像を座標変換した上で実空間の情報と重ね合わせる。図6に示すように、虚空間51は検出器14と反射部24の位置関係から求めることができる。反射部24の形状や検出器14との位置関係は既知であるため、虚像50を実像に変換することができる。このような変換は、座標変換行列として表すことができる。そして、虚像を座標変換した空間情報を、実
像の空間情報と重ね合わせることで光吸収体13の空間情報を得る。
【0027】
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、スラブ状や線状の光吸収体の形状再現性を向上させられる。
【0028】
なお、本実施形態では音響反射部24を音響波検出器14に対して垂直方向に配置しているが、検出器の範囲外で対象領域内からの音響波を音響波検出器に反射させる角度であれば、どこにおいてもよい。
また、反射部24の位置や角度を変えて複数回測定を行い、各々の測定で得られる情報画像を足し合わせて一つの情報画像として表示することも好ましい。反射部の位置や角度によって光音響波を検出できない被検体領域が存在することが考えられるが、反射部24の位置や角度を変えて複数回の測定を行うことで、検出漏れを少なくでき、したがって、形状再現性が向上する。
また、生体イメージング領域を変化させるために、光源の位置をスキャンまたは移動することも好ましい。また、光源ではなく光導波路の位置を変化させても良い。さらに、光源等を移動させる代わりに、複数の位置に同じ光源を配置してもよい。
【0029】
<第3の実施形態>
次に、本発明の実施例3における生体情報イメージング装置について説明する。図7に、本実施例における生体情報イメージング装置の構成例を説明する図を示す。なお、図1と同じ構成については同じ符号を付している。
【0030】
本実施形態における生体イメージング装置は、パルス光源11と、光源11から照射された光を生体12に導く光導波路22を備える。本実施形態においては、パルス光源11からの光を検出器14と同じ方向から生体12に照射している。生体12は音響マッチング材、例えば音響マッチングジェルや水で満たした容器25の中に浸っている。
【0031】
また、本実施形態における生体イメージング装置は、音響波検出器14に入らなかった音響波18を音響波検出器14に入射させるために、音響反射部15を備えている。容器25は台形形状であり、長辺に検出器14が設けられ、斜辺のそれぞれに反射部15が設けられている。これにより、検出器14に向かわなかった音響波18を反射させて、検出器14に入射させることができる。
【0032】
演算処理部16は、第1,2の実施形態と同様に、検出器14が検出する音響波から空間情報を演算し、それ直接音響波による像と反射音響波による像(虚像)に区別し、虚像を座標変換した上で実空間の情報と重ね合わせる。図8に示すように、虚空間51は検出器14と反射部15の位置関係から求めることができる。反射部15の形状や検出器14との位置関係は既知であるため、虚像50を実像に変換することができる。このような変換は、座標変換行列として表すことができる。そして、虚像を座標変換した空間情報を、実像の空間情報と重ね合わせることで光吸収体13の空間情報を得る。
【0033】
多重反射によるアーティファクトを減らすために、検出器14や反射部15ではない、容器25の壁には音響吸収部26を備えても良い。また、台形形状の容器を例に説明をしたが、容器25の形状は必ずしも台形形状に限られず、任意の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0034】
11・・パルス光源、 12・・生体、 13・・光吸収体、 14・・検出器、 15・・反射部、 16・・演算処理部、 24・・反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光を照射する光源と、
前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波を検出する音響波検出部と、
前記光吸収体から放射される光音響波を前記音響波検出部へ反射する音響反射部と、
前記音響波検出部によって検出された光音響波から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理部と、
を有し、
前記演算処理部は、
前記音響波検出部によって検出された光音響波に再構成処理を施して空間情報を算出し、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された空間情報に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別し、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出し、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完する
ことによって前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める
ことを特徴とする光音響イメージング装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記音響波検出部と前記音響反射部の形状と相対的な位置および角度とから、前記反射音響波による像が得られる空間の領域を算出し、当該領域に含まれる像を反射音響波による像であると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の光音響イメージング装置。
【請求項3】
前記音響反射部は、平面の音響反射面をもつことを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項4】
前記音響反射部は、曲面の音響反射面をもつことを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項5】
前記音響反射部は、一個または複数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項6】
前記音響反射部を移動または回転するための制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光音響イメージング装置。
【請求項7】
前記音響反射部の位置または角度を変えて複数回測定し、前記演算処理部は、各々の測定について光吸収体の情報画像を求め、得られた各々の情報画像を足し合わせる
ことを特徴とする請求項6に記載の光音響イメージング装置。
【請求項8】
音響波検出部と音響反射部とを備える光音響イメージング装置における被検体情報の解析方法であって、
被検体に照射した光により前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波を音響波検出部によって検出する検出工程と、
前記音響波検出部によって検出された光音響波から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理工程と、
を含み、
前記演算処理工程は、
前記音響波検出部によって検出された光音響波に再構成処理を施して空間情報を算出するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された情報画像に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出するステップと、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完するステップと、
を含むことを特徴とする被検体情報の解析方法。
【請求項9】
前記区別するステップでは、前記音響波検出部と前記音響反射部の形状と相対的な位置および角度とから、前記反射音響波による像が得られる空間の領域を算出し、当該領域に含まれる像を反射音響波による像であると判断する
ことを特徴とする請求項8に記載の被検体情報の解析方法。
【請求項10】
前記音響反射部の位置または角度を変えて複数回測定し、各々の測定について光吸収体の情報画像を求め、得られた各々の情報画像を足し合わせることを特徴とする請求項8または9に記載の被検体情報の解析方法。
【請求項11】
音響波検出部と音響反射部とを備える光音響イメージング装置において被検体の情報を得るためのコンピュータープログラムであって、
コンピューターに、
被検体に照射した光により前記被検体内の光吸収体から放射される光音響波の検出信号を取得する取得工程と、
前記取得した検出信号から、前記被検体内の光吸収体の情報画像を求める演算処理工程と、
を実行させるものであり、
前記演算処理工程は、
前記取得した検出信号に再構成処理を施して情報画像を算出するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して、前記算出された情報画像に含まれる像を、前記音響波検出部へ直接入射した直接音響波による像と、前記音響反射部に反射して音響波検出部へ入射した反射音響波による像とに区別するステップと、
前記音響波検出部と前記音響反射部の相対的な位置および角度を利用して前記反射音響波による像の実像を算出するステップと、
算出された前記反射音響波による像の実像を用いて、前記直接音響波による像を補完するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120780(P2011−120780A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281912(P2009−281912)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】