説明

免疫抑制のためのFLT3阻害剤

免疫系を抑制するため及び免疫関連の疾患を治療するための新規な方法が提供される。本発明の治療法には、FLT3阻害剤化合物を、それを必要とする対象、例えば、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、後天性免疫不全症候群、関節炎、再生不良性貧血、移植片対宿主病、グレーブス病、確立された実験的アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、狼瘡、又は神経系の疾患などを患う対象への投与が含まれる。また、FLT3受容体の活性レベルの高いマウスの使用を含む、免疫障害疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年7月19日に出願の米国特許仮出願第60/589,511号の優先権を主張するものであり、その全てを参照して本明細書に取り込む。
【0002】
(発明分野)
本発明は、細胞の免疫応答を抑制すること、免疫関連の疾患を予防又は治療すること、並びに免疫関連の疾患を予防又は治療するための治療剤をスクリーニングする方法に関する。本発明の治療法には、FMS関連のチロシンキナーゼ3(FLT3)阻害剤を、移植後の臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、移植片対宿主病、又は狼瘡を患っているような、それを必要とする対象に投与することを包含する。免疫の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法には、FLT3受容体の活性レベルが高いマウスの使用が含まれる。
【背景技術】
【0003】
免疫関連の疾患、特に移植後の臓器拒絶反応、糖尿病、移植片対宿主病、グレーブス病、及び狼瘡は、依然として世界中の数百万の人々を冒す衰弱性疾病である。
【0004】
免疫関連の疾患は、個体に潜在的な壊滅的かつ不可逆的副作用を引き起こし、例えば免疫システムが増大した結果として発症する。免疫関連の疾患、例えば、骨髄移植拒絶反応、移植後の固形臓器拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、グレーブス病、溶血性貧血、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、ウェグナー肉芽腫症、糖尿病1型、重症筋無力症、及び乾癬は、免疫システムの様々な過剰な活動により引き起こされる。最近の治療法は、免疫応答のT細胞アームの殆どの部分に作用し、その結果重篤な免疫抑制を招くことがよくある。
【0005】
従って、このような徴候に対する治療のための新規な治療法を得ることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要約)
本発明者らは、ここに細胞の免疫応答を抑制する方法、免疫関連の疾患を治療する方法、並びに免疫関連の疾患及び神経系の疾患を含むFLT3疾患及びFLT3関連の疾患を治療する治療剤のスクリーニングのための方法を提供する。特に、FMS関連のチロシンキナーゼ3(FLT3)によるシグナル伝達を阻害することにより、例えば、インビボで成長する樹状細胞(DC)の数を減少させることにより、またT細胞を活性化させるそれらの能力を低下させることにより、FLT3及びFLT3関連の疾患を治療することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、FLT3の活性を低下させる少なくとも1つのFLT3阻害剤を細胞に接触させることを含んでなる、その細胞の免疫応答を抑制する方法を提供する。
【0008】
ある特定の態様では、前記細胞は、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞、又は神経系の細胞、例えば、ニューロン、グリア細胞、オリゴデンドロサイト(乏突起神経膠細胞)、シュワン細胞、星状細胞、ミクログリアである。前記ニューロンの例では、例えば、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、神経内分泌細胞、分裂終了神経、胚性ニューロン又は網膜の神経節細胞の1つ又はそれ以上を含んでいる。
【0009】
ある特定の態様では、FLT3のキナーゼ活性が低下している。関連する態様では、FLT3の自己リン酸化活性が低下している。
【0010】
一態様によれば、前記FLT3阻害剤は、小分子、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗FLT3抗体、抗FLT3抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ペプチドをコードする核酸、有機分子及びそれらの何れかの組合せの1つ又はそれ以上から選択される。関連する態様では、前記小分子は、CEP701、AG1296、AG1295、CEP−5214、CEP−7055、PKC412、SU11248、SU5416、SU5614、MLN518、BAY43−9006、CHIR−258、アミノ−ベンゾイミダゾール−キノロン類、Ki23819、スタウロスポリン誘導体の1つ又はそれ以上から選択される。
更なる関連する態様では、小分子は、式I:
【0011】
【化003】

【0012】
(式中、
Wは、C、N又はOであってもよく;
Xは、C、N又は存在しない、であってもよく;
Yは、Cであってもよく;
Zは、C又はNであってもよく;そして
R基は、以下のR1〜R5の置換されている可変基であってもよく:
R1は、H、アルコキシ、ヒドロキシル又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R2は、H、F、アルコキシ又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R3は、H、O、アリール、ヘテロアリール又はC(O)ヘテロアリールであってもよく;
R4は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、CH−ヘテロアリール又は存在しない、であってもよく;
R5は、H、アリール、ヘテロアルキル/アリール又は存在しない、であってもよく;そして、
WX、WY、YZ、YR3及びZR4に於ける破線は、二重結合であってもよいことを示し、ここに於けるアリール、ヘテロアリール及び複素環アルキル/アリールは、置換されていてもよい)。
更に別な関連する態様では、小分子は、以下に示される化合物から選択される。
【0013】
【化004】




【0014】
関連する態様では、前記抗体が、IMC−EB10及びIMC−NC7の1つ又はそれ以上から選ばれる、請求項6に記載の方法である。関連する態様では、前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、霊長類化抗体及びそれらの何れかの組合せであってよい。一態様では、前記抗体はFLT3のリン酸化型を特異的に認識し、別の態様では、前記抗体はFLT3の非リン酸化型を特異的に認識する。
【0015】
関連する態様では、前記アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、図9のヌクレオチド配列又はそれらの生物活性を有する断片の1つ又はそれ以上から選択される。
別の態様では、前記FLT3阻害剤は、FLT3依存性シグナル伝達を低下させる。
一態様では、前記FLT3阻害剤は細胞の免疫賦活能を下方制御する。
本発明のある特定の方法は、前記FLT3阻害剤と共にT細胞阻害剤を投与することを更に含むことがある。
【0016】
一態様では、対象に於けるFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療する方法が提供される。その方法は、FLT3阻害剤の治療有効量を対象に投与してFLT3の活性を低下させることを含む。
本発明の治療法は、FLT3疾患又はFLT3関連の疾患の治療を必要とする対象を同定することを更に含み、及び/又はそれによりFLT3疾患又はFLT3関連の疾患について対象を治療する。
【0017】
一態様では、前記FLT3疾患又は関連の疾患は、免疫関連の疾患である。
関連する態様では、前記免疫関連の疾患とは、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡並びにその他の自己免疫疾患のうちの1つ又はそれ以上のものである。本発明の方法は、骨髄非破壊的な処置療法及びそれらを組み合わせて施術した後に骨髄生着を促進させるためにも用いられてもよい。
【0018】
一態様では、前記FLT3疾患又はFLT3関連の疾患は、神経系の疾患である。
関連する態様では、前記神経系の疾患は、例えば軸索変性によって起こる疾患のような神経変性疾患の1つ又はそれ以上である。神経変性疾患としては、例えば、多発性硬化症;脱髄性疾患、例えば多発性硬化症、急性横断性脊髄炎;及び筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症及び若年性脊髄性筋萎縮症などの運動単位の障害疾患;クロイツフェルト・ヤコブ病;又は亜急性硬化性全脳炎が挙げられる。
【0019】
一態様では、前記対象は哺乳動物である。
別の態様では、前記哺乳動物は、ヒト、霊長類、ネズミ、イヌ、ネコ又はマウスである。
一態様では、前記FLT3阻害剤は、小分子、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗FLT3抗体、抗FLT3抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ペプチドをコードする核酸、有機分子及びそれらの何れかの組合せの1つ又はそれ以上から選択される。
一態様では、前記アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、図9のヌクレオチド配列又はそれらの生物活性を有する断片の1つ又はそれ以上から選択される。
【0020】
別の態様では、前記FLT3阻害剤は、対象に於けるFLT3のキナーゼ活性を低下させる。
一態様では、前記FLT3阻害剤は、対象に於けるFLT3の自己リン酸化活性を低下させる。
一態様では、前記FLT3阻害剤は、対象に於けるFLT3依存性シグナル伝達を低下させる。
別の態様では、前記FLT3阻害剤は、対象に於ける免疫賦活能を下方制御する。
一態様では、本方法は、FLT3阻害剤と共にT細胞阻害剤を投与することを更に含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、FLT依存のシグナル伝達を低減するために、FLT3阻害剤の治療有効量を対象に投与することを含んでなる、対象のFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療する方法を提供する。
別の態様では、本発明は、恒常的に活性化されたFLT3受容体を有するトランスジェニック非ヒト動物を提供する。一態様では、前記トランスジェニック動物はマウスである。
別の態様では、前記トランスジェニック動物は、治療剤をテストするために、及び/又は免疫関連の疾患のモデルとして用いられる。
【0022】
別の態様では、FLT3受容体の活性レベルが高いマウスに薬剤を投与する、そして免疫応答の変化を測定して、免疫応答の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる免疫関連の疾患を治療するための、治療剤をスクリーニングする方法が提供される。
一態様では、免疫応答の変化はDC細胞の数の減少で示される。関連する態様では、免疫応答の変化はNK細胞の数の減少で示される。別の関連する態様では、免疫応答の変化は、DC共刺激タンパク質のレベル判定により測定して、DC共刺激タンパク質のレベルの増加が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す。
【0023】
一態様では、前記DC共刺激タンパク質はB7−DCである。一態様では、免疫応答の変化をT細胞増殖アッセイにより測定して、T細胞増殖の減少が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す。
治療剤を真核細胞へ投与する、そして細胞に於ける免疫応答の変化を測定して、細胞の免疫応答の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる、免疫関連の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0024】
一態様では、前記細胞は、樹状細胞、NK細胞、脾細胞、T細胞及びそれらの混合物の1つ又はそれ以上から選択される。別の態様では、細胞の免疫応答の低下は、DC共刺激タンパク質のレベル判定により測定して、DC共刺激タンパク質のレベルの増加が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す。
別の態様では、前記DC共刺激タンパク質はB7−DCである。
別の態様では、免疫応答の変化をT細胞増殖の判定により測定して、その場合、T細胞増殖の減少が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す。
【0025】
一つの態様では、薬剤をMOGペプチドで免疫化されたマウスに投与する、そしてニューロンを可視化して、軸索の調節が、神経系の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる神経系の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法が提供される。
一態様では、軸索の変化は、変性した軸索の数の減少で示される。
【0026】
別の態様では、可視化は顕微鏡検査による。一つの態様では、治療剤をニューロン細胞へ投与する、そして細胞における変化を測定して、変性した神経の数の減少が、神経系の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる神経系の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングするための方法が本明細書に提供される。
【0027】
一態様の治療法には、FLT3活性を低下させるために、FLT3阻害剤の治療有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、免疫関連の疾患の治療が含まれる。別の態様の治療法には、FLT3依存性シグナル伝達を低下させるために、FLT3阻害剤の治療有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む。また、治療法には、腫瘍ワクチン接種時の耐性の破壊も含まれる。
【0028】
一態様の治療法には、哺乳動物、特にヒトを含む、動物のFLT3シグナル伝達を阻害することのできる治療剤の1つ又はそれ以上の治療有効量を、このような治療を必要とする対象に投与することを包含する。具体的には、免疫関連の疾患を患っている又は患う恐れがある対象を、同定及び/又は選択し、その後FLT3阻害化合物の1つ又はそれ以上を、同定及び/又は選択した対象へ投与することが好ましい。
【0029】
一態様として、免疫関連の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法には、FLT3活性レベルの高いマウスのような哺乳動物又はその他の対象へ投与すること、及び免疫応答を測定することが含まれる。別の態様の免疫関連の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法には、薬剤を細胞へ投与すること及び免疫応答を測定することが含まれる。
本発明のその他の態様を、以下に開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
上記のように、また下記の実施例に示すように、FLT3を阻害することが、免疫関連の疾患を治療するのに効果的であることが見出された。それらの疾患には、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、後天性免疫不全症候群、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、低ガンマグロブリン血症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、狼瘡及びそれらの何れかの組合せが含まれる。
【0031】
FLT3は、造血前駆細胞で優先的に発現する受容体のチロシンキナーゼである(Small et al., Blood 15(4):1110-9(1993))。樹状細胞(DC)の数がFLT3リガンドの配位子(FL)で活性化されて増加することで示されるように、FLT3受容体によるシグナル伝達はDCにおいて重要な役割を果たす。FLT3によるシグナル伝達は、造血幹細胞及び前駆細胞に影響を与えることが知られている。T細胞、NK細胞及びB細胞の成長に重要であると考えられる、FLT3による下流側のシグナル伝達を、FLT3阻害剤は、抑制することができる。FLT3シグナル伝達の阻害が、DCの数を減少させ、そしてT細胞を活性化させる抗原を提示するDCの能力を妨げることは、驚くべき発見であった。FLT3は、シグナル伝達のためにそのチロシンキナーゼ領域を必要とし、従って、FLT3シグナル伝達を阻害する1つの方法は、この酵素活性を阻害することである。また、FLT3のFL活性は、免疫システムで重要な役割をもつNK細胞及びBリンパ球の成長を大いに刺激するが、このためFLT3シグナル伝達の阻害は、これらの細胞も同じように抑制する効果を有している。
【0032】
FLT3は、DC前駆体で発現し、そしてFL/FLT3シグナル伝達が、骨髄(BM)、脾臓、リンパ節、胃腸管、肝臓、肺臓、腹膜腔及び皮膚においてDCの数を大きく増加させる、結果を導く。例えば、「S. D. Lyman, Curr Opin Hematol 5, 192-6, (1998)」、「H. J. McKenna, K. L., et al., Blood 95, 3489-97, (2000)」、「E. Maraskovsky, et al., J Exp Med 184, 1953-62, (1996)、マウス及びヒトに於けるFLに刺激されたDCの機能」、「M. R. Shurin, et al., Cell Immunol 179, 174-84,(1997)」及び「E. Maraskovsky, et al., Blood 96, 878-84,(2000)、GM−CSFのDC産生の活性化」を参照されたい。GM−CSF又はFLの何れかがインビボで劇的にDCを増加させるが、生じたDCの表現型は多少異なるようであり、これらのサイトカインがDCにおいて異なる経路を活性化させることができることが示唆される。例えば、「E. Daro, et al., J Immunol 165, 49-58, (2000)」、「K. Brasel, et al., Blood 96, 3029-39, (2000)」、「P. Bjorck, Blood 98, 3520-6, (2001)」及び「P. J. O′Connell, et al., J Immunol 165, 795-803, (2000)」を参照されたい。GM−CSFはCD11b−/CD11c+のDCを主に増殖させるが、FLは、特に、(骨髄の)CD11b+/CD11c+及び(リンパの)CD11b−/Cd11c+の両方のDCサブセットを増殖させると思われる。
【0033】
正常HSCsでのリガンド結合において、FLT3はホモ二量体化し、そのキナーゼ領域が活性化される。FLT3キナーゼの活性化は、幾つかの結果をもたらす。FLT3はチロシン残基上の多数の基質タンパク質を直接リン酸化し、次にこれらのタンパク質を活性化する。更に、FLT3は、幾つかのチロシン残基上でそれ自体をリン酸化し、その後これらの残基はSH2領域を含むアダプタータンパク質の多くと結合する。FLT3シグナル伝達に関与すると見られるタンパク質には、PI−3キナーゼのp85サブユニット、PLCy、VAV、CBL、CRKL、Gab1及び2、SHP2、SHIP、SHC、並びにSTAT5が挙げられる。最終的には、核に作用して細胞の遺伝プログラムを変更するシグナルを形質導入する結果となる。これらのシグナルの幾つかが増殖を刺激し、他のシグナルは細胞をアポトーシスから保護するか又は分化を推進すると思われる。
【0034】
本発明者らは、特にFLT3の小分子阻害剤、例えば、CEP701、AG1296、AG1295及びCEP−5214が、FLT3シグナル伝達によって免疫応答を抑制できることを見出した。また、本発明者らは、抗FLT3抗体が、受容体の活性化を阻害してFLT3シグナル伝達を妨げること、そしてアンチセンスFLT3分子もFLT3発現を妨げて、この結果FLT3による免疫応答を阻害することも見出した。
【0035】
一態様の細胞の免疫応答を抑制する方法には、真核細胞の細胞群を準備すること、そしてFLT3の活性を低下させるFLT3阻害剤の少なくとも1つを、細胞に接触させることを含む。本明細書で用いるFLT3の活性は、キナーゼ活性、下流シグナルを伝達する能力、自己リン酸化活性等を示す。
【0036】
「投与」又は「投与すること」という用語は、本発明の化合物を、それらの意図された機能を発揮するように、対象へ導入する経路を含む。用いられる投与経路の例として、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、くも膜下腔内)、経口、吸入、直腸及び経皮が挙げられる。医薬製剤は、それぞれの投与経路に適した形態で投与してよい。例えば、これらの製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態で、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐剤などにより投与さる。投与は注射、注入又は吸入により;局所へはローション剤又は軟膏により;直腸へは坐剤により投与される。経口投与が好ましい。注射はボーラスであっても、連続的な注入であってもよい。投与経路に応じて、本発明の化合物は、その意図される機能を発揮させる効能に悪影響を及ぼす自然状態から化合物を保護するように、選択された材料でコーティングするか又は処理することができる。本発明の化合物は、単独で、又は上記のその他の薬剤若しくは薬学的に許容される担体のどちらかと一緒に又は両方共一緒に投与できる。本発明の化合物は、その他の薬剤の投与前に投与しても、その薬剤と同時に投与しても、又はその薬剤の投与後に投与してもよい。更に、本発明の化合物は、インビボでその活性代謝物に、又はより活性のある代謝物に変換されるプリフォームの形で投与することもできる。
【0037】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基を示し、直鎖のアルキル基、分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換のシクロアルキル基、及びシクロアルキル置換のアルキル基が含まれる。アルキルという用語は、炭化水素骨格の1個又はそれ以上の炭素と置き換わる酸素、窒素、硫黄又はリン原子を更に含むアルキル基、例えば、酸素、窒素、硫黄又はリン原子を更に含む。好ましい態様では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格中に30個又はそれより少ない炭素原子(例えば、直鎖ではC−C30、分岐鎖ではC−C30)、好ましくは26個又はそれより少ない、より好ましくは20個又はそれより少ない、また更により好ましくは4個又はそれより少ない炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキル基は、その環構造中に3〜10個の炭素原子を有し、より好ましくはその環構造中に3個、4個、5個、6個又は7個の炭素を有する。
【0038】
更に、本明細書及び本文中で用いられるアルキルという用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の1個又はそれ以上の炭素上の水素と置き換わる置換基を有するアルキル部分を示すことを意図する。このような置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェイト、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェイト、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくは芳香族複素環部分が挙げられる。当業者であれば、炭化水素鎖に置換する部分は、適切な場合にはそれら自体が置換することができることを当然理解するであろう。シクロアルキルは、例えば、上記の置換基でさらに置換することができる。「アルキルアリール」部分とは、アリールで置換されたアルキルである(例えば、フェニルメチル(ベンジル))。また、「アルキル」という用語には、上記のアルキルに鎖長及び置換の可能性が似ているが、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪族基が含まれる。
【0039】
炭素の数が別に指定されていない限り、本明細書において用いる「低級アルキル」は、上記に定義される通りであるが、その骨格構造中に1〜10個の炭素、より好ましくは1〜6個、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、tert−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。好ましい態様では、「低級アルキル」という用語には、その骨格中に4個又はそれより少ない炭素原子を有する直鎖アルキル、例えば、C−Cアルキルが含まれる。
【0040】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、上記のアルキルに鎖長及び置換の可能性が似ているが、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪族基を示す。例えば、本発明では、シアノ基及びプロパルギル基を意図する。
【0041】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、0〜4個のヘテロ原子を含んでもよい5員及び6員の単環芳香族基を含む、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン等のアリール基を示す。また、アリール基は、ナフチル、キノリル、インドリル等の多環式の縮合芳香族基を示す。環構造にヘテロ原子を有するアリール基も、「アリール複素環」、「ヘテロアリール」又は「芳香族複素環」として示される。芳香族環は、環の1つ又はそれ以上の位置で上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェイト、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェイト、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくは芳香族複素環部分で置換することができる。アリール基は、また多環(例えば、テトラリン)を形成するような芳香族でない脂肪族環又は複素環と縮合又は架橋することができる。
【0042】
本発明の化合物の「生物活性」という語には、応答細胞において本発明の化合物により発現する全ての活性が含まれる。それにはこれらの化合物により発現するゲノム活性及び非ゲノム活性が含まれる。
「生物学的組成物」又は「生体サンプル」とは、細胞若しくは生体高分子を含有するか又はそれらに由来する組成物を示す。細胞を含有する組成物としては、例えば、哺乳動物血液、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮液、血液細胞タンパク質、血漿、多血小板血漿、濃縮血漿、血漿の何れかの分画からの沈殿物、血漿の何れかの分画からの上清、血漿タンパク質画分、精製又は部分精製の血液タンパク質若しくはその他の成分、血清、精液、哺乳動物の初乳、乳、唾液、胎盤抽出物、クリオ沈殿物、クリオ上清、細胞ライセート、哺乳動物の細胞培養又は培地、発酵生成物、腹水、血液細胞に誘導されたタンパク質、及び正常細胞又は形質転換細胞により細胞培養中に(例えば、組換え型DNA又はモノクローナル抗体技術によって)生成された生成物が挙げられる。生物学的組成物は無細胞であってもよい。好ましい態様では、好適な生物学的組成物又は生体サンプルは、赤血球懸濁液である。幾つかの態様では、血液細胞懸濁液には、哺乳動物の血液細胞が含まれる。血液細胞は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ又はブタから得ることが好ましい。好ましい態様では、血液細胞懸濁液には、赤血球及び/又は血小板及び/又は白血球及び/又は骨髄細胞が含まれる。
【0043】
「キラル」という用語は、鏡像相手と重ね合わせることができない特性を有する分子を示し、一方、「アキラル」という用語は、鏡像相手と重ね合わせることのできる分子を示す。
「ジアステレオマー」という用語は、不斉中心を2つ又はそれ以上含み、それらの分子が互いの鏡像でない、立体異性体を示す。
【0044】
「有効量」という用語は、所望の結果を得る、つまりFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療するのに、必要な用量及び投与期間での有効な量である。本発明の化合物の有効量は、対象の疾病の状態、年齢、及び体重、並びに対象において所望の応答を発現させる本発明の化合物の効能のような要因によって変化する。用量の投与計画は、最適な治療応答を提供するように修正される。有効量は、また本発明の化合物の如何なる有毒又は有害な効果(例えば、副作用)をも、治療上有益な効果が上回る量でもある。
【0045】
本明細書で用いられるFLT3疾患又はFLT3関連の疾患は、FLT3に関連して、直接的又は間接的にFLT3によって発症する、すべての疾患又は症状を示す。FLT3疾患及び関連の疾患としては、例えば、免疫関連の疾患及び神経変性疾患が挙げられる。免疫関連の疾患としては、例えば、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡並びにその他の自己免疫疾患のうちの1つ又はそれ以上のものである。本発明の方法はまた、骨髄非破壊的な処置療法及びそれらを組み合わせて施術した後に骨髄生着を促進させるためにも用いられてもよい。神経変性疾患としては、例えば、軸索変性疾患(例えば、多発性硬化症;多発性硬化症、急性横断性脊髄炎などの脱髄性疾患;並びに筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症及び若年性脊髄性筋萎縮症などの運動単位の障害疾患を含む);クロイツフェルト・ヤコブ病;又は亜急性硬化性全脳炎が挙げられる。
【0046】
本発明の化合物の治療有効量(すなわち有効用量)は、約0.001〜30mg/kg・体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg・体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg・体重、更により好ましくは約1〜10mg/kg・体重、2〜9mg/kg・体重、3〜8mg/kg・体重、4〜7mg/kg・体重、又は5〜6mg/kg・体重でありうる。当業者であれば、これらに限定されるものではないが、対象の疾病又は疾患の重篤度、治療歴、一般的な健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患をはじめとする特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要とされる用量に影響を及ぼすことを理解するであろう。更に、治療有効量の本発明の化合物での対象の治療には、1回の治療を含んでもよいし、好ましくは、連続治療を含んでもよい。一つの実施例では、本発明の化合物の約0.1〜20mg/kg・体重を1週間当たりの1回の用量として、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、よりさらに好ましくは約4、5、又は6週間、対象を治療する。本発明の化合物の治療に用いられる有効用量を、特定の治療のコースで増加又は減少させてもよいことも理解される。治療は、化合物の最適な用量より少ない量から開始してもよい。その後、その治療状況下で最適な効果が得られるまで用量を少しずつ増加させてよい。便宜上、必要に応じて1日投与量の合計量を分割し、1日の間に少量ずつ投与してよい。本発明の化合物の治療有効量及び予防上有効な抗ウイルス量は、体重1キログラム当たり1日量を約0.1ミリグラム〜約100mg/kg/日の範囲で変化すると予測される。
【0047】
本明細書で用いる「対象から生体サンプルを得ること」は、本明細書に記載の方法での使用のためにサンプルを得ることを含む。生体サンプルは上記の通りである。
本明細書で用いる、それを必要とする対象を同定することは、自己確認によるか、又は医療専門家の診断により実施してよい。
本明細書で用いる、それを必要とする対象とは、FLT3関連の疾患の予防的治療を必要とする対象、又はFLT3関連の疾患と診断された対象である。
【0048】
「エナンチオマー」という用語は、1つの化合物の2つの立体異性体であって、互いに重ね合わせることのできない鏡像体を示す。2つのエナンチオマーの等モル混合物を、「ラセミ混合物」又は「ラセミ化合物」と呼ぶ。
【0049】
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲンでモノ−、ジ−又はポリ置換されている上記定義のアルキル基、例えば、フルオロメチル及びトリフルオロメチルを含むことを意図する。
「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Br又は−Iを表す。
「ヒドロキシル」という用語は、−OHを意味する。
本明細書において用いる「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外の全ての元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及びリンである。
【0050】
「ホメオスタシス」という用語は、内部環境において静的な、又は一定の状態を維持することを意味すると当該技術分野で認識されている。
「改良された生物学的特性」という語は、本発明の化合物がインビボでその有効性を向上させる、特有な活性の全てを示す。好ましい態様では、この用語は、毒性を軽減させる、例えば、高カルシウム血症活性を低下させるような、本発明の化合物が定性的又は定量的に改良する全ての治療特性を意味する。
【0051】
「置換されていてもよい」という用語は、非置換の基、又は1つ又はそれ以上の置換可能な位置、具体的には1、2、3、4又は5位に、1個又はそれ以上の水素以外の好適な基(同一であっても異なっていてもよい)で置換されている基を包含することを意図する。このような任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノン、C−Cアルキルチオ、アミノ、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノ、ハロC−Cアルキル、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、−COOH、−CONH、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニル、−SONH、及び/又はモノ−又はジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド、更に炭素環基及び複素環基が挙げられる。また任意の置換基は、「0〜X個の置換基で置換されている」(ここに於けるXは、可能な置換基数の最大数である)という語句でも示される。ある特定の置換されていてもよい基は、0個〜2個、3個又は4個のそれぞれ独立して選ばれる置換基で置換されている(すなわち非置換であるか又は挙げられる最大数までの置換基で置換されている)。
【0052】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、非芳香族の、完全に飽和の3〜9員の単環式、8〜12員の二環式、又は11〜14員の三環式であり、もし単環式であれば1〜3個のヘテロ原子、二環式であれば1〜6個のヘテロ原子、又は三環式であれば1〜9個のヘテロ原子を含む(前記ヘテロ原子がO、N、S、B、P又はSiから選択される)。ヘテロシクロアルキル基は、1個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよい。一態様では、ヘテロシクロアルキル基の各環の0個、1個、2個、3個又は4個の原子は、置換基で置換されていてもよい。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、4−ピペリドニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン(tetrahydrothiopyranyl sulfone)、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、チイレンが挙げられる。
【0053】
「異性体」又は「立体異性体」という用語は、同一の化学成分を有するが、原子又は基の空間での配置において異なる化合物を示す。本明細書において化合物は、全ての異性体及び立体異性体を含むことを意図する。
「調節する」という用語は、所望の最終結果、例えば治療成果が得られるように、本発明の化合物への曝露に応答して細胞の活性を増加又は低下させること、例えば、動物における細胞の少なくとも1亜集団の増殖の阻害及び/又は分化の誘導を示す。好ましい態様では、この語句には細胞のウイルス感染を含むものとする。
【0054】
「FLT3阻害剤を得ること」における「得ること」という用語は、阻害剤を購入すること、合成すること、又は別な方法で入手することを含むよう意図する。
本明細書で用いられる「非経口投与」及び「非経口投与した」という用語は、経腸投与及び局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、これらに限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内及び胸骨内の注射及び注入が挙げられる。
【0055】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで代謝される部分を有する化合物が含まれる。一般に、プロドラッグは、インビボでエステラーゼによるか又はその他のメカニズムにより代謝されて、活性な薬物となる。プロドラッグ及びそれらの使用の例は、当該技術で公知である(例えば、「Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19」を参照願いたい)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離及び精製時にそのまま調製するか、又は精製された化合物を個別にその遊離酸又はヒドロキシルの形態で、適したエステル化剤と反応させることにより調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸で処理することにより、エステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換及び非置換の、分枝若しくは非分枝の低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸(propionoic acid)エステル)、低級アルケニルエステル、ジ−低級アルキル−アミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール−低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロ、又はメトキシ置換基での)置換アリール及びアリール−低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ−低級アルキルアミド、並びにドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分はプロピオン酸エステル及びアシルエステルである。インビボでその他のメカニズムによって活性な形態へ変換されるプロドラッグも含まれる。
【0056】
化合物の「予防上有効な量」という語は、FLT3関連の疾患の予防又は治療に患者に単一回又は複数回の投与で有効な、式(I)の化合物又は本明細書に記載の別な化合物を含む、本発明の化合物の量を示す。
「毒性を軽減させる」という語は、インビボで投与した場合に本発明の化合物により発現される何れかの望ましくない副作用の軽減、例えば高カルシウム血症活性を低下させることを含むよう意図される。
「スルフヒドリル」又は「チオール」という用語は、−SHを意味する。
【0057】
「対象」という用語には、FLT3疾患若しくはFLT3関連の疾患を患う可能性のある、又は本発明の化合物の投与により別に利点を得ることのできる生物、例えばヒト及び非ヒト動物が含まれる。好ましいヒト動物には、本明細書に記載のように、FLT3疾患、FLT3関連の疾患又は関連する症状を患っているか又は患いやすいヒト患者が含まれる。本発明の「非ヒト動物」という用語は、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、例えばヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。FLT3疾患又はFLT3関連の疾患に感受性が高いとは、FLT3疾患又はFLT3関連の疾患を発症するリスクのある対象、すなわち免疫抑制された対象を含むことを意味する。
【0058】
本明細書で用いる「置換基」又は「置換された」という用語は、化合物又は基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、へテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクリル基等)の水素基が、化合物の安定性に実質的な悪影響を与えない何れか所望の基で置換されることを意味する。一態様では、望ましい置換基は、化合物の活性に悪影響を与えない置換基である。化合物の活性に実質的に影響を与える置換基は、化合物のIC50値を100□Mより大きくする置換基である。好ましい態様では、本発明の化合物は、アッセイ又は活性を示すテストにおいて、IL−12に関連する(又はIL−23若しくはIL−27に関連する)疾病又は症状の治療に有用なIC50値を有する。このようなアッセイは当業者に周知であり、例えば、本明細書に記載のアッセイ、例えば、実施例12〜14のアッセイが含まれる。好ましい態様では、アッセイは実施例12のアッセイであり、化合物のIC50値は1.0mM未満、より好ましくは100□M未満、より好ましくは10□M未満、より好ましくは1□M未満、より好ましくは100nM未満、及びより好ましくは10nM未満である。「置換された」という用語は、水素原子を置き換えた1個又はそれ以上の各々の置換基(同一であっても、異なっていてもよい)を示す。置換基の例としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン(F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ(つまり、カルボニル)、チオ、イミノ、ホルミル、カルボアミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト(thiocyanato)、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリルが挙げられ、ここにおけるアルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル及びヘテロシクリルは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、又はイミノ(=NRc)で置換されていてもよい。
【0059】
別の態様では、任意の基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、へテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロシクリルのような)の置換基は、その任意の基の何れかの原子上にあり、この場合、置換基で置換されている任意の基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、へテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロシクリルのような)は、1個又はそれ以上の置換基(同一であっても異なっていてもよい)で、水素原子を各々置き換えて置換されていてもよい。適した置換基の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクリル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、へテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、オキソ(つまり、カルボニル)、カルボキシル、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、チオ、メルカプト、メルカプトアルキル、アリールスルホニル、アミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル又はアルコキシカルボニルアミノ;アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルカルボニル又はアリールアミノ置換アリール;アリールアルキルアミノ、アラルキルアミノカルボニル、アミド、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、イミノ、カルバミド、カルバミル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール又はメルカプトアルコキシが挙げられる。
【0060】
本明細書で用いる「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」及び「末梢に投与される」という語句は、患者のシステムに入り、これにより代謝及びその他の類似のプロセスに従事するような、本発明の化合物、薬物又はその他の物質の投与、例えば皮下投与を意味する。
【0061】
キラル中心の命名法に関して、「d」及び「l」の立体配置という用語は、IUPAC勧告に定義される通りである。用語の使用に関して、ジアステレオマー、ラセミ化合物、エピマー及びエナンチオマーは、通常の文脈中で用いられて調製物の立体化学を説明する。天然に存在する異性体又は合成異性体は、当該技術で公知の幾つかの方法で分離することができる。2つのエナンチオマーからなるラセミ混合物の分離方法には、キラル固定相を用いるクロマトグラフィーが挙げられる(例えば、「"Chiral Liquid Chromatography," W. J. Lough, Ed. Chapman and Hall, New York (1989)」を参照願いたい)。エナンチオマーは、また古典的な分割技術により分離することもできる。例えば、ジアステレオマー塩の形成及び分別結晶法を用いて、エナンチオマーを分離することができる。カルボン酸のエナンチオマーの分離のために、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ等のエナンチオマー的に純粋なキラル塩基の添加によりジアステレオマー塩を形成することができる。あるいは、メントールのようなエナンチオマー的に純粋なキラルアルコールを用いてジアステレオマーエステルを形成し、その後ジアステレオマーエステルの分離及び加水分解により、遊離したエナンチオマー濃縮のカルボン酸が得られる。アミノ化合物の光学異性体を分離するために、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸又は乳酸のようなキラルなカルボン酸又はスルホン酸を添加すると、ジアステレオマー塩が形成される。
【0062】
本明細書で用いる「免疫応答の抑制すること」とは、細胞又は動物、特に哺乳動物の免疫応答を開始する又は持続する能力を低下させること、細胞の免疫賦活能を下方制御すること等を示す。例えば、FLT3活性を低下させるとは、免疫応答を抑制すること、又はFTL3依存性シグナル伝達を低下させることの1つの例である。FLT3によるシグナル伝達の「抑制」には、次の状態:減速、遅延及び停止と同等、のうちの何れか又は全てが含まれる。抑制することには、またアポトーシスまで到達するDC細胞、NK細胞及びB細胞が包含される。
【0063】
「治療有効量」とは、臨床の成果を含む、有益な成果又は所望の成果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回又はそれ以上の投与回数で投与することができる。本発明の目的において、有効量の治療剤とは、疾病状態の進行を緩和する、症状を改善させる、症状を安定させる、症状の進行を逆戻りさせる、減速させる又は遅延させるために十分な量である。有効量とはまた、患者への単一回又は複数回の投与時に、又はFLT3疾患若しくはFLT3関連の疾患の患者の生存率を、このような治療を施さない時に予期される率より高めるのに有効な薬剤の量でもある。
【0064】
本明細書で用いる「治療」又は対象を「治療すること」には、疾病又は疾患、疾病又は疾患の症状、又は疾病又は疾患のリスク(又は感染しやすいこと)を、治療、治癒、緩和、軽減、変更、是正、改善、好転させる又は影響を与える目的で、疾病又は疾患(例えば、免疫関連の疾患)を有するか、疾病又は障害疾患の症状を有するか、又は疾病又は障害疾患のリスクのある(又は感染しやすい)対象への治療剤(例えば、小分子、抗体又はアンチセンス核酸)の適用又は投与、又は対象に由来の細胞又は組織への治療剤の適用又は投与が含まれる。
【0065】
前記の通り、FLT3阻害剤には、小分子、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗FLT3抗体、抗FLT3抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ペプチドをコードする核酸、有機分子及びそれらの何れかの組合せが含まれる。
【0066】
FLT3阻害に有用な小分子の例としては、CEP701、AG1296、AG1295、CEP−5214、CEP−7055、PKC412、SU11248、SU5416、SU5614、MLN518、BAY43−9006、CHIR−258、アミノ−ベンゾイミダゾール−キノロン類、Ki23819、スタウロスポリン誘導体及び発見されている又は発見されるであろうその他の分子が挙げられる。CEP701、AG1296、AG1295、(「新規なFLT3拮抗薬・MLN518のフェイズI臨床結果:許容性、薬物動態学及び薬力学(抄録)De Angelo, et al.,(2003) Blood 102, 219a」、「野生型(WT)又は突然変異のFLT3で特徴付けられる急性脊髄白血病(AML)/ハイリスク骨髄異形成症候群(MDS)の患者(pts)でのチロシンキナーゼ阻害剤・PKC412のランダムのフェイズII試行(抄録)Estey, et al.,(2003) Blood 102, 2270a」、「強力なFLT3阻害剤・MLN518のFLT3ITD白血病細胞系列でのシタラビン及びダウノルビシンとの相乗効果の提示(抄録)Heinrich, et al.,(2003) Blood 102, 330a」、「新規な選択的FLT3拮抗薬・CT53518の急性骨髄性白血病(AML)治療、Kelly, L. M., et al.(2002c), Cancer Cell 1, 421-432」、「FLT3標的のチロシンキナーゼ阻害剤のインビトロ及びインビボでの白血病細胞への細胞毒性、Levis, M., et al.,(2002) Blood 99, 3885-3891」、「新規なFLT3チロシンキナーゼ阻害剤、Levis, M., and Small, D.(2003b) Expert Opin Investig Drugs 12, 1951-1962」、「インビトロ及びインビボで強力な活性を有する新規なFLT3チロシンキナーゼ阻害剤・SU11248、O'Farrell, et al.,(2003a) Blood 101, 3597-3605」、「再発又は難治性の急性骨髄白血病の患者で生物活性及び臨床効果を示す新規なFLT3阻害剤・単一薬剤CEP701、Smith, B. D., et al.,(2004) Blood, in press」、「AMLにおけるFLT3阻害剤・PKC412療法:フェイズII試行の結果、Stone, R. M., et al.(2004) Ann Hematol 83 Suppl 1, S89-90」、「チロシンキナーゼ阻害剤によるAML患者のFLT3内部の直列重複変異体の形質転換活性の阻害、Tse, K. F., et al.,(2002) Leukemia 16, 2027-2036」、「チロシンキナーゼ阻害剤の使用によるFLT3介在の形質転換の阻害、Tse, K. F., et al.,(2001) Leukemia 15, 1001-1010」、「小分子チロシンキナーゼ阻害剤・PKC412による白血病細胞の変異体FLT3受容体の阻害、Weisberg, E., et al.,(2002) Cancer Cell, 433-443」及び「SU5416及びSU5614の野生型及び変異体FLT3受容体チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性の阻害、Yee, K. W., et al.,(2002) Blood 100, 2941-2949」を参照願いたい。
【0067】
「t(4;14)多発性骨髄腫の治療のためのFGFR3を標的とする小分子阻害剤・CHIR258の臨床前研究、Suzanne Trudel et al.;presented at the 95th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research, March 2004, in Orlando, FIa.」、「成長因子チロシンキナーゼ受容体の小分子阻害剤・CHIR258でのインビボの耐久性ある標的の調節と強力な抗腫瘍効果のある種々の服薬スケジュールとの関連、Sang Hoon Lee et al.;presented at the 95th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research, March 2004, in Orlando, FIa.」、「インビボでの抗血管新生作用及び抗腫瘍作用と受容体チロシンキナーゼの小分子阻害剤・CHIR258による標的の調節との関連、Sang Hoon Lee et al.;presented as a Symposium Talk at the Keystone Symposium on Protein Kinases and Cancer」、「分子ベース療法の見込み、February 2004, in Silverthorne, Colo」及び「ヒトの急性骨髄性白血病の異種移植片治療におけるFLT3キナーゼ阻害剤・CHIR258の臨床前薬理、Daniel Menezes et al.;presented at the American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting December, 2003, in San Diego, Calif.」を参照願いたい。 Ki23819は、「Leukemia (2005) 19, 930-935, 07 April 2005」に開示されている。各論文はあらゆる目的において参照してその全体を本明細書に取り込む。
【0068】
本発明の方法で有用な化合物の更なる例として、以下の米国特許又は米国特許出願(公開番号で記載)、第20050143442号、第20050143382号、第20050137201号、第20050020570号、第20030219827号、及び第20040106615号に記載される化合物が挙げられ、これらはあらゆる目的において参照してその全体を本明細書に取り込む。
【0069】
本発明による使用に好ましいFLT3の阻害剤の例として、インドリノン化合物、ビス(1H−2−インドリル)−1−メタノン化合物、インドロカルバゾール化合物、及びキノキサリン化合物が挙げられ、好ましくはこのような化合物が本明細書に記載のようなFLT3阻害活性を示す。本発明による使用に特に好ましいFLT3阻害剤は、以下に表される化合物を含む。
【0070】
【化005】




【0071】
本発明において有用なFLT3阻害化合物は、式I:
【0072】
【化006】

【0073】
(式中、
Wは、C、N又はOであってもよく;
Xは、C、N又は存在しない、であってもよく;
Yは、Cであってもよく;
Zは、C又はNであってもよく;そして
R基は、以下のR1〜R5の置換されている可変基であってもよく:
R1は、H、アルコキシ、ヒドロキシル又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R2は、H、F、アルコキシ又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R3は、H、O、アリール、ヘテロアリール又はC(O)ヘテロアリールであってもよく;
R4は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、CH−ヘテロアリール又は存在しない、であってもよく;
R5は、H、アリール、ヘテロアルキル/アリール又は存在しない、であってもよく;そして、
WX、WY、YZ、YR3及びZR4に於ける破線は、二重結合であってもよいことを示す)
で表される化合物を含む。
式Iの置換基は、本明細書に記載の置換基で置換されていてもよい。
【0074】
本発明の治療法の特定の治療剤の有効性は、容易に判定することができる。例えば、好適な化合物をインビトロアッセイにより同定することができる。このアッセイはFLT3の自己リン酸化を阻害する効能についてのアッセイであり、次の工程、1)潜在的なFLT3阻害剤を細胞に接触させること、及び2)対照(つまり、1つ又は複数の潜在的な化合物で処理されていない同じ細胞)に対して、前記細胞のFLT3のリン酸化状態を測定すること、を含む。このような工程1)及び2)を含むような自己リン酸化アッセイは、本明細書において「標準FLT3インビトロアッセイ」と定義され、「チロシンキナーゼ阻害剤を用いたFLT3介在の形質転換の阻害:Tse, K. F., Novelli, E., Civin, C. I., Bohmer, F. D., and Small, D.(2001) Leukemia, 15(7):1001-10」で考察されている。
【0075】
有用である潜在的なFLT3阻害化合物を、後に続く実施例に開示されるように評価することもでき、それには、潜在的なFLT3阻害薬剤をFLT3受容体の活性レベルが高いマウスに投与すること、及び免疫応答の変化を測定することが含まれ、この場合、免疫応答の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であり得ることを示す。この場合、その潜在的に有用な化合物は、I型インターフェロンの活性を低下させるインターフェロン拮抗薬の添加又は同時投与をせずに有用である。しかし、ある特定の態様では、I型インターフェロンの活性を低下させるインターフェロン拮抗薬の添加が有用なこともある。本明細書で用いられる「インターフェロン拮抗薬」は、対象内の細胞又はインビトロ細胞においてI型インターフェロンの活性又は機能を低下させることのできる抗体、抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチドをコードする核酸、有機分子又はそれらの何れかの組合せを包含する。
【0076】
本発明の治療法での使用に好ましい治療剤は、標準インビトロFLT3阻害剤アッセイで測定して、少なくとも50%、そして好ましくは90%を上回ってFLT3活性を阻害する。より好ましくは、薬剤は、標準インビトロFLT3阻害剤アッセイにおいて、FLT3活性を少なくとも約45%又は65%阻害し、さらにより好ましくは、FLT3を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%阻害する。
【0077】
本明細書で用いられる「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」という用語は、Fab又はその抗原認識断片を含む、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを包含する全ての型の免疫グロブリンを示す。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってもよく、(例えば)マウス、ネズミ、ウサギ、ウマ又はヒトを含む種の何れかの種類であってもよく、又はキメラ抗体であってもよい。例えば、「M. Walker et al., Molec. Immunol. 26:403-11 (1989)」、「Morrision et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. 81:6851 (1984)」及び「Neuberger et al., Nature 312:604 (1984)」を参照願いたい。抗体は、米国特許第4,474,893号(Reading)又は米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.)に開示される方法に従って作製した組換えモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、また米国特許第4,676,980号(Segel et al.)に開示される方法に従って作製した特異的抗体により化学的に構築してもよい。抗体は、モノクローナル、キメラ、抗イディオタイプ、ヒト化、霊長類化及びそれらの何れかの組合せであってもよい。
【0078】
FLT3抗体には、その活性化を阻害するような方法でFLT3と結合する抗体が含まれる。これには、FLT3と結合し、そしてFLT3に結合するFLをブロックするか又はFLT3の立体構造の変化を引き起こすかのどちらかで、そのシグナルを送る能力を遮断して、FLT3を活性化するFLの能力を阻害する、ポリクローナル及びモノクローナルの両方の抗体を含む。このような抗体に関しての「結合しない」という用語は、FLT3に結合することと比較して、実質的に反応しないことを意味する。FLT3抗体の例としては、IMC−NC7及びIMC−EB10が挙げられる(完全なヒト抗FLT3中和の抗体による野生型又はITD変異体のFLT受容体を発現するモデルにおけるヒト白血病の抑制:Li, Y., Li, H., Wang, M., Lu, D., Wu, Y., Bassi, R., Zhang, H., Ludwig, D., Pytowski, B., Kussie, P., Piloto, O., Small, D., Bohlen, P., Witte, L., Zhu, Z., and Hicklin, DJ. Blood (Epub 2004, in press, 2004))。
【0079】
抗体は、リン酸化FTL3又は非リン酸化FTL3と結合する抗体を含んでいてもよい。抗体は、リン酸化又は非リン酸化FTL3の何れかに特異的であってもよい。抗体との関連で本明細書で用いられる特異的とは、FTL3を識別し、FTL3と独占的に結合する抗体の能力を示す。
リン酸化又は非リン酸化FLT3を識別する抗体はまた、本発明のFLT3阻害剤の有効性又は細胞若しくは対象の免疫応答の抑制を測定するのに有用でありえる。例えば、リン酸化FLT3のレベルは、このような抗体を用いて、例えばウエスタンブロットによって測定することができる。
【0080】
当該技術で公知の種々の手順が、FLT3に対する抗体又はそのタンパク質の断片、誘導体、同族体若しくは類似体の製造に用いられる。本発明の抗体は、これらに限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え作製された抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fvs(scFv)(二重特異性scFvを含む)、一本鎖抗体Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合のFvs(sdFv)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記の何れかのエピトープ結合断片が挙げられる。特に、本発明の抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位(例えば、抗体の1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR))を有する分子が挙げられる。
【0081】
抗体の製造のため、例えば、天然のFLT3タンパク質若しくは合成体、又は前述の誘導体を用いて注射により種々の宿主動物を免疫化することができる。このような宿主動物には、これらに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ネズミなどが挙げられる。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて、免疫応答を増加させることができ、そのようなアジュバントとして、これらに限定されるものではないが、(完全及び不完全な)フロイント、(水酸化アルミニウムのような)無機物ゲル、(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、ジニトロフェノールのような)界面活性物質、及び(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin:BCG)及びコリネバクテリウム属パルバム(Corynebacterium parvum)のような)潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられる。FLT3又はその誘導体、断片、同族体若しくは類似体に対するモノクローナル抗体の製造のためには、連続継代培養細胞系による抗体分子の製造に提供される何れの技術を用いてもよい。
【0082】
このような技術としては、これらに限定されないが、Kohler及びMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ法(1975, Nature 256:495-497)、トリオーマ法(Gustafsson et al., 1991, Hum. Antibodies Hybridomas 2:26-32)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72)、及びヒトモノクローナル抗体を作製するEBVハイブリドーマ法(Cole et al., 1985, In: Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)が挙げられる。本発明の追加の態様では、モノクローナル抗体は、国際特許出願PCT/US90/02545号に記載される最近の技術を用いて無菌動物において産生することができる。FLT3のイディオタイプを含む抗体断片は、当該技術で公知の技術により生成することができる。例えば、このような断片には、これらに限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により産生できるF(ab’)2断片;F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を少なくすることにより産生できるFab’断片;抗体分子をパパイン及び還元剤で処理して産生できるFab断片;及びFv断片、が挙げられる。合成抗体、例えば化学合成により産生される抗体は、本発明において有用である。
【0083】
標的FLT3mRNA配列と結合することのできる(二重鎖を形成する)、又は二本鎖DNAヘリックス中のFLT3配列と結合することのできる(三重ヘリックスを形成する)、一本鎖核酸配列(RNA又はDNAの何れか)を含むアンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドを、本発明に従って産生できる。本発明によれば、アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドは、FLT3cDNAのコーディング領域の断片を含む。このような断片は、一般に少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは、約14〜約30ヌクレオチドを含む。所与のタンパク質のcDNA配列に基づいてアンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドを産生できることは、例えば、「Stein and Cohen, Cancer Res. 48:2659, 1988」及び「van der Krol et al., Bio Techniques 6:958, 1988」に記載されている。アンチセンス・オリゴヌクレオチドとしては、例えば、Small、D.、Levenstein、M.、Kim、E.K.、Carow、C、Amin、S.、Rockwell、P.、Witte、L.、Burrow、C、Ratajczak、M.、Gewirtz、A.M.及びCivin、C.I.が挙げられる。Flk−2/FLT3のヒト同族体である、STK−1は、CD34+ヒト骨髄細胞で選択的に発現し、早期の前駆体/幹細胞の増殖に関与する。「Proc. Natl. Acad. Sci. 91:459-463, 1994」を参照願いたい。図9に配列を示す。有用な配列としては、図9に示した全配列又はその生物学的に活性な断片が挙げられる。当業者であれば、通常の方法でそれらの有用な断片を容易に同定することができるであろう。
【0084】
アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドと標的核酸配列との結合の結果、二重鎖の分解促進、転写又は翻訳の早期終止、又はその他の方法を含む幾つかの方法のうちの一方法により、翻訳(RNA)又は転写(DNA)を阻害する複合体が形成される。従ってアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、FLT3タンパク質の発現を阻害するのに用いることができる。アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドは、修飾された糖−ホスホジエステル骨格(又はWO91/06629号に記載のようなその他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドを更に含み、この場合、このような糖結合は内因性ヌクレアーゼに対して抵抗性を示す。抵抗性のある糖結合を有するこのようなオリゴヌクレオチドは、インビボで安定している(つまり、酵素分解に抵抗することができる)が、標的ヌクレオチド配列と結合できる配列特異性を保持する。センス又はアンチセンス・オリゴヌクレオチドのその他の例としては、WO90/10448号に記載のような有機部分、及びポリ−(L−リシン)のようなオリゴヌクレオチドの標的核酸配列に対する親和性を高めたその他の部分と、共有結合しているオリゴヌクレオチドが挙げられる。なお更に、エリプチシンのようなインターカレート剤、及びアルキル化剤又は金属錯体を、センス又はアンチセンス・オリゴヌクレオチドに付着させてアンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列に対する結合特異性を修飾してもよい。
【0085】
アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドは、例えば、CaPOに媒介されるDNAトランスフェクション法、エレクトロポレーション法、又はエプスタイン−バーウイルス(Epstein-Barr virus)のような遺伝子導入ベクターを用いることによる、を含む何れかの遺伝子導入法により標的核酸配列を含有する細胞へ導入してよい。アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドは、インビボ又はエキソビボの何れかで、アンチセンス又はセンス・オリゴヌクレオチドを好適なレトロウイルスベクターへ挿入し、次に挿入された配列を含有するレトロウイルスベクターを、標的核酸配列を含有する細胞に接触させることによって、導入することが好ましい。好適なレトロウイルスベクターとしては、これらに限定されるものではないが、マウスレトロウイルスM−MuLV、N2(M−MuLV由来のレトロウイルス)、又はDCT5A、DCT5B及びDCT5Cと名付けられたダブルコピーベクター(PCT出願米国90/02656号を参照願いたい)が挙げられる。
【0086】
センス又はアンチセンス・オリゴヌクレオチドを、WO91/04753号に記載のように、リガンド結合分子との結合体の形成により標的ヌクレオチド配列を含有する細胞へ導入してもよい。好適なリガンド結合分子として、これらに限定されるものではないが、細胞表面受容体、増殖因子、その他のサイトカイン、又は細胞表面受容体と結合するその他のリガンドが挙げられる。リガンド結合分子の結合が、リガンド結合分子のその対応する分子又は受容体と結合する能力を実質的に干渉しないか、又はセンス若しくはアンチセンス・オリゴヌクレオチド又はその結合体の細胞への進入を阻害しないことが好ましい。
【0087】
あるいは、センス又はアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、WO90/10448号に記載のように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により、標的核酸配列を含有する細胞へ導入してもよい。センス又はアンチセンス・オリゴヌクレオチド−脂質複合体は、細胞内で内在性リパーゼにより分離されることが好ましい。
【0088】
ポリヌクレオチドの例として、限定するものではないが以下の通りである:遺伝子又は遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換え型ポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体のような修飾されたヌクレオチド、ウラシル(uracyl)、その他の糖類及びフルオロリボースとチオエートのような結合基、並びにヌクレオチドの分枝物、を包含していてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後更に、標識成分との結合による修飾をしてもよい。この定義に含まれるその他の型の修飾としては、キャップ、1個又はそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの類似体での置換、及びタンパク質、金属イオン、標識成分、その他のポリヌクレオチド又は固相支持体にポリヌクレオチドを接着させる手段の導入、が挙げられる。ポリヌクレオチドはDNAであることが好ましい。本明細書で用いられる「DNA」には、塩基A、T、C及びGを含むだけでなく、メチル化ヌクレオチドのようなそれらの類似体又はこれらの塩基の修飾された形態の何れか、非荷電結合及びチオエートのようなヌクレオチド間修飾、糖類似体の使用、並びにポリアミドのような修飾及び/又は代替骨格構造も含まれる。ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域は、別な配列に対して特定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%、又は95%)の「配列同一性」を有し、2つの配列を比較して整列させた場合、そのパーセンテージの塩基が同一であることを意味する。このアラインメント及びホモロジー又は配列同一性パーセントは、当該技術で公知のソフトウェアプログラム、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, section 7.7.18」に記載のものを用いて判定することができる。好ましいアラインメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software, Pennsylvania)であり、デフォルトパラメータを用いることが好ましく、デフォルトパラメータは次の通りである:mismatch=2;open gap=0;extend gap=2。
【0089】
本発明の一態様では、インターフェロン拮抗薬は、I型インターフェロンとその受容体との結合を減少させる。別の態様では、インターフェロン拮抗薬は、インターフェロンが対象の細胞上の受容体と結合した後にシグナル伝達を干渉する。別の態様では、インターフェロン拮抗薬は、対象の細胞によるインターフェロンの産生を低下させる。別の態様では、インターフェロン拮抗薬は、対象において細胞によるインターフェロン分泌を減少させる。さらに別の態様では、インターフェロン拮抗薬は、対象のインターフェロンのバイオアベイラビリティを低下させる。更なる態様では、インターフェロン拮抗薬はTNFである。
【0090】
本明細書で用いられる「I型インターフェロン」は、IFN−α、IFN−β、IFN−varpi、及びIFN−τを含む。「Oritani et al. (2001) Cytokine Growth Factor Rev. 12(4): 337-48」には、I型インターフェロンのその他の例が記載されている。
インターフェロン拮抗薬は、(IFN−αのような)I型インターフェロンとその受容体との間の相互作用を妨げ、その結果、抗原提示細胞となるDCへの単球の分化を減少させることにより、抗原提示細胞の産生の減少をもたらす。抗原提示細胞の産生の減少は、1つ又はそれ以上の異なる機構により達成されるが、それが起こる厳密な機構は本発明では重大ではない。例えば、TNF及び/又はアゴニストの抗TNF受容体抗体は、pDCのI型IFN非産生細胞への分化を促進することによりI型インターフェロン分泌を低下させることができる。
【0091】
ある化合物が本発明で有用なインターフェロン拮抗薬であるかどうかを、同定するために実行することのできるアッセイは多数存在する。これらのアッセイは、当業者には周知である。1つのアッセイは、単球のDCへの分化に適した条件下で、テストする化合物を単球培養物に添加する、樹状細胞分化アッセイである。単球のDCへの分化を誘導するために、この条件には、SLE血清又はインターフェロンの何れかの添加されている。従って、化合物を添加していない培養中の単球の分化と比較して、化合物が、インターフェロン及び/又はSLE血清が導く単球のDCへの分化を阻害するならば、その化合物はインターフェロン拮抗薬である。
【0092】
インターフェロン拮抗薬である化合物を同定する別のアッセイは、標識されたインターフェロンの細胞上の受容体への結合を阻害するのを測定する結合実験である。化合物が、インターフェロンとその受容体との結合、又はインターフェロンとインターフェロン受容体を有する細胞との結合を阻害することができるならば、その化合物はインターフェロン拮抗薬である。
【0093】
更に、化合物がインターフェロン拮抗薬であるかどうかを判定するアッセイは、通常インターフェロン産生及び/又は分泌を誘導する誘因、例えばウイルスに応答した細胞によるインターフェロンの産生を阻害する程度を測定するアッセイである。従って、化合物及び誘因(例えばウイルス)の存在下で、通常はインターフェロンを産生する細胞がインターフェロンを産生しないか、又は低いレベルでしかインターフェロンを産生しないならば、その化合物はインターフェロン阻害剤である。
【0094】
一態様では、治療有効量のインターフェロン拮抗薬を同定するアッセイは、治療中の対象から採取した血清へのインターフェロン受容体のインビトロでの結合を減少させるのに必要なインターフェロン拮抗薬の量を測定することである。本明細書の実施例では、インビトロで結合を50%減らすのに必要な濃度が、インビボで治療上有効となる。
【0095】
本発明の一態様では、インターフェロン拮抗薬は、抗IFN−α抗体又はその抗原結合断片を含む。本発明の別の実施形態では、インターフェロン拮抗薬はTNFである。本発明の一態様において、組成物の要素でありえる抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体及びそれらの何れかの組合せを含む。
特定の態様では、本発明の方法は、免疫応答の発生を抑制すること、遅らせること、高まった免疫応答を治療すること、又は細胞の免疫応答を低下させることを提供する。
【0096】
本発明の治療法には、免疫関連の疾患(特に、臓器移植の結果として)又はその他の免疫関連の疾患を患う哺乳動物細胞若しくは哺乳動物対象を選択すること、又は同定することが含まれる。治療のための細胞の例としては、種々の真核細胞、例えばDC細胞、B細胞、T細胞及びNK細胞が挙げられる。
また、本発明は、対象の免疫関連の疾患を治療する方法を提供する。この方法は、対象に治療有効量のFLT3阻害剤を投与してFLT3の活性を低下させることを含む。
【0097】
治療方法は、対象のFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療する方法を提供する。対象は哺乳動物であってよく、この場合の哺乳動物は、ヒト、霊長類、ネズミ、イヌ、ネコ又はマウスである。方法には、特に、移植後の臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、低ガンマグロブリン症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡の結果としての、免疫関連の疾患を患っているか若しくは潜在的に患っている、又は患うリスクの高いグループにいる哺乳動物対象を同定する工程が含まれる。本発明の方法は、骨髄非破壊的な処置療法又はそれらを組み合わせて施術した後の骨髄生着を促進させるためにも用いてもよい。対象が同定されると直ちに、FLT3の活性を低下させるために、治療有効量のFLT3阻害剤を投与する。ある特定の態様によれば、FLT3阻害剤は対象のFLT3依存性シグナル伝達を低下させる。この方法は、T細胞阻害剤の同時投与を更に含んでいてもよい。好適なT細胞阻害剤の例は、後で考察される。
【0098】
その他の態様によれば、投与したFLT3阻害剤は、対象の免疫賦活能を下方制御する。患者の自己免疫疾患を治療する方法は、患者の樹状細胞の数を減らすのに十分な量のFLT3阻害剤を投与する工程を含んでもよい。更に、それを必要とする患者に治療有効量のFLT3阻害剤を投与することにより、移植片並びに移植された組織及び臓器の生着を促進するための方法が含まれる。
【0099】
本発明は、臓器移植、肺移植、肝臓移植等のための外科手術をうける患者に、1つ又はそれ以上の本発明の化合物を投与することを含む、特に、治療のための方法を提供する。従って、免疫応答及び潜在的な臓器拒絶反応を減少させるために、1つ又はそれ以上の本発明の化合物の有効量を、手術前に、及び/又は手術時前後に、及び/又は手術後に投与することができる。
【0100】
FTL3阻害剤は、例えば、1日に1回、1日に2回、1日に3回又は1日に4回投与してよい。FTL3阻害剤は、例えば、錠剤形態、粉末形態、液体形態で又はカプセル剤で投与できる。毎日投与されるFTL3阻害剤の量は、対象の体重、年齢、健康状態、性別又は病状に基づいて増加させても減少させてもよい。
【0101】
本発明の方法は、免疫抑制療法及び/若しくは予防法を提供するため、又は神経系の疾患からの保護若しくは神経系の疾患の治療を提供するために、哺乳動物対象、例えばヒトの治療に特に有用である。具体的に、このような対象として、移植片対宿主病、糖尿病1型、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、及び狼瘡のような、免疫関連の疾患に苦しむ対象が挙げられる。
【0102】
これらの方法による治療に適した個体として、免疫関連の疾患の初期又は後期にある個体、更に治療、例えば臓器移植を受けたか又は受ける直前の個体を含む、免疫関連の疾患を有する又は免疫関連の疾患の疑いのある個体が挙げられる。本明細書に記載される方法に適したその他の個体は、関節炎、糖尿病1型、関節リウマチ、クローン病又は多発性硬化症の発症に対して遺伝的素因を有する個体、及び/又は免疫関連の疾患の発症と関連がある薬剤に曝された個体、のような免疫関連の疾患を発症するリスクが高いと考えられる個体である。
【0103】
免疫関連の疾患の存在及び本明細書に記載される方法を受ける個体の適合性は、イメージング技術、血清マーカーの分析及び生検のような診断方法を含む、当該技術で公知の何れかの技術により確定することができる。
【0104】
別の態様において、本発明の方法では、これらに限定されるものではないが、プロテアーゼ阻害剤、抗炎症薬剤、T細胞阻害剤、化学療法薬剤、抗炎症薬剤、解熱剤、増感剤、放射線防護剤、泌尿器薬剤、制吐薬剤、及び/又は下痢止め薬剤等を含む、免疫関連の疾患のその他の既知治療と併せて投与する、すなわち同時投与することができる。例としては、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、メトトレキサート、タクロリムス、シスプラチン、カルボプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、マイトマイシン、ゲフィチニブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アセトアミノフェン、ミソニダゾール、アミフォスチン、タムスロシン、フェナゾピリジン、オンダンセトロン、グラニセトロン、アロセトロン、パロノセトロン、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンザミド、アプレピタント、アトロピン含有ジフェノキシレートが挙げられる。本発明のFLT3阻害剤と同時投与されるのに適した化合物のその他の例は、「Progress in Drug Research, "Recent advances in immunosuppressants," Bijoy Kundu and Sanjay K. Khare, Vol. 52 (E. Jucker, Ed.), 1999, Birkhauser Verlag, Basel (Switzerland)」に見られる。このような付加的治療及び/又は薬剤の投与は、本発明の方法に含まれるものとする。
【0105】
本発明の方法で用いる化合物は、鼻腔内に、経口的に、又は注射、例えば筋肉内、腹腔内、皮下若しくは静脈注射により、又は経皮、眼内若しくは腸内への手段で投与することができる。最適な用量は、従来の手段により決定することができる。本発明の方法で用いる化合物は、プロトン化された形態及び水溶性の形態で、例えば、有機酸若しくは無機酸の医薬上許容され得る塩、例えば、塩酸塩、硫酸、ヘミ硫酸、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩などとして、対象へ投与されることが適している。
【0106】
本発明の方法で用いる化合物は、単独で用いるか、又は上記に考察される1つ又はそれ以上のその他の治療剤と組み合わせて、従来型の賦形剤と、すなわち活性化合物と有害な反応を起こさず、そのレシピエントに有害でない、非経口、腸内又は鼻腔内適用に適した薬学的に許容される有機担体物質又は無機担体物質と混合した医薬組成物として用いることができる。好適な薬学的に許容される担体としては、これらに限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエトラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。医薬製剤は、滅菌し、必要に応じて助剤、例えば、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、バッファー、着色剤、香味料及び/又は芳香剤、並びに活性化合物と有害な反応を起こさない同様な物と混合することができる。
【0107】
非経口適用のためには、溶液が特に適しており、好ましくは、油性又は水溶液、更に懸濁液、エマルジョン又は坐剤を含むインプラントである。アンプルは、便宜な投与量単位である。腸内適用のためには、タルク及び/又は炭水化物担体結合剤等を有する錠剤、糖衣錠又はカプセル剤が特に適し、担体は好ましくは、ラクトース及び/又はトウモロコシデンプン及び/又はジャガイモデンプンである。シロップ剤、エリキシル剤等は、加糖媒体を使用することができる。徐放性組成物は、有効成分を、例えばマイクロカプセル化、多重コーティング等による、区別をつけた分解が可能なコーティングで保護するような方法で製剤化できる。局所適用のためには、本発明の化合物の1つ又はそれ以上を含有する局所用軟膏又はクリーム中に調製して製剤にしてよい。軟膏として処方する場合は、本発明の化合物の1つ又はそれ以上をパラフィン又は水混和性基剤の何れかと一緒に用いることが適している。1つ又はそれ以上の化合物をまた、水中油型クリーム基剤を用いて処方することもできる。その他の適した局所製剤としては、例えばトローチ剤及び皮膚パッチが挙げられる。静脈投与又は非経口投与、例えば、皮下、腹膜内又は筋肉内投与が一般に好ましい。
【0108】
当然のことであるが、所与の療法で用いられる活性化合物の実際に好ましい量は、用いる具体的な化合物、処方される特定の組成物、適用様式、特定の投与部位等に応じて変動する。所与の投与プロトコルに対する最適な投与割合は、当業者が、前述の指針に関して実施される従来の投与量決定テストを用いて容易に確認することができる。所望の用量は、1日に1回投与するか、又は数回に分割した用量、例えば2〜4回に分割した用量を、1日の適当な間隔で投与するか、又はその他の適当なスケジュールで投与するのが適している。
【0109】
恒常的に活性化されたFLT3受容体を有するトランスジェニック非ヒト動物も、また提供される。特に、恒常的に活性なFLT3遺伝子をそのゲノムに挿入した「Tel−FLT3トランスジェニックマウス」として知られる、トランスジェニックマウスが提供される。Tel−FLT3トランスジェニックマウスは、当該技術で公知の標準的なトランスジェニック技術に従って作製された。FLT3トランスジェニックマウスは、その脾臓及びリンパ節中のDCの数が非常に増加している。
【0110】
トランスジェニック動物を用いて、治療剤をテストする方法が提供される。例えば、方法の工程には、トランスジェニック動物、好ましくは恒常的に又は制御できる活性なFLT3遺伝子を有するマウスを準備することが含まれる。方法には、また動物に治療剤を投与すること及び治療剤の効果を判定するために動物の免疫応答を測定することが含まれる。例えば、DCの数を測定することができ、その場合、DC数の減少が動物の免疫応答の低下を示す。T細胞の数も投与後に測定することができ、その場合、T細胞の数の減少が動物の免疫応答の低下を示す。FLT3のリン酸化状態も、細胞又は対象の免疫応答が本発明のFLT3阻害剤の投与後に抑制されていることを示す指標として用いてもよい。例えば、リン酸化されたFLT3の量は、本発明の方法のFLT3阻害剤を投与した細胞又は対象において減少してもよい。ある特定の態様によればトランスジェニック動物は、免疫関連の疾患の有用なモデルである。例えば、ある特定の免疫関連の疾患を患っているヒトは、DC、T細胞、及び/又はNK細胞の数が増加している。
【0111】
本発明は、またインビトロ及びインビボでの活性から治療剤をスクリーニングする方法を提供する。例えば、治療剤を細胞へ投与し、次いでその細胞の免疫応答の低下を調べる。具体的には骨髄細胞、より具体的には動物の骨髄から産生されたDCが、特に有用である。その他の有用な細胞種及び/又は系統としては、混合リンパ球、T細胞及びNK細胞が挙げられる。治療剤のスクリーニングの方法のようなインビトロ適用のためには、マルチウェルプレート又はその他の反応基質を用いることが適している。
【0112】
免疫関連の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法には、FLT3受容体の活性レベルの高いマウスに薬剤を投与すること、そして免疫応答の変化を測定することが含まれ、この方法では、免疫応答の低下が、免疫関連の疾患の治療にその薬剤が有用でありうることを示す。免疫応答の変化とは、特に、DC細胞、NK細胞及び/又はB細胞の数の減少である。免疫応答の変化は、またDC共刺激タンパク質のレベル判定により測定することもでき、その場合、DC共刺激タンパク質のレベルの低下が、免疫関連の疾患の治療にその薬剤が有用でありうることを示す。ある特定の態様によれば、測定されるDC共刺激タンパク質は、B7−DCである。特定の態様によれば、免疫応答の測定というのは、同じ治療剤のその他の異なった用量又は対照と比較して、当該細胞の数を測定することであってもよい。測定される細胞は、例えば、DC細胞、NK細胞、脾細胞、混合骨髄細胞、T細胞及びそれらの混合物であってもよい。
【0113】
ある特定の態様によれば、免疫応答の変化は、T細胞増殖アッセイで測定してもよく、その場合、T細胞増殖の低下が、免疫関連の疾患の治療にその薬剤が有用でありうることを示す。
また、本発明は、インビボでの活性から治療剤をスクリーニングする方法を提供する。例えば、治療剤を哺乳動物へ投与し、次いでその細胞の免疫応答の低下を調べる。具体的には、FLT3受容体が恒常的に活性化されているトランスジェニックマウスが作製される。このマウスは、脾臓及びリンパ節中のDCの数が非常に増加している。FLT3遺伝子が失活しているノックアウトマウスが作製された(K. Mackarehtschian, J.D. Hardin, K.A. Moore, et al., Immunity 3, 147-61(1995))。Bリンパ球前駆体細胞についてはその数の低下が見られるが、末梢のBリンパ球は影響を受けなかった。DCについては、これらのマウスでは調べていない。
【0114】
免疫応答抑制の方法が、下記の考察で実証されているが、上記の別法も同様に適用可能であり、そして好適なものであり、これらの方法のエンドポイント(例えば、治療の有効性)は、周知の診断法及び評価法を含む当該技術の標準法を用いて測定されることが当然理解されるであろう。
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は何ら本発明を限定するものではないと解釈されたい。本明細書を通じて引用される参考文献、特許及び公開された特許出願、並びに図及び配列表は、内容を参照してその全てを本明細書に取り込む。
【実施例1】
【0115】
FLT3阻害剤での成熟DCの処置は、成熟DCにおけるアポトーシスを誘導する。
FLT3阻害剤に暴露した場合の、DCの生存及び機能を調査した。成熟DCを、CEP701、5214及びAG1296に対する用量反応分析で、GM−CSF+/−FLの存在下でインキュベートした。DCの生存及び活性の減少が観察された。
【0116】
マウスの四肢の骨髄(BM)を、PBSで洗い流し、赤血球(RBC)を低張緩衝液に溶解し、細胞を洗浄した後、GM−CSF(1000U/ml)又はGM+FL(100ng/ml)含有培地に2×10細胞/mlで蒔いた。2、4及び6日目に、非接着細胞を除去し、接着細胞を洗浄した後に、新鮮な培地を添加した。8日目に、非接着成熟DCを収集し、CEP−701の非存在下又は存在下で、5又は50nMで再び蒔いた。24時間後、細胞を次にFACS分析のために染色した。CD11c+細胞を、MHCクラスII発現及びアネキシンV結合について評価した(図1A)。CEP−701は、GM−CSF単独又はGM−CSFとFLの組合せのどちらかで、産生したDCのアポトーシスを誘導した。これらの結果は、CEP−5214(データは示されていない)及びAG1296を含む、2種類の他のFLT3阻害剤を用いても確認された。
【0117】
図1Bは、マウスの四肢のBMをPBSで洗い流し、RBCを溶解し、細胞を洗浄することにより生じたDCの刺激の結果を示す。洗浄後、細胞をGM−CSF(1000U/ml)+FL(100ng/ml)含有培地に2×10細胞/mlで蒔いた。2、4及び6日目に、非接着細胞を除去し、接着細胞を洗浄した後に、新鮮な培地を添加した。8日目に、非接着成熟DCを収集し、AG1296の非存在下又は存在下で再び蒔いた。24時間後、細胞をFACS分析のために染色した。樹状細胞(CD11c+細胞)を、CD86発現及びアネキシンV結合について評価した(図1B)。AG1296は、DCにおいて用量依存的にアポトーシスを誘導した。このように、FLT3阻害は、DCにおいて用量依存的に細胞死を誘導することができる。DCは抗原の提示及びT細胞の活性化を担うため、DCを死滅させること、FLT3によるDCシグナル伝達を抑制すること、又はFLT3を阻害することによるDCの細胞生成を妨げることは、免疫系のT細胞アームの抑制に効果があると思われる。DCがT細胞を活性化させるために、DCはMHC分子と結合している抗原を提示し、その表面に共刺激タンパク質を発現させる。
【0118】
DCによる共刺激タンパク質発現の調節におけるFL/FLT3刺激の役割を調べるため、ヒト骨とIL−4又はGM−CSFとFLを、共刺激分子のB7ファミリーメンバーであるB7−DCの発現についてノーザンブロッティングにより解析した。図1Cは、FLの添加がB7−DC発現を大きく上方制御することを示す(GM−CSF単独は発現を示さなかった;データは示されていない)。マウスBM培養は、FACSにより同じ結果を示した。FLT3シグナル伝達の阻害は、B7−DCとB7.2(CD86)のDCにおいて、B7−DCと同様にB7.2(CD86)の下方制御をもたらした(図6)。このことは、免疫応答の低下が、DCの細胞死を誘導することだけでなく、その免疫賦活能を下方制御することにより免疫抑制剤としての有用性を高めることで、達成されることを示す。
【実施例2】
【0119】
FLT3阻害は、T細胞のDCに基づく増殖を抑制する。これらの実験のため、DCをBALBcマウスから上記のように産生させた。細胞を未処理のまま置くか、又はCEP701で処理した後、示した割合でC57BL/6脾細胞とともに培養皿に蒔いた。3日後、Hを添加し、増殖を判定した。図2Aで示すように、CEP701は、増殖を抑えるのに大きな効果を示した。図2bでは、標準混合リンパ球反応(MLR)でCEP701の阻害をテストするため、DCの代わりにBALB/c脾細胞を用いた。また、この図が示すように、この応答もCEP701の存在下で阻害された。
【0120】
T細胞刺激応答がAG1296への暴露の結果として阻害されるかどうかを判定するため、2つの異なるT細胞増殖アッセイを実施した。図2cは、阻害剤の存在下(10μm)又は非存在下で、同種マウスの脾細胞を同時にインキュベートした結果を示す。この標準混合リンパ球反応では、等しい数の刺激細胞及び応答細胞(各10)を96ウェルプレート中で混合し、H−チミジンを加えて4日間インキュベートし、トリチウムの取り込みを分析することにより増殖を判定した。BM由来DCを、AG1296の存在下(10μm)又は非存在下で、同種の反応脾細胞と1:10の割合でインキュベートすることによって(8日、上記のように)DCに刺激された増殖もまた判定した。図7に示すように、AG1296の存在下でDCによりT細胞増殖の抑制が誘導された。
【実施例3】
【0121】
T細胞の処理は、その増殖を直接阻害しない。
図2a及びbで見出された阻害が、阻害剤のDCへの効果に起因するものであり、T細胞そのものによるものでないことを示すため、1×10T細胞を抗CD3被覆プレートに蒔いた。次いでT細胞を抗CD28抗体で刺激した。2日後、Hを添加し、増殖を判定した。図で示されるように、T細胞の直接刺激の効果は観察されなかった。
【実施例4】
【0122】
FLT3阻害剤でのマウスの処置は、CD11c細胞群を減少させるが、CD3又はB220を減少させない。
BALB/cマウスを、20mg/kgのCEP701又は媒体で、1日に2回、5日間処理した後、その免疫細胞群を分析した。脾臓及びリンパ節を収集し、コラゲナーゼで消化させて間質からDCを放出させた。次いで、細胞を洗浄し、T(CD3+/DX5−)、NK(CD3−、DX5+)、B(B220+、CD11c−)又はDC(CD11c+)の存在をFACSで解析した。図4a及びbで示すように、この処理がNK及びDC細胞群の減少を導くのに対し、B細胞又はT細胞群には有意な変化が認められなかった。
【実施例5】
【0123】
FLT3阻害剤でのマウスの処置は、インビボで免疫応答を低下させ、そしてDCの阻害は免疫応答を下方制御するのに十分な効果を示した。
FLT3阻害が、インビボで免疫応答の下方制御を導くかどうかを判定するため、インフルエンザ血球凝集素抗原(HA)のトランスジェニックであるマウス(このマウスは「137」と名付けられている)に、HAに特異的なトランスジェニックT細胞(これらのCD4+T細胞は、「6.5」と名付けられ、類似遺伝子型T細胞マーカーthy1.1を発現する)を注射した。このモデル系において、移植されたトランスジェニックT細胞は増殖し、自己免疫プロセスを誘導する(Huang CT JI 2003)。これらの実験のため、137匹のマウスを、移植前の3日間及び移植後の5日間、CEP701で上記のように処置した。5日後、T細胞の増殖についてマウスを分析した。図5に示すように、CEP701処置は、thy1.1の測定で示されるように、自己反応性T細胞の増殖の抑制を導いた。
【実施例6】
【0124】
FLT3に対するモノクローナル抗体
本実施例は、FLT3に対するモノクローナル抗体を調製する方法を説明する。FLT3は、COS−7又はCV−1/EBNA−1細胞のような哺乳動物の宿主細胞で発現し、それをFLT3:Fc親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。精製されたFLT3、又は細胞外ドメイン、合成ペプチド若しくはFLT3を発現する細胞のようなその断片は、従来の技術、例えば米国特許第4,411,993号に記載の技術を用いて、FLT3に対するモノクローナル抗体を産生するのに使用することができる。簡潔に言えば、マウスを免疫原としてFLT3で免疫化するが、その場合、FLT3をアジュバント、例えば完全フロイントアジュバント中で乳化し、10〜100μgの量でマウスの皮下又は腹膜内に注射する。10〜12日後、免疫化した動物をアジュバント中で乳化した更なるFLT3で追加免疫する。その後、毎週又は隔週の免疫化スケジュールで、マウスを定期的に追加免疫する。眼窩採血又は尾の先端切除により血清サンプルを定期的に採取してドットブロット法又はELISA(酵素結合免疫吸着測定法)によりFLT3抗体をテストする。
【0125】
適切な抗体力価を検出した後、陽性動物にFLT3の生理食塩水を最後の静脈注射として施す。3〜4日後、動物を犠牲にし、脾細胞を収集し、脾細胞をネズミ骨髄腫細胞系統、例えばNS1又は好ましくはP3X63Ag8.653(ATCC CRL1580)と融合する。融合によりハイブリドーマ細胞が産生され、これらの細胞は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン)選択培地の、複数のマイクロタイタープレートに蒔かれて、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド及び脾細胞ハイブリッドの増殖を阻害する。
【0126】
ハイブリドーマ細胞を、「Engvall et al., Immunochem. 8:871, 1971」及び米国特許第4,703,004号に開示される技法を適用して、精製FLT3に対する反応についてELISA法でスクリーニングする。好ましいスクリーニング法は、「Beckmann et al.,(J. Immunol. 144:4212, 1990)」に記載される抗体捕捉法である。陽性ハイブリドーマ細胞は、同系BALB/cマウスの腹膜内に注射して、高濃度の抗FLT3モノクローナル抗体を含有する腹水を生成することができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、インビトロでフラスコ又はローラーボトル中で種々の技術によって増殖させることができる。マウス腹水中に産生されたモノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿の後、ゲル排除クロマトグラフィーにより精製することができる。あるいは、抗体とAタンパク質又はGタンパク質との結合に基づく親和性クロマトグラフィー、またFLT3との結合に基づく親和性クロマトグラフィーを用いることもできる。
【実施例7】
【0127】
FLT3阻害剤を用いる処置は、確立された実験的自己免疫性脳脊髄炎を回復する。
C57BL/6マウスに、CFA中の100マイクログラムの確立された実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)誘導のペプチドMOG35−55を、400マイクログラムのヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)と一緒に注射した。免疫化当日及び48時間後に、標準プロトコールに従って、マウスに百日咳毒素を追加注入した。初期症状の1日以内に、マウスに媒体対照又はCEP−701(20mg/kg)の何れかを注射し、処置の区別を知らされていない観察者が、毎日スコアをつけた。スコアは次の通りである。0(症状無し)、0.5(尾の緊張の一部喪失)、1(尾の緊張の完全喪失)、2(歩行に影響あり)、2.5(後肢の一部麻痺)、3(後肢の完全麻痺)、4(前後肢麻痺)、5(瀕死状態)。本研究では、各群毎に10匹のマウスが処置された。図8は、CEP−701(FLT3阻害剤)で処置されたマウスのスコアが低いことを示すグラフであり、FLT3阻害剤が、EAEを回復させたことを示している。
【実施例8】
【0128】
図10に関して、MOGペプチドで免疫化され、そして症状が出た後に媒体対照又はCEP−701の何れかで処置されたマウスから、損傷していない脳及び脊髄を取り出した。処置及びスコア開始の後、マウスを更に2ヶ月保持した後、犠牲にして、そのCNSを評価のためにホルマリン保存による処理を行った。第5頚椎から薄い柔軟な切片(1mm)を作製した後、トルイジンブルーで染色し、軸索を可視化した。脊柱内側の予め定義された領域における軸索数及び活発に変性した線維の合計を熟練した試験者が盲検法により数え挙げた。プロットは、疾病誘導後210日目に媒体対照マウスと比較したCEP−701処理マウスの切片の定義された領域における変性した軸索線維の数を示す。これらの結果は、FLT3を阻害することが神経変性の低下を導くことを示す。
【0129】
本発明を、特にその態様に関して詳細に説明した。しかしながら、当業者であれば本開示を考慮して、本発明の精神及び教示を逸脱することなく修正及び改良を行うことができるのは、当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1−1】図1aは、DCのFLT3阻害剤CEP−701での処置を示すグラフである。濃度0、5又は50nMのCEP701に対する用量反応分析においてインキュベートされたDCの結果を示す。上の3つのグラフはGM−CSFで活性化された細胞を示し、下の3つのグラフはGM−CSF及びFLT3リガンド(FL)で活性化された細胞を示す。FLT3阻害の結果、DCのアポトーシスの誘導がかなりの割合で発生した。
【図1−2】図1bは、0、1及び10μMのFLT3阻害剤AG1296でDCを処理し、アポトーシスについて分析した結果を示す。FLT3阻害の結果、DCのアポトーシスの誘導がかなりの割合で発生した。
【図1−3】図1cは、FL及びIL−4又はGM−CSFで処理したヒト骨髄細胞のノーザンブロット解析を示す。ノーザンブロッティングは、hB7−DC及びβアクチンについて実施した。これにより、FLの添加がB7−DC発現を大きく上方制御することが実証された(GM−CSF単独では発現しなかった;データは示さず)。
【図2】図2a及び2bは、T細胞の増殖に基づくDC及びBALB/c脾細胞でのFLT3阻害の結果を示す。DCをCEP701で処理し(又は対照として処理せずに)、その後示した割合のC57BL/6脾細胞と共に培養皿に蒔いた。3日後、Hを添加し、増殖を測定した。CEP701は、T細胞の増殖を抑えることに大きな効果を示す。図2bでは、DCの代わりにBALB/c脾細胞を用いて、標準の混合リンパ球反応(MLR)でCEP701の阻害をテストした。この図から、この反応もまたCEP701の存在下で阻害されることが実証された。図2cは、FLT3阻害剤AG1296によるBALB/c脾細胞の阻害の結果を示す。
【図3】図3は、T細胞を、抗CD28抗体で刺激した後に、FLT3阻害剤CEP−701で直接処理した結果を示すグラフである。図に示されるように、この処理はT細胞の増殖を阻害しない。
【図4】図4a及び4bは、マウスをFLT3阻害剤CEP701で処理した免疫細胞群の結果を示すグラフである。FLT3阻害剤CEP701は、CD11c及びNK細胞群を減少させるが、CD3又はB220細胞群を減少させない。
【図5】図5は、FLT3阻害剤CEP701でのマウスの処置を示すグラフである。FLT3阻害剤CEP701は、インビボでの自己反応性免疫応答を低下させ、DCの阻害が免疫応答を下方制御するのに十分であることを実証する。
【図6】図6は、0、1、及び10μMの何れかのAG1296でDCを処理した後、共刺激分子B7.2(CD86)及びB7−DCの発現について分析した結果を示す。図に示されるように、両方の共刺激分子がAG1296の存在下で下方制御された。
【図7】図7は、T細胞のDC刺激がAG1296により阻害されることを示すグラフである。
【図8】図8は、FLT3阻害剤での処理が、確立された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を回復させることを示すグラフである。
【図9】図9は、STK−1 cDNAの予測完全アミノ酸配列である。アミノ酸は、各列の左側に番号が付けられ、ヌクレオチドは右側に番号が付けられている。下線は予測シグナルペプチド(aa 1〜23)を示し、それに続いて推定切断部位が矢印で示される。
【図10】図10は、疾病誘導後210日目に媒体対照マウスと比較した、CEP−701処理マウスの切片の定義された領域における変性した軸索線維の数を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FLT3の活性を低下させる少なくとも1つのFLT3阻害剤を細胞に接触させることを含んでなる、細胞の免疫応答を抑制する方法。
【請求項2】
前記細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、NK細胞、T細胞又はB細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が神経系の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記神経系の細胞が、ニューロン、グリア細胞、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞、星状細胞、ミクログリアである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューロンが、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、神経内分泌細胞、分裂終了ニューロン、胚性ニューロン、又は網膜の神経節細胞の1つ又はそれ以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
FLT3のキナーゼ活性が低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
FLT3の自己リン酸化活性が低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記FLT3阻害剤が、小分子、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗FLT3抗体、抗FLT3抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ペプチドをコードする核酸、有機分子及びそれらの何れかの組合せの1つ又はそれ以上から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記小分子が、CEP701、AG1296、AG1295、CEP−5214、CEP−7055、PKC412、SU11248、SU5416、SU5614、MLN518、BAY43−9006、CHIR−258、アミノ−ベンゾイミダゾール−キノロン類、Ki23819、スタウロスポリン誘導体の1つ又はそれ以上から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記小分子が、式1:
【化001】

(式中、
Wは、C、N又はOであってもよく;
Xは、C若しくはN、又は存在していなくてもよく;
Yは、Cであってもよく;
Zは、C又はNであってもよく;そして
R基は、以下のR1〜R5の置換されている可変基であってもよく:
R1は、H、アルコキシ、ヒドロキシル又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R2は、H、F、アルコキシ又は複素環アルキル/アリールであってもよく;
R3は、H、O、アリール、ヘテロアリール又はC(O)ヘテロアリールであってもよく;
R4は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、CH−ヘテロアリール又は存在していなくてもよく;
R5は、H、アリール、ヘテロアルキル/アリール又は存在していなくてもよく;そして、
WX、WY、YZ、YR3及びZR4に於ける破線は、二重結合であってもよいことを示し、ここに於けるアリール、ヘテロアリール及び複素環アルキル/アリールは、置換されていてもよい)
で表される化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記小分子が、
【化002】




で表される化合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、IMC−EB10及びIMC−NC7の1つ又はそれ以上から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、霊長類化抗体及びそれらの何れかの組合せを包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、FLT3のリン酸化型を特異的に認識する、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、FLT3の非リン酸化型を特異的に認識する、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記アンチセンス・オリゴヌクレオチドが、図9のヌクレオチド配列又はそれらの生物活性を有する断片の1つ又はそれ以上から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記FLT3阻害剤が、FLT3依存性のシグナル伝達を低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記FLT3阻害剤が、細胞の免疫賦活能を下方制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記FLT3阻害剤と共にT細胞阻害剤を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
FLT3活性を低下させるFLT3阻害剤の治療有効量を、対象に投与することを含んでなる、対象のFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療する方法。
【請求項22】
前記対象が、それによりFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、FLT3疾患又はFLT3関連の疾患の治療を要すると同定される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記FLT3疾患又はFLT3関連の疾患が、免疫関連の疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫関連の疾患が、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡並びにその他の自己免疫疾患のうちの1つ又はそれ以上のものであり、
当該方法はまた、骨髄非破壊的な処置療法及びそれらを組み合わせて施術した後に骨髄生着を促進させるためにも用いられてもよいものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記FLT3疾患又はFLT3関連の疾患が、神経系の疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記神経系の疾患が、神経変性疾患又は軸索変性疾患のうちの1つ又はそれ以上のものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が哺乳動物である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物が、ヒト、霊長類、ネズミ、イヌ、ネコ又はマウスである、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記FLT3阻害剤が、小分子、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗FLT3抗体、抗FLT3抗体の抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド模倣物、ペプチドをコードする核酸、有機分子及びそれらの何れかの組合せの1つ又はそれ以上から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記小分子が、CEP701、AG1296、AG1295、CEP−5214、CEP−7055、PKC412、SU11248、SU5416、SU5614、MLN518、BAY43−9006、CHIR−258、アミノ−ベンゾイミダゾール−キノロン類、Ki23819、スタウロスポリン誘導体の1つ又はそれ以上から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体が、IMC−EB10及びIMC−NC7の1つ又はそれ以上から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、霊長類化抗体及びそれらの何れかの組合せを包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体が、FLT3のリン酸化型を特異的に認識する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体が、FLT3の非リン酸化型を特異的に認識する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記アンチセンス・オリゴヌクレオチドが、図9のヌクレオチド配列又はそれらの生物活性を有する断片のうち1つ又はそれ以上のものから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記FLT3阻害剤が、対象におけるFLT3のキナーゼ活性を低下させるものである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記FLT3阻害剤が、対象におけるFLT3の自己リン酸化活性を低下させるものである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記FLT3阻害剤が、対象におけるFLT3依存性のシグナル伝達を低下させるものである、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記FLT3阻害剤が、対象の免疫賦活能を下方制御するものである、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
前記FLT3阻害剤と共にT細胞阻害剤を投与することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
FLT3依存性のシグナル伝達を低下させるために、FLT3阻害剤の治療有効量を対象に投与することを含んでなる、対象のFLT3疾患又はFLT3関連の疾患を治療する方法。
【請求項43】
恒常的に活性化されたFLT3受容体を有するトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項44】
前記動物がマウスである、請求項43に記載のトランスジェニック動物。
【請求項45】
治療剤をテストするための、請求項43又は44に記載のトランスジェニック動物の使用。
【請求項46】
免疫関連の疾患のモデルとしての、請求項43又は44に記載のトランスジェニック動物の使用。
【請求項47】
前記免疫関連の疾患が、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、狼瘡、及びそれらの組合せの1つ又はそれ以上から選択される、請求項46に記載のトランスジェニック動物の使用。
【請求項48】
FLT3受容体の活性レベルが高いマウスに薬剤を投与する、そして
免疫応答の変化を測定して、免疫応答の低下が免疫関連疾患の治療に前記薬剤が有用でありうることを示す、ことを含んでなる免疫関連の疾患を治療するための、治療剤をスクリーニングする方法。
【請求項49】
前記免疫応答の変化が、DC細胞の数の減少で示される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記免疫応答の変化が、NK細胞の数の減少で示される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫応答の変化を、DC共刺激タンパク質のレベルを判定することにより測定し、DC共刺激タンパク質のレベルの増加が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用でありうることを示す、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記DC共刺激タンパク質がB7−DCである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫応答の変化をT細胞の増殖アッセイにより測定し、T細胞増殖の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用でありうることを示す、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記免疫関連の疾患が、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡のうち一つ又はそれ以上から選択され、骨髄非破壊的な処置療法及びそれらを組み合わせて施術した後に骨髄生着を促進させるものである、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
治療剤を真核細胞に投与する、そして
前記細胞の免疫応答の変化を測定して、細胞の免疫応答の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる免疫関連の疾患を治療するための、治療剤をスクリーニングする方法。
【請求項56】
前記細胞が、樹状細胞、NK細胞、脾細胞、T細胞及びそれらの混合物の1つ又はそれ以上から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞の免疫応答の低下を、DC共刺激タンパク質のレベル判定により測定して、DC共刺激タンパク質のレベルの増加が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用でありうることを示す、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記DC共刺激タンパク質がB7−DCである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
免疫応答の変化をT細胞増殖の判定により測定して、T細胞増殖の低下が、免疫関連の疾患の治療に前記薬剤が有用でありうることを示す、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫関連の疾患が、臓器拒絶反応、骨髄移植拒絶反応、骨髄非破壊的な骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、関節炎、再生不良性貧血、ベーチェット病、糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、溶血性貧血、ウェグナー肉芽腫症、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬及び狼瘡のうち一つ又はそれ以上から選択され、骨髄非破壊的な処置療法及びそれらを組み合わせて施術した後に骨髄生着を促進させるものである、、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
MOGペプチドで免疫化したマウスに薬剤を投与する、そして
ニューロンを可視化して、軸索の調節が、神経系の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる神経系の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法。
【請求項62】
軸索の変化が、変性した軸索の数の減少で示される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記可視化が顕微鏡検査による、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記神経系の疾患が、多発性硬化症、脱髄性疾患、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎、運動単位の障害、筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症;クロイツフェルト・ヤコブ病、又は亜急性硬化性全脳炎の1つ又はそれ以上から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
治療剤をニューロン細胞に投与する、そして
細胞における変化を測定して、変性したニューロンの数の減少が、神経系の疾患の治療に前記薬剤が有用であることを示す、ことを含んでなる神経系の疾患を治療するための治療剤をスクリーニングする方法。
【請求項66】
前記神経系の疾患が、神経変性疾患、軸索変性症、多発性硬化症、脱髄性疾患、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎、運動単位の障害、筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症;クロイツフェルト・ヤコブ病、又は亜急性硬化性全脳炎の1つ又はそれ以上から選択されるものである、請求項65に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−506778(P2008−506778A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522605(P2007−522605)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/025318
【国際公開番号】WO2006/020145
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】