説明

免疫調節アルカロイド

免疫治療は、患者の樹状細胞に、IL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを投与することを含んでなる。このアルカロイドは、樹状細胞にIL-2の産生を誘発する。このアルカロイドは天然に存在する必要はなく、天然に存在するものの合成類似体または誘導体であってもよい。このような類似体または誘導体は、好ましくは本明細書で定義される薬学上許容可能な類似体、塩、異性体または誘導体である。しかしながら、好ましいアルカロイドは植物化合物である。このような植物化合物は、天然資源から単離しまたはイン・ビトロで合成することができる。特に好ましいものは、ピペリジンアルカロイド、ピロリンアルカロイド、ピロリジンアルカロイド、ピロリジジンアルカロイド、インドリジジンアルカロイド、およびノルトロパンアルカロイドから選択されるアルカロイドである。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、アルカロイドにより樹状細胞においてIL-2産生を誘発する方法、その医療応用、およびそれらに基づく様々な生成物、組成物およびワクチンに関する。
【0002】
背景技術
免疫
免疫系が異種抗原によって攻撃されると、防御応答を開始することによって応答する。この応答は、先天的および後天的免疫系の両方の調整相互作用を特徴としている。これらの系は以前は別個且つ独立であると考えられたが、現在では組み合わせたときに、2種類の相互に相容れない要件である速度(先天的系によって寄与される)および特異性(適応系によって寄与される)を、満たす2種類の相互依存した部分として認められている。
【0003】
先天的免疫系は侵襲性病原体に対する防御の最初の系列として働き、病原体を食い止め、一方適応応答は成熟する。これは抗原から独立したやり方で感染の数分以内に誘発され、(非特異的ではなく且つ自己と病原体とを識別することができるが)病原体における広範囲に保存されたパターンに応答する。決定的なことには、これはまた、適応免疫系を増強し且つ感染性病原体(以下において更に詳細に説明される)と闘うのに極めて適当な細胞性または体液性応答へと導く(または集中させる)炎症性および同時刺激性環境(時に危険シグナルという)を生じる。
【0004】
適応応答は数日または数週間にわたって有効となるが、最終的には病原体の完全な除去に要する抗原特異性を提供し、免疫学的記憶を生成する。これは、主として生殖系列遺伝子再編成を行い且つ鋭敏な特異性と長期間継続する記憶を特徴とするTおよびB細胞によって影響される。しかしながら、これは、細菌や比較的大型の原生動物の寄生生物を飲み込む専門的な食細胞(マクロファージ、好中球など)および顆粒球(好塩基球、好酸球など)のような先天的免疫系の要素の増加をも伴う。続いて同種抗原に暴露されることにより、急速に活性化される高度に特異的な記憶細胞が生成されるため、一旦適応免疫応答が成熟すれば、続いて病原体へ暴露されると(通常は感染の症状が明らかになる前に)急激に除去される。
【0005】
先天的および適応応答の相互依存性
病原体侵襲に続いて最初に見られる現象は先天的免疫系の細胞成分によって行われると考えられる。常在性の組織マクロファージおよび樹状細胞(DC)が病原体に遭遇し、微生物の大集団によって共有されるパターン認識受容体(PRR)と病原体関連分子パターン(PAMP)との相互作用によって生じるシグナルによって活性化されるときに、応答は開始される。活性化されたマクロファージとDCは刺激されて様々なサイトカイン(ケモカインIL-8、MIP-1αおよびMIP-1βなど)を放出し、これらは「危険シグナル」を構成し且つナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、未成熟樹状細胞の組織への流入を誘発する。
【0006】
抗原を負荷(load)した後、活性化したDCはリンパ節に移行する。そこに到達したならば、それらは抗原提示細胞(APC)として作用することによって適応応答の免疫細胞(主として天然のBおよびT細胞)を活性化する。活性化した細胞は、次に(「危険シグナル」によって導かれる)感染部位に移行し、そこに到達したならば、先天的免疫系の細胞(好酸球、好塩基球、単球、NK細胞および顆粒球など)を補充することによって応答を更に増幅する。この細胞輸送はサイトカインの大きな配列(特に、ケモカインサブグループのもの)によって調整され、多くの異なる型や組織供給源の免疫細胞を伴う(総説については、Luster (2002), Current Opinion in Immunology 14:129-135を参照されたい)。
【0007】
適応免疫応答の分極
適応免疫応答は、主として2つの独立した部分、すなわち細胞媒介性(1型)免疫および抗体媒介性または体液性(2型)免疫を介してもたらされる。
【0008】
1型の免疫は、異種抗原を有する感染細胞に作用するかまたは他の細胞を刺激して感染細胞に作用させるTリンパ球の活性化を伴う。従って、この免疫系の部門は、事実上癌に罹っているかまたは病原体(特に、ウイルス)に感染している細胞を封じ込め、殺す。2型の免疫は、Bリンパ球による異種抗原に対する抗体の生成を伴う。この免疫系の抗体媒介性部門は、細胞外異種抗原を攻撃して、効果的に中和する。
【0009】
免疫系のいずれの部分も疾患と闘うのに重要であり、免疫応答の種類は、その強度またはその持続期間と同様に重要であることがますます認識されている。更に、1型および2型応答は必ずしも相互排他的ではないので(多くの場合に、効果的な免疫応答には両者が平行して起こることが必要である)、1型/2型応答(それぞれの応答の調整に関与する別個のサイトカインとエフェクター細胞サブセットとを参照することによる、Th1:Th2応答比/バランスとも表される-下記を参照)は免疫防御の有効性(および影響)を決定するのに役立つこともある。
【0010】
多くの場合には、免疫応答は抗原に暴露した直後に1型または2型応答に合うように大きく歪曲させる。この1型/2型の歪曲または分極は未だ完全には理解されていないが、細胞媒介性化学メッセンジャー(サイトカイン、特にケモカイン)の複雑な系を伴い、1型/2型分極(またはバランス)は、少なくとも部分的には、先天的免疫系のDCおよびマクロファージが最初に刺激されるときには初期のPRR-PAMP相互作用の性質によって、続いてナイーブヘルパーT細胞の抗原感作が起こるサイトカイン環境によって決定されることが知られている。
【0011】
2種類のサイトカインは、特に免疫応答の経路の決定における初期の役割を有すると思われる。マクロファージによって分泌されるインターロイキン-12(IL-12)は、1型応答を支配するヘルパー細胞であるTh1細胞の分化を刺激することによって1型応答を駆動する。もう一つのマクロファージサイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)はこの応答を阻害し、代わりに2型応答を駆動する。
【0012】
1型および2型応答は、とりわけ感作(priming)とこれに続くナイーブヘルパーT細胞の分極に伴うある種の表現型変化に基づいて識別することができる。これらの表現型変化は、少なくとも部分的には、分極したヘルパーT細胞によって分泌されるサイトカインの性質を特徴とする。
【0013】
Th1細胞は、TNF、IL-1、IL-2、IFN-γ、IL-12および/またはIL-18の1種類以上を包含するいわゆるTh1サイトカインを産生するかまたはこれによって調整される。Th1サイトカインはマクロファージ活性化に関与し、Th1細胞は1型の応答を編成する。対照的に、Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13の1種類以上を包含するいわゆるTh2サイトカインを産生する。Th2サイトカインは様々な抗体の産生を促進し、1型応答を抑制することができる。
【0014】
1型:2型免疫応答分極におけるTh1およびTh2細胞およびサイトカインの関与により、それぞれ1型および2型免疫応答を定義するのに用いられる用語、Th1応答およびTh2応答を生じた。従って、これらの用語は、本明細書では互換的に用いられる。
【0015】
免疫応答の種類は、その強度またはその持続期間と同様に治療および予防に重要であることがますます認識されている。例えば、過度のTh1応答は、自己免疫疾患、不適当な炎症応答および移植拒絶を生じる可能性がある。過度のTh2応答は、アレルギーや喘息を生じる可能性がある。更に、Th1:Th2比の動揺は多くの免疫学的疾患および障害の徴候であり、Th1:Th2比を変更する方法の開発は最優先となっている。
【0016】
アルカロイド
アルカロイドという用語は、本明細書では、狭義では生物体に天然に存在する任意の塩基性、有機、含窒素化合物を定義するのに用いられる。アルカロイドという用語は、広義では天然に存在するアルカロイドだけでなくそれらの合成および半合成類似体および誘導体を包含する化合物の一層広い群を定義するのにも用いられる。従って、本明細書で用いられる場合には、アルカロイドという用語は天然に存在する塩基性、有機、含窒素化合物だけでなく、天然には存在せず且つ塩基性でも含窒素性でもないことがあるそれらの誘導体および類似体も包含する。
【0017】
ほとんどの既知アルカロイドは、植物組織(そこで防御においてある役割を果たすことがある)における二次代謝物として存在する植物化学物質であるが、いくつかは動物、微生物および真菌の組織における二次代謝物として存在する。多くの証拠により、微生物培養物のスクリーニングに標準的手法は、アルカロイド(特に極性の高いアルカロイド、下記参照)の多くのクラスを検出するには不適当であり、微生物(細菌および真菌、特に糸状菌など)はスクリーニング手法が一層複雑になってきているのでアルカロイドの重要な供給源であることが立証される。
【0018】
構造的には、アルカロイドは大きな多様性を示す。多くのアルカロイドは、分子量が250ダルトンを下回る小分子である。骨格はアミノ酸から誘導することができるが、いくつかは他の群(ステロイドなど)から誘導される。他のものは、糖類似体と考えることができる。医薬植物および微生物培養物の水溶性画分は、多くの炭水化物類似体など多くの興味深い新規な極性アルカロイドを含むことが明らかになってきている(Watson et al. (2001) Phytochemistry 56: 265-295参照)。このような類似体としては、急速に数が増加しているポリヒドロキシル化アルカロイドが挙げられる。
【0019】
大抵のアルカロイドは、N-複素環の配置に基づいて立体的に分類されている。いくつかの重要なアルカロイドおよびその構造の例は、Kutchan (1995) The Plant Cell 7: 1059-1070に記載されている。Watson et al. (2001) Phytochemistry 56: 265-295は、広汎なポリヒドロキシル化アルカロイドをとりわけピペリジン、ピロリン、ピロリジン、ピロリジジン、インドリジジンおよびノルトロパンアルカロイドとして分類している(Watson et al. (2001)の図1-7参照、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。
【0020】
Watson et al. (2001)(上記引用)には、少なくともいくつかのアルカロイドの機能的分類がそれらのグリコシダーゼ阻害プロフィールに基づいて行うことができ、多くのポリヒドロキシル化アルカロイドが強力で選択性の高いグリコシダーゼ阻害剤であることも示されている。これらのアルカロイドは、ピラノシルまたはフラノシル残基に存在するヒドロキシル基の数、位置および配置を模倣することができるので、コグネイトグリコシダーゼの活性部位に結合することによって、それを阻害することができる。この領域は、Legler (1990) Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 48: 319-384およびAsano et al. (1995) J. Med. Chem. 38: 2349-2356に概説されている。
【0021】
多くのアルカロイドは薬理活性を有し、人類は数千年の間アルカロイドを(典型的には植物抽出物の形態で)毒物、麻薬、刺激物質および医薬品として使用してきたことは以前から認められている。ポリヒドロキシル化アルカロイドの治療応用はWatson et al. (2001)(上記引用)に包括的に記載されており、応用としては、癌治療、免疫刺激、糖尿病の治療、感染症(特に、ウイルス感染症)の治療、スフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症の治療、および自己免疫疾患(例えば、関節炎および硬化症)の治療が挙げられる。
【0022】
炭水化物の天然および合成単および二環性窒素類似体はいずれも化学療法薬としての可能性を有することが知られている。アレキシン(1)およびオーストラリン(2)は、ピロリジジンのネシンファミリーに特徴的な一層よく知られたC-1置換基よりはC-3の炭素置換基を用いて単離されることとなる最初のアルカロイドであった。
【化1】

アレキシン(1)
【化2】

オーストラリン(2)
【0023】
アレキシンは、Alexa属の総ての種および関連種であるCastanospermum australeにも見られる。1,7a-ジエピアレキシン(3)などのアレキシンの立体異性体も単離され(Nash et al. (1990) Phytochemistry (29) 111)、合成されている(Choi et al. (1991) Tetrahedron Letters (32) 5517、およびDenmark and Cottell(2001) J. Org. Chem. (66) 4276-4284)。
【化3】

1,7a-ジエピアレキシン(3)
【0024】
7,7a-ジエピアレキシン(後に1,7a-ジエピアレキシンと定義された) の一種がイン・ビトロでの抗ウイルス特性が弱いことが報告されているので、天然産物の単離および類似体の合成に幾らか興味が持たれていた。
【0025】
インドリジジンアルカロイド(従って、アレキシンとは構造的に異なる)としてのスワインソニン(4)はα-マンノシダーゼの強力且つ特異的な阻害剤であり、転移防止、腫瘍増殖防止および免疫調節剤としての可能性を有することが報告されている(例えば、米国特許第5,650,413号明細書WO00/37465号明細書、W093/09117号明細書参照)。
【化4】

スワインソニン(4)
【0026】
もう一つのインドリジジンアルカロイドであるカスタノスペルミン(5)は、強力なα-グルコシダーゼ阻害剤である。この化合物は、ある種の6-O-アシル誘導体(ブカスト(6)として知られているものなど)と一緒に抗ウイルスおよび転移防止活性を示すことが報告されている。
【化5】

カスタノスペルミン(5)
【化6】

ブカスト(6)
【0027】
グリコシダーゼ阻害活性に対するスワインソニンの6員環の大きさの変動の影響が研究されており、誘導体(いわゆる「環収縮スワインソニン」)が合成されている。しかしながら、これらの合成誘導体(1S,2R,7R,7aR)-1,2,7-トリヒドロキシ(7)および7S-エピマー(8))は、スワインソニン自身と比較して阻害活性が遙かに弱いことが示された(米国特許第5075457号明細書参照)。
【化7】

1S,2R,7R,7aR)-1,2,7-トリヒドロキシ(7)
【化8】

7S-エピマー(8)
【0028】
もう一つの化合物である1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシ(9)は1,8-ジエピスワインソニンの類似体であり、欧州特許第0417059号明細書にグリコシダーゼ酵素の「有用な」阻害剤として記載されている。
【化9】

1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシ(9)
【0029】
カスアリンである(1R,2R,3R,6S,7S,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシ(10)は、1,7a-ジエピアレキシン (3に示される)のより高度に酸素化された類似体または1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシ(9に示される)のC(3)ヒドロキシメチル置換類似体と考えることができる、高度に酸素化された二環性アルカロイドである。
【化10】

カスアリン(10)
【0030】
カスアリンは、Casuarina equisetifolia(Casuarinaceae)の樹皮、Eugenia jambolana(Myrtaceae)およびSyzygium guineense(Myrtaceae)の葉および樹皮などいくつかの植物供給源から単離することができる(例えば、Nash et al. (1994) Tetrahedron Letters (35) 7849-7852)。カスアリンのエピマー、および恐らくはカスアリン自身は、アジドジメシレートのテルル化水素ナトリウムによって誘発される環化によって合成することができる(Bell et al. (1997) Tetrahedron Letters (38) 5869-5872)。
【0031】
Casuarina equisetifoliaの木質、樹皮および葉は下痢、赤痢および疝痛に有用であることが記載されており(Chopra et al. (1956)「インドの薬用植物の用語(Glossary of Indian Medicinal Plants)」, Council of Scientific and Industrial Research (インド), ニューデリー, p. 55)、樹皮の試料が乳癌の治療の目的で西サモアで最近処方されている。カスアリンを含むアフリカの植物(Syzygium guineense)は、AIDS患者の治療に有益であることが報告されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2)169-174)。
【0032】
カスアリン-6-α-グルコシド(カスアリン-6-α-D-グルコピラノース, 11)も、Eugenia jambolanaの樹皮および葉から単離されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2)169-174)。
【化11】

カスアリン-6-α-D-グルコピラノース(11)
【0033】
Eugenia jambolanaは、糖尿病および細菌感染症に対してその種子、葉および果実が治療上重要であることがインドで周知の樹木である。その果実はヒトの血糖値を減少させることが示されており、樹皮の水性抽出物は動物のグリコーゲン分解およびグリコーゲン貯蔵に影響を与えることが報告されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2) 169-174)。
【0034】
ある種のピロリジンアルカロイドはかなり一般的な二次代謝物であると思われ、例えば、2R,5R-ジヒドロキシメチル-3R,4R-ジヒドロキシピロリジン(DMDP)(12)および1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-アラビニトール(D-AB1)(13)は全く無関係な科の温帯性および熱帯性植物のいずれの種からも単離されており、DMDPは糸状菌Streptomycesの一種によっても産生される。
【化12】

DMDP(12)
【化13】

D-AB1(13)
【0035】
DMDPは殺線虫活性を有することが示されており、WO92/09202号明細書には植物および哺乳類の両方における寄生性線虫によって引き起こされる疾患の制御においてこの化合物を用いることが記載されている。
【0036】
樹状細胞およびそれらの免疫治療での使用
(a) 緒言
樹状細胞(DC)は、特有の形態と広汎な組織分布とを有する異種細胞個体群である(Steinman (1991) Ann. Rev. Immunol. 9: 271-296参照)。それらは抗原提示において重要な役割を果たし、抗原を捕捉し、プロセシングしてペプチドとした後、それらを(MHCの成分と共に)T細胞に提示する。T細胞活性化は、次に重要な細胞表面分子、例えば、高レベルのMHCクラスIおよびII分子、接着分子および補助的刺激分子の発現によって媒介することができる。
【0037】
従って、樹状細胞は高度に分化した抗原提示細胞(APC)として作用し、「自然のアジュバント(nature's アジュバント)」として働き、適応T細胞依存性免疫を増強すると共に、先天的免疫系のナチュラルキラー(NKおよびNKT)細胞を誘発する。従って、樹状細胞は、免疫応答の大きさ、性質および記憶に基本的且つ重要な調整の役割を果たす。結果として、様々な免疫調節介入における樹状細胞の使用にますます注目が集まっており、更に詳細に以下に説明する。
【0038】
樹状細胞は、とりわけその成熟の状態(成熟または未成熟)およびその細胞発生源(個体発生)に基づいて異なるサブセットに分類することができる。これらのサブセットのそれぞれは、下記のようにイン・ビボで独特な役割を果たしていると思われる。
【0039】
(b) 樹状細胞の成熟
未成熟(または休止)DCは皮膚のような非リンパ様組織に配置されており、粘膜は高食細胞性であり、可溶性および粒状抗原を容易にインターナライズする。それらが成熟処理を行い、食細胞性で移動性の細胞からナイーブT細胞の非食細胞性で高度に効率的な刺激物質に形質転換するのは、このような抗原を負荷した未成熟DCが炎症性刺激(成熟刺激とも呼ばれる)を受けやすいときだけである。
【0040】
未成熟DCは、MIICの形態における高細胞内MHC II、CD1aの発現、ある種の微粒子およびタンパク質についての積極的エンドサイトーシス、FcgRおよび積極的食作用の存在、不完全なイン・ビトロでのT細胞感作、接着および補助的刺激分子(CD40/54/58/80/86)が少ない/全くないこと、CD25、CD83、p55、DEC-205、2A1抗原が少ない/または全くないこと、GM-CSFには応答性であるが、M-CSFおよびG-CSFには応答性でないこと、および成熟を阻害するIL-10に対する感受性を特徴とする。
【0041】
成熟した後、抗原を負荷しT細胞を感作することができる成熟DCは非リンパ様組織からリンパ節または脾臓へ移行し、抗原負荷をプロセシングし、これを非活性化ナイーブCD4+T細胞およびCD8+ 細胞傷害T細胞へ提示する。この後者の相互作用によって適応免疫応答の細胞アームであるCTLが産生され、これらの細胞がウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を除去する。ナイーブCD4+T細胞は記憶ヘルパーT細胞に分化して、これがCD8+CTLおよびB細胞の分化および拡大を支持する。従って、ヘルパーT細胞は、マクロファージおよびCTLのような重要なエフェクター細胞の活性化によって間接的に抗腫瘍活性を発揮する。
【0042】
T細胞をこの方法で活性化した後、成熟DCは9-10日以内にアポトーシスを行う。
【0043】
成熟DC細胞は、形態的には運動性および多数の突起(ベールまたは樹状突起)の存在を特徴とする。それらは抗原捕捉および提示に対してコンピテントであり(高いMHCクラスIおよびII発現を示し)、T細胞結合および補助刺激に関与する広汎な分子(例えば、CD40、CD54/ICAM-1、CD58/LFA-3、CD80/B7-1およびCD86/B7-2)並びに様々なサイトカイン(IL-12など)を発現する。それらは表現型が安定であり、マクロファージまたはリンパ球への復帰/転換はない。
【0044】
従って、成熟DCは、T細胞活性化および細胞媒介性免疫において重要な役割を果たす。対照的に、未成熟DCは、(抗原特異的T細胞アネルギーを誘発する)免疫寛容の調節および保持に関与する。
【0045】
(c) 樹状細胞個体発生サブセット
樹状細胞は単一細胞型によっては表されないが、それぞれ別個の個体発生を有する異なるクラス細胞の不均一集合体を含んでなる。少なくとも3種類の異なる発生経路であって、それぞれが独特な原種から出現し且つ別個の分化した機能を有するDCサブセットへの特定のサイトカイン組合せによって駆動されるものが記載されている。
【0046】
現在のところ、総てのDCに共通する最初期のDC原種/前駆体は骨髄に発生すると考えられている。これらの原始的な原種はCD34+であり、それらは骨髄から放出されて、血液およびリンパ器官中を循環する。
【0047】
骨髄から一旦放出されたならば、原始的CD34+DC原種は様々な刺激シグナルを受けやすくなる。これらのシグナルは、少なくとも3種類の異なる経路であって、それぞれが中間段階、サイトカイン要求、表面マーカー発現および生物学的機能に関して異なっているものの一つに沿って原種を振り向ける。
【0048】
リンパ系DCは、リンパ球系統に密接に連結しているDCの独特なサブセットである。この系統は、表面抗原CD11b、CD13、CD14およびCD33を欠いていることを特徴とする。リンパ系DCはTおよびナチュラルキラー(NK)細胞と祖先を共有しており、総ての原種は胸腺および二次リンパ系組織のT細胞領域に存在している。リンパ系DCの分化はインターロイキン2、3および15(IL-3、IL-2およびIL-15)によって駆動されるが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によっては駆動されない。機能的には、リンパ系は(恐らくはfas媒介性アポトーシスを誘発することによる)胸腺での負の選択を促進し、CD4+およびCD8+T細胞に対する補助的刺激である。更に近年、ヒト原種由来のリンパ様DCは、Th2応答を優先的に活性化することも示されている。アポトーシスを誘発するそれらの能力および潜在的に自己反応性T細胞の除去におけるそれらの役割により、リンパ系DCは刺激性免疫エフェクター機能よりはむしろ調整的なものを主として媒介することが示唆されている。
【0049】
骨髄DCは、食細胞と関連したある種の特徴の発現がある発生段階によって識別される。少なくとも2種類の構造的および機能的に異なるサブセットがあると思われる。第一のものは抗原的にCD14-、CD34+、CD68-およびCD1a+として定義され、ときにはランゲルハンス細胞型のDCと呼ばれる。このサブセットはT細胞を感作してTh1応答を優先的に活性化すると思われ、IL-12はこの工程に関係していると思われる。このサブセットはナイーブB細胞も活性化してIgMを分泌することもでき、従って、主に炎症性Th1応答と関連することがある。第二の骨髄DCサブセットであって、ときには間質DCと呼ばれるものは抗原的にCD14+、CD68+およびCD1a-として定義され、単球に関係する(結果として、それらは単球由来DCまたはMo-DCとも呼ばれる)。
【0050】
(d) 樹状細胞ワクチン
一つの樹状細胞に基づく典型的な治療では(Schuler et al. (2003) Current Opinion in Immunol 15: 138-147に概説されている)、DC細胞を患者から(例えば、アフェレーシスによって)採取した後、特定の抗原または複数の抗原(例えば、(複数の)腫瘍抗原)を負荷(適用、感作または添加)する。次に、それらを自己細胞ワクチンとして再投与し、適当な免疫応答増強する。
【0051】
この治療例では、応答性T細胞としてはヘルパー細胞、特にTh1 CD4+細胞(IFN-γを産生する)およびキラー細胞(特に、CD8+細胞溶解性Tリンパ球)が挙げられる。DCは、他のクラスのリンパ球(B、NKおよびNKT細胞)によって応答を媒介することもある。それらはワクチン接種の重要な目的であるT細胞記憶を誘発することもある。
【0052】
現在のところ、DCワクチンの最適有効性に必要な(複数の)DCサブセットの正体についてはほとんど知られておらず、免疫刺激を求める方法では成熟が必要とされ且つ未成熟DCは回避されるべきであるという認識はできない(Dhodapkar and Steinman (2002) Blood 100: 174-177)。
【0053】
Hsu et al. (1996) Nat Med 2: 52-58は、血液からエクス・ビボで単離した希少なDCを用いた。これらのDCはそれらの個体発生サブセットに関して高度に異種性であったが、単離手続中に自発的に成熟した。しかしながら、収量は極めて低かった。
【0054】
収量の問題は、例えば、Flt3リガンドによりエクス・ビボでDCを拡大する手法の開発によって検討されてきたが(Fong et al. (2001) PNAS 98: 8809-8814)、これの有効性には限界がある。
【0055】
ほとんどの研究者は、Mo-DCを用いてきた。これらの細胞は、単球をGM-CSFおよびIL-4(またはIL-13)に暴露して未成熟Mo-DCを産生し、これを次に成熟培地でインキュベーションすることによって成熟させることによって得られる。このような培地は、1種類以上の成熟刺激因子を含んでなり、典型的には、C型レクチン、トール様受容体(TLR)リガンド(例えば、リポ多糖類および/またはモノホスホリル脂質のような微生物産物)、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α)、CD40L、単球コンディショニング培地(MCM)、またはMCM模造物(IL-1β、TNF-α、IL-6およびPGE2を含む)を含んでなる。
【0056】
DCワクチン性能に対する成熟培地の影響については現在のところはほとんど知られていないが、MCMまたはMCM模造物は現在標準的なものを表しており、これらの培地を用いて成熟したMo-DCは均一であり、生育力が高く、走化性刺激に効果的に移行し、イン・ビトロおよびイン・ビボのいずれでもCTLを誘発する。
【0057】
白血球搬出産物を培養するのに十分な大きさの表面積を提供する半閉鎖式の多層連通培養容器内で粘着性単球から多数のMo-DC(アフェレーシス当たり3-5億個の成熟DC)を生成する手法が開発されている。これらのいわゆる細胞工場を用いて、融解時に高度に生育可能な抗原を予め負荷したDCの低温保存部分を産生することができ、最適成熟および凍結手続は報告されている(Berger et al. (2002) J. Immunol. Methods 268: 131-140; Tuyaerts et al. (2002) J. Immunol. Methods 264:135-151)。
【0058】
ワクチン接種のための樹状細胞も、ランゲルハンス細胞型の間質とDCの混合物を含んでなるCD34+由来DCから調製されている。研究者の一部は、後者のDCサブセットは免疫刺激DCワクチンとして用いられるときにはMo-DCより強力であると考えている。
【0059】
抗原選択に関しては、様々な方法が用いられてきている。定義および未定義抗原のいずれを用いることもできる。抗原は、異種抗原または自己抗原であることができる。1種類以上の定義された新生抗原を選択することができ、癌治療の場合には、(複数の)新生抗原は腫瘍関連抗原を含んでなることがある。しかしながら、最も一般的なものは、定義抗原を含む9-11アミノ酸ペプチド(天然配列または増強されたMHC結合に対してデザインされた類似体)であり、このような抗原は、優良製造規則(GMP)標準となるように製造することができ、容易に標準化することができる。
【0060】
他の方法は抗原を免疫複合体として用いており、これがFc-受容体支持DCに伝えられ、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチド配列を形成する。これにより、CTLおよびTh細胞の両方を誘発するための潜在力が提供される(Berlyn et al. (2001) Clin Immunol 101: 276-283)。
【0061】
任意の所定の腫瘍(または他の標的細胞、例えば、ウイルスに感染した細胞)の全抗原レパートリーを調査する方法も開発されている。例えば、DC-腫瘍細胞ハイブリッドを用いて腎細胞癌の治療に成功したが(Kugler et al. (2000) 6: 332-336)、このハイブリッドは標準化が困難で、短命である。壊死性またはアポトーシス性腫瘍細胞が用いられ、様々な細胞溶解物を有する。
【0062】
患者特異抗原の選択は少なくともいくつかの癌の治療に重要であることがあると思われ、腫瘍細胞系または定義抗原よりもむしろ新鮮な腫瘍細胞系由来の抗原が重要であることが立証されている(Dhodapkar et al. (2002) PNAS 99:13009-13013)。
【0063】
選択された(複数の)抗原のDCへの送達に関しては、様々な手法を利用することができる。MHC-ペプチド複合体の数および性質はDCの免疫原性に直接影響するので、抗原ローディング法はDCワクチン性能にとって決定的であることが分かる(van der Burg et al. (1996) J Immunol 156: 3308-3314)。DCによるMHC-ペプチド複合体の長期間の提示により免疫原性が増強され、従って、長期間の提示を促進するローディング手法が重要となることがあると思われる。これは、細胞貫通残基に連結したペプチドの使用によって内部にDCを負荷することによって達成されている(Wang and Wang (2002) Nat Biotechnol 20:149-154)。
【0064】
抗原は、この抗原がDCによって発現され、細胞表面で処理および提示されるように、核酸を(例えば、電気穿孔によって)コードしながらDCをトランスフェクションすることによって負荷することもできる。この方法では、高価なGMPタンパク質および抗体を用いる必要がない。RNAは(抗原プロセシングに十分ではあるが)一過性発現のみを産生し、DNAの組込みに関連した潜在的問題および付随する長期発現/突然変異誘発を防止するので、RNAがこの目的に好ましい。このようなトランスフェクション法により、全またはPCR増幅した腫瘍RNAの使用によって標的細胞の全抗原レパートリーを調査することもできる。
【0065】
ヘルパータンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)および破傷風トキソイド(TT))CTL誘発を非特異的に補助することができるいくつかの証拠があり(Lanzavecchia (1998) Nature 393: 413-414)、ワクチン接種の前にこのようなヘルパータンパク質をDCに適用するのが有利であることを立証することができる。
【0066】
薬量学に関しては、DCワクチン投与の用量、頻度および経路は、臨床試験では未だ最適化されていない。投与される細胞の絶対数は、投与経路と注入後の移動の有効性によって変化することは明らかである。この点に関して、皮内または皮下投与がTh1応答の進展に好ましいことが示唆されているが、皮膚から結節への移行の必要を回避する目的で直接的結節内送達が用いられてきた(Nestle et al. (1998) Nat Med 4: 328-332)。
【0067】
上記の抗原パルスDCワクチンの例と全く異なるものは、様々なケモカインを分泌する樹状細胞を腫瘍中に直接投与する方法であり、結節外にT細胞を感作することが示されている(Kirk et al. (2001) Cancer Res 61: 8794-8802)。従って、もう一つの治療例では、DCを腫瘍にターゲッティングして活性化し、エクス・ビボで抗原を負荷する必要なしにin situで免疫応答を誘発する。
【0068】
in situでのDCワクチン接種は、更にもう一つの別個の(しかしながら関連した)方法を構成する(Hawiger et al. (2001) J Exp Med 194: 769-779)。この治療例では、抗原をイン・ビボでDCにターゲッティングした後、in situで成熟する目的で膨張させ、誘導する。この方法は、内因性DCの抗原のターゲッティング(例えば、エキソソームを使用、Thery et al. (2002) Nat Rev Immunol 2: 569-579参照)およびイン・ビボで(好ましくは定義された(複数の)DCサブセットの)成熟を効果的に誘発することができる成熟刺激因子の発生を含んでいる。
【0069】
(e) 養子CTL免疫治療における樹状細胞の使用
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を患者に投与して、特定の疾患または感染症(典型的には、癌)に対する免疫応答を付与しまたは捕捉することができる。例えば、腫瘍特異的T細胞を患者から(例えば、白血球搬出によって)抽出し、選択的に膨張させ(例えば、テトラマーによって誘導されるクローニングによって、Dunbar et al. (1999) J Immunol 162: 6959-6962)、次に自己細胞ワクチンとして再投与することができる。
【0070】
この種の受動免疫治療の臨床的有効性、実用性および処理容易性は、樹状細胞を用いて投与前にT細胞をイン・ビトロで感作することによって大幅に増加することができる。
【0071】
(f) 自己免疫疾患の治療の樹状細胞に基づく方法
樹状細胞は免疫学的寛容の調節および保持にも関与しており、成熟の非存在下では、これらの細胞は抗原特異的サイレンシングまたは寛容を誘発する。
【0072】
例えば、もう一つの樹状細胞に基づく治療実例では、未成熟DCを自己免疫疾患と闘うようにデザインされた免疫調節介入の一部として投与する。このような応用例では、DCの抑制的潜在能力を、サイトカインをコードする遺伝子によるイン・ビトロトランスフェクションによって増強することができる。
【0073】
(g) 樹状細胞の機能におけるIL-2の役割
Granucci et al. (2002) Trends in Immunol. 23: 169-171には、微生物刺激の後樹状細胞におけるIL-2に対するmRNA転写体の一過性アップレギュレーションが報告されている。WO 03012078号明細書では、GranucciがT細胞活性化だけでなくNK細胞の活性化の媒介においてDC由来のIL-2によって演じられる重要な役割を記載しており、DC由来のIL-2は先天的および適応免疫を調節し、連結する重要な因子である。
【0074】
更に、IL-2の全身投与はDCワクチンの治療効力を増強することが近年示されており(Shimizu et al. (1999) PNAS 96: 2268-2273)、一方IL-2の存在は少なくともいくつかのDCワクチン接種法における樹状細胞によって媒介される特異的ペプチド依存性免疫に本質的であることが示された(Eggert et al. (2002) Eur J Immunol 32: 122-127)。それらの最近の総説では、Schuler et al. (上記引用)は、「... DCワクチン接種によって誘発されるT細胞応答が増強され、治療上一層効果的となると思われるので、DCワクチン接種とIL-2投与の組合せを探求することは重要なことがある」と結論している。
【0075】
樹状細胞は免疫治療において(特に癌の治療において)重要な手段であることが明らかにされているが、DCワクチン接種は未だ比較的初期の段階であることは上記の説明から明らかであろう。DCの調製方法は連続的に進歩してきており、増加しつつある数のフェーズI、IIおよびIIIの臨床試験はこの領域における研究と開発を鋭意行っている。しかしながら、DC生物学の水準では効力を向上させる必要が求められており、この必要性は本発明の一態様で説明される。
【0076】
免疫応答およびTh1:Th2応答比
免疫応答は、2つの異なる種類であるTh1応答(1型、細胞性または細胞依存性免疫)とTh2応答(2型、体液性または抗体依存性免疫)を含んでなる。
【0077】
これらのTh1およびTh2応答は相互に相容れないものではなく、多くの場合にそれらは平行して存在する。このような状況では、Th1/Th2応答のバランスによって、(以下に説明するように)免疫学的防御の性質(および影響)が決定される。
【0078】
Th1/Th2バランス(Th1:Th2応答比とも表すことができる)は、少なくとも部分的には、免疫系が最初に刺激されるときにはナイーブヘルパーT細胞の抗原感作が起こる環境(特にサイトカイン環境)の性質によって決定される。
【0079】
Th1およびTh2応答は、とりわけナイーブヘルパーT細胞の感作およびその後の分極に付随するある種の表現型変化に基づいて識別される。これらの表現型変化は、少なくとも部分的には分極したヘルパーT細胞によって分泌されるサイトカインの性質を特徴とする。
【0080】
Th1細胞は、TNF、IL-1、IL-2、IFN-γ、IL-12 および/またはIL-18の1種類以上などのいわゆるTh1サイトカインによって産生しまたは調節される。Th1サイトカインは1型応答を組織化し、マクロファージ活性化に関与しており、Th1細胞は、細菌およびウイルス攻撃、並びに悪性細胞に対する防御の重要な部分を形成する細胞依存性防御(細胞傷害性Tリンパ球産生など)を組織化する。
【0081】
Th2細胞は、いわゆるTh2サイトカインであって、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13の1種類以上を包含するものを産生する。Th2サイトカインは様々な抗体の産生を促進し、Th1応答を抑制することができる。
【0082】
従って、マウスにおいて、IFN-γは作製するが、IL-4は作製しない細胞はTh1として分類され、一方IL-4を発現するが、IFN-γは発現しないCD4+細胞はTh2として分類される。この区別はヒトでは余り明確ではないが(Th1またはTh2サイトカインのみを産生するT細胞はヒトには存在しないと思われる)、T細胞応答の表現型(Th1またはTh2)は、ヒトでは発現されるTh1とTh2サイトカインの比(通常は、IFN-γとIL-4および/またはIL-5の比)に基づいて識別することができる。
【0083】
免疫応答の型は、その強度またはその持続期間と同様に重要であることがますます現実化している。例えば、過度のTh1応答は、自己免疫疾患、不適当な炎症応答および移植拒絶を生じる可能性がある。過度のTh2応答は、アレルギーや喘息を生じる可能性がある。更に、Th1:Th2比の動揺は多くの免疫学的疾患および障害の徴候であり、Th1:Th2比を変更する方法の開発は最優先となっている。この要求も、本発明によって検討を行う。
【発明の概要】
【0084】
本発明は、少なくとも部分的には、樹状細胞によるIL-2産生をある種のアルカロイドによって誘発することができるという意外な発見に基づいている。IL-2産生は重要であり且つ持続的である。アルカロイドはまた、樹状細胞によってIL-12産生を誘発しうる。
【0085】
今日までその存在すら知られていなかったアルカロイドの活性は、免疫治療の分野、特に樹状細胞ワクチンの領域および(例えば、Th1応答を優先的に促進しおよび/またはTh2応答を優先的に抑制することにより)イン・ビボでTh1:Th2応答比を増加するようにデザインされた免疫調節介入において広汎に応用される。
【0086】
従って、本発明によれば、IL-2(および場合によってはIL-12)の産生を必要とする患者において樹状細胞にIL-2(および場合によってはIL-12)の産生を誘発する方法であって、患者に上記樹状細胞において上記IL-2(および場合によってはIL-12)を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを投与することを含んでなる、方法が提供される。
【0087】
もう一つの態様では、本発明は、免疫治療用の医薬品の製造のための、アルカロイドの使用であって、、免疫治療が樹状細胞においてIL-2(および場合によってはIL-12)の産生を誘発することを含んでなる使用を意図する。
【0088】
免疫治療は、好ましくは
(a) Th1:Th2応答比の増加(例えば、Th1関連疾患または障害(例えば、増殖性障害または感染症)および/またはTh2関連疾患または障害(例えばアレルギー、例えば、喘息)の治療におけるもの)
(b) 血液再生(haemorestoration)、
(c) 免疫抑制の緩和、
(d) サイトカイン刺激、
(e) 増殖性障害の治療、
(f) アルカロイドがアジュバントとして作用する、ワクチン接種、
(g) アルカロイドが樹状細胞をin situで増強する作用をする、ワクチン接種、
(h) 創傷治癒
(i) 先天的免疫応答の刺激、
(j) 内因性NK細胞の活性化の増強
を含んでなる。
【0089】
あるいは、または更に、この免疫治療は、
(a) 細菌感染症、
(b) プリオン感染症、
(c) ウイルス感染症、
(d) 真菌感染症、
(e) 原生動物感染症、
(f) 後生動物感染症(例えば、寄生線虫による)
から選択される微生物感染症の治療または予防における免疫刺激を含んでなることがある。
【0090】
特に好ましいものは、感染症の治療または予防を含んでなり、感染性病原体が細胞内に存在し、または例えば、HIV、リーシュマニア、インフルエンザ、結核およびマラリアから選択される宿主細胞中の新生抗原の発現を引き起こす、免疫治療的介入である。
【0091】
感染症の治療または予防における本発明の応用は、以下に更に詳細に説明する。
【0092】
血液再生(haemorestoration)が、好ましくは
(a) 化学療法、および/または
(b) 放射線療法、および/または
(c) 骨髄移植、および/または
(d) ヘモアブレーティブ(haemoablative)免疫治療
に補助的である。
【0093】
本発明により治療される免疫抑制は任意の原因によって生じることがあり、免疫抑制が先天的、後天的(例えば、感染症または悪性腫瘍によるもの)であり、または(例えば、移植片または癌の処理の一部として意図的に)誘導されることがある。
【0094】
本発明のアルカロイドを用いて、内在性サイトカインのみの産生を刺激することができ、またはこの目的に遺伝子療法プログラムにおける補助薬(例えば、1種類以上のサイトカイン、例えばIL-2をコードする核酸の投与に基づくもの)として用いることができる。
【0095】
任意の増殖性障害を本発明によって治療することができるが、本発明は癌および癌転移の様々な形態の治療または予防に特定の応用を見出している。
【0096】
本発明のワクチンは細胞性ワクチンであることがある。このような細胞性ワクチンは、典型的には生細胞を含んでなる。特に好ましいものは、樹状細胞および/またはT細胞を含んでなる細胞性ワクチンである。あるいは、または更に、本発明のワクチンは、新生抗原とアルカロイドを含んでなることがある。
【0097】
本発明によって用いられる細胞は、異種、同種、同系または自家細胞でよい。しかしながら、好ましいものは、同系または自家細胞の使用である。最も好ましい態様では、自己細胞(例えば、再投与の前にアフェレーシスにより患者から採取したもの)が用いられる。
【0098】
免疫治療は、更に抗原(例えば、新生抗原)であって、場合によっては内在性樹状細胞(例えば、エキソソームに存在)にターゲッティングされている抗原の同時投与および/または樹状細胞成熟刺激因子の同時投与を含んでなることがある。
【0099】
もう一つの態様では、本発明は、アルカロイドを含んでなる生細胞ワクチンを意図する。本発明の生細胞ワクチン中の細胞は、好ましくは異種、同種、同系または自家細胞を含んでなる。特に好ましいものは、細胞が樹状細胞(例えば、抗原パルス樹状細胞)を含んでなる生細胞ワクチンである。しかしながら、本発明の生細胞ワクチンは、T細胞を含んでなることもある。このような態様では、T細胞は、樹状細胞と接触することによって、例えば、抗原パルス樹状細胞と接触することによって感作される(primed)ことがある。特に好ましいものは、アルカロイドの存在下にて抗原パルス樹状細胞と接触することによって感作されたT細胞である。
【0100】
もう一つの態様では、本発明は、樹状細胞をこの樹状細胞でIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドと接触させることを含んでなる樹状細胞ワクチンの産生方法を意図する。
【0101】
好ましくは、この方法は、更に樹状細胞に抗原を負荷し、および/または樹状細胞を成熟させることを含んでなる。樹状細胞は好都合な手段によって(例えば、自発的成熟によって)成熟することができるが、成熟培地(例えば、本発明の成熟培地)と接触させることによる成熟が好ましい。当然のことであるが、成熟は、寛容を誘発する必要がある態様では(例えば、下記のような自己免疫疾患およびアレルギーの治療では)故意に回避される。
【0102】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる(または得ることができる)樹状細胞ワクチンを意図する。
【0103】
本発明は、
(a) 樹状細胞を供給し、
(b) 樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドと上記樹状細胞を接触させることによって、刺激された樹状細胞を産生し、
(c) T細胞を供給し、
(d) T細胞を工程(b)の刺激された樹状細胞と接触させることによってT細胞を感作すること
を含んでなる、T細胞ワクチンの産生方法にも関する。
【0104】
好ましくは、この方法は、樹状細胞に抗原を負荷し、および/または感作工程(d)の前に樹状細胞を成熟させる段階をも含む。
【0105】
本発明は、本発明の方法によって得られるT細胞ワクチンも意図する。
【0106】
もう一つの態様では、本発明は、本発明のT細胞ワクチンを、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療の方法を意図する。
【0107】
もう一つの態様では、本発明は、イン・ビトロでT細胞を感作する方法であって、
(a) 樹状細胞を供給し、
(b) 樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドと上記樹状細胞を接触させることによって、刺激された樹状細胞を産生し、
(c) T細胞を供給し、
(d) T細胞を刺激された樹状細胞と接触させることによって感作したT細胞を産生すること
を含んでなる方法を提供する。
【0108】
好ましくは、この方法はまた、樹状細胞に抗原を負荷し、および/または感作工程(d)の前に樹状細胞を成熟させることを含んでなる。
【0109】
もう一つの態様では、本発明は、本発明の方法に準じて感作したT細胞をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療の方法を提供する。
【0110】
もう一つの態様では、本発明は、未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への成熟を誘発するための成熟培地であって、上記樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドを含んでなる、上記培地を提供する。
【0111】
任意の適当な成熟培地(本明細書において上記の通り)を用いることができる。成熟培地定義されていてもまたは未定義であってもよい。これは、1種類以上のトール様受容体(TLR)リガンドおよび/または1種類以上の炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α)を含んでなることがある。他の増殖因子が存在していてもよい。特に好ましいものは、アルカロイドを補足した単球コンディショニング培地(MCM)またはMCM模造物である。
【0112】
もう一つの態様では、本発明は、本発明の成熟培地を含んでなる樹状細胞工場を提供する。
【0113】
本発明は、未成熟樹状細胞を本発明の成熟培地と接触することにより、樹上細胞ワクチンを産生することを含んでなる成熟樹状細胞の産生方法も意図する。
【0114】
もう一つの態様では、本発明は、未成熟樹状細胞を(例えば、本発明の樹状細胞工場における)本発明の成熟培地と接触させることを含んでなる、樹状細胞ワクチンの産生方法を提供する。
【0115】
本発明は、本発明の方法に準じて産生した成熟樹状細胞をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療の方法も提供する。
【0116】
アルカロイドをNKおよび/またはNKT細胞活性化を必要とする患者に、患者の内在性樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量で投与することを含んでなる、休止NKおよび/またはNKT細胞をイン・ビボで活性化する方法も意図される。
【0117】
ワクチン接種の増強を必要とする患者において樹状細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、上記樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドの同時投与を含んでなる、方法も提供する。
【0118】
ワクチン接種の増強を必要とする患者においてT細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、その患者の内在性樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを同時投与することを含んでなる、方法も提供される。
【0119】
もう一つの態様では、本発明は、樹状細胞の成熟を誘発する方法であって、
(c) 樹状細胞に対してターゲッティングした抗原、および
(d) 上記樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイド
を同時投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0120】
本発明は、未成熟樹状細胞とアルカロイドの同時投与を含んでなる、免疫寛容を必要とする患者において免疫寛容を誘発する方法も提供する。
【0121】
もう一つの態様では、本発明は、未成熟樹状細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、上記未成熟樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを同時投与することを含んでなる方法を提供する。
【0122】
未成熟樹状細胞は、好ましくは抗原を負荷している。
【発明の具体的説明】
【0123】
定義
本明細書で用いられ且つ特に断らない限り、下記の用語は、その用語が当該技術分野で有する可能性がある任意の広義(または狭義)の意味に加えて、下記の意味を有するものと意図される。
【0124】
本明細書で用いられるように、本発明のアルカロイド組成物、ワクチンなどの様々な成分の投与に関して用いられる同時投与という用語は、参照成分の逐次、同時または個別投与を包含すると考えられる。従って、同時投与は、参照成分を投与前に物理的に混合する場合を包含する。逐次投与は、参照成分をある程度時間的に分離して個別に投与する場合を包含する(典型的には、数分間から数時間であるが、いくつかの態様では、同時投与成分の投与は1日以上の期間だけ離すことがある)。
【0125】
新生抗原という用語は、本明細書では任意の新たに発現した抗原決定基を定義するのに用いられる。新生抗原は、(特に、形質転換または感染細胞の表面上の)新たに発現した決定基として、1種類以上の分子複合体形成の結果として、または分子瓦解列して新たな抗原決定基を表示する結果として、タンパク質での立体配座変化により生じることがある。従って、本明細書で用いられる新生抗原という用語は、感染(例えば、ウイルス感染症、原生動物感染症または細菌感染症)によって発現した抗原、プリオン性疾患(例えば、BSEおよびCJD)、細胞形質転換(癌)におけるものを包含し、後者の疾患においては、新生抗原は腫瘍関連抗原と呼ばれることがある。
【0126】
腫瘍関連抗原という用語は、本明細書では、腫瘍が生じる型の正常細胞には存在しない(または少量または異なる細胞コンパートメントに存在する)形質転換(悪性または腫瘍)細胞に存在する抗原を定義するのに用いられる。腫瘍形成ウイルスは、ウイルスによって誘発される宿主タンパク質であることが多い腫瘍抗原の発現を誘発することもできる。
【0127】
成熟培地という用語は、本明細書では未成熟樹状細胞から樹状細胞の成熟を誘発する1種類以上の化合物を含んでなる(定義されたまたは未定義の)組成物を定義するのに用いられる。典型的には、成熟培地は1種類以上のトール様受容体(TLR)リガンドおよび/または1種類以上の炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α)を含んでなる。他の増殖因子が存在することもある。
【0128】
樹状細胞工場という用語は、本明細書では閉鎖した(または機能的に閉鎖した)多層容器であって、層同士が相互連通して少なくとも106-109の樹状細胞を収容するのに十分な内部表面積を提供する容器内に配置された樹状細胞の培養物を定義するのに用いられる。典型的には、樹状細胞工場は成熟培地を含み、白血球搬出によって収集され、細胞工場内でインキュベーションされた未成熟樹状細胞がこれによって樹状細胞ワクチンの基剤として有用な成熟樹状細胞に転換されるようにする。適当な細胞工場は市販されている(例えば、Nunc(登録商標)より発売されているNuncion(登録商標)Δ細胞工場)。
【0129】
細胞工場に適用される本明細書で用いられる閉鎖系という用語は、滅菌され且つ外部環境から(複数の)無菌バリヤーによって隔離されており、且つ総ての成分が完全に一体化し、製造部位に取り付けられおよび/または組み立てられている培養容器を定義するのに用いられる。細胞工場に適用される本明細書で用いられる帰納的に閉鎖系という用語は、装置製造部位で産生される滅菌モジュール要素から最終使用者によって組み立てられ、且つ(複数の)滅菌バリヤー(例えば、0.22ミクロンフィルター)を用いて、最終使用者が様々なモジュールを無菌的に相互連結することができる培養容器を定義するのに用いられる。
【0130】
(治療において本発明の薬剤の使用に適用される)補助薬という用語は、アルカロイドを1種類以上の他の薬剤、介入、養生法または治療法(例えば、手術および/または放射線照射)と共に投与される使用を定義する。このような補助薬療法は、本発明のアルカロイドの同時、個別または逐次投与/適用と他の(複数の)治療法を含んでなることがある。従って、幾つかの態様では、本発明のアルカロイドの補助的使用は、特定の単位投薬量、または本発明のアルカロイドが補助薬的に用いられ(あるいは単一の単位用量内で他の(複数の)薬剤と物理的に関連した)他の(複数の)薬剤と混合して含まれている処方に反映されることがある。他の態様では、本発明のアルカロイドの補助的使用は、本発明の医薬キットの組成であって、本発明のアルカロイドが補助的に用いられるべき他の(複数の)薬剤と(例えば、単位用量の配列の一部として)同時包装されるものに反映されることがある。更にもう一つの態様では、本発明のアルカロイドの補助薬的使用は、処方および/または薬量学に関してアルカロイドと同時包装される情報および/または使用説明書に関して反映されることがある。
【0131】
極性および無極性という用語は、溶媒の特性決定に適用して、電気的双極子モーメントを有し、従って親水性(極性)または疎水性(無極性)を示す程度を示すことができる相対的用語と解するべきである。このような溶媒を用いて、それぞれ極性および無極性の植物化学物質を抽出することができ、本明細書でアルカロイド、植物化学物質または任意の他の残基に適用される極性および無極性という用語は、それに応じて解釈すべきである。
【0132】
漢方薬という用語は、本明細書では少なくとも1種類の活性成分は化学的に合成されず、植物の植物化学的成分である医薬組成物を定義するのに用いられる。ほとんどの場合に、この非合成的活性成分は(本明細書で定義した通りに)単離されず、供給源植物において関連している他の植物化学物質と共に存在している。しかしながら、幾つかの場合には、(複数の)植物由来の生物活性成分は濃縮された画分でありまたは単離される(ときには、高精製度を包含する)ことがある。しかしながら、多くの場合には、漢方薬は植物または未処理の全植物(またはその部分)の多少粗製の抽出物、浸剤または画分を含んでなるが、このような場合には、この植物(または植物部分)は通常は少なくとも乾燥しおよび/または粉砕されている。
【0133】
生物活性成分という用語は、本明細書ではこれを含んでなる草本医薬の薬学的効力に必要なまたは十分な植物化学物質を定義するのに用いられる。本発明の場合には、生物活性成分は本発明の免疫刺激性アルカロイド(例えば、カスアリン,カスアリングルコシド、またはそれらの混合物)を含んでなる。
【0134】
標準規格という用語は、本明細書では特徴的または植物化学的プロフィールであって、漢方薬の許容可能な品質と相関しているものを定義するのに用いられる。これに関して、品質という用語は、草本医薬の使用目的に対する全般的適合性を定義するのに用いられ、上記の(適当な濃度の)1種類以上の生物活性成分の存在あるいは1種類以上の生物活性マーカーまたは(適当な濃度の)1種類以上の生物活性成分の存在と相関する植物化学的プロフィールの存在を包含する。
【0135】
植物化学的プロフィールは、本明細書では様々な植物化学物質成分に関する特徴の組を定義するのに用いられる。
【0136】
本発明のアルカロイドに適用される単離されるという用語は、本明細書ではアルカロイドが、天然に存在するのと異なる物理的環境に存在することを示すのに用いられる。例えば、単離された材料は、それが天然で存在する複雑な細胞環境に関して実質的に単離する(例えば、精製する)ことができる。単離された材料を精製するときには、絶対精製度は重要ではなく、当業者であればこの材料を置くべき使用によって適当な精製度を容易に決定することができる。しかしながら、90%(w/w)、99%(w/w)またはそれ以上の精製度が好ましい。幾つかの環境では、単離されたアルカロイドは組成物(例えば、多くの他の物質を含む多少粗製の抽出物)または緩衝系であって、例えば、他成分を含むことがあるものの一部を形成する。他の環境では、単離されたアルカロイドを精製して、分光光度法、NMRまたはクロマトグラフィー(例えば、GC-MS)によって決定されるように本質的に均質にすることができる。
【0137】
本発明のアルカロイドに適用される誘導体および薬学上許容可能な誘導体は、本発明の親アルカロイドの化学的誘導体形成によって得られる(または得ることができる)アルカロイドを定義する。薬学上許容可能な誘導体は、過度の毒性、刺激またはアレルギー応答なしに(すなわち、合理的利益/危険比に比例した)ヒトの組織への投与またはこれと接触して使用するのに適している。好ましい誘導体は、本発明の親アルカロイドのアルキル化、エステル化またはアシル化によって得られる(または得ることができる)ものである。誘導体はそれ自体が免疫刺激性であることがあり、またはイン・ビボで処理するまで不活性であることがある。後者の場合には、本発明の誘導体はプロドラッグとして作用する。特に好ましいプロドラッグは、遊離ヒドロキシルの1個以上でエステル化し且つイン・ビボでの加水分解によって活性化するエステル誘導体である。本発明の薬学上許容可能な誘導体は、親アルカロイドの免疫刺激活性の幾つかまたは総てを保持している。幾つかの場合には、免疫刺激性活性は誘導体形成によって増加する。誘導体形成は、アルカロイドの他の生物学的活性、例えば、バイオアベイラビリティーおよび/またはグリコシダーゼ阻害活性および/またはグリコシダーゼ阻害プロフィールを増加することもある。例えば、誘導体形成は、グリコシダーゼ阻害効力および/または特異性を増加することがある。
【0138】
本発明のアルカロイドに適用される薬学上許容可能な塩という用語は、過度の毒性、刺激またはアレルギー応答なしに且つ合理的利益/危険比に比例してヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適している遊離塩基化合物の任意の無毒性有機または無機酸付加塩を定義する。適当な薬学上許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。例は、無機酸(例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、4-アミノ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、桂皮酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、およびマンデル酸)、および有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)との塩である。本発明のアルカロイド薬剤は、アルカリ金属ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化リチウムとの反応によって塩に転換することもできる。好ましくは、本発明のアルカロイドは、アセトンのような溶媒の存在下にて化学量論的量の塩化ナトリウムと反応させることによってその塩に転換される。
【0139】
これらの塩および遊離塩基化合物は、水和または実質的に無水形態で存在することができる。本発明の化合物の結晶も意図され、一般に本発明のアルカロイドの酸付加塩は、水および各種親水性有機溶媒に可溶性であり且つその遊離塩基形態と比較して融点が一層高く且つ溶解度が増加した結晶性材料である。
【0140】
最も広い態様では、本発明は、本発明のアルカロイドの総ての光学異性体、ラセミ形態、およびジアステレオ異性体を意図する。当業者であれば、本発明のアルカロイドに存在する非対称置換炭素原子により、本発明のアルカロイドは光学活性およびラセミ形態で存在し、合成し、および/または単離することができる。従って、本発明のアルカロイドに関して、アルカロイドをジアステレオ異性体の混合物として、個々のジアステレオ異性体として、鏡像異性体の混合物として、並びに個々の鏡像異性体の形態で包含する。
【0141】
従って、本発明は、本発明のアルカロイドの総ての光学異性体およびラセミ形態を包含し、特に断らない限り(例えば、ダッシュ-楔(dash-wedge)構造式を用いることによって)本明細書に示される化合物は、描かれた化合物の総ての可能な光学異性体を包含するものと解釈される。アルカロイドの立体化学形態が薬学的有用性にとって重要な場合には、本発明は単離されたユートマー(eutomer)の使用を包含する。
【0142】
本発明により使用するためのアルカロイド
任意のアルカロイドは、樹状細胞でIL-2の産生有するという条件で、本発明に準じて用いることができる。樹状細胞でIL-2の産生を誘発することができるアルカロイドは、本明細書では活性化アルカロイドと呼ばれ、任意の適当な活性化アルカロイドを本発明に準じて用いることができる。
【0143】
活性化アルカロイドは、イン・ビトロで樹状細胞においてIL-2の産生を検出するようにデザインされた(本明細書に記載のもののような)スクリーニングアッセイによって容易に同定することができる。このようなアッセイは、IL-2についての免疫検定法を伴うことがある。当業者であれば、とりわけ樹状細胞の性質および数、アルカロイドおよび細胞の相対濃度、アルカロイドによる刺激の期間、およびIL-2の誘発を検出するのに用いられる方法などこのようなアッセイに適当な条件を容易に同定することができるであろう。
【0144】
本発明の多くの態様では、アルカロイドが単離される。しかしながら、幾つかの態様では、単離したアルカロイドの使用は必要でなく、粗製抽出物で十分である。従って、本発明は、本発明のIL-2刺激アルカロイドを含んでなる漢方薬の使用を意図する。
【0145】
アルカロイドは天然に存在する必要はなく、天然に存在する対応物の合成類似体または誘導体でよい。このような類似体または誘導体は、好ましくは本明細書で定義されている薬学上許容可能な類似体、塩、異性体または誘導体である。しかしながら、好ましいアルカロイドは植物化学物質である。このような植物化学物質は、天然供給源から単離し、またはイン・ビトロで合成することができる。
【0146】
特に好ましいものは、下記のクラス
(a) ピペリジンアルカロイド、
(b) ピロリンアルカロイド、
(c) ピロリジンアルカロイド、
(d) ピロリジジンアルカロイド、
(e) インドリジジンアルカロイド、
(f) ノルトロパンアルカロイド
から選択されるアルカロイドである。
【0147】
しかしながら、上記クラスの1以上に典型的な2種類以上の異なるアルカロイドを含むアルカロイド混合物を用いることもできる。
【0148】
アルカロイドは、ポリヒドロキシル化されていてもよい。このような態様では、ポリヒドロキシル化アルカロイドは糖類似物であってもよい。
【0149】
分子量の小さいアルカロイドは望ましい薬学動態を示すことがあるので、好ましい。従って、このアルカロイドの分子量は100〜400ダルトン、好ましくは150〜300ダルトン、最も好ましくは200〜250ダルトンであることがある。
【0150】
本発明のアルカロイドは、極性または無極性であることがある。しかしながら、好ましいものは極性アルカロイドである。
【0151】
好ましい態様では、アルカロイドは、下式を有するか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化14】

(式中、
Rは水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【0152】
特に好ましいものは、下式を有するアルカロイドであるか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化15】

(式中、
Rは水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【0153】
特に好ましい態様では、アルカロイドは、1R,2R,3R,6S,7S,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(カスアリン)であって、Rが水素であり且つ下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化16】

【0154】
アルカロイドは、カスアリングルコシドまたはその薬学上許容可能な塩または誘導体でもよい。このような態様では、アルカロイドは、好ましくは下式のカスアリン-6-α-D-グルコシドであるか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化17】

【0155】
本発明に準じて用いられる他の適当なアルカロイドは、
(a) 3,7-ジエピ-カスアリン、
(b) 7-エピ-カスアリン、
(c) 3,6,7-トリエピ-カスアリン、
(d) 6,7-ジエピ-カスアリン、
(e) 3-エピ-カスアリン、
(f) 3,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(g) 7-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(h) 3,6,7-トリエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(i) 6,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、および
(j) 3-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、または
それらの薬学上許容可能な塩または誘導体から選択される。
【0156】
もう一つの好ましい態様では、アルカロイドが、下式を有するか、または
その薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化18】

(式中、
Rは水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【0157】
このような態様では、最も好ましいものは、下式を有するアルカロイドであるか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化19】

(式中、
Rは水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
【0158】
このような好ましいアルカロイドの例としては、下式を有するN-ヒドロキシエチルDMDP、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体が挙げられる。
【化20】

【0159】
もう一つの態様では、アルカロイドは、下式を有するか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化21】

(式中、
R1は水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択され、R2は水素、ヒドロキシおよびアルコキシから選択されるものである)
【0160】
このような態様では、アルカロイドは、好ましくは下式を有するか、または
その薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化22】

(式中、
R1は水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択され、R2は水素、ヒドロキシおよびアルコキシから選択されるものである)
【0161】
このような態様では、R1は糖残基(例えば、グルコシドまたはアラビノシド残基)であることがある。
【0162】
もう一つの態様では、アルカロイドは、下式を有するか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化23】

【0163】
このような態様では、アルカロイドは、好ましくは下式を有する2-ヒドロキシ-1,2-シス-カスタノスペルミンであるか、または
その薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【化24】

【0164】
あるいは、アルカロイドは、下式を有する2-ヒドロキシ-1,2-トランス-カスタノスペルミンであるか、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体であることがある。
【化25】

【0165】
特に好ましいものは、下表から選択されるアルカロイドである。
【0166】
【表1−1】

【0167】
【表1−2】

【0168】
【表1−3】

【0169】
本発明のアルカロイドの生物活性
本発明のアルカロイドは、樹状細胞におけるIL-2(および場合によってはIL-12)の発現を刺激する。
【0170】
IL-2は、1型応答の伝達に関与するTh1サイトカインである。これは、T細胞活性化だけでなく、とりわけNK細胞の活性化にも関与し、従って、先天的適応免疫を調節し、連結する働きを有すると思われる。従って、樹状細胞でのIL-2のアルカロイド誘導発現はTh1応答を直接増強し、それによりTh1:Th2応答比を増加することがある。
【0171】
IL-2のアルカロイド誘導発現は、内在性樹状細胞の活性を刺激した後この細胞が他のクラスのリンパ球(CTL、B、NKおよびNKT細胞)の応答を誘発しことによってT細胞記憶(ワクチン接種の重大な目標)も誘発することによって、Th1応答を間接的に増強(これによりTh1:Th2応答比を増加)することもある。
【0172】
本発明のアルカロイドは、リンパ球(例えば、樹状細胞および/またはマクロファージ)中でIL-12の発現を刺激することもある。IL-12は、1型免疫(Th1応答)の主要なメディエーターである。これはナチュラルキラー(NK)細胞を誘発して 先天的免疫応答の一部としてIFN-γを産生し、IFN-γを産生するCD4+Th1細胞および細胞傷害性CD8+細胞の膨張を促進する。これは、従って、腫瘍のT細胞侵襲並びにT細胞侵襲に対する腫瘍細胞の感受性を増加する。
【0173】
従って、本発明の化合物の免疫刺激活性は、樹状細胞によるIL-2(および場合によっては、IL-12)の刺激から生じることがあると思われる。これにより、NK細胞が刺激されて、IFN-γを産生し、CD4+Th1細胞の発生を誘発する。次に、誘発したTh1細胞は、IFN-γとIL-2を産生する。次いで、IL-2はTh1細胞の更なる増殖と病原体(例えば、腫瘍およびウイルス)特異的CD8+T細胞の分化を増化する。IL-2は、先天的免疫系のNK細胞の細胞溶解活性も刺激する。
【0174】
従って、本発明のアルカロイドによるリンパ球(例えば、樹状細胞および/またはマクロファージ)におけるIL-12アルカロイド誘導発現は、Th1応答を直接増強し、同様にTh1:Th2応答比を増加する。
【0175】
本発明のアルカロイドは、1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL-5)の発現を抑制し、これによりTh1:Th2応答比を増加することもある。
【0176】
樹状細胞におけるIL-2の発現を刺激する本発明のアルカロイドの能力は、ある種の重要な医学応用を支持する(以下に詳細に説明する)。好ましいアルカロイドがIL-12の発現も刺激し(および場合によっては、同様に1種類以上のTh2サイトカインの発現を抑制する)能力は治療効果に寄与することがあり、例えば、IL-12産生の増加は、HIV-1に感染した者およびAIDS患者の先天的および細胞性免疫の抑制を克服することができる。
【0177】
本発明の化合物によって示されるサイトカイン刺激は、補助刺激薬の存在によって全部または部分的に変化することがある。このような補助刺激薬としては、例えば、トール様受容体(TLR)リガンドなどの先天的免疫系を刺激する薬剤が挙げられる。これらのリガンドとしては、リポ多糖類(LPS)および/またはモノホスホリル脂質のような微生物産物、並びに微生物感染症に関連した他の分子が挙げられる。多くの応用では、このような補助刺激薬は、本発明の化合物の投与時に治療を行う患者に存在するであろう。
【0178】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明のアルカロイドの薬理活性の少なくとも幾らかは二次的グリコシダーゼ阻害活性に基づくこともあると考えられる。
【0179】
このようなグリコシダーゼ阻害は、イン・ビボで下記のいずれかまたは総てを生じることがある。
・腫瘍細胞グリコシル化の修飾(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)、
・ウイルスタンパク質グリコシル化の修飾(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)、
・感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化の修飾、
・細菌細胞壁の修飾。
【0180】
従って、本発明のアルカロイドはまた、イン・ビボで投与する場合、
(a) 腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)を修飾し、および/または
(b) ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)を修飾し、および/または
(c) 感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化を修飾し、および/または
(d) 細菌細胞壁を修飾する。
【0181】
従って、この任意の補助生物活性は、本発明の幾つかの好ましい態様において一次IL-2誘発活性を増加させることがある。これは、増殖性障害(例えば、癌)の治療などのある種の医学的応用または感染が免疫抑制に付随する応用において特に望ましいことがある。例えば、ビリオン抗原グリコシル化の選択的修飾により、感染性ウイルスを余り感染性でなく(または非感染性)にし、および/または内在性免疫応答に一層感受性にすることができる。特に、本発明のアルカロイドはHIVウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120のグリコシル化パターンを変更することによって、HIVの宿主細胞への侵入を細胞表面受容体への結合を妨げることによって阻害することができる。
【0182】
従って、本発明のアルカロイドは、好ましくはグリコシダーゼ阻害剤である(が、必ずしもそうではない)。特に好ましいものは、グリコシダーゼ阻害の特異性を示すアルカロイド、例えば、マンノシダーゼよりもむしろグルコシダーゼIである。従って、このような好ましいアルカロイドは、スワインソニンおよびその類似体がマンノシダーゼの強力で特異的な阻害剤であるので、グリコシダーゼ阻害プロフィールが後者とは全く異なる可能性がある。
【0183】
医学的応用
本発明は、医学、例えば、治療、予防および/または診断の方法に広く応用されている。
【0184】
これらの医学的応用は、ヒトを包含する任意の温血動物に適用することができる。応用としては、獣医学的応用が挙げられ、本発明のアルカロイドまたはワクチンは霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびヒツジなどのヒト以外の動物に投与される。
【0185】
本発明のアルカロイドおよびワクチンは、免疫調節活性を有する。従って、それらは、免疫系の刺激、増加または誘発が示され、または免疫応答の一部または全部の抑制または除去が示される疾患の治療または予防に一般的に応用される。
【0186】
本発明のアルカロイドの特定の医学的使用を、以下に詳細に説明する。説明または特許請求の範囲における治療および/または予防という表示は、それに応じて解釈すべきであり、とりわけ特定の下記の応用を包含するものと解釈される。
【0187】
(a) Th1:Th2応答比の増加
本発明のアルカロイドは、Th1:Th2応答比(例えば、Th1応答を優先的に促進する(および場合によっては、Th2応答を優先的に抑制することによる))ことを特徴とする治療および/または予防の方法に応用される。
【0188】
従って、本明細書で考えられる医学的応用としては、Th1:Th2応答比の増加が示されるまたは望まれる任意の疾患、症状または障害が挙げられる。例えば、考えられる医学的応用としては、Th1応答の刺激および/またはTh2応答の抑制が示されまたは望まれる疾患、症状または障害が挙げられる。
【0189】
本発明のアルカロイドがTh1:Th2応答比を増加する能力は、少なくとも部分的には樹状細胞においてIL-2の発現を誘発するその能力に基づいている。
【0190】
本発明のアルカロイドは、1種類以上のTh1サイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-1、TNF、IL-12、IL-2およびIL-18から選択される1種類以上のサイトカイン)の放出および/または活性(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボ)を(直接的または間接的に)誘発、増強、活性化または刺激することもできる。特に好ましいものは、IFN-γおよび/またはIL-12の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性をも誘発、増強、活性化または刺激するアルカロイドである。
【0191】
本発明のアルカロイドは、1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL-4、1L-5、IL-10およびIL-13から選択される1種類以上のサイトカイン)の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性を抑制または不活性化することもできる。特に好ましいものは、IL-5の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性を抑制または不活性化するアルカロイドである。
【0192】
従って、特に好ましいものは、相補的Th2サイトカイン阻害活性と共にTh1サイトカイン刺激活性を示すアルカロイドである。
【0193】
Th1:Th2応答比の増加に基づく治療の一般的クラスの範囲内にある応用の具体例を、下記の節で説明する。
【0194】
(b) Th1関連疾患の治療
Th1関連疾患は、Th1細胞が疾患、障害、症候群、疾病または感染症の影響の予防、治癒または緩和に関与している疾患、障害、症候群、疾病または感染症である。
【0195】
Th1関連疾患としては、免疫応答のTh1成分が病理学的に抑制される疾患、障害、症候群、疾病または感染症、またはTh1応答の刺激が示される疾患、障害、症候群、疾病または感染症を挙げることもできる。
【0196】
このような疾病は、例えば、ある種の増殖性障害(典型的には、癌)であって、増殖性(例えば、腫瘍)細胞がTh1応答の1種類以上の成分に対して抑制効果を発揮するものから生じることがある。例えば、腫瘍細胞は樹状細胞を阻害し、T細胞上の阻害受容体を発現させ、MHCクラスI発現をダウンレギュレーションし、免疫細胞細胞傷害性を不活性化または抑制する抗炎症性因子および免疫抑制サイトカインの分泌を誘発することがある。
従って、本発明の化合物は、Th1関連疾患の治療または予防に応用される。
【0197】
Th1関連疾患の例としては、感染性疾患(特に、ウイルス感染症)および増殖性障害(例えば、癌)が挙げられる。
【0198】
例えば、Th1関連疾患としては、任意の悪性または前癌状態の疾患、増殖性または過剰増殖性疾患、または身体の任意の細胞または組織の増殖能力または挙動における機能上のまたは他の障害または異常から生じるまたは由来するまたは関連した任意の疾患が挙げられる。
【0199】
従って、本発明は、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌の治療または予防に応用される。本発明は、血液およびリンパ系の癌(ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびヴァルデンストレーム病など)、皮膚癌(悪性黒色腫など)、消化管の癌(頭部および頸部癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結直腸癌、肛門癌など)、性器および泌尿器系の癌(腎臓癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌など)、婦人の癌(乳癌、卵巣癌、婦人科癌および絨毛癌など)並びに脳、骨カルチノイド(bone carcinoid)、鼻咽頭、腹膜後、甲状腺および軟組織腫瘍の治療または予防にも応用される。これはまた、未知の原発部位の癌の治療または予防にも用いられる。
【0200】
Th1関連感染性疾患としては、細菌、プリオン(例えば、BSEおよびCJD)、ウイルス性、真菌性、原生動物および後生動物感染症が挙げられる。例えば、Th1関連感染性疾患としては、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン-バール、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペス1型および2型、陰部ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス脳炎、帯状疱疹、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型ウイルス、ハンタンウイルス(hantann virus)(出血熱)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核、ハンセン病および麻疹による感染症が挙げられる。
【0201】
特に好ましいTh1関連感染性疾患としては、HIV/AIDS、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、インフルエンザ、結核およびマラリアなど、病原体が細胞内コンパートメント占拠する疾患が挙げられる。
【0202】
本発明の化合物は、Th1免疫応答に欠陥がある患者の治療に用いることもできる。このような患者としては、Th1応答が未成熟であり且つ完全には発達していない新生児、小児、並びにTh1応答が老化しまたは経時的に障害を生じている老齢患者を挙げることができる。このような患者個体群では、本発明の化合物を予防的に用いることができる((例えば、ウイルス)感染症の危険性を減少するための全身性1型免疫刺激因子として)。
【0203】
(c) Th2関連疾患およびアレルギーの治療
Th2関連疾患は、Th2細胞が疾患、障害、症候群、疾病または感染症の影響に関与する(例えば、支持し、引き起こしまたは媒介する)疾患、障害、症候群、疾病または感染症である。
従って、本発明のアルカロイドは、Th2関連疾患の治療または予防に応用される。
【0204】
本発明のアルカロイドにより治療可能なTh2関連疾患の一つの重要なクラスは、アレルギー疾患である。
【0205】
遺伝学的に病気に罹りやすいヒトは、様々な環境的原因により生じる抗原に感作される(アレルギー性になる)可能性があることは周知である。以前に感作されたヒトが同一のまたは構造的に同様なまたは同一源のアレルゲンに再暴露されると、アレルギー反応が起きる。従って、本明細書で用いられるアレルギーという用語は、特定の抗原(アレルゲン)に暴露することによって誘発され、続いてアレルゲンに暴露するときに有害および/または不快な免疫学的反応を生じる過敏症の状態を定義するのに用いられる。
【0206】
アレルギーに見られる有害、不快および/または望ましくない免疫学的反応としては、広汎な症状が挙げられる。消化管、皮膚、肺、鼻および中枢神経系などの多くの異なる器官および組織が、影響を受けることがある。症状としては、腹痛、腹部鼓脹、腸機能の障害、嘔吐、発疹、皮膚刺激、喘鳴および短呼吸、鼻水および鼻詰まり、頭痛および気分変化が挙げられる。重篤な場合には、循環器および呼吸器系が弱くなり、アナフィラキシー発作により極端な場合には死に至る。
【0207】
アレルギーに特有の有害、望ましくないおよび/または不快な免疫学的反応は、Th2応答成分を有する。
【0208】
上記で説明したように、本発明のアルカロイドは、1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL4、IL-5、IL-10およびIL-13から選択される1種類以上のサイトカイン)の放出および/または活性を(直接的または間接的に)抑制しまたは不活性化することがある。従って、本発明のアルカロイドを用いて、アレルゲンに対するTh2応答を阻害、抑制または除去することによってアレルギー反応に特有の有害および/または不快な免疫学的反応の治療または待機的調節を行うことができる。
従って、本発明のアルカロイドは、アレルギーの治療または予防に応用される。
【0209】
アトピー性アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、アレルゲンによって誘発される偏頭痛、細菌アレルギー、気管支アレルギー(喘息)、接触アレルギー(皮膚炎)、遅延型アレルギー、花粉アレルギー(枯草熱)、薬物アレルギー、刺創アレルギー、咬傷アレルギー、胃腸または食物アレルギー(炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病)および物理的アレルギーなど任意のアレルギーを、本発明により治療することができる。物理的アレルギーとしては、寒冷アレルギー(寒冷蕁麻疹または血管性水腫)、熱アレルギー(コリン作動性蕁麻疹)および光線過敏症が挙げられる。
特に重要なことは、喘息の治療または予防である。
【0210】
(d) 血液再生(haemorestoration)
本発明のアルカロイドは、脾臓および骨髄細胞増殖を増加し、骨髄増殖薬として作用することができる。従って、それらは、血液再生薬(haemorestoratives)として応用される。
【0211】
血液再生(haemorestoration)は、免疫抑制剤療法(例えば、シクロスポリンA、アザチオプリンまたは免疫抑制剤放射線療法)、化学療法(サイクル特異的および非特異的化学療法薬による治療など)、ステロイド投与、または他の形態の外科的または内科的介入(放射線療法など)の後に必要となることがある。従って、本発明のアルカロイドの血液再生薬(haemorestoratives)としての使用は、脾臓および骨髄細胞個体数を低下させる傾向がある他の治療法を補助することができる。本発明による特に好ましい補助薬療法としては、(a)化学療法、および/または(b)放射線療法、および/または(c)骨髄移植、および/または(d)ヘモアブレーティブ(haemoablative)免疫治療にとって補助的な本発明のアルカロイドの免疫回復用量の投与が挙げられる。
【0212】
(e) 免疫抑制の緩和
本発明のアルカロイドを用いて、免疫系が部分的または完全に抑制または低下させられる状態を緩和、制御または変更することができる。このような状態は、先天的(継承した)疾病から生じ、(例えば、感染症または悪性腫瘍によって)取得され、または(例えば、移植片または癌の処理の一部として故意に)誘発されることがある。
【0213】
従って、本発明のアルカロイドは、様々な疾患(ある種の癌など)の治療および/または処理、または内科的介入(放射線療法、免疫抑制薬療法(例えば、シクロスポリンA、アザチオプリンまたは免疫抑制剤放射線療法の投与)、化学療法および細胞傷害性薬剤投与(例えば、リシン、シクロホスファミド、酢酸コルチゾン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、クロラムフェニコール、および他のステロイド基剤療法の投与)における補助免疫調節剤(例えば、免疫刺激剤)として用いられることがある。従って、それらは、様々な癌および感染症(細菌およびウイルス感染症、例えば、HIV感染症など)の処理において化学防御剤として、または通常の免疫治療の際に適当且つ補助的免疫治療活性を有する目的で用いることができる。
【0214】
特に、本発明のアルカロイドは、多くのウイルス感染症(AIDSにおけるHIV感染症など)のような免疫抑制状態に関連した微生物感染症の治療または処理、および(例えば、骨髄移植を受けた患者や化学薬剤または腫瘍によって誘発される免疫抑制患者におけるC型肝炎、または他のウイルス、または細菌、真菌および寄生生物などの感染性病原体に感染した後に)患者の免疫が低下してしまった他の状況において、免疫刺激薬として応用することができる。
【0215】
本発明に準じて治療可能な免疫抑制状態を生じることがある他の疾患または障害としては、毛細血管拡張性運動失調、ディ・ジョージ症候群、チェディアック‐東症候群、ヨブ症候群、白血球接着欠損症、汎低γグロブリン血症(例えば、ブルトン病または先天的無ガンマグロブリン血症)、IgAの選択的欠損、合併免疫不全症、ウィスコット-アルドリッチ症候群、および補体欠損症が挙げられる。それは、臓器および/または組織(例えば、骨髄)移植または接合(grafting)に関連することがあり、この応用では、本発明のアルカロイドを、手術および手術後の免疫状態の管理などの全般的治療法の一部として補助的に用いることができる。
【0216】
(f) サイトカイン刺激
本発明のアルカロイドを用いて、IL-2(および場合によっては、他のTh1サイトカイン、例えばIL-12など)をイン・ビボで誘発し、増強し、または活性化することができる。
【0217】
従って、本発明のアルカロイドは、 find general application inイン・ビボでのIL-2の誘発、増強または活性化が必要な疾病の治療または予防(および場合によっては、1種類以上の他のTh1サイトカイン(例えば、IL-12)のイン・ビボでの誘発、増強または活性化も必要な疾病の治療または予防)に一般的に応用される。このような応用は、樹状細胞、マクロファージ(例えば、組織特異的マクロファージ)、CTL、NK、NKT、BおよびLAK細胞などの細胞性免疫系の特定の要素を刺激するのに用いることができる。
【0218】
このような応用では、本発明のアルカロイドは、内在性サイトカイン(例えば、IL-2)の産生を増加するようにデザインされた遺伝子療法の補助薬として用いることができる。
【0219】
(g) 増殖性異常の治療
本発明は、 finds application in the治療 of様々な癌および癌転移などの増殖性障害の治療に応用される。例えば、本発明のアルカロイドは、白血病、リンパ腫、黒色腫(目の黒色腫など)、腺腫、肉腫、固形組織の癌、黒色腫、膵臓癌、子宮頚部癌、腎臓、胃、肺、卵巣、直腸、乳、前立腺、腸、胃、肝臓、甲状腺、首、頚部、唾液腺、脚、舌、唇、総胆管、骨盤、縦隔、尿道、肺、膀胱、食道、および結腸の癌、およびカポージ肉腫(例えば、AIDSと関連したとき)の治療に特に応用することができる。
【0220】
このような応用では、本発明のアルカロイドは二次的グリコシダーゼ阻害活性を示す。
従って、本発明は、腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)の修飾、ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)の修飾、感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化の修飾、および/または細菌細胞壁の修飾を含んでなる治療または予防の方法に応用することができ、従って、免疫応答の増加を促進しまたは増殖/感染性を直接阻害することができる。
【0221】
(h) アジュバントとしての使用
本発明のピロリジジン化合物は、ワクチンアジュバントとして利用され、この態様では、それらは抗原、特に内因性の免疫原性が低い抗原に対する免疫応答を促進し、誘発し、または増加させることができる。任意の理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明のピロリジジン化合物はサイトカイン放出を刺激することによってワクチン免疫原性を増加させ、これによってB細胞およびCTL応答に対するT細胞の援助を促進することができる。それらはまた、 癌またはウイルス抗原のグリコシル化を変化させ、ワクチンの有効性を増加させることもできる。
【0222】
本発明の化合物は、アジュバントとして用いるときには、ワクチンの投与と同時、別個または逐次的に投与することができる。本発明は、任意のワクチンで応用されるが、特にサブユニットワクチン、接合体ワクチン、DNAワクチン、組換え体ワクチンまたは粘膜ワクチンとして用いることができる。ワクチンは、治療的または予防的であることができる。これは、ヒトおよびヒト以外の患者で免疫予防的にまたは免疫治療的に用いることができる。好ましいヒト以外の患者としては、哺乳類および鳥類が挙げられる。特に好ましいものは、家畜での応用である。このような応用としては、飼い慣らした動物(例えば、イヌおよびネコ)および家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリおよび七面鳥)における感染症の治療または予防が挙げられる。
【0223】
従って、幾つかの態様では、本発明のピロリジジン化合物は、(複数の)他のワクチン成分と混合して存在することがあり、あるいはこの化合物がアジュバントとして用いられる他のワクチン成分と(例えば、単位用量の配列の一部として)同時包装されることがある。更に他の態様では、本発明のピロリジジン化合物のアジュバントとしての使用は、ワクチン成分と同時包装される情報および/または使用説明書に関して、およびワクチン接種手続、ワクチン処方および/または薬量学に関して単に反映される。
【0224】
(i) 樹状細胞ワクチン
本発明のアルカロイドは、樹状細胞で持続的で顕著なIL-2産生を誘発する。従って、本発明のアルカロイドは、樹状細胞においてサイトカインの誘発を含んでなり、または樹状細胞におけるサイトカイン産生の誘発が必要でありまたは求められる治療または予防の方法に応用される。
【0225】
本発明のアルカロイドは、樹状細胞において1種類以上の他のTh1サイトカイン(例えば、IL-12)の産生を誘発することもできる。
【0226】
一つの樹状細胞を基剤とする治療例では、細胞に特定の抗原または複数の抗原を負荷(適用、感作または添加)した後、Th1免疫応答を促進するために投与する。応答性T細胞としては、ヘルパー細胞、特にTh1CD4+細胞(IFN-γを産生する)およびキラー細胞(特に、CD8+細胞溶解性Tリンパ球)が挙げられる。樹状細胞は、他のクラスのリンパ球(B、NKおよびNKT細胞)によって応答を媒介することもできる。それらはまた、ワクチン接種の決定的目標であるT細胞記憶を誘発することもある。
【0227】
本発明の樹状細胞ワクチンにおいて使用するための抗原選択に関しては、定義されたおよび定義されていない抗原のいずれを用いることもできる。抗原は、異種抗原または自己抗原であることができる。1種類以上の定義された新生抗原を選択することができ、癌治療の場合には、(複数の)新生抗原は腫瘍関連抗原を含んでなることがある。
【0228】
しかしながら、本発明に準じて使用するのに最も好ましいものは、定義された抗原を含むペプチド(例えば、合成の9-11アミノ酸ペプチド)である。このようなペプチドは、天然配列を含んでなることができる。あるいは、MHC結合を高めるようにデザインされた合成類似体であることがある。
【0229】
他の態様では、本発明に準じて用いられる抗原は、免疫複合体の形態で提供される。これらは、好ましくはFc-受容体支持DCに伝えられ、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチド配列を形成する。この方法で、樹状細胞ワクチンを本発明に準じて用い、CTLおよびTh細胞の両方を誘発することができる。
【0230】
本発明による使用のための抗原選択のもう一つの方法では、任意の所定の腫瘍(または他の標的細胞、例えば、ウイルスに感染した細胞)の全抗原レパートリーを調査する。例えば、本発明のもう一つの態様では、樹状細胞をハイブリダイゼーションの前または後にアルカロイドで処理し(これによってIL-2の発現を誘発する)DC-腫瘍細胞ハイブリッドが提供される。
【0231】
更に他の態様では、壊死またはアポトーシス腫瘍細胞または細胞溶解物(例えば、感染細胞または腫瘍細胞の溶解物)が用いられる。
【0232】
(腫瘍細胞系または定義された抗原よりはむしろ)新鮮な腫瘍細胞に由来する抗原を用いることもできる。
【0233】
様々な手法を用いて、(複数の)選択された抗原をDCに送達することができる(当該技術分野では抗原負荷(loading)、適用(pulsing)、感作(priming)または添加(spiking)と様々に表される)。好ましいものは、DCを内部に負荷するローディング法であり、これは、細胞貫通残基に連結したペプチドを用いて行うことができる。
【0234】
抗原は、DCにコード核酸を(例えば、電気穿孔によって)トランスフェクションすることによって負荷し、抗原をDCによって発現させ、細胞表面で処理して提示させるようにすることもできる。この方法は、高価なGMPタンパク質および抗体を用いる必要がない。RNAは(抗原プロセシングに十分ではあるが)一過性発現のみを産生し、DNAの組込みに関連した潜在的問題および付随する長期発現/突然変異誘発を防止するので、RNAがこの目的に好ましい。このようなトランスフェクション法により、全またはPCR増幅した腫瘍RNAの使用によって標的細胞の全抗原レパートリーを調査することもできる。
【0235】
本発明は、存在する抗原には関係なく且つ抗原感作を用いてまたはなしで、本発明のアルカロイドによる樹状細胞の刺激を含むDC細胞性治療への更に一般的方法も意図する。
【0236】
従って、本発明は、本発明のアルカロイドに暴露された(従って、誘発されてIL-2を発現する)樹状細胞を疾患または感染組織にターゲッティングし(例えば、腫瘍中に直接注入し)、IL-2発現樹状細胞が内在性T細胞を結節外に感作することができる療法に応用される。このような態様では、本発明は、DCの腫瘍へのターゲッティング、およびin situでのそれらの活性化により、エクス・ビボで抗原を負荷する必要なしに免疫応答を誘発することを意図する。
【0237】
更にもう一つの態様では、本発明は、抗原をイン・ビボでDCにターゲッティングした後、これを膨張させおよび誘導して(1種類以上のDC成熟刺激因子の同時投与によって)in situで成熟させるin situでのDCワクチン接種を意図する。このような態様では、抗原を任意の好都合な方法によって、例えば、エキソソームの使用によって内在性DCにターゲッティングする(Thery et al. (2002) Nat Rev Immunol 2: 569-579に記載された通り)。
【0238】
任意のクラスの樹状細胞は、本発明に準じて用いることができる。従って、樹状細胞は骨髄またはリンパ系、またはそれらの混合物であることができる。骨髄性樹状細胞を用いるときには、ランゲルハンス細胞型または間質DCでよい。あるいは、これらの骨髄性サブセットの混合物を用いることができる。特に好ましいものは、単球由来のDC(Mo-DC)の使用である。
【0239】
ヘルパータンパク質を用いて、本発明の樹状細胞ワクチンの活性を増強することができる。
【0240】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンは、様々な増殖性障害(下記のような様々な癌など)の治療または予防に特に応用される。このような応用では、樹状細胞に好ましくは1種類以上の腫瘍抗原をエクス・ビボで負荷(適用、感作または添加)し、本発明のアルカロイドを用いて、樹状細胞をアルカロイドとエクス・ビボで(細胞の適用前または後に)またはイン・ビボで(例えば、樹状細胞とアルカロイドを同時、別個または逐次的に同時投与することによって)接触させることによってワクチンの樹状細胞成分を増強する。
【0241】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンは、任意の悪性または前癌状態の疾病、増殖性または過剰増殖性疾病、または身体の任意の細胞または組織の増殖能力または性能において機能または他の障害または異常から生じ、またはに由来し、またはと関連する任意の疾患の治療または予防に用いることができる。
【0242】
従って、本発明は、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌の治療または予防に応用される。これはまた、血液およびリンパ系の癌(ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびヴァルデンストレーム病など)、皮膚癌(悪性黒色腫など)、消化管の癌(頭部および頸部癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結直腸癌、肛門癌など)、性器および泌尿器系の癌(腎臓癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌など)、婦人の癌(乳癌、卵巣癌、婦人科癌および絨毛癌など)、並びに脳、骨カルチノイド(bone carcinoid)、鼻咽頭、腹膜後、甲状腺および軟組織腫瘍の治療または予防にも応用される。これはまた、未知の原発部位の癌の治療または予防にも用いられる。
【0243】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンは、細菌、ウイルス性、真菌性、原生動物および後生動物感染症など様々な感染症の治療または予防にも応用される。例えば、ワクチンは、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、エプスタイン-バール、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペス1型および2型、陰部ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス脳炎、帯状疱疹、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型ウイルス、ハンタンウイルス(hantann virus)(出血熱)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核、ハンセン病および麻疹による感染症の治療または予防に用いることができる。
【0244】
特に好ましいものは、HIV/AIDS、リーシュマニア症、インフルエンザ、結核およびマラリアなど病原体が細胞内コンパートメント占拠するかまたは宿主細胞により新生抗原の発現を引き起こす感染症の治療または予防である。
【0245】
(i) 自己免疫疾患に対する樹状細胞に基づく方法
樹状細胞は、免疫学的寛容の調節および維持にも関与しており、成熟の非存在下では、細胞は抗原特異的サイレンシングまたは寛容を誘発する。従って、もう一つの樹状細胞に基づく治療法では、これらの細胞は自己免疫疾患と闘うようにデザインされた免疫調節介入の一部として投与される。
【0246】
このような応用では、樹状細胞の抑制的潜在能力は、サイトカインをコードする遺伝子によりイン・ビトロでトランスフェクションすることによって高められている。しかしながら、このような遺伝子療法は本質的に危険であり、一層効率的で魅力的な方法が、樹状細胞において適当なサイトカイン分泌パターンを刺激する生物活性化合物を樹状細胞にイン・ビトロで適用することとなろう。
【0247】
上記のように、本発明のアルカロイドは樹状細胞において持続的且つ顕著なIL-2(および場合によっては、他のTh1サイトカイン、例えば、IL-12)産生を誘発することができることが見出されている。従って、本発明のアルカロイドは、樹状細胞の抑制的潜在能力の向上に応用される。
【0248】
例えば、本発明は、自己免疫疾患重症筋無力症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、硬皮症、多発性筋炎および皮膚筋炎、強直性脊椎炎、およびリウマチ熱、インスリン依存性糖尿病、甲状腺疾患(グレーヴズ病および橋本甲状腺炎)、アジソン病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫男性および女性不育症などの自己免疫疾患の治療または予防に応用される。
【0249】
(j) 創傷治癒
本発明の幾つかのアルカロイドは、正常は非治癒性の感染性疾患モデルにおけるエクス・ビボでのTh2型脾臓応答を逆転させることができる。治癒応答を表すこのようなモデルでは、抗原特異的脾臓IFN-γを有意に増加させ且つIL-5産生を有意に減少させることができる。
【0250】
従って、本発明は創傷の治療に応用される。特に、本発明は、創傷および外傷、例えば、術後治癒、火傷、感染症(例えば、壊死性外傷)、悪性疾患またはトラウマ(例えば、脳卒中のような循環器障害に関連しまたは外科的介入の一部として誘発される)に関連したものの治療または予防に応用される。
【0251】
創傷治療法は、 (例えば、不適当なまたは有害炎症性応答を除去しまたは抑制するための)Th2応答の選択的抑制または除去を伴うことがある。
【0252】
薬量学
本発明のアルカロイドは、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気管(エアゾール)、直腸、膣および局所(口中および舌下)投与などの経口または非経口経路によって投与することかできる。
【0253】
本発明の樹状細胞ワクチンの好ましい投与経路は、皮下または経皮経路である。

投与されるアルカロイドの量は、用いられる特定の投薬量単位、治療の期間、治療される患者の年齢および性別、治療される疾患の性質および程度、および選択される特定のアルカロイドによって広汎に変化することができる。
【0254】
更に、本発明のアルカロイドは、(下記のように)免疫刺激が必要な疾患、障害または感染症において有用なことが知られている他の薬剤と共同で用いることができ、このような態様では、用量は適宜調整することができる。
【0255】
一般に、投与されるアルカロイドの有効量は、通常は1日に約0.01mg/kg-500mg/kgの範囲となる。単位投薬量はアルカロイド0.05-500mgを含むことがあり、1日当たり1回以上投与することができる。アルカロイドは、薬学キャリヤーと共に下記のように経口、非経口または局所的に通常の投薬量単位形態を用いて投与することができる。
【0256】
好ましい投与経路は、経口投与である。一般に、適当な用量は1日当たり被投与者の体重1kg当たり0.01-500mgの範囲であり、好ましくは1日当たり体重1kg当たり0.1-50mgの範囲であり、最も好ましくは1日当たり体重1kg当たり1-5mgの範囲である。
【0257】
所望な用量は、好ましくは1日投与について単回用量として与えられる。しかしながら、1日に適当な間隔を置いて投与される2、3、4、5または6回以上の副用量を用いることもできる。これらの副用量は、例えば、単位投薬量形態当たり活性成分0.001-100mg、好ましくは0.01-10mg、最も好ましくは0.5-1.0mg含む単位投薬量形態で投与することができる。
【0258】
処方
本発明の組成物は、本発明のアルカロイドを、場合によっては薬学上許容可能な賦形剤と共に含んでなる。
【0259】
本発明のアルカロイドは任意の形態をとることができる。それは合成されたものでもよく、当該技術分野に記載された(および下記に引用される)手法を用いて天然供給源から(例えば、Casuarina equisetifoliaまたはEugenia jambolanaから)精製しまたは単離することもできる。
【0260】
天然供給源から単離するときには、本発明のアルカロイドは精製することができる。しかしながら、本発明の組成物は、本明細書で上記したように漢方薬の形態をとることができる。漢方薬は、使用前に標準規格に適合するかどうかを決定するために分析を行うのが好ましい。
【0261】
本発明に準じて用いられる漢方薬は、乾燥した植物材料であることがある。あるいは、漢方薬は加工した植物材料でよく、加工は、物理的または化学的前処理、例えば、粉末化、粉砕、冷凍、蒸発、濾過、圧搾、噴霧乾燥、押出、超臨界的溶媒抽出およびチンキ生成を包含する。漢方薬が完全な植物(またはその一部)で投与されまたは販売される場合には、植物材料を使用前に乾燥することがある。凍結乾燥、噴霧乾燥または風乾など任意の好都合な乾燥形態を用いることができる。
【0262】
本発明のアルカロイドを薬学上許容可能な賦形剤と共に処方する態様では、例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、フレーバー剤、着色料および防腐剤など任意の適当な賦形剤を用いることができる。適当な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、およびラクトースが挙げられ、一方、コーンスターチおよびアルギン酸は適当な崩壊剤である。結合剤としては、澱粉およびゼラチンが挙げられ、滑沢剤が含まれるときには、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。
【0263】
医薬組成物は任意の適当形態をとることができ、例えば、錠剤、エリキシル、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、顆粒およびエアゾールが挙げられる。
【0264】
医薬組成物は部品のキットの形態をとることができ、このキットは本発明の組成物を、使用説明書および/または単位投薬量形態での複数の異なる成分と共に含んでなることができる。
【0265】
経口用の錠剤は、本発明のアルカロイドを単独でまたは(漢方薬の態様の場合には)(複数の)植物供給源と関連した他の植物材料と共に包含することがある。錠剤は、本発明のアルカロイドを不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、フレーバー剤、着色料および防腐剤のような薬学上許容可能な賦形剤と混合して含むことがある。適当な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、およびラクトースが挙げられ、一方、コーンスターチおよびアルギン酸は適当な崩壊剤である。結合剤としては、澱粉およびゼラチンが挙げられ、滑沢剤が含まれるときには、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。所望ならば、錠剤をグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような材料でコーティングして、消化管での吸収を遅延させることができる。
【0266】
経口使用のためのカプセルとしては、本発明のアルカロイドを固形希釈剤と混合している硬質ゼラチンカプセル、および活性成分を水、または落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油のような油状物と混合している軟質ゼラチンカプセルが挙げられる。
【0267】
直腸投与用の処方物は、例えば、カカオ脂またはサリチル酸塩を含んでなる適当な基剤を有する座薬として提示することができる。
【0268】
膣投与に適当な処方物は、活性成分の他に当該技術分野で適当であると知られているキャリヤーを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー処方物として提示することができる。
【0269】
筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内使用については、本発明の化合物は適当なpHおよび等張性に緩衝した滅菌した水性溶液または懸濁液に供給される。
【0270】
適当な水性ビヒクルとしては、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられる。本発明による水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントガムのような懸濁剤と、レシチンのような湿潤剤を包含することがある。水性懸濁液に適当な防腐剤としては、エチルおよびp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルが挙げられる。
【0271】
本発明の化合物は、リポソーム処方物として提示することもできる。
【0272】
経口投与には、本発明のアルカロイドをカプセル、ピル、錠剤、トローチ、ロゼンジ、メルト、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液またはエマルション(これらの溶液、懸濁液、分散液またはエマルションは水性または非水性でよい)のような固形または液状製剤に処方することができる。固形単位投薬量形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、およびラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、およびコーンスターチのような不活性増量剤を含む通常の硬質または軟質の殻で覆われたゼラチンタイプのものであることができるカプセルであることができる。
【0273】
もう一つの態様では、本発明のアルカロイドは、ラクトース、スクロース、およびコーンスターチのような通常の錠剤基剤を、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、コーンスターチおよびグアールガムのような投与後に錠剤の分解および溶解を補助する目的の崩壊剤、タルク、ステアリン酸、またはステアリン酸マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛のような錠剤顆粒の流れを改良し、錠剤材料の錠剤ダイおよびポンチの表面への付着を防止する目的の滑沢剤、錠剤の美的品質を高め且つそれらを患者にとって一層受け容れやすくする目的の色素、着色料およびフレーバー剤と組み合わせて用いて錠剤化される。
【0274】
経口の液状投薬形態で使用するのに適当な賦形剤としては、水、およびアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコールのような希釈剤に薬学上許容可能な界面活性剤、懸濁剤または乳化剤を添加したものまたは添加してないものが挙げられる。
【0275】
本発明のアルカロイドは、非経口的に、すなわち皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内に投与することもできる。
【0276】
このような態様では、アルカロイドは、(滅菌液体または液体の混合物であることができる)製薬キャリヤーと共に注射可能な用量を生理学的に許容可能な希釈剤に溶解したものとして提供される。適当な液体としては、薬学上許容可能な界面活性剤(例えば、石鹸または洗浄剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カーホーマー(carhomers)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤および他の薬学アジュバントを添加したまたは添加していない水、食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレン-グリコール)400)、油状物、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリドが挙げられる。本発明の非経口処方物に用いることができる適当な油状物は、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン、および鉱油である。
【0277】
適当な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。適当な脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0278】
適当な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウムおよびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適当な洗浄剤としては、カチオン性洗浄剤、例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウム、およびアルキルアミンアセテート、アニオン性洗浄剤、例えば、アルキルアリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリドスルフェート、およびスルホスクシネート、非イオン性洗浄剤、例えば、脂肪アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、および両性洗浄剤、例えば、アルキル-β-アミノプロピオネート、および2-アルキルイミダゾリン第四アンモニウム塩、並びに混合物が挙げられる。
【0279】
本発明の非経口組成物は、典型的には溶液に約0.5-約25重量%の本発明のアルカロイドを含む。防腐剤および緩衝液を用いることもできる。注射部位の刺激を最小限にしまたは除去するため、このような組成物は、親水性-親油性バランス(HLB)が約12-約17の非イオン性界面活性剤を含むことができる。このような処方物における界面活性剤の量は、約5-約15重量%の範囲である。界面活性剤は上記のHLBを有する単一成分であることができ、または所望なHLBを有する2種類以上の成分の混合物であることができる。非経口処方物に用いられる界面活性剤の実例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルのクラスであり、例えば、ソルビタンモノオレエート、およびプロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合によって形成したエチレンオキシドと疎水性基剤の高分子量付加物である。
【0280】
本発明のアルカロイドを局所投与することもでき、そのようにするときには、キャリヤーは溶液、軟膏、またはゲルベースを含んでなるのが適当なことがある。このベースは、例えば、下記のもの、すなわちワセリン、ラノリン、ポリエーテルエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水およびアルコールのような希釈剤、および乳化剤および安定剤の1以上を含んでなることがある。局所用処方物は、アルカロイドを約0.1〜約10%w/v(単位容積当たりの重量)の濃度で含むことがある。
【0281】
本発明のアルカロイドは、補助的に用いるときには、1種類以上の他の(複数の)薬剤と共に使用する目的で処方することができる。特に、本発明のアルカロイドは、抗腫瘍薬、抗微生物薬、抗炎症薬、増殖防止薬、および/または他の免疫刺激薬と組み合わせて用いることができる。例えば、本発明のアルカロイドは、インターロイキン-2 および12、インターフェロンおよびそれらの誘導因子、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはトランスフォーミング増殖因子(TGF)などのサイトカインのような抗ウイルス薬および/または増殖防止薬、並びに骨髄抑制薬および/または化学療法薬(例えば、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミドおよびメトトレキセート)、イソニアジド(例えば、末梢神経障害の予防または治療における)、および胃十二指腸潰瘍の予防および治療のための鎮痛薬(例えば、NSAID)と共に用いることができる。
【0282】
従って、補助的使用は、他の(複数の)薬剤と適合するように(または相乗作用を示すように)デザインされた特定の単位投薬量に、またはアルカロイドを1種類以上の抗腫瘍薬、抗微生物薬および/または抗炎症薬と混合している(または単一単位用量内で他の(複数の)薬剤と物理的に関連した)処方物に反映されることがある。補助的使用は、本発明の医薬キットの組成であって、本発明のアルカロイドが抗腫瘍薬、抗微生物薬および/または抗炎症薬と(例えば、単位用量の配列の一部として)同時包装されるものに反映されることもある。補助的使用は、アルカロイドと抗腫瘍薬、抗微生物薬および/または抗炎症薬との同時投与に関する情報および/または使用説明書に反映されることもある。
【実施例】
【0283】
本発明を具体例に関して説明する。これらは単なる例示的なものおよび単に例示目的のためのものであり、それらはいかなる意味においても特許請求される独占権の範囲または記載の発明に限定しようとするものではない。これらの実施例は、本発明を実施するのに現在考えられる最善の様式を構成する。
【0284】
実施例1: 樹状細胞におけるIL-12分泌の誘発
マウス
通常の条件下でStrathclyde大学で飼育して保持したBALB/c雄および雌マウスを、8週齢で用いた。
【0285】
骨髄の単離および樹状細胞の培養
骨髄は、マウスの大腿骨から得た。大腿骨を70%エタノールで洗浄して、清浄なペトリ皿に入れた。樹状細胞(DC)培地(RPMI-1640培地中2.5%顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM- CSF)、10%熱および活性化ウシ胎児血清、1% L-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を送液作用によって大腿骨の骨髄に注入し、細胞と培地を集めた。培地中の細胞1mlを、DC培地15mlを含む75cm2フラスコに加えた。次に、フラスコを5%CO2で37℃にてインキュベーションし、DCを増殖および発育させた。5日後、DC培地を更に10ml加えた。
【0286】
樹状細胞の回収
骨髄をGM-CSFと共に10日間インキュベーションした後、樹状細胞を収穫した。この工程は、組織培養フード中で行った。フラスコの内容物を遠沈管に空け、浮遊DCを確実に回収した。冷却したリン酸緩衝食塩水(PBS)約10mlをそれぞれの空の加え、フラスコを緩やかに攪拌して、内容物を回収した。これにより、粘着性DCを確実に回収した。回収したフラスコの内容物を200gで5分間遠心分離し、ペレットをGM-CSFを含まないDC培地2mlに再懸濁した。次いで、細胞の計数を行った。
【0287】
細胞計数およびアッセイ条件
細胞は、血球計を用いて計数した。再懸濁した細胞約20μlを血球計のチャンバーに採取し、細胞を正確な細胞濃度(ウェル当たり約5 x 104、および1 x 104以上)に調整した後、アッセイの目的で培養した。
【0288】
プレートを5%CO2で37℃にて一晩インキュベーションし、沈澱させた(収穫はそれらを刺激する)。翌日、化合物(50μg/mlおよび20μg/ml)とコントロールを加えた後、5%CO2で37℃にて24時間(または48時間)インキュベーションした。化合物の収穫および添加は、総てフード中で行った。次に、プレートを冷凍して細胞を殺し、一旦解凍した後、上清を下記のようにして分析した。
【0289】
IL-12の測定
固相酵素免疫検定法(ELISA)を用いて、上清のIL-12濃度を測定した。このアッセイに用いた総ての試薬は、PharMingen製であった。96穴の平底ELISAプレートを、50μl/ウェルのPBS pH 9.0で希釈した2μg/mlの精製ラット抗マウスIL-12(p40/p70)MAb(カタログ番号554478)でコーティングした。次に、プレートを粘着フィルムで被覆し、4℃でインキュベーションした。インキュベーションの後、プレートを洗浄用緩衝液で3回洗浄し、乾燥した。ブロッキング緩衝液(PBS pH 7.0中10%ウシ胎児血清)200μlをそれぞれのウェルに添加した後、粘着フィルムで被覆し、37℃で45分間インキュベーションした。プレートを3回洗浄して、乾燥した。組換えマウスIL-12標準物を2個ずつのウェルに、10ng/mlから開始した後、5、2.5、1.25、0.625、0.31、0.156、0.078、0.039、0.020、0.010、0.005ng/mlで30μlを加えた。標準物はブロッキング緩衝液で希釈した。上清試料は、50μl/ウェルで加えた。次に、プレートを粘着フィルムで被覆し、37℃で2時間インキュベーションした。次に、プレートを4回洗浄し、乾燥して、二次抗体を加えた。
【0290】
ビオチン標識した抗マウスIL-12(p40/p70)MAb(カタログ番号18482D)1μg/ml (ブロッキング緩衝液で希釈)を、それぞれのウェルに100μl/ウェルの容積で添加した。プレートを粘着フィルムで被覆し、37℃で1時間インキュベーションした。次に、プレートを5回洗浄して、乾燥し、接合体を加えた。100μl/ウェルのStreptavidin-AKP(カタログ番号13043E)を1/2000の希釈倍率でブロッキング緩衝液に加えた後、粘着フィルム下で37℃にて45分間インキュベーションした。
【0291】
プレートを最終的に6回洗浄して、乾燥し、基質を加えた。pNPP (Sigma)をグリシン緩衝液に溶解したもの1mg/mlを、100μl/ウェルで加えた。プレートを次にスズ箔で被覆し、37℃でインキュベーションして、色の変化を30分毎にチェックした。
【0292】
次に、プレートをSPECTRAmax 190分光計を用いて405nmで読み取った。結果を図1および2に示し、図中LPSはリポ多糖類であり、IFN-gはインターフェロンγであり、462aはカスアリン(8)であり、462bはカスアリン-6-α-D-グルコピラノース(9)であり、23は7-エピカスアリン(11)であり、24は3,7-ジエピ-カスアリン(10)である。
【0293】
同じ検定法で50μg/mlで試験したところ、スワインソニン(4)はIL-12分泌を誘導することができなかった。比較目的で他の化合物を用いる同様な研究を、下記の表1.1に示す。
【0294】
【表2−1】

【0295】
【表2−2】

【0296】
【表2−3】

【0297】
LPSの非存在下およびポジティブコントロールとしてIFN-γの存在下で様々な希釈度(μg/ml)でのカスアリン単独での用量応答の検討(図4のX軸)では、樹状細胞におけるIL-12分泌の誘発は高用量よりも低用量で高いことを示していた(1μg/ml対40μg/ml)。
【0298】
実施例2: 樹状細胞によるIL-2の産生
上記実施例1に記載のプロトコールを行ったが、IL-2の決定のための適当なMabおよび標準物を置換した。結果を、下記の表2.1に示す。
【0299】
【表3】

【0300】
実施例3: 脾臓細胞におけるサイトカイン調整
マウス
通常の条件下でStrathclyde大学で飼育して保持したBALB/c雄および雌マウスを、様々な週齢で用いた。
【0301】
脾臓細胞の単離および脾臓細胞の培養
マウス脾臓を無菌的に取り出し、完全培地(RPMI、1%L-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清)5mlを含む滅菌ペトリ皿に入れた。細胞懸濁液を、注射器の末端を用いて調製し、脾臓をワイヤーメッシュを通して粉砕した。次に、細胞懸濁液を1000rpmで5分間遠心分離した。赤血球を除くため、細胞ペレットをボイル溶液(0.17Mトリス+0.16M塩化アンモニウム)に再懸濁し、再度5分間遠心分離した。次に、ペレットを更に2回洗浄した後、3mlの培地に再懸濁した。次いで、細胞計数を行った。
【0302】
実験プロトコール
総ての脾臓細胞実験は、96穴の組織培養プレートで行った。5x105/ウェル細胞の100μl分量を総てのウェルに加え、それぞれのウェルの最終容積を200μlとした。未刺激ウェルは、細胞100μlと培地100μlを含んでいた。刺激ウェルは、1μg/mlで細胞100μlとLPS 50μl、または0.5μg/mlでCD3 1μg/mlと培地50μlを含んでいた。残りのウェルは、細胞100μl、MNLP化合物50μl、および抗CD3または培地のみ50μlを含んでいた。
【0303】
IL-12、IL-2、IL-5およびIFN-γの測定
適当なMabと標準物を、IL-12について記載したプロトコールに準じて用いた(上記実施例1に記載)。結果を、下表3.1-3.3に示す。
【0304】
【表4】

【0305】
【表5】

【0306】
表3.1および3.2に示された結果から分かるように、本発明による化合物は脾臓細胞でのIFN-γ分泌/産生を刺激するが、カスタノスペルミンはこのような分析ではこのサイトカインの産生を阻害する。1-デオキシノジリマイシン(DNJ)(21)を用いて行った同様な試験では、このイミノ糖も脾臓細胞でのIFN-γ分泌/産生を阻害することを示した(データーは示さず)。
【0307】
実施例4: グリコシダーゼ活性の阻害
総ての酵素は、適当なp-ニトロフェニル基質と同様にSigma社から購入した。分析はマイクロタイタープレートで行った。酵素は、酵素の最適pHで0.1Mクエン酸/0.2Mリン酸水素二ナトリウム(Mcllvaine)緩衝液中で分析した。総ての分析は、20℃で行った。スクリーニング分析のための、インキュベーション分析は、酵素溶液10μl、阻害剤溶液(水中で作製)10μl、および酵素について最適pHでのMcIlvaine緩衝液中で作成した適当な5mM p-ニトロフェニル基質(最終濃度3.57mM)50μlを含んでいた。
【0308】
反応は、水を用いるブランクを使用して分析の開始時に決定した反応の対数増殖期中に0.4Mグリシン(pH 10.4)で停止し、これを5mM基質溶液を用いて反応速度を測定するため一定期間インキュベーションした。終点の吸収を、Bioradマイクロタイタープレートリーダー(Benchmark)を用いて405nmで読み取った。ブランクでは、阻害剤の代わりに水を用いた。
【0309】
試験した酵素を、下表4.1に示す。
【0310】
【表6】

【0311】
試験したピロリジジン化合物を、下表4.2に示す。
【0312】
【表7−1】

【0313】
【表7−2】

【0314】
これらのピロリジジン化合物(総て1 mg/ml)についての結果を、下表4.3に示す。
【表8】

【0315】
結果は、本発明の化合物についての阻害プロフィールはカスタノスペルミンのものとは全く異なることを示している。いずれも、マンノシダーゼを有意に阻害しない(下記のデーターも参照されたい)。試験した化合物の幾つか(例えば、3,7-ジエピ-カスアリン)は、試験した酵素のいずれをも有意に阻害しない。
【0316】
試験したピロリンおよびインドリジジン化合物を、下表4.4に示す。
【0317】
【表9−1】

【0318】
【表9−2】

【0319】
これらのピロリンおよびインドリジジン化合物(総て1 mg/ml)についての結果(%阻害)を、下表4.5に示す。
【0320】
【表10】

【0321】
更に検討を行ったところ、酵母α-D-グルコシダーゼを用いたカスアリン(8)についてのK1は217μMであった(カスタノスペルミンは800μMの濃度では阻害しない)。アーモンドβ-D-グルコシダーゼを用いたカスタノスペルミン(20)についてのK1は9μMであった(カスアリンは800μMでは阻害しない)。更に、カスアリンは、ウサギ腸粘膜α-D-グルコシダーゼを阻害し、210μMで有ったのに比較して、カスタノスペルミンについてはIC50値が8μMであった。カスアリンとカスタノスペルミンはいずれも、700μMの濃度でウサギ小腸スクラーゼを阻害した。カスタノスペルミンは、この濃度でウサギ小腸ラクターゼおよびトレハラーゼも50%を上回るまで阻害した。
【0322】
実施例5: マンノシダーゼおよびグルコシダーゼの特異的阻害
マンノシダーゼおよびグルコシダーゼに関するスワインソニン(4)、カスアリン(8)およびカスアリングルコシド(9)のグリコシダーゼ阻害プロフィールを比較した。結果(総て<0.1 mg/ml)を、下表5.1に示す。
【0323】
【表11】

【0324】
実施例6: ネズミHSV-1感染症の治療
マウスは3-4週齢の雌BALB/cであった。マウスに、首皮膚法を用いて104p.f.u. HSV-1 (SC16)を接種した。この用量は半数致死量であるが、炎症など臨床症状を生じる(耳介の厚みの増加で測定)。
【0325】
マウスに、1日目およびその後毎日5日間カスアリン(8)の2用量の一方を投与した(100ml i.p.)。群1には15 mg/kgをPBSに溶解したものを投与し、群2には150 mg/kgをPBSに溶解したものを投与した。ネガティブコントロール群3は感染したが、カスアリンを投与しなかった。ポジティブコントロール群4には、(同一期間1mg/mlを添加した飲料水を介して)ファムシクロビール(famciclovir)を投与した。
【0326】
マウスを毎日検査し、選択した日に殺したマウスから試料を得た。結果を、下表6.1-6.3に示す。
【表12】

【0327】
【表13】

【0328】
【表14】

【0329】
結果は、予想されたパターンの耳介厚みの増加を示し、4日目にピークとなる。ファムシクロビールでは、耳介厚み応答はほぼ全く見られなかった。試験したいずれの用量でのカスアリンでも、耳の厚みが減少した。
【0330】
実施例7: マウスでの肺転移の制御
マウス(C57/bl6、腹腔内へのケタミン麻酔下)に、5x104 個のB16-F10腫瘍細胞を0日目にマウス当たり100μlの最終容積で静脈内(尾静脈)投与した。試験化合物(50mg/kg、滅菌した発熱性物質不含食塩水200μl中)を、2および4日目に皮下投与した(右腹側部)。14日目にマウスを屠殺し、肺を切開し、墨汁溶液((150ml 2回蒸留水、30ml墨汁、NH4OH 4滴)で10分間染色した後、少なくとも24時間ファーケット溶液(90ml 37%ホルムアルデヒド、900ml 70%EtOHおよび45ml氷酢酸)中で固定した。次に、染色して固定した肺の転移を可視化し、計数して、写真撮影を行った。
【0331】
結果を、下表7.1に示す。
【表15】

【0332】
実施例8: 乳癌細胞のグリコシル化に対する効果
細胞培養
MCF-7細胞(European Collection of Cell Cultures Ref. 86012803)を液体窒素ストックから取り出し、室温で融解し、10%v/vウシ胎児血清(FCS : BioWest Labs Cat. No. S02755, Lot. No. S1800)を補足したHams F12、15mMへペスおよびL-グルタミンを含むダルベッコ改質イーグル培地(DMEM: Cambrex Cat. No. BE12-719F)10mlに移した。FCSは、0.2μm滅菌フィルターを介して前濾過した。
【0333】
次に、細胞をCentaur実験台設置型遠心分離機で1,500rpmで遠心分離し、上清を除いた。細胞を新たな培地で再構成し、2個のT75cm3 Nunclon組織培養フラスコに播種し、5%CO2インキュベーター中で37℃にて一晩沈澱させた。フラスコを粘着フィルムに包み、交差汚染を防止し、翌日、培地を変更して、感染に対する予防手段として抗生物質ペニシリンおよびストレプトマイシンを(それぞれ1mg/cm3および5mg/cm3の濃度で)含むようにした。
【0334】
細胞をコンフルエンス附近まで増殖させた後、1/4再懸濁液で分割した。実験に用いた細胞は、継代数31のものであった。2個のフラスコの細胞は、20%v/v FCSを10%ジメチルスルホキシドと共に含む培地で調製し、必要ならば、後で使用するため液体窒素に保存した。
【0335】
16のT25cm3フラスコの全部を用いた。それぞれのフラスコに8.5x105個/cm3 の細胞を播種し、4cm3の培地を加えた。細胞を、培養フラスコに一晩付着させた。翌朝、フラスコを光学顕微鏡下で観察したところ、細胞は50-60%コンフルエントであると思われた。2個のフラスコからの細胞を、t=0時点について回収した(下記参照)。
【0336】
残りの14個のフラスコは、カスアリン(8)を用いる試験に利用可能であった。これらの中の7個(未処理群)は、その培地を10% FCS、ペニシリンおよびストレプトマイシン(前と同様)を含む新たな培地7cm3に交換し、残りの7個は0.75mMカスアリンを補足した新たな培地を用いてインキュベーションした(処理群)。
細胞を、t=1.5時間、t=28時間、t=62時間およびt=86時間に回収した。
【0337】
細胞の回収および細胞計数
細胞は、非酵素的方法を用いて回収した。それぞれの時点に、細胞を倒立光学顕微鏡で観察し、その形態を評価した。回収前に、細胞を洗浄当たり7cm3の滅菌PBSで3回洗浄舌。次に、細胞を滅菌細胞スクレーパーを用いてフラスコから掻き取り、グレニエール試験管に移した。細胞を素早く21G2ゲージニードルを通過させ、細胞をバラバラにした。次に、細胞を1500gで5分間遠心分離することによってペレット化し、既知容積のPBSに再懸濁した。次いで、細胞数を血球計で計数し、それぞれの細胞懸濁液0.1cm3をトリパンブルー溶液1滴と混合することによって細胞生育力を評価した。それぞれの細胞ペレットを、グリカン放出および分析まで-80℃で冷凍した。
【0338】
均質化
細胞ペレットを氷水槽に入れ、融解した。次に、ペレットを、全量4cm3(脱イオン水でこの容積とした)で均質化した。ブレード速度を22,500rpmに設定したUltraturrax T25ホモジナイザーをこの目的に用いた。試料を氷上に保持し、それぞれ10秒間の3回のバーストをそれぞれの均質化段階の間に約1分間の期間を置いて加え、泡を沈澱させた。ブレードをそれぞれの試料の間に注意深く洗浄し、試料の交差汚染を防止した。ホモジェネートを、タンパク質分析およびグリカン放出の前に1cm3分量で-80℃で保管した。
【0339】
タンパク質分析
BioRadタンパク質分析法を用いて、製造業者の指示に従って評価を行った。BSAを標準物として用いた。ホモジェネート試料のそれぞれを、それぞれの時点から100μl分量を用いて2回ずつ試験した。
【0340】
グリカン放出
62時間および86時間の時点について、タンパク質25μgの当量を採取し、遠心分離エバポレーター上で(加熱なしで)3時間乾燥した。初期時点については、そのタンパク質濃度はタンパク質分析法により評価することができず、200μlを採取し、乾燥してグリカン放出の準備をした。放出は、ウシ胎児血清由来のフェチュイン25μgを用いて確かめた。
【0341】
グリカンは、N-グリコシダーゼ F (Roche Biosciences Cat. No. 1365185, Lot. No. 9280212/31)と共に at a final濃度 of 5U enzyme in20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2中で試料は総て25μl中で5U酵素の最終濃度で37℃にて一晩インキュベーションした。インキュベーション段階の後、試料を予備洗浄し感作したLudger Clean Eカートリッジ(Cat. No. LC-E10-A6)に負荷した。グリカンを製造業者の指示に従って溶出し、遠心分離エバポレーターによって一晩乾燥した。
【0342】
グリカン標識
グリカンを、Bigge et al. (1995) Anal. Biochem. 230 (2): 229-238に記載の方法に準じて還元的アミノ化によって65℃で2時間標識した。次に、インキュベーション混合物を「清浄化」して、試料をWhatman 3MM紙にスポットし、下降式クロマトグラフィータンクで4:1:1のブタノール:エタノール:水で一晩展開することによって任意の未結合蛍光団を除いた。次に、グリカンを0.5cm3メタノールと2x1cm3 HPLC級の水で溶出した後、0.2μmシリンジ・トップ・フィルター(syringe top filter)を介して濾過した。
【0343】
順相HPLCを用いる分析
グリカンを、サイズが4.6x25cmの順相(親水性相互作用)HPLCカラム(LudgerSep N1アミド)上で分離した。
【0344】
分離の基本は、Guile et al. (1996) Anal. Biochem. 240 (2): 210-226に記載されている。カラムを、オートサンプラーと切替ポンプヘッドとインラインミキサーを備えたDionex BioLC装置に取り付けた。カラムを30℃に保持し、グリカンを励起λ=330nmおよび放出λ=420nmのPerkinElmer LS30蛍光光度計を用いて検出し、ゲインは2に設定した。用いた緩衝液系は高塩系であり、アセトニトリルを緩衝剤Aとし、0.25Mギ酸アンモニウムpH4.4を緩衝剤Bとして用いた。流速は、終始0.3cm3/分に保持した。
【0345】
用いたプロトコールを、下表8. 1にまとめる。
【表16】

【0346】
グリカン混合物のそれぞれの80μl分量をカラムに負荷し、デキストランの加水分解生成物に関して溶出位置を比較した。
【0347】
結果のまとめおよび結論
初期の回収点および28時間の時点では、処理および未処理細胞から放出されるグリカンには明らかな差はなかった(データーは示さず)。しかしながら、62および86時間の時点では、未処理細胞は処理細胞よりも大きなN結合グリカンが著しく優勢であった(データーは示さず)。更に、全般的シグナル(蛍光標識グリカンの量)は、未処理群の方が大きかった。
【0348】
これらの結果は、カスアリンが乳癌細胞でのグリカン合成および/またはN結合グリコシル化を阻害することができることを示している。
【0349】
実施例9: グルコース輸送に対する効果
カスアリン(8)およびカスタノスペルミン(20)のヒツジ腸刷毛縁膜小胞へのNa依存性D-グルコース摂取に対する効果を、標識したD-グルコースを用いる競合分析法で検討した。結果を、下表9.1に示す。
【0350】
【表17】

【0351】
グルコース輸送はカスタノスペルミンによって僅かに阻害されるが、カスアリンによって僅かに刺激されることが分かる。
【0352】
実施例10: 非治癒性リーシュマニア症モデルにおけるTh1:Th2応答比の増加
リーシュマニア症はTh1疾患の古典的モデルであり、非治癒性の皮膚外傷は免疫応答の望ましくない分極によって生じ、これは著しくTh2によって歪む。
【0353】
この疾患モデルでのTh1:Th2応答比を増加させ(且つ治癒性Th1応答を促進する)本発明の化合物の能力を検討するため、非治癒性の皮膚感染症を有するLeishmania majorに感染したBALB/cマウス由来の脾臓細胞を寄生生物抗原(表10.1)、または3,7-ジエピ-カスアリン(10)の存在下にてポリクローン的に抗CD3 (表10.2)で刺激した。
【0354】
【表18】

【0355】
【表19】

【0356】
3,7-ジエピ-カスアリン(10)の存在により、(治癒性Th1応答と関連した)IFN-γが高められるが、Th2応答(Th2サイトカインIL-5のダウンレギュレーションによって)が抑制されることが分かる。非治癒性疾患と関連するTh2により歪んだ免疫応答プロフィールは、3,7-ジエピ-カスアリン(10)によってエクス・ビボで明らかに逆転した。
【0357】
実施例11 : Synthesis of 3,7-ジエピ-カスアリン(10)
一般的実験
総ての反応は、特に断らない限り無水溶媒を用いて室温にてアルゴンの雰囲気下にて行った。無水溶媒はFluka Chemicalsから購入し、供給されたまま使用した。試薬はAldrich、FlukaおよびFisherから供給を受け、供給されたまま使用した。薄層クロマトグラフィー(Tlc)は、Merck 60 F254シリカゲルを前コートしたアルミニウムシート上で行い、紫外線下で可視化し、6%ホスホモリブデン酸のエタノール溶液を用いて染色した。シリカゲルクロマトグラフィーは、明確に定めた雰囲気下でSorbsil C60 40/60シリカゲルを用いて行った。強酸性のイオン交換樹脂であるAmberliteIR-120は、樹脂を2M塩酸に少なくとも2時間浸漬した後、溶離液がpH5に達するまで蒸留水で溶出することによって調製した。Dowex 50WX8-100は、樹脂を2M塩酸に少なくとも2時間浸漬した後、中性になるまで蒸留水で溶出することによって調製した。赤外スペクトルは、Perkin-Elmer 1750 IRフーリエ変換分光光度計上で塩化ナトリウムプレート上の薄いフィルムを用いて記録した。特徴的ピークのみを記録する。旋光度は、光路長が1dmのPerkin-Elmer 241旋光計上で測定した。濃度は、100ml中のg数で表す。核磁気共鳴スペクトルは、Bruker DQX 400分光計上で公式の重水素化溶媒中で記録した。総てのスペクトルは、周囲温度で記録した。化学シフト(δ)はppmで表し、標準としての残留溶媒に関するものである。プロトンスペクトル(δH)は400MHzで記録し、炭素スペクトル(δc)は100MHzで記録した。
【0358】
2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qc)
5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4-ラクトン(Qb)
シアン化ナトリウム(7.02g, 142ミリモル)を、D-グリセロ-D-グロ-ヘプトース(Qa, 21g, 100ミリモル)を水(300ml)に攪拌溶解したものに加えた。反応混合物を室温で48時間攪拌し、還流温度で48時間攪拌し、Amberlite IR-120 (強酸性イオン交換樹脂, 300ml)を含むカラムを通した。溶離剤を減圧濃縮し、残渣を24時間真空乾燥した。生成するフォームを、無水硫酸銅(10g, 62ミリモル)の存在下にてアセトン(500ml)と硫酸(5.4ml)とで室温にて48時間処理した。メタンスルホニル分析では、2種類の主生成物の存在を示した(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1; Rr 0.72, 0.18)。反応混合物を濾過し、濾液を重炭酸ナトリウム(50g)で室温で24時間処理した。固形残渣を濾過によって除き、濾液を減圧濃縮した。生成する粗製の黄色シロップをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qcを無色シロップ(Rf 0.72; 7.672g; 21%)として、および5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4- ラクトン Qbを無色油状生成物(Rf 0.18; 8.105g; 25%)として、2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4- ラクトン Qcを提供した。δH (CDCl3) 1.29, 1.33, 1.35, 1.38, 1.42, 1.48 (6xs, 18H, 3xC(CH3)2), 3.93-3.99 (m, 2H, H-8a, H-7), 4.03-4.07 (m, 2H, H-5, H-6), 4.15 (dd, 1H, J8a,8b 8.7 J8b,7 6.1, H-8b), 4.75-4.78 (m, 3H, H-2, H-3, H-4); δc (CDCl3) 25.23, 25.51, 26.00, 26.71, 26.73, 27.16 (3xC(CH3)2), 67.93, 74.93, 76.33, 76.69, 78.65, 79.40, 80.06, 109.95, 110.72, 113.19, 174.27; νmax(フィルム) 1793。5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4-ラクトン Qb: δH (d6-アセトン) 1.28, 1.32, 1.34, 1.35 (4s, 12H, 2xC(CH3)2), 3.92 (1H, m, H-8a), 3.98 (m, 1H, H-7), 4.14 (m, 2H, H-5, H-8b), 4.23-4.25 (m, 2H, H-4, H-6), 4.35-4.40 (m, 2H, H-2, H-3); δc (d6-アセトン) 25.31, 25.87, 26.72, 27.31, 68.06, 75.15, 75.23, 77.51, 78.05, 78.41, 79.01, 110.06, 110.31, 174.25; νmax (フィルム) 1793, 3541。
【0359】
2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qd
2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン (Qc, 3.8g, 10.6ミリモル)の溶液を、酢酸:水(2:3, 100ml)で50℃で2時間処理した。T.I.c分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)では、出発材料(Rf 0.72)が消失し、より極性の化合物(Rf 0.15)の存在が示唆された。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1-3:1)によって精製し、2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qdを透明な油状生成物(3.23g, 94%)として得た。δH (CD3OD) 1.28, 1.38, 1.43 (3xs, 12H, 2xC(CH3)2), 3.59 (dd, 1H, J8a,7 5.40 J8a,8b 11.41, H-8a), 3.66-3.69 (m, 1H, H-7), 3.74 (dd, 1H, J8b,7 2.90Hz, H-8b), 4.01 (app t, 1H, J6,7 7.62Hz, H-6), 4.24 (dd, 1H, J5,6 8.17Hz, J5,4 0.89Hz, H-5), 4.79-4.81 (m, 2H, H-3, H-4), 4.89-4.91 (m, 1H, H-2);δC (CD3OD) 24.62, 25.42, 26.05, 26.49, 63.86, 73.81, 75.40, 75.91, 79.18, 79.90, 80.78, 110.53, 113.09, 175.76; νmax(フィルム) 1791, 3478; [α]D -35.7(c 1, CHCl3)。
【0360】
8-O-第三-ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qe
2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン (Qd, 3.18g, 10ミリモル)をN,N-ジメチルホルムアミド(40ml)に溶解したものに、塩化第三ブチルジメチルシリル(1.808g, 12ミリモル)およびイミダゾール(1.361g, 20ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で16時間攪拌した後、t.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)を行ったところ、出発材料(Rf 0.15)は見られず、1個の主生成物(Rf 0.63)が形成されていた。溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水性層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、溶媒を除去した。生成する淡青色油状生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:シクロヘキサン, 0:1-1:2)、8-O-第三ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qeを透明な油状生成物(3.612g, 85%)として得た。δH (CDCl3) 0.04 (br s, 6H, 2 xCH3), 0.86 (s, 9H, C(CH3)3), 1.23, 1.30, 1.32, 1.41 (4xs, 12H, 2xC(CH3)2), 3.63-3.67 (m, 2H, H-8a, H-7), 3.76 (br d, 1H, H-8b), 3.96(app t, J6,7 8.21 J6,5 7.98, H-6), 4.08 (br d, 1H, H-5), 4.72 (br s, 2H, H-2, H-3), 4.78 (br s, 1H, H-4); δC (CDCl3) -5.52, -5.45, 18.25, 25.51, 25.80, 25.93, 26.68, 27.18, 63.95, 72.97, 74.88, 74.93, 78.71, 79.63, 79.87, 110.34, 113.00, 174.42; νmax(フィルム) 1794, 3570 ; [α]D - 20.1 (c 1, CHCl3)。
【0361】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qf
8-O-第三ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qe, 3.5g, 8.2ミリモル)をピリジン:ジクロロメタン混合物(1:4, 25ml)に溶解したものを、-30℃に冷却した。無水トリフルオロメタンスルホン酸(3.5g, 2.09ml, 12.4ミリモル)を少しずつ加え、混合物を2時間攪拌した。メタンスルホニル分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:3)を行ったところ、出発材料(Rf 0.38)は消失し、極性の少ない生成物が見られた(Rf 0.48)。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルと0.5M塩酸とに分配した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過して、減圧濃縮した。生成する粗製の淡青橙色残渣をアジ化ナトリウム(807mg, 12.4ミリモル)をN,N-ジメチルホルムアミド(25ml)に溶解したもので16時間処理した。メタンスルホニル分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:4)を行ったところ、中間体のトリフレート(Rf 0.42)は消失し、極性の大きい化合物(Rf 0.40)が見られた。反応溶媒を真空留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水性層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、真空濃縮した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:シクロヘキサン, 0:1-1:4)、7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトンQfを無色油状生成物(3.026g, 81%)として得た。δH (CDCl3) 0.11(2x5, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH3)3), 1.30, 1.38, 1.41, 1.47 (4x s, 12H, 2xC(CH3)2), 3.41-3.45 (m, 1H, H-7), 3.87 (dd, 1H, J8a,7 5.37Hz, J8a,8b 10.81Hz, H-8a), 3.92 (dd, 1H, J8b,7 7.32Hz, H-8b), 4.19-4.24 (m, 2H, H-5, H-6), 4. 61(br s, 1H, H-4), 4.75-4.79 (m, 2H, H-2, H-3);δC (CDCl3) -5. 59, -5.56, 18.14, 25.54, 25.73, 26.09, 26.71, 26.98, 61.61, 63.19, 67.94, 74.84, 74.94, 75.47, 78.36, 78.66, 110.90, 113.37, 174.02; νmax(フィルム) 1796, 2111; [α]D +36.7 (c 1, CHCl3)。
【0362】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qg
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qf, 3.00g, 6.6ミリモル)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶解し、0℃に冷却した。水素化ホウ素リチウム(216mg, 9.9ミリモル)を加え、混合物を0℃-室温で24時間攪拌した。メタンスルホニル分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)を行ったところ、出発材料(Rf 0.76)は消失し、極性の大きい化合物(Rf 0.45)が見られた。反応物に塩化アンモニウム(飽和水溶液)を加えて反応停止し、酢酸エチルと塩水とに分配した。水性層を酢酸エチルで抽出し(2x)、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、溶媒を除去した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:3-1:1)、7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qgを無色シロップ(2.476g, 82%)として得た。δH (CDCl3) 0.10 (s, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH3)3), 1.36, 1.41, 1.42, 1.48 (4xs, 12H, 2xC(CH3)2), 3.43-3.47 (m, 1H, H-7), 3.66 (br d, 1H, H-4), 3.79-3.92 (m, 4H, H-1, H-1a, H-8, H-8a), 4.10-4.14 (m, 2H, H-2, H-3), 4.30-4.38 (m, 2H, H-5, H-6); δC (CDCl3) -5.61, -5.51, 18.14, 25.18, 25.71, 26.87, 27.07, 27.86, 60.65, 62.39, 63.66, 67.62, 75.90, 76.91, 77.18, 77.49, 108.63, 110.16; νmax (フィルム) 2109, 3536; [α]D +46. 6(c 1, CHCl3)。
【0363】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L- タロ-オクチトール Qh
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール (Qg, 2.4g, 5.3ミリモル)をピリジン(20ml)に溶解し、4-ジメチルアミノピリジン(64mg, 0.53ミリモル)とメタンスルホニルクロリド(4.814g, 3. 253ml, 42ミリモル)をピリジン(20ml)に溶解したものに加え、2時間攪拌した。メタンスルホニル分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:2, 二重溶出)を行ったところ、出発材料(Rf 0.33)は消失し、疎水性の大きい生成物が見られた(Rf 0.43)。溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水性層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、減圧濃縮した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:2)7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qhを無色油状生成物(2.973g, 92%)として得た。δH (CDCl3) 0.11, 0.12(2xs, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH3)3), 1.41, 1.44, 1.46, 1.56 (4xs, 12H, 2xC(CH3)2), 3.08 (s, 3H, SO2CH3), 3.21 (s, 3H, SO2CH3), 3.49 (ddd, 1H, J7,6 2.82Hz, J7,8 5.46Hz, J7,8a 7.94Hz, H-7), 3.87-3.97 (m, 2H, H-8, H-8a), 4.19 (dd, 1H, J6,5 2.30Hz, H-6), 4.24-4.31 (m, 2H, H-1, H-5), 4.36 (dd, 1H, J3,4 2.96Hz, J3,2 6.62Hz, H-3), 4.49-4.53 (m, 1H, H-2), 4.69 (dd, 1H, J1a,2 2.39Hz, J1a,2 10.83Hz, H-1a), 5.11 (app t, 1H, H-4); δC (CDCl3) -5.56, 18.18, 25.76, 26.24, 26.78, 26.89, 27.56, 37.75, 39.02, 60.90, 63.57, 70.44, 76.00, 76.07, 76.46, 77.18, 77.32, 109.01, 110.68; νmax (フィルム) 2113; [α]D -16.2 (c 1, CHCl3)。
【0364】
7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qi
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L- タロ-オクチトール(Qh, 2.90g, 4.7ミリモル)をトリフルオロ酢酸:水混合物(1:1, 40ml)で3時間処理した。メタンスルホニル分析(酢酸エチル)を行ったところ、出発材料(Rf 0.9)は消失し、極性の大きい生成物(Rf 0.12)が見られた。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエンと共に蒸発させ、真空乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1-1:0)を行ったところ、7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qiを無色油状生成物(1.677g, 85%)として得た。δH (CD3OD) 3.12 (s, 3H, SO2CH2), 3.21 (s, 3H, SO2CH3), 3.61-3.71 (m, 2H, H-7, H-8), 3.78-3.82 (m, 2H, H-6, H-8a), 3.98-4.05 (m, 2H, H-2, H-3), 4.11-4.13 (m, 1H, H-5), 4.34 (dd, 1H, J1,2 4.87Hz, J1,1a 10.44Hz, H-1), 4.45 (dd, 1H, J1a,2 1.87Hz, H-1a), 5.00 (dd, 1H, J4,3 1.91Hz, J4,5 6.15Hz, H-4);δC (CD3OD) 36.17, 38.11, 61.84, 66.62, 69.09, 70.33, 70.45, 71.08, 72.55, 86.41;νmax (フィルム) 2113; [a]D -9.1(c 1, H2O)。
【0365】
(1R,2R,3S,6S,7R,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン Qj
[3,7-ジエピ-カスアリン]
7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール (Qi, 1.6g, 3.78ミリモル)を水(30モル)に溶解し、10%パラジウム/炭素(400mg)で水素雰囲気下にて16時間処理した。T.l.c.分析(酢酸エチル:メタノール, 9:1)を行ったところ、出発材料(Rf 0.75)は消失し、極性の大きな生成物(Rf 0.05)が見られた。パラジウムを濾別し、濾液を酢酸ナトリウム(930mg, 11.34ミリモル)で60℃にて16時間処理した。反応混合物を冷却し、溶媒を真空留去した。粗製の褐色油状生成物をイオン交換クロマトグラフィー(Dowex 50WX8-100, 2M水酸化アンモニウムにて溶出)によって精製し、(1R,2R,3S,6S,7R,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1, 2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン [3,7-ジエピ-カスアリン] Qjを褐色ガラス状生成物(671mg, 87%)として得た。δH (D2O) 2.81-2.92 (m, 2H, H-5, H-5a), 3.16 (dd, 1H, J3,2 5.91Hz, J3,8 10.74Hz, H-3), 3.30 (app t, 1H, J 3.78Hz, H-7a), 3.76 (dd, 1H, J8,8a 6.35Hz, H-8), 3.87 (dd, 1H, H-8a) 14.01 (d, 1H, J2,1 3.55Hz, H-2), 4.04-4.12 (m, 2H, H-6, H-7), 4.29 (app t, 1H, H-1); δC (D2O) 49.32, 57.29, 63.78, 70.41, 72.59, 72.65, 74.47, 78.25; [α]D -21.1 (c 0.5, H2O)。
【0366】
実施例12: 3,7-ジエピ-カスアリン(MNLP 24)とインフルエンザワクチンの最適用量のアジュバント活性
実験デザイン
3群の6匹の雌Balb/cマウスに、インフルエンザワクチンと3,7-ジエピ-カスアリンの混合物を0日および14日目に筋肉内(i.m.)投与した。それぞれの群には、異なる用量の3,7-ジエピ-カスアリンを投与した。群Bには低用量を投与し、群Cには中程度の用量を投与し、群Dには高用量を投与した(それぞれ、20、50および100g)。第四のコントロール群(群A)には、インフルエンザワクチンのみを投与した。免疫調節活性を、28日目に得た血清でのインフルエンザ特異抗体応答によって評価した。
【0367】
材料および方法
マウス: 34匹の雌のSPFで飼育したBALB/cマウスを、Charles River Deutschland,ズルツフェルト,ドイツでSPF条件下に保持したコロニーから得た。24匹の動物を、コンピューターランダム化により様々な群に配分した。マウスを、検討期間中20.7-24.6℃の温度および30-70%の湿度の同一室内の2型マクロロンケージ(macrolon cages)に収容した。動物室は、1時間当たり少なくとも10回空気入れ替えの換気を行った。照明は蛍光管により人工的なものであり、時間スイッチは12時間の明、および12時間の暗(明は午前7.00-午後7.00)の順序で制御した。飼料と飲料水は、自由に供給した。
【0368】
注射用水は、NPBI(オランダ)から得て、バッチ番号03G0472、有効期限2006年6月、CBS番号42650であって、周囲室温に保管した。
【0369】
インフルエンザワクチン(Solvay Pharmaceuticals B.V, Weesp,オランダ)はA/Panama株のヘマグルチニン(haemaglutinin (HA))を含む単価のサブユニットワクチンである。ストックの濃度は430μgHA/ml、バッチ番号HPR34であり、2-10℃で保管した。
【0370】
ストック3,7-ジエピ-カスアリン(5.8mg)を注射用水2.0mlで希釈し(濃度100μg/35μl)、250μl分量を調製して、保管した。
【0371】
コントロール群Aには、インフルエンザワクチン(245μlの注射用水と混合した105μlインフルエンザワクチンストック)のみを投与した。群Bには、105μlのインフルエンザワクチンストックと196μlの注射用水と混合したストック3,7-ジエピ-カスアリン49μlを投与した。群Cには、105μlのインフルエンザワクチンストックと122.5μlの注射用水と混合したストック3,7-ジエピ-カスアリン122.5μlを投与した。群Dには、105μlのインフルエンザワクチンストックと混合したストック3,7-ジエピ-カスアリン245μlを投与した。
【0372】
総ての溶液は、使用直前に新たに調製した。
【0373】
コントロール群Aには、0日および14日目に左および右後肢の大腿部筋肉にワクチン(脚当たり25μl)を2回i.m.投与した。群B-Dには、左および右後肢の大腿部筋肉にワクチンおよび3,7-ジエピ-カスアリン(脚当たり25μl)をi.m.投与した。
【0374】
インフルエンザワクチン特異的IqG、IG1およびIaG2aの測定
ワクチン抗原に対するIgG、IgG1(Th2依存性)およびIgG2a(Th1依存性)抗体は、サンドイッチELISAを用いて0日および28日目に得た血清試料で測定した。平底プレート(NUNC Immuno Plate,ロスキルデ,デンマーク)に、炭酸塩緩衝剤(pH 9.6)に溶解した100μl(5μlタンパク質/ml)をコーティングした。3回洗浄した後(0.5% Tween-20溶液)、プレートを1%ウシ血清アルブミンと0.02% Tween 20(PBS/Tween 0.02%/BSA1%)を含む100μl/ウェルのPBSを加えることによってブロックした。37℃で1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄し、試験血清の連続希釈物(PBS/Tween 0.02%/BSA1 %中)を2回インキュベーションした(1時間、37℃)。出発希釈物は1:400であった。2回目の洗浄段階の後、HRPに接合した抗体を加え(30分間、37℃)、ラット抗マウスIgG、IgG1またはIgG2a (Zymed)をPBS/BSA/Tween(1:1000)で希釈した。洗浄段階の後、TMB基質溶液(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を加え(20分間、室温)、その後反応を2N H2SO4で停止した。光学濃度(OD)を、Bio Radマイクロプレートリーダー3550 (Bio Rad Laboratories,リッチモンド,カリフォルニア)を用いて450nmで測定した。1ml当たり任意数の単位数の特異抗体(AU/ml)を含む参照(プール)血清試料で得た標準曲線に基づいて、血清中のインフルエンザ特異的IgG、IgG1およびIgG2aを計算した。参照血清は、群Aから28日目に得たそれぞれ個々の血清試料の等容を混合することによって調製し、それぞれ個々のELISAプレート上で混合した(出発希釈度1:50、11回連続希釈)。
【0375】
データーの統計学的評価は、(共)分散の分析によって行った後、Dunnettの多重比較試験を行った。分散の不均等性の場合には、データーを対数変換した(特異的IgG1データーの場合)。p<0.05の確率値を、有意と考えた。
【0376】
結果
総ての群において、良好なインフルエンザワクチン特異的-全IgGおよびIgG1抗体応答が見られた。観察されたIgG2a応答は、総ての試験群において遙かに顕著でなかった。コントロール動物の1匹からの2つの値を99%信頼水準においてアウトライアーとして同定し、除外した。
【0377】
統計学的有意差が、コントロール群Aと総ての治療群B-Dとの間で見られた(図3参照、インフルエンザのみまたはELISAによって測定した20、50または100μgの3,7-ジエピ-カスアリンと組み合わせてワクチン接種した動物でのインフルエンザワクチン特異的IgGtot、IgG1およびIgG2a血清抗体応答 - 棒線は群平均±SDを表す。*P<0.05、**P<0.01は、インフルエンザワクチンのみを接種したコントロール群に対するものである)。用量応答は、見られなかった。統計学的に有意な特異的IgG1応答の増加は、それぞれ20(P<0.01)、50(P<0.05)および100μgの3,7-ジエピ-カスアリン(P<0.01)を投与した群で見られた。
【0378】
コントロール群Aと比較して、統計学的に有意なIgGtotal応答の増加がそれぞれ20(P<0.05)または100μgの3,7-ジエピ-カスアリン(P<0.01)を投与した群で見られた。特異的IgG2a応答における有意差は、この水準の抗原では(予想されたように)見られなかった。
【0379】
これらの結果は、3,7-ジエピ-カスアリンが最適用量のインフルエンザ抗原を含むワクチン処方物ででもアジュバント活性を示すことを示し、明らかな特異的IgGtotalおよびIgG1応答(Th2依存性)が見られた。治療群B-Dで見られた特異的IgGtotalおよびIgG1における統計学的に有意な増加は、3,7-ジエピ-カスアリンのアジュバント活性を示している。Th2のTh1へのTh1/Th2応答の歪は、検討を行った高インフルエンザ抗原用量では見られず、このような最適用量はTh1:Th2応答比の水準での免疫調節を遮断することが予想される。
【0380】
実施例13: カスアリンの抗転移活性
転移性ネズミB16/F10黒色腫細胞の静脈内投与を明らかにした後、C57BL/6マウスにおける肺コロニーの形成を防止するカスアリンの能力を明らかにした。
【0381】
実験デザイン
検討では5つの治療群があり、6匹のマウスをそれぞれの群に任意に配分した。 治療群は、下記の通りであった。
群 投与 用量 濃度 投薬計画
1 ネガティブ(ビヒクル) 毎日摂取 N/A 36-48時間
コントロール*
2 カスアリン 毎日摂取 0.03μg/ml 36-48時間
3 カスアリン 毎日摂取 3μg/ml 36-48時間
4 カスアリン 毎日摂取 0.3 mg/ml 36-48時間
5 スワインソニン** 毎日摂取 3 μg/ml 36-48時間
* 滅菌水
**ポジティブコントロール
【0382】
用量容積は、総ての動物についての毎日摂取量であった。試験物質を、群2、3、4および5のマウスに滅菌水の溶液として腫瘍細胞投与の41時間32分前に投与した(0日目は腫瘍細胞投与の日である)。
【0383】
マウスに、B16/F10黒色腫細胞の懸濁液0.1ml(約1x105細胞/マウス)を0日目に尾静脈を介して静脈内投与した。
【0384】
材料および方法
カスアリンを、滅菌水の3μg/ml溶液を調製することによる投与の目的で処方した。総ての投与溶液は投与の初日(2日目)に調製して、室温に保持した。
【0385】
マウス: 雌のC57BL/6マウスは、Charles River UK Limitedから供給され、引き渡された。動物は、到着時に約6-8週齢であった。動物は、研究開始の29日前に納入され、投薬開始時の体重は18-23gであった。研究中、動物は6までの群を土台が(滅菌のためオートクレーブ処理した)鋸屑の小児用の上部がフィルターになっているケージに収容した。室内とケージを一定間隔で毎週清掃して、清潔に保った。マウスには、RM1 (E) SQC (バッチ番号3822; Special Diets Services,ウィッタム,英国)の拡張齧歯類食を自由に与え、滅菌水(N.V. Nutricia,ゼーテルメーア, オランダ)に接近させた。群2、3、4および5については、飲料水も投薬期間中は適当な水準の試験物質も含んでいた。ホールディング・ルーム(holding rooms)には12時間明-暗サイクルがあり(07:00にスイッチを入れ、19:00にスイッチを切る)空気温度を20±3℃内に保持するようにデザインされた装置によって空調が行われた。順化および研究期間中、室内の温度範囲は18-22℃であり、湿度は44-79%であった。
【0386】
腫瘍投与: B16/F10ネズミ腫瘍細胞(Shrayer D, Bogaars H, Hearing V. J.Maizel A. & Wanebo H. 「黒色腫転移の臨床的に関連したモデルの更なる特性決定、および有効なワクチン(Further characterization of a clinically relevant model of melanoma metastasis and an effective vaccine)」, Cancer Immunology, Immunotherapy 1995: 40; 277-282)を、最小トリプシン化を用いてイン・ビトロで増殖するサブコンフルエント培養物から回収した。それらを滅菌したリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、成長可能な細胞数を測定した。細胞を、滅菌PBSに1x106個/mlの濃度で再懸濁した。マウスに、細胞懸濁液0.1ml(すなわち、約1x105個/マウス)を0日目に尾静脈を介して静脈内投与した。マウスを、広汎な転移性疾患による呼吸困難または苦痛の徴候について毎日検討した。マウスを適当な試験物質に41時間32分間暴露した後、腫瘍細胞を投与した(-2日目-0日目)。腫瘍細胞の移植の後、試験物質を除去し、総ての群の動物に検討の残り期間は飲料水のみを投与した。
【0387】
試料採取および分析: 動物を21日目(腫瘍細胞の投与から21日後)に屠殺した。血液試料を、屠殺の日にそれぞれの群の3匹のマウスから採取した。動物を二酸化炭素で麻酔し、最大容量の血液試料を通常の試験管に集めた。試料を室温で最低1時間凝血させた後、血清を取り出した。血清試料を、分析前に約-70℃で保管した。方血を行った直後、脾臓を3匹の選択したマウスから取り出した。これらのマウスからの脾臓を、0.52%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep; バッチ番号44K2412 ; Sigma Aldrich,プール,英国)を含む約3-5mlのRPMI 1640組織培養培地(バッチ番号3092202; Invitrogen, ペーズリー,英国)を含むペトリ皿にプールした後、脾臓を単離した。それぞれの群からの脾臓をガラス製ホモジナイザーに更に10-15mlの培地と共に入れ、不透明になるまでホモジナイズした。次に、懸濁液を、50ml遠沈管に入れた。かなりの細胞破片があるときには、これを沈澱させた後、懸濁液を取り出して、新たな遠沈管に移した。次に、ホモジェネートを、約200x「g」で約4℃にて5分間遠心分離した。上清を廃棄した後、細胞懸濁液を、上記したPen/Strepを含む3mlのRPMI 1640組織培養培地に再懸濁した。塩化アンモニウムリーシス溶液(42mlの1x溶液;バッチ番号0000081656; BD Biosciences,オックスフォード,英国)をそれぞれの試験管に加え、反転によって混合した。室温で3-5分間放置した後、細胞懸濁液を約200 x「g」で室温にて5分間遠心分離した。上清を再度廃棄し、細胞ペレットを上記したPen/Strepを含む30mlのRPMI 1640組織培養培地に再懸濁した。等容の細胞懸濁液とトリパンブルー(それぞれ50μl;バッチ番号034K2375; Sigma Aldrich,プール,英国)を混合して、生育可能な細胞の数をトリパンブルー法を用いて血球計で計数した。次に、細胞懸濁液を約200x「g」で室温にて5分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞ペレットを冷凍培地(バッチ番号054K0495; Sigma Aldrich,プール,英国)に1.5x107個/ml(群1、2および5)または1.0x107個/ml(群3および4)で再懸濁した。
次いで、細胞を滅菌した冷凍バイアルで1ml分量に分けて、分析の目的でスポンサーに発送するまで液体窒素に保管した。
【0388】
血液試料を採取しなかった動物は、強打によって屠殺した。
【0389】
それぞれの動物からの肺を取り出して秤量した後、ホルマリン(バッチ番号1273764/3; VWR International Ltd.,プール,英国)で膨張させた。固定の後、肺のそれぞれの組の表面上のコロニー数を目視で計数した。
【0390】
分析: 肺コロニーの数を計数し、そのデーターを統計分析に用いた。結果における変動性(部分的には、幾つかのコントロール動物の肺の腫瘍が合体し、コロニー数が著しく過小評価されることによる)により、データーの特定範囲外の値をコロニー数に関するグラブ試験を行うことによって測定した。3つのアウトライアーを分析から同定し、除外した。次に、補正データーを分散の片側分析(ANOVA)によって分析した後、ダネット多重比較試験を行って、肺に形成されたコロニー数に対する試験物質の効果の有意性を決定した。
【0391】
結果
動物は投薬計画に良好に耐え、検討中の体重には全く影響しなかった。いつでも、呼吸困難の徴候はなく、マウスは検討中に外見上は健康のままであった。しかしながら、検討の最終日(21日目)には、2匹のマウス死亡した(群4の動物172および群5の動物177)。これらの死は、試験物質に関係しているとは思われなかった。
【0392】
結果を、下表に示す。
【表20】

【0393】
結果は、カスアリンを飲料水に溶解したものを0.03μg/ml、3μg/mlおよび0.3mg/mlの容量で投与したところ、ネガティブコントロール(ビヒクルを投与)マウスと比較して黒色腫肺コロニーの数が減少したことを示している。これらの減少は統計学的に有意であった。ポジティブコントロール(スワインソニン3 μg/mlを飲料水に溶解したもの)も、ビヒクルコントロールと比較してコロニー数の統計学的に有意な減少が見られた。カスアリンは、スワインソニンより100分の1の低用量で活性を示した。
【0394】
実施例14: 抗BVDV効果
C型肝炎ウイルス(HCV)は1989年に最初に同定され、それ以来、このウイルスは輸血後の非A、非B型肝炎のほとんどの症例に関与していることが明らかになってきた。実際に、HCVは慢性肝疾患を引き起こす最もよく見られる感染症の一つとして認められており、世界保険機構は1億7千万人が慢性的に感染していると推定している。HCV感染症は感染患者の85%に慢性感染症を生じ、これらの約20-30%は肝細胞癌を併発することが多い肝硬変および最終段階の疾患へと進行する。
【0395】
HCVの研究は、細胞培養でウイルスを効率的に増殖させることができないことによって妨げられてきた。しかしながら、ヒトHCVの複製を指示することができる適当な細胞培養系の非存在下では、ウシ下痢ウイルス(BVDV)が許容される細胞培養モデルである。HCVおよびBVDVは、有意な程度の局部タンパク質相同性、共通の複製法、および恐らくはウイルス包囲の同一の下位細胞位置を共有する。
【0396】
初めの部分で説明したように(「本発明のアルカロイドの生物活性」という標題の節を参照)、本発明のアルカロイドの薬理活性の少なくとも幾つかは、二次的グリコシダーゼ阻害活性に基づいていることがある。グリコシダーゼの阻害薬、特にα-グルコシダーゼおよびα-マンノシダーゼをブロックするものは、数種類のエンベロープ付きウイルスの複製を防止することが示されている。このような阻害薬はウイルスエンベロープ糖タンパク質の折り畳みを妨げ、初期のウイルス-宿主細胞相互作用またはその後の融合を妨げることによって作用することがある。それらは、ウイルス膜の完成に必要な適正な糖タンパク質の構築を妨げることによってウイルス重複を妨げることもある。
【0397】
従って、本発明のアルカロイドがイン・ビトロでの直接的抗BVDV効果を発揮することができることを試験し、活性をBVDVプラーク阻害分析法で明らかにした。
【0398】
プラーク分析法: MDBK細胞を24穴プレートに播種して、コンフルエンシーに到達させた。単層をBVDVの14-45のプラーク形成ユニットに暴露し、接着を生じさせた。感染した単層を次に試験化合物に暴露し、低ゲル化点アガロースを含む培地を加え、凝固させた。次に、プレートを感染後4日間インキュベーション死、5%ホルマリンに固定し、アガロース層を除去した後0.5%ニュートラル・レッドで染色した。抗ウイルス活性を、プラーク阻害の決定によって測定した。
【0399】
同義語
上記の説明は、本発明の現在の好ましい態様を詳細に示している。本発明の実施における多数の修飾および変更は、これらの説明を考察するときに当業者に起こることが予想される。これらの修飾や変更は、本明細書に記載の特許請求の範囲に包含されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0400】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫治療を必要とする患者に、該患者の樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを投与することを含んでなる、免疫治療方法。
【請求項2】
免疫治療用の医薬品の製造のための、アルカロイドの使用であって、
前記免疫治療が樹状細胞においてIL-2産生を誘発することを含んでなる、使用。
【請求項3】
前記免疫治療が、
(a) Th1:Th2応答比の増加(例えば、Th1関連疾患または障害(例えば、増殖性障害または感染症)および/またはTh2関連疾患または障害(例えば、アレルギー、例えば、喘息)の治療におけるもの)、
(b) 血液再生(haemorestoration)、
(c) 免疫抑制の緩和、
(d) サイトカイン刺激、
(e) 増殖性障害の治療、
(f) 前記アルカロイドがアジュバントとして作用する、ワクチン接種、
(g) 前記アルカロイドが樹状細胞をin situで増強する作用をする、ワクチン接種、
(h) 創傷治癒
を含んでなる、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記免疫治療が、
(a) 細菌感染症、
(b) プリオン感染症、
(c) ウイルス感染症、
(d) 真菌感染症、
(e) 原生動物感染症、
(f) 後生動物感染症(例えば、寄生線虫によるもの)
から選択される微生物感染症の治療または予防における免疫刺激を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫治療が感染症の治療または予防を含んでなり、感染性病原体が細胞内に存在するか、または、例えば、HIV、リーシュマニア、インフルエンザ、結核およびマラリアから選択される新生抗原の発現を引き起こす、請求項4に記載の方法または使用。
【請求項6】
前記血液再生(haemorestoration)が、
(a) 化学療法、および/または
(b) 放射線療法、および/または
(c) 骨髄移植、および/または
(d) ヘモアブレーティブ(haemoablative)免疫治療
に補助的である、請求項3の(b)に記載の方法または使用。
【請求項7】
前記免疫抑制が、先天的、後天的 (例えば、感染症または悪性腫瘍によるもの)、または、(例えば、移植片または癌の処理の一部として意図的に)誘導されるものである、請求項3の(c)に記載の方法または使用。
【請求項8】
前記サイトカイン刺激が遺伝子療法に補助的である、請求項3の(d)に記載の方法または使用。
【請求項9】
前記増殖性障害が癌および癌転移から選択される、請求項3の(e)に記載の方法または使用。
【請求項10】
前記ワクチンが、
(a) 細胞性ワクチン(例えば、樹状細胞および/またはT細胞を含んでなるもの)であるか、および/または
(b) 新生抗原およびアルカロイドを含んでなる、
請求項3の(f)に記載の方法または使用。
【請求項11】
前記細胞性ワクチンが異種、同種、同系または自家細胞を含んでなる、請求項10に記載の方法または使用。
【請求項12】
前記免疫治療が、さらに
(a) 抗原(例えば、新生抗原)であって、場合によっては内在性樹状細胞(例えば、エキソソームに存在するもの)に対してターゲッティングを行う抗原の同時投与、および/または
(b) 樹状細胞成熟刺激因子の同時投与
を含んでなる、請求項3の(g)に記載の方法または使用。
【請求項13】
アルカロイドを含んでなる、生細胞ワクチン。
【請求項14】
異種、同種、同系または自家細胞を含んでなる、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
前記細胞が樹状細胞を含んでなる、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記樹状細胞が抗原パルス樹状細胞である、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
前記細胞がT細胞を含んでなる、請求項14〜16のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項18】
樹状細胞との接触、例えば抗原パルス樹状細胞との接触によって前記T細胞を感作する、請求項18に記載のワクチン。
【請求項19】
アルカロイドの存在下にて抗原パルス樹状細胞との接触によって前記T細胞を感作する、請求項18に記載のワクチン。
【請求項20】
前記樹状細胞と、該樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドとを接触させることを含んでなる、樹状細胞ワクチンの産生方法。
【請求項21】
前記樹状細胞に抗原を負荷することをさらに含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記樹状細胞を成熟させることをさらに含んでなる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記樹状細胞を成熟培地(例えば、請求項32に記載の成熟培地)と接触させることによって樹状細胞を成熟させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法によって得られた(または得ることができる)、樹状細胞ワクチン。
【請求項25】
T細胞ワクチンの産生方法であって、
(a) 樹状細胞を供給し、
(b) 該樹状細胞と、該樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドとを接触させ、刺激された樹状細胞を産生し、
(c) T細胞を供給し、
(d) 該T細胞と、 前記(b)における刺激された樹状細胞とを接触させ、T細胞を感作すること
を含んでなる方法。
【請求項26】
樹状細胞に抗原を負荷し、および/または感作工程(d)の前に樹状細胞を成熟させることをさらに含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項25または26の方法によって得られる、T細胞ワクチン。
【請求項28】
請求項27に記載のT細胞ワクチンを、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療の方法。
【請求項29】
T細胞をイン・ビトロで感作する方法であって、
(a) 樹状細胞を供給し、
(b) 該樹状細胞と、該樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドとを接触させ、刺激された樹状細胞を産生し、
(c) T細胞を供給し、
(d) 該T細胞と、前記刺激された樹状細胞とを接触させ、感作されたT細胞を産生すること
を含んでなる、方法。
【請求項30】
樹状細胞に抗原を負荷し、および/または感作工程(d)の前に樹状細胞を成熟させることをさらに含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項29または30に記載の方法により感作したT細胞を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療方法。
【請求項32】
未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への成熟を誘発するための成熟培地であって、前記樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な濃度のアルカロイドを含んでなる、培地。
【請求項33】
請求項32に記載の成熟培地を含んでなる、樹状細胞工場。
【請求項34】
未成熟樹状細胞と、請求項32に記載の成熟培地とを接触させることを含んでなる、成熟樹状細胞の産生方法。
【請求項35】
未成熟樹状細胞 (例えば、請求項33に記載の樹状細胞工場におけるもの)と、請求項32に記載の成熟培地とを接触させることを含んでなる、樹状細胞ワクチンの産生方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法により産生した成熟樹状細胞を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、養子免疫治療の方法。
【請求項37】
NKおよび/またはNKT細胞活性化を必要とする患者に、該患者の内在性樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを投与することを含んでなる、休止NKおよび/またはNKT細胞をイン・ビボで活性化する方法。
【請求項38】
ワクチン接種の増強を必要とする患者において樹状細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを同時投与することを含んでなる、方法。
【請求項39】
ワクチン接種の増強を必要とする患者においてT細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、前記患者の内在性樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを同時投与することを含んでなる、方法。
【請求項40】
イン・ビボで樹状細胞の成熟を誘発する方法であって、
(c) 樹状細胞に対してターゲッティングした抗原、および
(d) 前記樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイド
を同時投与することを含んでなる、方法。
【請求項41】
未成熟樹状細胞およびアルカロイドを同時投与することを含んでなる、免疫寛容を必要とする患者において免疫寛容を誘発する方法。
【請求項42】
未成熟樹状細胞によりワクチン接種を増強する方法であって、前記未成熟樹状細胞においてIL-2産生を誘発するのに十分な用量のアルカロイドを同時投与することを含んでなる、方法。
【請求項43】
未成熟樹状細胞に抗原を負荷する、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
アルカロイドが単離されている、請求項1〜43のいずれか一項に記載の発明。
【請求項45】
前記アルカロイドが、
(a) ピペリジンアルカロイド、
(b) ピロリンアルカロイド、
(c) ピロリジンアルカロイド、
(d) ピロリジジンアルカロイド、
(e) インドリジジンアルカロイド、
(f) ノルトロパンアルカロイド、
(g) (a) 〜 (f)のいずれかの2個以上の混合物
から選択される、請求項1〜44のいずれか一項に記載の発明。
【請求項46】
前記アルカロイドがポリヒドロキシル化されている、請求項1〜45のいずれか一項に記載の発明。
【請求項47】
前記アルカロイドが糖類似物である、請求項1〜46のいずれか一項に記載の発明。
【請求項48】
前記アルカロイドの分子量が100〜 400ダルトンである、請求項1〜47のいずれか一項に記載の発明。
【請求項49】
前記アルカロイドの分子量が150〜300ダルトン(例えば、200〜250ダルトン)である、請求項48に記載の発明。
【請求項50】
前記アルカロイドが植物化学物質(またはその誘導体または類似体)である、請求項1〜49のいずれか一項に記載の発明。
【請求項51】
前記アルカロイドが極性アルカロイドである、請求項1〜50のいずれか一項に記載の発明。
【請求項52】
前記アルカロイドが、イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでマクロファージからのIL-12および/またはIL-2の産生を誘発する、請求項1〜51のいずれか一項に記載の発明。
【請求項53】
前記アルカロイドが、イン・ビボで1種類以上のTh1サイトカイン(例えば、IFN-γ)を誘発し、増強しまたは活性化し、および/またはイン・ビボで1種類以上のサイトカイン(例えば、Th2サイトカイン)を抑制する、請求項1〜52のいずれか一項に記載の発明。
【請求項54】
前記1種類以上のサイトカインが、1種類以上のインターロイキンを含んでなり、例えば、
(a) 前記1種類以上のTh1サイトカインがIL-12および/またはIL-2を含んでなり、および/または
(b) 前記1種類以上のTh2サイトカインがIL-5および/またはL-4を含んでなる、
請求項53に記載の発明。
【請求項55】
前記アルカロイドがグルコシダーゼ阻害剤である、請求項1〜54のいずれか一項に記載の発明。
【請求項56】
前記アルカロイドが
(a) グルコシダーゼを阻害し、および/または
(b) マンノシダーゼを阻害しない、
請求項55に記載の発明。
【請求項57】
前記アルカロイドが、イン・ビボで投与される場合、
(a) 腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)を修飾し、および/または
(b) ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)を修飾し、および/または
(c) 感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化を修飾し、および/または
(d) 細菌細胞壁を修飾する、
請求項1〜56のいずれか一項に記載の発明。
【請求項58】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項1〜57のいずれか一項に記載の発明。
【化1】

(式中、
Rが、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【請求項59】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項58に記載の発明。
【化2】

(式中、
Rが、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【請求項60】
前記アルカロイドがアシル誘導体である、請求項58または59に記載の発明。
【請求項61】
前記アルカロイドが、
(a) ペルアシル化され、または
(b) C-3ヒドロキシメチルにおいてアシル化され、または
(c) C-6においてアシル化され、
(d) C-3ヒドロキシメチルおよびC-6においてアシル化されている、
請求項60に記載の発明。
【請求項62】
前記アシル誘導体がアルカノイルまたはアロイルである、請求項60または61に記載の発明。
【請求項63】
前記アシル誘導体がアセチル、プロパノイルまたはブタノイルから選択されるアルカノイルである、請求項62に記載の発明。
【請求項64】
Rが糖残基(例えば、グルコシドまたはアラビノシド残基)である、請求項58〜63のいずれか一項に記載の発明。
【請求項65】
前記アルカロイドが1R,2R,3R,6S,7S,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(カスアリン)であって、Rが水素でありかつ下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項59に記載の発明。
【化3】

【請求項66】
前記アルカロイドがカスアリングルコシドまたはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項59に記載の発明。
【請求項67】
前記アルカロイドが、下式のカスアリン-6-α-D-グルコシドまたはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項66に記載の発明。
【化4】

【請求項68】
前記アルカロイドが6-O-ブタノイルカスアリンまたはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項59に記載の発明。
【請求項69】
前記アルカロイドが、
(a) 3,7-ジエピ-カスアリン、
(b) 7-エピ-カスアリン、
(c) 3,6,7-トリエピ-カスアリン、
(d) 6,7-ジエピ-カスアリン、
(e) 3-エピ-カスアリン、
(f) 3,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(g) 7-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(h) 3,6,7-トリエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(i) 6,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、および
(j) 3-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、または
それらの薬学上許容可能な塩もしくは誘導体から選択される、請求項58に記載の発明。
【請求項70】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項1〜57のいずれか一項に記載の発明。
【化5】

(式中、
Rが、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【請求項71】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項70に記載の発明。
【化6】

(式中、
Rが、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択されるものである)
【請求項72】
前記アルカロイドがアシル誘導体である、請求項70または71に記載の発明。
【請求項73】
前記アルカロイドが
(a) ペルアシル化され、または
(b) C-3ヒドロキシメチルにおいてアシル化され、または
(c) C-6においてアシル化され、
(d) C-3ヒドロキシメチルおよびC-6においてアシル化されている、
請求項72に記載の発明。
【請求項74】
前記アシル誘導体がアルカノイルまたはアロイルである、請求項72または73に記載の発明。
【請求項75】
前記アシル誘導体がアセチル、プロパノイルまたはブタノイルから選択されるアルカノイルである、請求項74に記載の発明。
【請求項76】
Rが糖残基である、請求項70〜75のいずれか一項に記載の発明。
【請求項77】
Rがグルコシドまたはアラビノシド残基である、請求項76に記載の発明。
【請求項78】
前記アルカロイドがN-ヒドロキシエチルDMDPであって、Rが水素でありかつ下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項71に記載の発明。
【化7】

【請求項79】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項1〜57のいずれか一項に記載の発明。
【化8】

(式中、
R1が、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択され、R2が、水素、ヒドロキシおよびアルコキシから選択されるものである)
【請求項80】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項79に記載の発明。
【化9】

(式中、
R1が、水素、直線状または分岐状、未置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択され、R2が、水素、ヒドロキシおよびアルコキシから選択されるものである)
【請求項81】
R1が糖残基 (例えば、グルコシドまたはアラビノシド残基)である、請求項79または80に記載の発明。
【請求項82】
前記アルカロイドが、下式を有するものであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項79に記載の発明。
【化10】

【請求項83】
前記アルカロイドが、下式を有する2-ヒドロキシ-1,2-シス-カスタノスペルミンであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項82に記載の発明。
【化11】

【請求項84】
前記アルカロイドが、下式を有する2-ヒドロキシ-1,2-トランス-カスタノスペルミンであるか、またはその薬学上許容可能な塩もしくは誘導体である、請求項82に記載の発明。

【化12】

【請求項85】
前記アルカロイドがアシル誘導体である、請求項79〜84のいずれか一項に記載の発明。
【請求項86】
前記アシル誘導体がアルカノイルまたはアロイルである、請求項85に記載の発明。
【請求項87】
アシル誘導体がアセチル、プロパノイルまたはブタノイルから選択されるアルカノイルである、請求項86に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−518785(P2007−518785A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550281(P2006−550281)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000215
【国際公開番号】WO2005/070418
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505279880)エム.エヌ.エル.ファーマ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】M N L PHARMA LIMITED
【Fターム(参考)】