説明

入退室管理システム

【課題】ファンクション操作時において不要な履歴が意図せず記録されてしまうことを防止し、履歴記憶領域を有効に活用することができる入退室管理システムを提供する。
【解決手段】固有の認証情報が予め記憶された無線タグと、タグ検出範囲内の無線タグを検出し認証情報を読み取り、読み取った認証情報に基づいて認証を行うリーダと、を具備し、人物によりリーダに対してなされた所定のファンクション操作に応じて、所定のファンクション処理を行う入退室管理システムにおいて、少なくとも認証の結果及びファンクション処理の履歴を記憶する履歴記憶手段と、人感センサ検出範囲内の人物を検出する人感センサと、を備え、リーダは、無線タグを検出する前に人感センサが人物を検出した場合、人物を検出してから所定の一定時間の間、無線タグの認証情報の読み取りを行わない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における入退室管理システムにおいては、各タグに固有のIDを有するICタグによる認証により、このICタグ所持者の入退室を管理するものがある。そして、この入退室システムに、ファンクション機能を備えたものが知られている。ファンクション機能とは、タグのリーダに設けられたボタンやスイッチ等を操作(ファンクション操作)することにより、このリーダ端末から入退室管理システムの有する特定の機能(ファンクション)を利用することができるものである。
【0003】
このファンクション機能として利用することができる入退室管理システムの機能としては、例えば、入退室管理を実施している部屋において、この部屋の最終退室者が、当該入退室管理システムのセキュリティシステムを警備モードに移行させる機能が挙げられる。そして、また逆に、当該ファンクション機能を用いて、当該部屋の最初の入室者が、現在警備モードであるセキュリティシステムに対して警備モードを解除する。
【0004】
また、他の例として、ICタグを用いて出退勤を管理するシステムにおいて、ICタグの所持者がリーダ端末に設けられた出勤ボタン及び退勤ボタンのいずれかを操作してからICタグによる認証を行うことにより、当該所持者の出退勤を記録する機能も挙げられる。さらに、タグ所持者の出張や外出時に、ファンクション操作とICタグによる認証を用いて、システムに当該所持者の在/不在の状態を通知して、それらを履歴として記録する機能も、例として挙げられる。
【0005】
このファンクション機能を利用する際のファンクション操作においては、ファンクション操作を正規のタグ所持者からしか受け付けないようにするため、当該ファンクション操作の後に、必ずICタグによる認証が行われる。この認証に成功した場合には、操作に対応するファンクション機能の利用・実行が許可される。一方、認証に失敗した場合には、当該ファンクション操作は破棄され、ファンクション機能を利用・実行することはできない。
【0006】
なお、ファンクション操作の内容は、当該入退室管理システムが備える記憶部において履歴に記録される。例えば、ファンクション操作による警備モードの設定及び解除においては、警備モードを設定するファンクション操作が行われた際には、当該操作が行われた日時及び当該操作を行ったIDが履歴に記録される。また、警備モードを解除するファンクション操作が行われた際にも、同様に、当該操作が行われた日時及び当該操作を行ったIDが履歴に記録される、という具合である。
【0007】
図5は、このような、ファンクション機能付き入退室管理システムの動作の典型例を示すものである。
まず、ステップS21において、ICタグのリーダは、ファンクション操作がなされていないか否かについて確認する。このステップS21において、ファンクション操作がなされたことが確認された場合には、ステップS22へと移る。このステップS12においては、ステップS21において確認したファンクション操作の内容に対応する所定のファンクション処理を行う。そして、この後は、ステップS23へと進む。
【0008】
一方、ステップS21において、ファンクション操作がなされていないことが確認された場合には、ステップS22を経ずに、直接ステップS23へと進む。このステップS23においては、リーダは、ICタグから送信される認証情報の読み取りを行う。続くステップS24においては、リーダ、先のステップS23で読み出したICタグの認証情報に基づいて認証を行う。そして、この認証の結果が成功(OK)であるか失敗(NG)であるかの判定を行う。
【0009】
このステップS24の判定の結果、認証OKであった場合にはステップS25へと進む。このステップS25においては、リーダは、扉の電気錠へと解錠許可信号を出力する。この解錠許可信号を受けた電気錠は解錠され、扉を開くことが可能となる。そして、ステップS26へと進む。一方、ステップS24の判定の結果、認証NGであった場合には、ステップS25を飛ばしてステップS26へと進む。ステップS26においては、リーダは、先のステップS22におけるファンクション処理、ステップS24における認証結果やステップS25における電気錠に対する信号出力等の履歴データを蓄積する。そして、ステップS27へと至り一連の動作フローは終了する。
【0010】
また、従来における入退室管理システムにおいては、10cm〜2m程度の長距離読み取り性能を有するループコイルアンテナを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、入室者及び退室者の双方が所持する非接触ICカードやRFIDタグ等の非接触式データキャリアから、同一のループコイルアンテナを用いてデータを読み出すことにより認証を行うものである。そして、入室者又は退室者の通過を検出するマットスイッチを設けることにより、出入口に近づいた個人が入室の途上であるのか退室の途上であるのかを判定した上で、認証を行う。また、これと同様に、タグの読み取り範囲が、リーダを中心とした半径2m程度の比較的広い範囲に亘る入退室管理システムとしては、長距離無線ICタグ(スマートタグ)を用いたものも従来において知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−213998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、従来における入退室管理システムには、ループコイルアンテナやスマートタグを用いることにより、2m程度の長距離読み取り性能を有するものがある。このような、長距離読み取り性能を有する入退室管理システムにおいて、前述したファンクション機能を備えた場合、このファンクション機能を利用しようとするタグの所持者は、タグのリーダにおいて所定のファンクション操作を行うため、リーダに接近する必要がある。
【0013】
しかしながら、タグ所持者がリーダに接近すると、タグ所持者がファンクション操作を行う前に、このタグ所持者が所持するタグの読み取りが行われてしまう。このため、本来履歴として残したいファンクション操作の履歴のみならず、その前にタグ所持者がリーダに接近した際のタグ読み取りによる不要な履歴が意図せずに記録されてしまうという課題がある。そして、このことに起因して、記憶された履歴と実際の入退室状態との不整合が発生してしまうという課題や、履歴の記憶部の記憶容量が圧迫されてしまい、履歴記憶領域を有効に活用することができないという課題もある。
【0014】
なお、特許文献1に記載された従来の入退室管理システムは、マットスイッチ(入退室方向検知センサ)において一定時間以上人の検出がされなかった場合には、タグからのデータ読み出しを一時的に停止する。しかし、このマットスイッチは、入退室しようとする人の入退方向を検出するものであるから、当然タグリーダに接近する人がこのマットスイッチ上を通過するようにして配置される。従って、この特許文献1に記載された従来の入退室管理システムにおいても、前述同様の課題があると言える。
【0015】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ファンクション操作時において不要な履歴が意図せず記録されてしまうことを未然に防止することができ、履歴記憶領域を有効に活用することが可能である入退室管理システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係る入退室管理システムにおいては、固有の認証情報が予め記憶された無線タグと、タグ検出範囲内の前記無線タグを検出して前記認証情報を読み取り、この読み取った前記認証情報に基づいて認証を行うリーダと、を具備し、人物により前記リーダに対してなされた所定のファンクション操作に応じて、所定のファンクション処理を行う入退室管理システムであって、少なくとも前記認証の結果及び前記ファンクション処理の履歴を記憶する履歴記憶手段と、人感センサ検出範囲内の前記人物を検出する人感センサと、を備え、前記リーダは、前記無線タグを検出する前に前記人感センサが前記人物を検出した場合、前記人物を検出してから所定の一定時間の間、前記無線タグの前記認証情報の読み取りを行わない構成とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る入退室管理システムにおいては、ファンクション操作時において不要な履歴が意図せず記録されてしまうことを未然に防止することができ、履歴記憶領域を有効に活用することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係る入退室管理システムのタグ検出範囲及び人感センサ検出範囲を模式的に説明する図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る入退室管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る入退室管理システムの動作の流れを示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る入退室管理システムの動作の流れを示すフロー図である。
【図5】従来における入退室管理システムの動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1から図3は、この発明の実施の形態1に係るものである。図1において、1は、当該入退室システムが設置された施設内において仕切られて入退室制限が課された区画の1つである。この区画1には、人物2がこの区画1内に出入りするための出入口が設けられている。この出入口は扉3により開閉される。そして、この扉3は図示しない電気錠により施解錠可能である。
【0021】
この扉3を通過して区画1に対して入(退)室しようとする人物2は、スマートタグ4を携行している。このスマートタグ4は、通常の無線ICタグと比較して長い読み取り可能距離を有する長距離無線ICタグである。このスマートタグ4には、各タグに固有のIDが認証情報として予め記憶されている。そして、この扉3又はこの扉3の近傍の壁面には、スマートタグ4に記憶された認証情報を読み取って認証するためのリーダ5が設置されている。リーダ5によりスマートタグ4に記憶された情報を読み取ることができる範囲は、例えば、リーダ5を中心とした半径約2m程度である。この範囲は、図1においてタグ検出範囲6として示されている。
【0022】
また、リーダ5は、このリーダ5に接近する人物2を検出するための人感センサを備えている。この人感センサは、例えば、赤外線センサや秤装置等を利用している。人感センサにより人物2を検出できる範囲は、リーダ5の前面側に略台形状、略三角形状又は略扇形状に広がっている。この範囲は、図1において人感センサ検出範囲7として示されている。図1からもわかるように、人感センサ検出範囲7は、リーダ5の前面側(すなわち、リーダ5に対してファンクション操作を行おうとする人物2が接近してくる側)においてタグ検出範囲6と同等又はタグ検出範囲6より広い(検出距離が長い)範囲となるように設定されている。従って、ファンクション操作をするためにリーダ5へと接近する人物2(ファンクション操作者)は、まず、人感センサ検出範囲7内に入り、その後にタグ検出範囲6内へと入ることになる。
【0023】
換言すると、ファンクション操作をしようとする人物2(ファンクション操作者)が、リーダ5へと接近すると、まず、人感センサ検出範囲7に入ることで、リーダ5の備える人感センサによりこの人物2が検出される。そして、人感センサにより人物2が検出された後に、この人物2がタグ検出範囲6に入ることで、リーダ5によりこの人物2が携行するスマートタグ4の有する情報を読み取ることができるようになる。すなわち、まず、人物2が検出され、次に、スマートタグ4が検出されるという検出順序である。
【0024】
図2は、入退室管理システムの全体構成を示すブロック図である。
リーダ5は、人感センサ8、受信部9、タグ情報記憶部10、認証部11、電気錠制御部12、ファンクション操作部13、ファンクション処理部14及び履歴記憶部15を備えている。なお、これらの全てをリーダ5に設ける必要はない。すなわち、少なくとも、人感センサ8、受信部9及びファンクション操作部13はリーダ5に備えることが好ましいものの、他の構成要素については、別の箇所に設けるようにしてもよい。例としては、タグ情報記憶部10や履歴記憶部15等をリーダ5と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等に設けるようにすることもできる。
【0025】
人感センサ8は、人感センサ検出範囲7内に入った人物2を検出するものである。人物2を検出した人感センサ8は、人物検出信号を受信部9へと出力する。受信部9は、スマートタグ4から送信される認証情報を受信する(読み取る)ものである。このスマートタグ4の認証情報の読み取りは、人感センサ8により人物2が検出され人物検出信号が出力されているときのみ行われる。スマートタグ4の有する認証情報を読み取った受信部9は、この読み取った認証情報を認証部11へと出力する。
【0026】
また、人感センサ8からの人物検出信号を受けた受信部9は、この人物検出信号を受けてから所定の一定時間であるファンクション操作優先時間が経過するまでの間は、スマートタグ4から送信される認証情報の読み取りを行わない。そして、人物検出信号を受けてからファンクション操作優先時間が経過すると、受信部9は、スマートタグ4から送信される認証情報を読み取るようになる。このファンクション操作優先時間は、概ね数秒程度に設定する。
【0027】
タグ情報記憶部10には、扉3の解錠を許可するとして登録されたスマートタグ4の認証情報が予め記憶されている。認証部11は、受信部9により読み取られたスマートタグ4の認証情報とタグ情報記憶部10に記憶された登録タグの認証情報とを照合することにより認証を行うものである。この認証部11による認証結果は、電気錠制御部12、ファンクション処理部14及び履歴記憶部15へと出力される。
【0028】
電気錠制御部12は、扉3に設けられた電気錠の施解錠動作を制御するものである。この電気錠制御部12は、認証部11による認証結果に基づいて電気錠の施解錠動作を制御する。具体的に、例えば、認証部11から認証成功の旨の信号を受信した電気錠制御部12は、扉3の電気錠へと解錠許可信号を出力して解錠させる。そして、扉3が開閉されて一定時間が経過すると、扉3の電気錠を施錠させる。また、認証部11から認証失敗の旨の信号を受信した電気錠制御部12は、扉3の電気錠が施錠された状態を維持させる。この電気錠制御部12による扉3の電気錠の施解錠動作の制御状況は、電気錠制御部12から履歴記憶部15へと出力される。
【0029】
ファンクション操作部13は、リーダ5に設けられた例えばボタンやスイッチ等からなる。このファンクション操作部13は、人物2(ファンクション操作者)がファンクション操作を行うためのものである。このファンクション操作部13に対してなされた操作に関する情報は、ファンクション処理部14へと出力される。
【0030】
ファンクション処理部14は、ファンクション操作部13に対して行われたファンクション操作に応じて、所定のファンクション処理を行うためのものである。このファンクション処理部14は、ファンクション操作部13から出力されたファンクション操作部13に対してなされた操作に関する情報に基づいて、所定のファンクション処理を実行する。この際、このファンクション処理の実行には、前述のように、操作者が携行するスマートタグ4の認証情報に基づく認証が成功していることが必要である。従って、ファンクション処理部14は、ファンクション操作部13からの操作情報を受け取った場合に、認証部11による認証結果を認証部11から取得して、この認証結果が成功であった場合に、ファンクション処理を実行する。このファンクション処理部14によるファンクション処理の実行状況は、ファンクション処理部14から履歴記憶部15へと出力される。
【0031】
履歴記憶部15は、スマートタグ4から読み取った情報に基づく認証、電気錠の施解錠動作の状況やファンクション操作の履歴を記憶するものである。具体的には、認証部11から出力される認証結果、電気錠制御部12から出力される電気錠の施解錠動作の制御状況、及び、ファンクション処理部14から出力されるファンクション処理の実行状況が、履歴として記憶される。
【0032】
この実施の形態にあっては、入退室管理システムは、図3に示す一連のフローに従って動作する。
まず、ステップS1において、リーダ5の受信部9は、人感センサ8が人物2を検知して人物検出信号を出力したか否かについて確認する。このステップS1において、人感センサ8から人物検出信号が出力されていないことが確認された場合には、ステップS9へと移行して一連の動作フローは終了する。
【0033】
一方、ステップS1において、人感センサ8から人物検出信号が出力されていることが確認された場合には、受信部9は、この人物検出信号の出力開始を確認した時点からの経過時間を計測し始める。そして、ステップS2へと進み、リーダ5のファンクション処理部14は、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされていないか否かについて確認する。このステップS2において、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされていないことが確認された場合には、ステップS3へと移る。
【0034】
このステップS3においては、リーダ5の受信部9は、人感センサ8により人物2が検知され人物検出信号が出力されてから、所定の一定時間であるファンクション操作優先時間が経過したか否かについて確認を行う。この確認において、人物検知後ファンクション操作優先時間が経過していない場合には、ステップS2へと戻る。一方、このステップ3の確認において、ファンクション操作優先時間が経過したことが確認された場合には、ステップS5へと進む。そして、このステップS5においては、リーダ5の受信部9は、タグ検出範囲6内にあるスマートタグ4から送信される認証情報の読み取りを行う。
【0035】
一方、ステップS2において、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされたことが確認された場合には、ステップS4へと移る。このステップS4においては、ファンクション処理部14は、ステップS2において確認したファンクション操作部13に対して行われた操作内容に対応する所定のファンクション処理を行う。そして、この後は、直接にステップS5へと進み、人物検知後ファンクション操作優先時間が経過したか否かに関わらず、リーダ5の受信部9は、タグ検出範囲6内にあるスマートタグ4から送信される認証情報の読み取りを行う。
【0036】
ステップS5で、スマートタグ4から認証情報を読み出した後は、ステップS6へと移行する。このステップS6において、リーダ5の認証部11は、先のステップS5で読み出したスマートタグ4の認証情報に基づいて認証を行う。この認証は、読み出したスマートタグ4の認証情報とタグ情報記憶部10に記憶された登録タグの認証情報とを照合することにより行われる。そして、この認証の結果が成功(OK)であるか失敗(NG)であるかの判定を行う。このステップS6の判定の結果、認証OKであった場合にはステップS7へと進む。このステップS7においては、リーダ5の電気錠制御部12は、扉3の電気錠へと解錠許可信号を出力する。この解錠許可信号を受けた電気錠は解錠され、扉3を開くことが可能となる。
【0037】
ステップS7の後は、ステップS8へと移る。このステップS8においては、リーダ5の履歴記憶部15は、先のステップS4におけるファンクション処理、ステップS6において判定された認証結果(OK)、及び、ステップS7における電気錠の解錠動作について、履歴データを蓄積する。
【0038】
一方、ステップS6における判定の結果、認証NGであった場合にはステップS7を飛ばしてステップS8へと移行する。このステップS8においては、リーダ5の履歴記憶部15により履歴データが蓄積される。この場合(認証NG)においては、先のステップS4におけるファンクション処理、及び、ステップS6において判定された認証結果(NG)について履歴データが蓄積される。
そして、ステップS8の後は、ステップS9へと進み、一連の動作フローは終了する。
【0039】
以上のように構成された入退室管理システムは、タグ検出範囲6より広い(リーダ5に対して人物2が接近してくる側において検出距離が長い)検出範囲である人感センサ検出範囲7を有する人感センサ8によりリーダ5へと接近する人物2が検出されてから、ファンクション操作優先時間が経過するまでの間は、タグ検出範囲6内にスマートタグ4が入ってもこのスマートタグ4の情報の読み取りを行わないようにして、ファンクション操作の受け付けを優先するものである。
【0040】
すなわち、この入退室管理システムにおいては、スマートタグ4の検出より先に人感センサ8が人感センサ検出範囲7内の人物2を検出した場合には、人物2検出後ファンクション操作優先時間が経過するまでスマートタグ4の情報の読み取りが行われない。そして、スマートタグ4の検出より先に人感センサ8が人物2を検出した後ファンクション操作優先時間が経過するか、又は、人感センサ8が人物2を検出する前にスマートタグ4がタグ検出範囲6内において検出された場合に、スマートタグ4の情報読み取りが行われる。
【0041】
従って、ここでは、人感センサ検出範囲7を、タグ検出範囲6よりリーダ5に対して人物2が接近してくる側において検出距離が長い(又は同等の)範囲を持つものとしているが、これらの検出範囲の配置に関わらず、リーダ5において人物2とスマートタグ4のどちらが先に検出されたのか、という検出順序によりファンクション操作優先時間を設けるか否かの制御を行うようにしてもよい。なお、この場合、人物2とスマートタグ4が同時に検出された際には、人物2の検出を優先してファンクション操作優先時間を設けるようにすることが好ましい。
【0042】
本願に係る入退室管理システムはこのように構成されているため、このファンクション操作優先時間内においては、ファンクション操作を行う前にスマートタグ4の読み取りが行われてしまうことを防ぐことができる。従って、ファンクション操作の前に人物2がリーダ5に接近した際のスマートタグ4の読み取りによる不要な履歴が意図せずに記録されてしまうことがない。また、このため、記憶された履歴と実際の入退室状態との不整合の発生を未然に防止することができるとともに、限られた履歴記憶領域を有効に活用することが可能である。
【0043】
なお、当該入退室管理システム(セキュリティシステム)の動作モードが、次にファンクション操作が行われることが明確であるモードである場合のみ、人感センサ8による人物2検知後のファンクション操作優先時間を設定するようにしてもよい。この場合、次にファンクション操作が行われることが明確である動作モードでない場合には、ファンクション操作優先時間を設定しない。従って、スマートタグ4がタグ検出範囲6に入ると、タイムラグを生じることなく即座に読み取りを行うことができる。
【0044】
ここで、先に述べた次にファンクション操作が行われることが明確である動作モードとは、換言すれば、ファンクション操作により動作モードを現在のモードから他のモードへと切り換えない限り、スマートタグ4による認証やこの認証に基づく扉3の電気錠の解錠等を行わない動作モードである。このような動作モードとしては、例えば、前述したセキュリティシステムの警備モードがある。この警備モードにおいては、ファンクション操作により当該警備モードを解除しなければ、通常の認証等の処理を行うことができない。また、別の例としては、出勤や退社の時間帯において、出退勤の記録のみを行う動作モードも挙げられる。
【0045】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係るものである。前述した実施の形態1は、タグ検出範囲より広い人感センサ検出範囲を有する人感センサによりリーダへと接近する人物が検出されてから、ファンクション操作優先時間が経過するまでの間は、タグ検出範囲内にスマートタグが入ってもこのスマートタグの情報の読み取りを行わないようにして、ファンクション操作の受け付けを優先するものであった。これに対し、ここで説明する実施の形態2は、人感センサを設けることなく、スマートタグがタグ検出範囲内に入ったことが検出されてから所定の一定時間の間は、ファンクション操作が行われない限り、スマートタグから読み取った情報に基づく認証結果の履歴データは破棄し、当該履歴データを履歴記憶部に蓄積しないようにしたものである。
【0046】
すなわち、この実施の形態においては、リーダ5に人感センサ8は設けられていない。よって、実施の形態1の図1において示されていたような人感センサ検出範囲7も形成されていない。従って、ファンクション操作を行うためにリーダ5へと接近する人物2(ファンクション操作者)は、まず、タグ検出範囲6内に入ることになる。そして、このファンクション操作者が携行するスマートタグ4がタグ検出範囲6内に入り、リーダ5の受信部9によりこのスマートタグ4が検出される。その後、ファンクション操作者は、リーダ5のファンクション操作部13においてファンクション操作を行うことになる。
【0047】
履歴記憶部15は、受信部9によりスマートタグ4がタグ検出範囲6内に入ったことが検出されてから、所定の一定時間であるファンクション操作優先時間が経過するまでの間は、スマートタグ4から読み取った情報に基づく認証結果や電気錠制御部12による電気錠の施解錠動作の制御状況の履歴の蓄積を行わず、これらの履歴データを破棄する。そして、スマートタグ4が検出されてからファンクション操作優先時間が経過すると、履歴記憶部15は、履歴データの蓄積を行うようになる。このファンクション操作優先時間は、概ね数秒程度に設定する。
なお、他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
【0048】
この実施の形態にあっては、入退室管理システムは、図4に示す一連のフローに従って動作する。
まず、ステップS11において、リーダ5のファンクション処理部14は、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされていないか否かについて確認する。このステップS11において、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされたことが確認された場合には、ステップS12へと移る。このステップS12においては、ファンクション処理部14は、ステップS11において確認したファンクション操作部13に対して行われた操作内容に対応する所定のファンクション処理を行う。そして、この後は、ステップS13へと進む。
【0049】
一方、ステップS11において、ファンクション操作部13に対してファンクション操作がなされていないことが確認された場合には、ステップS12を経ずに、直接ステップS13へと進む。このステップS13においては、リーダ5の受信部9は、タグ検出範囲6内にあるスマートタグ4から送信される認証情報の読み取りを行う。なお、前述したように、ファンクション操作者である人物2がリーダ5のファンクション操作部13において操作する前に、この人物2が携行するスマートタグ4はタグ検出範囲6内へと入っている。スマートタグ4がタグ検出範囲6内に入ったことは、受信部9により検出される。そして、リーダ5は、タグ検出範囲6内にスマートタグ4が入ったことが検出された時点からの経過時間を計測し始めている。
【0050】
ステップS13でスマートタグ4から認証情報を読み出した後は、ステップS14へと進む。このステップS14においては、リーダ5の認証部11は、先のステップS13で読み出したスマートタグ4の認証情報に基づいて認証を行う。この認証は、読み出したスマートタグ4の認証情報とタグ情報記憶部10に記憶された登録タグの認証情報とを照合することにより行われる。そして、この認証の結果が成功(OK)であるか失敗(NG)であるかの判定を行う。
【0051】
このステップS14の判定の結果、認証OKであった場合にはステップS15へと進む。このステップS15においては、リーダ5の電気錠制御部12は、扉3の電気錠へと解錠許可信号を出力する。この解錠許可信号を受けた電気錠は解錠され、扉3を開くことが可能となる。そして、この後、ステップS16へと進む。一方、ステップS14の判定の結果、認証NGであった場合には、ステップS15を飛ばしてステップS16へと進む。
【0052】
ステップS16においては、リーダ5の履歴記憶部15は、ファンクション操作なし(ステップS11でNoとなりステップS12を経由していない)であって、かつ、現在ファンクション操作優先時間中である(スマートタグ4が検出された時点からの経過時間がファンクション操作優先時間より短い)か否かについて確認を行う。そして、このステップS16において、ファンクション操作なし、かつ、ファンクション操作優先時間中であることが確認された場合には、ステップS17へと進む。
【0053】
このステップS17においては、リーダ5の履歴記憶部15は、先のステップS14における認証結果やステップS15における電気錠に対する信号出力等の履歴データは破棄され、履歴記憶部15にこれらの履歴データは蓄積されない。そして、ステップS19へと至り一連の動作フローは終了する。
【0054】
一方、ステップS16において、ファンクション操作あり、又は、ファンクション操作優先時間中でないことが確認された場合には、ステップS18へと進む。このステップS18においては、リーダ5の履歴記憶部15は、先のステップS12におけるファンクション処理、ステップS14における認証結果やステップS15における電気錠に対する信号出力等の履歴データを蓄積する。そして、ステップS19へと至り一連の動作フローは終了する。
【0055】
以上のように構成された入退室管理システムは、タグ検出範囲6内にスマートタグ4が入ったことが検出されてからファンクション操作優先時間が経過するまでの間は、ファンクション操作が行われない限り、履歴データの蓄積を行わない。従って、ファンクション操作の前に人物2がリーダ5に接近した際のスマートタグ4の読み取りによる不要な履歴が意図せずに記録されてしまうことがない。また、このため、限られた履歴記憶領域を有効に活用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 区画
2 人物
3 扉
4 スマートタグ
5 リーダ
6 タグ検出範囲
7 人感センサ検出範囲
8 人感センサ
9 受信部
10 タグ情報記憶部
11 認証部
12 電気錠制御部
13 ファンクション操作部
14 ファンクション処理部
15 履歴記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の認証情報が予め記憶された無線タグと、
タグ検出範囲内の前記無線タグを検出して前記認証情報を読み取り、この読み取った前記認証情報に基づいて認証を行うリーダと、を具備し、
人物により前記リーダに対してなされた所定のファンクション操作に応じて、所定のファンクション処理を行う入退室管理システムであって、
少なくとも前記認証の結果及び前記ファンクション処理の履歴を記憶する履歴記憶手段と、
人感センサ検出範囲内の前記人物を検出する人感センサと、を備え、
前記リーダは、前記無線タグを検出する前に前記人感センサが前記人物を検出した場合、前記人物を検出してから所定の一定時間の間、前記無線タグの前記認証情報の読み取りを行わないことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
前記リーダは、前記無線タグの検出と前記人感センサによる前記人物の検出が同時であった場合に、前記人物の検出を優先して前記人物を検出してから前記所定の一定時間の間、前記無線タグの前記認証情報の読み取りを行わないことを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記人感センサ検出範囲は、前記リーダに対して前記人物が接近してくる側において前記タグ検出範囲より検出距離が長いことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項4】
前記リーダは、前記ファンクション操作が行われた場合には、前記人感センサが前記人物を検出してから前記所定の一定時間の間であっても前記無線タグの前記認証情報の読み取りを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項5】
前記リーダは、当該入退室管理システムが次に前記ファンクション操作が行われることが明確である状態である場合のみ、前記人感センサが前記人物を検出してから所定の一定時間の間、前記無線タグの前記認証情報の読み取りを行わないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項6】
固有の認証情報が予め記憶された無線タグと、
タグ検出範囲内の前記無線タグを検出して前記認証情報を読み取り、この読み取った前記認証情報に基づいて認証を行うリーダと、を具備し、
人物により前記リーダに対してなされた所定のファンクション操作に応じて、所定のファンクション処理を行う入退室管理システムであって、
少なくとも前記認証の結果及び前記ファンクション処理の履歴を記憶する履歴記憶手段を備え、
前記履歴記憶手段は、前記リーダが前記タグ検出範囲内の前記無線タグを検出してから所定の一定時間の間、前記認証の結果の履歴の記憶を行わないことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項7】
前記履歴記憶手段は、前記ファンクション操作が行われた場合には、前記リーダが前記タグ検出範囲内の前記無線タグを検出してから前記所定の一定時間の間であっても前記認証の結果の履歴の記憶を行うことを特徴とする請求項6に記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252365(P2011−252365A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128571(P2010−128571)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】