説明

内燃機関のアイドル制御装置

【課題】内燃機関のアイドル制御装置において、氷点下となる寒冷時であって始動直後のアイドル回転数を安定化すること、回転数フィードバック制御のハンチングの発生を抑制及び早期に解消すること、回転数の変動発生によって乗員に与える不快感を低減することにある。
【解決手段】制御手段(20)は、始動時水温が予め暖機判定とは別に設けた設定値(ST2)よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしておらず、且つ内燃機関(1)の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量少ない判定回転数以上で、且つ発電量が所定値以上である場合が所定時間継続する際に、電気負荷に基づいて算出する目標回転数として初期目標回転数(Ntgel)を所定量ずつ増加更新して予め設定した上限目標回転数(MX)まで増加可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のアイドル制御装置に係り、始動直後の暖機中におけるアイドル回転数を制御する内燃機関のアイドル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関においては、内燃機関の水温、回転数、電気負荷を含む運転状態を検出する各検出手段を備え、この各検出手段により検出された運転状態に基づいて目標回転数と一致するように吸入空気量を変更する回転数フィードバック制御を行うアイドル制御装置を設けているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3254262号公報
【特許文献2】特開2003−336532号公報
【0004】
特許文献1に係るエンジンのアイドル回転数制御装置は、アイドル運転時に電気負荷が急増したときに、その急増の大きさに応じて最適な速度でアイドル空気量を制御するものである。
特許文献2に係る内燃機関の空気量制御装置は、オルタネータ負荷トルクに応じて内燃機関への吸入空気量を補正するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、内燃機関のアイドル制御装置において、目標回転数の設定にあっては、図9に示すように、内燃機関の冷却水温度である水温から回転数を算出し、また、発電機(オルタネータ)の発電量から電気負荷を推定してこの電気負荷に対応する回転数を算出し、そして、この算出された回転数の大きい方の値を最終的な目標回転数として設定している。例えば、水温(80℃)により算出された回転数が900rpmで、電気負荷により算出された回転数が1100rpmの場合に、アイドル運転時の目標回転数は、大きい方の値を選択するため、1100rpmとなる。なお、同様に、他のパラメータに基づく目標回転数がこの他にある場合でも、回転数の大きい方の値を目標回転数として選択している。
また、上記の目標回転数の設定にあっては、電気負荷やシフトレンジ状態を考慮し、図10に示すように、エアコン(A/C)スイッチがオン又はシフトレンジスイッチがNレンジの場合に、目標回転数(N1)を設定する一方、それ以外の条件下では、他の目標回転数(N2)を設定している。
【0006】
図11に示すように、燃費対応を考慮して発電機の発電量(仕事量)の見合った目標回転数を設定するために、回転数フィードバック(F/B)時において、内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量(α)少ない判定回転数(Ntgel−α)以上で、且つ発電量(Dfr:デューティ値)が所定値(β)以上である場合が、所定時間(T2)継続する際には、優先順位1として、初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd1)だけ増加した回転数の値と予め所定値に設定された下限目標回転数(MN)との小さい方(min)を選択して、目標回転数を設定する。
また、内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)に所定量(γ)を加算した判定回転数(Ntgel+γ)未満で、且つ発電量(Dfr)が所定値(δ)未満である場合が、所定時間(T2)継続する際には、優先順位2として、初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd2)だけ減少した回転数の値と予め所定値に設定された上限目標回転数(MX)との大きい方(max)を選択して、目標回転数を設定する。そして、上記以外の条件の下では、優先順位3として、初期目標回転数(Ntgel)と上限目標回転数(MX)との大きい方(Max)を選択して、目標回転数を設定する。
【0007】
しかしながら、サーモスタットが閉まった状態でラジエータに冷却水が流れていない場合に、水温だけでは内燃機関が暖機完了判定条件であるのかどうかを判断ができないおそれがあり、この場合、回転数の不安定化の要因として、吸気系が冷えているため、噴射燃料の霧化が悪くなって燃焼が安定しない不具合がある。
また、バッテリの温度が0℃以上であれば、バッテリヘ常に充電をしているため、発電機には常に一定の負荷がかかっている状態である。しかし、ヘッドライトやワイパー、ターンシグナル等の電気負荷の変化が直接発電特性に影響を与えるために、トルクに変化が起きる。そして、バッテリの温度が0℃以下(氷点下)の条件下では、発電特性の変化が短い時間(周期)に起こる現象が現れるため、所定時間内において所定量の発電量を計測することができず、目標回転数を上昇設定することができなかった。
【0008】
上述したように、電気負荷による回転数の上昇の判断ができない場合には、図12に示すように、水温により算出される目標回転数となる。しかしながら、水温から算出される回転数では、発電機の発電状態を示すFR端子の値であるFR値が99%(最大)で目標回転数が上昇しないが(図12において、G1(時間t2)、G2(時間t4)、G3(時間t6)で示す)、発電特性の変化に対応できないときには、発電機の負荷が抜けた箇所で(図12において、S1(時間t1)、S2(時間t3)、S3(時間t5)、S4(時間t7)で示す)、回転数のハンチングが発生する。そして、発電機の負荷としてFR値が80〜100%で変動しているが、この変動している周期が短いために、現状の制御では、発電機の負荷が大きいと判断せず、よって、目標回転数を上昇させることができなく、回転数が上昇しないために、回転数のハンチングが収まらない現象が生ずるという不都合があった。
【0009】
また、寒冷地(氷点下での環境条件)の場合にあっては、内燃機関を始動後、即車両の走行を開始し、この車両の走行後で、サーモスタットが開動作していなく、内燃機関の冷却水温度である水温が暖気完了判定の設定された設定水温に達している条件下では、アイドル回転数が安定し難いものである。
このように、アイドル回転数が安定しない理由としては、水温だけ暖気完了の判断をしているが、エンジンルーム内は外気温と略同値である点、エンジンルーム内の温度が上昇していないため、バッテリが温まりにくい点、バッテリが氷点下の条件下では充電ができないために電流が流れない点、寒冷地にて市街地での使用が主な車両ではバッテリが氷点下の条件下では充電ができないためにバッテリが弱り気味となる点、電流が流れないことでバッテリ本体の温度が上がりにくい点等の各要因によって、寒冷地では、バッテリヘの電力供給が無い(充電できない)ため、電気負荷(ヘッドライト、ブロア等)の変化を直接発電機が補うため、発電機の出力特性が急変することによって、暖機判定の完了時のアイドル回転数(燃費への影響を考え低いアイドル回転数を設定)では不安定となり、また、アイドル回転数が安定しないことで、運転者に不快感を与えるという不都合があった。つまり、電気負荷(ヘッドライト、エアコン(A/C)によるブロア等)が増加することで、発電機の発電による負荷が増加し、この負荷の増加に対応して、発電機による発電量を確保するために、回転数を上昇させるが、水温のみで暖機状態を推定し、目標回転数を設定しているので、寒冷地のような環境下では、設定された目標回転数では内燃機関の回転数が不足してしまうという不都合がある。
【0010】
更に、上記の特許文献1、2では、電気負荷の増大に伴って吸入空気量を増加することを開示しているが、余剰電力をバッテリに充電できない状態や、電気負荷が大きいと判断されない状態を考慮しておらず、アイドル回転数が安定せず、また、アイドル空気量の制御が不十分であり、改善が望まれていた。
【0011】
そこで、この発明の目的は、氷点下となる寒冷時であって始動直後のアイドル回転数を安定化すること、回転数フィードバック制御のハンチングの発生を抑制及び早期に解消すること、回転数の変動発生によって乗員に与える不快感を低減することができる内燃機関のアイドル制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、内燃機関の水温、回転数、電気負荷を含む運転状態を検出する各検出手段を設け、この各検出手段により検出された運転状態に基づいて一つ以上の目標回転数を算出し且つ最終的に―つの目標回転数を設定して前記内燃機関の回転数が前記最終的な目標回転数と一致するように吸入空気量を変更する回転数フィードバック制御を行う制御手段を設けた内燃機関のアイドル制御装置において、前記内燃機関にかかる電気負荷に相当する発電量を検出する発電量検出手段を設け、前記制御手段は、始動時水温又は所定の運転後の水温に基づいて前記内燃機関の暖機完了を判定する一方、始動時水温が予め暖機判定とは別に設けた設定値より高く、且つ暖機完了判定を満たしておらず、且つ前記内燃機関の回転数が初期目標回転数から所定量少ない判定回転数以上で、且つ発電量が所定値以上である場合が所定時間継続する際に、電気負荷に基づいて算出する目標回転数として初期目標回転数を所定量ずつ増加更新して予め設定した上限目標回転数まで増加可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の内燃機関のアイドル制御装置は、氷点下となる寒冷時であって始動直後のアイドル回転数を安定化させることができ、回転数フィードバック制御のハンチングの発生を抑制ないし早期に解消することができ、しかも、回転数の変動発生によって乗員に与える不快感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1はアイドル制御装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図2】図2はアイドル制御装置のブロック図である。(実施例1)
【図3】図3は暖機完了判定の成立・不成立の一の例を示す説明図である。(実施例1)
【図4】図4は暖機完了判定の成立・不成立の他の例を示す説明図である。(実施例1)
【図5】図5は最低目標回転数を含む各目標回転数の設定を示す説明図である。(実施例1)
【図6】図6は燃費対応を考慮して発電機の電気負荷の発電量(仕事量)に見合った回転数を設定する場合であって、初期目標回転数を所定量ずつ増加更新して予め設定した上限目標回転数まで増加可能とする場合の各回転数を設定する説明図である。(実施例2)
【図7】図7は特定の電気負荷用スイッチを備えたアイドル制御装置のブロック図である。(実施例2の変形例)
【図8】図8はパータベーションを禁止するように判定する場合の説明図である。(実施例3)
【図9】図9は従来の目標回転数を設定する説明図である。(従来例)
【図10】図10は従来で電気負荷等により目標回転数を設定する説明図である。(従来例)
【図11】図11は従来で燃費対応を考慮して発電機の電気負荷の発電量(仕事量)に見合った目標回転数を設定する説明図である。(従来例)
【図12】図12は従来で回転数のハンチングの発生状態を示すタイムチャートである。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明は、氷点下となる寒冷時であって始動直後のアイドル回転数を安定化すること、回転数フィードバック制御のハンチングの発生を抑制ないし早期に解消すること、回転数の変動発生によって乗員に与える不快感を低減することの目的を、電気負荷の影響が顕著に現れる寒冷時の暖機中に、ある程度長時間にわたる大きな電気負荷がない場合でも、電気負荷に応じて目標回転数を設定して実現するものである。
【実施例1】
【0016】
図1〜図5は、この発明の実施例1を示すものであって、請求項4に係る発明である。
図1において、1は車両に搭載される内燃機関、2はこの内燃機関1に連結された駆動系(変速機)である。この内燃機関1には、吸気系で、吸気通路3を形成する吸気マニホルド4の下流端部が連結しているとともに、排気系で、排気通路5を形成する排気マニホルド6の上流端部が連結している 吸気マニホルド4の上流端部には、スロットルバルブ7を備えたスロットルボディ8を介して吸気管9の下流端部が連結している。この吸気管9の上流端部には、エアクリーナ10が連結している。
また、内燃機関1には、発電機(オルタネータ)11が付設されているとともに、インレットパイプ12及びアウトレットパルプ13を介して冷却水を冷却するラジエータ14が付設され、また、インレットパイプ12の手前の箇所でラジエータ14への冷却水流量を調整するように開閉動作するサーモスタット15が設けられている。
また、内燃機関1には、アイドル制御装置16が設けられる。
このアイドル制御装置16は、スロットルバルブ7を迂回して吸気通路3に連通するバイパス通路17を形成するパイパス空気管18と、このパイパス空気管18の途中に設けられたアイドル空気量制御弁(ISCバルブ)19と、このアイドル空気量制御弁19に連絡した制御手段20を備え、アイドル運転時の内燃機関1への空気量を制御する。
【0017】
図2に示すように、制御手段20には、入力側で、内燃機関1の水温、回転数、電気負荷を含む運転状態を検出する各検出手段として、イグニションスイッチ21と、内燃機関1の回転数(Ne)を検出可能なクランク角検出手段22と、スロットル開度を検出するスロットル検出手段23と、内燃機関1の冷却水温度である水温を検出する水温検出手段24と、吸入空気の温度である吸気温を検出する吸気温検出手段25と、スモールランプ等の電気負荷を検出する電気負荷検出手段26と、空調装置(エアコン:A/C)をオン・オフするエアコンスイッチ27と、駆動系(変速機)2のレンジを検出するシフトレンジスイッチ28とが連絡している。
また、制御手段20には、出力側で、燃料噴射弁29と、イグニションコイル30と、アイドル空気量制御弁19と、エアコンコンプレッサクラッチ31と、自動変速機用コントローラ32とが接続している。
制御手段20は、燃料噴射制御部33と、点火時期制御部34と、アイドル空気量制御部35と、エアコン制御部36と、自動変速機制御信号部37と、電気負荷演算部38と、回転数設定部39と、暖機完了判定部40とを備えている。
【0018】
制御手段20は、上記の各検出手段により検出された運転状態に基づいて一つ以上の目標回転数を算出し且つ最終的に―つの目標回転数を設定して内燃機関1の回転数が最終的な目標回転数と一致するように吸入空気量を変更する回転数フィードバック制御を行うものである。ここで、上記の内燃機関1の回転数及び目標回転数は、単位当たりの回転数であって、回転速度と同義である。
【0019】
制御手段20では、内燃機関1の暖機完了判定を実施する。
この暖機完了判定とは、水温が一定温度(暖機完了判定に用いられる設定値)(例えば、90℃)に達し、一定時間が経過してサーモスタット15が開動作し、ラジエータ14まで冷却水が回った状態である。
具体的には、この暖機完了判定は、図3に示すように、優先順位1として、始動時水温≧設定値ST1(℃)の条件、又は停止モードを抜けて一度でも水温(WT)が、WT≧設定値TH1(℃)になってから一定時間T1(sec)以上経過した時の条件のいずれか1つの条件を満たしたときに成立されるが、それ以外の条件下では、優先順位2として、不成立とされる。
あるいは、図4に示すように、この暖機完了判定は、優先順位1として、始動時水温≧設定値ST1(℃)の条件、又は、停止モードを抜けて一度でも水温(WT)が、WT≧設定値TH1(℃)になってから一定時間T1(sec)以上経過した時の条件、又は、吸気温(AT)が、AT≧設定値TA1(℃)の条件のいずれか1つの条件を満たしたときに成立されるが、それ以外の条件下では、優先順位2として、不成立とされる。
【0020】
そして、この実施例1において、図5に示すように、制御手段20は、始動時水温又は所定の運転後の水温に基づいて内燃機関1の暖機完了を判定する一方、始動時水温が予め暖機判定での設定値(ST1)とは別に設けた設定値(ST2)よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしていない場合に(暖機完了判定不成立時)、電気負荷に基づく内燃機関1の最低目標回転数(NLow)を設定し、これを優先順位1とする。
また、制御手段20は、優先順位2として、エアコンスイッチ27がオン又はシフトレンジスイッチ28がNレンジの場合に、最低目標回転数(NLow)よりも高い第1の目標回転数(N1)を設定し、一方で、それ以外の条件下では、優先順位3として、第1の目標回転数(N1)よりも高い第2の目標回転数(N2)を設定する。上記の第1の目標回転数(N1)及び第2の目標回転数(N2)は、従来のものと同一である。
このように、この実施例1では、従来の第1の目標回転数(N1)よりも低い最低目標回転数(NLow)を新たに設定することにより、内燃機関1の回転数が急激に落ち込むことがなく、それに起因する運転者の不快感を低減できる。
そして、制御手段20は、請求項5に係る発明に関連して、水温に基づいて目標回転数を算出し、この水温に基づいて算出した目標回転数と電気負荷に基づいて算出した目標回転数とを含む複数の目標回転数から相互比較して、内燃機関1の最終的な目標回転数を選定する。
これにより、内燃機関1の運転状態に応じたさらに最適な目標回転数を設定でき、アイドル回転数を安定させることができる。つまり、最終的な目標回転数を、制御サイクル毎に、算出された複数の目標回転数の候補の中から選択して設定し、そして、より高い回転数となる目標回転数を選択することであって、水温から算出した目標回転数と電気負荷から算出した最低目標回転数(NLow)とから選択して最終目標回転数を決定する。
この結果、この実施例1では、上記の始動時水温、暖機完了判定等についてモニターをすることで、例えば、特定条件下(寒冷地)であることを判断して、目標回転数を発電機11の負荷に見合った目標回転数に設定し、アイドル空気量制御弁19を作動して内燃機関1へのアイドル空気量を制御することで、内燃機関1の回転数を上昇させてアイドル回転数の安定化を図ることができる。
【実施例2】
【0021】
図6は、この発明の実施例2を示すものである。
以下の実施例においては、上述の実施例1と同一機能を果たす箇所には同一符号を付して説明する。
この実施例2の特徴とするところは、請求項1に係る発明であって、以下の点にある。 図6に示すように、制御手段20は、始動時水温又は所定の運転後の水温に基づいて内燃機関1の暖機完了を判定する一方、始動時水温が予め暖機判定での設定値(ST1)とは別に設けた設定値(ST2)よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしておらず(暖機完了判定不成立時)、且つ内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量(α)少ない判定回転数(Ntgel−α)以上で、且つ発電量(Dfr)が所定値(β)以上である場合が、所定時間(T2)継続する際に、電気負荷に基づいて算出する目標回転数として初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd0.5、Nadd1…)ずつ増加更新して予め設定した上限目標回転数(NX)まで増加可能とする。
【0022】
即ち、制御手段20は、回転数フィードバック(F/B)時において、始動時水温が予め暖機判定での設定値(ST1)とは別に設けた設定値(ST2)よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしておらず(暖機完了判定不成立時)、且つ内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量(α)少ない判定回転数(Ntgel−α)以上で、且つ発電量(Dfr)が所定値(β)以上である場合が、所定時間(T2)継続する際に、優先順位0.5として、初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd0.5)だけ増加した回転数の値と予め所定値に設定される目標回転数(Mset)との小さい方(min)を選択して、目標回転数を設定する。
この優先順位0.5においては、先ず、始動時水温が予め暖機判定での設定値(ST1)とは別に設けた設定値(ST2)よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしていない(暖機完了判定不成立時)場合に始動時の環境条件を判定し、次いで、内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量(α)少ない判定回転数(Ntgel−α)以上か否かを判定することで、電気負荷よる算出する目標回転数に対して、ある一定の回転数の値を引いた回転数よりも、実回転数が低い場合に、発電機11の負荷に対して回転数が低く安定しない状態を判断し、さらに、発電量(Dfr)が所定値(β)以上である場合が所定時間(T2)継続して発電機11の負荷を算出するためにFR値を読み取り、そして、これらの条件で、低温環境化において、内燃機関1の回転数が安定している回転数よりも低い回転数なった時に、発電機11の負荷を割り出し、発電機11の負荷(仕事量)に見合った回転数に段階的に上げている。
【0023】
また、内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)から所定量(α)少ない判定回転数(Ntgel−α)以上で、且つ発電量(Dfr)が所定値(β)以上である場合が、所定時間(T2)継続する際には、優先順位1として、初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd1)だけ増加した回転数の値と予め所定値に設定された下限目標回転数(MN)との小さい方(min)を選択して、目標回転数を設定する。
更に、内燃機関1の回転数(Ne)が初期目標回転数(Ntgel)に所定量(γ)加算した判定回転数(Ntgel+γ)未満で、且つ発電量(Dfr)が所定値(δ)未満である場合が、所定時間(T2)継続する際には、優先順位2として、初期目標回転数(Ntgel)を所定量(Nadd2)だけ減少した回転数の値と予め所定値に設定された上限目標回転数(MX)との大きい方(max)を選択して、目標回転数を設定する。
そして、上記以外の条件の下では、優先順位3として、初期目標回転数(Ntgel)と上限目標回転数(MX)との大きい方(max)を選択して、目標回転数を設定する。
この実施例2では、最終的な目標回転数を、制御サイクル毎に、算出された複数の目標回転数候補の中から選択して設定し、そして、より高い回転数となる目標回転数を選択することであって、水温から算出した目標回転数と電気負荷から算出した目標回転数とから、選択して最終目標回転数を決定する。
【0024】
目標回転数は、制御サイクル毎に、初期目標回転数(Ntgel)から所定量(Nadd0.5)、所定量(Nadd1)、所定量(Nadd2)ずつ増加・減少するように更新される。例えば、優先順位0.5の条件が成立する間は、目標回転数を初期目標回転数(Ntgel)から所定量(Nadd0.5)ずつ増加し、この所定量(Nadd0.5)ずつ増加を繰り返した演算中の目標回転数が設定された目標回転数(Mset)を超えた時及びそれ以降は、目標回転数を設定された目標回転数(Mset)とする。これにより、激変緩和処理となる。この場合、目標回転数(Mset)は予め所定値に設定する目標回転数であり、下限目標回転数(MN)は目標回転数の下限ガード値であり、上限目標回転数(MX)は目標回転数の上限ガード値である。
そして、優先順位が同じ条件成立の下での制御が継続した場合には、これらの目標回転数(Mset)、下限目標回転数(MN)、上限目標回転数(MX)のいずれかに収斂することになる。そして、その条件が不成立となって優先順位がより低い条件に移れば、これらの目標回転数(Mset)、下限目標回転数(MN)、上限目標回転数(MX)のいずれかに収斂しないこともある。なお、目標回転数(Mset)の方を、下限目標回転数(MN)よりも高い回転数に設定することが望ましい。
この実施例2によれば、電気負荷の影響が顕著に現れる寒冷時の暖機中に、ある程度長時間にわたる大きな電気負荷がない場合でも、電気負荷に応じて目標回転数を設定でき、アイドル回転数の安定性を高めることができる。
また、徐々に目標回転数を増加するので実回転数が激変することがなく、回転数のハンチングを抑制し、アイドル回転数の安定性を高めることができる。更に、目標回転数の上限値を設定しているので、電気負荷の変動に伴う回転数の吹け上がりを防ぐことができ、しかも、必要以上に発電量を増やすこともない。
【0025】
また、この実施例2の変形例としては、請求項2に係る発明であって、制御手段20は、発電量が所定値以上あるとの判断を、発電機のFR値に相当する値の検出と、発電機11の回転数の検出と、電圧・電流値の検出と、特定の電気負荷用スイッチの動作選択に基づく動作検出とのうち、いずれかによって行う。
このため、図7に示すように、制御手段20には、発電機11の回転数を検出する発電機回転数検出手段41と、電圧・電流値を検出する電圧・電流検出手段42と、特定の電気負荷用スイッチとして、内燃機関1にかかる電気負荷に相当する発電量(仕事量)としての発電機11の発電状態を示すFR端子のFR値であってそのデューティ値Dfrを検出する発電量検出手段43とが連絡する。
これにより、制御手段20には発電機11の回転数や発電機11の発電状態を示すFR端子のFR値を直接入力し、そして、電気負荷が大きい状態を確実に検出し、電気負荷の大きさに応じて最適な目標回転数を設定できる。
【実施例3】
【0026】
図8は、この発明の実施例3を示すものである。
この実施例3の特徴とするところは、請求項3に係る発明であって、以下の点にある。 制御手段20は、暖機完了判定を満たしていない場合に(暖機完了判定不成立時)、内燃機関1の目標空然比を周期的に変動させるパータベーションを禁止するように判定し、このパータベーション禁止判定中に電気負荷に基づく内燃機関の目標回転数の算出を行う。
上記のパータベーションとは、内燃機関1の運転中の目標とする空燃比(A/F)を、一定ではなく、ある特定の幅を持たせて周期的に動かすことである。これにより、各検出手段等の部品の個体差から生じるズレをある程度見越すことができ、量産品で公差内にある検出手段で安定した排ガス性能を得られるようにしている。
この実施例3では、低温時における始動にて、吸気マニホルド4等の吸気系部品が冷えていること、燃料噴射において、機関摩擦が大きいために通常よりも増量して噴射していること、バッテリヘの充電が無い分、発電機11の負荷が軽く、吸気管絶対圧が低いことによる要因によって、燃料噴射弁29の先端に液滴が発生し、この液滴が燃料室内に落ちることで、リッチスパイクが発生する。このように、リッチスパイクが発生すると、空燃比(A/F)が急変するため、回転数の変動が生じ、運転者に不快感を与えることになる。
このため、MT車等の車両では、AT車に比べてアイドル運転時の吸気管絶対圧が低い車両に関して、図8に示すように、始動時水温の一定条件と、暖機完了判定の条件とで暖機完了が終了するまで(暖機完了判定成立)、空燃比(A/F)のパータベーションを禁止する。このパータベーション禁止の内容と、今回の目標回転数を冷機始動時のみ高く設定することを同時に行うことで、回転数のハンチングを抑制し、アイドル回転数の安定性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係るアイドル制御装置を、各種車両の内燃機関に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関
3 吸気通路
11 発電機
16 アイドル制御装置
17 バイパス通路
19 アイドル空気量制御弁
20 制御手段
22 クランク角検出手段
24 水温検出手段
26 電気負荷検出手段
27 エアコンスイッチ
28 シフトレンジスイッチ
29 燃料噴射弁
38 電気負荷演算部
39 回転数制御部
40 暖機完了判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の水温、回転数、電気負荷を含む運転状態を検出する各検出手段を設け、この各検出手段により検出された運転状態に基づいて一つ以上の目標回転数を算出し且つ最終的に―つの目標回転数を設定して前記内燃機関の回転数が前記最終的な目標回転数と一致するように吸入空気量を変更する回転数フィードバック制御を行う制御手段を設けた内燃機関のアイドル制御装置において、前記内燃機関にかかる電気負荷に相当する発電量を検出する発電量検出手段を設け、前記制御手段は、始動時水温又は所定の運転後の水温に基づいて前記内燃機関の暖機完了を判定する一方、始動時水温が予め暖機判定とは別に設けた設定値より高く、且つ暖機完了判定を満たしておらず、且つ前記内燃機関の回転数が初期目標回転数から所定量少ない判定回転数以上で、且つ発電量が所定値以上である場合が所定時間継続する際に、電気負荷に基づいて算出する目標回転数として初期目標回転数を所定量ずつ増加更新して予め設定した上限目標回転数まで増加可能とすることを特徴とする内燃機関のアイドル制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、発電量が所定値以上あるとの判断を、発電機のFR値に相当する値の検出と、前記発電機の回転数の検出と、電圧・電流値の検出と、特定の電気負荷用スイッチの動作選択に基づく動作検出とのうち、いずれかによって行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のアイドル制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、暖機完了判定を満たしていない場合に、前記内燃機関の目標空然比を周期的に変動させるパータベーションを禁止するよう判定し、このパータベーション禁止判定中に電気負荷に基づく目標回転数の算出を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関のアイドル制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、始動時水温又は所定の運転後の水温に基づいて前記内燃機関の暖機完了を判定する一方、始動時水温が予め暖機判定とは別に設けた設定値よりも高く、且つ暖機完了判定を満たしていない場合に、電気負荷に基づく最低目標回転数を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関のアイドル制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記内燃機関の水温に基づいて目標回転数を算出し、この水温に基づいて算出した目標回転数と電気負荷に基づいて算出した目標回転数とを含む複数の目標回転数から相互比較して最終的な目標回転数を選定することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のアイドル制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−13026(P2012−13026A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151552(P2010−151552)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】