内燃機関のケースカバー構造
【課題】小型のクランクケースを有するドライサンプ式潤滑系の内燃機関とすることで、ケースカバーの交換によりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関を小型にかつ低コストに構成することができる内燃機関のケースカバー構造を供する。
【解決手段】クランク軸20を回転自在に軸支するクランクケース11の外側をケースカバー52,55が覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプ90により各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、前記ケースカバーはクランクケース11に合わされる内側ケースカバー52と内側ケースカバー52の外側を覆う外側ケースカバー55とからなり、オイルタンクT1,T2,T3の大部分が内側ケースカバー52と外側ケースカバー55により構成される内燃機関のケースカバー構造。
【解決手段】クランク軸20を回転自在に軸支するクランクケース11の外側をケースカバー52,55が覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプ90により各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、前記ケースカバーはクランクケース11に合わされる内側ケースカバー52と内側ケースカバー52の外側を覆う外側ケースカバー55とからなり、オイルタンクT1,T2,T3の大部分が内側ケースカバー52と外側ケースカバー55により構成される内燃機関のケースカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側を覆うケースカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライサンプ式の潤滑系を有する内燃機関は、クランクケースの底部のオイル溜り以外にオイルタンクを備え、オイルタンクに溜められたオイルをオイルポンプにより各潤滑部位に圧送して潤滑するので、加減速時や旋回時に貯留オイルの変動が少なく、潤滑性能を高く維持できる。
このドライサンプ式潤滑系の内燃機関で、オイルタンクを機関ケースに備える例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3052002号公報(図3参照)
【0004】
特許文献1に開示された内燃機関は、クランクケースの側方をケースカバーが覆っており、このケースカバーにオイルポンプが配設され、クランクケースとケースカバーとの合わせ面にオイルタンクへオイルを導く油路とともに該オイルタンク自体が形成されている。
【0005】
オイルタンクは、クランクケース側とケースカバー側の双方に形成された膨出空間が合体して一つのタンクを構成したものであり、クランクケース側に形成されるタンク容積は、オイルタンクの全容積の少なくとも半分を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特許文献1に開示された内燃機関は、クランクケースがオイルタンクのタンク容積の半分以上を占めることで、クランクケースが大型化している。
【0007】
クランクケースの側方を覆うケースカバーを交換することで、オイルタンクを有しないウエットサンプ式に内燃機関の潤滑系を変えることが可能であるが、特許文献1に開示された内燃機関の場合、クランクケースにはオイルタンクの膨出空間が形成されているために、クランクケースが大きく、ウエットサンプ式の内燃機関としては大型となりコストも高くなる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、小型のクランクケースを有するドライサンプ式潤滑系の内燃機関とすることで、ケースカバーの交換によりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関を小型にかつ低コストに構成することができる内燃機関のケースカバー構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、前記ケースカバーは前記クランクケースに合わされる内側ケースカバーと前記内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、オイルタンクの大部分が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーにより構成されることを特徴とする内燃機関のケースカバー構造である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、前記スカベンジポンプにより前記クランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルが前記オイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路および前記フィードポンプにより前記オイルタンクからオイルが吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記汲出し油路は前記スカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、前記吐出油路は前記フィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出し、前記汲出しポートと前記吐出ポートが隣接するとともに、前記汲出し油路と前記吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設され、前記吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、前記オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は前記内側ケースカバーおよび前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記汲出し油路は、前記内側ケースカバーの前記オイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項4または請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記供給油路は、前記汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項4ないし請求項6のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記オイルタンクは、前記内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、前記側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、前記側壁の外側に形成され上部が前記上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、前記上位オイルタンクは前記クランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、前記下位オイルタンクは前記クランク軸の下方に位置して前記吸入油路に連通することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、前記クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアと前記バランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、前記上位オイルタンクは、前記バランサ駆動ギアと前記バランサ被動ギアの上方に位置して前記内側ケースカバーと前記クランクケースの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項7または請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、前記変速クラッチの下方に変速駆動機構が構成され、前記下位オイルタンクは、前記変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項7ないし請求項9のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部から前記リリーフバルブに連通するリリーフ油路が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、ケースカバーはクランクケースに合わされる内側ケースカバーと内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、ドライサンプ式のオイルタンクの大部分が内側ケースカバーと外側ケースカバーにより構成されるので、オイルタンクを大きく形成する必要のないクランクケースを小型化することができ、この小型のクランクケースの側方を覆う内側ケースカバーと外側ケースカバーからなるケースカバーだけの交換によりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関を小型にかつ低コストに構成することができる。
【0020】
請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、スカベンジポンプによりクランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルがオイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路およびフィードポンプによりオイルタンクから吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、オイルポンプより延出する油路をケースカバーが一体に備え、クランクケースの側方を覆う内側ケースカバーと外側ケースカバーをオイルポンプを1個支持したウエットサンプ式対応のケースカバーと交換するだけで、簡単にウエットサンプ式の内燃機関に変えることができる。
【0021】
請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、汲出し油路はスカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、吐出油路はフィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出するので、スカベンジポンプおよびフィードポンプにおいてエアの噛み込みを防止して安定したオイルの汲み出しおよび吐出をすることができる。
また、汲出しポートと吐出ポートが隣接するとともに、汲出し油路と吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出するので、汲出し油路および吐出油路の加工が容易である。
【0022】
請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、内側ケースカバーと外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設されるので、オイルフィルタと一体にケースカバーの交換がなされ、内燃機関の潤滑系の方式を簡単に変えることができる。
吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は内側ケースカバーおよび内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、供給油路の加工が容易である。
【0023】
請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、汲出し油路は、内側ケースカバーのオイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されるので、オイルフィルタのメンテナンス性を良好とし、汲出し油路の構成を簡素化し加工を容易とする。
【0024】
請求項6記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、供給油路は、汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されるので、供給油路の加工を容易とすることができる。
【0025】
請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、オイルタンクは、内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、側壁の外側に形成され上部が上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、上位オイルタンクはクランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、下位オイルタンクはクランク軸の下方に位置して吸入油路に連通するので、クランク軸の上方の空間と下方の空間をオイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0026】
請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアとバランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、上位オイルタンクは、バランサ駆動ギアとバランサ被動ギアの上方に位置して内側ケースカバーとクランクケースの合わせ面に形成されるので、小径のバランサ駆動ギアとバランサ被動ギアの上方の空間を利用するとともに、クランクケースの一部を用いて上位オイルタンクを構成するため、ケースカバーの外側への膨出を抑えて上位オイルタンクのタンク容積を容易に確保することができる。
【0027】
請求項9記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、変速クラッチの下方近傍に変速駆動機構が構成され、下位オイルタンクは、変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあるので、大型の変速クラッチの下方で変速駆動機構の側方の広い空間を下位オイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0028】
請求項10記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、オイルフィルタのオイル流入側の外周部からリリーフバルブに連通するリリーフ油路が内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、フィードポンプからの吐出油圧が所定圧以上となると、余剰オイルをオイルタンクに戻すリリーフバルブが上位オイルタンクの側壁に設けられ、フィードポンプからの吐出オイルをオイルフィルタのオイル流入側の外周部を利用してリリーフバルブに導くことで、リリーフ油路を短くし、内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成することで、リリーフ油路の加工を容易とするとともに、効率良くオイルをオイルタンクに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の一部省略一部断面とした左側面図である。
【図2】同内燃機関の一部省略一部断面とした右側面図である。
【図3】ドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関の断面図(図1および図2のIII−III線断面図)である。
【図4】同内燃機関の図1および図2のIV−IV線断面図である。
【図5】同内燃機関の図1および図2のV−V線断面図である。
【図6】同内燃機関の内側右ケースカバーの右側面図である。
【図7】同内側右ケースカバー左側面図である。
【図8】同内燃機関の外側右ケースカバーの右側面図である。
【図9】同内燃機関の潤滑系の要部断面図である。
【図10】同潤滑系の別の要部断面図である。
【図11】ウエットサンプ式潤滑系を構成する内燃機関の右ケースカバーの右側面図である。
【図12】同右ケースカバーの左側面図である。
【図13】同内燃機関の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関10は、同内燃機関10の後方に変速機40を一体に備えて自動二輪車にクランク軸20を車幅方向である左右方向に指向させて横置きに搭載される。
なお、本実施の形態において、前後左右は、車両を基準としたときの前後左右に一致するものとする。
【0031】
内燃機関10は、単気筒4ストローク内燃機関であり、図3ないし図10は、ドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関に関するものを図示しており、図11ないし図13は、ウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関に関するものを図示している。
とりあえず、図1ないし図10に基づきドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関について説明する。
【0032】
クランク軸20を軸支するクランクケース11は、クランク軸20が配置されるクランク室11Cの後方に変速機40を収容するミッション室11Mが形成され(図4参照)、クランク室11Cの下方には底壁が幾らか下方に膨出してオイルを貯留するオイル溜め11Pが一体に形成される構造をしている(図3参照)。
【0033】
図2および図3を参照して、クランクケース11のクランク室11Cの上には、1本のシリンダ12aを有するシリンダブロック12と、シリンダブロック12の上にガスケットを介してシリンダヘッド13が重ねられ、スタッドボルト15により一体に締結され、シリンダヘッド13の上方をシリンダヘッドカバー14が覆っている。
クランクケース11の上に重ねられるシリンダブロック12,シリンダヘッド13,シリンダヘッドカバー14は、クランクケース11から若干前傾した姿勢で上方に延出している(図1,図2参照)。
【0034】
シリンダブロック12の下部に結合されるクランクケース11は、シリンダ軸線(シリンダ12aの中心軸線)を含みクランク軸20と直交する平面で左右に2分割された1対のケースである左クランクケース11Lと右クランクケース11Rとが、互いの合せ面で合わせられボルトにより結合されて構成される。
【0035】
左右クランクケース11L,11Rが合わされて形成されるクランク室11Cに左右方向に指向して回転自在に軸支されるクランク軸20は、左右のクランク軸半体20L,20Rをクランクピン21で連結して一体に構成したものであり、各クランク軸半体20L,20Rは同軸上に構成される左右クランク軸体20La,20Raと互いに対面する左右クランクウエブ20Lw,20Rwとからなり、互いに対面する左右クランクウエブ20Lw,20Rwがクランク軸中心線から偏心したクランクピン21で連結されている(図3参照)。
【0036】
クランク軸20を軸支する左右クランクケース11L,11Rの互いに対向する軸受壁11Lw,11Rwの軸受孔外周には環状の軸受ブッシュ22,22が埋設され、同軸受ブッシュ22,22の内周にメタルベアリング23,23を介してクランク軸20の左右クランク軸体20La,20Raのクランクウエブ20Lw,20Lwと隣接するジャーナル部が軸支される。
したがって、左右クランクケース11L,11Rの互いに対向する軸受壁11Lw,11Rwの間のクランク室11Cにはクランクウエブ20Lw,20Lwおよびクランクピン21が収容され、左右軸受壁11Lw,11Rwの外側にクランク軸体20La,20Raが左右に突出している。
【0037】
一方、図3に示すように、左右クランクケース11L,11Rの合体でクランク室11Cの上方に形成された円開口に、シリンダブロック12のシリンダ12aの下部が嵌入され、シリンダ12aのシリンダボア12b内にピストン16が往復摺動自在に嵌合される。
ピストン16のピストン頂部の裏面に突出された一対のピンボス間にピストンピン17が架設され、同ピストンピン17に小端部が軸支されクランク軸20のクランクピン21に大端部が軸支されたコンロッド18によりピストン16とクラン軸20が連接されてクランク機構が構成されている。
【0038】
シリンダヘッド13には、シリンダ12aに対応して、シリンダ軸線方向でピストン16に対向して燃焼室13bが構成され、該燃焼室13bから後方に吸気ポート13iが延出し、燃焼室60から前方に排気ポート13eが延出しており(図2参照)、燃焼室13bの天井壁には点火栓19が先端を燃焼室13bに臨ませて取り付けられる(図3参照)。
図2に示すように、シリンダヘッド13に一体に嵌着された弁ガイドにそれぞれ摺動可能に支持される吸気弁61および排気弁62は、内燃機関10に備えられる動弁機構60により駆動されて、吸気ポート13iの吸気開口および排気ポート13eの排気開口を(クランク軸20の回転に同期して)開閉する。
【0039】
図2を参照して、動弁機構60は、シリンダヘッド13の上に1本のカム軸65が左右方向に指向して軸支されたSOHC型内燃機関の動弁機構であり、カム軸65の斜め前後上方にロッカアームシャフト66e,66iが支持され、後方のロッカアームシャフト66iに吸気ロッカアーム67iが揺動自在に中央を軸支され、前方のロッカアームシャフト66eに排気ロッカアーム67eが揺動自在に中央を軸支されている。
【0040】
吸気ロッカアーム67iの一端は、カム軸65の吸気カムロブに接し、他端が吸気弁61のバルブステムの上端に接し、排気ロッカアーム67eの一端は、カム軸65の排気カムロブに接し、他端が排気弁62のバルブステムの上端に接し、カム軸65の回転により吸気ロッカアーム67iと排気ロッカアーム67eが揺動して吸気弁61と排気弁62を開閉駆動する。
カム軸65は、左軸端部に被動チェーンスプロケット68が嵌着されている(図3参照)。
【0041】
一方、クランク軸20の左軸受壁11Lwより左方に突出した左クランク軸体20Laのジャーナル部の左側に駆動チェーンスプロケット25がスプライン嵌合され、同駆動チェーンスプロケット25とその上方の前記被動チェーンスプロケット68との間にカムチェーン69が架渡され(図1,図3参照)、クランク軸20の回転動力がカムチェーン69を介してカム軸65の回転にクランク軸20の1/2の回転数で伝達され、クランク軸20に同期して吸気ロッカアーム67iと排気ロッカアーム67eを揺動して吸気弁61と排気弁62がそれぞれ所要のタイミングで開閉駆動する。
【0042】
なお、図1に示すように、駆動チェーンスプロケット25と上方の被動チェーンスプロケット68との間に架渡されたカムチェーン69の前側部分を僅かに湾曲して上下に長尺に延びたチェーンガイド69gがガイドし、他方後方の後側部分を弓形に湾曲したテンションスリパ69sが押さえるように接して、カムチェーン69に適度な緊張を維持している。
テンションスリッパ69sは背後をテンショナリフタ69tにより押圧されている。
【0043】
クランク軸20の左軸受壁11Lwより左方に突出した左クランク軸体20Laには、駆動チェーンスプロケット25を位置決め固定するナット部材26、スタータ被動ギア27、一方向クラッチ29を介してACジェネレータ30のACGロータ30Rが順次嵌合され、ワッシャ31を介してナット部材32で締め付け固定される。
【0044】
ACジェネレータ30は、左クランク軸体20Laに嵌合されるフライホイール30fと同フライホイール30fにボルト30bにより固着支持される椀状をなすアウタロータ30rとでACGロータ30Rが構成されており、ACジェネレータ30等を左側から覆う左ケースカバー50に形成された内筒50aにインナステータ30sが固着支持されている。
フライホイール30fを介してクランク軸20と一体に回転するアウタロータ30rの円筒部内周に設けられた磁石30rmの内側にインナステータ30sのコイル30scが巻回された固定子鉄心が相対している。
【0045】
左クランク軸体20Laの軸端部は左ケースカバー50に形成された内筒50a内にローラベアリング33を介して軸支される。
スタータ被動ギア27は、左クランク軸体20Laに針状のローラベアリング28を介して回転自在に軸支されており、前記フライホイール30fとの間に一方向クラッチ29が介装されている。
【0046】
他方、クランク軸20の右軸受壁11Rwより右方に突出した右クランク軸体20Raには、バランサ駆動ギア35とプライマリ駆動ギア36が順次嵌合され、ワッシャ37を介してナット部材38で締め付け固定される。
右クランクケース11Rの右側を覆う右ケースカバーは、右クランクケース11Rに右軸受壁11Rwを覆って当接される内側右ケースカバー52と同内側右ケースカバー52を部分的に覆う外側右ケースカバー55とからなり(図3参照)、右クランク軸体20Raのナット部材38より右方に突出した軸端部は、内側右ケースカバー52の円筒ボス部52aに挿入されている(図3,図4参照)。
【0047】
図4に示すように、クランクケース11のミッション室11Mには、変速機40のメイン軸41とカウンタ軸42とが、クランク軸20の後方に左右方向に指向して互いに平行に左右軸受壁11Lw,11Rw間にベアリング41b,42bを介して回転自在に架設されており、メイン軸41に軸支されたメインギア群41gとカウンタ軸42に軸支されたカウンタギア群42gが常時噛み合って変速機40を構成している。
【0048】
カウンタ軸42はクランクケース11を左方に貫通して外部に突出して出力軸となっており、突出した左端に出力スプロケット43が嵌着されている。
出力スプロケット43に巻き掛けられる駆動チェーン44が、図示されない後輪側の被動スプロケットに架渡されてチェーン伝達機構が構成され後輪に動力が伝達される。
【0049】
図4に示すように、メイン軸41の右軸受壁11Rwより右方に突出した右側部には、多板摩擦式の変速クラッチ46が設けられている。
変速クラッチ46のクラッチアウタ46oは、メイン軸41に回転自在に軸支されたプライマリ被動ギア45に緩衝部材を介して支持されており、メイン軸41に一体に嵌合されたクラッチインナ46iとの間に複数のクラッチ板46cが介装され、圧縮部材46pの駆動により断接を行う。
【0050】
プライマリ被動ギア45がクランク軸20に嵌着された前記プライマリ駆動ギア36と噛合する。
したがって、クランク軸20の動力を変速クラッチ46の駆動により変速機40のメイン軸41に伝達したり遮断したりする。
【0051】
クランク軸20の前方には、バランサ47が配設されている(図1,図2の破線参照)。
バランサ47は、図4に示すように、クランクウエブ20Lw,20Lw間を旋回するバランスウエイト47wを有するバランサ軸48が左右軸受壁11Lw,11Rw間にベアリング48bを介して回転自在に架設されている。
【0052】
バランサ軸48の右軸受壁11Rwより右方に突出した右側部に、バランサ被動ギア49が設けられ、クランク軸20に嵌着された前記バランサ駆動ギア35と噛合している。
噛合するバランサ駆動ギア35とバランサ被動ギヤ49は、同径同歯数のギアであり、バランスウエイト47wはクランク軸20と等速で逆方向に回転駆動されて、ピストン16の往復運動により発生する1次振動を低減する。
【0053】
図1を参照して、前記変速機40のメイン軸41およびカウンタ軸42の下方には、シフトフォーク軸71,72が左右軸受壁11Lw,11Rw間に架設されて設けられ、前側のシフトフォーク軸71に摺動自在に支持された1本のシフトフォーク71aが前記メイン軸41上のメインギア群41gのうちのシフタギアに係合し、後側のシフトフォーク軸72に摺動自在に支持された2本のシフトフォーク72a,72bが前記カウンタ軸42上のカウンタギア群42gのうちのシフタギアに係合する。
【0054】
前後のシフトフォーク軸71,72の間の下方にシフトドラム73が左右軸受壁11Lw,11Rw間に回動自在に架設支持されており、シフトドラム73の外周面に形成された2条のリード溝にシフトフォーク71a、72a,72bのシフトピンが摺動自在に係合してシフトドラム73とともに回動するリード溝にシフトフォーク71a、72a,72bが導かれて左右軸方向に移動することで、シフタギアを移動して変速機40の変速段を切り換える。
【0055】
シフトドラム73の後方には、図5に示すように、シフトスピンドル75が左右クランクケース11L,11Rを貫通した架設されており、同シフトスピンドル75の外部に突出した左端にはフットシフトレバー(図示せず)が取付けられ、シフトスピンドル75の右端にはチェンジアーム76が基端部を嵌着されて設けられている。
シフトドラム73の右軸受壁11Rwを貫通した右軸端にはピンプレート78が嵌着され、同ピンプレート78に突設されたピン78pにチェンジアーム76に取付けられたシフタプレート77の送り爪が作用する。
【0056】
以上のシフトスピンドル75、チェンジアーム76、シフタプレート77,ピンプレート78のほかに回転位置決め機構などを含めて変速駆動機構74が構成されている(図2,図5参照)。
変速駆動機構74は、シフトスピンドル75の回動操作があると、チェンジアーム76を揺動し、シフタプレート77を介してピンプレート78をシフトドラム73とともに所定角度回動してシフトフォーク71a、72a,72bを移動し変速段を切り換える。
図2および図5に示すように、この変速駆動機構74は、メイン軸41の右端に取り付けられた変速クラッチ46の下方近傍に配設されている。
【0057】
図1および図2に示すように、クランクケース11から若干前傾して突設されたシリンダブロック12の後方で、クランクケース11の上壁の上方に、スタータモータ80が配設されている。
スタータモータ80は、左クランクケース11Lの上方に膨出した側壁に右方から駆動軸81を嵌入するようにして取り付けられており、駆動軸81が嵌入した側壁は左方から左ケースカバー50によって覆われる(図5参照)。
【0058】
図1および図5を参照して、駆動軸81とクランク軸20との間には、左クランクケース11Lと左ケースカバー50との間に架設された減速ギア軸82が設けられ、同減速ギア軸81に互いに一体に形成された大径ギア83aと小径ギア83bが回転自在に軸支され、その大径ギア83aが駆動軸81に形成されたスタータ駆動ギア81aと噛合するとともに、小径ギア83bがクランク軸20に軸支された前記スタータ被動ギア27と噛合している。
【0059】
したがって、スタータモータ80が駆動して駆動軸81に形成されたスタータ駆動ギア81aが回転すると、スタータ駆動ギア81aと噛合する大径ギア83aが小径ギア83bと一体に減速回転し、この小径ギア83bと噛合するスタータ被動ギア27が減速回転し、スタータ被動ギア27の回転が一方向クラッチ29を介してACジェネレータ30のアウタロータ30rをクランク軸20とともに回転し、内燃機関10の始動を行うことができる。
【0060】
右クランクケース11Rを外側から覆う内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55のうち内側右ケースカバー52には、右クランク軸体20Raの右軸端が挿入されている円筒ボス部52aの下方にオイルポンプ90が組み込まれている(図2,図3参照)。
図3に示すように、オイルポンプ90は共通のポンプ駆動軸93により駆動されるスカベンジポンプ91とフィードポンプ92からなる。
【0061】
内側右ケースカバー52には内側のスカベンジポンプ91と外側のフィードポンプ92を仕切る仕切壁52pcを共通にして背中合わせにポンプハウジング52pが形成されており(図6,図7参照)、ポンプハウジング52pの外側フィードポンプ92側の開口を外側右ケースカバー55が閉塞し、ポンプハウジング52pの内側スカベンジポンプ91側の開口は軸受蓋部材95が閉塞する(図3参照)。
【0062】
右クランクケース11Rの軸受壁11Rwには、ポンプ駆動軸93に同軸の対向する部位に円筒ボス部11Rsが右方に突出形成されており、同円筒ボス部11Rsに挿入され軸支されたギア軸96と同軸のポンプ駆動軸93とが軸受蓋部材95の円筒状軸受部内で連結されて一体に回転するようになっている。
【0063】
このギア軸96に嵌着されたポンプ被動ギア97が前記プライマリ駆動ギア36と噛合している。
したがって、クランク軸20の回転がプライマリ駆動ギア36とポンプ被動ギア97との噛合いを介してギア軸96およびポンプ駆動軸93に伝達されてスカベンジポンプ91およびフィードポンプ92が駆動される。
【0064】
スカベンジポンプ91とフィードポンプ92が組み込まれる内側右ケースカバー52の右側面図を図6に、左側面図を図7に示す。
内側右ケースカバー52が被せられる右クランクケース11Rは、図2に示す右側面図を参照して、プライマリ被動ギア45,プライマリ駆動ギア36,バランサ被動ギア49,ポンプ被動ギア97等のギア機構および変速駆動機構74等を外周壁が囲み、その外周壁の右端面を合わせ面11zとして内側右ケースカバー52が右側から合わせられ、内側右ケースカバー52の外周壁52sの左端面は右クランクケース11Rの合わせ面11zに対面する合わせ面52zが形成されている(図7参照)。
【0065】
内側右ケースカバー52の後寄りに変速クラッチ46を覆うクラッチカバー部52cがドーム状に大きく膨出しており、図7を参照して、クラッチカバー部52cの前方上部の外周壁52sの内側に隔壁52uに画成されて上位オイルタンクT1が左方に開口して形成され、クラッチカバー部52cの下方には環状の隔壁52dに囲まれて下位オイルタンクT3が左方に開口して形成されている。
【0066】
上位オイルタンクT1の隔壁52uに対応し互いに端面を合わせることができる隔壁11uが右クランクケース11Rに形成されており(図2参照)、隔壁11uの端面と合わせ面11zとで囲まれた内側の底の浅い凹みが上位オイルタンクT1の一部をなす。
また下位オイルタンクT3の環状の隔壁52dの端面には閉塞板54が当接して固着され下位オイルタンクT3が構成される(図5参照)。
【0067】
上位オイルタンクT1の側壁には円孔が穿孔され、その周りに後記するリリーフバルブ110を嵌着して取り付ける嵌着孔を備える円筒取付けボス部52rが形成されている。
この上位オイルタンクT1とその下方のポンプハウジング52pとの間に、右クランク軸体20Raの軸端部が挿入される前記円筒ボス部52aが形成されている(図7参照)。
【0068】
図7を参照して、ポンプハウジング52pの下方には、合わせ面52zが上下幅広に形成されて水平の仕切り壁52eにより仕切り壁52eの下側にオイル溜め11Pの一部が形成され、仕切り壁52eの上側は汲上げ油路L1が形成されている(図3参照)。
汲上げ油路L1は上方のスカベンジポンプ91の汲上げポート91iに連通している。
【0069】
内側右ケースカバー52の仕切り壁52eに対応する右クランクケース11Rの部分は、図2を参照して、やはり合わせ面11zが上下幅広に形成されて、凹部11dが形成されている。
この凹部11dの仕切り壁52eと同じ高さ位置に前後に溝条11v,11vが形成されており、この前後溝条11v,11vにストレーナ99のフレームを嵌合してストレーナ99を凹部11dに挿入して凹部11d内を上下に仕切る。
【0070】
右クランクケース11Rに内側右ケースカバー52を被せ、互いの合わせ面11z,52zを合わすと、右クランクケース11Rの凹部11dに挿入したストレーナ99の右端面を内側右ケースカバー52の仕切り壁52eが押さえてストレーナ99を固定することができ、ストレーナ99は凹部11d内を完全に上下に仕切る(図3参照)。
したがって、図3に示すように、スカベンジポンプ91が駆動すると、オイル溜め11Pに溜まったオイルがストレーナ99を通過して塵埃を除去されて汲上げ油路L1を通って汲み上げられる。
【0071】
一方、内側右ケースカバー52の右側面は、図6に示すように、前半部に外側右ケースカバー55が重ね合わされる合わせ面53zを右端面に有する隔壁53が複雑な形状をして形成されている。
図6を参照して、前記ポンプハウジング52pも隔壁53の一部をなしている。
この下方寄りのポンプハウジング52pの後側から上方に展開する環状の隔壁53mに囲まれて中位オイルタンクT2が右方を開口して形成されている。
中位オイルタンクT2は、外側右ケースカバー55により開口が塞がれて構成される。
【0072】
したがって、中位オイルタンクT2は内側右ケースカバー52の側壁の右側に構成され、前記上位オイルタンクT1と下位オイルタンクT3は内側右ケースカバー52の側壁の左側に構成される。
そして、内側右ケースカバー52における中位オイルタンクT2の上部の側壁の一部が開口して上位オイルタンクT1と連通する連通口t12が形成されるとともに、中位オイルタンクT2の下部の側壁の一部が開口して下位オイルタンクT3と連通する連通口t23が形成されている。
【0073】
すなわち、内側右ケースカバー52には、その上部内側(左側)に上位オイルタンクT1が構成され、外側(右側)に中位オイルタンクT2が構成され、下部内側(左側)に下位オイルタンクT3が構成され、上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2が連通口t12により連通し、中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3が連通口t23により連通して、上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3とを合わせた1つの大きな容積のオイル貯留空間が形成される。
【0074】
図6を参照して、内側右ケースカバー52の外側(右側)の隔壁53の前部に、オイルフィルタ100を構成する円筒状のフィルタハウジング53fが形成されている。
フィルタハウジング53f内の底壁の中央にフィルタ出口52fが形成され、フィルタ出口52fから後方の円筒ボス部52aに向けて直線的にオイル供給管52gが底壁を膨出して形成され(図7参照)、オイル供給管52g内の供給油路L5の下流端は円筒ボス部52a内と連通孔h5を介して連通する。
【0075】
円筒ボス部52a内に挿入される右クランク軸体20Raにはクランクピン21の軸受部に連通する軸孔20tが形成されていて、オイルフィルタ100のフィルタ出口52fから供給油路L5に流出したオイルは、連通孔h5を経て円筒ボス部52a内に入り、右クランク軸体20Raの軸孔20tからクランクピン21に供給されて潤滑する。
なお、供給油路L5を形成するオイル管52gはフィルタ出口52fから前方にも延長されている。
【0076】
また、フィルタ出口52fから下方にオイル供給管52hが底壁を膨出して形成され(図7参照)、オイル供給管52h内に供給油路L11が形成され、その下端に直交して内側(左側)に円筒管52hhが突出して、円筒管52hh内に供給油路L11に連通する供給油路L12が形成されている(図7,図10参照)。
オイル供給管52hの途中に油圧センサ111が取り付けられ、その感圧部が挿入される円孔52hsが外側(右側)に開口して設けられている(図6,図10参照)。
【0077】
図10に示すように、内側右ケースカバー52の供給油路L12は、右クランクケース11Rと左クランクケース11Lの供給油路L13に連通し、供給油路L13は左右軸受壁11Lw,11Rwにそれぞれ穿孔された供給油路L14,L14に直交して連通し、供給油路L14,L14はクランク軸20を軸支する軸受孔の軸受ブッシュ22,22の貫通孔に連通してメタルベアリング23,23に至っている。
【0078】
したがって、オイルフィルタ100のフィルタ出口52fから供給油路L11に流出したオイルは、供給油路L12,L13および供給油路L14,L14を通ってクランク軸20の軸受であるメタルベアリング23,23に供給され潤滑される。
オイル供給管52hの途中に取り付けられた油圧センサ111が、供給油路L11の油圧を検出しており、検出油圧はメタルベアリング23,23に供給される油圧を適正圧に維持する制御に供される。
【0079】
スカベンジポンプ91の汲出しポート91eより上方に延出した汲出し油路L2は、内側右ケースカバー52の側壁の貫通口h1を外側(右側)に貫通し(図7参照)、汲出し油路L2は、さらに貫通口h1から外側(右側)を隔壁53により円筒状のフィルタハウジング53fの外周に沿って前方斜め上方に延出し(図6参照)、その端部の貫通口h2を内側(左側)に貫通して上位オイルタンクT1に連通している。
【0080】
図7を参照して、下位オイルタンクT3を形成する環状の隔壁52dの下側の水平隔壁52dより上方に膨出して仕切り壁52ddが矩形に形成されており、仕切り壁52ddの前後側部の下端が切り欠かれて連通口h3,h3が形成され、仕切り壁52ddで囲まれた側壁の上部に貫通口h4が形成されて仕切り壁52dd内を外側(右側)と貫通している。
この貫通口h4とフィードポンプ92の吸入ポート92iとを隔壁53により形成された吸入油路L3が連通している(図6参照)。
図6を参照して、フィードポンプ92の吐出ポート92eから前斜め上方に延出した吐出油路L4は、隔壁53により形成されオイルフィルタ100のフィルタハウジング53fを貫通してフィルタハウジング53f内に連通している。
【0081】
前記した供給油路L5の下流端は、貫通孔h5を介して円筒ボス部52a内と連通するとともに、図6に示すように、供給油路L5の下流端からはさらに供給油路L6がスカベンジポンプ91の前記汲出し油路L2に沿って上方に延出している。
この供給油路L6は、隔壁53で形成され、前記汲出し油路L2と共通の仕切り壁53nにより隣接して形成される。
【0082】
図6を参照して、供給油路L6は上方に延びて上部で前後に分岐し、後方に分岐した供給油路L6の端部が左方に貫通した供給油路L7に連通し、前方に分岐した供給油路L6の端部が左方に貫通した供給油路L8に連通している。
【0083】
図2を参照して、右クランクケース11Rの右側端面の合わせ面11zの上側部分に、内側右ケースカバー52の前記供給油路L7に連通する供給油路L7´が後方に延出して形成され、同供給油路L7´を流れたオイルは変速機40のメイン軸41およびカウンタ軸42等の潤滑に供される。
また、内側右ケースカバー52の前記供給油路L8は、右クランクケース11Rの上部右寄りに穿孔された供給油路L8´に連通し、供給油路L8´は屈曲してシリンダブロック12側に延出し、シリンダヘッド13に構成される動弁機構60にオイルを供給するようになっている。
【0084】
また、図6を参照して、オイルフィルタ100のフィルタハウジング53fの上側一部が欠損して後斜め上方にリリーフ油路L21が延出しており、リリーフ油路L21の上端は前記リリーフバルブ110を嵌合して取り付ける円筒取付けボス部52r内に連通している。
このリリーフ油路L21も隔壁53で形成されている。
円筒取付けボス部52rに嵌合して取り付けられるリーフバルブ110は上位タンクT1内に設けられる。
【0085】
フィードポンプ92により吐出油路L4に吐出したオイルはオイルフィルタ100に至ると、フィルタエレメント100fの外周を巡ってフィルタエレメント100fを内側に通過するが、一部フィルタエレメント100fの外周からリリーフ油路L21に分岐してリリーフバルブ110に達しているので、リリーフバルブ110はフィードポンプ92の吐出油圧が作用しており、この吐出油圧が所定圧以上あるときは、リリーフバルブ110が開いて余剰オイルをリリーフ油路L21から上位タンクT1に戻し、供給オイルの油圧を調節する。
【0086】
以上のように、内側右ケースカバー52の右側面の前半部に形成される隔壁53は、その右端面が外側右ケースカバー55が重ね合わされる合わせ面53zをなすもので、合わせ面53zは同一平面上にある。
したがって、外側右ケースカバー55は、内側右ケースカバー52の右側面の前半部の隔壁53の外郭と同じ形状をしており(図8参照)、内面(左側面)が概ね平坦に形成されている。
【0087】
ただし、外側右ケースカバー55のオイルフィルタ100の部分は、図9に示すように、有底円筒状に外側に膨出してフィルタハウジング55fを形成しており、内側右ケースカバー52の円筒状のフィルタハウジング53fと合わされて内部に円柱空間を構成して、フィルタエレメント100fを収容するようになっている。
すなわち、オイルフィルタ100は内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55に挟まれて配設される。
【0088】
内側右ケースカバー52の右側面の前半部に形成される隔壁53は、その合わせ面が外側右ケースカバー55の内面に当接されて合わされることで、
内側右ケースカバー52の隔壁53で形成される汲上げ油路L1,汲出し油路L2,吸入油路L3,吐出油路L4,供給油路L6,リリーフ油路L21は、隔壁53の合わせ面53zに当接して外側右ケースカバー55が重ね合わされることで完成し、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成される。
【0089】
本内燃機関10の潤滑系は、概ね以上のように構成されているので、クランク軸20の回転動力がプライマリ駆動ギア36とポンプ被動ギア97の噛合を介してポンプ駆動軸93に伝達され、スカベンジポンプ91とフィードポンプ92が駆動されると、スカベンジポンプ91の駆動で、オイル溜め11Pに溜まったオイルがストレーナ99を介して塵埃を除去されて汲上げ油路L1を通って汲み上げられ、スカベンジポンプ91の汲出しポート91eより吐出したオイルは汲出し油路L2を通って上位オイルタンクT1に汲み上げられる。
【0090】
概ね内側右ケースカバー52に形成された上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3は、連通口t12,t23を介して連通して1つのオイル貯留空間なしているので、上位オイルタンクT1に汲み上げられたオイルは連通口t12を介して中位オイルタンクT2に流れ、中位オイルタンクT2から連通口t23を介して下位オイルタンクT3に流れ、下位オイルタンクT3から中位オイルタンクT2,上位オイルタンクT1の順に溜まっていく。
【0091】
このオイルタンクに溜まったオイルは、フィードポンプ92の駆動で、下位オイルタンクT3から吸入油路L3を通って吸入され、フィードポンプ92の吐出ポート92eより吐出したオイルは吐出油路L4を通ってオイルフィルタ100に至る。
そしてオイルフィルタ100のフィルタエレメント100fを内側に通過して浄化されフィルタ出口52fから流出したオイルは供給油路L5と供給油路L11に分流し、一方の供給油路L5に分流したオイルは貫通孔h5を通ってクランク軸20の軸孔20tに流入してクランクピン21の潤滑に供給されるとともに、供給油路L6を流れて分流し、一方は変速機40の所要潤滑部位に供給されて潤滑し、他方はシリンダヘッド13の方へ流れ動弁機構60の所要潤滑部位に供給される。
【0092】
以上のドライサンプ式潤滑系に構成した内燃機関において、汲出し油路L2はスカベンジポンプ91の上部に設けた汲出しポート91eから延出し(図7参照)、吐出油路L4はフィードポンプ92の上部に設けた吐出ポート92eから延出する(図6参照)ので、スカベンジポンプ91およびフィードポンプ92においてエアの噛み込みを防止して安定したオイルの汲み出しおよび吐出をすることができる。
また、図6に示すように、汲出しポート91eと吐出ポート92eが隣接するとともに、汲出し油路L2と吐出油路L4は、共通の仕切り壁53oにより隣接して延出するので、汲出し油路L2および吐出油路L4の加工が容易である。
【0093】
図6を参照して、吐出油路L4はオイルフィルタ100のオイル流入側の外周部に連通し、オイルフィルタ100のオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路L5,L11,L12は内側右ケースカバー52に形成され、供給油路L6は内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成されるので、供給油路の加工が容易である。
【0094】
図6に示すように、汲出し油路L2は、内側右ケースカバー52のオイルフィルタ100を覆う円筒状のフィルタハウジング53fの外周に沿って形成されるので、オイルフィルタ100のメンテナンス性を良好とし、汲出し油路L2の構成を簡素化し加工を容易とする。
また、供給油路L6は、汲出し油路L2と共通の仕切り壁53nにより隣接して形成されるので、供給油路L6の加工を容易とすることができる。
【0095】
オイルタンクは、図6を参照して、内側右ケースカバー52の側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクT1と、側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクT3と、側壁の外側に形成され上部が上位オイルタンクT1に連通し下部が下位オイルタンクT3に連通する中位オイルタンクT2とからなり、上位オイルタンクT1はクランク軸20の上方に位置して汲出し油路L2に連通し、下位オイルタンクT3はクランク軸20の下方に位置して吸入油路L3に連通するので、クランク軸20の上方の空間と下方の空間をオイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関10の大型化を避けることができる。
【0096】
クランク軸20の前方でクランク軸20に平行に指向させてバランサ軸48をクランクケース11に軸支したバランサ47が設けられており、図2を参照して、クランク軸20に嵌着されたバランサ駆動ギア35とバランサ軸48に嵌着されたバランサ被動ギア49が噛み合い、上位オイルタンクT1は、バランサ駆動ギア35とバランサ被動ギア49の上方に位置して内側右ケースカバー52と右クランクケース11Rの合わせ面に形成されるので、小径のバランサ駆動ギア35とバランサ被動ギア49の上方の空間を利用するとともに、右クランクケース11Rの一部を用いて上位オイルタンクT1を構成するため、右ケースカバー52,55の外側への膨出を抑えて上位オイルタンクT1のタンク容積を容易に確保することができる。
【0097】
クランク軸20の後方に配置された変速機40のメイン軸41の一端に変速クラッチ46が支持され、変速クラッチ46の下方近傍に変速駆動機構74が構成され(図2,図5参照)、図5に示すように、下位オイルタンクT3は、変速駆動機構74とクランク軸20の軸方向視で重なる位置にあるので、大型の変速クラッチ46の下方で変速駆動機構74の側方の広い空間を下位オイルタンクT3として利用することで、内燃機関10の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0098】
上位オイルタンクT1の側壁に穿孔された円孔の周りに形成された円筒取付けボス部52rの嵌着孔にリリーフバルブ110が嵌着され、オイルフィルタ100のオイル流入側の外周部からリリーフバルブ110に連通するリリーフ油路L21が内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成されるので、フィードポンプ92からの吐出油圧が所定圧以上となると、余剰オイルを上位オイルタンクT1に戻すリリーフバルブ110が上位オイルタンクT1の側壁に設けられ、フィードポンプ92からの吐出オイルをオイルフィルタ100のオイル流入側の外周部を利用してリリーフバルブ110に導くことで、リリーフ油路L21を短くし、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成することで、リリーフ油路L21の加工を容易とするとともに、効率良くオイルをオイルタンクに戻すことができる。
【0099】
以上記述したクランクケース10の右側を覆う内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55は、ドライサンプ式潤滑系を構成するものであり、この内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55をウエットサンプ式の右ケースカバーに交換すれば、ウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関とすることができる。
以下、図10ないし図13に基づきウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関について説明する。
【0100】
ウエットサンプ式の右ケースカバー200の右側面図を図11に、左側面図を図12に示す。
本右ケースカバー200は、前記内側右ケースカバー52と外形は略同じ形状をしている。
ウエットサンプ式潤滑系なので、オイルタンクは存在せず、オイルポンプは1つだけであり、右ケースカバー200には、オイルポンプ210とオイルフィルタ220が前記内側右ケースカバー52と略同じ位置に設けられる。
【0101】
右ケースカバー200の右クランクケース11Rに合される左側面には、図12に示すように、前記内側右ケースカバー52の合わせ面52zと同じ合わせ面200zが周囲を囲っており、オイルポンプ210のポンプハウジング200pおよび右クランク軸体20Raの軸端部が挿入される円筒ボス部200aが内側右ケースカバー52のポンプハウジング52p,円筒ボス部52aと同じ位置に同じように形成されている。
【0102】
図13を参照して、ポンプハウジング200pは左側が開口し、ポンプハウジング200p内に構成されるオイルポンプ210のポンプ駆動軸211は、ドライサンプ式で使用された軸受蓋部材95により軸支されるとともにポンプハウジング200pの開口を閉塞する。
図13に示すように、ポンプ駆動軸211は、同軸のギア軸96と軸受蓋部材95の円筒状軸受部内で連結されて一体に回転するようになっている。
【0103】
ポンプハウジング200pの下方には、合わせ面200zが上下幅広に形成されて水平の仕切り壁200eにより仕切り壁200eの下側にオイル溜め11Pの一部が形成され、仕切り壁52eの上側は吸入油路L51が形成されている(図13参照)。
右クランクケース11Rの凹部11dに挿入したストレーナ99の右端面を右ケースカバー200の仕切り壁200eが押さえてストレーナ99を固定するのはドライサンプ式と同じである(図13参照)。
図12および図13に示すように、吸入油路L51はオイルポンプ210の下部の吸入ポート210iに連通している。
【0104】
さらに、図11に示すように、オイルフィルタ220の円筒状をなすフィルタハウジング201fが、内側右ケースカバー52のフィルタハウジング53fと同じ位置に形成されており、同フィルタハウジング201fは、円筒形のまま右方に突出して開口しており、同開口からフィルタハウジング201f内にフィルタエレメント220fが挿入され、蓋部材205により閉塞される(図13参照)。
オイルポンプ210の上部の吐出ポート210eとオイルフィルタ220のフィルタハウジング201f内とが吐出油路L52によって連通されている。
【0105】
フィルタハウジング201f内の底壁の中央のフィルタ出口201fから後方の円筒ボス部200aに向けて直線的にオイル供給管200gが底壁を膨出して形成され(図12参照)、オイル供給管200g内の供給油路L53の下流端は円筒ボス部200a内と連通孔h53を介して連通する。
【0106】
また、図12を参照して、フィルタ出口201fから下方にオイル供給管200hが底壁を膨出して形成され、オイル供給管200h内に供給油路L61が形成され、その下端に直交して内側(左側)に円筒管200hhが突出して、円筒管200hh内に供給油路L61に連通する供給油路L62が形成されており、供給油路L62は右クランクケース11Rの供給油路L13に連通してクランク軸20の軸受につながり、クランク軸20の軸受にオイルが供給され潤滑される。
【0107】
供給油路L53の下流端からはさらに供給油路L54が上方に延出しており、供給油路L54は上部で前後に分岐し、後方に分岐した供給油路L54の端部が左方に貫通した供給油路L55に連通し、前方に分岐した供給油路L54の端部が左方に貫通した供給油路L56に連通している(図11,図12参照)。
供給油路L55は右クランクケース11Rの変速機40の潤滑部位にオイルを導く供給油路L7´に連結され、供給油路L56はシリンダヘッド13に構成される動弁機構60の潤滑部位にオイルを導く供給油路L8´に連結される(図11,図12参照)。
【0108】
なお、オイルフィルタ220のフィルタハウジング200fの上側一部が欠損して後斜め上方にリリーフ油路L71が延出しており、リリーフ油路L71の上端は前記リリーフバルブ110を嵌合して取り付ける円筒取付けボス部200r内に連通している(図11,図12参照)。
【0109】
右ケースカバー200は、以上のようにオイルポンプ210とオイルフィルタ220を備えており、オイルタンクは有していない。
このウエットサンプ式の右ケースカバー200を、先のドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55と交換して右クランクケース11Rに取り付けると、ウエットサンプ式の潤滑系が構成される。
【0110】
本内燃機関10は、ドライサンプ式の内側右ケースカバー52にオイルタンク(上位オイルタンクT1,中位オイルタンクT2,下位オイルタンクT3)の大部分が構成されるので、クランクケース11に大型のオイルタンクを形成する必要がなく、クランクケース11を小型化することができ、この小型のクランクケース11の側方を覆うドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55をウエットサンプ式の右ケースカバー200に交換することによりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関10を小型にかつ低コストに構成することができる。
【0111】
ドライサンプ式の内側右ケースカバー52には、スカベンジポンプ91がオイルを汲み上げる汲上げ油路L1、汲み出す汲出し油路L2およびフィードポンプ92がオイルを吸入する吸入油路L3,吐出する吐出油路L4等の油路が一体に形成されており、他方のウエットサンプ式の右ケースカバー200には、オイルポンプ210がオイルを吸入する吸入油路L51,吐出する吐出油路L52等の油路が一体に形成されているので、クランクケース11の側方を覆うケースカバーを交換するだけで、簡単にドライサンプ式とウエットサンプ式の潤滑系を変えることができる。
【0112】
ドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55に挟まれてオイルフィルタ100が配設され、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55とともにオイルフィルタ100も交換され、ウエットサンプ式潤滑系に簡単に変えることができる。
【符号の説明】
【0113】
10…内燃機関、11…クランクケース、11C…クランク室、11M…ミッション室、11P…オイル溜め、11L…左クランクケース、11R…右クランクケース、11Lw,11Rw…軸受壁、11Lb,11Rb…主軸受部、12…シリンダブロック、12a…シリンダ、12b…シリンダボア、13…シリンダヘッド、14…シリンダヘッドカバー、15…スタッドボルト、16…ピストン、17…ピストンピン、18…コンロッド、19…点火栓、
20…クランク軸、20L,20R…クランク軸半体、20La,20Ra…クランク軸体、20Lw,20Rw…クランクウエブ、a1…ジャーナル部、21…クランクピン、22…軸受ブッシュ、23…メタルベアリング、24…、25…駆動チェーンスプロケット、26…ナット部材、27…スタータ被動ギア、28…ローラベアリング、29…一方向クラッチ、30…ACジェネレータ、30R…ACGロータ、30r…アウタロータ、30f…フライホイール、30s…インナステータ、31…ワッシャ、32…ナット部材、33…ローラベアリング、34…キー部材、35…バランサ駆動ギア、36…プライマリ駆動ギア、37…ワッシャ、38…ナット部材、
40…変速機、41…メイン軸、42…カウンタ軸、43…出力スプロケット、44…駆動チェーン、45…プライマリ被動ギア、46…変速クラッチ、47…バランサ、47w…バランスウエイト、48…バランサ軸、49…バランサ被動ギア、
50…左ケースカバー、52…内側右ケースカバー、53…隔壁、53f…フィルタハウジング、53n…仕切り壁、55…外側右ケースカバー、
60…動弁機構、61…吸気弁、62…排気弁、63…、64…、65…カム軸、66e,66i…ロッカアームシャフト、67i…吸気ロッカアーム、67e…排気ロッカアーム、68…被動チェーンスプロケット、69…カムチェーン、
71,72…シフトフォーク軸、71a、72a,72b…シフトフォーク、73…シフトドラム、74…変速駆動機構、75…シフトスピンドル、76…チェンジアーム、77…シフタプレート、78…ピンプレート、
80…スタータモータ、81…駆動軸、81a…スタータ駆動ギア、82…減速ギア軸、83a…大径ギア、83b…小径ギア、83a…大径ギア、83b…小径ギア、
90…オイルポンプ、91…スカベンジポンプ、91i…汲上げポート、91e…汲出しポート、92…フィードポンプ、92i…吸入ポート、92e…吐出ポート、93…ポンプ駆動軸、94…、95…軸受蓋部材、96…ギア軸、97…ポンプ被動ギア、99…ストレーナ、
100…オイルフィルタ、110…リリーフバルブ、111…油圧センサ、
L1…汲上げ油路、L2…汲出し油路、L3…吸入油路、L4…吐出油路、L5,L6L7,L8,L7´,L8´…供給油路、L11,L12,L13…供給油路、L21…リリーフ油路、
T1…上位オイルタンク、T2…中位オイルタンク、T3…下位オイルタンク、
200…右ケースカバー、205…蓋部材、
210…オイルポンプ、210i…吸入ポート、210e…吐出ポート、220…オイルフィルタ、220f…フィルタエレメント、
L51…吸入油路、L52…吐出油路、L53,L54,L55,L56…供給油路、L61,L62…供給油路、L71…リリーフ油路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側を覆うケースカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライサンプ式の潤滑系を有する内燃機関は、クランクケースの底部のオイル溜り以外にオイルタンクを備え、オイルタンクに溜められたオイルをオイルポンプにより各潤滑部位に圧送して潤滑するので、加減速時や旋回時に貯留オイルの変動が少なく、潤滑性能を高く維持できる。
このドライサンプ式潤滑系の内燃機関で、オイルタンクを機関ケースに備える例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3052002号公報(図3参照)
【0004】
特許文献1に開示された内燃機関は、クランクケースの側方をケースカバーが覆っており、このケースカバーにオイルポンプが配設され、クランクケースとケースカバーとの合わせ面にオイルタンクへオイルを導く油路とともに該オイルタンク自体が形成されている。
【0005】
オイルタンクは、クランクケース側とケースカバー側の双方に形成された膨出空間が合体して一つのタンクを構成したものであり、クランクケース側に形成されるタンク容積は、オイルタンクの全容積の少なくとも半分を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特許文献1に開示された内燃機関は、クランクケースがオイルタンクのタンク容積の半分以上を占めることで、クランクケースが大型化している。
【0007】
クランクケースの側方を覆うケースカバーを交換することで、オイルタンクを有しないウエットサンプ式に内燃機関の潤滑系を変えることが可能であるが、特許文献1に開示された内燃機関の場合、クランクケースにはオイルタンクの膨出空間が形成されているために、クランクケースが大きく、ウエットサンプ式の内燃機関としては大型となりコストも高くなる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、小型のクランクケースを有するドライサンプ式潤滑系の内燃機関とすることで、ケースカバーの交換によりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関を小型にかつ低コストに構成することができる内燃機関のケースカバー構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、前記ケースカバーは前記クランクケースに合わされる内側ケースカバーと前記内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、オイルタンクの大部分が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーにより構成されることを特徴とする内燃機関のケースカバー構造である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、前記スカベンジポンプにより前記クランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルが前記オイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路および前記フィードポンプにより前記オイルタンクからオイルが吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記汲出し油路は前記スカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、前記吐出油路は前記フィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出し、前記汲出しポートと前記吐出ポートが隣接するとともに、前記汲出し油路と前記吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設され、前記吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、前記オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は前記内側ケースカバーおよび前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記汲出し油路は、前記内側ケースカバーの前記オイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項4または請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記供給油路は、前記汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項4ないし請求項6のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記オイルタンクは、前記内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、前記側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、前記側壁の外側に形成され上部が前記上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、前記上位オイルタンクは前記クランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、前記下位オイルタンクは前記クランク軸の下方に位置して前記吸入油路に連通することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、前記クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアと前記バランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、前記上位オイルタンクは、前記バランサ駆動ギアと前記バランサ被動ギアの上方に位置して前記内側ケースカバーと前記クランクケースの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項7または請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、前記変速クラッチの下方に変速駆動機構が構成され、前記下位オイルタンクは、前記変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項7ないし請求項9のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造において、前記上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部から前記リリーフバルブに連通するリリーフ油路が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、ケースカバーはクランクケースに合わされる内側ケースカバーと内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、ドライサンプ式のオイルタンクの大部分が内側ケースカバーと外側ケースカバーにより構成されるので、オイルタンクを大きく形成する必要のないクランクケースを小型化することができ、この小型のクランクケースの側方を覆う内側ケースカバーと外側ケースカバーからなるケースカバーだけの交換によりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関を小型にかつ低コストに構成することができる。
【0020】
請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、スカベンジポンプによりクランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルがオイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路およびフィードポンプによりオイルタンクから吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、オイルポンプより延出する油路をケースカバーが一体に備え、クランクケースの側方を覆う内側ケースカバーと外側ケースカバーをオイルポンプを1個支持したウエットサンプ式対応のケースカバーと交換するだけで、簡単にウエットサンプ式の内燃機関に変えることができる。
【0021】
請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、汲出し油路はスカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、吐出油路はフィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出するので、スカベンジポンプおよびフィードポンプにおいてエアの噛み込みを防止して安定したオイルの汲み出しおよび吐出をすることができる。
また、汲出しポートと吐出ポートが隣接するとともに、汲出し油路と吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出するので、汲出し油路および吐出油路の加工が容易である。
【0022】
請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、内側ケースカバーと外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設されるので、オイルフィルタと一体にケースカバーの交換がなされ、内燃機関の潤滑系の方式を簡単に変えることができる。
吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は内側ケースカバーおよび内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、供給油路の加工が容易である。
【0023】
請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、汲出し油路は、内側ケースカバーのオイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されるので、オイルフィルタのメンテナンス性を良好とし、汲出し油路の構成を簡素化し加工を容易とする。
【0024】
請求項6記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、供給油路は、汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されるので、供給油路の加工を容易とすることができる。
【0025】
請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、オイルタンクは、内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、側壁の外側に形成され上部が上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、上位オイルタンクはクランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、下位オイルタンクはクランク軸の下方に位置して吸入油路に連通するので、クランク軸の上方の空間と下方の空間をオイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0026】
請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアとバランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、上位オイルタンクは、バランサ駆動ギアとバランサ被動ギアの上方に位置して内側ケースカバーとクランクケースの合わせ面に形成されるので、小径のバランサ駆動ギアとバランサ被動ギアの上方の空間を利用するとともに、クランクケースの一部を用いて上位オイルタンクを構成するため、ケースカバーの外側への膨出を抑えて上位オイルタンクのタンク容積を容易に確保することができる。
【0027】
請求項9記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、変速クラッチの下方近傍に変速駆動機構が構成され、下位オイルタンクは、変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあるので、大型の変速クラッチの下方で変速駆動機構の側方の広い空間を下位オイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0028】
請求項10記載の内燃機関のケースカバー構造によれば、上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、オイルフィルタのオイル流入側の外周部からリリーフバルブに連通するリリーフ油路が内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成されるので、フィードポンプからの吐出油圧が所定圧以上となると、余剰オイルをオイルタンクに戻すリリーフバルブが上位オイルタンクの側壁に設けられ、フィードポンプからの吐出オイルをオイルフィルタのオイル流入側の外周部を利用してリリーフバルブに導くことで、リリーフ油路を短くし、内側ケースカバーと外側ケースカバーとの合わせ面に形成することで、リリーフ油路の加工を容易とするとともに、効率良くオイルをオイルタンクに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の一部省略一部断面とした左側面図である。
【図2】同内燃機関の一部省略一部断面とした右側面図である。
【図3】ドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関の断面図(図1および図2のIII−III線断面図)である。
【図4】同内燃機関の図1および図2のIV−IV線断面図である。
【図5】同内燃機関の図1および図2のV−V線断面図である。
【図6】同内燃機関の内側右ケースカバーの右側面図である。
【図7】同内側右ケースカバー左側面図である。
【図8】同内燃機関の外側右ケースカバーの右側面図である。
【図9】同内燃機関の潤滑系の要部断面図である。
【図10】同潤滑系の別の要部断面図である。
【図11】ウエットサンプ式潤滑系を構成する内燃機関の右ケースカバーの右側面図である。
【図12】同右ケースカバーの左側面図である。
【図13】同内燃機関の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関10は、同内燃機関10の後方に変速機40を一体に備えて自動二輪車にクランク軸20を車幅方向である左右方向に指向させて横置きに搭載される。
なお、本実施の形態において、前後左右は、車両を基準としたときの前後左右に一致するものとする。
【0031】
内燃機関10は、単気筒4ストローク内燃機関であり、図3ないし図10は、ドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関に関するものを図示しており、図11ないし図13は、ウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関に関するものを図示している。
とりあえず、図1ないし図10に基づきドライサンプ式潤滑系を構成した内燃機関について説明する。
【0032】
クランク軸20を軸支するクランクケース11は、クランク軸20が配置されるクランク室11Cの後方に変速機40を収容するミッション室11Mが形成され(図4参照)、クランク室11Cの下方には底壁が幾らか下方に膨出してオイルを貯留するオイル溜め11Pが一体に形成される構造をしている(図3参照)。
【0033】
図2および図3を参照して、クランクケース11のクランク室11Cの上には、1本のシリンダ12aを有するシリンダブロック12と、シリンダブロック12の上にガスケットを介してシリンダヘッド13が重ねられ、スタッドボルト15により一体に締結され、シリンダヘッド13の上方をシリンダヘッドカバー14が覆っている。
クランクケース11の上に重ねられるシリンダブロック12,シリンダヘッド13,シリンダヘッドカバー14は、クランクケース11から若干前傾した姿勢で上方に延出している(図1,図2参照)。
【0034】
シリンダブロック12の下部に結合されるクランクケース11は、シリンダ軸線(シリンダ12aの中心軸線)を含みクランク軸20と直交する平面で左右に2分割された1対のケースである左クランクケース11Lと右クランクケース11Rとが、互いの合せ面で合わせられボルトにより結合されて構成される。
【0035】
左右クランクケース11L,11Rが合わされて形成されるクランク室11Cに左右方向に指向して回転自在に軸支されるクランク軸20は、左右のクランク軸半体20L,20Rをクランクピン21で連結して一体に構成したものであり、各クランク軸半体20L,20Rは同軸上に構成される左右クランク軸体20La,20Raと互いに対面する左右クランクウエブ20Lw,20Rwとからなり、互いに対面する左右クランクウエブ20Lw,20Rwがクランク軸中心線から偏心したクランクピン21で連結されている(図3参照)。
【0036】
クランク軸20を軸支する左右クランクケース11L,11Rの互いに対向する軸受壁11Lw,11Rwの軸受孔外周には環状の軸受ブッシュ22,22が埋設され、同軸受ブッシュ22,22の内周にメタルベアリング23,23を介してクランク軸20の左右クランク軸体20La,20Raのクランクウエブ20Lw,20Lwと隣接するジャーナル部が軸支される。
したがって、左右クランクケース11L,11Rの互いに対向する軸受壁11Lw,11Rwの間のクランク室11Cにはクランクウエブ20Lw,20Lwおよびクランクピン21が収容され、左右軸受壁11Lw,11Rwの外側にクランク軸体20La,20Raが左右に突出している。
【0037】
一方、図3に示すように、左右クランクケース11L,11Rの合体でクランク室11Cの上方に形成された円開口に、シリンダブロック12のシリンダ12aの下部が嵌入され、シリンダ12aのシリンダボア12b内にピストン16が往復摺動自在に嵌合される。
ピストン16のピストン頂部の裏面に突出された一対のピンボス間にピストンピン17が架設され、同ピストンピン17に小端部が軸支されクランク軸20のクランクピン21に大端部が軸支されたコンロッド18によりピストン16とクラン軸20が連接されてクランク機構が構成されている。
【0038】
シリンダヘッド13には、シリンダ12aに対応して、シリンダ軸線方向でピストン16に対向して燃焼室13bが構成され、該燃焼室13bから後方に吸気ポート13iが延出し、燃焼室60から前方に排気ポート13eが延出しており(図2参照)、燃焼室13bの天井壁には点火栓19が先端を燃焼室13bに臨ませて取り付けられる(図3参照)。
図2に示すように、シリンダヘッド13に一体に嵌着された弁ガイドにそれぞれ摺動可能に支持される吸気弁61および排気弁62は、内燃機関10に備えられる動弁機構60により駆動されて、吸気ポート13iの吸気開口および排気ポート13eの排気開口を(クランク軸20の回転に同期して)開閉する。
【0039】
図2を参照して、動弁機構60は、シリンダヘッド13の上に1本のカム軸65が左右方向に指向して軸支されたSOHC型内燃機関の動弁機構であり、カム軸65の斜め前後上方にロッカアームシャフト66e,66iが支持され、後方のロッカアームシャフト66iに吸気ロッカアーム67iが揺動自在に中央を軸支され、前方のロッカアームシャフト66eに排気ロッカアーム67eが揺動自在に中央を軸支されている。
【0040】
吸気ロッカアーム67iの一端は、カム軸65の吸気カムロブに接し、他端が吸気弁61のバルブステムの上端に接し、排気ロッカアーム67eの一端は、カム軸65の排気カムロブに接し、他端が排気弁62のバルブステムの上端に接し、カム軸65の回転により吸気ロッカアーム67iと排気ロッカアーム67eが揺動して吸気弁61と排気弁62を開閉駆動する。
カム軸65は、左軸端部に被動チェーンスプロケット68が嵌着されている(図3参照)。
【0041】
一方、クランク軸20の左軸受壁11Lwより左方に突出した左クランク軸体20Laのジャーナル部の左側に駆動チェーンスプロケット25がスプライン嵌合され、同駆動チェーンスプロケット25とその上方の前記被動チェーンスプロケット68との間にカムチェーン69が架渡され(図1,図3参照)、クランク軸20の回転動力がカムチェーン69を介してカム軸65の回転にクランク軸20の1/2の回転数で伝達され、クランク軸20に同期して吸気ロッカアーム67iと排気ロッカアーム67eを揺動して吸気弁61と排気弁62がそれぞれ所要のタイミングで開閉駆動する。
【0042】
なお、図1に示すように、駆動チェーンスプロケット25と上方の被動チェーンスプロケット68との間に架渡されたカムチェーン69の前側部分を僅かに湾曲して上下に長尺に延びたチェーンガイド69gがガイドし、他方後方の後側部分を弓形に湾曲したテンションスリパ69sが押さえるように接して、カムチェーン69に適度な緊張を維持している。
テンションスリッパ69sは背後をテンショナリフタ69tにより押圧されている。
【0043】
クランク軸20の左軸受壁11Lwより左方に突出した左クランク軸体20Laには、駆動チェーンスプロケット25を位置決め固定するナット部材26、スタータ被動ギア27、一方向クラッチ29を介してACジェネレータ30のACGロータ30Rが順次嵌合され、ワッシャ31を介してナット部材32で締め付け固定される。
【0044】
ACジェネレータ30は、左クランク軸体20Laに嵌合されるフライホイール30fと同フライホイール30fにボルト30bにより固着支持される椀状をなすアウタロータ30rとでACGロータ30Rが構成されており、ACジェネレータ30等を左側から覆う左ケースカバー50に形成された内筒50aにインナステータ30sが固着支持されている。
フライホイール30fを介してクランク軸20と一体に回転するアウタロータ30rの円筒部内周に設けられた磁石30rmの内側にインナステータ30sのコイル30scが巻回された固定子鉄心が相対している。
【0045】
左クランク軸体20Laの軸端部は左ケースカバー50に形成された内筒50a内にローラベアリング33を介して軸支される。
スタータ被動ギア27は、左クランク軸体20Laに針状のローラベアリング28を介して回転自在に軸支されており、前記フライホイール30fとの間に一方向クラッチ29が介装されている。
【0046】
他方、クランク軸20の右軸受壁11Rwより右方に突出した右クランク軸体20Raには、バランサ駆動ギア35とプライマリ駆動ギア36が順次嵌合され、ワッシャ37を介してナット部材38で締め付け固定される。
右クランクケース11Rの右側を覆う右ケースカバーは、右クランクケース11Rに右軸受壁11Rwを覆って当接される内側右ケースカバー52と同内側右ケースカバー52を部分的に覆う外側右ケースカバー55とからなり(図3参照)、右クランク軸体20Raのナット部材38より右方に突出した軸端部は、内側右ケースカバー52の円筒ボス部52aに挿入されている(図3,図4参照)。
【0047】
図4に示すように、クランクケース11のミッション室11Mには、変速機40のメイン軸41とカウンタ軸42とが、クランク軸20の後方に左右方向に指向して互いに平行に左右軸受壁11Lw,11Rw間にベアリング41b,42bを介して回転自在に架設されており、メイン軸41に軸支されたメインギア群41gとカウンタ軸42に軸支されたカウンタギア群42gが常時噛み合って変速機40を構成している。
【0048】
カウンタ軸42はクランクケース11を左方に貫通して外部に突出して出力軸となっており、突出した左端に出力スプロケット43が嵌着されている。
出力スプロケット43に巻き掛けられる駆動チェーン44が、図示されない後輪側の被動スプロケットに架渡されてチェーン伝達機構が構成され後輪に動力が伝達される。
【0049】
図4に示すように、メイン軸41の右軸受壁11Rwより右方に突出した右側部には、多板摩擦式の変速クラッチ46が設けられている。
変速クラッチ46のクラッチアウタ46oは、メイン軸41に回転自在に軸支されたプライマリ被動ギア45に緩衝部材を介して支持されており、メイン軸41に一体に嵌合されたクラッチインナ46iとの間に複数のクラッチ板46cが介装され、圧縮部材46pの駆動により断接を行う。
【0050】
プライマリ被動ギア45がクランク軸20に嵌着された前記プライマリ駆動ギア36と噛合する。
したがって、クランク軸20の動力を変速クラッチ46の駆動により変速機40のメイン軸41に伝達したり遮断したりする。
【0051】
クランク軸20の前方には、バランサ47が配設されている(図1,図2の破線参照)。
バランサ47は、図4に示すように、クランクウエブ20Lw,20Lw間を旋回するバランスウエイト47wを有するバランサ軸48が左右軸受壁11Lw,11Rw間にベアリング48bを介して回転自在に架設されている。
【0052】
バランサ軸48の右軸受壁11Rwより右方に突出した右側部に、バランサ被動ギア49が設けられ、クランク軸20に嵌着された前記バランサ駆動ギア35と噛合している。
噛合するバランサ駆動ギア35とバランサ被動ギヤ49は、同径同歯数のギアであり、バランスウエイト47wはクランク軸20と等速で逆方向に回転駆動されて、ピストン16の往復運動により発生する1次振動を低減する。
【0053】
図1を参照して、前記変速機40のメイン軸41およびカウンタ軸42の下方には、シフトフォーク軸71,72が左右軸受壁11Lw,11Rw間に架設されて設けられ、前側のシフトフォーク軸71に摺動自在に支持された1本のシフトフォーク71aが前記メイン軸41上のメインギア群41gのうちのシフタギアに係合し、後側のシフトフォーク軸72に摺動自在に支持された2本のシフトフォーク72a,72bが前記カウンタ軸42上のカウンタギア群42gのうちのシフタギアに係合する。
【0054】
前後のシフトフォーク軸71,72の間の下方にシフトドラム73が左右軸受壁11Lw,11Rw間に回動自在に架設支持されており、シフトドラム73の外周面に形成された2条のリード溝にシフトフォーク71a、72a,72bのシフトピンが摺動自在に係合してシフトドラム73とともに回動するリード溝にシフトフォーク71a、72a,72bが導かれて左右軸方向に移動することで、シフタギアを移動して変速機40の変速段を切り換える。
【0055】
シフトドラム73の後方には、図5に示すように、シフトスピンドル75が左右クランクケース11L,11Rを貫通した架設されており、同シフトスピンドル75の外部に突出した左端にはフットシフトレバー(図示せず)が取付けられ、シフトスピンドル75の右端にはチェンジアーム76が基端部を嵌着されて設けられている。
シフトドラム73の右軸受壁11Rwを貫通した右軸端にはピンプレート78が嵌着され、同ピンプレート78に突設されたピン78pにチェンジアーム76に取付けられたシフタプレート77の送り爪が作用する。
【0056】
以上のシフトスピンドル75、チェンジアーム76、シフタプレート77,ピンプレート78のほかに回転位置決め機構などを含めて変速駆動機構74が構成されている(図2,図5参照)。
変速駆動機構74は、シフトスピンドル75の回動操作があると、チェンジアーム76を揺動し、シフタプレート77を介してピンプレート78をシフトドラム73とともに所定角度回動してシフトフォーク71a、72a,72bを移動し変速段を切り換える。
図2および図5に示すように、この変速駆動機構74は、メイン軸41の右端に取り付けられた変速クラッチ46の下方近傍に配設されている。
【0057】
図1および図2に示すように、クランクケース11から若干前傾して突設されたシリンダブロック12の後方で、クランクケース11の上壁の上方に、スタータモータ80が配設されている。
スタータモータ80は、左クランクケース11Lの上方に膨出した側壁に右方から駆動軸81を嵌入するようにして取り付けられており、駆動軸81が嵌入した側壁は左方から左ケースカバー50によって覆われる(図5参照)。
【0058】
図1および図5を参照して、駆動軸81とクランク軸20との間には、左クランクケース11Lと左ケースカバー50との間に架設された減速ギア軸82が設けられ、同減速ギア軸81に互いに一体に形成された大径ギア83aと小径ギア83bが回転自在に軸支され、その大径ギア83aが駆動軸81に形成されたスタータ駆動ギア81aと噛合するとともに、小径ギア83bがクランク軸20に軸支された前記スタータ被動ギア27と噛合している。
【0059】
したがって、スタータモータ80が駆動して駆動軸81に形成されたスタータ駆動ギア81aが回転すると、スタータ駆動ギア81aと噛合する大径ギア83aが小径ギア83bと一体に減速回転し、この小径ギア83bと噛合するスタータ被動ギア27が減速回転し、スタータ被動ギア27の回転が一方向クラッチ29を介してACジェネレータ30のアウタロータ30rをクランク軸20とともに回転し、内燃機関10の始動を行うことができる。
【0060】
右クランクケース11Rを外側から覆う内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55のうち内側右ケースカバー52には、右クランク軸体20Raの右軸端が挿入されている円筒ボス部52aの下方にオイルポンプ90が組み込まれている(図2,図3参照)。
図3に示すように、オイルポンプ90は共通のポンプ駆動軸93により駆動されるスカベンジポンプ91とフィードポンプ92からなる。
【0061】
内側右ケースカバー52には内側のスカベンジポンプ91と外側のフィードポンプ92を仕切る仕切壁52pcを共通にして背中合わせにポンプハウジング52pが形成されており(図6,図7参照)、ポンプハウジング52pの外側フィードポンプ92側の開口を外側右ケースカバー55が閉塞し、ポンプハウジング52pの内側スカベンジポンプ91側の開口は軸受蓋部材95が閉塞する(図3参照)。
【0062】
右クランクケース11Rの軸受壁11Rwには、ポンプ駆動軸93に同軸の対向する部位に円筒ボス部11Rsが右方に突出形成されており、同円筒ボス部11Rsに挿入され軸支されたギア軸96と同軸のポンプ駆動軸93とが軸受蓋部材95の円筒状軸受部内で連結されて一体に回転するようになっている。
【0063】
このギア軸96に嵌着されたポンプ被動ギア97が前記プライマリ駆動ギア36と噛合している。
したがって、クランク軸20の回転がプライマリ駆動ギア36とポンプ被動ギア97との噛合いを介してギア軸96およびポンプ駆動軸93に伝達されてスカベンジポンプ91およびフィードポンプ92が駆動される。
【0064】
スカベンジポンプ91とフィードポンプ92が組み込まれる内側右ケースカバー52の右側面図を図6に、左側面図を図7に示す。
内側右ケースカバー52が被せられる右クランクケース11Rは、図2に示す右側面図を参照して、プライマリ被動ギア45,プライマリ駆動ギア36,バランサ被動ギア49,ポンプ被動ギア97等のギア機構および変速駆動機構74等を外周壁が囲み、その外周壁の右端面を合わせ面11zとして内側右ケースカバー52が右側から合わせられ、内側右ケースカバー52の外周壁52sの左端面は右クランクケース11Rの合わせ面11zに対面する合わせ面52zが形成されている(図7参照)。
【0065】
内側右ケースカバー52の後寄りに変速クラッチ46を覆うクラッチカバー部52cがドーム状に大きく膨出しており、図7を参照して、クラッチカバー部52cの前方上部の外周壁52sの内側に隔壁52uに画成されて上位オイルタンクT1が左方に開口して形成され、クラッチカバー部52cの下方には環状の隔壁52dに囲まれて下位オイルタンクT3が左方に開口して形成されている。
【0066】
上位オイルタンクT1の隔壁52uに対応し互いに端面を合わせることができる隔壁11uが右クランクケース11Rに形成されており(図2参照)、隔壁11uの端面と合わせ面11zとで囲まれた内側の底の浅い凹みが上位オイルタンクT1の一部をなす。
また下位オイルタンクT3の環状の隔壁52dの端面には閉塞板54が当接して固着され下位オイルタンクT3が構成される(図5参照)。
【0067】
上位オイルタンクT1の側壁には円孔が穿孔され、その周りに後記するリリーフバルブ110を嵌着して取り付ける嵌着孔を備える円筒取付けボス部52rが形成されている。
この上位オイルタンクT1とその下方のポンプハウジング52pとの間に、右クランク軸体20Raの軸端部が挿入される前記円筒ボス部52aが形成されている(図7参照)。
【0068】
図7を参照して、ポンプハウジング52pの下方には、合わせ面52zが上下幅広に形成されて水平の仕切り壁52eにより仕切り壁52eの下側にオイル溜め11Pの一部が形成され、仕切り壁52eの上側は汲上げ油路L1が形成されている(図3参照)。
汲上げ油路L1は上方のスカベンジポンプ91の汲上げポート91iに連通している。
【0069】
内側右ケースカバー52の仕切り壁52eに対応する右クランクケース11Rの部分は、図2を参照して、やはり合わせ面11zが上下幅広に形成されて、凹部11dが形成されている。
この凹部11dの仕切り壁52eと同じ高さ位置に前後に溝条11v,11vが形成されており、この前後溝条11v,11vにストレーナ99のフレームを嵌合してストレーナ99を凹部11dに挿入して凹部11d内を上下に仕切る。
【0070】
右クランクケース11Rに内側右ケースカバー52を被せ、互いの合わせ面11z,52zを合わすと、右クランクケース11Rの凹部11dに挿入したストレーナ99の右端面を内側右ケースカバー52の仕切り壁52eが押さえてストレーナ99を固定することができ、ストレーナ99は凹部11d内を完全に上下に仕切る(図3参照)。
したがって、図3に示すように、スカベンジポンプ91が駆動すると、オイル溜め11Pに溜まったオイルがストレーナ99を通過して塵埃を除去されて汲上げ油路L1を通って汲み上げられる。
【0071】
一方、内側右ケースカバー52の右側面は、図6に示すように、前半部に外側右ケースカバー55が重ね合わされる合わせ面53zを右端面に有する隔壁53が複雑な形状をして形成されている。
図6を参照して、前記ポンプハウジング52pも隔壁53の一部をなしている。
この下方寄りのポンプハウジング52pの後側から上方に展開する環状の隔壁53mに囲まれて中位オイルタンクT2が右方を開口して形成されている。
中位オイルタンクT2は、外側右ケースカバー55により開口が塞がれて構成される。
【0072】
したがって、中位オイルタンクT2は内側右ケースカバー52の側壁の右側に構成され、前記上位オイルタンクT1と下位オイルタンクT3は内側右ケースカバー52の側壁の左側に構成される。
そして、内側右ケースカバー52における中位オイルタンクT2の上部の側壁の一部が開口して上位オイルタンクT1と連通する連通口t12が形成されるとともに、中位オイルタンクT2の下部の側壁の一部が開口して下位オイルタンクT3と連通する連通口t23が形成されている。
【0073】
すなわち、内側右ケースカバー52には、その上部内側(左側)に上位オイルタンクT1が構成され、外側(右側)に中位オイルタンクT2が構成され、下部内側(左側)に下位オイルタンクT3が構成され、上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2が連通口t12により連通し、中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3が連通口t23により連通して、上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3とを合わせた1つの大きな容積のオイル貯留空間が形成される。
【0074】
図6を参照して、内側右ケースカバー52の外側(右側)の隔壁53の前部に、オイルフィルタ100を構成する円筒状のフィルタハウジング53fが形成されている。
フィルタハウジング53f内の底壁の中央にフィルタ出口52fが形成され、フィルタ出口52fから後方の円筒ボス部52aに向けて直線的にオイル供給管52gが底壁を膨出して形成され(図7参照)、オイル供給管52g内の供給油路L5の下流端は円筒ボス部52a内と連通孔h5を介して連通する。
【0075】
円筒ボス部52a内に挿入される右クランク軸体20Raにはクランクピン21の軸受部に連通する軸孔20tが形成されていて、オイルフィルタ100のフィルタ出口52fから供給油路L5に流出したオイルは、連通孔h5を経て円筒ボス部52a内に入り、右クランク軸体20Raの軸孔20tからクランクピン21に供給されて潤滑する。
なお、供給油路L5を形成するオイル管52gはフィルタ出口52fから前方にも延長されている。
【0076】
また、フィルタ出口52fから下方にオイル供給管52hが底壁を膨出して形成され(図7参照)、オイル供給管52h内に供給油路L11が形成され、その下端に直交して内側(左側)に円筒管52hhが突出して、円筒管52hh内に供給油路L11に連通する供給油路L12が形成されている(図7,図10参照)。
オイル供給管52hの途中に油圧センサ111が取り付けられ、その感圧部が挿入される円孔52hsが外側(右側)に開口して設けられている(図6,図10参照)。
【0077】
図10に示すように、内側右ケースカバー52の供給油路L12は、右クランクケース11Rと左クランクケース11Lの供給油路L13に連通し、供給油路L13は左右軸受壁11Lw,11Rwにそれぞれ穿孔された供給油路L14,L14に直交して連通し、供給油路L14,L14はクランク軸20を軸支する軸受孔の軸受ブッシュ22,22の貫通孔に連通してメタルベアリング23,23に至っている。
【0078】
したがって、オイルフィルタ100のフィルタ出口52fから供給油路L11に流出したオイルは、供給油路L12,L13および供給油路L14,L14を通ってクランク軸20の軸受であるメタルベアリング23,23に供給され潤滑される。
オイル供給管52hの途中に取り付けられた油圧センサ111が、供給油路L11の油圧を検出しており、検出油圧はメタルベアリング23,23に供給される油圧を適正圧に維持する制御に供される。
【0079】
スカベンジポンプ91の汲出しポート91eより上方に延出した汲出し油路L2は、内側右ケースカバー52の側壁の貫通口h1を外側(右側)に貫通し(図7参照)、汲出し油路L2は、さらに貫通口h1から外側(右側)を隔壁53により円筒状のフィルタハウジング53fの外周に沿って前方斜め上方に延出し(図6参照)、その端部の貫通口h2を内側(左側)に貫通して上位オイルタンクT1に連通している。
【0080】
図7を参照して、下位オイルタンクT3を形成する環状の隔壁52dの下側の水平隔壁52dより上方に膨出して仕切り壁52ddが矩形に形成されており、仕切り壁52ddの前後側部の下端が切り欠かれて連通口h3,h3が形成され、仕切り壁52ddで囲まれた側壁の上部に貫通口h4が形成されて仕切り壁52dd内を外側(右側)と貫通している。
この貫通口h4とフィードポンプ92の吸入ポート92iとを隔壁53により形成された吸入油路L3が連通している(図6参照)。
図6を参照して、フィードポンプ92の吐出ポート92eから前斜め上方に延出した吐出油路L4は、隔壁53により形成されオイルフィルタ100のフィルタハウジング53fを貫通してフィルタハウジング53f内に連通している。
【0081】
前記した供給油路L5の下流端は、貫通孔h5を介して円筒ボス部52a内と連通するとともに、図6に示すように、供給油路L5の下流端からはさらに供給油路L6がスカベンジポンプ91の前記汲出し油路L2に沿って上方に延出している。
この供給油路L6は、隔壁53で形成され、前記汲出し油路L2と共通の仕切り壁53nにより隣接して形成される。
【0082】
図6を参照して、供給油路L6は上方に延びて上部で前後に分岐し、後方に分岐した供給油路L6の端部が左方に貫通した供給油路L7に連通し、前方に分岐した供給油路L6の端部が左方に貫通した供給油路L8に連通している。
【0083】
図2を参照して、右クランクケース11Rの右側端面の合わせ面11zの上側部分に、内側右ケースカバー52の前記供給油路L7に連通する供給油路L7´が後方に延出して形成され、同供給油路L7´を流れたオイルは変速機40のメイン軸41およびカウンタ軸42等の潤滑に供される。
また、内側右ケースカバー52の前記供給油路L8は、右クランクケース11Rの上部右寄りに穿孔された供給油路L8´に連通し、供給油路L8´は屈曲してシリンダブロック12側に延出し、シリンダヘッド13に構成される動弁機構60にオイルを供給するようになっている。
【0084】
また、図6を参照して、オイルフィルタ100のフィルタハウジング53fの上側一部が欠損して後斜め上方にリリーフ油路L21が延出しており、リリーフ油路L21の上端は前記リリーフバルブ110を嵌合して取り付ける円筒取付けボス部52r内に連通している。
このリリーフ油路L21も隔壁53で形成されている。
円筒取付けボス部52rに嵌合して取り付けられるリーフバルブ110は上位タンクT1内に設けられる。
【0085】
フィードポンプ92により吐出油路L4に吐出したオイルはオイルフィルタ100に至ると、フィルタエレメント100fの外周を巡ってフィルタエレメント100fを内側に通過するが、一部フィルタエレメント100fの外周からリリーフ油路L21に分岐してリリーフバルブ110に達しているので、リリーフバルブ110はフィードポンプ92の吐出油圧が作用しており、この吐出油圧が所定圧以上あるときは、リリーフバルブ110が開いて余剰オイルをリリーフ油路L21から上位タンクT1に戻し、供給オイルの油圧を調節する。
【0086】
以上のように、内側右ケースカバー52の右側面の前半部に形成される隔壁53は、その右端面が外側右ケースカバー55が重ね合わされる合わせ面53zをなすもので、合わせ面53zは同一平面上にある。
したがって、外側右ケースカバー55は、内側右ケースカバー52の右側面の前半部の隔壁53の外郭と同じ形状をしており(図8参照)、内面(左側面)が概ね平坦に形成されている。
【0087】
ただし、外側右ケースカバー55のオイルフィルタ100の部分は、図9に示すように、有底円筒状に外側に膨出してフィルタハウジング55fを形成しており、内側右ケースカバー52の円筒状のフィルタハウジング53fと合わされて内部に円柱空間を構成して、フィルタエレメント100fを収容するようになっている。
すなわち、オイルフィルタ100は内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55に挟まれて配設される。
【0088】
内側右ケースカバー52の右側面の前半部に形成される隔壁53は、その合わせ面が外側右ケースカバー55の内面に当接されて合わされることで、
内側右ケースカバー52の隔壁53で形成される汲上げ油路L1,汲出し油路L2,吸入油路L3,吐出油路L4,供給油路L6,リリーフ油路L21は、隔壁53の合わせ面53zに当接して外側右ケースカバー55が重ね合わされることで完成し、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成される。
【0089】
本内燃機関10の潤滑系は、概ね以上のように構成されているので、クランク軸20の回転動力がプライマリ駆動ギア36とポンプ被動ギア97の噛合を介してポンプ駆動軸93に伝達され、スカベンジポンプ91とフィードポンプ92が駆動されると、スカベンジポンプ91の駆動で、オイル溜め11Pに溜まったオイルがストレーナ99を介して塵埃を除去されて汲上げ油路L1を通って汲み上げられ、スカベンジポンプ91の汲出しポート91eより吐出したオイルは汲出し油路L2を通って上位オイルタンクT1に汲み上げられる。
【0090】
概ね内側右ケースカバー52に形成された上位オイルタンクT1と中位オイルタンクT2と下位オイルタンクT3は、連通口t12,t23を介して連通して1つのオイル貯留空間なしているので、上位オイルタンクT1に汲み上げられたオイルは連通口t12を介して中位オイルタンクT2に流れ、中位オイルタンクT2から連通口t23を介して下位オイルタンクT3に流れ、下位オイルタンクT3から中位オイルタンクT2,上位オイルタンクT1の順に溜まっていく。
【0091】
このオイルタンクに溜まったオイルは、フィードポンプ92の駆動で、下位オイルタンクT3から吸入油路L3を通って吸入され、フィードポンプ92の吐出ポート92eより吐出したオイルは吐出油路L4を通ってオイルフィルタ100に至る。
そしてオイルフィルタ100のフィルタエレメント100fを内側に通過して浄化されフィルタ出口52fから流出したオイルは供給油路L5と供給油路L11に分流し、一方の供給油路L5に分流したオイルは貫通孔h5を通ってクランク軸20の軸孔20tに流入してクランクピン21の潤滑に供給されるとともに、供給油路L6を流れて分流し、一方は変速機40の所要潤滑部位に供給されて潤滑し、他方はシリンダヘッド13の方へ流れ動弁機構60の所要潤滑部位に供給される。
【0092】
以上のドライサンプ式潤滑系に構成した内燃機関において、汲出し油路L2はスカベンジポンプ91の上部に設けた汲出しポート91eから延出し(図7参照)、吐出油路L4はフィードポンプ92の上部に設けた吐出ポート92eから延出する(図6参照)ので、スカベンジポンプ91およびフィードポンプ92においてエアの噛み込みを防止して安定したオイルの汲み出しおよび吐出をすることができる。
また、図6に示すように、汲出しポート91eと吐出ポート92eが隣接するとともに、汲出し油路L2と吐出油路L4は、共通の仕切り壁53oにより隣接して延出するので、汲出し油路L2および吐出油路L4の加工が容易である。
【0093】
図6を参照して、吐出油路L4はオイルフィルタ100のオイル流入側の外周部に連通し、オイルフィルタ100のオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路L5,L11,L12は内側右ケースカバー52に形成され、供給油路L6は内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成されるので、供給油路の加工が容易である。
【0094】
図6に示すように、汲出し油路L2は、内側右ケースカバー52のオイルフィルタ100を覆う円筒状のフィルタハウジング53fの外周に沿って形成されるので、オイルフィルタ100のメンテナンス性を良好とし、汲出し油路L2の構成を簡素化し加工を容易とする。
また、供給油路L6は、汲出し油路L2と共通の仕切り壁53nにより隣接して形成されるので、供給油路L6の加工を容易とすることができる。
【0095】
オイルタンクは、図6を参照して、内側右ケースカバー52の側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクT1と、側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクT3と、側壁の外側に形成され上部が上位オイルタンクT1に連通し下部が下位オイルタンクT3に連通する中位オイルタンクT2とからなり、上位オイルタンクT1はクランク軸20の上方に位置して汲出し油路L2に連通し、下位オイルタンクT3はクランク軸20の下方に位置して吸入油路L3に連通するので、クランク軸20の上方の空間と下方の空間をオイルタンクとして利用することで、内燃機関の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関10の大型化を避けることができる。
【0096】
クランク軸20の前方でクランク軸20に平行に指向させてバランサ軸48をクランクケース11に軸支したバランサ47が設けられており、図2を参照して、クランク軸20に嵌着されたバランサ駆動ギア35とバランサ軸48に嵌着されたバランサ被動ギア49が噛み合い、上位オイルタンクT1は、バランサ駆動ギア35とバランサ被動ギア49の上方に位置して内側右ケースカバー52と右クランクケース11Rの合わせ面に形成されるので、小径のバランサ駆動ギア35とバランサ被動ギア49の上方の空間を利用するとともに、右クランクケース11Rの一部を用いて上位オイルタンクT1を構成するため、右ケースカバー52,55の外側への膨出を抑えて上位オイルタンクT1のタンク容積を容易に確保することができる。
【0097】
クランク軸20の後方に配置された変速機40のメイン軸41の一端に変速クラッチ46が支持され、変速クラッチ46の下方近傍に変速駆動機構74が構成され(図2,図5参照)、図5に示すように、下位オイルタンクT3は、変速駆動機構74とクランク軸20の軸方向視で重なる位置にあるので、大型の変速クラッチ46の下方で変速駆動機構74の側方の広い空間を下位オイルタンクT3として利用することで、内燃機関10の側方への張り出しを抑えてタンク容積を確保することができ、内燃機関の大型化を避けることができる。
【0098】
上位オイルタンクT1の側壁に穿孔された円孔の周りに形成された円筒取付けボス部52rの嵌着孔にリリーフバルブ110が嵌着され、オイルフィルタ100のオイル流入側の外周部からリリーフバルブ110に連通するリリーフ油路L21が内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成されるので、フィードポンプ92からの吐出油圧が所定圧以上となると、余剰オイルを上位オイルタンクT1に戻すリリーフバルブ110が上位オイルタンクT1の側壁に設けられ、フィードポンプ92からの吐出オイルをオイルフィルタ100のオイル流入側の外周部を利用してリリーフバルブ110に導くことで、リリーフ油路L21を短くし、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55との合わせ面に形成することで、リリーフ油路L21の加工を容易とするとともに、効率良くオイルをオイルタンクに戻すことができる。
【0099】
以上記述したクランクケース10の右側を覆う内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55は、ドライサンプ式潤滑系を構成するものであり、この内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55をウエットサンプ式の右ケースカバーに交換すれば、ウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関とすることができる。
以下、図10ないし図13に基づきウエットサンプ式潤滑系を構成した内燃機関について説明する。
【0100】
ウエットサンプ式の右ケースカバー200の右側面図を図11に、左側面図を図12に示す。
本右ケースカバー200は、前記内側右ケースカバー52と外形は略同じ形状をしている。
ウエットサンプ式潤滑系なので、オイルタンクは存在せず、オイルポンプは1つだけであり、右ケースカバー200には、オイルポンプ210とオイルフィルタ220が前記内側右ケースカバー52と略同じ位置に設けられる。
【0101】
右ケースカバー200の右クランクケース11Rに合される左側面には、図12に示すように、前記内側右ケースカバー52の合わせ面52zと同じ合わせ面200zが周囲を囲っており、オイルポンプ210のポンプハウジング200pおよび右クランク軸体20Raの軸端部が挿入される円筒ボス部200aが内側右ケースカバー52のポンプハウジング52p,円筒ボス部52aと同じ位置に同じように形成されている。
【0102】
図13を参照して、ポンプハウジング200pは左側が開口し、ポンプハウジング200p内に構成されるオイルポンプ210のポンプ駆動軸211は、ドライサンプ式で使用された軸受蓋部材95により軸支されるとともにポンプハウジング200pの開口を閉塞する。
図13に示すように、ポンプ駆動軸211は、同軸のギア軸96と軸受蓋部材95の円筒状軸受部内で連結されて一体に回転するようになっている。
【0103】
ポンプハウジング200pの下方には、合わせ面200zが上下幅広に形成されて水平の仕切り壁200eにより仕切り壁200eの下側にオイル溜め11Pの一部が形成され、仕切り壁52eの上側は吸入油路L51が形成されている(図13参照)。
右クランクケース11Rの凹部11dに挿入したストレーナ99の右端面を右ケースカバー200の仕切り壁200eが押さえてストレーナ99を固定するのはドライサンプ式と同じである(図13参照)。
図12および図13に示すように、吸入油路L51はオイルポンプ210の下部の吸入ポート210iに連通している。
【0104】
さらに、図11に示すように、オイルフィルタ220の円筒状をなすフィルタハウジング201fが、内側右ケースカバー52のフィルタハウジング53fと同じ位置に形成されており、同フィルタハウジング201fは、円筒形のまま右方に突出して開口しており、同開口からフィルタハウジング201f内にフィルタエレメント220fが挿入され、蓋部材205により閉塞される(図13参照)。
オイルポンプ210の上部の吐出ポート210eとオイルフィルタ220のフィルタハウジング201f内とが吐出油路L52によって連通されている。
【0105】
フィルタハウジング201f内の底壁の中央のフィルタ出口201fから後方の円筒ボス部200aに向けて直線的にオイル供給管200gが底壁を膨出して形成され(図12参照)、オイル供給管200g内の供給油路L53の下流端は円筒ボス部200a内と連通孔h53を介して連通する。
【0106】
また、図12を参照して、フィルタ出口201fから下方にオイル供給管200hが底壁を膨出して形成され、オイル供給管200h内に供給油路L61が形成され、その下端に直交して内側(左側)に円筒管200hhが突出して、円筒管200hh内に供給油路L61に連通する供給油路L62が形成されており、供給油路L62は右クランクケース11Rの供給油路L13に連通してクランク軸20の軸受につながり、クランク軸20の軸受にオイルが供給され潤滑される。
【0107】
供給油路L53の下流端からはさらに供給油路L54が上方に延出しており、供給油路L54は上部で前後に分岐し、後方に分岐した供給油路L54の端部が左方に貫通した供給油路L55に連通し、前方に分岐した供給油路L54の端部が左方に貫通した供給油路L56に連通している(図11,図12参照)。
供給油路L55は右クランクケース11Rの変速機40の潤滑部位にオイルを導く供給油路L7´に連結され、供給油路L56はシリンダヘッド13に構成される動弁機構60の潤滑部位にオイルを導く供給油路L8´に連結される(図11,図12参照)。
【0108】
なお、オイルフィルタ220のフィルタハウジング200fの上側一部が欠損して後斜め上方にリリーフ油路L71が延出しており、リリーフ油路L71の上端は前記リリーフバルブ110を嵌合して取り付ける円筒取付けボス部200r内に連通している(図11,図12参照)。
【0109】
右ケースカバー200は、以上のようにオイルポンプ210とオイルフィルタ220を備えており、オイルタンクは有していない。
このウエットサンプ式の右ケースカバー200を、先のドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55と交換して右クランクケース11Rに取り付けると、ウエットサンプ式の潤滑系が構成される。
【0110】
本内燃機関10は、ドライサンプ式の内側右ケースカバー52にオイルタンク(上位オイルタンクT1,中位オイルタンクT2,下位オイルタンクT3)の大部分が構成されるので、クランクケース11に大型のオイルタンクを形成する必要がなく、クランクケース11を小型化することができ、この小型のクランクケース11の側方を覆うドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55をウエットサンプ式の右ケースカバー200に交換することによりウエットサンプ式潤滑系の内燃機関10を小型にかつ低コストに構成することができる。
【0111】
ドライサンプ式の内側右ケースカバー52には、スカベンジポンプ91がオイルを汲み上げる汲上げ油路L1、汲み出す汲出し油路L2およびフィードポンプ92がオイルを吸入する吸入油路L3,吐出する吐出油路L4等の油路が一体に形成されており、他方のウエットサンプ式の右ケースカバー200には、オイルポンプ210がオイルを吸入する吸入油路L51,吐出する吐出油路L52等の油路が一体に形成されているので、クランクケース11の側方を覆うケースカバーを交換するだけで、簡単にドライサンプ式とウエットサンプ式の潤滑系を変えることができる。
【0112】
ドライサンプ式の内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55に挟まれてオイルフィルタ100が配設され、内側右ケースカバー52と外側右ケースカバー55とともにオイルフィルタ100も交換され、ウエットサンプ式潤滑系に簡単に変えることができる。
【符号の説明】
【0113】
10…内燃機関、11…クランクケース、11C…クランク室、11M…ミッション室、11P…オイル溜め、11L…左クランクケース、11R…右クランクケース、11Lw,11Rw…軸受壁、11Lb,11Rb…主軸受部、12…シリンダブロック、12a…シリンダ、12b…シリンダボア、13…シリンダヘッド、14…シリンダヘッドカバー、15…スタッドボルト、16…ピストン、17…ピストンピン、18…コンロッド、19…点火栓、
20…クランク軸、20L,20R…クランク軸半体、20La,20Ra…クランク軸体、20Lw,20Rw…クランクウエブ、a1…ジャーナル部、21…クランクピン、22…軸受ブッシュ、23…メタルベアリング、24…、25…駆動チェーンスプロケット、26…ナット部材、27…スタータ被動ギア、28…ローラベアリング、29…一方向クラッチ、30…ACジェネレータ、30R…ACGロータ、30r…アウタロータ、30f…フライホイール、30s…インナステータ、31…ワッシャ、32…ナット部材、33…ローラベアリング、34…キー部材、35…バランサ駆動ギア、36…プライマリ駆動ギア、37…ワッシャ、38…ナット部材、
40…変速機、41…メイン軸、42…カウンタ軸、43…出力スプロケット、44…駆動チェーン、45…プライマリ被動ギア、46…変速クラッチ、47…バランサ、47w…バランスウエイト、48…バランサ軸、49…バランサ被動ギア、
50…左ケースカバー、52…内側右ケースカバー、53…隔壁、53f…フィルタハウジング、53n…仕切り壁、55…外側右ケースカバー、
60…動弁機構、61…吸気弁、62…排気弁、63…、64…、65…カム軸、66e,66i…ロッカアームシャフト、67i…吸気ロッカアーム、67e…排気ロッカアーム、68…被動チェーンスプロケット、69…カムチェーン、
71,72…シフトフォーク軸、71a、72a,72b…シフトフォーク、73…シフトドラム、74…変速駆動機構、75…シフトスピンドル、76…チェンジアーム、77…シフタプレート、78…ピンプレート、
80…スタータモータ、81…駆動軸、81a…スタータ駆動ギア、82…減速ギア軸、83a…大径ギア、83b…小径ギア、83a…大径ギア、83b…小径ギア、
90…オイルポンプ、91…スカベンジポンプ、91i…汲上げポート、91e…汲出しポート、92…フィードポンプ、92i…吸入ポート、92e…吐出ポート、93…ポンプ駆動軸、94…、95…軸受蓋部材、96…ギア軸、97…ポンプ被動ギア、99…ストレーナ、
100…オイルフィルタ、110…リリーフバルブ、111…油圧センサ、
L1…汲上げ油路、L2…汲出し油路、L3…吸入油路、L4…吐出油路、L5,L6L7,L8,L7´,L8´…供給油路、L11,L12,L13…供給油路、L21…リリーフ油路、
T1…上位オイルタンク、T2…中位オイルタンク、T3…下位オイルタンク、
200…右ケースカバー、205…蓋部材、
210…オイルポンプ、210i…吸入ポート、210e…吐出ポート、220…オイルフィルタ、220f…フィルタエレメント、
L51…吸入油路、L52…吐出油路、L53,L54,L55,L56…供給油路、L61,L62…供給油路、L71…リリーフ油路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、
前記ケースカバーは前記クランクケースに合わされる内側ケースカバーと前記内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、
オイルタンクの大部分が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーにより構成されることを特徴とする内燃機関のケースカバー構造。
【請求項2】
前記オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、
前記スカベンジポンプにより前記クランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルが前記オイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路および前記フィードポンプにより前記オイルタンクからオイルが吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項3】
前記汲出し油路は前記スカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、
前記吐出油路は前記フィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出し、
前記汲出しポートと前記吐出ポートが隣接するとともに、前記汲出し油路と前記吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出することを特徴とする請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項4】
前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設され、
前記吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、
前記オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は前記内側ケースカバーおよび前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項2または請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項5】
前記汲出し油路は、前記内側ケースカバーの前記オイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されることを特徴とする請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項6】
前記供給油路は、前記汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されることを特徴とする請求項4または請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項7】
前記オイルタンクは、前記内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、前記側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、前記側壁の外側に形成され上部が前記上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、
前記上位オイルタンクは前記クランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、
前記下位オイルタンクは前記クランク軸の下方に位置して前記吸入油路に連通することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項8】
前記クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、
前記クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアと前記バランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、
前記上位オイルタンクは、前記バランサ駆動ギアと前記バランサ被動ギアの上方に位置して前記内側ケースカバーと前記クランクケースの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項9】
前記クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、
前記変速クラッチの下方近傍に変速駆動機構が構成され、
前記下位オイルタンクは、前記変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあることを特徴とする請求項7または請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項10】
前記上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、
前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部から前記リリーフバルブに連通するリリーフ油路が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項1】
クランク軸を回転自在に軸支するクランクケースの外側をケースカバーが覆い同ケースカバーに組み込まれたオイルポンプにより各潤滑部位にオイルを供給する潤滑系を備えた内燃機関のケースカバー構造において、
前記ケースカバーは前記クランクケースに合わされる内側ケースカバーと前記内側ケースカバーの外側を覆う外側ケースカバーとからなり、
オイルタンクの大部分が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーにより構成されることを特徴とする内燃機関のケースカバー構造。
【請求項2】
前記オイルポンプが同軸に一体に駆動するスカベンジポンプとフィードポンプとからなり、
前記スカベンジポンプにより前記クランクケースの底部のオイル溜めから汲み上げられるオイルの通路である汲上げ油路と汲み上げられたオイルが前記オイルタンクに汲み出されるオイルの通路である汲出し油路および前記フィードポンプにより前記オイルタンクからオイルが吸入されるオイルの通路である吸入油路と吸入されたオイルが吐出されるオイルの通路である吐出油路が、前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項3】
前記汲出し油路は前記スカベンジポンプの上部に設けた汲出しポートから延出し、
前記吐出油路は前記フィードポンプの上部に設けた吐出ポートから延出し、
前記汲出しポートと前記吐出ポートが隣接するとともに、前記汲出し油路と前記吐出油路は、共通の仕切り壁により隣接して延出することを特徴とする請求項2記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項4】
前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーに挟まれてオイルフィルタが配設され、
前記吐出油路は前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部に連通し、
前記オイルフィルタのオイル流出側の内周部から流出するオイルを各潤滑部位に供給する供給油路は前記内側ケースカバーおよび前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項2または請求項3記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項5】
前記汲出し油路は、前記内側ケースカバーの前記オイルフィルタを覆う円筒状のフィルタハウジングの外周に沿って形成されることを特徴とする請求項4記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項6】
前記供給油路は、前記汲出し油路と共通の仕切り壁により隣接して形成されることを特徴とする請求項4または請求項5記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項7】
前記オイルタンクは、前記内側ケースカバーの側壁の内側上部に形成された上位オイルタンクと、前記側壁の内側下部に形成された下位オイルタンクと、前記側壁の外側に形成され上部が前記上位オイルタンクに連通し下部が前記下位オイルタンクに連通する中位オイルタンクとからなり、
前記上位オイルタンクは前記クランク軸の上方に位置して前記汲出し油路に連通し、
前記下位オイルタンクは前記クランク軸の下方に位置して前記吸入油路に連通することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項8】
前記クランク軸に平行に指向させてバランサ軸を前記クランクケースに軸支したバランサが設けられ、
前記クランク軸に嵌着されたバランサ駆動ギアと前記バランサ軸に嵌着されたバランサ被動ギアが噛み合い、
前記上位オイルタンクは、前記バランサ駆動ギアと前記バランサ被動ギアの上方に位置して前記内側ケースカバーと前記クランクケースの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項7記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項9】
前記クランク軸の後方に配置された変速機のメイン軸の一端に変速クラッチが支持され、
前記変速クラッチの下方近傍に変速駆動機構が構成され、
前記下位オイルタンクは、前記変速駆動機構とクランク軸の軸方向視で重なる位置にあることを特徴とする請求項7または請求項8記載の内燃機関のケースカバー構造。
【請求項10】
前記上位オイルタンクの側壁に穿孔された嵌着孔にリリーフバルブが嵌着され、
前記オイルフィルタのオイル流入側の外周部から前記リリーフバルブに連通するリリーフ油路が前記内側ケースカバーと前記外側ケースカバーとの合わせ面に形成されることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかの項記載の内燃機関のケースカバー構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−185191(P2011−185191A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52602(P2010−52602)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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