説明

内燃機関の制御システム

【課題】EGRガスの供給不足が起こることを抑制する。
【解決手段】過給機5と、コンプレッサ5aを駆動する電動機51と、タービン5bよりも下流の排気通路4とコンプレッサ5aよりも上流の吸気通路3とを接続する低圧EGR装置30と、タービン5bよりも上流の排気通路4とコンプレッサ5aよりも下流の吸気通路3とを接続する高圧EGR装置40と、低圧EGRガスを供給するときに電動機51によりコンプレッサ5aを駆動し、高圧EGRガスを供給するときに電動機51によるコンプレッサ5aの駆動を停止する制御装置20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシストターボチャージャと、該ターボチャージャのタービンよりも上流の排気通路とコンプレッサよりも下流の吸気通路とを接続するEGR通路(以下、高圧EGR通路という。)からEGRガス(以下、高圧EGRガスという。)を供給する高圧EGR装置と、タービンよりも下流の排気通路とコンプレッサよりも上流の吸気通路とを接続するEGR通路(以下、低圧EGR通路という。)からEGRガス(以下、低圧EGRガスという。)を供給する低圧EGR装置と、を備える技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、電動アシストターボチャージャを作動させると、コンプレッサよりも下流側の吸気の圧力が上昇するため、高圧EGR装置により高圧EGRガスを供給することが困難となる虞がある。このため、高圧EGRガスを供給する運転領域において、高圧EGRガスが不足し、NOxの排出量が増加する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−200362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、EGRガスの供給不足が起こることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明による内燃機関の制御システムは、
内燃機関の排気通路に配置されるタービンと前記内燃機関の吸気通路に配置されるコンプレッサとを有し前記内燃機関から排出される排気のエネルギを利用して前記内燃機関に吸入される吸気の過給を行う過給機と、
前記コンプレッサを駆動する電動機と、
前記タービンよりも下流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも上流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を低圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる低圧EGR装置と、
前記タービンよりも上流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも下流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を高圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる高圧EGR装置と、
前記低圧EGRガスを供給するときに前記電動機により前記コンプレッサを駆動し、前記高圧EGRガスを供給するときに前記電動機による前記コンプレッサの駆動を停止する制御装置と、
を備える。
【0007】
ここで、電動機を作動させるとコンプレッサよりも下流側の圧力が上昇するため、高圧EGRガスを供給することが困難となる虞がある。このため、制御装置は、高圧EGRガスを供給するときには電動機を停止させる。これにより、コンプレッサよりも下流側の圧力の上昇が抑制されるため、高圧EGRガスが不足することを抑制できる。
【0008】
一方、電動機を作動させても、コンプレッサよりも上流側の圧力はほとんど変化しないため、低圧EGRガスの供給量は影響をほとんど受けない。したがって、低圧EGRガスを供給するときには、電動機によりコンプレッサを駆動させたとしても、十分な量の低圧EGRガスを供給することができる。したがって、低圧EGRガスを供給するときに電動機を作動させれば、EGRガスの供給量が不足することを抑制できる。
【0009】
なお、過給機が可変ノズル型ターボチャージャである場合には、低圧EGRガスを供給するときに電動機を作動させた場合に、電動機の駆動力が大きくなる程、可変ノズルの開度を大きくしてもよい。これにより、ポンプ損失の増加を抑制することができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御装置は、前記電動機により前記コンプレッサを駆動する要求があるときに、前記電動機により前記コンプレッサを駆動すると共に、前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGRガスの供給を停止することができる。
【0011】
すなわち、電動機によりコンプレッサを駆動する要求があるときには、たとえ高圧EGRガスを供給する運転領域であっても、電動機によるコンプレッサの駆動が優先されて行われ、併せて、低圧EGRガスが供給される。ここで、前記電動機により前記コンプレッサを駆動する要求があるときとは、たとえば、加速の要求がなされたときである。これは、内燃機関の負荷が増加したときともいえる。このような場合に電動機を作動させることにより、内燃機関のトルクを増加させることができる。このときには、コンプレッサよりも下流側の圧力が上昇するため、高圧EGRガスを供給しようとすると、EGRガスが不足する虞がある。したがって、この場合には、高圧EGRガスを供給せずに、低圧EGRガスを供給する。これにより、EGRガスが不足することを抑制できる。
【0012】
また、上記課題を達成するために本発明による内燃機関の制御システムは、
内燃機関の排気通路に配置されるタービンと前記内燃機関の吸気通路に配置されるコンプレッサとを有し前記内燃機関から排出される排気のエネルギを利用して前記内燃機関に吸入される吸気の過給を行う過給機と、
前記コンプレッサを駆動する電動機と、
前記タービンよりも下流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも上流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を低圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる低圧EGR装置と、
前記タービンよりも上流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも下流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を高圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる高圧EGR装置と、
前記電動機により前記コンプレッサを駆動するときには、前記低圧EGR装置により前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGR装置による前記高圧EGRガスの供給を停止する制御装置と、
を備える。
【0013】
すなわち、電動機を作動させているときに、高圧EGRガスを供給せずに低圧EGRガスを供給すれば、EGRガスの供給量が減少することを抑制できる。
【0014】
なお、過給機が可変ノズル型ターボチャージャである場合には、電動機でコンプレッサを駆動するときに、電動機の駆動力が大きくなる程、可変ノズルの開度を大きくしてもよい。これにより、ポンプ損失の増加を抑制することができる。
【0015】
また、本発明において、前記制御装置は、前記内燃機関の過渡運転時に、前記電動機により前記コンプレッサを駆動すると共に、前記低圧EGR装置により前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGR装置による前記高圧EGRガスの供給を停止することができる

【0016】
たとえば、高回転高負荷側では、低圧EGRガスが供給され、低回転低負荷側では、高圧EGRガスが供給される。なお、低圧EGRガスを供給する領域と高圧EGRガスを供給する領域と境界付近では、低圧EGRガス及び高圧EGRガスの両方が供給されてもよい。
【0017】
そして、内燃機関の過渡運転時には、低圧EGRガスを供給する領域と、高圧EGRガスを供給する領域と、を何度も往復する場合がある。このような場合にも、低圧EGRガスを供給する領域に入る度に電動機を作動させていると、電動機の作動と停止とが何度も切り替わるため、内燃機関のトルクが変動する虞がある。これに対し、過渡運転されているときには常に電動機を作動させておけば、電動機の作動と停止とが何度も切り替わることを抑制できる。これにより、トルク変動を抑制し得る。また、電動機を作動させているときに、高圧EGRガスを供給せずに低圧EGRガスを供給すれば、EGRガスの供給量が減少することを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、EGRガスの供給不足が起こることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係る内燃機関とその吸・排気系の概略構成を示す図である。
【図2】機関回転数と機関負荷とEGR制御の制御モードとの関係を示した図である。
【図3】実施例1に係る電動機の制御フローを示したフローチャートである。
【図4】実施例2に係る制御を行わない場合の電動機の作動状態と、機関回転数の推移を示した図である。
【図5】実施例2に係る制御を行う場合の電動機の作動状態と、機関回転数の推移を示した図である。
【図6】実施例2に係るEGRガスの制御フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る内燃機関の制御システムの具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【0021】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る内燃機関とその吸・排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4サイクル・ディーゼルエンジンである。なお、本実施例ではディーゼルエンジンを例に挙げて説明するが、その他の例えばガソリンエンジンであっても同様に適用することができる。
【0022】
内燃機関1には、吸気通路3および排気通路4が接続されている。この吸気通路3の途中には、排気のエネルギを駆動源として作動するターボチャージャ5のコンプレッサ5aが設けられている。また、コンプレッサ5aよりも上流の吸気通路3には、該吸気通路3内を流通する吸気の流量を調節する第1吸気絞り弁6が設けられている。この第1吸気絞り弁6は、電動アクチュエータにより開閉される。第1吸気絞り弁6よりも上流の吸気通路3には、該吸気通路3内を流通する空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ7が設けられている。このエアフローメータ7により、内燃機関1の吸入空気量が測定される。
【0023】
コンプレッサ5aよりも下流の吸気通路3には、吸気と外気とで熱交換を行うインター
クーラ8が設けられている。そして、インタークーラ8よりも下流の吸気通路3には、該吸気通路3内を流通する吸気の流量を調整する第2吸気絞り弁9が設けられている。この第2吸気絞り弁9は、電動アクチュエータにより開閉される。
【0024】
一方、排気通路4の途中には、前記ターボチャージャ5のタービン5bが設けられている。また、タービン5bよりも下流の排気通路4には、パティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという。)10が設けられている。このフィルタ10には、例えば触媒を担持していても良い。
【0025】
ここで、ターボチャージャ5は、電動機付き可変ノズル型ターボチャージャである。ターボチャージャ5は、排気通路4に配置されるタービン5bと、吸気通路3に配置されるコンプレッサ5aと、タービン5bとコンプレッサ5aとの間の回転軸に取り付けられコンプレッサ5aを駆動する電動機51と、タービン5bに吹き付けられる排気の流速を変更可能に開閉動作する可変ノズル52と、を有する。タービン5bとコンプレッサ5aとは回転軸によって一体に連結され、コンプレッサ5aは、内燃機関1から排出されタービン5bに入力される排気のエネルギを利用して内燃機関に吸入される吸気の過給を行う。また、電動機51が駆動されると回転軸を強制的に回転させることができ、これによってコンプレッサ5aを強制駆動することができる。例えば、内燃機関1の搭載された車両の減速エネルギをオルタネータで回生し、回生した電力でターボチャージャ5の電動機51を作動させてもよい。なお、本実施例においてはターボチャージャ5が、本発明における過給機に相当する。
【0026】
そして、内燃機関1には、排気通路4内を流通する排気の一部を低圧で吸気通路3へ再循環させる低圧EGR装置30が備えられている。この低圧EGR装置30は、低圧EGR通路31、低圧EGR弁32、およびEGRクーラ33を備えて構成されている。
【0027】
低圧EGR通路31は、フィルタ10よりも下流側の排気通路4と、コンプレッサ5aよりも上流且つ第1吸気絞り弁6よりも下流の吸気通路3と、を接続している。この低圧EGR通路31を通って、排気が低圧で再循環される。そして、本実施例では、低圧EGR通路31を通って再循環される排気を低圧EGRガスと称している。なお、低圧EGR通路31の排気通路4側は、タービン5bよりも下流に接続されていれば良い。また、低圧EGR通路31の吸気通路3側は、コンプレッサ5aよりも上流に接続されていれば良い。
【0028】
また、低圧EGR弁32は、低圧EGR通路31の通路断面積を調整することにより、該低圧EGR通路31を流れる低圧EGRガスの量を調整する。EGRクーラ33は、該EGRクーラ33を通過する低圧EGRガスと、内燃機関1の冷却水とで熱交換をして、該低圧EGRガスの温度を低下させる。
【0029】
また、内燃機関1には、排気通路4内を流通する排気の一部を高圧で吸気通路3へ再循環させる高圧EGR装置40が備えられている。この高圧EGR装置40は、高圧EGR通路41、および高圧EGR弁42を備えて構成されている。
【0030】
高圧EGR通路41は、タービン5bよりも上流側の排気通路4と、第2吸気絞り弁9よりも下流の吸気通路3と、を接続している。この高圧EGR通路41を通って、排気が高圧で再循環される。そして、本実施例では、高圧EGR通路41を通って再循環される排気を高圧EGRガスと称している。なお、高圧EGR通路41の排気通路4側は、タービン5bよりも上流に接続されていれば良い。また、高圧EGR通路41の吸気通路3側は、コンプレッサ5aよりも下流に接続されていれば良い。
【0031】
また、高圧EGR弁42は、高圧EGR通路41の通路断面積を調整することにより、該高圧EGR通路41を流れる高圧EGRガスの量を調整する。
【0032】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御装置であるECU20が併設されている。このECU20は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1を制御する。
【0033】
また、ECU20には、上記センサの他、運転者がアクセルペダル14を踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し機関負荷を検出可能なアクセル開度センサ15、及び機関回転数を検出するクランクポジションセンサ16が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU20に入力されるようになっている。
【0034】
一方、ECU20には、第1吸気絞り弁6、第2吸気絞り弁9、低圧EGR弁32、高圧EGR弁42、電動機51、可変ノズル52が電気配線を介して接続されており、該ECU20によりこれらの機器が制御される。
【0035】
また、ECU20は、内燃機関1の運転状態(例えば機関回転数及び機関負荷)に応じて、EGRガスを低圧EGR装置30から供給するのか、高圧EGR装置40から供給するのか、または両方の装置から供給するのかを決定する。
【0036】
図2は、機関回転数と機関負荷とEGR制御の制御モードとの関係を示した図である。
【0037】
機関回転数及び機関負荷が共に低いとき(低回転低負荷領域)には、高圧EGR装置40のみを用いてEGRガスが供給される。この運転領域をHPL領域という。なお、たとえば冷却水温度が低いときにも高圧EGR装置40のみを用いてEGRガスが供給される。以下、高圧EGR装置40のみを用いてEGRガスを供給する制御モードをHPLモードという。このときの高圧EGR弁42の開度は、内燃機関1の運転状態(例えば機関回転数及び機関負荷)に応じて決定される。
【0038】
次に、機関回転数または機関負荷の少なくとも一方が高いとき(高回転領域、高負荷領域)には、低圧EGR装置30のみを用いてEGRガスが供給される。この運転領域をLPL領域という。以下、低圧EGR装置30のみを用いてEGRガスを供給する制御モードをLPLモードという。このときの低圧EGR弁32の開度は、内燃機関1の運転状態(例えば機関回転数及び機関負荷)に応じて決定される。
【0039】
なお、HPL領域とLPL領域との間にMPL領域を設定することもできる。MPL領域は、機関負荷が中程度のとき(中負荷領域)の運転領域である。この運転領域は、図2の一点鎖線で囲まれた領域である。そして、低圧EGR装置30及び高圧EGR装置40の両方を用いてEGRガスが供給される運転領域である。以下、低圧EGR装置30及び高圧EGR装置40の両方を用いてEGRガスを供給する制御モードをMPLモードという。このときの低圧EGR弁32及び高圧EGR弁42の開度は、内燃機関1の運転状態(例えば機関回転数及び機関負荷)に応じて決定される。なお、MPL領域は必ずしも必要ではなく、HPL領域と、LPL領域と、の2つの領域のみ設定してもよい。また、MPLモードは、LPLモードとHPLモードとを切り替えるための制御モードとしてもよい。
【0040】
そして、本実施例では、制御モードがLPLモードのときに、併せて、電動機51を作動させて積極的に過給を行う。LPLモードのときには、内燃機関1が高回転高負荷状態であるために、過給の効果が高い。すなわち、LPLモードのときに電動機51を作動させることにより過給圧を上昇させることができるので、ドライバビリティを向上させるこ
とができる。
【0041】
ここで、高圧EGR装置40は、タービン5bよりも上流側の排気通路4内の圧力P4と、コンプレッサ5aよりも下流側の圧力Pbと、の差圧を利用して高圧EGRガスを供給している。このときに、電動機51を作動させると、コンプレッサ5aよりも下流側の圧力Pbが上昇するため、前記差圧(P4−Pb)が小さくなる。したがって、HPLモードのときに電動機51を作動させると、EGRガスが不足してNOxの発生量が増加す
る虞がある。このため、たとえば、可変ノズル52を閉じることにより高圧EGRガスの供給量を増加させることも考えられるが、これによりポンプ損失が増加するので、電動機51を作動させる効果が低減してしまう。
【0042】
一方、低圧EGR装置30は、タービン5bよりも下流側の排気通路4内の圧力と、コンプレッサ5aよりも上流側の圧力と、の差圧を利用して低圧EGRガスを供給している。この差圧は、電動機51を作動させてもほとんど変化しない。したがって、電動機51を作動させたとしても、その影響をほとんど受けることなく、低圧EGRガスを供給することができる。そして、電動機51を作動させたときにコンプレッサ5aよりも下流側の圧力Pbが上昇した分、可変ノズル52を開くことによりポンプ損失を低減させることができる。このため、電動機51を作動させる効果が大きい。したがって、LPLモードのときに電動機51を作動させ、HPLモードのときには電動機51を停止させることで、単位消費電力当たりの燃費の向上度合いをより大きくすることができる。このように、限りある電力を効率よく利用することができる。なお、電動機51の駆動力(消費電力としてもよい)が大きくなるほど、可変ノズル52の開度を大きくしてもよい。
【0043】
図3は、本実施例に係る電動機51の制御フローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ECU20により所定の時間毎に繰り返し実行される。なお、本実施例においては本ルーチンを処理するECU20が、本発明における制御装置に相当する。
【0044】
ステップS101では、内燃機関1がLPL領域で運転されているか否か判定される。すなわち、低圧EGR装置30により低圧EGRガスを供給する状態であるか否か判定される。なお、本ステップにおいては、現時点での制御モードが、LPLモードであるか否か判定してもよい。ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS104へ進む。
【0045】
ステップS102では、バッテリ残容量(SOC)が閾値以上であるか否か判定される。本ステップでは、電動機51を作動させるだけの電力を確保できるか否か判定している。閾値は、電動機51を作動させることができるSOCの下限値として予め設定される。ステップS102で肯定判定がなされた場合にはステップS103へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS104へ進む。
【0046】
ステップS103では、電動機51が作動される。一方、ステップS104では、電動機51が停止される。
【0047】
このようにして、制御モードがLPLモードのときに限り電動機51を作動させることができる。これにより、EGRガスを適正に供給しつつ、燃費を向上させることができる。
【0048】
なお、ECU20は、電動機51によりコンプレッサ5aを駆動する要求があるときに、電動機51によりコンプレッサ5aを駆動すると共に、低圧EGRガスを供給し、高圧EGRガスの供給を停止してもよい。すなわち、電動機51の作動を最優先に考えてもよい。ここで、図2に示したHPL領域において、電動機51を作動させる要求があった場
合に、HPLモードのまま電動機51を作動させると、EGRガス量が不足する虞がある。しかし、電動機51を作動させる要求があるにもかかわらず電動機51を作動させないと、要求されるトルクを発生させることができない。これに対し、HPL領域であっても、電動機51を作動させると共にLPLモードに移行すれば、要求されるトルクを発生させることができ、且つ、EGRガス量が不足することもない。なお、電動機51によりコンプレッサ5aを駆動する要求があるときとは、たとえばアクセル開度センサ15の検出値の変化量が加速を示す閾値以上となるときとすることができる。
【0049】
<実施例2>
本実施例では、電動機51によりコンプレッサ5aを駆動するときには、低圧EGRガスを供給し、高圧EGRガスの供給を停止する。そして、過渡運転時には、電動機51を継続して作動させる。その他の装置などは実施例1と同じため説明を省略する。
【0050】
すなわち、図2に示したHPL領域において、HPLモードのまま電動機51を作動させると、EGRガス量が不足する虞がある。しかし、HPL領域において電動機51を作動させる要求がある場合もある。これに対し、HPL領域であっても、電動機51を作動させると共にLPLモードに移行すれば、要求されるトルクを発生させることができ、且つ、EGRガス量が不足することもない。
【0051】
ところで、内燃機関1が中負荷で運転されていると、内燃機関1の運転領域がHPL領域とLPL領域とを何度も往復することがある。このときに、実施例1のように電動機51を作動させると、電動機51の作動と停止とが短い時間で繰り返されるために、トルク変動が発生する。
【0052】
そこで本実施例では、内燃機関1の過渡運転時には、電動機51を継続して作動させる。これにより、トルク変動を抑制できる。なお、内燃機関1の過渡運転時であるか否かは、機関回転数または機関負荷に基づいて判定することができる。たとえば、アクセル開度センサ15又はクランクポジションセンサ16の検出値の変化量が過渡運転時を示す閾値以上の場合には、内燃機関1の過渡運転時であると判定できる。
【0053】
ここで、電動機51を作動させているときに高圧EGR装置40から高圧EGRガスを供給すると、EGRガスの不足によりNOxの発生量が増加する虞がある。このため、電
動機51を作動させているときには、低圧EGR装置30から低圧EGRガスを供給し、高圧EGR装置40からの高圧EGRガスの供給を停止させている。
【0054】
なお、低負荷時に低圧EGRガスを供給すると、ポンプ損失が増加するため、燃費が悪化する虞がある。これに対し、可変ノズル52を開くことでポンプ損失の増加を抑制することができる。この場合、電動機51の駆動力(消費電力としてもよい)が大きくなるほど、可変ノズル52の開度を大きくしてもよい。
【0055】
図4は、本実施例に係る制御を行わない場合の電動機51の作動状態と、機関回転数の推移を示した図である。一方、図5は、本実施例に係る制御を行う場合の電動機51の作動状態と、機関回転数の推移を示した図である。
【0056】
本実施例による制御を行わない場合には、LPL領域に入ると電動機51が作動(ON)され、LPL領域を出ると電動機51が停止(OFF)とされる。一方、本実施例による制御を行う場合には、LPL領域に入ると電動機51が作動され、その後にLPL領域を出ても、電動機51が作動されたままとなる。また、HPL領域に入っても、HPLモードには移行せずに、LPLモードのまま固定される。すなわち、電動機51が作動しているときには、低圧EGR装置30から低圧EGRガスを供給する。
【0057】
図6は、本実施例に係るEGRガスの制御フローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ECU20により所定の時間毎に繰り返し実行される。なお、本実施例においては本ルーチンを処理するECU20が、本発明における制御装置に相当する。
【0058】
ステップS201では、バッテリ残容量(SOC)が閾値以上であるか否か判定される。本ステップでは、電動機51を作動させるだけの電力を確保できるか否か判定している。閾値は、電動機51を作動させることができるSOCの下限値として予め設定される。ステップS201で肯定判定がなされた場合にはステップS202へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0059】
ステップS202では、加速要求があるか否か判定される。本ステップでは、内燃機関1が搭載される車両の運転者が加速を要求しているか否か判定される。また、本ステップでは、内燃機関1の運転状態が過渡状態であるか否か判定してもよい。例えば、アクセル開度センサ15の検出値の変化量が閾値以上の場合に加速要求があると判定される。ステップS202で肯定判定がなされた場合にはステップS203へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS205へ進む。
【0060】
ステップS203では、電動機51が作動される。そして、ステップS204では、低圧EGRガスのみを供給するLPLモードに固定される。一方、ステップS205では、通常制御が行われる。通常制御では、図2に示した関係にしたがって、LPLモード、HPLモード、MPLモードを切り替える。また、実施例1で説明した制御を通常制御としてもよい。
【0061】
このようにして、トルク変動を抑制することができるため、ドライバビリティを向上させることができる。また、EGRガスの供給量が不足することを抑制できるため、NOx
の発生量の増加を抑制できる。さらに、ポンプ損失の増加を抑制することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 内燃機関
2 気筒
3 吸気通路
4 排気通路
5 ターボチャージャ
5a コンプレッサ
5b タービン
6 第1吸気絞り弁
7 エアフローメータ
8 インタークーラ
9 第2吸気絞り弁
10 パティキュレートフィルタ
14 アクセルペダル
15 アクセル開度センサ
16 クランクポジションセンサ
20 ECU
30 低圧EGR装置
31 低圧EGR通路
32 低圧EGR弁
33 EGRクーラ
40 高圧EGR装置
41 高圧EGR通路
42 高圧EGR弁
51 電動機
52 可変ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されるタービンと前記内燃機関の吸気通路に配置されるコンプレッサとを有し前記内燃機関から排出される排気のエネルギを利用して前記内燃機関に吸入される吸気の過給を行う過給機と、
前記コンプレッサを駆動する電動機と、
前記タービンよりも下流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも上流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を低圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる低圧EGR装置と、
前記タービンよりも上流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも下流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を高圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる高圧EGR装置と、
前記低圧EGRガスを供給するときに前記電動機により前記コンプレッサを駆動し、前記高圧EGRガスを供給するときに前記電動機による前記コンプレッサの駆動を停止する制御装置と、
を備える内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電動機により前記コンプレッサを駆動する要求があるときに、前記電動機により前記コンプレッサを駆動すると共に、前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGRガスの供給を停止する請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に配置されるタービンと前記内燃機関の吸気通路に配置されるコンプレッサとを有し前記内燃機関から排出される排気のエネルギを利用して前記内燃機関に吸入される吸気の過給を行う過給機と、
前記コンプレッサを駆動する電動機と、
前記タービンよりも下流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも上流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を低圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる低圧EGR装置と、
前記タービンよりも上流の前記排気通路と前記コンプレッサよりも下流の前記吸気通路とを接続し、排気の一部を高圧EGRガスとして前記吸気通路へ再循環させる高圧EGR装置と、
前記電動機により前記コンプレッサを駆動するときには、前記低圧EGR装置により前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGR装置による前記高圧EGRガスの供給を停止する制御装置と、
を備える内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関の過渡運転時に、前記電動機により前記コンプレッサを駆動すると共に、前記低圧EGR装置により前記低圧EGRガスを供給し、前記高圧EGR装置による前記高圧EGRガスの供給を停止する請求項3に記載の内燃機関の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237247(P2012−237247A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106973(P2011−106973)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】