内燃機関の制御装置
【課題】例えば、エンジン等の内燃機関がアイドル状態にある際に、当該内燃機関の回転数を目標回転数に収束させる収束性を高めることができ、燃費向上、ドライバが感じる違和感の低減、内燃機関の動作の安定性を向上させる。
【解決手段】制御装置100は、各種補正値に基づくエンジン200制御と並行して、エンジン200の実回転数N1が目標回転数N2に近付くように、タイミングt2からISCV301を制御し、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。これにより、目標回転数N2に実回転数N1を収束させる収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジン200の実回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジン200における実回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【解決手段】制御装置100は、各種補正値に基づくエンジン200制御と並行して、エンジン200の実回転数N1が目標回転数N2に近付くように、タイミングt2からISCV301を制御し、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。これにより、目標回転数N2に実回転数N1を収束させる収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジン200の実回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジン200における実回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載されたエンジン等の内燃機関がアイドル状態にある際に、当該内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置では、スロットル弁による吸気量の調整とは別の弁機構によってアイドル状態におけるエンジンへの吸気量が調整される。このような弁機構によるエンジンの回転数の制御は、アイドル回転速度制御(ISC:Idle Speed Control)システムと称され、エンジンの燃費効率を高める技術として知られている(例えば、特許文献1乃至4参照。)
【特許文献1】特開平9−32614号公報
【特許文献2】特開2001−20788号公報
【特許文献3】特開平9−324687号公報
【特許文献4】特公平7−74621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の制御装置では、暖機が終了すると直ぐにエンジンの回転数を目標回転数まで下げるように内燃機関を制御するほうが、燃費効率向上を実現する観点から見ると好ましい。
【0004】
しかしながら、クリープ走行を制動するためにブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられてから、エンジンに対してフィードバック制御を実行するまでの時間を長くとると、エンジンの回転数を目標回転数に収束させるまでに要する時間が延びてしまい燃費効率の低下を招く。
【0005】
加えて、エンジンがアイドル状態にある際に、弁機構(Idle Speed Control Valve:ISCV)、或いは、ISCシステムを動作させた場合、ISCVの開閉に応じた、或いはISCシステムの動作に応じた空気の供給に対してエンジンの回転数の変化が遅れて生じるため、エンジンの動作が不安定になり、例えば、エンジンフリクション等によってエンジンの動作が不安定になる。
【0006】
また、アイドル状態にある車両に作用するクリープトルクが大きい場合、車両の速度を制御するために動作させるブレーキによる減速性が低下し、ドライバに違和感を生じさせてしまう。より具体的には、例えば、エンジンの温度が低い状態から当該内燃機関を動作させた直後、或いは周囲の温度が低い環境下では、エンジンを暖機する必要があるため、エンジンの動作状態がアイドル状態であったとしても、その回転数は高くなる。クリープトルクは、アイドル状態にあるエンジンの回転数に連動して増減することから、暖機時に高く設定された回転数に連動して、ブレーキの踏力も増大してしまい、暖機中及び暖機後の夫々におけるブレーキの踏力に差が生じ、ドライバに違和感を生じさせてしまう。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、エンジン等の内燃機関がアイドル状態にある際に、当該内燃機関の回転数を目標回転数に収束させる収束性を高めることができ、燃費向上、ドライバが感じる違和感の低減、内燃機関の動作の安定性を向上させることが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置は上記課題を解決するために、車両に搭載された内燃機関がアイドル状態にある際に、前記内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整可能な調整手段と、シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する制御手段とを備える。
【0009】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、調整手段は、例えば、ISCV等の弁機構、或いはISCシステムであり、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、後述する制御手段の制御下で前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整する。
【0010】
制御手段は、例えばECU等の制御回路部から構成されており、シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する。「見込み制御」とは、単にフィードバック制御するだけでは、内燃機関に吸気される吸気量の応答遅れに応じて、回転数が狙いの回転数からずれるずれ量を低減するように、各種補正値に基づいてフィードバック制御を開始するタイミングを制御する制御することをいう。
【0011】
したがって、見込み制御と共にフィードバック制御を行うことによって、エンジンの回転数等に応じてISCV等の弁機構等に対してフィードバック制御することなく、エンジンがアイドル状態にある際に、当該エンジンの動作を安定させることができる。
【0012】
したがって、回転数の収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジンの回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジンにおける回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【0013】
したがって、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、エンジンの動作安定性の確保、燃費向上、違和感の低減の夫々が可能である。
【0014】
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記制御手段は、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、ブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられた第1タイミング以後に前記回転数が目標回転数に近付く際に生じる前記応答遅れ時間に関する情報を取得してもよい。
【0015】
この態様によれば、エンジンの回転数は、ブレーキが動作状態に切り換えられてから直ぐに目標回転数に向かって低下するのではなく、若干の応答遅れ時間が生じる。この態様によれば、制御手段が応答遅れ時間に関する情報を取得することによって、どの程度応答遅れ時間が生じるかを学習することが可能である。
【0016】
したがって、応答遅れ時間を学習することによって、フィードバック制御することなく、学習値に基づいて各種補正値に応じて内燃機関に要求される動作を満たしつつ、フィードバック制御までの時間を短縮し、回転数を目標回転数に収束させることが可能である。
【0017】
この態様では、前記制御手段は、前記第1タイミング以後における前記内燃機関の実回転数及び前記目標回転数の偏差と、前記第1タイミング以後における前記目標回転数の変化量との少なくとも一方に基づいて、前記フィードバック制御を開始する第2タイミングを設定してもよい。
【0018】
この態様によれば、吸気遅れに対応でき、回転数を目標回転数に近づける、即ち収束させる収束性を高めることが可能である。
【0019】
この態様では、前記制御手段は、前記第1タイミングにおいて、前記偏差が所定の範囲にある場合に前記見込み制御を前記内燃機関に実行することなく、前記フィードバック制御を開始してもよい。
【0020】
この態様によれば、収束性を高めることが可能である。
【0021】
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記各種補正値は、前記内燃機関を冷却する冷却水の水温に関する水温データを含んでおり、前記制御手段は、前記水温データに基づいて前記第2タイミングを設定してもよい。
【0022】
この態様によれば、フィードバック制御を実行するまでに実行される内燃機関に対する制御の精度を高めることが可能である。
【0023】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る内燃機関の制御装置の実施形態を説明する。
【0025】
先ず、図1を参照しながら、本発明に係る内燃機関の制御装置の構成を説明する。ここに、図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関(即ち、エンジン)の制御装置が適用された内燃機関の模式的な平面図である。
【0026】
図1において、本発明に係る「内燃機関」の一例としてのエンジン200は、本発明の「一の吸気路部」の一例である吸気通路部230を構成する吸気管206及び234、気筒201、排気管210、ターボ過給機を構成するコンプレッサ41及びタービン42、可変動弁機構110、本発明の「制御手段」の一例である制御装置100、スロットル弁214、サージタンク111、吸気弁203及び圧力センサ225、本発明の「他の吸気路部」の一例であるエアーバイパス300、本発明の「調整手段」の一例である弁機構(以下、ISCVと称す。)301、エアフローメータ(以下、AFMと称す。)302及び303を備えている。制御装置100、及びISCV301は車両に搭載されており、本発明の「内燃機関の制御装置」の一例を構成している。尚、本実施形態では、ISCVに代えて、ISCシステムを備えていてもよい。
【0027】
尚、図1では、説明の便宜上、エンジン200の気筒を一つのみ図示しているが、エンジン200は、4つの気筒を含む直列4気筒のエンジンである。これら複数の気筒の夫々に対応して設けられた複数の吸気弁203及び複数の排気弁204は、共通の可変動弁機構110によってリフト量及び作用角(即ち、リフト期間)を変更可能に構成されている。
【0028】
吸気管234、サージタンク111、及び吸気管206は、ドライバがアクセルペダル226を操作するアクセル操作に応じてエンジン200の外部から空気を気筒201に供給するための吸気通路部230を構成しており、エンジン200の動作時に、外部からエアクリーナ304を介して空気をエンジン200内に取り入れる。
【0029】
吸気通路部230は、吸気通路部230のうちスロットル弁214の上流側に位置する第1通路部分230a、及び吸気通路部230のうちスロットル弁214の下流側に位置する第2通路部分230bから構成されている。
【0030】
エアーバイパス300は、第1通路部分230a及び第2通路部分230bを相互に繋いでいる。即ち、エアーバイパス300は、第1通路部分230aを介して空気を第2通路部分230bに供給可能になるようにスロットル弁214を迂回するように吸気通路部230に接続されている。
【0031】
ISCV301は、制御装置100の制御下で、エンジン200がアイドル状態にある際に、エアーバイパス300を流れる空気の流量を調整可能に構成されている。したがって、エンジン200では、エンジン200の外部から気筒201に空気を供給する経路が、吸気通路部230及びエアーバイパス300の2系統設けられていることになる。ISCV301は、例えば、機械的、或いは電磁的に駆動されるバルブ機構を有しており、制御装置100の制御下でその開閉動作が制御される。
【0032】
吸気管206は、エンジン200の動作時に、吸気弁203の開閉によって気筒201内部との連通状態が変更可能に構成されている。即ち、吸気管206において、外部から吸入された空気(即ち、吸入空気)と、燃料噴射装置であるインジェクタ211から噴射された燃料とが混合され(即ち、混合気を形成し)、吸気弁203を介して気筒201に供給される。
【0033】
アクセルポジションセンサ216は、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量、即ちアクセル開度を検出する。エンジン200を搭載した車両に加速要求がされたか否かは、アクセル開度に基づいて判断される。スロットルバルブモータ217は、アクセル226の踏み込み量に基づいてスロットル弁214を開閉駆動する。スロットル弁214は、吸気管234からサージタンク111へ送り込む空気の供給量を調節する。
【0034】
サージタンク111は、空気を供給する吸気通路部の一部として各気筒に共用されており、各気筒へ送り込む空気を分配する他、分配される空気の圧力変動、即ち脈動を抑制する。スロットルポジションセンサ215は、スロットル弁214のスロットル開度を検出する。
【0035】
気筒201は、その内部において、吸気管206から送られてきた混合気を、点火プラグ202により燃焼させることが可能に構成されている。この燃焼により、ピストン205は、気筒201内で上下に往復運動する。この往復運動がクランクシャフト219の回転運動に変換され、エンジン200が搭載された車両は、エンジン200から出力された回転運動に基づく駆動力によって駆動可能に構成されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト219の回転角(即ち、クランク角)を検出する。
【0036】
排気管210は、気筒201内部で発生する排気ガスを、排気弁204を介して排気することが可能に構成されている。空燃費センサ221は、排気ガスの空燃比A/F2を検出して、制御装置100へ伝達可能に構成されている。こうして検出された空燃比A/F2は、例えばインジェクタ211によって噴射される燃焼量のフィードバック補正に利用される。
【0037】
タービン42は、排気管210に配設されており、排気ガスの運動エネルギを受けて回転させられ、タービン42の回転トルクをコンプレッサ41の回転に変換可能に構成されている。コンプレッサ41は、吸気管234に配設されており、その回転によって吸気を圧縮させる(過給する)ことが可能である。
【0038】
可変動弁機構110は、例えば可変動バルブ機構(VVT)であり、制御装置100の制御下で、吸気弁203及び排気弁204の動弁特性を変更可能に構成されている。加えて、可変動弁機構110は、アクチュエータによって駆動されるカムバイワイヤ(CambyWire)、或いは電磁駆動弁等の各気筒に共通の駆動部11によって、エンジン200を構成する複数の気筒の夫々に対応して設けられた複数の吸気弁203及び複数の排気弁204のリフト量及び作用角を変更可能に構成されている。
【0039】
AFM302は、吸気通路部230の上流、且つエアクリーナ304の下流に設けられており、吸気通路部230の上流とエアクリーナ304の下流との間を流れる空気の流量を測定する。
【0040】
制御装置100は、周知の電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)、各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されており、エンジン200の動作全体を制御する。
【0041】
次に、図2乃至図8を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の基本的な動作を説明する。図2は、エンジン200がアイドル状態にある際の、車両の速度(SPD)、エンジン200の実回転数N1及び目標回転数N2の変化を、ブレーキの動作(ON)及び非動作(OFF)、並びにISCフィードバック(F/B)制御のオンオフ状態の夫々を示すタイミングチャートと共に示したチャートである。特に、図2では、エンジン200の冷始動直後に車両のシフトレンジをドライブレンジに切り換えた後、アクセルがOFF状態で車両のクリープ走行を停止させる状況を想定している。図3は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。図4(a)は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差とディレー時間との関係を図式的に示したグラフであり、図4(b)は、目標回転数N2の変化量とディレー時間との関係を図式的に示したグラフである。
【0042】
図2において、エンジン200がアイドル状態にある際のタイミングt1にブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられると、クリープが制動され、車両の速度が減少すると共に、エンジン200の実回転数N1も急激に低下する。タイミングt1は、本発明の「第1タイミング」の一例であり、目標回転数N2が車両の減速性を高めるために一時的に低く設定されるため、実回転数N1は、低く設定された目標回転数N2に追従するように急激に減少する。この際、実回転数N1の減少の応答遅れ時間(ディレー時間)が生じ、フリクションの発生によるエンジン200の動作性が不安定になる。より具体的には、エンジン200に見込み制御を行う際に参照される見込み補正量の目標回転数N2とのずれが、ISCVに対するフィードバック制御が停止した段階で顕在化し、車両の減速性を高めるために設定された目標回転数N2が思惑通りに機能しなくなる。加えて、燃費の悪化も生じる。また、エンジン200の始動時、或いは、周囲の環境温度が低温である場合には、エンジン200を暖機する目的でタイミングt1近傍において、実回転数N1が上昇する。したがって、エンジン200の始動時、或いは、周囲の環境温度が低温である場合には、実回転数N1に連動して生じるクリープを制動するために要する制動力が大きくなる。よって、運転者がブレーキを踏み込む際に要する踏み込み力が大きくなり、運転者に違和感を生じさせてしまう。
【0043】
そこで、以下で説明するように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法により、燃費向上、エンジン200の動作安定性の確保、及び違和感の低減を可能にする。
【0044】
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置により実行される内燃機関の制御方法を詳細に説明する。
【0045】
図3において、制御装置100は、フィードバック制御を実行するか否かを決定する実行前提条件が成立したか否かを判定する(ステップS100)。より具体的には、制御装置100は、エンジン200の動作状態、及びアクセルペダルの踏み込み量、エンジン200がアイドル状態にあるか、車両が走行中であるか、或いは所定の速度以下で走行しているか、フィーエルカット(F/C)復帰後に所定の時間が経過しているか、エンジン200が負担する負荷がどの程度であるか等の各種条件が実行条前提件に達しているか否かを判定する。実行前提条件が成立していないと判定された場合には、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをクリアし(ステップS170)、アイドル状態にあるエンジン200の制御を終了する。
【0046】
実行前提条件が成立したと判定された場合、制御装置100は、シフトレンジがドライブレンジ(Dレンジ)に設定されているか否かを判定する(ステップS110)。ドライブレンジに設定されていなかった場合、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS140)。シフトレンジがドライブレンジに設定されていた場合には、制御装置100は、ブレーキがON状態(即ち、動作状態)にあるか否かを判定する(ステップS120)。ブレーキがON状態にない場合(即ち、非動作状態にある場合)、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS140)。
【0047】
一方、ブレーキがON状態にあると判定された場合には、制御装置100は、ディレー時間マップを算出する(ステップS150)。より具体的には、制御装置100は、エンジン200の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいてディレー時間マップを算出し、当該マップに基づいてエンジン200を制御する。当該ディレー時間が経過するまでは、各種補正値に基づいて、ISCV301の開度を設定する。
【0048】
ここで、図4を参照しながら、ディレー時間とエンジン200の回転等との関係の一例を示す。
【0049】
図4(a)に示すように、ディレー時間は、本来の空気応答を考慮して特定される基準ディレー時間より短くなるように、実回転数N1及び目標回転数N2に応じて設定される。る。また、図3(b)に示すように、目標回転数N2の変化量、より具体的には、後述するフィードバック制御が開始された、本発明の「第2タイミング」の一例であるタイミングt2の後に生じる目標回転数N2の変化量(図2参照。)に応じて、ディレー時間は、基準ディレー時間より短くなるように設定される。
【0050】
次に、制御装置100は、ディレー時間が経過したか否かを判定する(ステップS150)。ディレー時間が経過していないと判定された場合、制御装置100は、フィードバック要求フラグをクリアする(ステップS170)。ディレー時間が経過したと判定された場合、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをセットし、タイミングt2以降において(図2参照)、エンジン200にフィードバック制御を実行する。
【0051】
ここで、図1及び図2を参照しながら、フィードバック制御を詳細に説明する。
【0052】
図1及び図2において、制御装置100は、各種補正値に基づくエンジン200制御と並行して、エンジン200の実回転数N1が目標回転数N2に近付くように、タイミングt2からISCV301を制御し、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。これにより、目標回転数N2に実回転数N1を収束させる収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジン200の実回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジン200における実回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【0053】
加えて、制御装置100によれば、エンジン200の回転数等に応じてISCV301に対してフィードバック制御することなく、エンジン200がアイドル状態にある際に、エンジン200の動作を安定させることができる。
【0054】
次に、図5及び図6を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御方法に利点を具体的に説明する。図5は、比較例に係る目標回転数及び実回転数の変化を概念的に示したチャートの一例である。図6は、比較例に係る目標回転数及び実回転数の変化を概念的に示したチャートの他の例である。
【0055】
図5に示すように、比較例(従来技術)に係る内燃機関の制御方法によれば、フィードバック制御を開始された後、目標回転数N2がステップ変化すると、実回転数N1は、目標回転数N2よりずれる。より具体的には、理想的な実回転数N1の変化を示すパターンAに比べて、高回転側(パターンB)或いは低回転側(パターンC)にずれる。パターンBは、回転数の補正量が目標回転数N2より多めに設定されており、パターンCは、回転数の補正量が目標回転数N2より少なめに設定されている。尚、パターンAに対するパターンB及びCの夫々のずれは、エンジン個体差により同一補正量で回転数がずれる場合と、学習する補正量のずれによって生じる場合がある。
【0056】
一方、図6に示すように、フィードバック制御を開始するタイミングが早すぎると、目標回転数のステップ変化に伴って実回転数N1が低下する途中から吸入空気量に対する減量補正が実行され、実回転数N1についてフィードバック制御に起因するアンダーシュート(実回転数N1が急激に目標回転数N2より低くなること)が生じる。
【0057】
したがって、フィードバック制御を開始するタイミング、言い換えれば、吸入空気の応答遅れ分に対応するディレー時間を正確に把握することでディレー時間を短縮可能となり、これが実回転数N1の収束性を高める上で、言い換えれば適切なディレー時間を特定する上で重要となるのである。
【0058】
したがって、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行される制御方法によれば、見込み制御によってフィードバック制御を開始するまでの時間、即ちディレー時間を各種補正値に基づいて短縮することができ、エンジン200の動作安定性の確保、燃費向上、違和感の低減の夫々が可能である。
【0059】
(変形例1)
次に、図7及び図8を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置により実行可能な内燃機関の制御方法の一変形例を説明する。図7は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。図8は、アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【0060】
図7において、制御装置100は、フィードバック制御を開始するか否かを決定するための前提条件が成立しているか否かを判定する(ステップS200)。前提条件が成立してない場合、制御装置100は、フィードバック制御を行うことなく、エンジン200のアイドル制御を引き続き実行する。前提条件が成立していると判定された場合、制御装置100は、ステップ変化フラグをOFFからONに切り換えるか否かを判定する(ステップS210)。ステップ変化フラグをOFFからONに切り換えないと判定された場合、制御装置100は、ディレー時間を学習し(ステップS240)、ステップS270の処理を実行する。
【0061】
ここで、図8に示すように、ステップ変化とは、目標回転数N2が回転数N0から急激に低下することによって、目標回転数N2の変化がステップ状になることをいう。また、ディレー時間に対応する応答遅れ時間は、実回転数N1が目標回転数N2の急激な低下に追従できず、時間的な遅れを伴って下がりきるまでの時間をいう。
【0062】
より具体的には、図2に示すように、制御装置100は、エンジン200がアイドル状態にある際に、ブレーキがOFF状態からON状態に切り換えられたタイミングt1以後に実回転数N1が目標回転数N2に近付く際に生じる実回転数N1の応答遅れ時間に関する情報を取得し、ディレー時間を学習することになる。
【0063】
再び、図7において、制御装置100は、目標回転数N2として、先回の目標回転数N2及び目標回転数N2の差を新たな目標回転数N2として設定する(ステップS220)。次に、制御装置100は、目標回転数N2の変化量が所定の目標回転数変化量より大きいか否かを判定する(ステップS230)。目標回転数N2の変化量が、所定の目標回転数変化量以下である場合、制御装置100は、ステップS270の処理を実行する。目標回転数N2の変化量が所定の目標回転数変化量より大きい場合、制御装置100は、実回転数N1をステップ変化後の実回転数N1として設定する(ステップS250)。より具体的には、目標回転数N2がステップ変化した後の実回転数N1の変化を捉えるために、目標回転数N2が変化したタイミングで実回転数N1をRAM等のメモリに記憶しておく。
【0064】
次に、制御装置100は、ディレー時間を学習する学習中フラグをオン状態に切り換える(ステップS260)。次に、制御装置100は、ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%より大きいか否かを判定する(ステップS270)。ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%以下である場合、制御装置100は、学習したディレー時間として学習したディレー時間に1を加えた時間を設定する(ステップS285)。ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%より大きい場合、制御装置100は、ディレー時間として学習したディレー時間を設定する(ステップS280)。次に、制御装置100は、学習フラグをONに設定する(ステップS290)。
【0065】
このように、本例に係る制御方法によれば、エンジン200の実回転数は、ブレーキが動作状態に切り換えられてから直ぐに目標回転数N2に向かって低下するのではなく、若干の応答遅れが生じた場合でも、どの程度応答遅れが生じるかを学習することが可能である。したがって、本例に係る制御方法によれば、応答遅れを学習することによって、フィードバック制御することなく、学習値に基づいて、フィードバック制御までの時間を設定することが可能である。
【0066】
(変形例2)
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な制御方法の他の例を説明する。図9は、本例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【0067】
図9において、制御装置100は、実行条件が成立した否かを判定する(ステップS300)。実行条件が成立していないと判定された場合、制御装置100は、当該制御方法を終了する。実行条件が成立していると判定された場合、制御装置100は、補正値の一つとして、エンジン200の冷却水温の関する水温データを取得する(ステップS310)。
【0068】
次に、制御装置100は、学習値算出処理を実行し、水温データに基づいてタイミングt2(図2参照。)を設定する(ステップS320)。次に、制御装置100は、例えば、水温が水温領域Iにあるか否かを判定する(ステップS331)。水温が水温領域Iに含まれている場合、制御装置100は、領域Iの学習値を格納し、制御方法を終了する。尚、制御装置100は、順次、水温領域II及びIIIの夫々に水温が含まれているか否かを判定し(ステップS241、S351)、夫々の領域に水温が含まれている場合には、領域II学習値、及び領域III学習値の夫々の学習値を格納し(ステップS342、S352)、処理を終了する。
【0069】
本例に係る制御方法によれば、フィードバック制御を実行するまでに実行されるエンジン200に対する制御の精度を高めることが可能である。
【0070】
(変形例3)
次に、図10を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な制御方法の他の例を説明する。図10は、本例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【0071】
図10において、制御装置100は、フィードバック制御を実行するか否かを決定する実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS400)。実行条件が成立していないと判定された場合には、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをクリアし(ステップS470)、アイドル状態にあるエンジン200の制御を終了する。
【0072】
実行条件が成立したと判定された場合、制御装置100は、シフトレンジがドライブレンジ(Dレンジ)に設定されているか否かを判定する(ステップS410)。ドライブレンジに設定されていなかった場合、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定し(ステップS445)、ステップS450を実行する。
【0073】
シフトレンジがドライブレンジに設定されていた場合には、制御装置100は、ブレーキがON状態(即ち、動作状態)にあるか否かを判定する(ステップS420)。ブレーキがON状態にない場合(即ち、非動作状態にある場合)、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS445)。
【0074】
一方、ブレーキがON状態にあると判定された(ステップS420)場合には、制御装置100は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差αより小さいか否かを判定する(ステップS430)。実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差α以上であると判定された場合、制御装置100は、エンジン200の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいてディレー時間マップを算出し(ステップS440)、当該マップに基づいてディレー時間が経過したか否かを判定する(ステップS450)。ディレー時間が経過していない場合、制御装置100は、フィードバック制御フラグをクリアし(ステップS470)し、当該制御方法を終了する。一方、ディレー時間が経過したと判定された場合、制御装置100は、ステップS460の処理を実行し、当該制御方法を終了する。
【0075】
ステップS430において、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差αより小さいと判定された場合、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをセットし、当該制御方法を終了する。
【0076】
本例に係る制御方法によれば、図2に示すように、タイミングt1において、当該偏差が所定の範囲にある場合に各種補正値に基づく制御をエンジン200に実行することなく、当該エンジン200に対するフィードバック制御を開始することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置を備えた内燃機関の模式的な平面図である。
【図2】エンジンがアイドル状態にある際の、車両の速度(SPD)、エンジンの実回転数N1及び目標回転数N2の変化を、ブレーキの動作(ON)及び非動作(OFF)、並びにISCフィードバック(F/B)制御のオンオフ状態の夫々を示すタイミングチャートと共に示したチャートである。
【図3】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図4】(a)は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差とディレー時間との関係を図式的に示したグラフであり、(b)は、目標回転数N2の変化量とディレー時間との関係を図式的に示したグラフである。
【図5】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図6】アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【図7】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図8】アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【図9】変形例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図10】他の変形例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
100・・・制御装置、110・・・可変動弁機構、230・・・吸気通路、301・・・ISCV
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載されたエンジン等の内燃機関がアイドル状態にある際に、当該内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置では、スロットル弁による吸気量の調整とは別の弁機構によってアイドル状態におけるエンジンへの吸気量が調整される。このような弁機構によるエンジンの回転数の制御は、アイドル回転速度制御(ISC:Idle Speed Control)システムと称され、エンジンの燃費効率を高める技術として知られている(例えば、特許文献1乃至4参照。)
【特許文献1】特開平9−32614号公報
【特許文献2】特開2001−20788号公報
【特許文献3】特開平9−324687号公報
【特許文献4】特公平7−74621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の制御装置では、暖機が終了すると直ぐにエンジンの回転数を目標回転数まで下げるように内燃機関を制御するほうが、燃費効率向上を実現する観点から見ると好ましい。
【0004】
しかしながら、クリープ走行を制動するためにブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられてから、エンジンに対してフィードバック制御を実行するまでの時間を長くとると、エンジンの回転数を目標回転数に収束させるまでに要する時間が延びてしまい燃費効率の低下を招く。
【0005】
加えて、エンジンがアイドル状態にある際に、弁機構(Idle Speed Control Valve:ISCV)、或いは、ISCシステムを動作させた場合、ISCVの開閉に応じた、或いはISCシステムの動作に応じた空気の供給に対してエンジンの回転数の変化が遅れて生じるため、エンジンの動作が不安定になり、例えば、エンジンフリクション等によってエンジンの動作が不安定になる。
【0006】
また、アイドル状態にある車両に作用するクリープトルクが大きい場合、車両の速度を制御するために動作させるブレーキによる減速性が低下し、ドライバに違和感を生じさせてしまう。より具体的には、例えば、エンジンの温度が低い状態から当該内燃機関を動作させた直後、或いは周囲の温度が低い環境下では、エンジンを暖機する必要があるため、エンジンの動作状態がアイドル状態であったとしても、その回転数は高くなる。クリープトルクは、アイドル状態にあるエンジンの回転数に連動して増減することから、暖機時に高く設定された回転数に連動して、ブレーキの踏力も増大してしまい、暖機中及び暖機後の夫々におけるブレーキの踏力に差が生じ、ドライバに違和感を生じさせてしまう。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、エンジン等の内燃機関がアイドル状態にある際に、当該内燃機関の回転数を目標回転数に収束させる収束性を高めることができ、燃費向上、ドライバが感じる違和感の低減、内燃機関の動作の安定性を向上させることが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置は上記課題を解決するために、車両に搭載された内燃機関がアイドル状態にある際に、前記内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整可能な調整手段と、シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する制御手段とを備える。
【0009】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、調整手段は、例えば、ISCV等の弁機構、或いはISCシステムであり、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、後述する制御手段の制御下で前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整する。
【0010】
制御手段は、例えばECU等の制御回路部から構成されており、シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する。「見込み制御」とは、単にフィードバック制御するだけでは、内燃機関に吸気される吸気量の応答遅れに応じて、回転数が狙いの回転数からずれるずれ量を低減するように、各種補正値に基づいてフィードバック制御を開始するタイミングを制御する制御することをいう。
【0011】
したがって、見込み制御と共にフィードバック制御を行うことによって、エンジンの回転数等に応じてISCV等の弁機構等に対してフィードバック制御することなく、エンジンがアイドル状態にある際に、当該エンジンの動作を安定させることができる。
【0012】
したがって、回転数の収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジンの回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジンにおける回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【0013】
したがって、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、エンジンの動作安定性の確保、燃費向上、違和感の低減の夫々が可能である。
【0014】
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記制御手段は、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、ブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられた第1タイミング以後に前記回転数が目標回転数に近付く際に生じる前記応答遅れ時間に関する情報を取得してもよい。
【0015】
この態様によれば、エンジンの回転数は、ブレーキが動作状態に切り換えられてから直ぐに目標回転数に向かって低下するのではなく、若干の応答遅れ時間が生じる。この態様によれば、制御手段が応答遅れ時間に関する情報を取得することによって、どの程度応答遅れ時間が生じるかを学習することが可能である。
【0016】
したがって、応答遅れ時間を学習することによって、フィードバック制御することなく、学習値に基づいて各種補正値に応じて内燃機関に要求される動作を満たしつつ、フィードバック制御までの時間を短縮し、回転数を目標回転数に収束させることが可能である。
【0017】
この態様では、前記制御手段は、前記第1タイミング以後における前記内燃機関の実回転数及び前記目標回転数の偏差と、前記第1タイミング以後における前記目標回転数の変化量との少なくとも一方に基づいて、前記フィードバック制御を開始する第2タイミングを設定してもよい。
【0018】
この態様によれば、吸気遅れに対応でき、回転数を目標回転数に近づける、即ち収束させる収束性を高めることが可能である。
【0019】
この態様では、前記制御手段は、前記第1タイミングにおいて、前記偏差が所定の範囲にある場合に前記見込み制御を前記内燃機関に実行することなく、前記フィードバック制御を開始してもよい。
【0020】
この態様によれば、収束性を高めることが可能である。
【0021】
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記各種補正値は、前記内燃機関を冷却する冷却水の水温に関する水温データを含んでおり、前記制御手段は、前記水温データに基づいて前記第2タイミングを設定してもよい。
【0022】
この態様によれば、フィードバック制御を実行するまでに実行される内燃機関に対する制御の精度を高めることが可能である。
【0023】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る内燃機関の制御装置の実施形態を説明する。
【0025】
先ず、図1を参照しながら、本発明に係る内燃機関の制御装置の構成を説明する。ここに、図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関(即ち、エンジン)の制御装置が適用された内燃機関の模式的な平面図である。
【0026】
図1において、本発明に係る「内燃機関」の一例としてのエンジン200は、本発明の「一の吸気路部」の一例である吸気通路部230を構成する吸気管206及び234、気筒201、排気管210、ターボ過給機を構成するコンプレッサ41及びタービン42、可変動弁機構110、本発明の「制御手段」の一例である制御装置100、スロットル弁214、サージタンク111、吸気弁203及び圧力センサ225、本発明の「他の吸気路部」の一例であるエアーバイパス300、本発明の「調整手段」の一例である弁機構(以下、ISCVと称す。)301、エアフローメータ(以下、AFMと称す。)302及び303を備えている。制御装置100、及びISCV301は車両に搭載されており、本発明の「内燃機関の制御装置」の一例を構成している。尚、本実施形態では、ISCVに代えて、ISCシステムを備えていてもよい。
【0027】
尚、図1では、説明の便宜上、エンジン200の気筒を一つのみ図示しているが、エンジン200は、4つの気筒を含む直列4気筒のエンジンである。これら複数の気筒の夫々に対応して設けられた複数の吸気弁203及び複数の排気弁204は、共通の可変動弁機構110によってリフト量及び作用角(即ち、リフト期間)を変更可能に構成されている。
【0028】
吸気管234、サージタンク111、及び吸気管206は、ドライバがアクセルペダル226を操作するアクセル操作に応じてエンジン200の外部から空気を気筒201に供給するための吸気通路部230を構成しており、エンジン200の動作時に、外部からエアクリーナ304を介して空気をエンジン200内に取り入れる。
【0029】
吸気通路部230は、吸気通路部230のうちスロットル弁214の上流側に位置する第1通路部分230a、及び吸気通路部230のうちスロットル弁214の下流側に位置する第2通路部分230bから構成されている。
【0030】
エアーバイパス300は、第1通路部分230a及び第2通路部分230bを相互に繋いでいる。即ち、エアーバイパス300は、第1通路部分230aを介して空気を第2通路部分230bに供給可能になるようにスロットル弁214を迂回するように吸気通路部230に接続されている。
【0031】
ISCV301は、制御装置100の制御下で、エンジン200がアイドル状態にある際に、エアーバイパス300を流れる空気の流量を調整可能に構成されている。したがって、エンジン200では、エンジン200の外部から気筒201に空気を供給する経路が、吸気通路部230及びエアーバイパス300の2系統設けられていることになる。ISCV301は、例えば、機械的、或いは電磁的に駆動されるバルブ機構を有しており、制御装置100の制御下でその開閉動作が制御される。
【0032】
吸気管206は、エンジン200の動作時に、吸気弁203の開閉によって気筒201内部との連通状態が変更可能に構成されている。即ち、吸気管206において、外部から吸入された空気(即ち、吸入空気)と、燃料噴射装置であるインジェクタ211から噴射された燃料とが混合され(即ち、混合気を形成し)、吸気弁203を介して気筒201に供給される。
【0033】
アクセルポジションセンサ216は、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量、即ちアクセル開度を検出する。エンジン200を搭載した車両に加速要求がされたか否かは、アクセル開度に基づいて判断される。スロットルバルブモータ217は、アクセル226の踏み込み量に基づいてスロットル弁214を開閉駆動する。スロットル弁214は、吸気管234からサージタンク111へ送り込む空気の供給量を調節する。
【0034】
サージタンク111は、空気を供給する吸気通路部の一部として各気筒に共用されており、各気筒へ送り込む空気を分配する他、分配される空気の圧力変動、即ち脈動を抑制する。スロットルポジションセンサ215は、スロットル弁214のスロットル開度を検出する。
【0035】
気筒201は、その内部において、吸気管206から送られてきた混合気を、点火プラグ202により燃焼させることが可能に構成されている。この燃焼により、ピストン205は、気筒201内で上下に往復運動する。この往復運動がクランクシャフト219の回転運動に変換され、エンジン200が搭載された車両は、エンジン200から出力された回転運動に基づく駆動力によって駆動可能に構成されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト219の回転角(即ち、クランク角)を検出する。
【0036】
排気管210は、気筒201内部で発生する排気ガスを、排気弁204を介して排気することが可能に構成されている。空燃費センサ221は、排気ガスの空燃比A/F2を検出して、制御装置100へ伝達可能に構成されている。こうして検出された空燃比A/F2は、例えばインジェクタ211によって噴射される燃焼量のフィードバック補正に利用される。
【0037】
タービン42は、排気管210に配設されており、排気ガスの運動エネルギを受けて回転させられ、タービン42の回転トルクをコンプレッサ41の回転に変換可能に構成されている。コンプレッサ41は、吸気管234に配設されており、その回転によって吸気を圧縮させる(過給する)ことが可能である。
【0038】
可変動弁機構110は、例えば可変動バルブ機構(VVT)であり、制御装置100の制御下で、吸気弁203及び排気弁204の動弁特性を変更可能に構成されている。加えて、可変動弁機構110は、アクチュエータによって駆動されるカムバイワイヤ(CambyWire)、或いは電磁駆動弁等の各気筒に共通の駆動部11によって、エンジン200を構成する複数の気筒の夫々に対応して設けられた複数の吸気弁203及び複数の排気弁204のリフト量及び作用角を変更可能に構成されている。
【0039】
AFM302は、吸気通路部230の上流、且つエアクリーナ304の下流に設けられており、吸気通路部230の上流とエアクリーナ304の下流との間を流れる空気の流量を測定する。
【0040】
制御装置100は、周知の電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)、各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されており、エンジン200の動作全体を制御する。
【0041】
次に、図2乃至図8を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の基本的な動作を説明する。図2は、エンジン200がアイドル状態にある際の、車両の速度(SPD)、エンジン200の実回転数N1及び目標回転数N2の変化を、ブレーキの動作(ON)及び非動作(OFF)、並びにISCフィードバック(F/B)制御のオンオフ状態の夫々を示すタイミングチャートと共に示したチャートである。特に、図2では、エンジン200の冷始動直後に車両のシフトレンジをドライブレンジに切り換えた後、アクセルがOFF状態で車両のクリープ走行を停止させる状況を想定している。図3は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。図4(a)は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差とディレー時間との関係を図式的に示したグラフであり、図4(b)は、目標回転数N2の変化量とディレー時間との関係を図式的に示したグラフである。
【0042】
図2において、エンジン200がアイドル状態にある際のタイミングt1にブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられると、クリープが制動され、車両の速度が減少すると共に、エンジン200の実回転数N1も急激に低下する。タイミングt1は、本発明の「第1タイミング」の一例であり、目標回転数N2が車両の減速性を高めるために一時的に低く設定されるため、実回転数N1は、低く設定された目標回転数N2に追従するように急激に減少する。この際、実回転数N1の減少の応答遅れ時間(ディレー時間)が生じ、フリクションの発生によるエンジン200の動作性が不安定になる。より具体的には、エンジン200に見込み制御を行う際に参照される見込み補正量の目標回転数N2とのずれが、ISCVに対するフィードバック制御が停止した段階で顕在化し、車両の減速性を高めるために設定された目標回転数N2が思惑通りに機能しなくなる。加えて、燃費の悪化も生じる。また、エンジン200の始動時、或いは、周囲の環境温度が低温である場合には、エンジン200を暖機する目的でタイミングt1近傍において、実回転数N1が上昇する。したがって、エンジン200の始動時、或いは、周囲の環境温度が低温である場合には、実回転数N1に連動して生じるクリープを制動するために要する制動力が大きくなる。よって、運転者がブレーキを踏み込む際に要する踏み込み力が大きくなり、運転者に違和感を生じさせてしまう。
【0043】
そこで、以下で説明するように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法により、燃費向上、エンジン200の動作安定性の確保、及び違和感の低減を可能にする。
【0044】
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置により実行される内燃機関の制御方法を詳細に説明する。
【0045】
図3において、制御装置100は、フィードバック制御を実行するか否かを決定する実行前提条件が成立したか否かを判定する(ステップS100)。より具体的には、制御装置100は、エンジン200の動作状態、及びアクセルペダルの踏み込み量、エンジン200がアイドル状態にあるか、車両が走行中であるか、或いは所定の速度以下で走行しているか、フィーエルカット(F/C)復帰後に所定の時間が経過しているか、エンジン200が負担する負荷がどの程度であるか等の各種条件が実行条前提件に達しているか否かを判定する。実行前提条件が成立していないと判定された場合には、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをクリアし(ステップS170)、アイドル状態にあるエンジン200の制御を終了する。
【0046】
実行前提条件が成立したと判定された場合、制御装置100は、シフトレンジがドライブレンジ(Dレンジ)に設定されているか否かを判定する(ステップS110)。ドライブレンジに設定されていなかった場合、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS140)。シフトレンジがドライブレンジに設定されていた場合には、制御装置100は、ブレーキがON状態(即ち、動作状態)にあるか否かを判定する(ステップS120)。ブレーキがON状態にない場合(即ち、非動作状態にある場合)、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS140)。
【0047】
一方、ブレーキがON状態にあると判定された場合には、制御装置100は、ディレー時間マップを算出する(ステップS150)。より具体的には、制御装置100は、エンジン200の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいてディレー時間マップを算出し、当該マップに基づいてエンジン200を制御する。当該ディレー時間が経過するまでは、各種補正値に基づいて、ISCV301の開度を設定する。
【0048】
ここで、図4を参照しながら、ディレー時間とエンジン200の回転等との関係の一例を示す。
【0049】
図4(a)に示すように、ディレー時間は、本来の空気応答を考慮して特定される基準ディレー時間より短くなるように、実回転数N1及び目標回転数N2に応じて設定される。る。また、図3(b)に示すように、目標回転数N2の変化量、より具体的には、後述するフィードバック制御が開始された、本発明の「第2タイミング」の一例であるタイミングt2の後に生じる目標回転数N2の変化量(図2参照。)に応じて、ディレー時間は、基準ディレー時間より短くなるように設定される。
【0050】
次に、制御装置100は、ディレー時間が経過したか否かを判定する(ステップS150)。ディレー時間が経過していないと判定された場合、制御装置100は、フィードバック要求フラグをクリアする(ステップS170)。ディレー時間が経過したと判定された場合、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをセットし、タイミングt2以降において(図2参照)、エンジン200にフィードバック制御を実行する。
【0051】
ここで、図1及び図2を参照しながら、フィードバック制御を詳細に説明する。
【0052】
図1及び図2において、制御装置100は、各種補正値に基づくエンジン200制御と並行して、エンジン200の実回転数N1が目標回転数N2に近付くように、タイミングt2からISCV301を制御し、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。これにより、目標回転数N2に実回転数N1を収束させる収束性を高めることが可能であり、燃費を向上させることが可能である。加えて、エンジン200の実回転数の上昇を最小限に抑えることが可能であるため、アイドル状態にあるエンジン200における実回転数の増大に連動してドライバが感じる違和感を低減することが可能である。
【0053】
加えて、制御装置100によれば、エンジン200の回転数等に応じてISCV301に対してフィードバック制御することなく、エンジン200がアイドル状態にある際に、エンジン200の動作を安定させることができる。
【0054】
次に、図5及び図6を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御方法に利点を具体的に説明する。図5は、比較例に係る目標回転数及び実回転数の変化を概念的に示したチャートの一例である。図6は、比較例に係る目標回転数及び実回転数の変化を概念的に示したチャートの他の例である。
【0055】
図5に示すように、比較例(従来技術)に係る内燃機関の制御方法によれば、フィードバック制御を開始された後、目標回転数N2がステップ変化すると、実回転数N1は、目標回転数N2よりずれる。より具体的には、理想的な実回転数N1の変化を示すパターンAに比べて、高回転側(パターンB)或いは低回転側(パターンC)にずれる。パターンBは、回転数の補正量が目標回転数N2より多めに設定されており、パターンCは、回転数の補正量が目標回転数N2より少なめに設定されている。尚、パターンAに対するパターンB及びCの夫々のずれは、エンジン個体差により同一補正量で回転数がずれる場合と、学習する補正量のずれによって生じる場合がある。
【0056】
一方、図6に示すように、フィードバック制御を開始するタイミングが早すぎると、目標回転数のステップ変化に伴って実回転数N1が低下する途中から吸入空気量に対する減量補正が実行され、実回転数N1についてフィードバック制御に起因するアンダーシュート(実回転数N1が急激に目標回転数N2より低くなること)が生じる。
【0057】
したがって、フィードバック制御を開始するタイミング、言い換えれば、吸入空気の応答遅れ分に対応するディレー時間を正確に把握することでディレー時間を短縮可能となり、これが実回転数N1の収束性を高める上で、言い換えれば適切なディレー時間を特定する上で重要となるのである。
【0058】
したがって、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行される制御方法によれば、見込み制御によってフィードバック制御を開始するまでの時間、即ちディレー時間を各種補正値に基づいて短縮することができ、エンジン200の動作安定性の確保、燃費向上、違和感の低減の夫々が可能である。
【0059】
(変形例1)
次に、図7及び図8を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置により実行可能な内燃機関の制御方法の一変形例を説明する。図7は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。図8は、アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【0060】
図7において、制御装置100は、フィードバック制御を開始するか否かを決定するための前提条件が成立しているか否かを判定する(ステップS200)。前提条件が成立してない場合、制御装置100は、フィードバック制御を行うことなく、エンジン200のアイドル制御を引き続き実行する。前提条件が成立していると判定された場合、制御装置100は、ステップ変化フラグをOFFからONに切り換えるか否かを判定する(ステップS210)。ステップ変化フラグをOFFからONに切り換えないと判定された場合、制御装置100は、ディレー時間を学習し(ステップS240)、ステップS270の処理を実行する。
【0061】
ここで、図8に示すように、ステップ変化とは、目標回転数N2が回転数N0から急激に低下することによって、目標回転数N2の変化がステップ状になることをいう。また、ディレー時間に対応する応答遅れ時間は、実回転数N1が目標回転数N2の急激な低下に追従できず、時間的な遅れを伴って下がりきるまでの時間をいう。
【0062】
より具体的には、図2に示すように、制御装置100は、エンジン200がアイドル状態にある際に、ブレーキがOFF状態からON状態に切り換えられたタイミングt1以後に実回転数N1が目標回転数N2に近付く際に生じる実回転数N1の応答遅れ時間に関する情報を取得し、ディレー時間を学習することになる。
【0063】
再び、図7において、制御装置100は、目標回転数N2として、先回の目標回転数N2及び目標回転数N2の差を新たな目標回転数N2として設定する(ステップS220)。次に、制御装置100は、目標回転数N2の変化量が所定の目標回転数変化量より大きいか否かを判定する(ステップS230)。目標回転数N2の変化量が、所定の目標回転数変化量以下である場合、制御装置100は、ステップS270の処理を実行する。目標回転数N2の変化量が所定の目標回転数変化量より大きい場合、制御装置100は、実回転数N1をステップ変化後の実回転数N1として設定する(ステップS250)。より具体的には、目標回転数N2がステップ変化した後の実回転数N1の変化を捉えるために、目標回転数N2が変化したタイミングで実回転数N1をRAM等のメモリに記憶しておく。
【0064】
次に、制御装置100は、ディレー時間を学習する学習中フラグをオン状態に切り換える(ステップS260)。次に、制御装置100は、ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%より大きいか否かを判定する(ステップS270)。ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%以下である場合、制御装置100は、学習したディレー時間として学習したディレー時間に1を加えた時間を設定する(ステップS285)。ステップ変化時の実回転数N1及び実回転数N1の差が、目標回転数変化量の60%より大きい場合、制御装置100は、ディレー時間として学習したディレー時間を設定する(ステップS280)。次に、制御装置100は、学習フラグをONに設定する(ステップS290)。
【0065】
このように、本例に係る制御方法によれば、エンジン200の実回転数は、ブレーキが動作状態に切り換えられてから直ぐに目標回転数N2に向かって低下するのではなく、若干の応答遅れが生じた場合でも、どの程度応答遅れが生じるかを学習することが可能である。したがって、本例に係る制御方法によれば、応答遅れを学習することによって、フィードバック制御することなく、学習値に基づいて、フィードバック制御までの時間を設定することが可能である。
【0066】
(変形例2)
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な制御方法の他の例を説明する。図9は、本例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【0067】
図9において、制御装置100は、実行条件が成立した否かを判定する(ステップS300)。実行条件が成立していないと判定された場合、制御装置100は、当該制御方法を終了する。実行条件が成立していると判定された場合、制御装置100は、補正値の一つとして、エンジン200の冷却水温の関する水温データを取得する(ステップS310)。
【0068】
次に、制御装置100は、学習値算出処理を実行し、水温データに基づいてタイミングt2(図2参照。)を設定する(ステップS320)。次に、制御装置100は、例えば、水温が水温領域Iにあるか否かを判定する(ステップS331)。水温が水温領域Iに含まれている場合、制御装置100は、領域Iの学習値を格納し、制御方法を終了する。尚、制御装置100は、順次、水温領域II及びIIIの夫々に水温が含まれているか否かを判定し(ステップS241、S351)、夫々の領域に水温が含まれている場合には、領域II学習値、及び領域III学習値の夫々の学習値を格納し(ステップS342、S352)、処理を終了する。
【0069】
本例に係る制御方法によれば、フィードバック制御を実行するまでに実行されるエンジン200に対する制御の精度を高めることが可能である。
【0070】
(変形例3)
次に、図10を参照しながら、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な制御方法の他の例を説明する。図10は、本例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【0071】
図10において、制御装置100は、フィードバック制御を実行するか否かを決定する実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS400)。実行条件が成立していないと判定された場合には、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをクリアし(ステップS470)、アイドル状態にあるエンジン200の制御を終了する。
【0072】
実行条件が成立したと判定された場合、制御装置100は、シフトレンジがドライブレンジ(Dレンジ)に設定されているか否かを判定する(ステップS410)。ドライブレンジに設定されていなかった場合、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定し(ステップS445)、ステップS450を実行する。
【0073】
シフトレンジがドライブレンジに設定されていた場合には、制御装置100は、ブレーキがON状態(即ち、動作状態)にあるか否かを判定する(ステップS420)。ブレーキがON状態にない場合(即ち、非動作状態にある場合)、制御装置100は、予め特定された所定のディレー時間を設定する(ステップS445)。
【0074】
一方、ブレーキがON状態にあると判定された(ステップS420)場合には、制御装置100は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差αより小さいか否かを判定する(ステップS430)。実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差α以上であると判定された場合、制御装置100は、エンジン200の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいてディレー時間マップを算出し(ステップS440)、当該マップに基づいてディレー時間が経過したか否かを判定する(ステップS450)。ディレー時間が経過していない場合、制御装置100は、フィードバック制御フラグをクリアし(ステップS470)し、当該制御方法を終了する。一方、ディレー時間が経過したと判定された場合、制御装置100は、ステップS460の処理を実行し、当該制御方法を終了する。
【0075】
ステップS430において、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差が、所定の偏差αより小さいと判定された場合、制御装置100は、フィードバック制御要求フラグをセットし、当該制御方法を終了する。
【0076】
本例に係る制御方法によれば、図2に示すように、タイミングt1において、当該偏差が所定の範囲にある場合に各種補正値に基づく制御をエンジン200に実行することなく、当該エンジン200に対するフィードバック制御を開始することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置を備えた内燃機関の模式的な平面図である。
【図2】エンジンがアイドル状態にある際の、車両の速度(SPD)、エンジンの実回転数N1及び目標回転数N2の変化を、ブレーキの動作(ON)及び非動作(OFF)、並びにISCフィードバック(F/B)制御のオンオフ状態の夫々を示すタイミングチャートと共に示したチャートである。
【図3】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図4】(a)は、実回転数N1及び目標回転数N2の偏差とディレー時間との関係を図式的に示したグラフであり、(b)は、目標回転数N2の変化量とディレー時間との関係を図式的に示したグラフである。
【図5】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図6】アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【図7】本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって実行可能な内燃機関の制御方法の一例の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図8】アイドル状態にあるエンジンの動作時間及びエンジン回転数の関係を図式的に示したグラフである。
【図9】変形例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【図10】他の変形例に係る内燃機関の制御方法の主要な処理ルーチンを順に示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
100・・・制御装置、110・・・可変動弁機構、230・・・吸気通路、301・・・ISCV
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関がアイドル状態にある際に、前記内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整可能な調整手段と、
シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、ブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられた第1タイミング以後に前記回転数が目標回転数に近付く際に生じる前記応答遅れ時間に関する情報を取得すること
を特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1タイミング以後における前記内燃機関の実回転数及び前記目標回転数の偏差と、前記第1タイミング以後における前記目標回転数の変化量との少なくとも一方に基づいて、前記フィードバック制御を開始する第2タイミングを設定すること
を特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1タイミングにおいて、前記偏差が所定の範囲にある場合に前記見込み制御を前記内燃機関に実行することなく、前記フィードバック制御を開始すること
を特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記各種補正値は、前記内燃機関を冷却する冷却水の水温に関する水温データを含んでおり、
前記制御手段は、前記水温データに基づいて前記第2タイミングを設定すること
を特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関がアイドル状態にある際に、前記内燃機関の回転数を制御可能な内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に前記内燃機関に供給される空気の供給量を調整可能な調整手段と、
シフトレンジがドライブレンジに設定されている状態において、前記内燃機関の動作状態を補正するために参照される各種補正値に基づいて前記内燃機関に見込み制御を行うと共に、前記回転数の応答遅れ時間をなくすように前記内燃機関をフィードバック制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関が前記アイドル状態にある際に、ブレーキが非動作状態から動作状態に切り換えられた第1タイミング以後に前記回転数が目標回転数に近付く際に生じる前記応答遅れ時間に関する情報を取得すること
を特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1タイミング以後における前記内燃機関の実回転数及び前記目標回転数の偏差と、前記第1タイミング以後における前記目標回転数の変化量との少なくとも一方に基づいて、前記フィードバック制御を開始する第2タイミングを設定すること
を特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1タイミングにおいて、前記偏差が所定の範囲にある場合に前記見込み制御を前記内燃機関に実行することなく、前記フィードバック制御を開始すること
を特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記各種補正値は、前記内燃機関を冷却する冷却水の水温に関する水温データを含んでおり、
前記制御手段は、前記水温データに基づいて前記第2タイミングを設定すること
を特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−167956(P2009−167956A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8893(P2008−8893)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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