内燃機関の制御装置
【課題】EGR成層燃焼を行う内燃機関において、燃料と新気との混合を促進させつつ、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制して、EGR成層燃焼における混合気の均質度を向上させ、燃費性能を改善する。
【解決手段】第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定する一方、第1吸気弁及び第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定することで、第1吸気弁上流側の吸気ポートに吹き返したEGRガスが、上死点後に燃焼室に吸入されるようにし、かつ、燃焼室内に生成されるスワール流を強化することで、燃料と新気との混合を促進させる。そして、第1吸気弁上流側の吸気ポートに吹き返したEGRガスが、上死点後に燃焼室に吸入されてから、第1吸気弁に向けた燃料噴射を開始させ、これにより、第1吸気弁を介して燃焼室に吸入されるEGRガスに燃料が混じることを抑制する。
【解決手段】第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定する一方、第1吸気弁及び第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定することで、第1吸気弁上流側の吸気ポートに吹き返したEGRガスが、上死点後に燃焼室に吸入されるようにし、かつ、燃焼室内に生成されるスワール流を強化することで、燃料と新気との混合を促進させる。そして、第1吸気弁上流側の吸気ポートに吹き返したEGRガスが、上死点後に燃焼室に吸入されてから、第1吸気弁に向けた燃料噴射を開始させ、これにより、第1吸気弁を介して燃焼室に吸入されるEGRガスに燃料が混じることを抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR成層燃焼を実現する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室内を内部EGRガス層と可燃混合気層とに分け、前記可燃混合気層に着火して燃焼させるEGR成層燃焼を実現する内燃機関として、ピストンが上昇する排気行程時に、第1吸気弁を介して上流側の第1吸気ポートに内部EGRガスを導入し、ピストンが上死点から下降する吸気行程時に、第1吸気ポート内に導入した内部EGRガスを、前記第1吸気弁を介して燃焼室に導入すると共に、第2吸気弁を介して上流側の第2吸気ポート内の新気を燃焼室内に導入してEGR成層燃焼を行わせる内燃機関があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−255866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、内部EGRガスを導入する第1吸気ポートに設けた第1吸気弁を、吸気行程の中期で閉じるようにしているため、第1吸気ポートを介しての吸気導入が途切れ、その結果、吸気行程の初期で発生したスワール流が継続せずに燃焼室内のガス流動が弱くなってしまうため、新気と燃料との混合を充分に促進させることができないという問題があった。
ここで、スワール流(ガス流動)を強化すれば、新気と燃料との混合を促進できるが、スワール流(ガス流動)を強化すると、内部EGRガスに燃料が混ざり易くなり、これによって、EGR成層燃焼における成層度が低下し、内部EGR量を充分に増やすことができなくなってしまうという問題が発生する。
【0005】
そこで、本願発明は、ガス流動の強化によって新気と燃料との混合を促進させつつ、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制でき、以って、EGR成層燃焼における混合気の均質度を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願発明は、可変動弁機構を制御して、第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定し、第1吸気弁の閉時期及び第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定すると共に、係るバルブタイミングの設定状態において、燃料噴射装置による第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、吸気行程の初期で発生したスワール流を吸気行程中で継続させて燃焼室内のガス流動を強化でき、これによって、新気と燃料との混合を促進できると共に、内部EGRガスを導入する第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングによって、内部EGRガスに燃料が混じることを抑止でき、EGR成層燃焼における混合気の均質度が向上し、引いては、燃費性能の改善を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態におけるエンジンの構成図である。
【図2】本願発明の実施形態における可変動弁機構の特性を示す線図である。
【図3】本願発明の実施形態における可変動弁機構の特性を示す線図である。
【図4】本願発明の実施形態における可変動弁機構の制御特性を示す図である。
【図5】本願発明の実施形態における燃料噴射装置を示す図である。
【図6】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング及び噴射タイミングを示す図である。
【図7】本願発明の実施形態における噴射タイミングの演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】本願発明の実施形態における燃料噴射装置を示す図である。
【図9】本願発明の実施形態における噴射タイミングの演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング及び噴射タイミングを示す図である。
【図11】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング,噴射タイミング及び噴射量特性を示す図である。
【図12】本願発明の実施形態における噴射量比率の演算ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明に係る内燃機関の制御装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を適用する車両用エンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は、直列型多気筒内燃機関であるが、V型や水平対向型などの内燃機関であってもよい。
【0010】
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。吸入空気量センサ103として、例えば、吸気の質量流量を検出する熱線式流量計などを用いることができる。
各燃焼室104には、燃焼室104の吸気口を開閉する第1吸気弁105a,第2吸気弁105bが設けられ、吸気弁105a,105bの上流側の吸気管(吸気ポート)102には、気筒毎に燃料噴射弁106を設けてある。
【0011】
燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気弁105a,105bを介して燃焼室104内に空気と共に吸入され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
また、各燃焼室104には、燃焼室104の排気口を開閉する第1排気弁110a,第2排気弁110bが設けられ、この排気弁110a,110bが開くことで排ガスが排気管111に排出される。
【0012】
排気管111には、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112が設置され、触媒コンバータ112によって排気を浄化する。
尚、本実施形態では、前述のように、気筒毎に2つの吸気弁105a,105b及び2つの排気弁110a,110bを備えており、第1吸気弁105a上流側の第1吸気ポート113aと第2吸気弁105b上流側の第2吸気ポート113bとが合流して吸気管102に接続されている。
【0013】
吸気弁105a,105b及び排気弁110a,110bは、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの回転に伴って開動作する。
2つの排気弁110a,110bは、一定のバルブタイミングで開動作するが、2つの吸気弁105a,105bのバルブタイミング(開時期IVO及び閉時期IVC)は、可変動弁機構114a,114bによって可変とされる。
【0014】
第1可変動弁機構114aは、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフトの回転位相を変化させることで、吸気弁105a,105bのバルブ作動角の位相を連続的に進角方向及び遅角方向に変化させる公知の機構である。
また、第2可変動弁機構114bは、第1吸気弁105aのバルブタイミングを変化させることなく、第2吸気弁105bのバルブタイミングを可変とする機構であり、この第2可変動弁機構114bによって第2吸気弁105bのバルブタイミングを、第1吸気バルブ105aと同じタイミングから異なるタイミングにまで変化させることができるようになっている。
【0015】
第2可変動弁機構114bとしては、特開2008−255866号公報に開示される、制御軸の角度を変化させることで、吸気弁の最大バルブリフト量をバルブ作動角と共に連続的に可変とするリフト及び作動角可変機構や、同じく特開2008−255866号公報に開示される、吸気弁の駆動に用いるカムを、大作動角カムと小作動角カムとのいずれか一方に切り替えるカム切替機構や、米国特許出願公開第2009/0217893号明細書(特開2009−197597号公報)に開示される、1本のバルブに対して複数設けられたカムノーズと、複数のカムノーズのいずれか1つの駆動力をバルブに伝達する伝達切替機構とを備えた動弁装置などを用いることができる。
ここで、第2可変動弁機構114bとして、カム切替機構を用いる場合、図2に示すように、大作動角カムの選択時には、第1吸気弁105a及び第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角が略同等になり、小作動角カムの選択時には、第2吸気弁105bのバルブリフト量及びバルブ作動角が第1吸気弁105aよりも小さくなるように設定してある。
【0016】
また、第2可変動弁機構114bとして、リフト及び作動角可変機構を用いる場合には、図3に示すように、第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角の可変範囲(MIN〜MAX)には、第1吸気弁105aのバルブリフト量及びバルブ作動角と同じバルブリフト量及びバルブ作動角と、前記小作動角カムの選択時のバルブリフト量及びバルブ作動角とを少なくとも含む。
また、点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
【0017】
エンジン制御装置201は、コンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変動弁機構114a,114b、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する装置であり、本願発明に係る制御装置としての制御機能を後述するように備えている。
【0018】
また、エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、吸気カムシャフトの回転角信号CAMを出力するカム角センサ204、エンジン101の冷却水の温度TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209などからの信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
【0019】
ここで、エンジン制御装置201による可変動弁機構114a,114bの制御を、図4に従って概略的に説明する。
エンジン制御装置(バルブタイミング設定手段)201は、エンジン101の負荷、回転速度、温度(冷却水温度)などの各種運転条件に基づき、各運転条件に適した吸気弁105a,105bのバルブタイミングを設定し、このバルブタイミングになるように可変動弁機構114a,114bを制御する。
【0020】
例えば図4に示すように、エンジン101の運転条件(運転モード)を、エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン温度などに基づき、燃費向上条件(低負荷域)、ノッキング抑制条件(高負荷域)、排気浄化条件(暖気運転時など)、出力要求条件(加速運転時など)などに場合分けし、それぞれに吸気弁105a,105bのバルブタイミングの目標値(設計値)を予め設定する。
【0021】
燃費向上条件(EGR成層燃焼モード)は、出力よりも燃費性能を優先することが要求される低回転低負荷側の運転条件であり、この燃費向上条件では、第1可変動弁機構114aによって吸気カムシャフトの回転位相を進角させると共に、第2可変動弁機構114aによって第2吸気弁105bのバルブ作動角を第1吸気弁105aよりも小さくすることで、第1吸気弁105aの開時期IVOを上死点TDC前(例えば、上死点TDC前8deg)に設定し、第2吸気弁105bの開時期IVOを上死点TDC以降(例えば、上死点TDC後36deg)に設定し、第1吸気弁105aの閉時期IVC及び第2吸気弁105bの閉時期IVCを下死点BDC以降の略同じ時期(例えば、下死点BDC後40deg)に設定して、EGR成層燃焼の実現により燃費の向上を図る。
【0022】
また、ノッキング抑制条件(ノッキング抑制モード)は、ノッキングが発生し易い暖機後の高負荷側の運転条件であり、このノッキング抑制条件では、吸気弁105a,105bのバルブ作動角を、燃費向上条件と同等に保ったまま、第1可変動弁機構114aによって吸気カムシャフトの回転位相を遅角させることで、吸気弁105a,105bのバルブタイミングを共に燃費向上条件のときよりも遅らせ、第1吸気弁105の開時期IVOを上死点付近に設定することで、内部EGR量の低減、及び、ガス流動の強化による燃焼速度の増大(燃焼期間の短縮)によって、ノッキングの抑制を図る。
【0023】
また、排気浄化条件(排気浄化モード)は、触媒コンバータ112の温度を速やかに活性温度にまで昇温させることが要求されるエンジン101の低温条件(暖機運転状態)であり、ノッキング抑制条件と同じバルブタイミングに設定することで、より遅れた点火時期での点火を可能とし、点火時期を遅角することで排気温度を高め、触媒コンバータ112の活性を促進させる。
【0024】
また、出力要求条件(出力要求モード)は、燃費性能よりも出力が要求される加速運転状態や中高負荷域などの運転条件であり、この出力要求条件では、第1可変動弁機構114aによる吸気カムシャフトの回転位相は、ノッキング抑制条件や排気浄化条件と同等に保持したまま、第2可変動弁機構114bによって第2吸気弁105bのバルブ作動角を第1吸気弁105aと同等に設定することで、吸気弁105a,105bの開時期IVOが共に上死点付近で、吸気弁105a,105bの閉時期IVCが共に下死点以降の略同じ時期に設定されるようにすることで新気充填効率を高め、均質燃焼を行わせる。
【0025】
次に、エンジン制御装置201による前記燃費向上条件でのバルブタイミング制御及び燃料噴射制御を詳述する。
まず、図5に示すように、気筒毎に1本の燃料噴射弁106からなる燃料噴射装置を吸気管102に備え、この燃料噴射弁106が、第1吸気弁105aに向かう方向と、第2吸気弁105bに向かう方向との2方向に燃料を噴射する場合の制御を、図6に基づき説明する。
【0026】
前記燃費向上条件において、エンジン制御装置201(バルブタイミング設定手段)は、前述のように、第1吸気弁105aの開時期IVOを上死点よりも前(例えば上死点TDC前8deg)に設定し、第2吸気弁105bの開時期IVOを上死点TDC以降(例えば上死点TDC後36deg)に設定する一方、第1吸気弁105aの閉時期IVC及び第2吸気弁105bの閉時期IVCを下死点BDC以降の略同じ時期(例えば、下死点BDC後40deg)に設定する。
尚、排気弁110a,110bの閉時期EVCは、上死点付近(例えば、上死点TDC後23deg)に設定し、排気弁110a,110bの開時期EVOは、下死点付近(例えば、下死点BDC前5deg)に設定してある。
これにより、第1吸気弁105aは、ピストン上昇中の排気行程で開くことになり、第1吸気弁105aがピストン上昇中に開くと、燃焼室内の燃焼後のガスは、第1吸気弁105a上流の第1吸気ポート113aに吹き返すことになる。
【0027】
そして、第1吸気弁105aの開状態で、ピストンが上死点に達するまでに、第1吸気ポート113aに吹き返したガス(内部EGRガス)は、ピストンが上死点TDCから下降に転じて吸気行程に切り替わることで燃焼室104内に吸入され、内部EGRガスの吸入に続けて新気が第1吸気弁105aを介して燃焼室104内に吸入されることになる。
一方、第2吸気弁105bは、ピストン上昇中の排気行程では開かず、ピストンが上死点TDCに達した以降の吸気行程で開くので、第2吸気弁105bの上流側の第2吸気ポート113bに対する吹き返しは発生しない。
【0028】
ここで、第1吸気弁105aと第2吸気弁105bとが位相差をもって開弁することで、燃焼室104内にスワール流が発生し、その後、吸気弁105a,105bの双方が下死点BDC以降まで開状態を保持するので、開弁初期(吸気行程初期)に発生したスワール流が吸気行程中において継続し、燃焼室104内におけるスワール流が強化される。その結果、燃焼室104内における平均流速が増加して、燃焼室104内でのガスの運動エネルギーが増大し、新気と燃料との混合を促進させることができる。
尚、燃焼室104内への内部EGRガスの導入がほぼ完了した直後の吸気行程の途中で、第1吸気弁105aを閉じると、スワール流が弱くなってしまうので、吸気弁105a,105bを位相差をもって開弁し、双方の開弁状態を下死点BDC後まで継続させることで、スワール流の強化を図れる。
【0029】
但し、ガス流動(スワール流)を強化すると、内部EGRガスに燃料が混ざり易くなり、これによって、EGR成層燃焼における成層度(新気とEGRガスとの分離度)が低下し、燃焼安定度が低下するため、内部EGR量を充分に増やすことができなくなってしまう。そこで、エンジン制御装置201(噴射タイミング設定手段)は、燃料噴射弁106による噴射開始タイミングを、第1吸気ポート113aに吹き返したガスが、第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入された後であって、燃料噴射弁106からの燃料が新気中に噴射されることになるタイミングに設定する。
【0030】
即ち、ピストンが下降に転じた直後の吸気行程初期には、内部EGRガスが第1吸気弁105aを介して燃焼室に吸入されるから、このときに燃料噴射弁106による燃料噴射を行わせると、内部EGRガスに燃料が混ざって成層度が低下する。このため、燃料噴射弁106からの燃料噴霧が第1吸気弁105aに到達した時点で、既に、内部EGRガスが燃焼室104に吸入されていて、燃料が新気中に噴射されるように、内部EGRガスの吸入期間である吸気行程初期を過ぎてから、換言すれば、上死点TDCから設定期間だけ遅れたタイミングで、燃料噴射弁106による燃料噴射を開始させる。
これによって、内部EGRガス中に燃料が混じることを抑制でき、以って、燃焼室104内における新気と内部EGRガスとの成層度が向上するので、第1吸気弁105aの開時期IVOをより進角させて内部EGR量の増大を図ることができる。更に、ガス流動が強化されて、新気と燃料との混合が促進されるので、混合気の均質度が増加し、燃費を改善できる。
【0031】
ここで、上死点TDCから燃料噴射弁106による燃料噴射開始までの遅れ期間は、固定の時間或いは固定のクランク角度として予め設定しておくことができるが、第1吸気ポート113aに吹き返したガス量が多いほど、吹き返しガスが燃焼室内に吸入されるのに要する時間が長くなる。このため、吹き返しガス量が多い場合であっても、内部EGRガス中に燃料が混じらないように、上死点TDCから噴射開始タイミングまでの遅れ期間を設定すると、吹き返しガス量が少ないときには、過剰に噴射開始タイミングが遅れ、燃料の気化時間が短くなり、また、燃焼混合気の均質度合いが低下し、燃焼安定性が低下してしまう。
【0032】
そこで、上死点TDCから噴射開始タイミングまでの遅れ期間を、吹き返しガス量に応じて可変に設定することが好ましく、前記遅れ期間の設定処理を、図7のフローチャートに従って説明する。
図7のフローチャートは、エンジン制御装置201が一定時間毎に実行する、噴射開始遅れ時間(噴射開始タイミング)の設定ルーチンを示す。
【0033】
まず、ステップS1(吹き返しガス量推定手段)では、第1吸気ポート113aに対する吹き返しEGRガス量Wm(cc)の演算を行う。
吹き返しEGRガス量Wmの演算は、例えば特開2004−044548号公報に開示される推定方法を用いて行うことができる。
【0034】
具体的には、第1吸気弁105aのバルブ作動角内におけるバルブリフト量と、第1吸気弁105bの開時期IVOとに基づき、バルブオーバーラップ時の第1吸気弁105aのバルブ開口面積AWmを演算し、このバルブ開口面積AWmに基づいてバルブオーバーラップ時の基本吹き返し量Wm0を算出する。
ここで、バルブ開口面積AWmが大きいほど、換言すれば、第1吸気弁105aの開時期IVOが進角するほど、また、吸気弁105aのバルブリフト量が大きいほど、基本吹き返し量Wm0はより大きな値として算出される。
【0035】
そして、この基本吹き返し量Wm0に対して、そのときの吸気圧やエンジン回転速度に応じた補正を施して、吹き返しEGRガス量Wmを算出する。
前記吸気圧に応じた補正では、第1吸気弁105aの上流側圧力である吸気管圧が高いほど、吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。また、機関回転速度Neが高いほど吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。
【0036】
次のステップS2では、ステップS1で求めた吹き返しEGRガス量Wmに基づき、吹き返しガスが燃焼室内に吸入されるのに要する時間Tdelay(ms)を演算する。
前記時間Tdelayは、1気筒のシリンダ容積をVOL(cc)、1吸気サイクルの時間をT1(ms)としたときに、下記の式(1)に基づき算出される。
式(1)…Tdelay=(Wm/VOL)×T1
【0037】
ここで、1吸気サイクルの時間T1(ms)は、エンジン回転速度Ne(rpm)に基づき、下記の式(2)に基づき算出される。
式(2)…T1=(60×1000)/Ne/2
【0038】
また、1気筒のシリンダ容積VOL(cc)は、シリンダボア及びピストンストロークに基づき、下記の式(3)に基づき算出される。
式(3)…VOL=(ボア/2)2×π×ストローク
【0039】
ステップS3では、燃料噴射弁106による噴射開始タイミングを、吹き返しEGRガスの燃焼室104への吸入が開始される上死点TDCから、前記時間Tdelayだけ経過した時点に設定する。
尚、燃料噴射弁106から噴射された燃料が吸気弁105に到達するまでの輸送時間があるため、係る輸送時間分だけ前記時間Tdelayを補正してもよいが、輸送時間は短い時間であるため、式(1)で算出される時間Tdelayに基づき、噴射開始タイミングを決定すれば、必要充分な精度を得られる。
【0040】
また、吹き返しEGRガス量Wmを演算式に基づき演算し、更に、演算した吹き返しEGRガス量Wmに基づき時間Tdelayを演算する代わりに、エンジン負荷及びエンジン回転速度によって区分される運転領域毎に、そのときの吹き返しEGRガス量Wmを見込んだ時間Tdelayを求め、前記運転領域毎に時間Tdelayを記憶したマップを設定し、係るマップからそのときのエンジン負荷及びエンジン回転速度に対応して記憶されている時間Tdelayを検索することができる。
【0041】
上記のようにして、吹き返しEGRガス量Wmが多いときには、吹き返しEGRガスが燃焼室に吸入されるまでの時間が長くなることに対応して、燃料噴射弁106の噴射開始タイミングをより遅らせる。これにより、内部EGRガス中に燃料噴射弁106から噴射された燃料が混じることを抑制しつつ、燃料噴射弁106の噴射開始タイミングをなるべく早い時期に設定でき、燃料噴霧の気化時間を長くでき、また、燃焼混合気の均質化を促進でき、燃焼安定性を向上させることができる。
【0042】
上記の実施形態では、1つの燃料噴射弁(燃料噴射装置)106によって第1吸気弁105a側と第2吸気弁105b側との双方に向けて燃料を噴射させたが、図8に示すように、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aと、第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bとからなる燃料噴射装置を備えるエンジン101においても、前述のように、吸気弁105a,105bのバルブタイミングを設定し、かつ、第1吸気弁105aに向けた燃料の噴射開始タイミングを設定することができる。
【0043】
ここで、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備える場合、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aについては、内部EGRガスが燃焼室内に吸入されてから燃料噴射を開始させることが、成層度を向上させるために要求されるが、吹き返しが発生しない第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bについては、第1燃料噴射弁106aと同じ時期に燃料を噴射する必要はない。
そこで、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備えるエンジン101では、図9のフローチャートに従って、エンジン制御装置201が、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングと、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングとを個別に設定することができる。
【0044】
図9のフローチャートは、一定時間毎に実行される、噴射開始タイミングの設定ルーチンを示す。
ステップS11では、ステップS1と同様に、吹き返しEGRガス量Wm(cc)を演算し、ステップS12では、ステップS2と同様に、吹き返しガスが燃焼室104内に吸入されるのに要する時間Tdelay(ms)を演算する。
【0045】
ステップS13では、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2を演算する。前述のように、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2は、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングIT1とは異なる時期に設定することができ、また、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングIT1よりも早い時期に第2燃料噴射弁106bによる燃料噴射を開始させても、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制することができる。
そこで、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2については、気化時間を充分に確保でき、かつ、第2吸気弁105bを介して燃焼室内に吸入される新気を均質な燃焼混合気とすることができる適当な時期に設定することができる。
【0046】
具体的には、図10に示すように、例えば、第2吸気弁105bの開時期IVO(上死点)を、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2とする。このように、第2吸気弁105bの開時期IVOに合わせて第2燃料噴射弁106bの噴射を開始させれば、第2吸気弁105bを介して燃焼室に吸入するガス流動が強いときに燃料を噴射させることができ、燃焼混合気の均質化を図ることができ、また、燃焼室内での燃料噴霧の気化時間を充分に確保できる。
但し、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2は、第2吸気弁105bの開時期IVOに限定されるものではなく、例えば、第2吸気弁105bの開時期IVO前(上死点前)に設定することができる。
【0047】
ステップS14では、ステップS3と同様に、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始タイミングIT1を、吹き返しEGRガスの燃焼室への吸入が開始される上死点TDCから、前記時間Tdelayだけ経過した時点に設定する。
図10に示した例では、第1燃料噴射弁106aの噴射パルス幅(燃料噴射量)と、第2燃料噴射弁106bの噴射パルス幅(燃料噴射量)とを同等に設定してある。即ち、燃焼室104に吸入される新気量に対応して目標空燃比の混合気を形成させるために要求される燃料量の半分を、第1燃料噴射弁106aから噴射させ、残りの半分を第2燃料噴射弁106bから噴射させている。
【0048】
但し、第1吸気弁105aを介しては、内部EGRガスと新気とが燃焼室104内に吸入されるのに対し、第2吸気弁105bを介しては、新気が燃焼室104内に吸入され、第2吸気弁105bを通過する新気の量は、第1吸気弁105aを通過する新気の量に比べて多くなる。
従って、均質な可燃混合気を形成させるためには、図11に示すように、第1燃料噴射弁106aが噴射する燃料量よりも、第2燃料噴射弁106bが噴射する燃料量を多くすることが好ましい。
【0049】
ここで、第1燃料噴射弁106aの燃料噴射量と第2燃料噴射弁106bの燃料噴射量との比率を予め設定した一定値に固定し、新気量に見合う燃料量を、前記比率に従って第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとにそれぞれ分担させて噴射させることができる。
また、内部EGRガス量に応じて第1吸気弁105aを通過する新気量が変化することに対応して、第1燃料噴射弁106aの燃料噴射量と第2燃料噴射弁106bの燃料噴射量との比率を可変に設定することができる。
【0050】
図12のフローチャートは、エンジン制御装置(噴射量設定手段)201が一定時間毎に実行する、噴射量比率の設定ルーチンを示す。
ステップS21では、吸入空気量センサ103の信号から吸入空気量Qaを演算する。
ステップS22では、吸入空気量Qa、エンジン回転速度Neなどから燃料噴射量Tpを演算する。
【0051】
ステップS23では、前記ステップS1と同様にして、吹き返しEGRガス量Wmを演算する。
ステップS24では、第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入される新気量と、第2吸気弁105bを介して燃焼室104に吸入される新気量との比率を演算する。
ここで、第1吸気弁105aを介して新気及び吹き返しEGRガスが燃焼室104に吸入され、この新気及び吹き返しEGRガスの総量は、第2吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入される新気量と略同等になる。
【0052】
即ち、第1吸気弁105aを介して吸入される新気量をQa1、第2吸気弁105bを介して吸入される新気量をQa2としたときに、Qa+Wmが燃焼室内に吸入されるガスの総量であり、該総量の半分は、第2吸気弁105bを介して吸入される新気量Qa2と略同量になるから、新気量Qa2は、Qa2=(Qa+Wm)/2として求められる。
一方、Qa2=Qa1+Wmであるから、新気量Qa1は、Qa1=Qa2−Wm=(Qa+Wm)/2−Wmとして求められ、新気量比率は、Qa1:Qa2=(Qa+Wm)/2−Wm:(Qa+Wm)/2となる。
【0053】
前記新気量比率に対応する比率で第1燃料噴射弁106a及び第2燃料噴射弁106bから燃料を噴射させればよいので、次のステップS25では、前記新気量比率に基づき、第1燃料噴射弁106aから噴射させる燃料噴射量Tp1と、第2燃料噴射弁106bから噴射させる燃料噴射量Tp2とを演算する。
即ち、Tp=Tp1+Tp2で、かつ、Tp1:Tp2=Qa1:Qa2となるように、各噴射量Tp1,Tp2を、Tp1=Tp×Qa1/Qa、Tp2=Tp×Qa2/Qaとして演算する。
【0054】
上記のようにして、各吸気弁105a,105bを通過する新気量の違いに対応して、燃料噴射弁106a,106bそれぞれの燃料噴射量を個別に設定すれば、各吸気弁105a,105bを通過する新気に対して目標空燃比相当の燃料を噴射することになり、目標空燃比の均質な可燃混合気を形成することができ、燃焼安定性を向上させることができる。
【0055】
尚、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106a、及び、第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bを設ける場合、これらの燃料噴射弁106a,106bを吸気管12の上下流方向に離して設置することができ、燃料噴射弁106a,106bの配置は適宜設定することができる。
また、吸気弁105a,105bとして、電磁石による磁気吸入力によって開閉動作する電磁駆動弁を用いることができる。
【0056】
また、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備えたエンジン101において、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングを、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングから第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングまでの遅延時間を、吹き返した内部EGRガス量に応じて設定し、第2燃料噴射弁106bの噴射開始から前記遅延時間が経過してから第1燃料噴射弁106aの噴射を開始させることができる。従って、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングの基準位置は、上死点に限定されるものではない。
【0057】
また、第2燃料噴射弁106aの燃料噴射を、第2吸気弁105bの開弁前と開弁後との2回に分けて行わせたり、第2吸気弁105bの開弁後に複数回に分けて行わせたりすることができる。
また、第1吸気弁106aと第2吸気弁106bとの双方に向けて燃料を噴射する2方向燃料噴射弁と、第2吸気弁106bに向けて燃料を噴射する1方向燃料噴射弁とを設け、第1吸気弁106aを通過する新気量に見合った燃料を2方向燃料噴射弁から噴射させ、第2吸気弁106bを通過する新気量に見合った燃料を、2方向燃料噴射弁からの噴射と1方向燃料噴射弁からの噴射との合計で得られるようにすることができる。
【0058】
更に、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとは、同じ噴霧特性であっても良いし、噴霧角、噴霧粒径などが異なる燃料噴射弁を用いることができ、更に、第1燃料噴射弁106aに対する燃料の供給圧と、第2燃料噴射弁106bに対する燃料の供給圧とを異ならせることができる。
また、上記実施形態では、燃費向上条件(EGR成層燃焼モード)において、第1吸気弁105aの閉時期と第2吸気弁105bの閉時期とを、下死点以降の同じ時期としたが、下死点以降の異なる時期に設定することができ、例えば、第1吸気弁105aの開弁期間(作動角)と第2吸気弁105bの開弁期間(作動角)とを同じに設定して、第1吸気弁105aの閉弁時期IVCを、第2吸気弁105bの閉弁時期IVCよりも早くすることができる。
【0059】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2又は5記載の内燃機関の制御装置において、
前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量を、前記第1吸気弁の開時期、内燃機関の吸気圧、及び、内燃機関の回転速度に基づいて推定する吹き返しガス量推定手段を設けた内燃機関の制御装置。
係る構成では、吸気ポート側に吹き返すガス量が、第1吸気弁の開時期、内燃機関の吸気圧、及び、内燃機関の回転速度に応じて変化することに対応して、吹き返しガス量を精度良く推定することができ、引いては、噴射開始タイミングや燃料噴射量を精度良く設定できる。
【符号の説明】
【0060】
101…エンジン(内燃機関)、105a,105b…吸気バルブ、106a,106b…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、110a,110b…排気弁、113a,113b…吸気ポート、114a,114b…可変動弁機構、115…点火モジュール、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ、204…カム角センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR成層燃焼を実現する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室内を内部EGRガス層と可燃混合気層とに分け、前記可燃混合気層に着火して燃焼させるEGR成層燃焼を実現する内燃機関として、ピストンが上昇する排気行程時に、第1吸気弁を介して上流側の第1吸気ポートに内部EGRガスを導入し、ピストンが上死点から下降する吸気行程時に、第1吸気ポート内に導入した内部EGRガスを、前記第1吸気弁を介して燃焼室に導入すると共に、第2吸気弁を介して上流側の第2吸気ポート内の新気を燃焼室内に導入してEGR成層燃焼を行わせる内燃機関があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−255866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、内部EGRガスを導入する第1吸気ポートに設けた第1吸気弁を、吸気行程の中期で閉じるようにしているため、第1吸気ポートを介しての吸気導入が途切れ、その結果、吸気行程の初期で発生したスワール流が継続せずに燃焼室内のガス流動が弱くなってしまうため、新気と燃料との混合を充分に促進させることができないという問題があった。
ここで、スワール流(ガス流動)を強化すれば、新気と燃料との混合を促進できるが、スワール流(ガス流動)を強化すると、内部EGRガスに燃料が混ざり易くなり、これによって、EGR成層燃焼における成層度が低下し、内部EGR量を充分に増やすことができなくなってしまうという問題が発生する。
【0005】
そこで、本願発明は、ガス流動の強化によって新気と燃料との混合を促進させつつ、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制でき、以って、EGR成層燃焼における混合気の均質度を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願発明は、可変動弁機構を制御して、第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定し、第1吸気弁の閉時期及び第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定すると共に、係るバルブタイミングの設定状態において、燃料噴射装置による第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、吸気行程の初期で発生したスワール流を吸気行程中で継続させて燃焼室内のガス流動を強化でき、これによって、新気と燃料との混合を促進できると共に、内部EGRガスを導入する第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングによって、内部EGRガスに燃料が混じることを抑止でき、EGR成層燃焼における混合気の均質度が向上し、引いては、燃費性能の改善を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態におけるエンジンの構成図である。
【図2】本願発明の実施形態における可変動弁機構の特性を示す線図である。
【図3】本願発明の実施形態における可変動弁機構の特性を示す線図である。
【図4】本願発明の実施形態における可変動弁機構の制御特性を示す図である。
【図5】本願発明の実施形態における燃料噴射装置を示す図である。
【図6】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング及び噴射タイミングを示す図である。
【図7】本願発明の実施形態における噴射タイミングの演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】本願発明の実施形態における燃料噴射装置を示す図である。
【図9】本願発明の実施形態における噴射タイミングの演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング及び噴射タイミングを示す図である。
【図11】本願発明の実施形態におけるバルブタイミング,噴射タイミング及び噴射量特性を示す図である。
【図12】本願発明の実施形態における噴射量比率の演算ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明に係る内燃機関の制御装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を適用する車両用エンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は、直列型多気筒内燃機関であるが、V型や水平対向型などの内燃機関であってもよい。
【0010】
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。吸入空気量センサ103として、例えば、吸気の質量流量を検出する熱線式流量計などを用いることができる。
各燃焼室104には、燃焼室104の吸気口を開閉する第1吸気弁105a,第2吸気弁105bが設けられ、吸気弁105a,105bの上流側の吸気管(吸気ポート)102には、気筒毎に燃料噴射弁106を設けてある。
【0011】
燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気弁105a,105bを介して燃焼室104内に空気と共に吸入され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
また、各燃焼室104には、燃焼室104の排気口を開閉する第1排気弁110a,第2排気弁110bが設けられ、この排気弁110a,110bが開くことで排ガスが排気管111に排出される。
【0012】
排気管111には、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112が設置され、触媒コンバータ112によって排気を浄化する。
尚、本実施形態では、前述のように、気筒毎に2つの吸気弁105a,105b及び2つの排気弁110a,110bを備えており、第1吸気弁105a上流側の第1吸気ポート113aと第2吸気弁105b上流側の第2吸気ポート113bとが合流して吸気管102に接続されている。
【0013】
吸気弁105a,105b及び排気弁110a,110bは、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの回転に伴って開動作する。
2つの排気弁110a,110bは、一定のバルブタイミングで開動作するが、2つの吸気弁105a,105bのバルブタイミング(開時期IVO及び閉時期IVC)は、可変動弁機構114a,114bによって可変とされる。
【0014】
第1可変動弁機構114aは、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフトの回転位相を変化させることで、吸気弁105a,105bのバルブ作動角の位相を連続的に進角方向及び遅角方向に変化させる公知の機構である。
また、第2可変動弁機構114bは、第1吸気弁105aのバルブタイミングを変化させることなく、第2吸気弁105bのバルブタイミングを可変とする機構であり、この第2可変動弁機構114bによって第2吸気弁105bのバルブタイミングを、第1吸気バルブ105aと同じタイミングから異なるタイミングにまで変化させることができるようになっている。
【0015】
第2可変動弁機構114bとしては、特開2008−255866号公報に開示される、制御軸の角度を変化させることで、吸気弁の最大バルブリフト量をバルブ作動角と共に連続的に可変とするリフト及び作動角可変機構や、同じく特開2008−255866号公報に開示される、吸気弁の駆動に用いるカムを、大作動角カムと小作動角カムとのいずれか一方に切り替えるカム切替機構や、米国特許出願公開第2009/0217893号明細書(特開2009−197597号公報)に開示される、1本のバルブに対して複数設けられたカムノーズと、複数のカムノーズのいずれか1つの駆動力をバルブに伝達する伝達切替機構とを備えた動弁装置などを用いることができる。
ここで、第2可変動弁機構114bとして、カム切替機構を用いる場合、図2に示すように、大作動角カムの選択時には、第1吸気弁105a及び第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角が略同等になり、小作動角カムの選択時には、第2吸気弁105bのバルブリフト量及びバルブ作動角が第1吸気弁105aよりも小さくなるように設定してある。
【0016】
また、第2可変動弁機構114bとして、リフト及び作動角可変機構を用いる場合には、図3に示すように、第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角の可変範囲(MIN〜MAX)には、第1吸気弁105aのバルブリフト量及びバルブ作動角と同じバルブリフト量及びバルブ作動角と、前記小作動角カムの選択時のバルブリフト量及びバルブ作動角とを少なくとも含む。
また、点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
【0017】
エンジン制御装置201は、コンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変動弁機構114a,114b、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する装置であり、本願発明に係る制御装置としての制御機能を後述するように備えている。
【0018】
また、エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、吸気カムシャフトの回転角信号CAMを出力するカム角センサ204、エンジン101の冷却水の温度TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209などからの信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
【0019】
ここで、エンジン制御装置201による可変動弁機構114a,114bの制御を、図4に従って概略的に説明する。
エンジン制御装置(バルブタイミング設定手段)201は、エンジン101の負荷、回転速度、温度(冷却水温度)などの各種運転条件に基づき、各運転条件に適した吸気弁105a,105bのバルブタイミングを設定し、このバルブタイミングになるように可変動弁機構114a,114bを制御する。
【0020】
例えば図4に示すように、エンジン101の運転条件(運転モード)を、エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン温度などに基づき、燃費向上条件(低負荷域)、ノッキング抑制条件(高負荷域)、排気浄化条件(暖気運転時など)、出力要求条件(加速運転時など)などに場合分けし、それぞれに吸気弁105a,105bのバルブタイミングの目標値(設計値)を予め設定する。
【0021】
燃費向上条件(EGR成層燃焼モード)は、出力よりも燃費性能を優先することが要求される低回転低負荷側の運転条件であり、この燃費向上条件では、第1可変動弁機構114aによって吸気カムシャフトの回転位相を進角させると共に、第2可変動弁機構114aによって第2吸気弁105bのバルブ作動角を第1吸気弁105aよりも小さくすることで、第1吸気弁105aの開時期IVOを上死点TDC前(例えば、上死点TDC前8deg)に設定し、第2吸気弁105bの開時期IVOを上死点TDC以降(例えば、上死点TDC後36deg)に設定し、第1吸気弁105aの閉時期IVC及び第2吸気弁105bの閉時期IVCを下死点BDC以降の略同じ時期(例えば、下死点BDC後40deg)に設定して、EGR成層燃焼の実現により燃費の向上を図る。
【0022】
また、ノッキング抑制条件(ノッキング抑制モード)は、ノッキングが発生し易い暖機後の高負荷側の運転条件であり、このノッキング抑制条件では、吸気弁105a,105bのバルブ作動角を、燃費向上条件と同等に保ったまま、第1可変動弁機構114aによって吸気カムシャフトの回転位相を遅角させることで、吸気弁105a,105bのバルブタイミングを共に燃費向上条件のときよりも遅らせ、第1吸気弁105の開時期IVOを上死点付近に設定することで、内部EGR量の低減、及び、ガス流動の強化による燃焼速度の増大(燃焼期間の短縮)によって、ノッキングの抑制を図る。
【0023】
また、排気浄化条件(排気浄化モード)は、触媒コンバータ112の温度を速やかに活性温度にまで昇温させることが要求されるエンジン101の低温条件(暖機運転状態)であり、ノッキング抑制条件と同じバルブタイミングに設定することで、より遅れた点火時期での点火を可能とし、点火時期を遅角することで排気温度を高め、触媒コンバータ112の活性を促進させる。
【0024】
また、出力要求条件(出力要求モード)は、燃費性能よりも出力が要求される加速運転状態や中高負荷域などの運転条件であり、この出力要求条件では、第1可変動弁機構114aによる吸気カムシャフトの回転位相は、ノッキング抑制条件や排気浄化条件と同等に保持したまま、第2可変動弁機構114bによって第2吸気弁105bのバルブ作動角を第1吸気弁105aと同等に設定することで、吸気弁105a,105bの開時期IVOが共に上死点付近で、吸気弁105a,105bの閉時期IVCが共に下死点以降の略同じ時期に設定されるようにすることで新気充填効率を高め、均質燃焼を行わせる。
【0025】
次に、エンジン制御装置201による前記燃費向上条件でのバルブタイミング制御及び燃料噴射制御を詳述する。
まず、図5に示すように、気筒毎に1本の燃料噴射弁106からなる燃料噴射装置を吸気管102に備え、この燃料噴射弁106が、第1吸気弁105aに向かう方向と、第2吸気弁105bに向かう方向との2方向に燃料を噴射する場合の制御を、図6に基づき説明する。
【0026】
前記燃費向上条件において、エンジン制御装置201(バルブタイミング設定手段)は、前述のように、第1吸気弁105aの開時期IVOを上死点よりも前(例えば上死点TDC前8deg)に設定し、第2吸気弁105bの開時期IVOを上死点TDC以降(例えば上死点TDC後36deg)に設定する一方、第1吸気弁105aの閉時期IVC及び第2吸気弁105bの閉時期IVCを下死点BDC以降の略同じ時期(例えば、下死点BDC後40deg)に設定する。
尚、排気弁110a,110bの閉時期EVCは、上死点付近(例えば、上死点TDC後23deg)に設定し、排気弁110a,110bの開時期EVOは、下死点付近(例えば、下死点BDC前5deg)に設定してある。
これにより、第1吸気弁105aは、ピストン上昇中の排気行程で開くことになり、第1吸気弁105aがピストン上昇中に開くと、燃焼室内の燃焼後のガスは、第1吸気弁105a上流の第1吸気ポート113aに吹き返すことになる。
【0027】
そして、第1吸気弁105aの開状態で、ピストンが上死点に達するまでに、第1吸気ポート113aに吹き返したガス(内部EGRガス)は、ピストンが上死点TDCから下降に転じて吸気行程に切り替わることで燃焼室104内に吸入され、内部EGRガスの吸入に続けて新気が第1吸気弁105aを介して燃焼室104内に吸入されることになる。
一方、第2吸気弁105bは、ピストン上昇中の排気行程では開かず、ピストンが上死点TDCに達した以降の吸気行程で開くので、第2吸気弁105bの上流側の第2吸気ポート113bに対する吹き返しは発生しない。
【0028】
ここで、第1吸気弁105aと第2吸気弁105bとが位相差をもって開弁することで、燃焼室104内にスワール流が発生し、その後、吸気弁105a,105bの双方が下死点BDC以降まで開状態を保持するので、開弁初期(吸気行程初期)に発生したスワール流が吸気行程中において継続し、燃焼室104内におけるスワール流が強化される。その結果、燃焼室104内における平均流速が増加して、燃焼室104内でのガスの運動エネルギーが増大し、新気と燃料との混合を促進させることができる。
尚、燃焼室104内への内部EGRガスの導入がほぼ完了した直後の吸気行程の途中で、第1吸気弁105aを閉じると、スワール流が弱くなってしまうので、吸気弁105a,105bを位相差をもって開弁し、双方の開弁状態を下死点BDC後まで継続させることで、スワール流の強化を図れる。
【0029】
但し、ガス流動(スワール流)を強化すると、内部EGRガスに燃料が混ざり易くなり、これによって、EGR成層燃焼における成層度(新気とEGRガスとの分離度)が低下し、燃焼安定度が低下するため、内部EGR量を充分に増やすことができなくなってしまう。そこで、エンジン制御装置201(噴射タイミング設定手段)は、燃料噴射弁106による噴射開始タイミングを、第1吸気ポート113aに吹き返したガスが、第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入された後であって、燃料噴射弁106からの燃料が新気中に噴射されることになるタイミングに設定する。
【0030】
即ち、ピストンが下降に転じた直後の吸気行程初期には、内部EGRガスが第1吸気弁105aを介して燃焼室に吸入されるから、このときに燃料噴射弁106による燃料噴射を行わせると、内部EGRガスに燃料が混ざって成層度が低下する。このため、燃料噴射弁106からの燃料噴霧が第1吸気弁105aに到達した時点で、既に、内部EGRガスが燃焼室104に吸入されていて、燃料が新気中に噴射されるように、内部EGRガスの吸入期間である吸気行程初期を過ぎてから、換言すれば、上死点TDCから設定期間だけ遅れたタイミングで、燃料噴射弁106による燃料噴射を開始させる。
これによって、内部EGRガス中に燃料が混じることを抑制でき、以って、燃焼室104内における新気と内部EGRガスとの成層度が向上するので、第1吸気弁105aの開時期IVOをより進角させて内部EGR量の増大を図ることができる。更に、ガス流動が強化されて、新気と燃料との混合が促進されるので、混合気の均質度が増加し、燃費を改善できる。
【0031】
ここで、上死点TDCから燃料噴射弁106による燃料噴射開始までの遅れ期間は、固定の時間或いは固定のクランク角度として予め設定しておくことができるが、第1吸気ポート113aに吹き返したガス量が多いほど、吹き返しガスが燃焼室内に吸入されるのに要する時間が長くなる。このため、吹き返しガス量が多い場合であっても、内部EGRガス中に燃料が混じらないように、上死点TDCから噴射開始タイミングまでの遅れ期間を設定すると、吹き返しガス量が少ないときには、過剰に噴射開始タイミングが遅れ、燃料の気化時間が短くなり、また、燃焼混合気の均質度合いが低下し、燃焼安定性が低下してしまう。
【0032】
そこで、上死点TDCから噴射開始タイミングまでの遅れ期間を、吹き返しガス量に応じて可変に設定することが好ましく、前記遅れ期間の設定処理を、図7のフローチャートに従って説明する。
図7のフローチャートは、エンジン制御装置201が一定時間毎に実行する、噴射開始遅れ時間(噴射開始タイミング)の設定ルーチンを示す。
【0033】
まず、ステップS1(吹き返しガス量推定手段)では、第1吸気ポート113aに対する吹き返しEGRガス量Wm(cc)の演算を行う。
吹き返しEGRガス量Wmの演算は、例えば特開2004−044548号公報に開示される推定方法を用いて行うことができる。
【0034】
具体的には、第1吸気弁105aのバルブ作動角内におけるバルブリフト量と、第1吸気弁105bの開時期IVOとに基づき、バルブオーバーラップ時の第1吸気弁105aのバルブ開口面積AWmを演算し、このバルブ開口面積AWmに基づいてバルブオーバーラップ時の基本吹き返し量Wm0を算出する。
ここで、バルブ開口面積AWmが大きいほど、換言すれば、第1吸気弁105aの開時期IVOが進角するほど、また、吸気弁105aのバルブリフト量が大きいほど、基本吹き返し量Wm0はより大きな値として算出される。
【0035】
そして、この基本吹き返し量Wm0に対して、そのときの吸気圧やエンジン回転速度に応じた補正を施して、吹き返しEGRガス量Wmを算出する。
前記吸気圧に応じた補正では、第1吸気弁105aの上流側圧力である吸気管圧が高いほど、吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。また、機関回転速度Neが高いほど吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。
【0036】
次のステップS2では、ステップS1で求めた吹き返しEGRガス量Wmに基づき、吹き返しガスが燃焼室内に吸入されるのに要する時間Tdelay(ms)を演算する。
前記時間Tdelayは、1気筒のシリンダ容積をVOL(cc)、1吸気サイクルの時間をT1(ms)としたときに、下記の式(1)に基づき算出される。
式(1)…Tdelay=(Wm/VOL)×T1
【0037】
ここで、1吸気サイクルの時間T1(ms)は、エンジン回転速度Ne(rpm)に基づき、下記の式(2)に基づき算出される。
式(2)…T1=(60×1000)/Ne/2
【0038】
また、1気筒のシリンダ容積VOL(cc)は、シリンダボア及びピストンストロークに基づき、下記の式(3)に基づき算出される。
式(3)…VOL=(ボア/2)2×π×ストローク
【0039】
ステップS3では、燃料噴射弁106による噴射開始タイミングを、吹き返しEGRガスの燃焼室104への吸入が開始される上死点TDCから、前記時間Tdelayだけ経過した時点に設定する。
尚、燃料噴射弁106から噴射された燃料が吸気弁105に到達するまでの輸送時間があるため、係る輸送時間分だけ前記時間Tdelayを補正してもよいが、輸送時間は短い時間であるため、式(1)で算出される時間Tdelayに基づき、噴射開始タイミングを決定すれば、必要充分な精度を得られる。
【0040】
また、吹き返しEGRガス量Wmを演算式に基づき演算し、更に、演算した吹き返しEGRガス量Wmに基づき時間Tdelayを演算する代わりに、エンジン負荷及びエンジン回転速度によって区分される運転領域毎に、そのときの吹き返しEGRガス量Wmを見込んだ時間Tdelayを求め、前記運転領域毎に時間Tdelayを記憶したマップを設定し、係るマップからそのときのエンジン負荷及びエンジン回転速度に対応して記憶されている時間Tdelayを検索することができる。
【0041】
上記のようにして、吹き返しEGRガス量Wmが多いときには、吹き返しEGRガスが燃焼室に吸入されるまでの時間が長くなることに対応して、燃料噴射弁106の噴射開始タイミングをより遅らせる。これにより、内部EGRガス中に燃料噴射弁106から噴射された燃料が混じることを抑制しつつ、燃料噴射弁106の噴射開始タイミングをなるべく早い時期に設定でき、燃料噴霧の気化時間を長くでき、また、燃焼混合気の均質化を促進でき、燃焼安定性を向上させることができる。
【0042】
上記の実施形態では、1つの燃料噴射弁(燃料噴射装置)106によって第1吸気弁105a側と第2吸気弁105b側との双方に向けて燃料を噴射させたが、図8に示すように、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aと、第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bとからなる燃料噴射装置を備えるエンジン101においても、前述のように、吸気弁105a,105bのバルブタイミングを設定し、かつ、第1吸気弁105aに向けた燃料の噴射開始タイミングを設定することができる。
【0043】
ここで、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備える場合、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aについては、内部EGRガスが燃焼室内に吸入されてから燃料噴射を開始させることが、成層度を向上させるために要求されるが、吹き返しが発生しない第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bについては、第1燃料噴射弁106aと同じ時期に燃料を噴射する必要はない。
そこで、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備えるエンジン101では、図9のフローチャートに従って、エンジン制御装置201が、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングと、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングとを個別に設定することができる。
【0044】
図9のフローチャートは、一定時間毎に実行される、噴射開始タイミングの設定ルーチンを示す。
ステップS11では、ステップS1と同様に、吹き返しEGRガス量Wm(cc)を演算し、ステップS12では、ステップS2と同様に、吹き返しガスが燃焼室104内に吸入されるのに要する時間Tdelay(ms)を演算する。
【0045】
ステップS13では、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2を演算する。前述のように、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2は、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングIT1とは異なる時期に設定することができ、また、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングIT1よりも早い時期に第2燃料噴射弁106bによる燃料噴射を開始させても、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制することができる。
そこで、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2については、気化時間を充分に確保でき、かつ、第2吸気弁105bを介して燃焼室内に吸入される新気を均質な燃焼混合気とすることができる適当な時期に設定することができる。
【0046】
具体的には、図10に示すように、例えば、第2吸気弁105bの開時期IVO(上死点)を、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2とする。このように、第2吸気弁105bの開時期IVOに合わせて第2燃料噴射弁106bの噴射を開始させれば、第2吸気弁105bを介して燃焼室に吸入するガス流動が強いときに燃料を噴射させることができ、燃焼混合気の均質化を図ることができ、また、燃焼室内での燃料噴霧の気化時間を充分に確保できる。
但し、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングIT2は、第2吸気弁105bの開時期IVOに限定されるものではなく、例えば、第2吸気弁105bの開時期IVO前(上死点前)に設定することができる。
【0047】
ステップS14では、ステップS3と同様に、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始タイミングIT1を、吹き返しEGRガスの燃焼室への吸入が開始される上死点TDCから、前記時間Tdelayだけ経過した時点に設定する。
図10に示した例では、第1燃料噴射弁106aの噴射パルス幅(燃料噴射量)と、第2燃料噴射弁106bの噴射パルス幅(燃料噴射量)とを同等に設定してある。即ち、燃焼室104に吸入される新気量に対応して目標空燃比の混合気を形成させるために要求される燃料量の半分を、第1燃料噴射弁106aから噴射させ、残りの半分を第2燃料噴射弁106bから噴射させている。
【0048】
但し、第1吸気弁105aを介しては、内部EGRガスと新気とが燃焼室104内に吸入されるのに対し、第2吸気弁105bを介しては、新気が燃焼室104内に吸入され、第2吸気弁105bを通過する新気の量は、第1吸気弁105aを通過する新気の量に比べて多くなる。
従って、均質な可燃混合気を形成させるためには、図11に示すように、第1燃料噴射弁106aが噴射する燃料量よりも、第2燃料噴射弁106bが噴射する燃料量を多くすることが好ましい。
【0049】
ここで、第1燃料噴射弁106aの燃料噴射量と第2燃料噴射弁106bの燃料噴射量との比率を予め設定した一定値に固定し、新気量に見合う燃料量を、前記比率に従って第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとにそれぞれ分担させて噴射させることができる。
また、内部EGRガス量に応じて第1吸気弁105aを通過する新気量が変化することに対応して、第1燃料噴射弁106aの燃料噴射量と第2燃料噴射弁106bの燃料噴射量との比率を可変に設定することができる。
【0050】
図12のフローチャートは、エンジン制御装置(噴射量設定手段)201が一定時間毎に実行する、噴射量比率の設定ルーチンを示す。
ステップS21では、吸入空気量センサ103の信号から吸入空気量Qaを演算する。
ステップS22では、吸入空気量Qa、エンジン回転速度Neなどから燃料噴射量Tpを演算する。
【0051】
ステップS23では、前記ステップS1と同様にして、吹き返しEGRガス量Wmを演算する。
ステップS24では、第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入される新気量と、第2吸気弁105bを介して燃焼室104に吸入される新気量との比率を演算する。
ここで、第1吸気弁105aを介して新気及び吹き返しEGRガスが燃焼室104に吸入され、この新気及び吹き返しEGRガスの総量は、第2吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入される新気量と略同等になる。
【0052】
即ち、第1吸気弁105aを介して吸入される新気量をQa1、第2吸気弁105bを介して吸入される新気量をQa2としたときに、Qa+Wmが燃焼室内に吸入されるガスの総量であり、該総量の半分は、第2吸気弁105bを介して吸入される新気量Qa2と略同量になるから、新気量Qa2は、Qa2=(Qa+Wm)/2として求められる。
一方、Qa2=Qa1+Wmであるから、新気量Qa1は、Qa1=Qa2−Wm=(Qa+Wm)/2−Wmとして求められ、新気量比率は、Qa1:Qa2=(Qa+Wm)/2−Wm:(Qa+Wm)/2となる。
【0053】
前記新気量比率に対応する比率で第1燃料噴射弁106a及び第2燃料噴射弁106bから燃料を噴射させればよいので、次のステップS25では、前記新気量比率に基づき、第1燃料噴射弁106aから噴射させる燃料噴射量Tp1と、第2燃料噴射弁106bから噴射させる燃料噴射量Tp2とを演算する。
即ち、Tp=Tp1+Tp2で、かつ、Tp1:Tp2=Qa1:Qa2となるように、各噴射量Tp1,Tp2を、Tp1=Tp×Qa1/Qa、Tp2=Tp×Qa2/Qaとして演算する。
【0054】
上記のようにして、各吸気弁105a,105bを通過する新気量の違いに対応して、燃料噴射弁106a,106bそれぞれの燃料噴射量を個別に設定すれば、各吸気弁105a,105bを通過する新気に対して目標空燃比相当の燃料を噴射することになり、目標空燃比の均質な可燃混合気を形成することができ、燃焼安定性を向上させることができる。
【0055】
尚、第1吸気弁105aに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁106a、及び、第2吸気弁105bに向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁106bを設ける場合、これらの燃料噴射弁106a,106bを吸気管12の上下流方向に離して設置することができ、燃料噴射弁106a,106bの配置は適宜設定することができる。
また、吸気弁105a,105bとして、電磁石による磁気吸入力によって開閉動作する電磁駆動弁を用いることができる。
【0056】
また、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとを備えたエンジン101において、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングを、第2燃料噴射弁106bの噴射開始タイミングから第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングまでの遅延時間を、吹き返した内部EGRガス量に応じて設定し、第2燃料噴射弁106bの噴射開始から前記遅延時間が経過してから第1燃料噴射弁106aの噴射を開始させることができる。従って、第1燃料噴射弁106aの噴射開始タイミングの基準位置は、上死点に限定されるものではない。
【0057】
また、第2燃料噴射弁106aの燃料噴射を、第2吸気弁105bの開弁前と開弁後との2回に分けて行わせたり、第2吸気弁105bの開弁後に複数回に分けて行わせたりすることができる。
また、第1吸気弁106aと第2吸気弁106bとの双方に向けて燃料を噴射する2方向燃料噴射弁と、第2吸気弁106bに向けて燃料を噴射する1方向燃料噴射弁とを設け、第1吸気弁106aを通過する新気量に見合った燃料を2方向燃料噴射弁から噴射させ、第2吸気弁106bを通過する新気量に見合った燃料を、2方向燃料噴射弁からの噴射と1方向燃料噴射弁からの噴射との合計で得られるようにすることができる。
【0058】
更に、第1燃料噴射弁106aと第2燃料噴射弁106bとは、同じ噴霧特性であっても良いし、噴霧角、噴霧粒径などが異なる燃料噴射弁を用いることができ、更に、第1燃料噴射弁106aに対する燃料の供給圧と、第2燃料噴射弁106bに対する燃料の供給圧とを異ならせることができる。
また、上記実施形態では、燃費向上条件(EGR成層燃焼モード)において、第1吸気弁105aの閉時期と第2吸気弁105bの閉時期とを、下死点以降の同じ時期としたが、下死点以降の異なる時期に設定することができ、例えば、第1吸気弁105aの開弁期間(作動角)と第2吸気弁105bの開弁期間(作動角)とを同じに設定して、第1吸気弁105aの閉弁時期IVCを、第2吸気弁105bの閉弁時期IVCよりも早くすることができる。
【0059】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2又は5記載の内燃機関の制御装置において、
前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量を、前記第1吸気弁の開時期、内燃機関の吸気圧、及び、内燃機関の回転速度に基づいて推定する吹き返しガス量推定手段を設けた内燃機関の制御装置。
係る構成では、吸気ポート側に吹き返すガス量が、第1吸気弁の開時期、内燃機関の吸気圧、及び、内燃機関の回転速度に応じて変化することに対応して、吹き返しガス量を精度良く推定することができ、引いては、噴射開始タイミングや燃料噴射量を精度良く設定できる。
【符号の説明】
【0060】
101…エンジン(内燃機関)、105a,105b…吸気バルブ、106a,106b…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、110a,110b…排気弁、113a,113b…吸気ポート、114a,114b…可変動弁機構、115…点火モジュール、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ、204…カム角センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各燃焼室に設けられた第1吸気弁及び第2吸気弁と、
吸気ポートに設けられ、前記第1吸気弁及び第2吸気弁それぞれに向けて燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記第1吸気弁のバルブタイミングと前記第2吸気弁のバルブタイミングとを相互に異なるバルブタイミングに変更可能な可変動弁機構と、
を備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
前記可変動弁機構を制御して、前記第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、前記第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定し、前記第1吸気弁の閉時期及び前記第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定するバルブタイミング設定手段と、
前記バルブタイミング設定手段による前記バルブタイミングの設定状態において、前記燃料噴射装置による前記第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定する噴射タイミング設定手段と、
を含む内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記噴射タイミング設定手段が、前記第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量が多いほど、上死点からより遅れたタイミングに設定する請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記燃料噴射装置が、前記第1吸気弁に向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、前記第2吸気弁に向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを含んでなり、
前記噴射タイミング設定手段が、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定すると共に、前記第2燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングを、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングよりも前に設定する請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射装置が、前記第1吸気弁に向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、前記第2吸気弁に向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを含んでなり、
前記バルブタイミング設定手段によるバルブタイミングの設定状態において、前記第2燃料噴射弁による燃料噴射量よりも前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量を少なく設定する噴射量設定手段を設けた請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記噴射量設定手段が、前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量が多いほど、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量をより少なく設定する請求項4記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
各燃焼室に設けられた第1吸気弁及び第2吸気弁と、
吸気ポートに設けられ、前記第1吸気弁及び第2吸気弁それぞれに向けて燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記第1吸気弁のバルブタイミングと前記第2吸気弁のバルブタイミングとを相互に異なるバルブタイミングに変更可能な可変動弁機構と、
を備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
前記可変動弁機構を制御して、前記第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、前記第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定し、前記第1吸気弁の閉時期及び前記第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定するバルブタイミング設定手段と、
前記バルブタイミング設定手段による前記バルブタイミングの設定状態において、前記燃料噴射装置による前記第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定する噴射タイミング設定手段と、
を含む内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記噴射タイミング設定手段が、前記第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量が多いほど、上死点からより遅れたタイミングに設定する請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記燃料噴射装置が、前記第1吸気弁に向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、前記第2吸気弁に向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを含んでなり、
前記噴射タイミング設定手段が、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングを、上死点から遅れた時期に設定すると共に、前記第2燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングを、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射の開始タイミングよりも前に設定する請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射装置が、前記第1吸気弁に向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、前記第2吸気弁に向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを含んでなり、
前記バルブタイミング設定手段によるバルブタイミングの設定状態において、前記第2燃料噴射弁による燃料噴射量よりも前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量を少なく設定する噴射量設定手段を設けた請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記噴射量設定手段が、前記第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量が多いほど、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量をより少なく設定する請求項4記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−24145(P2013−24145A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160142(P2011−160142)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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