説明

内燃機関の排ガス浄化装置

【課題】判定された空燃比要求に応じた空燃比の排ガスが触媒に流入するように、機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段を提供する。
【解決手段】三元触媒43の下流に下流側空燃比センサ56を備え、更に、下流側空燃比センサ56の下流に絞り弁45を備える。排気浄化装置は、例えば、吸入空気量Gaの変化量が所定値以上の加速状態となったとき、絞り弁45によって排気通路の流路断面積を小さくする。これにより、触媒43よりも上流の排気通路内に多量のNOx(又は未燃物)が発生した場合、その排ガスが触媒43に滞留する時間が長くなるので、そのNOx(又は未燃物)がより浄化される。その結果、エミッションが良好になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に三元触媒を備えた内燃機関の排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排ガスを浄化するために同機関の排気通路に三元触媒が配設されている。三元触媒は、周知のように、その三元触媒に流入する排ガスの成分に応じて酸素を吸蔵又は放出する「酸素吸蔵機能」を有する。以下、三元触媒は単に「触媒」とも称呼され、触媒に流入するガスは「触媒流入ガス」とも称呼される。
【0003】
従来の排ガス浄化装置(従来装置)は、機関の排気通路であって触媒の下流に配設された下流側空燃比センサを備える。従来装置は、下流側空燃比センサの出力値に基づいて、リッチ要求及びリーン要求のうちの何れの空燃比要求が発生しているかを判定する。リッチ要求は、前記触媒に理論空燃比よりも小さい空燃比の排ガスを供給すべきであることを示す空燃比についての要求である。リーン要求は、前記触媒に理論空燃比よりも大きい空燃比の排ガスを供給すべきであることを示す空燃比についての要求である。そして、従来装置は、空燃比要求に応じた空燃比の排ガスが前記触媒に供給されるように、機関に供給される混合気の空燃比を制御する(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−158915号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、下流側空燃比センサの出力値は触媒の状態を精度良く表さない場合があり、その結果、空燃比要求が正確にならず、触媒に流入する排ガスの空燃比が不適切となることに起因してエミッションが悪化する場合がある。
【0006】
より具体的に述べると、例えば、下流側空燃比センサの出力値が「理論空燃比よりも小さい空燃比(以下、単に「リッチ空燃比」とも称呼する。)に対応する値」である場合、従来装置は、リーン要求が発生したと判定し、機関の空燃比を「理論空燃比よりも大きい空燃比(以下、単に「リーン空燃比」と称呼する。)」に制御する。
【0007】
その後、下流側空燃比センサの出力値は、「機関の空燃比がリーン空燃比に制御され始めた時点」から所定の時間が経過したときに「リーン空燃比に相当する値」へと変化する。これは、機関から排出された排ガスが下流側空燃比センサに到達するには不可避的な時間(排ガス輸送遅れ時間Td)が必要であること、及び、触媒が排ガス中の過剰な酸素を吸蔵するために触媒の下流に酸素が流出するまでに時間を要すること、等に基づく。
【0008】
このため、下流側空燃比センサの出力値がリッチ空燃比に相当する値であるとき(即ち、リーン要求に基づいて機関の空燃比がリーン空燃比に制御されているとき)、機関の運転状態が加速運転状態となることにより吸入空気量(従って、排ガス量)が急激に増大すると、触媒上流の排気通路内に「触媒が吸蔵することができない多量の酸素、及び、触媒が浄化することができない多量のNOx」が存在する状態となる場合が生じる。この結果、触媒から多量のNOxが排出される。
【0009】
本発明はこのような課題に対処するために為されたものであって、その目的の一つは、下流側空燃比センサの下流に絞り弁を配設し、所定の条件が成立したときにその絞り弁を用いて排気通路の流路断面積を減少せしめることにより、触媒における排ガスの浄化作用を促進し、以って、エミッションを改善することが可能な内燃機関の排ガス浄化装置を提供することにある。
【0010】
上記目的を達成する本発明の内燃機関の排ガス浄化装置は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された下流側空燃比センサと、
前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて、「前記触媒に理論空燃比よりも小さい空燃比(リッチ空燃比)の排ガスを供給すべきリッチ要求」及び「前記触媒に理論空燃比よりも大きい空燃比(リーン空燃比)の排ガスを供給すべきリーン要求」のうちの何れの空燃比要求が発生しているかを判定するとともに、前記判定された空燃比要求に応じた空燃比の排ガスが前記触媒に流入するように、前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
を備える。
【0011】
更に、本発明の内燃機関の排ガス浄化装置は、
前記排気通路の前記下流側空燃比センサよりも下流に配設されるとともに前記排気通路の流路断面積を指示信号に応じて変更可能に構成された絞り弁と、
所定の条件が成立したときに前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出する絞り弁開度制御手段と、
を備える。
【0012】
これによれば、例えば、下流側空燃比センサの出力値が触媒の状態(適正な空燃比要求)を精度良く表さない場合等、所定の条件が成立したとき、排気通路の流路断面積を小さくすることができる。これにより、触媒よりも下流の圧力が高くなるので、排ガスが触媒に滞留している時間が長くなる。その結果、未浄化のまま触媒から排出されるNOx又は未燃物の量を減少させることができる。即ち、エミッションを良好にすることができる。更に、下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比と、「触媒内の排ガス及び触媒よりも上流の排気通路内の排ガス」の空燃比と、の乖離の程度を小さくすることができる。その結果、適正な空燃比要求を発生させることも可能となる。
【0013】
本発明による排ガス浄化装置において、
前記所定の条件は前記機関の吸入空気量の単位時間あたりの増加量が所定量以上となったときに成立する条件であり、
前記絞り弁開度制御手段は、前記所定の条件が成立したときに前記排気通路の流路断面積が小さくなるように前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出するように構成される。
【0014】
前記機関の吸入空気量の単位時間あたりの増加量が所定量以上となったとしても、その時点からある時間が経過するまでの期間、下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に相当する値又はリッチ空燃比に相当する値から変化しない場合が生じる。よって、その期間において触媒上流の排気通路内に触媒が浄化できない量の「NOx又は未燃物」が機関から排出される。上記構成によれば、前記機関の吸入空気量の単位時間あたりの増加量が所定量以上となったとき、排気通路の流路断面積が減少させられる。よって、触媒上流の排気通路内の排ガスを長時間に渡って触媒内に滞留させることができる。その結果、触媒から未浄化のまま排出される「NOx又は未燃物」の量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置(第1装置)を適用した内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した上流側空燃比センサの出力電圧と空燃比との関係を示したグラフである。
【図3】図1に示した下流側空燃比センサの出力電圧と空燃比との関係を示したグラフである。
【図4】第1装置のCPUが実行する「燃料噴射制御ルーチン」を示したフローチャートである。
【図5】第1装置のCPUが実行する「触媒状態判定ルーチン」を示したフローチャートである。
【図6】第1装置のCPUが実行する「絞り弁制御ルーチン(1)」を示したフローチャートである。
【図7】第1装置のCPUが実行する「絞り弁制御ルーチン(2)」を示したフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置(第2装置)のCPUが実行する「絞り弁制御ルーチン(1)」を示したフローチャートである。
【図9】第2装置のCPUが実行する「絞り弁制御ルーチン(2)」を示したフローチャートである。
【図10】本発明の第3実施形態に係る排ガス浄化装置(第3装置)のCPUが実行する「絞り弁制御ルーチン」を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置について図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)が適用される内燃機関10の概略構成を示している。機関10は、4サイクル・火花点火式・多気筒(本例において4気筒)・ガソリン燃料機関である。機関10は、本体部20、吸気系統30及び排気系統40を備えている。
【0018】
本体部20は、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とを備えている。本体部20は、ピストン頂面、シリンダ壁面及びシリンダヘッド部の下面からなる複数(4個)の燃焼室(第1気筒#1乃至第4気筒#4)21を備えている。
【0019】
シリンダヘッド部には、各燃焼室(各気筒)21に「空気及び燃料からなる混合気」を供給するための吸気ポート22と、各燃焼室21から排ガス(既燃ガス)を排出するための排気ポート23と、が形成されている。吸気ポート22は図示しない吸気弁により開閉され、排気ポート23は図示しない排気弁により開閉されるようになっている。
【0020】
シリンダヘッド部には複数(4個)の点火プラグ24が固定されている。各点火プラグ24は、その火花発生部が各燃焼室21の中央部であってシリンダヘッド部の下面近傍位置に露呈するように配設されている。各点火プラグ24は、点火信号に応答して火花発生部から点火用火花を発生するようになっている。
【0021】
シリンダヘッド部には更に複数(4個)の燃料噴射弁(インジェクタ)25が固定されている。燃料噴射弁25は、各吸気ポート22に一つずつ(即ち、一つの気筒に対して一つ)設けられている。燃料噴射弁25は、噴射指示信号に応答し、「その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料」を対応する吸気ポート22内に噴射するようになっている。
【0022】
更に、シリンダヘッド部には、吸気弁制御装置26が設けられている。この吸気弁制御装置26は、インテークカムシャフト(図示せず)とインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備えている。吸気弁制御装置26は、指示信号(駆動信号)に基いて作動し、吸気弁の開弁タイミング(吸気弁開弁タイミング)を変更することができるようになっている。
【0023】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、エアフィルタ33、スロットル弁34及びスロットル弁アクチュエータ34aを備えている。
【0024】
インテークマニホールド31は、各吸気ポート22に接続された複数の枝部と、それらの枝部が集合したサージタンク部と、を備えている。吸気管32はサージタンク部に接続されている。インテークマニホールド31、吸気管32及び複数の吸気ポート22は、吸気通路を構成している。エアフィルタ33は吸気管32の端部に設けられている。
【0025】
スロットル弁34はエアフィルタ33とインテークマニホールド31との間の位置において吸気管32に回動可能に取り付けられている。スロットル弁34は、回動することにより吸気管32が形成する吸気通路の流路断面積(開口断面積)を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ34aは、DCモータからなり、指示信号(駆動信号)に応答してスロットル弁34を回動させるようになっている。
【0026】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ(排気管)42、上流側触媒43、下流側触媒44、絞り弁(排気絞り弁)45及び絞り弁アクチュエータ45aを備えている。
【0027】
エキゾーストマニホールド41は、各排気ポート23に接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合した集合部(排気集合部)41bと、からなっている。エキゾーストパイプ42は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bに接続されている。エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42及び複数の排気ポート23は、排ガスが通過する通路(排気通路)を構成している。
【0028】
上流側触媒43は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(パラジウムPd及び白金Pt、ロジウムRd等)」及び「酸素吸蔵材であるセリア(CeO2)」を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(酸素吸蔵機能)を有する三元触媒である。上流側触媒43はエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。上流側触媒43は所定の活性温度に到達すると、「未燃物(HC、CO及びH等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒機能」及び「酸素吸蔵機能」を発揮する。上流側触媒43は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
【0029】
下流側触媒44は、上流側触媒43と同様の三元触媒である。下流側触媒44は、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。下流側触媒44は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。なお、本明細書において、単に「触媒」と言うとき、その「触媒」は上流側触媒43を意味する。
【0030】
絞り弁(排気絞り弁)45は、下流側空燃比センサ56及び下流側触媒44よりも下流においてエキゾーストパイプ42に回動可能に取り付けられている。絞り弁45は、回動することによりエキゾーストパイプ42が形成する排気通路の流路断面積(開口断面積)を変更するようになっている。絞り弁アクチュエータ45aは、DCモータからなり、指示信号(駆動信号)に応答して絞り弁45を回動させるようになっている。
【0031】
第1装置は、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、機関回転速度センサ53、水温センサ54、上流側空燃比センサ55、下流側空燃比センサ56及びアクセル開度センサ57を備えている。
【0032】
熱線式エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
【0033】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0034】
機関回転速度センサ53は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ53から出力される信号は後述する電気制御装置60により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置60は、機関回転速度センサ53及び図示しないクランク角センサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0035】
水温センサ54は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
【0036】
上流側空燃比センサ55は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bと上流側触媒43との間の位置においてエキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ55は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0037】
上流側空燃比センサ55は、図2に示したように、上流側空燃比センサ55の配設位置を流れる排ガスの空燃比(触媒43に流入するガスである「触媒流入ガス」の空燃比、検出上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを出力する。出力値Vabyfsは触媒流入ガスの空燃比が大きくなるほど(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン側の空燃比になるほど)増大する。
【0038】
電気制御装置60は、図2に示した空燃比変換テーブル(マップ)Mapabyfsを記憶している。電気制御装置60は、出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfsに適用することにより、実際の上流側空燃比abyfsを検出する(検出上流側空燃比abyfsを取得する)ようになっている。
【0039】
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ56は、上流側触媒43と下流側触媒44との間の位置においてエキゾーストパイプ42(即ち、排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ56は、周知の濃淡電池型の酸素濃度センサ(Oセンサ)である。下流側空燃比センサ56は、下流側空燃比センサ56の配設位置を流れる排ガス(即ち、触媒43から流出するガスである「触媒流出ガス」)の空燃比(下流側空燃比afdown)に応じた出力値Voxsを出力するようになっている。
【0040】
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは、図3に示したように、触媒流出ガス(被検出ガス)の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比であって、触媒流出ガスの酸化平衡後のガスの酸素分圧が小さいとき最大出力値max(例えば、約0.9〜1.0V)となる。即ち、下流側空燃比センサ56は、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれていないときに最大出力値maxを出力する。
【0041】
また、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であって、触媒流出ガスの酸化平衡後のガスの酸素分圧が大きいとき最小出力値min(例えば、約0〜0.1V)となる。即ち、下流側空燃比センサ56は触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれているとき最小出力値minを出力する
【0042】
更に、この出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比からリーン側の空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急激に減少する。逆に、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急激に増大する。なお、最小出力値minと最大出力値maxとの平均値は中央値Vmid(=(max+min)/2)と称呼される。中央値Vmidは理論空燃比相当電圧Vstとも称呼される。
【0043】
図1に示したアクセル開度センサ57は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0044】
電気制御装置60は、「CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる「周知のマイクロコンピュータ」を含む電子回路である。
【0045】
電気制御装置60が備えるバックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。即ち、それまでに保持していたデータが消失(破壊)される。
【0046】
電気制御装置60のインターフェースは、前記センサ51〜57と接続され、CPUにセンサ51〜57からの信号を供給するようになっている。更に、そのインターフェースは、CPUの指示に応じて、各気筒の点火プラグ24、各気筒の燃料噴射弁25、吸気弁制御装置26、スロットル弁アクチュエータ34a及び絞り弁アクチュエータ45a等に指示信号(駆動信号)等を送出するようになっている。なお、電気制御装置60は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータ34aに指示信号を送出するようになっている。
【0047】
(作動)
次に、本装置の実際の作動の詳細について説明する。
<燃料噴射制御>
CPUは、図4にフローチャートにより示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角がその任意の気筒の吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が上記所定クランク角度になると、CPUはステップ400から処理を開始し、ステップ410にてフューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。
【0048】
フューエルカットフラグXFCの値は、図示しないフューエルカット条件判定ルーチンにより、フューエルカット条件(燃料供給遮断条件、フューエルカット開始条件)が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるときにフューエルカット終了条件が成立すると「0」に設定される。フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0049】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUはステップ410にて「Yes」と判定してステップ420に進み、テーブルMapMc(Ga,NE)に基づいて「今回の吸気行程を迎える気筒」に吸入される筒内吸入空気量Mc(k)を取得(推定・決定)する。今回の吸気行程を迎える気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。Gaは、エアフローメータ51が計測している吸入空気量である。NEは、別途求められている機関回転速度である。筒内吸入空気量Mc(k)は、各気筒の吸気行程に対応されながらRAMに記憶されていく。なお、CPUは周知の「空気モデル」を用いて筒内吸入空気量Mc(k)を推定してもよい。
【0050】
次に、CPUはステップ430に進み、サブフィードバック制御フラグXSFBの値が「1」であるか否かを判定する。サブフィードバック制御フラグXSFBの値は、サブフィードバック制御条件が成立しているときに「1」に設定され、サブフィードバック制御条件が不成立であるときに「0」に設定される。サブフィードバック制御条件は、以下の総ての条件が成立したときに成立し、以下の条件の少なくとも一つが不成立であるとき不成立となる。
(S1)メインフィードバック制御条件が成立している。
(S2)下流側空燃比センサ56が活性化している。
【0051】
なお。メインフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立し、以下の条件の少なくとも一つが不成立であるとき不成立となる。
(M1)上流側空燃比センサ55が活性化している。
(M2)機関の負荷(負荷率)KLが閾値KLth以下である。
(M3)フューエルカット中でない。
【0052】
負荷率KLは、KL=(Mc(k)/(ρ・L/4))・100%なる式により求められる。この式において、Mc(k)は筒内吸入空気量であり、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。なお、機関の負荷として、負荷率KLに代え、アクセルペダル操作量Accpが用いられても良い。
【0053】
サブフィードバック制御条件が成立していないと、サブフィードバック制御フラグXSFBの値は「0」である。従って、この場合、CPUはステップ430にて「No」と判定してステップ440に進み、筒内吸入空気量Mc(k)を理論空燃比stoich(本例においては14.7)で除することにより、機関の空燃比を理論空燃比stoichに一致させるための基本燃料噴射量Fbを求める。換言すると、CPUは、目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichに設定する。その後、CPUはステップ480に進む。
【0054】
これに対し、CPUがステップ430の処理を実行する時点において、サブフィードバック制御条件が成立していると、サブフィードバック制御フラグXSFBの値は「1」である。従って、この場合、CPUはステップ430にて「Yes」と判定してステップ450に進み、リッチ要求フラグXRichreqの値が「1」であるか否かを判定する。リッチ要求フラグXRichreqの値は上述したイニシャルルーチンにおいて「1」に設定されるようになっている。
【0055】
更に、リッチ要求フラグXRichreqの値は、図5のルーチンにより設定される。即ち、CPUは、所定時間が経過する毎に図5にフローチャートにより示した「触媒状態判定ルーチン(空燃比要求判定ルーチン)」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さいか否かを判定する。換言すると、CPUは出力値Voxsにより示される空燃比(下流側空燃比)が理論空燃比stoichよりも大きい(リーンな)空燃比であるか否かを判定する。
【0056】
そして、CPUは、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい場合、触媒43の状態が酸素過剰状態(リーン状態)であると判定し、よって、リッチ要求が発生していると判定する。即ち、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい場合、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定してステップ520に進み、リッチ要求フラグXRichreqの値を「1」に設定し、その後、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
これに対し、CPUは、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合、触媒43の状態が酸素不足状態(リッチ状態)であると判定し、よって、リーン要求が発生していると判定する。即ち、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合、CPUは、ステップ510にて「No」と判定してステップ530に進み、リッチ要求フラグXRichreqの値を「0」に設定し、その後、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
このように、リッチ要求フラグXRichreqの値は、触媒43の状態が酸素過剰状態である(触媒43にリッチ空燃比の排ガスを流入すべき状態にある)ときに「1」に設定され、触媒43の状態が酸素不足状態である(触媒43にリーン空燃比の排ガスを流入すべき状態にある)とき「0」に設定される。
【0059】
リッチ要求フラグXRichreqの値が「1」に設定されている場合、CPUは図4のステップ450にて「Yes」と判定してステップ460に進み、筒内吸入空気量Mc(k)を所定リッチ空燃比afRich(本例においては14.2)で除することにより、機関の空燃比を所定リッチ空燃比afRichに一致させるための基本燃料噴射量Fbを求める。換言すると、CPUは、目標空燃比abyfrを所定リッチ空燃比afRichに設定する。所定リッチ空燃比afRichは理論空燃比よりも小さい。その後、CPUはステップ480に進む。
【0060】
これに対し、リッチ要求フラグXRichreqの値が「0」に設定されている場合、CPUは図4のステップ450にて「No」と判定してステップ470に進み、筒内吸入空気量Mc(k)を所定リーン空燃比afLean(本例においては15.2)で除することにより、機関の空燃比を所定リーン空燃比afLeanに一致させるための基本燃料噴射量Fbを求める。換言すると、CPUは、目標空燃比abyfrを所定リーン空燃比afLeanに設定する。所定リーン空燃比afLeanは理論空燃比よりも大きい。その後、CPUはステップ480に進む。
【0061】
CPUは、ステップ480に進んだとき、ステップ440、ステップ460及びステップ470の何れかのステップにて算出された基本燃料噴射量Fbにメインフィードバック量KFmainを乗じる(基本燃料噴射量Fbをメインフィードバック量KFmainにより補正する)ことによって指示燃料噴射量Fiを算出する。
【0062】
メインフィードバック量KFmainは、上述したメインフィードバック制御条件が成立しているとき、上流側空燃比センサ55の出力値Vabyfsに基づいて決定される。より具体的に述べると、メインフィードバック量KFmainは、以下のようにして決定される。
【0063】
(1)サブフィードバック制御フラグXSFBの値が「0」である場合(即ち、基本燃料噴射量Fbが、筒内吸入空気量Mc(k)を理論空燃比stoichにより除した値である場合)、メインフィードバック量KFmainは、上流側空燃比センサ55の出力値Vabyfsにより表される上流側空燃比abyfsが理論空燃比stoichよりも小さい(リッチである)とき減少させられ、上流側空燃比abyfsが理論空燃比stoichよりも大きい(リーンである)とき増大させられる。
【0064】
(2)サブフィードバック制御フラグXSFBの値が「1」であり、且つ、リッチ要求フラグXRichreqの値が「1」である場合(即ち、基本燃料噴射量Fbが、筒内吸入空気量Mc(k)を所定リッチ空燃比afRichにより除した値である場合)、メインフィードバック量KFmainは、上流側空燃比abyfsが所定リッチ空燃比afRichよりも小さい(リッチである)とき減少させられ、上流側空燃比abyfsが所定リッチ空燃比afRichよりも大きい(リーンである)とき増大させられる。
【0065】
(3)サブフィードバック制御フラグXSFBの値が「1」であり、且つ、リッチ要求フラグXRichreqの値が「0」である場合(即ち、基本燃料噴射量Fbが、筒内吸入空気量Mc(k)を所定リーン空燃比afLeanした値である場合)、メインフィードバック量KFmainは、上流側空燃比abyfsが所定リーン空燃比afLeanよりも小さい(リッチである)とき減少させられ、上流側空燃比abyfsが所定リーン空燃比afLeanよりも大きい(リーンである)とき増大させられる。
【0066】
(4)メインフィードバック制御条件が不成立であるとき、メインフィードバック量KFmainは「1」に設定される。
このように、メインフィードバック量KFmain、実際の上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも小さいとき減少され、実際の上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrよりも大きいとき増大される。
【0067】
次に、CPUはステップ490に進み、指示燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に対する燃料噴射弁25から噴射されるように、その燃料噴射弁25に対して燃料の噴射指示を行う。その後、CPUはステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
一方、CPUがステップ410の処理を行う時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはそのステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、ステップ490の処理が実行されないので、フューエルカット運転が実行される。
【0069】
更に、CPUは、所定時間が経過する毎に図6にフローチャートにより示した「絞り弁制御ルーチン(1)」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進み、吸入空気量Gaを読み込む。
【0070】
次に、CPUはステップ620に進み、ステップ610にて読み込んだ「現時点の吸入空気量Ga」から「所定時間前(前回)の吸入空気量Gaold」を減じた値ΔGaを算出する。値ΔGaは「吸入空気変化量ΔGa、又は、吸入空気増加量ΔGa」とも称呼される。次いで、CPUはステップ630に進み、ステップ610にて読み込んだ「現時点の吸入空気量Ga」を「所定時間前(前回)の吸入空気量Gaold」として格納する。
【0071】
次に、CPUはステップ640に進み、絞り弁制御実行フラグXCの値が「0」であるか否かを判定する。絞り弁制御実行フラグXCの値は上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。従って、ここでは、絞り弁制御実行フラグXCの値が「0」であると仮定する。
【0072】
この場合、CPUはステップ640にて「Yes」と判定してステップ650に進み、吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きいか否かを判定する。このとき、吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGath以下であると仮定する。この場合、CPUはステップ650にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、絞り弁制御実行フラグXCの値は「0」に維持される。
【0073】
更に、CPUは、所定時間が経過する毎に図7にフローチャートにより示した「絞り弁制御ルーチン(2)」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、絞り弁制御実行フラグXCの値が「1」であるか否かを判定する。
【0074】
現時点において、絞り弁制御実行フラグXCの値は「0」に維持されている。従って、CPUはステップ705にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
かかる状態において、加速操作が行われ、吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなると、CPUは図6のステップ650にて「Yes」と判定してステップ660に進む。そして、CPUは、ステップ660にて絞り弁制御実行フラグXCの値を「1」に設定し、ステップ670に進んで加速後時間カウンタCCLの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
この状態において、CPUが図7のステップ705に進むと、CPUはそのステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、加速後時間カウンタCCLの値を「1」だけ増大する。次に、CPUはステップ715に進み、加速後時間カウンタCCLの値がカウンタ閾値CCLth以下であるか否かを判定する。カウンタ閾値CCLthは「2」以上の所定値に設定されている。
【0077】
現時点は、加速後時間カウンタCCLの値が「0」から「1」だけ増大された直後である。従って、CPUはステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、吸入空気量Gaに基づいて排ガス輸送遅れ時間tdを算出する。排ガス輸送遅れ時間tdは、吸入空気量Gaが大きいほど小さくなるように算出される。
【0078】
次に、CPUはステップ725に進み、排ガス輸送遅れ時間tdに基づいて絞り弁45の絞り量CLOSEを決定する。より具体的に述べると、CPUは、排ガス輸送遅れ時間tdが所定時間tdth以下のとき、絞り量CLOSEを「0」に設定する。更に、CPUは、排ガス輸送遅れ時間tdが所定時間tdth以上であるとき、排ガス輸送遅れ時間tdが大きくなるほど絞り量CLOSEが大きくなるように、絞り量CLOSEを決定する。なお、絞り量CLOSEが大きいほど、絞り弁45は大きい角度だけ回転させられ、それにより、エキゾーストパイプ42が形成する排気通路の流路断面積がより小さくなる。但し、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmaxに一致した場合であっても、エキゾーストパイプ42が形成する排気通路の流路断面積は「0」にはならない。
【0079】
次に、CPUはステップ730に進み、絞り弁45を絞り量CLOSEに応じた角度だけ回転させるように絞り弁アクチュエータ45aに指示信号を送出し、それによって、エキゾーストパイプ42が形成する排気通路の流路断面積を変更する。その後、CPUはステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
この状態において、CPUが図6のステップ640に進むと、CPUはそのステップ640にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。更に、この状態において、CPUが図7のステップ705に進むと、CPUはそのステップ705にて「Yes」と判定してステップ710及びステップ715に進む。従って、加速後時間カウンタCCLの値がカウンタ閾値CCLthよりも大きくなるまで、ステップ720乃至ステップ730の処理が繰り返し実行される。
【0081】
その後、加速後時間カウンタCCLの値がカウンタ閾値CCLthよりも大きくなると、CPUはステップ715にて「No」と判定してステップ735に進み、絞り量CLOSEを一定量dCだけ小さくする。次に、CPUはステップ740に進み、絞り量CLOSEが「0」以下であるか否かを判定する。このとき、絞り量CLOSEが「0」より大きいと、CPUはステップ740にて「No」と判定し、ステップ730に直接進む。
【0082】
これに対し、CPUがステップ740の処理を実行する時点において、絞り量CLOSEが「0」以下であると、CPUはそのステップ740にて「Yes」と判定してステップ745に進み、絞り量CLOSEを「0」に設定する。更に、CPUはステップ750に進み、絞り弁制御実行フラグXCの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ730に進む。
【0083】
以上、説明したように、第1装置は、
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに基づいて、「触媒43に理論空燃比よりも小さい空燃比の排ガスを供給すべきリッチ要求」及び「触媒43に理論空燃比よりも大きい空燃比の排ガスを供給すべきリーン要求」のうちの何れの空燃比要求が発生しているかを判定するとともに(図5のルーチンを参照。)、前記判定された空燃比要求に応じた空燃比の排ガスが前記触媒に流入するように、機関10に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(図4のステップ450乃至490を参照。)と、
機関10の排気通路の下流側空燃比センサ56よりも下流に配設されるとともに前記排気通路の流路断面積を指示信号に応じて変更可能に構成された絞り弁(45、45a)と、
所定の条件が成立したときに前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出する絞り弁開度制御手段(図6及び図7のルーチンを参照。)と、
を備える。
【0084】
更に、前記絞り弁開度制御手段は、
前記機関の吸入空気量の単位時間あたりの増加量(吸入空気変化量ΔGa)が所定量(吸入空気変化量閾値ΔGath)以上となったとき前記排気通路の流路断面積が小さくなるように前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出するように構成されている(図6のステップ650及びステップ660、及び、図7のステップ705での「Yes」との判定を参照。)。更に、前記絞り弁開度制御手段は、吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGath以上となった時点から所定の時間が経過するまで、前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出するように構成されている(図7のステップ715乃至ステップ750を参照。)。
【0085】
この結果、リーン要求が発生している場合に吸入空気量Gaが急増し、多量のNOxが触媒43の上流の排気通路内に排出された場合、触媒43(及び下流側触媒44)内に排ガスを長時間滞留させることができる。従って、排ガス中のNOxが触媒43(及び下流側触媒44)内においてより浄化されるので、NOxの大気中への放出量を低減することができる。
【0086】
或いは、リッチ要求が発生している場合に吸入空気量Gaが急増し、多量の未燃物が触媒43の上流の排気通路内に排出された場合、触媒43(及び下流側触媒44)内に排ガスを長時間滞留させることができる。従って、排ガス中の未燃物が触媒43(及び下流側触媒44)内においてより浄化されるので、未燃物の大気中への放出量を低減することができる。
【0087】
なお、CPUは、図6のステップ650とステップ660との間に、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きいか否かを判定するステップ、及び、リッチ要求フラグXRichreqが「0」であるか否かを判定するステップ、の何れかを追加してもよい。この場合、CPUは、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きいとき(即ち、リーン要求が発生しているとき)ステップ660に進み、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下であるとき(リッチ要求が発生しているとき)ステップ695に直接進むように構成される。これによれば、NOxが排出される可能性が高い場合にのみ、絞り弁45が閉じられるので、NOxの排出量を低減することができる。
【0088】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。第2装置は、CPUが「図6及び図7」に代わる「図8及び図9」にフローチャートにより示した「絞り弁制御ルーチン(1)及び(2)」を実行するようになっている点のみにおいて、第1装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明する。なお、図8及び図9に示したルーチンのステップのうち、既に説明したステップと同一の処理を行うステップには、そのようなステップに付された符号と同一の符合が付されている。
【0089】
図8に示したルーチンは、ステップ670の次にステップ810が追加されている点のみにおいて図6に示したルーチンと相違する。即ち、CPUはステップ670の処理を終了するとステップ810に進み、吸入空気量Gaに基づいてカウンタ閾値CCLthを算出する。カウンタ閾値CCLthは、吸入空気量Gaが大きいほど小さくなるように決定される。換言すると、カウンタ閾値CCLthは、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」からカウンタ閾値CCLthに相当する時間が経過したとき、吸入空気急増時における空燃比要求とは反対の空燃比要求が発生するであろう値となるように設定されている。
【0090】
即ち、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい場合(リーン要求が発生している場合)、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」からカウンタ閾値CCLthに相当する時間が経過すると出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも小さくなる(リッチ要求が発生する)。同様に、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」において、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい場合(リッチ要求が発生している場合)、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」からカウンタ閾値CCLthに相当する時間が経過すると出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも大きくなる(リーン要求が発生する)。その後、CPUはステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
図9に示したルーチンは、図7のステップ720及びステップ725を、ステップ910乃至ステップ930に置換した点のみにおいて図7に示したルーチンと相違する。即ち、CPUはステップ715にて「Yes」と判定するとステップ910に進み、絞り量CLOSEを一定量dCだけ大きくする。次に、CPUはステップ920に進み、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax以上であるか否かを判定する。このとき、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax未満であると、CPUはステップ920にて「No」と判定し、ステップ730に直接進む。
【0092】
これに対し、CPUがステップ920の処理を実行する時点において、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax以上であると、CPUはそのステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進み、絞り量CLOSEを最大絞り量CLmaxに設定する。その後、CPUはステップ730に進む。
【0093】
この結果、絞り量CLOSEは、「吸入空気変化量ΔGaが吸入空気変化量閾値ΔGathよりも大きくなった時点」から「所定時間が経過する時点(即ち、加速後時間カウンタCCLがカウンタ閾値CCLthに到達する時点)」までの期間において「0」から次第に増大する。
【0094】
更に、絞り量CLOSEは、ステップ715、ステップ735乃至ステップ750の処理により、「前記所定時間が経過する時点(即ち、加速後時間カウンタCCLがカウンタ閾値CCLthに到達する時点)」以降において次第に減少する。更に、前記所定時間は吸入空気量Gaが大きいほど短くなる(図8のステップ810と、図9のステップ715と、を参照。)。
【0095】
この結果、リーン要求が発生している場合に吸入空気量Gaが急増し、多量のNOxが触媒43の上流の排気通路内に排出された場合、排出されたNOxの量が大きいほどより長い時間に渡って触媒43(及び下流側触媒44)内に排ガスを滞留させることができる。従って、排ガス中のNOxが触媒43及び(及び下流側触媒44)内においてより浄化されるので、NOxの大気中への放出量を低減することができる。
【0096】
或いは、リッチ要求が発生している場合に吸入空気量Gaが急増し、多量の未燃物が触媒43の上流の排気通路内に排出された場合、排出された未燃物の量が大きいほどより長い時間に渡って触媒43(及び下流側触媒44)内に排ガスを滞留させることができる。従って、排ガス中の未燃物が触媒43及び(及び下流側触媒44)内においてより浄化されるので、未燃物の大気中への放出量を低減することができる。
【0097】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、「第3装置」とも称呼する。)について説明する。第3装置は、CPUが「図6及び図7」に代わる図10にフローチャートにより示した「絞り弁制御ルーチン」を所定時間が経過する毎に実行するようになっている点のみにおいて、第1装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
【0098】
所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、下記の(1)式に従って単位時間あたりの「酸素変化量DOSA」を算出する。酸素変化量DOSAは、触媒43よりも上流の排気通路内に機関10から排出された酸素の単位時間あたりの変化量である。下記の(1)式において、値「0.23」は大気中に含まれる酸素の重量割合である。SFiは前記単位時間内に噴射された燃料噴射量(指示燃料噴射量Fi)の合計である。abyfrは、リッチ要求フラグXRichreqの値が「1」であるとき上記所定リッチ空燃比afRich(本例においては14.2)であり、リッチ要求フラグXRichreqの値が「0」であるとき上記所定リーン空燃比afLean(本例においては15.2)である。stoichは理論空燃比である。

DOSA=0.23・SFi・(abyfr−stoich) …(1)

【0099】
なお、(1)式におけるabyfrはabyfsに置換されてもよい。abyfsは、上流側空燃比センサ55の出力値Vabyfsを図2に示した空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)に適用することにより求められた上流側空燃比abyfsである。
【0100】
次に、CPUはステップ1020に進み、その時点の排気通路内酸素量OSAに変化量DOSAを加えることにより排気通路内酸素量OSAを更新する。次いで、CPUはステップ1030に進み、排気通路内酸素量OSAが最大酸素吸蔵量Cmax以上であるか否かを判定する。
【0101】
最大酸素吸蔵量Cmaxは、上流側触媒43が吸蔵し得る酸素の量の最大値であり、所謂「アクティブ空燃比制御」によって別途取得されている。アクティブ空燃比制御は、例えば、特開平5−133264号公報等に記載された周知の制御である。例えば、最大酸素吸蔵量Cmaxは、次のようにして取得される。
【0102】
・CPUは、上流側触媒43に理論空燃比stoichよりもリッチな空燃比の排ガスを流入し続け、上流側触媒43の酸素吸蔵量を「0」に一致させる。このとき、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは最大出力値maxとなる。
【0103】
・CPUは、その時点から上流側触媒43に理論空燃比stoichよりもリーンな空燃比の排ガスを流入し続け、その時点から下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい値となる時点までの期間において「単位時間あたりの酸素吸蔵量変化量ΔOSA」を算出し、その酸素吸蔵量変化量ΔOSAを積算することにより最大酸素吸蔵量Cmaxを求める。酸素吸蔵量変化量ΔOSAは、SFi(単位時間あたりの燃料量)・0.23・(abyfs−stoich)により算出される。
【0104】
CPUがステップ1030の処理を実行する時点において、排気通路内酸素量OSAが最大酸素吸蔵量Cmax以上である場合、触媒43は排気通路内の酸素を総て吸蔵することができず、同時に排気通路内のNOxを十分に浄化できない。従って、この場合、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1040に進み、排気通路内酸素量OSAから最大酸素吸蔵量Cmaxを減じた値に正の定数kを乗じた値k・(OSA−Cmax)を絞り弁45の絞り量CLOSEとして設定する。
【0105】
次いで、CPUはステップ1050に進み、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax以上であるか否かを判定する。このとき、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax未満であると、CPUはステップ1050にて「No」と判定し、ステップ1070に直接進む。
【0106】
これに対し、CPUがステップ1050の処理を実行する時点において、絞り量CLOSEが最大絞り量CLmax以上であると、CPUはそのステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、絞り量CLOSEを最大絞り量CLmaxに設定する。その後、CPUはステップ1070に進む。
【0107】
次に、CPUはステップ1070にて、絞り弁45を絞り量CLOSEに応じた角度だけ回転させるように絞り弁アクチュエータ45aに指示信号を送出し、それによって、エキゾーストパイプ42が形成する排気通路の流路断面積を変更する。その後、CPUはステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0108】
この結果、触媒43よりも上流の排気通路内の排気通路内酸素量OSAが最大酸素吸蔵量Cmax以上となった場合、「排気通路内酸素量OSAから最大酸素吸蔵量Cmaxを減じた値」が大きくなるほど排気通路の流路断面積が小さくなる。
【0109】
一方、CPUがステップ1030の処理を行う時点において、排気通路内酸素量OSAが最大酸素吸蔵量Cmax未満である場合、CPUはステップ1030にて「No」と判定してステップ1080に進み、排気通路内酸素量OSAが「0」よりも小さいか否かを判定する。
【0110】
排気通路内酸素量OSAが「0」よりも小さい場合、触媒43は排気通路内の未燃物を十分に浄化できない。従って、この場合、CPUはステップ1080にて「Yes」と判定してステップ1085に進み、排気通路内酸素量OSAの絶対値|OSA|に定数kを乗じた値k・|OSA|を絞り弁45の絞り量CLOSEとして設定する。その後、CPUはステップ1050以降に進む。
【0111】
これに対し、CPUがステップ1080の処理を行う時点において、排気通路内酸素量OSAが「0」以上である場合、CPUはステップ1080にて「No」と判定してステップ1090に進み、絞り量CLOSEを「0」に設定する。その後、CPUはステップ1050以降に進む。
【0112】
この結果、触媒43よりも上流の排気通路内の排気通路内酸素量OSAが「0」未満である場合、「排気通路内酸素量OSA」の絶対値|OSA|が大きくなるほど排気通路の流路断面積が小さくなる。
【0113】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置は、所定の条件が成立した場合、絞り弁45を回動して排気通路の流路断面積を減少させる。その結果、排ガスが触媒43及び下流側触媒44に滞留する時間が長くなるので、エミッションを良好にすることができる。
【0114】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、絞り弁45は、下流側空燃比センサ56と下流側触媒44との間のエキゾーストパイプ42(排気通路)に配設されてもよい。
【0115】
更に、各排気浄化装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsを下流側目標値Voxsref(通常、理論空燃比相当電圧Vst)に一致させるための周知のサブフィードバック制御を行うように構成されてもよい。即ち、各排気浄化装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの偏差をPID制御によって小さくするようにサブフィードバック量KSFBを決定し、理論空燃比stoichからサブフィードバック量KSFBを減じた値を目標空燃比abyfrとして設定するように構成され得る。
【0116】
この場合、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも小さければサブフィードバック量KSFBは増大させられる。その結果、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichよりも小さくなる(リッチ空燃比に設定される)。一方、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも大きければサブフィードバック量KSFBは減少させられ、負の値になる。その結果、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichよりも大きくなる(リーン空燃比に設定される)。
【0117】
この場合、各装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsに基いて「リッチ要求及びリーン要求」の何れの空燃比要求が発生しているのかを自動的且つ実質的に判定し、その空燃比要求に応じて機関の空燃比を制御していると言うことができる。
【0118】
更に、各装置は、機関10のドライバビリティを優先させるべき所定条件が成立したとき、絞り弁45による排気通路の流路断面積の減少を直ちに停止する(絞り量CLOSEを「0」に設定することにより絞り弁45を全開にする)ように構成され得る。ドライバビリティを優先させるべき所定条件の一例は、機関10が減速運転される場合である。機関10が減速運転される場合に絞り弁45によって排気通路の流路断面積が減少させられていると、排気通路内の圧力が気筒内の圧力より高くなり、排ガスが気筒内に逆流して燃焼が不安定となり、機関10のドライバビリティが低下する。更に、一般に、絞り弁アクチュエータ45aの動作速度には一定のディレイが組み込まれている(絞り弁45の回転速度がある値以下となるように構成されている)が、機関10のドライバビリティを優先させるべき所定条件が成立したときには係るディレイを最小にして、排気通路の流路断面積の減少を直ちに停止することが望ましい。
【符号の説明】
【0119】
10…内燃機関、21…燃焼室、23…排気ポート、25…燃料噴射弁、40…排気系統、41…エキゾーストマニホールド、41a…枝部、41b…集合部、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒、44…下流側触媒、45…絞り弁、45a…絞り弁アクチュエータ、55…上流側空燃比センサ、56…下流側空燃比センサ、60…電気制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された下流側空燃比センサと、
前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて、前記触媒に理論空燃比よりも小さい空燃比の排ガスを供給すべきリッチ要求及び前記触媒に理論空燃比よりも大きい空燃比の排ガスを供給すべきリーン要求のうちの何れの空燃比要求が発生しているかを判定するとともに、前記判定された空燃比要求に応じた空燃比の排ガスが前記触媒に流入するように、前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
を備えた内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記排気通路の前記下流側空燃比センサよりも下流に配設されるとともに前記排気通路の流路断面積を指示信号に応じて変更可能に構成された絞り弁と、
所定の条件が成立したときに前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出する絞り弁開度制御手段と、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、
前記所定の条件は前記機関の吸入空気量の単位時間あたりの増加量が所定量以上となったときに成立する条件であり、
前記絞り弁開度制御手段は、前記所定の条件が成立したときに前記排気通路の流路断面積が小さくなるように前記絞り弁を作動させる指示信号を前記絞り弁に送出するように構成された排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−149624(P2012−149624A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10758(P2011−10758)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】