説明

内燃機関の排気ガス浄化装置

【課題】本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関し、NOx触媒でNOxを還元させる際に、有害成分が大気中に放出されることを確実に抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の排気ガス浄化装置は、NOx触媒と、このNOx触媒の下流側に設置された酸化触媒と、酸化触媒に活性酸素(オゾン)を供給する活性酸素供給装置とを備える。NOx触媒でNOxを還元させる際に、酸化触媒にHC被毒が生じていると判定された場合には、そのHC被毒を解消させるためのオゾンを酸化触媒に供給する(ステップ102)。これにより、HC被毒を迅速に回復させることができる。また、NOx触媒からCOが流出していると判定された場合には、酸化触媒にオゾンを供給する(ステップ108)。これにより、オゾンと酸化触媒中のAgとの相乗効果によって、NOx触媒から流出するCOを確実に浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、リーンバーンエンジン等の排気ガス浄化装置として、吸蔵還元型のNOx触媒を用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このNOx触媒は、排気ガスの空燃比がリーンのとき、排気ガス中のNOxを捕集し、吸蔵することができる。NOx触媒に吸蔵されたNOxを還元させる際には、例えば排気系への燃料添加やポスト噴射などの方法により、NOx触媒に還元剤としてのHCを供給する。NOx触媒に還元剤が供給されると、吸蔵されていたNOxが脱離し、N2へと還元浄化される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−214310号公報
【特許文献2】特開2006−291872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、NOx触媒と、その下流に配置された酸化触媒と、その両触媒の間の排気通路にオゾンを供給する装置とを備えた排気ガス浄化装置が開示されている。この装置では、NOx触媒を通過した排気ガス中に含まれる炭化水素化合物を、酸化触媒とオゾンとの相乗効果によって浄化することとしている。
【0005】
特許文献2に記載されたようなシステムにおいて、排気ガス中に還元剤として燃料が添加された場合には、その燃料に由来するHC(特に高沸点成分のHC)が液状となって酸化触媒の活性点に付着(吸着)する場合がある。このような場合には、排気ガスと活性点との接触が妨げられることとなる結果、酸化触媒の活性が低下する。NOx触媒でNOxを還元させる際に、上記のような酸化触媒の活性の低下により、NOx触媒から流出する排気ガス中の有害成分を酸化触媒で十分に浄化できない場合がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、NOx触媒でNOxを還元させる際に、有害成分が大気中に放出されることを確実に抑制することのできる内燃機関の排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気ガス浄化装置であって、
内燃機関の排気通路に配置され、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒と、
前記NOx触媒でNOxを還元させる際に前記NOx触媒に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記NOx触媒の下流側に設置され、前記NOx触媒から流出する排気ガス中の有害成分を酸化させる酸化触媒と、
前記酸化触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
前記酸化触媒のHC被毒を判定するHC被毒判定手段と、
前記HC被毒判定手段により前記酸化触媒がHC被毒していると判定された場合に、HC被毒を回復させるための活性酸素を前記活性酸素供給装置により供給させるHC被毒回復手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記酸化触媒は、触媒成分としてAgを含み、
前記NOx触媒に還元剤が供給される際に、前記NOx触媒からのCOの流出を判定するCO流出判定手段と、
前記CO流出判定手段により前記NOx触媒からCOが流出すると判定された場合に、そのCOを前記酸化触媒中のAgとの相乗効果によって浄化するための活性酸素を前記活性酸素供給装置により供給させるCO浄化手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記NOx触媒の上流側に活性酸素を供給するNOx触媒用活性酸素供給装置と、
NOxを前記NOx触媒で浄化するための活性酸素を前記NOx触媒用活性酸素供給装置により供給させるNOx浄化手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、NOx触媒の下流側に配置された酸化触媒がHC被毒していると判定された場合に、酸化触媒に活性酸素を供給することにより、そのHC被毒を回復させることができる。これにより、酸化触媒のHC被毒を迅速に回復させることができるので、NOx触媒に還元剤が供給されたときにNOx触媒から流出する有害成分を酸化触媒において確実に浄化することができる。また、HC被毒の発生を判定した上でそのHC被毒を解消させるための活性酸素を供給するので、活性酸素の使用量を節約することができる。このため、活性酸素を生成するために要する電力を節減することができる。
【0011】
第2の発明によれば、NOx触媒からCOが流出すると判定された場合に、酸化触媒に活性酸素を供給することができる。このため、その流出したCOを、酸化触媒中のAgと活性酸素との相乗効果により、始動直後や低負荷運転時などの低温状態においても、高効率で浄化することができる。
【0012】
第3の発明によれば、NOx触媒用活性酸素供給装置によってNOx触媒の上流側に活性酸素を供給することにより、始動直後や低負荷運転時などの低温状態においても、NOxをNOx触媒において高効率で浄化(吸収)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、内燃機関10を備えている。本実施形態において、内燃機関10は、4つの気筒13を備えた4気筒型の圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。なお、図1においては、便宜上、内燃機関10の大きさに対して排気系の大きさが実際よりも大きく描かれている。
【0014】
本実施形態の内燃機関10は、ターボチャージャ19を備えている。ターボチャージャ19のコンプレッサによって圧縮された吸入空気は、吸気マニホールド11を介して各気筒13に流入する。各気筒13には、それぞれ、燃料を筒内に直接に噴射する燃料インジェクタ14が設けられている。各燃料インジェクタ14には、コモンレール18に蓄えられた高圧の燃料が供給される。図示しない燃料タンク内の燃料は、サプライポンプ17により加圧され、コモンレール18に供給される。各気筒13から排出される排気ガスは、排気マニホールド12で合流し、ターボチャージャ19のタービンに流入する。タービンを通過した排気ガスは、排気通路15を流れる。
【0015】
排気通路15には、NOx触媒20と酸化触媒21とが設置されている。酸化触媒21は、NOx触媒20の下流側に配置されている。NOx触媒20の上流側には、第1のオゾン供給ノズル22が設けられている。NOx触媒20と酸化触媒21との間には、第2のオゾン供給ノズル23が設置されている。図示の構成では、第1のオゾン供給ノズル22は、NOx触媒20のケーシング26の内部であって、NOx触媒20の前方側(上流側)に配置されている。第2のオゾン供給ノズル23は、酸化触媒21のケーシング27の内部であって、酸化触媒21の前方側(上流側)に配置されている。
【0016】
第1のオゾン供給ノズル22には、複数の第1オゾン供給口24が設けられている。第2のオゾン供給ノズル23には、複数の第2オゾン供給口25が設けられている。第1のオゾン供給ノズル22および第2のオゾン供給ノズル23は、オゾン供給通路28を介して、オゾン発生器29に接続されている。このような構成により、オゾン発生器29において生成されたオゾンを、第1オゾン供給口24および第2オゾン供給口25から噴射することができる。第1オゾン供給口24から噴射されたオゾンは、NOx触媒20の上流側において、排気ガスと混合する。第2オゾン供給口25から噴射されたオゾンは、NOx触媒20の下流側であって酸化触媒21の上流側において、排気ガスと混合する。
【0017】
なお、オゾン発生器29としては、高電圧を印加可能な放電管内に原料となる乾燥した空気または酸素を流しつつオゾン(O3)を発生させる形態のほか、他の任意の形式のものを用いることができる。ここで原料となる乾燥した空気または酸素は、排気通路15外から取り込まれる気体、例えば外気に含まれる気体である。
【0018】
オゾン発生器29と、第1のオゾン供給ノズル22および第2のオゾン供給ノズル23との間には、流量調整機構30が設置されている。流量調整機構30は、第1のオゾン供給ノズル22へのオゾン流量と、第2のオゾン供給ノズル23へのオゾン流量とを個別に調整可能になっている。すなわち、流量調整機構30によれば、第1オゾン供給口24からのオゾン供給量と、第2オゾン供給口25からのオゾン供給量とを個別に制御することができる。
【0019】
本実施形態において、NOx触媒20は、吸蔵還元型のNOx触媒(NSR: NOx Storage Reduction)である。このNOx触媒20の触媒成分は、例えば、アルミナ(Al23)の表面に、白金Pt等の貴金属と、NOx吸蔵材とが担持された構成となっている。NOx吸蔵材としては、例えば、カリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。本実施形態のNOx触媒20では、図2に示すように、貴金属としてPtが、NOx吸蔵材(以下、単に「吸蔵材」と称する)としてBaが、それぞれ用いられている。なお、本明細書において、「吸蔵」という用語には、「保持」、「吸着」、「吸収」等に類似するすべての概念が含まれるものとする。
【0020】
内燃機関10の気筒内では、通常運転時、理論空燃比よりリーンな空燃比で燃焼が行われる。このため、通常運転時には、排気ガス中に多量の酸素が含まれている。それゆえ、通常運転時には、三元反応によってNOxを浄化することができない。これに対し、本実施形態では、通常運転時には、排気ガスに含まれるNOxを、NOx触媒20に吸収させることにより、大気中へのNOxの排出を防止することができる。
【0021】
酸化触媒21は、排気ガス中の炭化水素成分(以下「HC」と記す)やCO(一酸化炭素)を酸化させ、CO2やH2Oへ浄化する機能を有している。この酸化触媒21の触媒成分としては、例えばPt/CeO2、Mn/CeO2、Fe/CeO2、Ni/CeO2、Cu/CeO2等を用いることができる。また、本実施形態の酸化触媒21は、触媒成分としてAg(銀)を更に含有している。
【0022】
内燃機関10のシリンダヘッドには、排気燃料添加インジェクタ32が設置されている。この排気燃料添加インジェクタ32は、還元剤とするための燃料を排気ガス中に噴射する。なお、排気燃料添加インジェクタ32の設置箇所はシリンダヘッドに限定されるものではなく、NOx触媒20の上流側の排気通路15に設置されていてもよい。
【0023】
本実施形態のシステムは、排気通路15内の排気ガスの温度を検出する排気温センサ34と、ECU(Electronic Control Unit)50とを更に備えている。ECU50には、前述した燃料インジェクタ14、オゾン発生器29、流量調整機構30、排気燃料添加インジェクタ32、排気温センサ34のほか、クランク角センサ46、エアフローメータ47、アクセルポジションセンサ48等の、内燃機関10を制御するための各種のセンサおよびアクチュエータが電気的に接続されている。
【0024】
NOx触媒20の吸蔵材は、硝酸塩(本実施形態ではBa(NO32)を形成することにより、NOx(窒素酸化物)を吸収する。吸蔵材は、NOxのうち、NO2,NO3,N25を良好に吸収することができる。一方、排気ガス中に元々含まれるNOxの多くは、NO(一酸化窒素)である。NOは、そのままでは、吸蔵材に吸収させることができない。そこで、通常、NOx触媒20では、貴金属(本実施形態では白金Pt)が触媒となることにより、排気ガス中のNOと酸素O2とが反応してNO2が生成され、このNO2を吸蔵材に吸収させるようにしている。
【0025】
しかしながら、貴金属触媒の活性は、ある温度以上(例えば200℃以上)にならないと、発現しない。よって、従来の排気ガス浄化装置においては、内燃機関10の始動直後や低負荷運転時など、NOx触媒20の温度が低いときには、NOが貴金属触媒によってNO2に酸化されないので、NOxを吸蔵することができない。
【0026】
これに対し、本実施形態のシステムでは、NOx触媒20の温度が低い場合であっても、NOx触媒20の上流側に位置する第1オゾン供給口24からオゾンを排気ガス中に添加することにより、NOxをNOx触媒20に効率良く吸収させることができる。
【0027】
図2は、NOx触媒20が低温状態(貴金属触媒の活性が発現していない状態)にあるときにオゾンを供給した場合においてNOxが浄化(吸収)される様子を示す図である。オゾンは、高い酸化力を有している。このため、オゾンとNOxとは、室温程度の低温から、気相中で反応することができる。すなわち、第1オゾン供給口24からオゾンが供給されると、排気ガス中のNOは、オゾンとの反応によってNO2,NO3あるいはN25へ変化した上で、NOx触媒20に流入する。Baのような吸蔵材は、室温程度の低温から、NO2,NO3,N25を十分に吸収して、硝酸塩を形成することができる。このため、貴金属触媒の活性が発現していない低温領域であっても、第1オゾン供給口24からオゾンを供給することにより、NOx触媒20が備える吸蔵材にNOxを吸収させることができる。このようにして、本実施形態では、内燃機関10の始動直後や低負荷運転時などの低温時においても、大気中へのNOxの排出を確実に抑制することができる。
【0028】
ところで、NOx触媒20が吸蔵可能なNOxの量には限界がある。本システムでは、NOx触媒20のNOx吸蔵量が限界に達する前に、NOx触媒20に還元剤を供給するNOx還元制御を実行し、吸蔵されたNOxを離脱させて還元(浄化)する。NOx触媒20に還元剤を供給する方法として、本実施形態では、排気燃料添加インジェクタ32から、還元剤としての燃料を排気ガス中に添加する。
【0029】
NOx還元制御を実行する必要があるかどうかは、例えば次のようにして判断することができる。ECU50には、内燃機関10の運転状態(エンジン回転数、負荷等)と、内燃機関10から排出されるNOxの量との関係を予め調べて作成されたマップが記憶されている。ECU50は、そのマップに基づいて算出されるNOx排出量を逐次積算することにより、前回のNOx還元以降にNOx触媒20に流入したNOxの総量を算出する。そのNOxの総量が所定の閾値に到達した場合に、NOx還元制御の実行が必要であると判断することができる。あるいは、NOx触媒20の下流側にNOxセンサを設け、そのNOxセンサで検出されるNOx濃度が所定濃度を超えた場合に、NOx還元制御の実行が必要であると判断してもよい。
【0030】
NOx還元制御により、NOx触媒20に還元剤が供給されると、NOx触媒20内の酸素濃度が低下し、吸蔵材からNOxが脱離する。その脱離したNOxと、還元剤とが、貴金属触媒の作用によって反応する。これにより、NOxをN2へ還元浄化することができる。
【0031】
NOx触媒20に還元剤が供給されると、NOx触媒20での還元反応により、COが生成する。このCOも還元ガスとして、NOxと反応する。しかしながら、生成したCOの一部が、NOxと反応できずに、NOx触媒20の下流に流出する場合がある。また、NOx触媒20に供給された還元剤の一部が、未反応のままHCとしてNOx触媒20の下流に流出する場合もある。
【0032】
本実施形態では、NOx触媒20に還元剤が供給された際にNOx触媒20の下流に流出したCOやHCを浄化するべく、酸化触媒21を設けている。しかしながら、酸化触媒21の温度が低い場合には、酸化触媒21に流入したHC(特に高沸点成分に由来するHC)が液化し易くなり、その液化したHCが酸化触媒21の活性点(貴金属)に吸着してしまう場合がある。この現象は、一般に「HC被毒」と呼ばれる。始動直後や低負荷運転時など、排気ガス温度が低い場合には、HC被毒が生じ易い。HC被毒が生ずると、活性点と排気ガスとの接触が阻害されるので、酸化触媒21の活性が低下する。このため、NOx触媒20の下流に流出したCOやHCを十分に浄化することができなくなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、酸化触媒21のHC被毒が生じている場合には、酸化触媒21内にオゾンを供給することにより、HC被毒を回復させることとした。図3は、酸化触媒21のHC被毒をオゾン添加によって回復させる場合のメカニズムを示す図である。オゾンは高い酸化力を有しているため、酸化触媒21の活性点に吸着したHCを迅速且つ確実に酸化させることができる。すなわち、図3に示すように、酸化触媒21にオゾンを供給することにより、活性点に吸着したHCがオゾンによって速やかに酸化され、COやCO2,H2Oとなって除去される。これにより、酸化触媒21のHC被毒が解消し、活性を回復させることができる。
【0034】
しかしながら、酸化触媒21のHC被毒が解消したとしても、始動直後や低負荷運転時など、酸化触媒21の温度が低い場合には、通常は、酸化触媒21でCOを十分に酸化させることができない。
【0035】
また、オゾンとCOとの反応性は、オゾンとNOあるいはHCとの反応性に比べ、低い。このため、オゾンとCOとを気相中で直接に反応させることによってCOを酸化させることも困難である。
【0036】
本発明者らは、上記の点に鑑み、NOx触媒20から流出するCOの確実な浄化を実現するべく鋭意研究を続けた結果、Ag(銀)を含んだ触媒が、オゾンが共存する場合に、優れたCO酸化活性を低温から発現することを見出した。図4は、Agを含んだ触媒の温度と、その触媒によるCO浄化率との関係を示す図である。この図に示すように、Agを含んだ触媒によれば、オゾンが共存していない場合には、低温時におけるCO浄化率は低いが、オゾンを共存させた場合には、低温時においても高いCO浄化率が得られる。
【0037】
オゾンが共存する場合にAgを含んだ触媒がCOを酸化させるメカニズムは、図5に示すようなものであると考えられる。すなわち、Agがオゾンと反応することによって、より強力な酸化剤であるAg2OまたはAgOに変化し、このAg2OまたはAgOによってCOがCO2に酸化されるものと考えられる。
【0038】
本実施形態では、前述したように、酸化触媒21が触媒成分としてAgを含んでいる。よって、第2オゾン供給口25からオゾンを添加することにより、酸化触媒21において、Agとオゾンとの相乗効果による優れたCO酸化活性を発現させることができる。このため、低温時においても、NOx触媒20から流出するCOを酸化触媒21によって確実に浄化することができる。
【0039】
[実施の形態1における具体的処理]
図6は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、NOx還元制御が行われる際に実行される。図6に示すルーチンによれば、まず、酸化触媒21の活性が低下しているかどうかが判定される(ステップ100)。
【0040】
このステップ100の判定は、例えば次のようにして行うことができる。ECU50には、内燃機関10の運転状態(エンジン回転数、燃料インジェクタ14からの燃料噴射量、排気温センサ34で検出される排気ガス温度、排気燃料添加インジェクタ32からの燃料添加量等)の履歴が記憶されている。酸化触媒21のHC付着量は、燃料噴射量や燃料添加量が多いほど多く、排気ガス温度が低いほど多く、また、エンジン回転数が低いほど多くなる。これらの関係を予め調べて作成されたマップがECU50に記憶されており、このマップと運転状態の履歴とに基づいて、酸化触媒21のHC付着量が算出される。その算出されたHC付着量が所定の閾値を超えている場合には、HC被毒が生じている、つまり酸化触媒21の活性が低下している、と判定される。一方、算出されたHC付着量が上記閾値を超えていない場合には、酸化触媒21の活性は低下していないと判定される。
【0041】
上記ステップ100で、酸化触媒21の活性が低下していると判定された場合には、次に、酸化触媒21のHC被毒を解消させるために、第2オゾン供給口25から酸化触媒21にオゾンを供給する処理が実行される(ステップ102)。このステップ102では、具体的には、まず、上記ステップ100で算出されたHC付着量に基づいて、HC被毒を解消させるために必要なオゾンの量が算出される。次に、その量のオゾンが第2オゾン供給口25から噴射されるように、オゾン発生器29および流量調整機構30が制御される。このステップ102の処理によれば、図3を参照して説明したようにして、酸化触媒21のHC被毒を迅速に解消させ、その活性を確実に回復させることができる。
【0042】
上記ステップ102の処理によって酸化触媒21のHC被毒が解消された場合、あるいは上記ステップ100において酸化触媒21の活性が低下していないと判定された場合には、次に、NOx触媒20に吸蔵されているNOxを還元するための還元剤を供給する処理が開始される(ステップ104)。すなわち、排気燃料添加インジェクタ32からの燃料噴射が開始される。
【0043】
還元剤の供給が開始されると、次に、NOx触媒20からのCOの流出の有無が判定される(ステップ106)。このステップ106の判定は、例えば次のようにして行うことができる。ECU50には、排気燃料添加インジェクタ32からの燃料添加量と、排気温センサ34で検出される排気ガス温度とから、NOx触媒20内でのCO発生量を算出するためのマップが予め記憶されている。そのマップに基づいて、NOx触媒20内でのCO発生量が算出される。この算出されたCO発生量が所定の閾値以内である場合には、NOx触媒20内で発生したCOはほぼ全部NOxと反応しており、NOx触媒20からのCOの流出は無いと判定される。一方、算出されたCO発生量が上記閾値を超えている場合には、発生したCOのうちの一部がNOxと反応し切れず、NOx触媒20の下流に流出していると判定される。
【0044】
上記ステップ106で、NOx触媒20の下流にCOが流出していると判定された場合には、次に、その流出したCOを浄化するために、第2オゾン供給口25から酸化触媒21にオゾンを供給する処理が実行される(ステップ108)。このステップ108では、具体的には、まず、上記ステップ106で算出されたCO発生量に基づいて、NOx触媒20から流出したCOを酸化触媒21中のAg触媒によって浄化するために必要なオゾンの量が算出される。次に、その量のオゾンが第2オゾン供給口25から噴射されるように、オゾン発生器29および流量調整機構30が制御される。このステップ108の処理によれば、図5を参照して説明したようにして、Ag触媒とオゾンとの相乗効果により、低温時においてもCOを効率良く浄化することができる。このため、COが大気中に排出されることを確実に抑制することができる。
【0045】
以上説明した実施の形態では、内燃機関10が圧縮着火式であるものとして説明したが、本発明は、火花点火式の内燃機関にも適用可能である。また、本実施形態では、活性酸素としてオゾンを排気ガス中に添加しているが、本発明では、オゾンに代えて、他の種類の活性酸素(例えば、O-,O2-,O2-,O3-,On-等で表される酸素マイナスイオン)を排気ガス中に添加するようにしてもよい。また、本実施形態では、オゾン発生器29により生成されたオゾンを、流量調整機構30により、第1のオゾン供給ノズル22と第2のオゾン供給ノズル23とに分配するようにしているが、本発明では、第1のオゾン供給ノズル22と第2のオゾン供給ノズル23とで個別にオゾン発生器を設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、オゾンを供給する際にオゾン発生器29によってオゾンを生成するようにしているが、本発明では、オゾンを予め生成、貯留しておき、その貯留されたオゾンを必要時に供給するようにしてもよい。また、本実施形態では、排気燃料添加インジェクタ32によって燃料(還元剤)を添加するようにしているが、本発明では、還元剤の供給方法はこれに限定されるものではない。例えば、膨張行程または排気行程において燃料インジェクタ14から燃料を噴射する方法(すなわちポスト噴射)や、大量EGR(Exhaust Gas Recirculation)を行うことによって筒内の空燃比を通常時より大幅にリッチ化させ、煤が生成しないような低温で燃焼させる方法(すなわち低温リッチ燃焼)などによって、還元剤を供給するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、オゾン発生器29が排気ガス流路外にあるが、本発明では、この構成に限定されず、オゾン発生器が排気ガス流路内にある構成としてもよい。この場合には、排気ガス流路内において高電圧を印加することにより放電し、オゾン等を発生させて排気ガスを浄化することとなる。
【0047】
また、本実施形態では、COを酸化する触媒としてAgを用いたが、本発明では、これに限定されず、Auなどを用いてもよい。また、COを酸化する触媒としては、触媒表面がオゾンと反応して酸化され、触媒が活性を示す温度以下でそのOが遊離するような材料であればよい。
【0048】
上述した実施の形態1においては、排気燃料添加インジェクタ32が前記第1の発明における「還元剤供給手段」に、オゾン発生器29、オゾン供給通路28、流量調整機構30および第2のオゾン供給ノズル23が前記第1の発明における「活性酸素供給装置」に、オゾン発生器29、オゾン供給通路28、流量調整機構30および第1のオゾン供給ノズル22が前記第3の発明における「NOx触媒用活性酸素供給装置」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、上記ステップ100の処理を実行することにより前記第1の発明における「HC被毒判定手段」が、上記ステップ102の処理を実行することにより前記第1の発明における「HC被毒回復手段」が、上記ステップ106の処理を実行することにより前記第2の発明における「CO流出判定手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより前記第2の発明における「CO浄化手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】NOx触媒にオゾンを供給した場合にNOxが浄化(吸収)される様子を示す図である。
【図3】酸化触媒のHC被毒をオゾン添加によって回復させる場合のメカニズムを示す図である。
【図4】Agを含んだ触媒の温度と、その触媒によるCO浄化率との関係を示す図である。
【図5】オゾンが共存する場合にAgを含んだ触媒がCOを酸化させるメカニズムを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 内燃機関
11 吸気マニホールド
12 排気マニホールド
13 気筒
14 燃料インジェクタ
15 排気通路
17 サプライポンプ
18 コモンレール
19 ターボチャージャ
20 NOx触媒
21 酸化触媒
22 第1のオゾン供給ノズル
23 第2のオゾン供給ノズル
24 第1オゾン供給口
25 第2オゾン供給口
26,27 ケーシング
28 オゾン供給通路
29 オゾン発生器
30 流量調整機構
32 排気燃料添加インジェクタ
34 排気温センサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置され、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒と、
前記NOx触媒でNOxを還元させる際に前記NOx触媒に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記NOx触媒の下流側に設置され、前記NOx触媒から流出する排気ガス中の有害成分を酸化させる酸化触媒と、
前記酸化触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
前記酸化触媒のHC被毒を判定するHC被毒判定手段と、
前記HC被毒判定手段により前記酸化触媒がHC被毒していると判定された場合に、HC被毒を回復させるための活性酸素を前記活性酸素供給装置により供給させるHC被毒回復手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記酸化触媒は、触媒成分としてAgを含み、
前記NOx触媒に還元剤が供給される際に、前記NOx触媒からのCOの流出を判定するCO流出判定手段と、
前記CO流出判定手段により前記NOx触媒からCOが流出すると判定された場合に、そのCOを前記酸化触媒中のAgとの相乗効果によって浄化するための活性酸素を前記活性酸素供給装置により供給させるCO浄化手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記NOx触媒の上流側に活性酸素を供給するNOx触媒用活性酸素供給装置と、
NOxを前記NOx触媒で浄化するための活性酸素を前記NOx触媒用活性酸素供給装置により供給させるNOx浄化手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−25014(P2010−25014A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188519(P2008−188519)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】