内燃機関の排気浄化装置
【課題】触媒担体にレーザ光を照射して該触媒担体を加熱する手段を有するものであり、強度の強いレーザ光を用いて触媒担体の加熱時間を短くしながらも、触媒担体の溶損を防止することができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lを照射して加熱する照射部22及びレーザ光発振部24が備えられており、そのレーザ加熱期間中、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射するように構成される。このレーザ光Lは、触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面21aに照射させている。
【解決手段】触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lを照射して加熱する照射部22及びレーザ光発振部24が備えられており、そのレーザ加熱期間中、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射するように構成される。このレーザ光Lは、触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面21aに照射させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を早期に活性化させ、特に冷間始動時に好適な内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、排気管に排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒コンバータが備えられているが、冷間始動時等、触媒が活性化して良好な排気浄化効果が得られる温度まで触媒コンバータ(触媒担体)の温度が上昇するのに単に排気ガスにより昇温させるのでは時間を要してしまう。かかる時間が長いと排気エミッションが悪化するため、触媒担体を加熱する何らかの手段を講じて、触媒担体の温度が好適な温度まで上昇する時間を短くする技術が従来より種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1の技術では、触媒担体にヒータが設けられており、該ヒータを通電させることにより触媒担体が加熱される。しかしながら、ヒータにより触媒担体を加熱する前にヒータ自身の加熱(ヒータの立ち上がり)に少なくとも数秒程度の時間を要するため、このような応答性の悪さが排気エミッションの悪化に繋がる。
【0004】
そこで、特許文献2の図2に示すように、触媒担体にレーザ光を照射して該触媒担体を加熱するようにすれば、レーザ光は立ち上がり時間を殆ど必要としないことから、レーザ光が照射される触媒担体は直ちに温度が上昇する。従って、上記ヒータを用いるよりも触媒担体の加熱にかかる時間を短くでき、排気エミッションを改善できる。
【0005】
しかしながら、特許文献2の図2に示す技術では、レーザ光をレンズにより集光させているが、その集光させたレーザ光を触媒担体の上流側端面の中心部に点照射させている。そのため、レーザ光が点照射される中心部が溶損する虞がある。逆に、溶損を防止するためレーザ光の強度を弱くすれば、それだけ触媒担体を加熱する時間が長くなり、排気エミッションの悪化に繋がる。
【特許文献1】特開平6−269682号公報
【特許文献2】特開平7−189661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒担体にレーザ光を照射して該触媒担体を加熱する手段を有するものであり、強度の強いレーザ光を用いて触媒担体の加熱時間を短くしながらも、触媒担体の溶損を防止することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、効果等を示しつつ説明する。
【0008】
手段1.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。レーザ加熱手段は、レーザ光による加熱期間中、触媒担体の端面に対してレーザ光を面照射するように構成される。
【0009】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対してレーザ光が面照射されるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0010】
手段2.上記手段1において、レーザ加熱手段は、レーザ光を触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面に照射する。
【0011】
すなわち、触媒担体の端面に対しレーザ光が面照射されながらも、該触媒担体の端面の手前位置でレーザ光が一旦集光される。そのため、その焦点における温度が非常に高くなることから、排気ガス中の未燃燃料に着火させて燃焼させることが可能となる。これにより、排気ガス中の未燃燃料を低減することができ、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体の加熱を促進することができる。
【0012】
手段3.上記手段2において、レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させたレーザ光の焦点で未燃燃料に着火させることが可能な強度以上に設定される。
【0013】
すなわち、レーザ光の強度がその焦点で未燃燃料に着火可能な強度以上に設定されるので、未燃燃料への着火が確実となり、これにより排気ガス中の未燃燃料の低減と、未燃燃料の燃焼による触媒担体の加熱促進とを確実に行うことができる。
【0014】
手段4.上記手段1〜3のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を照射する際に触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内に照射する。
【0015】
すなわち、排気ガスの流量の多い触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内にレーザ光が照射されるので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0016】
手段5.上記手段1〜4のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、触媒担体の少なくとも上流側端面にレーザ光を照射する。
【0017】
すなわち、排気ガスが最初に到達する触媒担体の上流側端面にレーザ光が照射されるので、その上流側端面から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0018】
手段6.上記手段1〜5のいずれかにおいて、レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、レーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定される。
【0019】
すなわち、レーザ光の強度がそのレーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されるので、レーザ光を発する部位表面への付着物が極めて少なくなり、この付着物によるレーザ光の減衰を抑制することができる。
【0020】
手段7.上記手段1〜6のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を生成するレーザ光発振部と、該発振部と光ケーブルを介して接続され該発振部から供給されるレーザ光を発する照射部とを備え、照射部を内燃機関の排気通路に設けると共に、レーザ光発振部を該排気通路から離間した位置に設けている。
【0021】
すなわち、排気通路(排気管)は温度の昇降が激しく、車両の外部に露出しているため、環境的に厳しい。従って、このような排気通路には照射部のみを設ける一方で、レーザ光を生成する耐環境性の低い半導体装置等を備えたレーザ光発振部を該排気通路から離間した位置、例えば車室内等に設ければ、レーザ光発振部の破損を防止することができる。
【0022】
手段8.上記手段1〜7のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を照射する数と同数で同形状の照射領域を触媒担体の端面に設けると共に、各照射領域の中心が触媒担体の端面中心から等距離に位置するように各照射領域を互いに接するように配置し、各照射領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光を照射する。
【0023】
すなわち、各レーザ光が照射される各照射領域は、同形状であり、触媒担体の端面中心から等距離に位置して互いに接するように配置されている。そして、このような各照射領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光が照射され、複数のレーザ光が触媒担体の端面にバランス良く照射される。そのため、触媒担体を効果的に加熱することができる。
【0024】
手段9.上記手段1〜7のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を同一の照射領域に照射する。
【0025】
すなわち、複数のレーザ光が同一の照射領域に照射されるので、個々のレーザ光の強度を抑えながらも、触媒担体を効果的に加熱することができる。
【0026】
手段10.上記手段1〜9のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに各レーザ光を照射する。
【0027】
すなわち、レーザ光が触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに照射されるので、触媒担体の両端から効果的に加熱することができる。
【0028】
手段11.上記手段1〜10のいずれかにおいて、レーザ加熱手段によるレーザ加熱期間は、内燃機関を主に循環する冷却水の温度、及び触媒担体の下流側のガス濃度のうち少なくとも一方に基づいて設定される。
【0029】
すなわち、冷却水温度の検出により、排気ガス中に有害成分が多く含まれる内燃機関の未暖機状態(冷間状態)かが判定でき、触媒担体の下流側のガス濃度(この場合、空燃比や未燃燃料濃度等)の検出により、触媒担体の温度が排気ガス中の有害成分が十分に浄化できない低い温度にあるかが判定できる。そのため、これら冷却水温度及び触媒担体の下流側のガス濃度の少なくとも一方に基づいてレーザ加熱期間を設定することにより、触媒担体の加熱期間を好適な期間に設定することができる。
【0030】
手段12.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。照射状態切換手段は、レーザ光による加熱期間中、レーザ加熱手段にて触媒担体の端面に対してレーザ光を点照射させ、その後点照射から面照射に切り替える。
【0031】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対してレーザ光が点照射から面照射に切り替えられるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0032】
手段13.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。照射位置移動手段は、レーザ光による加熱期間中、レーザ加熱手段にて触媒担体の端面に対してレーザ光を点照射又は面照射すると共に、その照射位置を移動させる。
【0033】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対して点照射又は面照射するレーザ光の照射位置が移動されるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0034】
なお、上記手段12に上記手段3を組み合わせることも可能である。また、上記手段12又は13に対し、上記手段2〜11を適宜組み合わせることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものとしており、当該制御システムにおいては電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御等を実施することとしている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
【0036】
図1に示すエンジン10において、各気筒の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ11及び排気バルブ12が設けられている。吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁13が取り付けられており、吸気バルブ11の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室14内に導入される。エンジン10のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ15が取り付けられている。各点火プラグ15には所望とする点火時期において高電圧が印加され、この高電圧の印加により、各点火プラグ15の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室14内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。そして、燃焼後の排気ガスは、排気バルブ12の開動作によりが排気管16に排出される。
【0037】
排気管16には、排気ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する触媒コンバータ20が設けられている。触媒コンバータ20は、排気ガス中の有害成分であるCO,HC,NOx等を浄化するための三元触媒等を担持する略円柱状の触媒担体21を備えている。
【0038】
また、排気管16における触媒コンバータ20の上流側には、照射部22が備えられている。照射部22は、光ケーブル23にて排気管16とは離間した車室内に配置されるレーザ光発振部24と接続されている。レーザ光発振部24には、レーザ光Lを生成する半導体装置等が備えられている。そして、後述するECU30の制御に基づきレーザ光発振部24から供給されるレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aに照射されて加熱される。これにより、触媒担体21は、レーザ光Lが照射される上流側端面21aから加熱されて、触媒浄化効果が十分に得られる触媒活性温度までの立ち上がりが早くなる。
【0039】
ここで、図2に示すように、照射部22はレンズ22aを備えており、照射するレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光しその後若干広がった状態としている。そして、このレーザ光Lが上流側端面21aの中心をその中心とした該端面21aの直径Dの1/3の円形照射領域A1内に面照射されるように、レンズ22aの配置位置や寸法が設定されている。また、レーザ光Lの強度は、本実施の形態では、レンズ22aの表面に付着するデポジット等の付着物を焼却すると共に、後述するレーザ光Lを一旦集光させた焦点Pにて未燃燃料(HC)に着火するような強度、例えば30[mJ]に設定されている。
【0040】
このようなレーザ光Lが照射される触媒担体21は、上流側端面21aの中心部において面照射されるので溶損が防止されると共に、面照射により加熱面積が拡大するので触媒担体21の温度上昇がより早くなる。また、レーザ光Lを一旦集光させた焦点Pの温度は非常に高いため、排気ガス中の未燃燃料(HC)に着火させて燃焼させることができる。これにより、排気ガス中の未燃燃料(HC)を低減でき、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体21の加熱を促進できる。更に、上流側端面21aにおいて排気ガスの流量の多い中心部にレーザ光Lを照射しているので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0041】
前記エンジン10のシリンダブロックには、エンジン10を主に循環する冷却水の温度(冷却水温:Tw)を検出するための冷却水温センサ25と、クランク位置(回転角度)及びエンジン回転数を検出するためのクランク角センサ26とが備えられている。また、前記排気管16における触媒コンバータ20の上流側及び下流側には、排気ガスを検出対象として混合気の空燃比又はリッチ/リーンや未燃燃料濃度(HC濃度:THC)を検出するための排気センサ27,28(リニア空燃比センサ、酸素センサ等)がそれぞれ備えられている。
【0042】
これら各種センサの出力は、エンジン制御を司るECU30に入力される。ECU30は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、各種センサから得た各種検出信号に基づいてエンジン10の運転状態を把握し、そのエンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射弁13による燃料噴射動作や点火プラグ15による点火動作等、各種の制御プログラムを実行することでエンジン制御を実施する。
【0043】
また、ECU30は、ドライバのオンオフ操作に伴ってイグニッションスイッチ(IGスイッチ)31からオンオフ信号が入力されており、該スイッチ31のオン信号の入力に基づいて、触媒コンバータ20のレーザ加熱処理を実施する(図3参照)。このレーザ加熱処理は、所定周期毎に実施される。
【0044】
ステップS101では、エンジン回転数の検出に基づいてエンジン10が運転状態か否かを判定する。エンジン10が運転状態でない場合、この加熱処理を終了する。エンジン10が運転状態、すなわちエンジン10の運転が開始されると、ステップS102に進む。
【0045】
ステップS102では、現在の冷却水温Twが判定値Taより低い(Tw<Ta)か否かを判定する。この判定値Taは、エンジン10が暖機完了状態にあるか否かを判定する、例えば70℃に設定されている。冷却水温Twが判定値Taより高いと、エンジン10が暖機完了状態にあって、排気ガス中に含まれる有害成分が十分に少なくなったと判定し、この加熱処理を終了する。冷却水温Twが判定値Taより低いと、エンジン10が未暖機状態(冷間状態)にあって、排気ガス中に有害成分が多く含まれていると判定し、ステップS103に進む。
【0046】
ステップS103では、排気センサ27,28の検出結果に基づいて、現在のHC濃度THCが判定値Tbより高い(THC>Tb)か否かを判定する。この判定値Tbは、触媒担体21が触媒浄化効果の十分に得られる触媒活性温度にあるか否か判定する値に設定されている。HC濃度THCが判定値Tbより低いと、触媒担体21が排気ガス中の有害成分を十分に浄化可能な触媒活性温度にあると判定し、この加熱処理を終了する。HC濃度THCが判定値Tbより高いと、触媒担体21が排気ガス中の有害成分を十分に浄化できない低い温度にあると判定し、ステップS104に進む。
【0047】
ステップS104では、レーザ光発振部24から照射部22にレーザ光Lを供給し、該照射部22から触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光を照射して該触媒担体21を加熱し、該触媒担体21の温度上昇を促進する。
【0048】
このようにECU30は、エンジン10が未暖機状態(冷間状態)で、しかも触媒担体21が触媒活性温度に到達していない場合、レーザ光発振部24を作動させて触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光を照射する。これにより、図4に示すように、レーザ加熱処理を実施する本実施の形態では、レーザ照射等、触媒の加熱を実施しない場合と比べて、触媒担体21の上流側端面21aにおける中心部温度の立ち上がりが早くなり、該触媒担体21の温度上昇が早くなる。つまり、触媒担体21が触媒浄化効果の十分に得られる触媒活性温度まで早期に到達するようになる。そのため、特に有害成分が多く含まれるエンジン未暖機状態の排気ガスの浄化が良好となり、大気に放出される排気ガス中において例えばその有害成分の一つである未燃燃料濃度(HC濃度)が、触媒の加熱を実施しない場合と比べて十分に低減される。
【0049】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0050】
本実施の形態では、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lを照射して加熱する照射部22及びレーザ光発振部24が備えられており、そのレーザ加熱期間中、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射するように構成されている。すなわち、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射されるので、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光Lを用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0051】
本実施の形態では、レーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面21aに照射させている。すなわち、触媒担体21の上流側端面21aに対しレーザ光Lが面照射されながらも、該触媒担体21の上流側端面21aの手前位置でレーザ光Lが一旦集光される。そのため、その焦点Pにおける温度が非常に高くなることから、排気ガス中の未燃燃料(HC)に着火させて燃焼させることができる。これにより、排気ガス中の未燃燃料を低減することができ、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体21の加熱を促進することができる。
【0052】
本実施の形態では、レーザ光Lの強度は、一旦集光させた焦点Pで未燃燃料に着火させることが可能で、レーザ光Lを発する部位であるレンズ22aの表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されている。すなわち、レーザ光Lの強度がその焦点Pで未燃燃料に着火可能な強度以上に設定されるので、未燃燃料への着火が確実となり、これにより排気ガス中の未燃燃料の低減と、未燃燃料の燃焼による触媒担体の加熱促進とを確実に行うことができる。また、レーザ光Lの強度がそのレーザ光Lを発するレンズ22aの表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されるので、レーザ光Lを発するレンズ22aの表面への付着物が極めて少なくなり、この付着物によるレーザ光Lの減衰を抑制することができる。
【0053】
本実施の形態では、レーザ光Lは触媒担体21の上流側端面21aの中心をその中心とした所定照射領域(上流側端面21aの直径Dの1/3の円形照射領域A1)内に照射される。すなわち、排気ガスの流量の多い触媒担体21の上流側端面21aの中心をその中心とした所定照射領域A1内にレーザ光Lが照射されるので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0054】
本実施の形態では、排気ガスが最初に到達する触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光Lが照射されるので、その上流側端面21aから加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0055】
本実施の形態では、レーザ光Lを生成するレーザ光発振部24と、該発振部24と光ケーブル23を介して接続され該発振部24から供給されるレーザ光Lを発する照射部22とが備えられている。この照射部22はエンジン10の排気管16に設けられると共に、レーザ光発振部24は該排気管16から離間した車室内に設けられている。すなわち、排気管16は温度の昇降が激しく、車両の外部に露出しているため、環境的に厳しい。従って、このような排気管16には照射部22のみを設ける一方で、レーザ光Lを生成する耐環境性の低い半導体装置等を備えたレーザ光発振部24を該排気管16から離間した車室内に設ければ、レーザ光発振部24の破損を防止することができる。
【0056】
本実施の形態では、レーザ加熱期間は、エンジン10を主に循環する冷却水の温度(冷却水温Tw)と排気ガス中の未燃燃料の濃度(HC濃度THC)に基づいて設定されている。すなわち、冷却水温Twの検出により、排気ガス中に有害成分が多く含まれるエンジン10の未暖機状態(冷間状態)かが判定でき、排気ガス中のHC濃度THCの検出により、触媒担体21の温度が排気ガス中の有害成分が十分に浄化できない低い温度にあるかが判定できる。そのため、これら冷却水温Tw及び排気ガス中のHC濃度THCに基づいてレーザ加熱期間を設定することにより、触媒担体21の加熱期間を好適な期間に設定することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0058】
上記実施の形態のレーザ光Lの照射位置や照射形態に限らず、これらを適宜変更しても良い。例えば、図5に示すように、照射部41からレーザ光Lが三方に照射するように構成されている。また、各レーザ光Lを照射する数と同数で同円形状の区画領域A2を触媒担体21の上流側端面21aに設けると共に、各区画領域A2の中心が触媒担体21の端面21a中心から等距離に位置するように各区画領域A2を互いに接するように配置し、このような各区画領域A2の中心をその中心とした所定照射領域A3内に各レーザ光が照射される。なおこの形態では、上記実施の形態と同様に、触媒担体21の上流側端面21aの手前で一旦集光するレーザ光Lが用いられている。このようにすれば、複数(この場合、3つ)のレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aにバランス良く照射され、触媒担体21を効果的に加熱することができる。
【0059】
また、図6に示すように、照射部42から発するレーザ光Lの広げ、触媒担体21の上流側端面21aの全体に照射するようにしても良い。
【0060】
また、図7に示すように、照射部43から発するレーザ光Lの広げ、触媒担体21の上流側端面21aにおける円形照射領域(上流側端面21aの中心をその中心とした該端面21aの直径Dの1/3の領域)A1に照射するようにしても良い。
【0061】
また、図8に示すように、2つの照射部44a,44bを用い、各照射部44a,44bから発するレーザ光Lを同一の照射領域A1に照射しても良い。このようにすれば、複数のレーザ光Lが同一の照射領域A1に照射されるので、個々のレーザ光Lの強度を抑えながらも、触媒担体21を効果的に加熱することができる。
【0062】
また、図9に示すように、2つの照射部45a,45bを触媒担体21の上流側と下流側とのそれぞれに配置し、各照射部45a,45bから発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aと下流側端面21bとのそれぞれに照射しても良い。このようにすれば、レーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21a及び下流側端面21bのそれぞれに照射されるので、触媒担体21の両端から効果的に加熱することができる。
【0063】
また、図10に示すように、照射部46から発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射(この場合、面照射でも良い)させると共に、その照射位置が移動するようにアクチュエータ46aの作動により照射部46を可動させても良い。なおこの場合、触媒担体21の端面21aの中心をその中心とした円環状にレーザ光Lの照射位置を移動させるようにしているので、照射部46の動作は単純でアクチュエータ46aも比較的簡単に構成できる。このようにすれば、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射するレーザ光Lの照射位置が移動されるので、上記実施の形態と同様に、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0064】
また、図11(a)(b)に示すように、照射部47から発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射させ、その後、アクチュエータ47aの作動により点照射から面照射に切り替えるようにしても良い。なおこの場合、触媒担体21の端面21aの中心にレーザ光Lを点照射し、その後レーザ光Lの中心位置を移動させることなくレーザ光Lを単に広角として面照射に切り替えるようにしているので、この切り替えを行うアクチュエータ47aを比較的簡単に構成できる。このようにすれば、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが点照射から面照射に切り替えられるので、上記実施の形態と同様に、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0065】
なお、図11の形態と前記図10の形態とを組み合わせてもよい。また、上記した各形態を適宜組み合わせてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、レーザ光Lの強度を30[mJ]に設定したが、これ以外の数値に変更しても良い。また、レーザ光Lの強度を固定としていたが、可変としても良い。例えば、エンジン10の始動時に暖機目的でレーザ加熱実施の場合にはレーザ光Lの強度を10[mJ]とし、レンズ22aの表面に付着するデポジット等の付着物の焼却目的を含む場合にはレーザ光Lの強度を30[mJ]というように可変としても良い。
【0067】
本実施の形態では、冷却水温Tw及び排気ガス中のHC濃度THCに基づいてレーザ加熱期間を設定したが、これに限定されるものではなく、例えばタイマや制御ループ回数によりレーザ加熱期間を調整しても良い。
【0068】
上記実施の形態では、排気管16から離間した車室内に配置されるレーザ光発振部24にてレーザ光Lを生成し、そのレーザ光Lを光ケーブル23を通じて排気管16に設けた照射部22に供給するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えばレーザ光発振部24と照射部22とを一体に設けても良い。
【0069】
上記実施の形態では、触媒コンバータ20(触媒担体21)が1つであったが、触媒コンバータ(触媒担体)複数であっても良い。例えば、上流側に熱容量の小さいサブ触媒コンバータ(触媒担体)を備えると共に、下流側に熱容量の大きいメイン触媒コンバータ(触媒担体)を備え、それぞれにレーザ加熱装置を設けても良い。また、例えばサブの触媒担体に対してのみレーザ加熱装置を設けても良い。
【0070】
上記実施の形態では、ガソリンエンジンの触媒コンバータ20に適用したが、ディーゼルエンジンの触媒コンバータに適応しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。
【図2】レーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図3】レーザ加熱処理を示すフローチャートである。
【図4】触媒及びHC濃度の変化を説明するための説明図である。
【図5】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図6】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図7】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図8】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図9】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図10】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図11】(a)(b)は、別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10…エンジン(内燃機関)、21…触媒担体、21a…上流側端面、21b…下流側端面、22…照射部(レーザ加熱手段)、23…光ケーブル(レーザ加熱手段)、24…レーザ光発振部(レーザ加熱手段)、41〜47…照射部(レーザ加熱手段)、46a…アクチュエータ(照射位置移動手段)、47a…アクチュエータ(照射状態切換手段)、A1,A3…照射領域、A2…区画領域、Tw…冷却水温(冷却水の温度)、THC…未燃燃料濃度(ガス濃度)、L…レーザ光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を早期に活性化させ、特に冷間始動時に好適な内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、排気管に排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒コンバータが備えられているが、冷間始動時等、触媒が活性化して良好な排気浄化効果が得られる温度まで触媒コンバータ(触媒担体)の温度が上昇するのに単に排気ガスにより昇温させるのでは時間を要してしまう。かかる時間が長いと排気エミッションが悪化するため、触媒担体を加熱する何らかの手段を講じて、触媒担体の温度が好適な温度まで上昇する時間を短くする技術が従来より種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1の技術では、触媒担体にヒータが設けられており、該ヒータを通電させることにより触媒担体が加熱される。しかしながら、ヒータにより触媒担体を加熱する前にヒータ自身の加熱(ヒータの立ち上がり)に少なくとも数秒程度の時間を要するため、このような応答性の悪さが排気エミッションの悪化に繋がる。
【0004】
そこで、特許文献2の図2に示すように、触媒担体にレーザ光を照射して該触媒担体を加熱するようにすれば、レーザ光は立ち上がり時間を殆ど必要としないことから、レーザ光が照射される触媒担体は直ちに温度が上昇する。従って、上記ヒータを用いるよりも触媒担体の加熱にかかる時間を短くでき、排気エミッションを改善できる。
【0005】
しかしながら、特許文献2の図2に示す技術では、レーザ光をレンズにより集光させているが、その集光させたレーザ光を触媒担体の上流側端面の中心部に点照射させている。そのため、レーザ光が点照射される中心部が溶損する虞がある。逆に、溶損を防止するためレーザ光の強度を弱くすれば、それだけ触媒担体を加熱する時間が長くなり、排気エミッションの悪化に繋がる。
【特許文献1】特開平6−269682号公報
【特許文献2】特開平7−189661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒担体にレーザ光を照射して該触媒担体を加熱する手段を有するものであり、強度の強いレーザ光を用いて触媒担体の加熱時間を短くしながらも、触媒担体の溶損を防止することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、効果等を示しつつ説明する。
【0008】
手段1.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。レーザ加熱手段は、レーザ光による加熱期間中、触媒担体の端面に対してレーザ光を面照射するように構成される。
【0009】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対してレーザ光が面照射されるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0010】
手段2.上記手段1において、レーザ加熱手段は、レーザ光を触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面に照射する。
【0011】
すなわち、触媒担体の端面に対しレーザ光が面照射されながらも、該触媒担体の端面の手前位置でレーザ光が一旦集光される。そのため、その焦点における温度が非常に高くなることから、排気ガス中の未燃燃料に着火させて燃焼させることが可能となる。これにより、排気ガス中の未燃燃料を低減することができ、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体の加熱を促進することができる。
【0012】
手段3.上記手段2において、レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させたレーザ光の焦点で未燃燃料に着火させることが可能な強度以上に設定される。
【0013】
すなわち、レーザ光の強度がその焦点で未燃燃料に着火可能な強度以上に設定されるので、未燃燃料への着火が確実となり、これにより排気ガス中の未燃燃料の低減と、未燃燃料の燃焼による触媒担体の加熱促進とを確実に行うことができる。
【0014】
手段4.上記手段1〜3のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を照射する際に触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内に照射する。
【0015】
すなわち、排気ガスの流量の多い触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内にレーザ光が照射されるので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0016】
手段5.上記手段1〜4のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、触媒担体の少なくとも上流側端面にレーザ光を照射する。
【0017】
すなわち、排気ガスが最初に到達する触媒担体の上流側端面にレーザ光が照射されるので、その上流側端面から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0018】
手段6.上記手段1〜5のいずれかにおいて、レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、レーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定される。
【0019】
すなわち、レーザ光の強度がそのレーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されるので、レーザ光を発する部位表面への付着物が極めて少なくなり、この付着物によるレーザ光の減衰を抑制することができる。
【0020】
手段7.上記手段1〜6のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を生成するレーザ光発振部と、該発振部と光ケーブルを介して接続され該発振部から供給されるレーザ光を発する照射部とを備え、照射部を内燃機関の排気通路に設けると共に、レーザ光発振部を該排気通路から離間した位置に設けている。
【0021】
すなわち、排気通路(排気管)は温度の昇降が激しく、車両の外部に露出しているため、環境的に厳しい。従って、このような排気通路には照射部のみを設ける一方で、レーザ光を生成する耐環境性の低い半導体装置等を備えたレーザ光発振部を該排気通路から離間した位置、例えば車室内等に設ければ、レーザ光発振部の破損を防止することができる。
【0022】
手段8.上記手段1〜7のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を照射する数と同数で同形状の照射領域を触媒担体の端面に設けると共に、各照射領域の中心が触媒担体の端面中心から等距離に位置するように各照射領域を互いに接するように配置し、各照射領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光を照射する。
【0023】
すなわち、各レーザ光が照射される各照射領域は、同形状であり、触媒担体の端面中心から等距離に位置して互いに接するように配置されている。そして、このような各照射領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光が照射され、複数のレーザ光が触媒担体の端面にバランス良く照射される。そのため、触媒担体を効果的に加熱することができる。
【0024】
手段9.上記手段1〜7のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を同一の照射領域に照射する。
【0025】
すなわち、複数のレーザ光が同一の照射領域に照射されるので、個々のレーザ光の強度を抑えながらも、触媒担体を効果的に加熱することができる。
【0026】
手段10.上記手段1〜9のいずれかにおいて、レーザ加熱手段は、レーザ光を複数照射するように構成されており、触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに各レーザ光を照射する。
【0027】
すなわち、レーザ光が触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに照射されるので、触媒担体の両端から効果的に加熱することができる。
【0028】
手段11.上記手段1〜10のいずれかにおいて、レーザ加熱手段によるレーザ加熱期間は、内燃機関を主に循環する冷却水の温度、及び触媒担体の下流側のガス濃度のうち少なくとも一方に基づいて設定される。
【0029】
すなわち、冷却水温度の検出により、排気ガス中に有害成分が多く含まれる内燃機関の未暖機状態(冷間状態)かが判定でき、触媒担体の下流側のガス濃度(この場合、空燃比や未燃燃料濃度等)の検出により、触媒担体の温度が排気ガス中の有害成分が十分に浄化できない低い温度にあるかが判定できる。そのため、これら冷却水温度及び触媒担体の下流側のガス濃度の少なくとも一方に基づいてレーザ加熱期間を設定することにより、触媒担体の加熱期間を好適な期間に設定することができる。
【0030】
手段12.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。照射状態切換手段は、レーザ光による加熱期間中、レーザ加熱手段にて触媒担体の端面に対してレーザ光を点照射させ、その後点照射から面照射に切り替える。
【0031】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対してレーザ光が点照射から面照射に切り替えられるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0032】
手段13.内燃機関の排気浄化装置には、排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段が備えられる。照射位置移動手段は、レーザ光による加熱期間中、レーザ加熱手段にて触媒担体の端面に対してレーザ光を点照射又は面照射すると共に、その照射位置を移動させる。
【0033】
すなわち、触媒担体を加熱する際、触媒担体の端面に対して点照射又は面照射するレーザ光の照射位置が移動されるので、レーザ光のエネルギーが分散され、レーザ光のエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光が照射される部分の溶損を防止することができる。
【0034】
なお、上記手段12に上記手段3を組み合わせることも可能である。また、上記手段12又は13に対し、上記手段2〜11を適宜組み合わせることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものとしており、当該制御システムにおいては電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御等を実施することとしている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
【0036】
図1に示すエンジン10において、各気筒の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ11及び排気バルブ12が設けられている。吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁13が取り付けられており、吸気バルブ11の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室14内に導入される。エンジン10のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ15が取り付けられている。各点火プラグ15には所望とする点火時期において高電圧が印加され、この高電圧の印加により、各点火プラグ15の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室14内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。そして、燃焼後の排気ガスは、排気バルブ12の開動作によりが排気管16に排出される。
【0037】
排気管16には、排気ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する触媒コンバータ20が設けられている。触媒コンバータ20は、排気ガス中の有害成分であるCO,HC,NOx等を浄化するための三元触媒等を担持する略円柱状の触媒担体21を備えている。
【0038】
また、排気管16における触媒コンバータ20の上流側には、照射部22が備えられている。照射部22は、光ケーブル23にて排気管16とは離間した車室内に配置されるレーザ光発振部24と接続されている。レーザ光発振部24には、レーザ光Lを生成する半導体装置等が備えられている。そして、後述するECU30の制御に基づきレーザ光発振部24から供給されるレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aに照射されて加熱される。これにより、触媒担体21は、レーザ光Lが照射される上流側端面21aから加熱されて、触媒浄化効果が十分に得られる触媒活性温度までの立ち上がりが早くなる。
【0039】
ここで、図2に示すように、照射部22はレンズ22aを備えており、照射するレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光しその後若干広がった状態としている。そして、このレーザ光Lが上流側端面21aの中心をその中心とした該端面21aの直径Dの1/3の円形照射領域A1内に面照射されるように、レンズ22aの配置位置や寸法が設定されている。また、レーザ光Lの強度は、本実施の形態では、レンズ22aの表面に付着するデポジット等の付着物を焼却すると共に、後述するレーザ光Lを一旦集光させた焦点Pにて未燃燃料(HC)に着火するような強度、例えば30[mJ]に設定されている。
【0040】
このようなレーザ光Lが照射される触媒担体21は、上流側端面21aの中心部において面照射されるので溶損が防止されると共に、面照射により加熱面積が拡大するので触媒担体21の温度上昇がより早くなる。また、レーザ光Lを一旦集光させた焦点Pの温度は非常に高いため、排気ガス中の未燃燃料(HC)に着火させて燃焼させることができる。これにより、排気ガス中の未燃燃料(HC)を低減でき、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体21の加熱を促進できる。更に、上流側端面21aにおいて排気ガスの流量の多い中心部にレーザ光Lを照射しているので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0041】
前記エンジン10のシリンダブロックには、エンジン10を主に循環する冷却水の温度(冷却水温:Tw)を検出するための冷却水温センサ25と、クランク位置(回転角度)及びエンジン回転数を検出するためのクランク角センサ26とが備えられている。また、前記排気管16における触媒コンバータ20の上流側及び下流側には、排気ガスを検出対象として混合気の空燃比又はリッチ/リーンや未燃燃料濃度(HC濃度:THC)を検出するための排気センサ27,28(リニア空燃比センサ、酸素センサ等)がそれぞれ備えられている。
【0042】
これら各種センサの出力は、エンジン制御を司るECU30に入力される。ECU30は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、各種センサから得た各種検出信号に基づいてエンジン10の運転状態を把握し、そのエンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射弁13による燃料噴射動作や点火プラグ15による点火動作等、各種の制御プログラムを実行することでエンジン制御を実施する。
【0043】
また、ECU30は、ドライバのオンオフ操作に伴ってイグニッションスイッチ(IGスイッチ)31からオンオフ信号が入力されており、該スイッチ31のオン信号の入力に基づいて、触媒コンバータ20のレーザ加熱処理を実施する(図3参照)。このレーザ加熱処理は、所定周期毎に実施される。
【0044】
ステップS101では、エンジン回転数の検出に基づいてエンジン10が運転状態か否かを判定する。エンジン10が運転状態でない場合、この加熱処理を終了する。エンジン10が運転状態、すなわちエンジン10の運転が開始されると、ステップS102に進む。
【0045】
ステップS102では、現在の冷却水温Twが判定値Taより低い(Tw<Ta)か否かを判定する。この判定値Taは、エンジン10が暖機完了状態にあるか否かを判定する、例えば70℃に設定されている。冷却水温Twが判定値Taより高いと、エンジン10が暖機完了状態にあって、排気ガス中に含まれる有害成分が十分に少なくなったと判定し、この加熱処理を終了する。冷却水温Twが判定値Taより低いと、エンジン10が未暖機状態(冷間状態)にあって、排気ガス中に有害成分が多く含まれていると判定し、ステップS103に進む。
【0046】
ステップS103では、排気センサ27,28の検出結果に基づいて、現在のHC濃度THCが判定値Tbより高い(THC>Tb)か否かを判定する。この判定値Tbは、触媒担体21が触媒浄化効果の十分に得られる触媒活性温度にあるか否か判定する値に設定されている。HC濃度THCが判定値Tbより低いと、触媒担体21が排気ガス中の有害成分を十分に浄化可能な触媒活性温度にあると判定し、この加熱処理を終了する。HC濃度THCが判定値Tbより高いと、触媒担体21が排気ガス中の有害成分を十分に浄化できない低い温度にあると判定し、ステップS104に進む。
【0047】
ステップS104では、レーザ光発振部24から照射部22にレーザ光Lを供給し、該照射部22から触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光を照射して該触媒担体21を加熱し、該触媒担体21の温度上昇を促進する。
【0048】
このようにECU30は、エンジン10が未暖機状態(冷間状態)で、しかも触媒担体21が触媒活性温度に到達していない場合、レーザ光発振部24を作動させて触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光を照射する。これにより、図4に示すように、レーザ加熱処理を実施する本実施の形態では、レーザ照射等、触媒の加熱を実施しない場合と比べて、触媒担体21の上流側端面21aにおける中心部温度の立ち上がりが早くなり、該触媒担体21の温度上昇が早くなる。つまり、触媒担体21が触媒浄化効果の十分に得られる触媒活性温度まで早期に到達するようになる。そのため、特に有害成分が多く含まれるエンジン未暖機状態の排気ガスの浄化が良好となり、大気に放出される排気ガス中において例えばその有害成分の一つである未燃燃料濃度(HC濃度)が、触媒の加熱を実施しない場合と比べて十分に低減される。
【0049】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0050】
本実施の形態では、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lを照射して加熱する照射部22及びレーザ光発振部24が備えられており、そのレーザ加熱期間中、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射するように構成されている。すなわち、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが面照射されるので、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光Lを用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0051】
本実施の形態では、レーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aの手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面21aに照射させている。すなわち、触媒担体21の上流側端面21aに対しレーザ光Lが面照射されながらも、該触媒担体21の上流側端面21aの手前位置でレーザ光Lが一旦集光される。そのため、その焦点Pにおける温度が非常に高くなることから、排気ガス中の未燃燃料(HC)に着火させて燃焼させることができる。これにより、排気ガス中の未燃燃料を低減することができ、しかも未燃燃料の燃焼にて生じた熱により触媒担体21の加熱を促進することができる。
【0052】
本実施の形態では、レーザ光Lの強度は、一旦集光させた焦点Pで未燃燃料に着火させることが可能で、レーザ光Lを発する部位であるレンズ22aの表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されている。すなわち、レーザ光Lの強度がその焦点Pで未燃燃料に着火可能な強度以上に設定されるので、未燃燃料への着火が確実となり、これにより排気ガス中の未燃燃料の低減と、未燃燃料の燃焼による触媒担体の加熱促進とを確実に行うことができる。また、レーザ光Lの強度がそのレーザ光Lを発するレンズ22aの表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されるので、レーザ光Lを発するレンズ22aの表面への付着物が極めて少なくなり、この付着物によるレーザ光Lの減衰を抑制することができる。
【0053】
本実施の形態では、レーザ光Lは触媒担体21の上流側端面21aの中心をその中心とした所定照射領域(上流側端面21aの直径Dの1/3の円形照射領域A1)内に照射される。すなわち、排気ガスの流量の多い触媒担体21の上流側端面21aの中心をその中心とした所定照射領域A1内にレーザ光Lが照射されるので、その中心部から加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0054】
本実施の形態では、排気ガスが最初に到達する触媒担体21の上流側端面21aにレーザ光Lが照射されるので、その上流側端面21aから加熱して触媒浄化効果を向上させることは効果的である。
【0055】
本実施の形態では、レーザ光Lを生成するレーザ光発振部24と、該発振部24と光ケーブル23を介して接続され該発振部24から供給されるレーザ光Lを発する照射部22とが備えられている。この照射部22はエンジン10の排気管16に設けられると共に、レーザ光発振部24は該排気管16から離間した車室内に設けられている。すなわち、排気管16は温度の昇降が激しく、車両の外部に露出しているため、環境的に厳しい。従って、このような排気管16には照射部22のみを設ける一方で、レーザ光Lを生成する耐環境性の低い半導体装置等を備えたレーザ光発振部24を該排気管16から離間した車室内に設ければ、レーザ光発振部24の破損を防止することができる。
【0056】
本実施の形態では、レーザ加熱期間は、エンジン10を主に循環する冷却水の温度(冷却水温Tw)と排気ガス中の未燃燃料の濃度(HC濃度THC)に基づいて設定されている。すなわち、冷却水温Twの検出により、排気ガス中に有害成分が多く含まれるエンジン10の未暖機状態(冷間状態)かが判定でき、排気ガス中のHC濃度THCの検出により、触媒担体21の温度が排気ガス中の有害成分が十分に浄化できない低い温度にあるかが判定できる。そのため、これら冷却水温Tw及び排気ガス中のHC濃度THCに基づいてレーザ加熱期間を設定することにより、触媒担体21の加熱期間を好適な期間に設定することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0058】
上記実施の形態のレーザ光Lの照射位置や照射形態に限らず、これらを適宜変更しても良い。例えば、図5に示すように、照射部41からレーザ光Lが三方に照射するように構成されている。また、各レーザ光Lを照射する数と同数で同円形状の区画領域A2を触媒担体21の上流側端面21aに設けると共に、各区画領域A2の中心が触媒担体21の端面21a中心から等距離に位置するように各区画領域A2を互いに接するように配置し、このような各区画領域A2の中心をその中心とした所定照射領域A3内に各レーザ光が照射される。なおこの形態では、上記実施の形態と同様に、触媒担体21の上流側端面21aの手前で一旦集光するレーザ光Lが用いられている。このようにすれば、複数(この場合、3つ)のレーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21aにバランス良く照射され、触媒担体21を効果的に加熱することができる。
【0059】
また、図6に示すように、照射部42から発するレーザ光Lの広げ、触媒担体21の上流側端面21aの全体に照射するようにしても良い。
【0060】
また、図7に示すように、照射部43から発するレーザ光Lの広げ、触媒担体21の上流側端面21aにおける円形照射領域(上流側端面21aの中心をその中心とした該端面21aの直径Dの1/3の領域)A1に照射するようにしても良い。
【0061】
また、図8に示すように、2つの照射部44a,44bを用い、各照射部44a,44bから発するレーザ光Lを同一の照射領域A1に照射しても良い。このようにすれば、複数のレーザ光Lが同一の照射領域A1に照射されるので、個々のレーザ光Lの強度を抑えながらも、触媒担体21を効果的に加熱することができる。
【0062】
また、図9に示すように、2つの照射部45a,45bを触媒担体21の上流側と下流側とのそれぞれに配置し、各照射部45a,45bから発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aと下流側端面21bとのそれぞれに照射しても良い。このようにすれば、レーザ光Lが触媒担体21の上流側端面21a及び下流側端面21bのそれぞれに照射されるので、触媒担体21の両端から効果的に加熱することができる。
【0063】
また、図10に示すように、照射部46から発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射(この場合、面照射でも良い)させると共に、その照射位置が移動するようにアクチュエータ46aの作動により照射部46を可動させても良い。なおこの場合、触媒担体21の端面21aの中心をその中心とした円環状にレーザ光Lの照射位置を移動させるようにしているので、照射部46の動作は単純でアクチュエータ46aも比較的簡単に構成できる。このようにすれば、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射するレーザ光Lの照射位置が移動されるので、上記実施の形態と同様に、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0064】
また、図11(a)(b)に示すように、照射部47から発するレーザ光Lを触媒担体21の上流側端面21aに対して点照射させ、その後、アクチュエータ47aの作動により点照射から面照射に切り替えるようにしても良い。なおこの場合、触媒担体21の端面21aの中心にレーザ光Lを点照射し、その後レーザ光Lの中心位置を移動させることなくレーザ光Lを単に広角として面照射に切り替えるようにしているので、この切り替えを行うアクチュエータ47aを比較的簡単に構成できる。このようにすれば、触媒担体21を加熱する際、触媒担体21の上流側端面21aに対してレーザ光Lが点照射から面照射に切り替えられるので、上記実施の形態と同様に、レーザ光Lのエネルギーが分散され、レーザ光Lのエネルギーの一点集中が防止される。そのため、触媒担体21の加熱時間を短くすべく強度の強いレーザ光を用いても、該レーザ光Lが照射される部分の溶損を防止することができる。
【0065】
なお、図11の形態と前記図10の形態とを組み合わせてもよい。また、上記した各形態を適宜組み合わせてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、レーザ光Lの強度を30[mJ]に設定したが、これ以外の数値に変更しても良い。また、レーザ光Lの強度を固定としていたが、可変としても良い。例えば、エンジン10の始動時に暖機目的でレーザ加熱実施の場合にはレーザ光Lの強度を10[mJ]とし、レンズ22aの表面に付着するデポジット等の付着物の焼却目的を含む場合にはレーザ光Lの強度を30[mJ]というように可変としても良い。
【0067】
本実施の形態では、冷却水温Tw及び排気ガス中のHC濃度THCに基づいてレーザ加熱期間を設定したが、これに限定されるものではなく、例えばタイマや制御ループ回数によりレーザ加熱期間を調整しても良い。
【0068】
上記実施の形態では、排気管16から離間した車室内に配置されるレーザ光発振部24にてレーザ光Lを生成し、そのレーザ光Lを光ケーブル23を通じて排気管16に設けた照射部22に供給するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えばレーザ光発振部24と照射部22とを一体に設けても良い。
【0069】
上記実施の形態では、触媒コンバータ20(触媒担体21)が1つであったが、触媒コンバータ(触媒担体)複数であっても良い。例えば、上流側に熱容量の小さいサブ触媒コンバータ(触媒担体)を備えると共に、下流側に熱容量の大きいメイン触媒コンバータ(触媒担体)を備え、それぞれにレーザ加熱装置を設けても良い。また、例えばサブの触媒担体に対してのみレーザ加熱装置を設けても良い。
【0070】
上記実施の形態では、ガソリンエンジンの触媒コンバータ20に適用したが、ディーゼルエンジンの触媒コンバータに適応しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。
【図2】レーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図3】レーザ加熱処理を示すフローチャートである。
【図4】触媒及びHC濃度の変化を説明するための説明図である。
【図5】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図6】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図7】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図8】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図9】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図10】別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【図11】(a)(b)は、別例におけるレーザ加熱処理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10…エンジン(内燃機関)、21…触媒担体、21a…上流側端面、21b…下流側端面、22…照射部(レーザ加熱手段)、23…光ケーブル(レーザ加熱手段)、24…レーザ光発振部(レーザ加熱手段)、41〜47…照射部(レーザ加熱手段)、46a…アクチュエータ(照射位置移動手段)、47a…アクチュエータ(照射状態切換手段)、A1,A3…照射領域、A2…区画領域、Tw…冷却水温(冷却水の温度)、THC…未燃燃料濃度(ガス濃度)、L…レーザ光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光による加熱期間中、前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を面照射するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を前記触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面に照射することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、前記触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させた前記レーザ光の焦点で未燃燃料に着火させることが可能な強度以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を照射する際に前記触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内に照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記レーザ加熱手段は、前記触媒担体の少なくとも上流側端面に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、前記レーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を生成するレーザ光発振部と、該発振部と光ケーブルを介して接続され該発振部から供給される前記レーザ光を発する照射部とを備え、前記照射部を内燃機関の排気通路に設けると共に、前記レーザ光発振部を該排気通路から離間した位置に設けていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を照射する数と同数で同形状の区画領域を前記触媒担体の端面に設けると共に、各区画領域の中心が前記触媒担体の端面中心から等距離に位置するように各区画領域を互いに接するように配置し、各区画領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を同一の照射領域に照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、前記触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに各レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記レーザ加熱手段によるレーザ加熱期間は、内燃機関を主に循環する冷却水の温度、及び前記触媒担体の下流側のガス濃度のうち少なくとも一方に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ光による加熱期間中、前記レーザ加熱手段にて前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を点照射させ、その後点照射から面照射に切り替える照射状態切換手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ光による加熱期間中、前記レーザ加熱手段にて前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を点照射又は面照射すると共に、その照射位置を移動させる照射位置移動手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光による加熱期間中、前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を面照射するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を前記触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させその後広がった部分を該端面に照射することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、前記触媒担体の端面の手前位置で一旦集光させた前記レーザ光の焦点で未燃燃料に着火させることが可能な強度以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を照射する際に前記触媒担体の端面中心をその中心とした所定照射領域内に照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記レーザ加熱手段は、前記触媒担体の少なくとも上流側端面に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記レーザ加熱手段にて発せられるレーザ光の強度は、前記レーザ光を発する部位の表面に付着する付着物を焼却可能な強度以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を生成するレーザ光発振部と、該発振部と光ケーブルを介して接続され該発振部から供給される前記レーザ光を発する照射部とを備え、前記照射部を内燃機関の排気通路に設けると共に、前記レーザ光発振部を該排気通路から離間した位置に設けていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を照射する数と同数で同形状の区画領域を前記触媒担体の端面に設けると共に、各区画領域の中心が前記触媒担体の端面中心から等距離に位置するように各区画領域を互いに接するように配置し、各区画領域の中心をその中心とした所定照射領域内に各レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、各レーザ光を同一の照射領域に照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記レーザ加熱手段は、前記レーザ光を複数照射するように構成されており、前記触媒担体の上流側端面及び下流側端面のそれぞれに各レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記レーザ加熱手段によるレーザ加熱期間は、内燃機関を主に循環する冷却水の温度、及び前記触媒担体の下流側のガス濃度のうち少なくとも一方に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ光による加熱期間中、前記レーザ加熱手段にて前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を点照射させ、その後点照射から面照射に切り替える照射状態切換手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
内燃機関の排気ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持する触媒担体の端面に対してレーザ光を照射して加熱するレーザ加熱手段を備えた排気浄化装置であって、
前記レーザ光による加熱期間中、前記レーザ加熱手段にて前記触媒担体の端面に対して前記レーザ光を点照射又は面照射すると共に、その照射位置を移動させる照射位置移動手段を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−132486(P2006−132486A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324526(P2004−324526)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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